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2018年6月19日 (火)

ガンバレ若いの!~Jekyll★RonoveとFate Gearの新譜

 
今日は伝統のハード/メタルのサウンドを継承している若手チームの新譜を2つ紹介する。
 
まずはJEKYLL★RONOVE。

105月に発売されたばかりの『ONENESS』という3曲入りのミニ・アルバㇺ?…コレはシングルっていうのかしらん?
1曲目はヘビィ・チューン、「Go Hand in Hand」。
まず…ギター・リフで始まるのがうれしい。
そして、JEKYLLの少し鼻にかかった、相変わらずの魅力的な声。
N★OTOくんはボトルネックまで披露するという力の入れようだ。
2曲目は以前からのレパートリーでほぼ英語詞の「Stay with me」。
もちろんFacesのアレではなくて、シリアスなバラード。
テレビ・ドラマの挿入歌に採用された「Always~The answer is blowin' in the wind~」もうそうだけど、このバンドはバラードが得意だね。
この「声」だもんな~。ボーカルズをジックリと聴かせる曲には一日の長がある。
3曲目はストレートなドライビング・チューン「UNCOVER」。
私はこのチームに70年代のトラディショナルなハードロックに現代テイストを融合したサウンドを期待しているんだけど、今回の作品はトラディショナル風味が後退してややポップな仕上がりかな?
でも、「UNCOVER」なんて、このバンドの魅力が十二分に発揮されていると思う。

20cd随所で活躍するN★OTOくんのギターはMarshallがお供をしている。
Silver Jubilee 2555Xと1960BVだ。

30v先日の「Marshall Dinner」でもジョン社長にシッカリとこの作品が手渡され、ユーラシア大陸を横切り、ドーバー海峡を渡り、ロンドンからM1を走って、ブレッチリ―のMarshall本社の社長室に無事輸送された。

40それと…すでに2018年も真ん中まで来ちゃったけど、JEKYLL★RONOVEは今年カレンダーを作ったのね。
それに私が撮った写真をたくさん使ってくれたのです。

50いつも言ってるけど、やっぱり自分の撮った写真がこうして何かの形になるのはとてもうれしいね。

60去年、確か2回しかJEKYLL★RONOVEを撮影するチャンスがなかったんだけど、うまい具合にお気に召す写真を探してくれた!

70これからもJEKYLL★RONOVEには、今まで通りのトラディショナル・テイストをフィーチュアした自分たちだけのハードロック・サウンドづくりを目指してもらいたい。

JEKYLL★RONOVEの詳しい情報はコチラ⇒official site

80 
続いてはFATE GEAR。

90FATE GEARからはMina隊長とドラムスのHarukaちゃんに代表してMarshall Dinnerにご出席頂いた。
やはり同じルートでCDとライブDVDが地球の裏側まで運ばれて行った。

100コレが4月に発売された『7 years ago』。
FATE GEARは運営方針を変更して「多人数制プロジェクト」方式を採用。
前作から1年を待たずしての早いテンポのリリースとなった。
パンフルートのような木管の音色に導かれる壮大な序曲でスタートするこのアルバム。
そして、炸裂するメタル・サウンドはビデオも制作されたタイトル・チューン「7 years ago」。
この張り裂けんばかりのメタル・ヴォイスは誰?大山まきちゃんだ!

108_s41a0117 続いて地を這うようなベースが印象的な「心葬」。
1曲目とはガラッと変わるフェミニン・ヴォイス。
コレが「多人数制プロジェクト」の面白いところ。
歌い手がコロコロ変わることによってアルバムの仕上がりが散漫になるかと言うと、さにあらず。
まるでミュージカルのサウンドトラックを聴いているかのような、コンセプト感のようなものが表れてるんだな。
この辺りはほぼ全曲の作詞&作曲を手掛けるMina隊長の手腕によるところなのだろう。
もちろん隊長はギターでも大活躍だ。
ロック・バンドは「ライブ」という宿命を背負っているが、CDとライブの演奏が驚くほどかけ離れている若いバンドも少なくない。
もうYesの時代とは違うのだ。
よって、この作品のように人材の枠にとらわれず。スタジオ・アルバムをひとつの「創作物」としてジックリ作り込むのも面白い。
「スタジオでの音作りに集中する」というのは何のことはない、『Revolver』以降のビートルズと同じゃんね。
全9曲、バラエティに富んだガール・メタル・サウンドにあふれかえっている。
ジャケットは前作に弾く続いてHaruka画伯の作品。

