Music Jacket Gallery】カー・ジャケット特集<後編>
この『Heat in the Street』という1978年のパット・トラヴァースのアルバムは色んな形でMJGに登場して来た経緯がある。
今回はどうしようかと思ったんだけど、後ろの方に白くて長いリムジンが写っているので取り上げることにした。
皆さんはこういうの乗ったことがありますか?
私は一度だけアナハイムでMarshallの連中と乗ったことがあるんだけど、狭いばっかりでちっとも良いことはなかった…コレが言いたかっただけ。言わずと知れたカーペンターズの1973年の名盤『Now & Then』。
3面見開きのジャケットがうれしい。
この赤い車はリチャードが所有するところの1973年のフェラーリだそうです…ということは超新車ということかいな?
ま、こういう人たちにとっては税金対策なんでしょうな。
そして、後ろに見えるのはカリフォルニアのダウニーというところにある、1970年にリチャードとカレンが両親のために買って進ぜた5ベッドルームの豪邸。
1983年、カレンが拒食症で亡くなったというニュースにはかなり驚いたが、この家の2階のベッドルームで息を引き取ったそうだ。1976年のCaravanの『Blind Dog at St. Danstans(聖ダンスタン通りの盲犬)』。
Caravanといえばカンタベリー一派ね。
この日本のプロッグ・ロック・ファンの間では知らない者がいないであろう「カンタベリー・ミュージック」というカテゴリーね、コレ、イギリスの人に尋ねるとかなりの高い確率でピンと来てもらえない。
イギリスの音楽関係者でも、例えSoft MachineやGongは知っていても「カンタベリー・ミュージック」という言葉を使った人にはコレまで一度も会ったことがない。
「Canterbury Scene」とか「Canterbury Sound」ぐらいに言うとナントカ伝わるようだ。
私もカンタベリー・ミュージックは好きでしてね、2度ほど現地を訪れた。
静かでキレイでメチャクチャいい所ですよ。
ところが、「カンタベリー・ロック」っぽい場所は全くない。唯一、スコーンとカンタベリってたのが、この「Westgate」と呼ばれる石造りの建造物。
この写真を撮ったのは今から18年前の今頃なんだけど、実はコレを探してこの門を訪れたワケではなかったの。
ブラブラ歩いていたら出くわしてアラ、ラッキーと相成った。
正直、この時Caravanは全くアタマになかったように記憶している。
カンタベリーへの紀行文はコチラに認めておいたので是非ご覧くださいまし。
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【イギリス - ロック名所めぐり vol.15】 カンタベリー…プログレの聖地
しかし、久しぶりにこのアルバムを引っ張り出してきて聴いてみたけど、エラくポップでコチラもプログレっぽい要素はほとんどないな。ところで、この門は何のためにあるのかというと…当たり前なんだけど「門」の役割を果たしているの。
建造されたのは1379年のことで、イングランドに現存する最も大きく古い城門なのだそうだ。
古くはロンドンもそうだけど、中世のイギリスの都市は城郭を建造して外部からの侵入者を遮断していた。
ヨークなんかはそのようすがとてもわかかりやすいが、このカンタベリーも同様。
その城郭の通用門のひとつが「Westgate」というワケ。
下は「カンタベリー東」駅を出たところから見た城郭の跡。
コチラはヨークの城郭。 もう大分収まったのかな?
イギリスはチョット前までガソリンの値段が1リッタ―300円を軽く超えていた。
ま、イギリスではガソリンのことを「petrol(ペトロ―ル)」というけど…。
日本ももうすぐリッター200円を超えるってね。
困るよナァ。
で、こっちは「Gasolin'」というデンマークのバンドがリリースした1973年の3枚目のアルバム。
「カー・ジャケット特集」にふさわしいバンド名だ。
このバンドのことはゼンゼン知らなかったけど、中学生の時に初めて見たこのジャケットはとても印象的だった。
サンフランシスコだな、コリャ?
買い物をして両手イッパイに荷物を抱えたお姉さんが通りを渡るチャンスを窺っている時にパンツが落ちてしまう…みたいな?
何でやねん?
コレはマリリン・モンローのパロディなのかな?
イラストを描いたのはテイジ・ハンセン(っていうのかな?)という人。
この人、自分のイラストがジャケットに使われるということを知らずにアルバム2枚分の料金(当時だと2,000円ぐらいかね?)を受け取ってしまい、その後でイラストに使われたことを知ったという。
ヒドイ話だ。
バンド側がどう説明したのか知らないけど、ダマされたも同然じゃん?
サウンドは毒にも薬にもならない軽めのロックだけど、コレはスウェーデン語なのかな?