110cdCDのジャケットには私が撮った写真を色々と使って頂いているのだが、メンバーでそこに出ているのは隊長だけ。
代わりにこんな写真集を作っちゃった。

120実はですね…コレを撮影した日はアーティスト写真を撮るのが目的だったのね。
こういうヤツ。

125v

126v

だから、このフォト・ブックに掲載している演奏シーンの撮影はオマケ的なモノだったのね。
だってメッチャ暗い上に煙モクモクで、どう見てもスチールを撮るような環境ではなかったのよ。

130それでも皆さん一生懸命やってるし…。

140で、手が空いた時に強引にシャッターを切った。

150何しろ暗いもんだからツライ、ツライ!
日頃のライブ撮影でで暗い現場には慣れてるけど、ズッと暗いってことはないからね。

160それでもレンズを向けられているのがわかるとErika様なんかはカッチリとポーズを取って協力してくれたりしてサ。
なんでガンバってみた。

170最終的には、よくもこんなにうまく作ったな~、と仕上がりを見て感動してしまった次第。
隊長、どうもありがとう!
このフォト・ブックもイギリスへ渡りましたとさ。

180なかなか戻って来ないね。
ナニが?って、ハードロック/ヘヴィメタルのトレンドがサ。
でもね、どんなに時代が変わったとしても、いつまでも今のままではないと思うよ。
そう願って早20年経ってしまったけど…。
でもソロソロだよ。
その時まで、とにかく皆さんの信じる音楽をMarshallとともに最後まで続けて行ってくれることを願っている。
ガンバレ若いの!
  
FATE GEARの詳しい情報はコチラ⇒FATE GEAR official site

190

200

(一部敬称略)

2018年3月12日 (月)

FATE GEARのニュー・アルバム『7 years ago』

 
美しいステンド・グラス。
ステンド・グラスってのはいいよね。
宗教的な関わりを持っていなくても、見る者を何となく清廉な気持ちにしてくれる。
でも、ステンド・グラス、すなわり「Stained Glass」の「stain」ってのは単語としては「汚れ」という意味なんだよ。
「Stained」なんてバンドもいるね。
もちろん「Stained Glass」の「stained」の方は「着色された」という意味ね。

10教会は結構スキ。
ロンドンを歩いていて名も知らない古い教会に出くわした時、チョコッと覗くだけでも大変に心が落ち着くものだ。
そういえば、コレも以前書いたことがあったけど、ニューヨークの5番街にある有名なセント・パトリック教会に早朝に行った時のこと、キチっとネクタイを締めた出勤前のビジネスマンが何人も来ていて朝の礼拝をしていた。
ひとりのサラリーマンがベンチで寝ているホームレスを見つけると、無言で財布を取り出し、スッとお札をそのホームレスの上に置いて、そして、あたかも何事もなかったかのように黙って教会を出て行った。
その時、「コレが『mercy』ってヤツか…」とそのステキな光景を目の当たりにして、朝早く教会を訪れた価値があったワイ…と思ったが、フト、「果たして自分にはコレができるだろうか?」と自問自答したね。
まずしないし、できないだろうナァ。
ついでに書くと、コレもビックリしたんだけど、ホームレスがマクドナルドに入って来て、テーブルに付いてすぐさまテーブルに突っ伏して居眠りをしてしまった。
それに気づいた店員がスススとそのテーブルに近寄って来た。
私はテッキリ「出て行ってください」と追い出すのかと思った。
ところが、その店員の手にはあたたかいコーヒーが握られていて、そのテーブルに突っ伏して寝ているホームレスの頭の横にそのコーヒーをそっと置いて、ナニも言わずカウンターに中に戻って行ったのだ。
コレも結構驚いたな…映画を観ているんじゃなくて、目の前で、しかも音楽もナニもなしに無音で起こった小さなドラマだったから。
アメリカって「国」は全く狂っているけど、「人」は捨てたもんじゃないんだよね。
ま、どこも同じか…。

20立派なパイプオルガンだぜ!

30「あ~、どうせまたロンドンの教会で撮って来た写真を載せて『今日は名所めぐり』じゃないんだけどね~、なんて言うんだろ?」なんて思ってるでしょ?
45違うんよ。
敢えて場所は伏せるけど、コレ、東京の隣県の街中にある教会なの。
ビックリするよ。

40外から見ると何の変哲もない近代的なビルディングなのね。
でも、中に入って階上に上がると、4フロア分や5フロア分は優にあろうかという巨大な吹き抜け構造になっていて、そこが美しい教会になっているのよ。

1_img_0007 その祭壇にセットされたのがコレ。

50v今回ココにMarshallファミリーのギアが運び込まれたのは、FATE GEARのニュー・アルバムのリード・チューンのミュージック・ビデオを撮影するためなのだ。

240実はFATE GEARはチームの形態を大幅に変更した。
どういうことかというと、4人のコアとなるメンバーはそのままに、必要な人材を都度エキストラ的に迎える、いわゆる「プロジェクト」方式に移行した。
「Steely Dan式」と言えばわかりやすく思う人も多いかもしれない。
その「クルー」と称するメンバーとは…
 
ギターはMina隊長。60vベースはErika。

70vキーボーズはYuri。

80vそしてドラムスはHaruka。

90v教会の祭壇にセットされたのはJVM410Hのフルスタック。

100vEDENのWTP-600とD410XST。

110vさらにNATALのアッシュのツイン・バス・ドラムのキット。

120ペダルやスローンもNATALだ。
ムービーには一切映らないんだけどね。
ここまで気を遣うところがスゴイ。まるで黒澤明だ。
黒澤明は『赤ひげ』で、中を一切撮らないにも関わらず、薬箪笥の引き出しにホンモノの薬を入れて撮影したという。
リアリズムが違って来るのだそうだ。

130vコレは隊長の使用楽器。

150さすが、ギアだらけになってる!

1_20r4a3570 コチラはErikaさまの愛器。

160Yuriちゃんの楽器もこんな調子だ。

170Harukaちゃんはこんな感じ。

1_0r4a3651 さて、今回撮影するのは4月にリリースが予定されているニュー・アルバムに収録されている「7years ago」という曲だ。
コレが曲と同名のニュー・アルバム『7 years ago』。
我々世代はロジャー・ディーンを連想せずにはいられないタッチ。

180cdこのイラストを描いたのはドラムスのHarukaちゃん。

190vファースト・アルバムのジャケットのデザインもHarukaちゃんの手によるもの。
コレが出た時、「ジャケットがいい」って書いたでしょ?
本人に尋ねたら、ホラね、Harukaちゃんは正式に美術の教育を受けているんだって。
やっぱりその道をキチンと勉強した人の作るモノは一味違うもんよ。

200cd歌詞カードの背景にはムービーを撮影した教会の写真があしらわれている。

210

220で、私はというと、上のアーティスト写真とイメージ写真の撮影を担当させて頂いた。
それがサ、また例によって時間がなくて大慌てで撮ったのよ。
ムービーの撮影が終わったところで照明をセットして、光をキメて…。
メンバーの皆さんには転換の時間を省くために近くで待機をしてもらっておいて、次から次へと超特急で撮影した。
下の写真もしかり。
隊長にとにかくジッと立ってもらっておいて、あの手この手でシャッターを切りまくった!
「30分で!」というのははじめから不可能だったのはわかっていたけど、大分早く片づけた。今までで一番大慌ての現場だった。
メンバーの皆さん、ご協力ありがとうございました。
すごくいいロケーションだったので、時間さえあればもっと色々やってみたかった!
でも、面白かった。

230cd さて、肝心のムービーの方。

240_2 今回歌声を聴かせてくれたのは…
Manamiと…

250v荊(いばら)のふたり。

260vさらにヴァイオリンのJillが加わった。
私はプログレ愛好家なのでヴァイオリンが入ったロックって好きなんだよね~。

270vJillちゃんの愛器もギアだらけ!
駒の辺りが光ってるんだぜ!

280vいきなり「♪惨劇の鼓動」という絶叫から始まるこの「7 years ago」。
はじめ聴いた時ビックリして飛び上がっちゃったよ!

290FATE GEARらしい息もつかせないスリリングなスピード・チューン。
中間のギター・ソロの落ち着いたプレイが印象的だった隊長。

300v頭を上下左右に振りきっての大熱演はHarukaちゃん。
こういう仕事はドラマーさんが圧倒的に一番大変な目に遭います。

310v「多人数制プロジェクト」という触れ込みに生まれ変わったということだが、こういうのもいいのかもね。
アルバム制作に関しては、その都度、画家が必要な色の絵の具を選ぶようにミュージシャンを選んで理想とする音楽を作る。
ソロ・アーティストというのはそういうモノだけど、グループでやったっていいじゃない。
昔はバンドというのは「運命共同体」という体をなしていたが、今はひとりのミュージシャンはいくつものバンドを掛け持ちしているのが普通だもん…もうこんな形態があってもおかしくはない。
そもそも、レコーディング技術の発達により、「CDとライブでの生の演奏がまったく別モノ」なんてのは常識になってしまったのだから、『Revolver』以降のビートルズのように、ライブでの再現性を考えずにスタジオの制作物に徹底的に凝るのもいいことだと思う。