英語のようで英語でない響きが何とも新鮮。
悪くない…というのはプロデューサーの力なのかも。
このバンドをプロデュースしていたのはロイ・トーマス・ベイカーだった。
ベイカーがエルトン・ジョンのプロデューサーだったガス・ダッジョンの影響を受けて、ロンドンはソーホーのトライデント・スタジオに勤めてフリーやらナザレスやらの好盤を次々と制作した。
もっとわかりやすく言えば、クイーンのプロデューサー。
トライデント・スタジオについてはコチラをどうぞ。
コレは自分で言うのもナンだけど…我ながら名作だと思っています。
書いていてメチャクチャ楽しかった!
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【イギリス-ロック名所めぐり】vol.49 ~<オールド・ロック・ファンに捧ぐ>トライデント・スタジオとC.ベヒシュタインとデヴィッド・ボウイ
この辺りから後半です。
段々知っているアルバムが少なくなって来た!
もうアッという間に終わっちゃうよ。
日本では『ギター・ジャンボリー』というタイトルで知られている、クリス・スぺディングが1976年に発表した5枚目のソロ・アルバム。
ブライアン・フェリーのサポートで来日した時のことは<前編>で紹介した「中野サンプラザの思い出」の中で触れているのでココには詳しく書かないが、我々の世代では「三大ギタリスト」のナゾの一角だった。
NucleusとかSharksとか、このひとのキャリアにはとても惹かれるところがあるんだけど、結局この人の持ち味って、後のニューウェイブに通じる軽くてシンプルなロックンロール系の音楽…ということになるんでしょうなナァ。
そのサウンドを確立したのがこの5枚目のソロ・アルバムと言われているそうだ。
ツベコベ言っても、とにかくこのアルバムは「Guitar Jumboree」に尽きるわネェ。
1977年の演歌チャンチャカチャンよりも先に「おいしいとこメドレー」を、東京おとぼけキャッツよりも先に「ギターのモノマネ」をしていたんだからスゴイ。
でも、今聴いて衝撃的なのはその歌詞だわ。
「♪ギター・ジャンボリーで音楽の歴史を作った男たちを見てごらん
町でギター・ジャンボリーが開かれるよ
はるばる遠くからミュージシャンたちがやってくるよ
みんなでギター・ヒーローを見に行くんだ」
童謡かッ!?
ってんでクリスに誘われるままギター・ジャンボリーへ行ってみると…いるわいるわ、ギター・ヒーローたちが集まってら!
アルバート・キング、チャック・ベリー、ジミ・ヘンドリックス、ジャック・ブルース(ナンでやねん?)、ピート・タウンゼンド、キース・リチャーズ、ジョージ・ハリソン、エリック・クラプトン、ジミー・ペイジ、ジェフ・ベック、ポール・コゾフ、レスリー・ウェスト、デイヴ・ギルモアの皆さん。
クリスがひと節ずつこの人たちの特徴的なプレイを聴かせてくれる…という曲。
ギター・ヒーローの存在はおろか、ギター・ソロもギター・リフも必要としないらしい現在のロックを聴く若者にとっては絶対に理解できない曲だわね。
オモシロいのはジミ・ヘンドリックスあたりなんかは、当時権利問題が絡んでいたのか「Purple Haze」や「Foxy Lady」を弾くでもなく、シブいブルース・フレーズを弾いているんだよね。
コレがイギリス人のジミ・ヘンドリックスの聴き方なのか?と日本人との差を感じてしまう。
ま、そんなことをしていた人だけど、後年ロバート・ゴードンというロカビリーの歌手のバックでギターを弾いているのを見て「ああ、ウマい人だナァ」と、その「仕事人」っぷりに感心した。
さて、今回のブロー・アップ・ジャケットにも選ばれていることだし、少しぐらいは写っている車について調べてみるか…とインターネットをチョコチョコとチェックしてみた。
クリスが寄りかかっている緑の車はオルズモービル(Oldsmobile)。
コレはロゴがフロントに入っているのですぐにわかる。
さて、型番は…ドンズバではないけどほとんど同じヤツが「Super 88」というモデル名だった。
1955年の車だそうだ。
まぁ、そんなもんでしょ?ところで、「Jumboree(ジャンボリー)」というのはナニか?