320v爆音の向こう側から聞こえて来るヴァイオリンの音色がいいんだよね~。
ヴァイオリン1本あるのとないのとでは曲の印象がガラリと変わるから不思議だ。

340隊長の後を引き継いで華麗なソロを聴かせるYuriちゃん。

330スゴイんだよErikaさまのアクションが!
以前観たライブの時もそりゃスゴかったけど、この撮影でもスゴかった。
当然何回もテイクを重ねるワケなんだけど、毎回燃え尽きそうな激しい動きで曲のドラマ感を豊かにした。
430vManamiちゃんと荊ちゃんのコンビネーションもバッチリ!

360ところで、この多人数制、アルバムでは大山まきちゃんが筆頭シンガーとして、4曲であの激ノドを披露しているのがうれしい。
まきちゃん、カッコいいでね~。

370vそして、ナタ友でもある山口PON昌人氏もアルバムにコメントを寄せてくれている。
私はPONさんの紹介でまきちゃんを知った。
広がるね~、Marshallファミリーの輪!

380vハイ、休憩!
お仕事とはいえ大変ですよ、同じことを何回もやるってのは。
でも、同じことを同じように何回もできるのが「プロフェッショナル」なんですよ。
私には到底ムリ!

390そしてまた気を撮りなおして~「♪惨劇の鼓動」!

400そして出来上がったのがコレ!
アルバムが発表されるまでの間、このムービーで新生FATE GEARとMarshall、NATAL、EDENとのコラボレーションをお楽しみアレ!

FATE GEARのニュー・アルバム『7 years ago』は4月11日の発売。
ひと足先に聴かせてもらったけど、壮大な序曲「Prelude of Earth」に始まるFATE GEARの新しい世界は「多人数制」の利点を活かし、しかも、Mina隊長を中心にしたバンドのコンシステンシーが最後まで貫かれている一大ガール・メタル・アルバムに仕上がっている。

450 FATE GEARにはもうドンドン好きなことをやって暴れまくってもらいたい!
MarshallとNATALとEDENと一緒にね!

410v来る3月22日は初台DORRSで開催される「闘魂地獄祭り~第9獄~」に出演。

420v他にもアルバムのリリースに向けて色々なイベントが予定されているので、ウェブサイトをチェックして欲しい。

1_s41a0220 がんばれFATE GEAR!
とにかく続けてね!

440FATE GEARの詳しい情報はコチラ⇒FATE GEAR official site

1_img_0017 

200
(一部敬称略 2018年1月撮影)

2018年2月22日 (木)

LOUDNESS Special Live 2017~ATLANTIC YEARS~"MILESTONE" <前編>

 
「騒然としている」っていうのはこういう時に使う表現なんだろうな…。
LOUDNESSがニュー・アルバムを発表して日本のロック界が騒然とさせているのだ。
いくつかのロック雑誌では、メンバーへのインタビューなどは当然のこととして、いち早くニュー・アルバムでの高崎さんのギター・プレイを解析したり、全収録曲に関するアンケートをメンバーから答えてもらったりと、もうメディアも「お祭り騒ぎの様相を呈している」と言っても過言ではなかろう。
そりゃLOUDNESSだからね。
私事ながら、YOUNG GUITARさんの誌面では、私が昨年末に撮影したライブ写真を多数ご使用頂いており、鼻タ~カダカなのだ。

01 そして、ギターも!
最近あまりにもショックなニュースがギター界を駆け巡っていて暗澹たる気分になってしまうが、やっぱりナニがどうなってもギターはカッコいいものだよ。
一体どこからリフやギターソロがなくなってしまい、ジャンジャカやるだけの楽器になってしまったのかは知らないが、ギターはロックバンドの花形楽器でいなければならないし、「カッコいいモノ」と相場が決まっている。
そのカッコよさを高崎さんやLOUDNESSの音楽を通して体感してもらい、ギター人口が増えることを願って止みませんよ。
そして、ロック・ギターを志すからには必ず真空管のアンプを使って演奏して欲しい。
つまりMarshallでギターでギターを弾こうよ!…ということ。
高崎さんご愛用のギター、Killerさんの雑誌広告。
う~ん、この高崎さんもいい写真だ!ご採用ありがとうございます。