英単語としては「陽気な騒ぎ」という意味なんだけど、政党や競技連盟のような団体のお祭り騒ぎのことを指すらしい。
特にボーイスカウトのような「スカウト運動」と呼ばれる社会運動の大会に専門的に用いられる言葉なのだそうだ。
で、私も2015年8月、山口県宇部市の「山口きらら博公園」という所で開催された「世界スカウトジャンボリー」という世界大会に田川ヒロアキさんの取材でお邪魔したことがある。
今も信じられないぐらい暑いけど、この時は多分これまで人生で一番暑い日だった。
世界中からスカウトのメンバーが集まって来ていて、暑い所の子たちはまだいいけど、北欧あたりから来ていた子たちは完全にヘロヘロになっていたっけナ。
そんな中、テントで数日間過ごすんだよ。
もう暑すぎてアタマの中がジャンボリーになっていたハズ。
どれだけ暑かったかはコチラをどうぞ!
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世界ボーイスカウトジャンボリーの田川ヒロアキ <前編>
NAZARETHは好きだった。
高校の時、渋谷公会堂へ観に行ったわ。
アレも私の「行っておいてよかったコンサート」のランク上位に入るな。
このアルバムには「Telegram」というナザレスの代表曲が1曲目に入っていて、コレが長い間コンサートのオープナーだったっていうんだけど覚えてないな~。
それは組曲になっていて、第2曲がByrdsの「So You Want to be a Rock 'n' Roll Star」なんだよね。
つまりコピー。
このバンドって、<前編>でも触れたウディ・ガスリーの「Vigilante Man」とか、Yardbirdsの「The Shapes of Things」とか、ジョニ・ミッチェルの「This Flight Tonight」とか、平気で人の曲を演っちゃうんだよね。
そもそも最大のヒット曲の「Love Hurts」だってエヴァリー・ブラザーズの曲だもんね。
でもそのどれもがカッコいい!
この1976年の『Close Enough for Rock 'n' Roll』のジャケット・デザインはヒプノシス。
ナザレスは1974年の『Rampant』もヒプノシスだった。
ちなみにこのアルバムの邦題は『宿命のロンクンローラー』…ナ~ニィ~?やっちまったナァ~!
『Rampant』の『競獅子』というのもナゾだったナ。
それと…『Hair of the Dog』はそのまま『迎え酒』という邦題にするべきだったんだよ!
次のセクションも馴染みのない作品が多い。Gilgameshもカンタベリー系のチームだったっけか?
1975年のファースト・アルバム『Gilgamesh』。
可愛らしいイラストのジャケットは双六になっていて、各コマには…
「ライブの後、ギャラを現金でもらって2コマ進む」
「ギターの弦が切れて1コマ戻る」
…と、手書きの文字で書き込んである。
「本番中にアンプが飛んで2コマ戻る」なんてのもある。
オイオイ、まさかMarshallじゃねーだろうナァ。
せっかくなので緑色の車のコマに書いてあるのを読むと…
「Van breaks down on Ml, miss a rum」とある。
「Mlで機材車が故障する」…か、「Ml」ってなんだろう?
「ミシガン」の略号か?
イヤイヤ、アメリカになんか行けるバンドじゃなかったハズだ。
そもそも、そうだとしたら前置詞が「on」ではなくて「in」になるハズだもんナァ。
考えに考えて「on」でハッと思いついた!
手書きで「l」と書いてあるのは「I」でも「L」の小文字でもなく数字の「1」だ!
つまり「M1」というロンドンからリーズ近郊までイングランドを南北に走る高速道路のこと。
ヒースローからMarshallの工場に行く時もこの高速道路を使う。
あ~、スッキリしたと思ったんだけど「rum」がわからない。
きっとおいしいラム酒でも出す店に行きそびれたんだろう。
そうしたコマの指令の他にもギターのフレット・ボードやギター・ケーブルがコマを跳び越すツールになっているのも楽しい。
デザインはセリア・ウェルカムという人。
他にヒュー・ホッパーのソロ・アルバムを手掛けているようだ。
ノッケから5/4拍子やら芸の細かいキメやらで、このバンドって曲はいいんだよね。
プロッグ・ロック・ファンであればきっと食指をそそられるサウンドだ。
だけどな~…。
私の個人的な意見ということでお許し願いたいのだが、ギターがあまりにも当たり前でオモシロくないと思うのだ。
ギターはフィル・リーという人。
他にどんな仕事をしていた方かは存じ上げないが、2007年にはケン・ペプロウスキーらとビリー・ストレイホーンへのトリビュート・アルバムを制作しているようだが大丈夫なのか?
ギルガメッシュについて言えば、もっと個性とテクニックに恵まれたギタリストが参加していれば、何ランクも上に行けたのではないか?…と感じるのは私だけであろうか?
まったく大したコレクションではないんだけど、今、私のところには約5,000枚のCDが収納棚に収まっている。
買った時に1度しか聴いたことがないアルバムがその中にナントたくさんあることよ。
え?何割ぐらいがそれに該当するかって?…ダメダメ!恐ろしくてとてもじゃないけど数えられない!