1_2img_2892 コレがそのニュー・アルバムの『Rise to Glory -8118-』。
今回、レコードも含めて色々な仕様でリリースされたが、私が持っているのはCDとDVDのセット。
CDの方にははもちろん皆が待ちに待った新曲がズラリと並べられている。
一方、DVDの方は2016年の年末に開催されたファンの人気曲で構成したコンサート『FAN's BEST SELLECTION~We are the LOUDNESS~』の模様が収められている。
この時もオフィシャル・フォトグラファーとして参加させて頂いたので、チラリチラリと私が映っちゃっているけどゴメンなさい。
私は光栄です。
オープニングのイメージ映像を経て「Ghetto Machine」から「Crazy Doctor」まで人気曲がウハウハのテンコ盛り。
その時のMarshall Blogの記事はコチラ<前編>とコチラ<後編>。
02そして、『Rise to Glory -8118-』。
このアルバムは2014年の『The Sun will Rise Again』以来、4年ぶりのオリジナル・アルバムとなるそうで、間に『Samsara Flight』他の記念アルバムのリリースはあったにせよ、4年のインターバルというのはLOUDNESS史上最長なのだそうだ。
アレから4年も経ったのか…ゼンゼンそんな感じがしないな。
  
まずジャケットを見る。
雷光を蓄えたLOUDNESSロゴの暗雲の下に浮かぶ世界のランドマークのシルエット。
シドニーのオペラハウス、シンガポールのマリーナベイサンズ、タージ・マハール、ピザの斜塔、北京の天壇公園、富士山に東京タワー、凱旋門にアンコールワット、自由の女神、ロンドンの国会議事堂にピラミッド。
雷門も入れて欲しかったけど、背が低いからムリですね?
そして、タイトル・チューンで二井原さんが歌う。
「♪From the Far East, we came to conquer across the seven seas」…もうジャケットとこの一節でこのアルバムを説明しきっているでしょう。
03LOUDNESSのアルバムを聴くと、新旧を問わず、やっぱり海外のバンドの香りがするんだよね。
私なんかには14歳の時に聴いたイギリスのハードロックたちと共通のものを感じる。
今回もそう。
「日本人離れしている」とかいう言い古された形容では決してなくて、LOUDNESSの中から自然に出て来るモノが世界が求めているモノということなんだね。
でもね、私は勝手ながら「Speed」だとか「S.D.I.」スタイルのモノスゴくハードな曲が詰まったアルバムになることを想像していた。
イヤ、何の根拠もない、オッサンのただの想像ですよ。
ところが、聴いた途端その想像が正しいモノだったことを知った。
わかりやすくて、聴きやすくて、やたらと楽しかったのだ。
しかし、楽しいだけではなくて、威厳に満ち溢れているのだ。
続けて3回聴いたわ。
とにかく曲がいい。
種類で分ければ同じ「ヘビィメタル」ということになるのかも知れないが、今の若い人たちが演っている類のモノとは全く別のモノ。
それにしても高崎さんのギターのスゴイこと!ソロもテンコ盛りで聴きどころばかりなのは当然なのだが、バッキングがまたスゴイんだよね。
まるで歌を歌っているようなのだ。
高崎晃信奉者にもタマらない作品になったことだろう。
そうそう、ひとつ不思議だったのは3曲目の「I'm Still Alive」のエンディング。意表を突くフェイドアウトには驚いた!
もちろん今回も二井原さんのスーパー・ヴォイスは絶好調なんだけど、最初と真ん中に差し込まれた2つのインスト曲もスゴク好き!
3月には国内でにツアーが予定されているが、これらの曲を生で聴くのが楽しみだね~。
ところで、聞けば今回のアルバムは世界同時発売で、Deep Purpleとレーベル・メイトになられたとか!