そこで、少しでも元を取っておこうと思い立ち、『荒行』と称して持っているCDを死ぬまでに全部聴くという愚挙を思い立ち、早や1年チョットが経過した。
紙ジャケットは出し入れするのが面倒なので、まずはプラケースに入って販売していた(ウチは保管スペースを確保するために植村さんのマネをして、厚みが1/3になるソフトケースに入れ替えてCDを保管している)ジャズのアルバムをアルファベット順に「A」から聴き始め、先ごろ先ごろ「Z」まで完遂した。
それに続いて日本人のジャズも聴き終え、フュージョンのゾーンに移った。
まさにそこからが本当の「荒行」だった。
猛烈にツライのである。
元来ニガテだったボブ・ジェイムスやディヴ・グルーシンのようなソフト&アダルト路線は言うに及ばず、かつてアレほどカッコいいと思っていたブレッカー・ブラザーズのような硬派なフュージョンも大変にツラいのだ。
どれも同じに聴こえてカッコよくもナンともない。
「C」の時、チック・コリアのエレクトリック・バンドにもかなり苦しんだのだが、技術の粋を活かした立派な音楽をクリエイトしていることには間違いないのであろうが、ナンと言うか……ファンの方には申し訳ないが、聴いていて音楽に「意味」を感じないのだ。
そこで、いとも簡単に主義を曲げてフュージョンについてはダイジェストで対応させて頂いた。
今、ワールド・ミュージックのゾーンに入ってクルアーンからシャンソンまでを聴いているのだが、どれも素晴らしい。
一時の流行や商売を目的にで作られた音楽とは異なり、とてもイキイキとして聴こえるのだ。
さて、そのフュージョン。
「ダイジェストで対応」と書いた通り素通りしたワケではなく、パット・メセニーは1枚残らず全部聴いた。
新しい目のアルバムは少々ツラかったが総じて実に素晴らしかった。
誰にも創造し得ない自分だけの音楽。
それでいて聴きやすく開放的で、何よりも美しいところがスゴイ。
それと、Weather Report。
私はウェザーは『Domino Line』までしか聴かなかったが、持っているアルバムはデビュー・アルバムから全部聴き直した。
改めてジョー・ザヴィヌルとウェイン・ショーターの独創性に感動した。
簡単に言って「他にない」ということなんだよね。
その中でどちらかというと地味な扱いを受けるこの『Mr. Gone』というアルバム。
コレはリアル・タイムで聴いた。
トニー・ウィリアムスが参加しているのが大きな話題になっていた。
この横尾忠則のコピーのし損ないのような妙チクリンなジャケット・デザインも含めて私はスキだった。
大胆に離れた目をズ~と眺めていると研ナオコに見えて来るという「空目」が楽しい。このアルバムも車が出て来るのは裏のパネル。
というより、最早クライスラー・ビルということか?
植村さんのシャレによるチョイスですな?
昔、勤めていた会社のニューヨークの事務所が3番街にあって、事務所の窓からクライスラー・ビルが見えたのには感動してしまった。
あんなに憧れたニューヨークだったけど…今は浅草の方がいいや。
先週ニューヨークへ旅立った友達のギタリストのSNSへの投稿で知ったんだけど、今、ミネラルウォーターのボトルが1本$5.00ですって?
最近の為替レートだと700円以上だから日本の7倍。
数年前にホーチミンに行ってコンビニで買ったペット・ボトルの水は20円だった。
「中身はナニが入っているかわからない」とは言われたものの、安いと思った。
で今、考えてみるとベトナムの水の値段は日本の1/5。
一方、日本の水の値段はニューヨークの1/7。
もちろん為替レートによるところの結果だけど、なんか日本って本当に貧乏になっちゃった感じがするナァ。
少なくとも「日本=先進国」という感じはもうしないナァ。いよいよ最後の棚。
まずは上段。AC/DCの1976年のアルバム『Dirty Deed Done Dirt Cheap』。
ウチの下の子がこのタイトルを知っていて驚いた。
何でもマンガに出て来るそうで、略して「D4C」というそうな。
そのマンガでは「いともたやすく行われるエゲツない行為」という訳が当てられているそうだけど、ウーム、コレはムズカシイね。
文章としては「dirtでcheap」に「do」された「dirtyなdeed」という組み立て。
英語圏の人の感覚だと「ホンの僅かな報酬で実行される犯罪」とか、「シレっと行われてしまった思いもよらないヒドイこと」みたいなことのようだ。
今の「闇バイト」の犯罪なんかが「D4C」なんじゃないかしらん?