1_rtg 「8118」という新メトリックな数字はデビューの1981年から現在の2018年ということね?
この数字については少し後でもう一度触れる。

1_img_2887_2さて、時間軸を少し戻す。
LOUDNESSの4人は、前年に引き続いて2017年も最後の最後に六本木のEXシアターのステージに立った。
『LOUDNESS Special Live 2017~ATLANTIC YEARS~"MILESTONE"』と銘打ったプログラム。

10「Milestone」と聞くとどうしてもね~…コレです。
Miles Davisの『Milestones』。
で、ですね、面白いことに気がついた。

1_51vuw8ty3ylメッチャどうでもいいことなんだけど、Miles Daivsは1968年ぐらいから急速にロックに傾倒し出して、1969年の『Bitches Blew』というアルバムで今で言うフュージョンの基礎のようなモノを作り、70年代に入るとギンギンのロックを演るようになった。
Blood Sweat & TearsやGreatful Deadの前座をやっていたんだから。
そのロック分野への移行の先駆けとなったのが下のアルバムに入っている、Ron Carter作の8ピートのブルース。
Milesはこの曲で生まれて初めて8ビートの曲を録音した。
曲のタイトルを「81」という。
ね、「8118」と絡んでくる。
「81」、メッチャかっこいい曲です。
そしてアルバムのタイトルは「E.S.P.」。
この符合、おもしろいね~。
「18はどうなんだ」って?
もちろんAlice Cooperでしょう。
まったくどうでもいい話だけど、私はこういうことを考えるのが大好きでしてね。

Espさて、今回は1985年発表の『Thunder in the East』、1986年の『Shadows of War』と『Lightning Strikes』、さらに1987年の『Hurricane Eyes』から選んだ曲を演奏するというゴージャズなショウ。
歴史がなければできませんからね、こういうのは。
また歴史ばっかり長くてもどうにもならない。
「充実した歴史」があるからこそ実現するコンサートなのだ。
20ステージ脇で出番を待つ高崎さんの愛器たち。

30v今回、一番多く使用頻度が高かったのがコチラ。

40vステージにはMarshallの壁!
LOUDNESSのライジング・サン・ロゴが実にシックリ来る。
双方世界のロック・ステージでよく知られた顔だ。

50vジトッ…開宴時間が近づき、会場内の空気の温度が少し上がった音。

1_img_0060 そしてオープニンSEに包まれてLOUDNESSがステージに登場した!

90二井原実

100高崎晃

110v高崎さんのお供。
世界がうらやむ高崎サウンドの発信源。
JMP-1ってのは世界的な大ヒット商品になったけど、日本ではナンダカンダ言って、「高崎晃の音がJMP-1」という向きがあまりにも強いよね。
こないだのNAMMでもどこかの外人に訊かれたわ。
高崎さん音が出るんであれば、ロックギターを志す人であれば誰でも欲しくなっちゃうよね。
ゴメンね、もうとっくの昔に生産終了してるの。

120v足元のようす。
右上に初代Gun'norの姿が見える。

130背後にはMarshallの壁だ。

140山下昌良

150v鈴木政行

160vまずは『Thunder in the East』のセクション。

175cdいきなり「Crazy Nights」!

01_0r4a2627 そりゃノッケから盛り上がるにキマってるのヤツ。

180アオる二井原さんに反応しないお客さんは皆無だったハズだ。

190vそして、高崎さんのソロ!
何回観ても気分爽快ですな。

200vこのイントロのメロディの1小節だけでドカンですわナァ。

220そのまま続けて演奏したのは「Like Hell」。

210_lhステージの下手からは山下さんの重低音が会場を征服しようとしてるし…

230後ろの方ではアンパンさんが猛プッシュしてくる!

250もちろん「Like hell」のところは大合唱ね。

01_0r4a1982 次の曲もイントロで「ガッチリ!」の1曲。
高崎さんの美しいアルペジオに…

260_hc二井原さんの歌がもの悲し気にかぶさってくる。

280v「Heavy Chains」だ!
ヘヴィ12ビートの極致。01_0r4a2380私はこの曲がすごく好きなんだけど、ファンの人気投票には入ってこなかったんだよね。
こんな曲、普通日本人は作らないでしょう?
文句のつけようがない歌のメロディ。

270そして、パート、パートにあまりにもピタリとハマる高崎さんのギター。

01_0r4a2626 最高にカッコいい。
ここのところしばらく取り上げられなかったので今回「Heavy Chains」が取り上げられてうれしかった。

01_0r4a2066 MCを挟んでまだ続く『Thunder in the East』セクション。

300_wcbtあと2曲選ばれたのは…まず「We could be Together」。
ん~、ナント内容の詰まったソロよ!
こんなにハードなのにメロディアス。
でもメロディアスなのに甘くない。
360v『Thunder』からのもう1曲は「Clockwork Toy」。