コレ、オリジナルのオーストラリア盤がそれこそ「D4C」な安っぽいマンガのジャケットだけど、直後にリリースされたこのUK仕様のジャケット・デザインはヒプノシスが担当した。
このジャケットの目線を消されたごく普通に見える人たちが徒党を組んで何やら悪事を働いた…ってとこか?
アルバムがリリースされた約50年前では薄気味悪さを感じたろうが、今となっては現実に起こる事件の方がよっぽど「D4C」だわね。
北海道の首なし殺人なんて「D4C」どころじゃないだろう。最後のセクション!『Brothers and Sisters』からのレパートリーを多く含む1976年のオールマンのライブ・アルバム『Wipe the Windows, Check the Oil, Dollar Gas』。
「窓ガラスを拭いて、オイルをチェックして、ガソリンを売って」…タイトルはガソリン・スタンドの通常業務だね。
コレは「世の中インチキなことがナント多いことよ」と歌うチャック・ベリーの「Too Much Monkey Business」からの引用。
「monkey business」は「いい加減なこと」とか「インチキ」という意味。
この曲はビートルズやキンクスにも取り上げられていた。
チャック・ベリーの方はタイヤの状態もチェックしている。
オールマンは来る日も来る日も旅をしてステージに立つ自分たちの仕事を「monkey magic」と考えたのかネェ?
でも、少なくともドライバーやゴルフボールを入れた靴下で車体にダメージを与えて保険会社に保険金の水増し請求をするようなマネはしない。
それこそが「Monkey Business」で「D4C」だ。除草剤もダメよ。
このアルバム、邦題が『熱風』だった。
よくミュージック・ライフ誌に広告が出ていて私もよく覚えているけど…ナンダ『熱風』って?
ジャケット・デザインを担当したのはジム・エヴァンスという人。
ChicagoやThe Beach BoysやTotoのアルバムのジャケット・デザインを手掛けているようだ。
とにかく「オールマン」が出て来ると書かざるを得ないのは、「熱心なファンが信じられないぐらい多い!」ということよ。
私のアメリカ人の友達は子供の時にデュアン・オールマンを観たことがあってコワかったらしい。
どこかのコンサートで真ん前で観ようとしたら「ガキはアッチへ行ってろ!」と言われたとか…。
奇しくもまたウェザー・リポート。
1983年の『Procession』。
ジャコとアースキンがバンドから離れてオマー・ハキムとヴィクター・ベイリーに入れ替わった最初のアルバム。
オマー・ハキムってのは人気あるよね~。特にこの頃は飛ぶ鳥を落とす勢いだった。
当時、このアルバムはThe Manhattan Transferが参加していることも話題になった。
ナンカ時代を感じるナァ。
でも、ザヴィヌルが書いたその共演曲「Where the Moon Goes」という曲はスキだったナ。
しかし、ウェザーもこの頃はスッカリ人気者になってしまい、シャカリキになって大衆受けを狙っているようにしか見えなかったナ。
前々作あたりではエリントンの「Rockin' in Rhythm」なんかを取り上げていていい感じだったんだけどね。
私は次作の『Domino Theory』をホンのチョット聴いてウェザーはヤメた。
ジャケットのイラストはジョン・ライクスという人の作品。
マリア・マルダーの『Southern Winds』や『We are the World』のジャケット・デザインを手掛けている。
「Procession」というのは「行列」とか「行進」という意味ね。
さて、この展示の時『カージャケ CAR GRAPHIC』という本が上梓された。
出版元は三栄書房。
ゴメンなさい、中身は拝見していないんだけど、同社は車や単車に関する雑誌を多く刊行している出版社だけあって、その内容はジャケットに登場する車についての豊富な情報を提供している…と想像する。
私の「カージャケ」は邪道もいいところでしたな。今回は冒頭に記した通り、私の車に関する知識のなさからピックアップしたアルバムの点数がいつもより少なかった。
…ということで、ジャズのアルバムから私家版『カー・ジャケット特集』をやってみたいと思うのです。
といっても、Blue Note盤だけね。
繰り返し書きますが…車のことはサッパリわからないので「こんなジャケットがあるよ~」ぐらいの展示。
でもね、多分車がジャケットに出て来るブルー・ノートのレコードは全部網羅したと思うよ。
で、調べてみると…まず膨大な数の名盤を抱える1500番台には、ロケットをあしらったジャケットはあっても車が登場するジャケットは1枚もなかった。
1958年に「1600」番を背負った『Introducing The Three Sounds』で1500番台を終了させると、同じ年に4000番台に移行し、「4001」という番号を付してソニー・ロリンズの『Newk's Time』を発表した。
それから6枚後、『Newk's Time』から3か月後にいよいよ車がジャケットに登場する。
それは下のドナルド・バードの『Off to the Races』。
ベンツですな。
デザインはリード・マイルス、そして撮影はフランシス・ウルフ。
「ジャズのジャケットといえばまずはブルー・ノート」といわれる名作を山ほど作ったコンビだ。
しかし、ナンで急に車が出て来たんだろうネェ。
タイトルの『Off to the Races』というのは「すぐに行動する」というような意味で、英英辞典によると、「ナニかこれから始まることに対するどデカイ期待」を込めて使う表現のようだ。
そうか!わかった!
この作品はブルー・ノート・レーベルにおけるドナルド・バードの第1作で、メチャクチャ張り切っていたからそんなタイトルをつけて、「race」だからシャレで車をジャケットに引っ張り出して来たのだ。
持っていてもほぼ聴くことはないアルバムなんだけど、こうしてタイトルやジャケットに込められた意味がわかると聴きたくなって来るね。
で、CD棚から引っ張り出して来て今聴いているんだけど…ああ~、バードのトランペットがいいように張り切ってるわ~!
次もドナルド・バード、
『The Cat Walk』という1962年アルバム。
「キャット・ウォーク」というのは劇場の壁なんかにくっついている狭い足場のことや、ファッションショーのデベソのことを指すのが普通だけどココでの意味はわからない。
同名のオリジナル曲は収録されているけど。
もちろんジャケ写の撮影はフランシス・ウルフ、デザインはリード・マイルス。
ガッと大胆にトリミングしてドバ~っと色をかぶせちゃうのはマイルスの得意ワザ。1964年のドナルド・バードの『A New Perspective』。
コレは男女混成の合唱団がガッツリ加わって重厚なサウンドを聴かせてくれるシリアスな1枚。
聴き通すと少々疲れる感じ?
この写真!
コレはどれほど絞って撮ったんだろう?
F=22か?とにかく極限まで絞っているハズ。
すると照明はどうしたのか?
デイライトで撮って現像する時に露出を調整したのか?
とにかく黒澤さんもビックリの超パンフォーカス!
このアルバム・ジャケットはリード・マイルスが「自選No.1」に挙げていたそうだ。
リード・マイルスのデザインって写真もさることながら、フォントの使い方が実に巧みだと思うんだよね。
最近の日本のレコード・ジャケットってその辺りが全くなってないと思うのです。
ま、最早「レコード・ジャケットなんてあるのかよ?」という話しですが…。
その「自選No.1」の影響か、こんなデザインの1枚も存在する。
ブルー・ノート65周年を記念した世界中のDJによるリミックス・アルバム。
なんたる風格の違い!ドナルド・バードが続いた後はオルガンのジミー・スミス。
1960年の『Crazy Baby!』。
タッチが違うと思ったらやっぱり写真はフランシス・ウルフではななかった。
デザインはリード・マイルス。
1960年代の半ばに入るとブルー・ノートも女性モデルをフィーチュアしたチープなデザインのジャケットが登場してくる。
もう1枚のジミー・スミスは1963年の『"I'm Movin' on"』。
写真、デザインともにリード・マイルス。
この写真は合成かな?
スタンリー・タレンタインの『Joyride』1965年。
人気者タレンタインをフィーチュアしたオーケストラ・アルバム。
「joyride」というのは「他人の車を盗んでスリルを味わうために無謀な運転をすること」だそうだ。
だからジャケットも車だ。
ひとつ前の『"I'm Movin' on"』に雰囲気が似てるでしょう?
と思ったら、やっぱりコレも写真もデザインもリード・マイルスが担当していた。
きっと初めにデザインありきでシャッターを切ったんだろうな。
ハンク・モブレーの1967年の『A Caddy for Daddy』。
コレも上の2枚同様写真もデザインもリード・マイルス。
もうこの辺りになると、古き良き1500番台のジャケットの雰囲気が全くなくなっちゃった。
フランシス・ウルフは写真ではなく、ブルー・ノートの財務の仕事に専念していたらしい。
モッタイない。私が調べた限り、車が登場するブルー・ノートのオリジナル・アルバムは以上の7枚。
もっとあるのかと思っていたらそうでもなかった。
今度MJGで「女性ジャケット特集」があった時にはまた調査してみよう。
そっちの方が多いかも。
それと、どうしても紹介しておきたいジャズのアルバムをもう2枚。
いずれもベルベット・ボイスで人気のあったシンガー、メル・トーメのベツレヘム・レーベル時代の作品。
ひとつは1957年の『Gene Norman Presents Mel Torme At The Crescendo』というライブ盤。
思いっきり車ド~ン!それとコレは顔が車になっちゃってる。
『Mel Tormé With The Marty Paich Dek-Tette』という1956年のアルバム。
メル・トーメに似ているかどうかは何とも言えないけど、好きなんだネェ、車。 ちなみに…ロッテの「小梅」というアメのTVコマーシャルの最後で「小梅ちゃ~ん!」と叫んでいるのは元トランザムのボーカルズの麻上冬目(あさがみとめ)さんという方で、「冬目」さんというお名前は「Mel Torme」から来ているハズ。
イヤ私、メル・トーメ大好きなんです。
さて、最後はおなじみの立体展示コーナーのご紹介。
今回もゴージャスなボックス・セットが勢ぞろいだ!