320v_cwt疾駆するストレートなドライビング・チューン。

330そして、煙の出るような高崎さんのソロ。
ゴメン、曲といい演奏といい、やっぱり日本人離れしてるわ。

365ココからは『Shadows of War』のセクション。

366cdステージの照明が落ちて、ドラムスのライザーに腰をかける高崎さんが浮かび上がる。

370v_sow美しいタッピングの音色。

380v曲はタイトル・チューンの「Shdows of War」。

390v続けて「Let it go」。

400前曲とは雰囲気がガラリと変わる。
みんな大好きな「let it go」だからね。

410_ligココなんだよねLOUDNESSのスゴイところって。
つまり…

446_bso曲のクォリティが高いのは毎回書いてる通り。
自分が作ったワケでもないのにエラそうに書いちゃって恐縮なんですけど…。

430で、LOUDNESSって「これさっきと同じ曲じゃないの?」とか「コレさっき演らなかった?」なんて曲がないでしょ?
それぞれの曲すべてが強い個性と存在感を持っているの。
2時間なら2時間、ずっと同じ曲を演っているように聴こえるバンドってあるからね。
特に若いメタル系のバンドさんを見ているとそういうことが起こりやすいように思う。340LOUDNESSの場合は、それぞれの曲が丸っきり異なる顔や身体をしているんだけど、曲についている名札がすべてLOUDNESSというところがスゴイのね。
こういう所が海外のバンドっぽいワケよ。
「Let it go」も「」In the Mirror」も「Speed」も「So Lonely」もLOUNDNESSという地続きの大陸にあるんだけど、異なる文化を持った国々なんですよ。
だからLOUDNESSの旅は飽きない。

447そんなつまらない理屈こそ「Let it go」か…。

170_cn「速い曲を演りますよ!」と『Shadows of War』のセクションを締めくくったのは「Black Star Oblivion」。

02_s41a0560 ね、イントロといい、中間部のキメといい、他の曲とはまた違う雰囲気なんだよね。
そして、この「♪Black star oblivion」のリフレインは一度聴いたら忘れない。

1_s41a0162ところで…
 
高崎さん、お誕生日おめでとうございます!

あたかも狙ったかのように今日LOUDNESSの記事をアップしたけど、高崎さんのお誕生日だと気がついたのは数十分前のことで、丸っきりの偶然なのです。
2月22日…そういえば大分前に高崎さんと「CATCH-22」の話を昔したことがあった。
久しぶりだからやっておくと、「CATCH-22」というのは、ジョセフ・ヒラ―というアメリカ人が書いた小説ね。
アメリカ空軍の軍規の第22項に「頭が狂ってしまった者は自らが請願すれば除隊することができる」とあるが、「頭が狂ったと自分から言い出す者は、頭が狂っていない証拠」とされていて、つまりは軍隊を永久に辞めることができないというパラドックスを表現する言葉。
まだアメリカに徴兵制度があった1961年の小説だからね。
この小説の評判がよく、アメリカでは「矛盾している状態」を指す時に「Oh, it's a catch22, right?(アレ、それって矛盾してるじゃん?)」などと日常会話のひとつの表現として定着したらしい。
私が英語で説明する話はいつも矛盾だらけのハズなんだけど、不思議と外人がコレを口にするのを聞いたことはない…もう今は使われない表現なのかな?
今度Marshallの誰かに試してみようかと思ってる。
残念ながら私は観てないのだが、「CATCH-22」は映画化もされていて、私が小学生の頃に名画座でかかっていたのを覚えている。今クレジットを見ると、その超豪華キャストに驚くよ。監督はマイク・ニコルズだし…ということでAmazonにお願いしました。
しかし、高崎さんも2月生まれだもんな~。
昨日までMarshall Blogでレポートしていた2月生まれのミュージシャンが集まるチーム、THE FEBに参加したら面白いだろうなナァ。

310LOUDNESSの詳しい情報はコチラ⇒LOUDNESS Official Website

460<後編>につづく
 

200 (一部敬称略 2017年12月28日 六本木EXシアターにて撮影)

2017年10月25日 (水)