★HOT ROD & CUSTOM CLASSICS(1999)/ Various Artists
まずは今回の特集にふさわしく車をモチーフにした4枚組のボックス・セット。
Stray Cats、Golden Earing、Chuck Berry、The Beach Boys等々が演奏している車をテーマに据えた曲がワンサカ収録されている。
その顔触れはBill Monroeやら、Johnny "Guitar" Watson、The Doobie Brothersまで種々雑多。
Dinah Shoreまで収録している。
ナニを歌っているのかと思ったら「See the U.S.A. in Your Chevrolet」。
ハイ、出ました「Chevrolet」…「シボレー」ね。
今回の特集の<前編>を読んだ人はもう「シボレー」なんて読まないハズ!しかし、この「Hot Rod」模様っての、みんな好きだね~。
★HAVE A NICE DECADE:THE '70s POP CUTURE BOX (1998) / Various Artists
ハイ、替わって大歓迎なのは70年代のロック。
私はもう完全にコレで育ったもんですから、80年代のロックですらもうムリ。
そりゃ、ロックが最もクリエイティブだった70年代に本当に真剣にロックを聴いていたら80年代のそれは厳しいよ。
ナニひとつ新鮮味が感じられないもん。
ということで、コレは70年代のロックをかき集めた7枚組のボックス・セット…なんだけど、内容はかなりポップ路線ですな。
ジャンルの垣根をさげて英米でヒットした曲がゾロゾロと収録されている。
しかし、「70年代」というとこういうイメージなのかネェ。
何となく万博を連想させる。
1970年、万博へ行った時はうれしかったナァ。
今度の大阪の万博も楽しみだネェ~…ウソこけ!
アレから53年…「人類の進歩と調和」は実現したか?
否、デジタル・テクノロジーとやらの出現で人類はますますアホになり、有益な古来の文化文明を切り捨て、いまだに世界中でいさかいが絶えることがない。
人類の知性は明らかに退化しているといえまいか?
★LIKE OMIGOD!:THE 80's POP CULTURE BOX(2002) / Various Artists
今度は80年代をまとめた7枚組ボックス。
私に書けることはナニもない。
★WHATEVER : THE 90's POP & CULTURE BOX (2005) / Various Artists
更に90年代のボックスセット。7枚組。
ヒップ・ホップ系の音源が入ってきて、こうなると私は最早近寄ることもニオイをかぐことも出来ない。
★THE BRIT BOX (2007) / Various Artists
The Smith、Cocteau Twins、The Cure等、コチラも私には終生縁がないであろうUKインディーズ、シューゲイズ、ブリット・ポップの音源を集めたRhinoの4枚組ボックス・セット。
そういえば、今ニューキャッスルの名門バンド、Geordieでギターを弾いている友達のスティーブに「日本にはUKロックという言葉がある」なんて話をしたら、少々ムッとして、「そんな言葉はない!UKのロックは『British Rock』というんだ!」と真剣な顔をしてい言っていたっけ。
イギリスの電話ボックスの意匠が楽しい。ロンドンに行くと未だにこの赤い電話ボックスを見かける…と言いたいところだけど、もう4年も入っていないからナァ。
もう全部取っ払っちゃったかも…。
★THE BIG OL' BOX OF 60's SOUL (1997) / Various Artists
60年代のソウルの音源を集めたCD6枚組のコンピレーション・ボックス・セット。一瞬EP盤が同梱されているのかと思ってしまうが、コレはデザインを模したCD。
値段のステッカーまで貼られている。同梱の146枚のトレーディングカードには60年代のソウル/R&Bシンガーの情報が記載されている。
好きな人は思わず「SHOUT!」ですな?
私はいいや…ソウル/R&B/ファンク/ブルースは全く受け付けないから…。
上の方に書いた『荒行』もそうした黒人音楽のソーンはパスさせてもらった。
★70's THE SOUL EXPERIENCE (2001) / Various Artists
続いて70年代のソウル音源を収めたCD6枚組セット。
顔ぶれを見てもサッパリわからん!
でもコレも装丁がゼイタクでいいよね~。
Rhinoさんはソウルをヒイキしてるんじゃないだろうな?
★PURE GENIUS (2005) / Ray Charles
ポータブル・レコードプレイヤーの意匠がステキなレイ・チャールズのボックス・セット。
CD7枚組。以前、長野に住んでいた時、来日したレイ・チャールズがナゼか長野でコンサートを開いた。
もう30年位前の話ね。
彼は長野市で2番目に高級とされていた「犀北館」という古いホテルに投宿した。
当時、私は長野の権堂という繁華街にあったパブでハコバンをやっていて、そこにアルバイトに来ていたオーストラリア人の女性の友人がいた。
当時、地方には英語をしゃべることができる人も少なく、その友人が長野滞在中のレイ・チャールズの通訳に選ばれた。
それで後に少し話を聞いたのだが、何でも「とてもアタマの良い人だった」としきりに言っていた。
食事の時、トレイに乗っているモノをすべて説明するそうで、例えば「2時の方向にバター」、「6時の場所にトースト」、「10時の方向にサラダ」のように説明すると間違いなく1回で全部頭に入れてしまうというのだ。
「ホ~!」と思いましたよ。
その時から20年ほど経って田川ヒロアキさんと親しくなった。
彼とイッパイ行く機会もたびたびなのだが、その都度レイ・チャールズのことを思い出す。
というのは、マネージャーの奥さんが食事を始める前に必ずテーブルの上のモノを説明するのだ。
例えば「2時の方向にぼんじり」、「6時の場所に砂肝」、「10時の方向に手羽先」といった具合。
ヒロアキくんはそれをジッと聞いていて、いとも簡単に1回で全部覚えてしまうのだ。
「コレはナンだったっけ?」なんて言っているのを一度も見たことがない。
私なんか食卓に乗っている頂きモノが「誰から送って来た」と何度聞いても忘れてしまうというのに!
★ONE KISS CAN LEAD TO ANOTHER (2005) / Varius Artists
女性アーティストの音源をコンパイルした4枚組ボックス・セット。
道理でオシャレなワケだ。CDのケースがコンパクトにしたアイデアが秀逸!★ONCE IN A LIFETIME (2003) / Talking Heads
3枚のCDとDVDで構成したTalking Heads初のボックス・セット。
1976~1992年までの音源が4時間分収録されているそうだ。横長のブック形式のデザインが珍しいね。
このバンドも私はチョットわからないんで…以上。
★Cabinet OF CURIOUSITIES (2009) / Jane's Addiction
Jane's AddictionのCD3枚組+DVDのボックス・セット。
「好奇心の戸棚」か…それを開けるとナンジャラホイと。
このチームは確かレッチリのデイヴ・ナヴァロがいたところでしょ?
それしか知らなくてゴメンね。
★NINE LIVES (2006) / Robert Plant
CD9枚にDVD1枚を加えたロバート・プラントのボックス・セット。
かつてエアロスミスもモチーフに取り上げていた「Nine Lives」。
コレは「ネコ」のことだよね。猫は9回も生きちゃう。
つまり「しぶとい」ということ。
展示て「危機を脱する能力」とか「サバイバル能力」と解されることもあるそうだ。コレで全部おわり。
<前編>の冒頭に書いたが、現在はまだクローズしているMJG。
再開が待ち遠しい。
詳しい情報はコチラ⇒公式ウェブサイト(株式会社 金羊社)さて、最後に…。
このレコード・ジャケットを提供しているのは先ほどから何度もお名前を拝借している日本屈指のコレクター、植村和紀さん。
これまでにも何度かMarshall Blogにも直接ご登場頂いてきた。
植村さんのコレクションの情報はコチラ⇒The Amazing Uemura Collection~Music Jacket Galleryの源
その植村さんが西荻窪で経営されているカフェがその名もズバリの『MUSIC JACKET GALLERY』。
時折ココでしか聴けないライブも開催している最高の音楽空間。
やさしい植村さんが笑顔で迎えてくれます。
音楽好きの方はゼヒお立ち寄りください!
MUSIC JACKET GALLEYの詳しい情報はコチラ⇒公式Twitter
◎マーブロの過去の記事が一発で探せる!◎
Marshall Blogの索引『Marshall Blog INDEX』を作りました。
通称「マー索くん」。
過去2,200本に上る記事のタイトルすべてをアーティスト順やカテゴリー順に並べ、リンクを施しました。
MJGの過去の記事もコレで一発検索!
調べごとに利用するもよし、マーブロ・サーフィンするもよし、ゼヒご活用ください!
マー索くんはコチラからどうぞ⇒Marshall Blog INDEX
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左の列から行~っちゃって。
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