田川ヒロアキ『THEME PARK-テーマ・パーク-』を100倍、イヤ10倍、イヤイヤ1.5倍ぐらい楽しむ <後編>

 
田川ヒロアキ『THEME PARk-テーマ・パーク-』の裏ライナー・ノーツの<後編>はジャケットのお話から…。
その前に…<前編>の「維新の言霊」のところに登場した「シリモンコン・ルーパスパット」さんというのは一体誰なんだ?という質問が多数寄せられているので(ウソこけ!でも本当に何人かに訊かれた)、ココでお答えしておきます。
実は、私もわからないんです。
コレは中学2年の時に、いいヤツなんだけど不良で通っていたクラスメイトの大鹿くんがいつもこの言葉を口にしていたので、意味も知らずに自然に覚えてしまったのよ。
子供ながらに音の響きがおもしろくて、40年経った今でも忘れられないでいるのです。
そういえば一度だけ大鹿君と有楽町のLo-Dブラザへ行ったことがあったナァ。
大鹿くんは他に「チャチャイ・チオノイ」のこともよく話していたので、もしかしたらムエタイかなんかで「シリモンコン・ルーパスパット」という選手が実在したのかも知れない。
チャチャイはWBCで2回、WBAで1回、それぞれフライ級の世界チャンピオンになったタイのボクサー。
大分前に、シリモンコンのこともインターネットで調べてみたのだが、手掛かりがつかめなかったのだが、今回を機に、念のためにもう一度調べてみると、エエッ?!
1997年のWBCのバンタム級の世界タイトル戦、辰吉丈一郎の対戦相手が「シリモンコン・ナコントン・パークビュー」というタイの選手だって!
すると、「シリモンコン・ルーパスパット」という人も実在した可能性は高いな…。
あ、コレ以上の情報は頂かなくて結構です。
シリモンコン・ルーパスパットは謎のまま、大鹿くんの思い出と一緒に胸にしまっておきます。
ちなみに、数学の先生のアダ名は「チャチャイ」だった。
チャチャイ・チオノイを知っているヤツなんていないに等しいのに、全校生徒から「チャチャイ」と呼ばれていたっけ。
    
話を戻して…ジャケットはコレね。
J10_cdジャケットの話となると、ヒロアキくんのマネージャーであり、ギター・テクであり、人生のパートナーである美瑞穂さんをフィーチュアすることになる。
美瑞穂さんファンお待たせしました!(写真はありませんが、スゴイの見せます)
    
ある日、マネージャーの美瑞穂さんから連絡があった。
電話の内容は、『THEME PARK』のジャケット・デザインを考えているんですけど、何かジャケットのいいアイデアはありませんか?という。
困った時はすぐこのオジさんだ。
ま、こっちもキライではないので、すぐに協力しちゃう。(デジャ・ヴ)
  
実はジャケットのアイデアは『THEME PARK』というタイトルより先に決まっていた。
美瑞穂さんはその電話の時にはすでに腹案を持っていて、こう説明してくれた。
「全国各地から依頼を受けて作った曲のコンピレーション・アルバムなので、いろんな人が田川の周りに集まってるイメージにしたいんですね。動物も集まっちゃうんです。
そして、その真ん中で田川はタクトを手にして、集まったみんなを指揮している…みたいな」
「ふーん、おもしろいじゃん。イラストでやりたいね!」
「そうなんですよ!」
「しからばこんなイメージで、写真とイラストを組み合わせたらどうだろう?」と『メリー・ポピンズ』を引き合いに出した。
「そうです、そうです!まさにこういうイメージ!」
…ということで指針がキマッた。
一応、美瑞穂さんには、簡単なイラストでいいから頭の中にあるイメージを描いておいて!と頼んでおいた。

Mp デザインはどうするか?
すでに美瑞穂さんと私の頭の中には「梅村デザイン研究所」があった。
デザインは梅村さん、モデルはヒロアキくん、写真は私…すなわち『Ave Maria』チームの再結集だ。
J170梅村さんはとても本人のモノとは思えないような最高に可愛くて、上品で、おしゃれなイラストを描く人。
「下町のひとりヒプノシス」を標榜しているが、カル・シェンケルとソール・バスの要素も入ってる才人だ。
残念ながら『Ave Maria』の時はイラストが使えなかったので、美瑞穂さんも私も今作では絶対に梅村さんのイラストが使いたいと思っていたのだ。
J50cd最近の『汚レコード』をはじめとして、梅村さんのことはすでに何度もMarshall Blogで紹介してきた。
Marshallの2010年度版と2011年度版のMarshallの日本語版カタログの表紙のデザインを梅村さんにお願いしたこともあった。
ジョン、デケえな~。
ジョンに会うといつも思うんだけど、ペリーが来航して初めて白人を見た人たちはさぞかしコワかったろうナァ~って。
J40梅村さんは私同様かなりの音楽変態で、Frank Zappaの過去の全演奏を聴くことをライフ・ワークにしている。
その他、ジャズから現代音楽まで、途方もない知識を蓄えていらっしゃる。
そんな梅村さんが一目を置いているのがヒロアキくんの音楽だ。
よって今回も快く仕事を受けてくださり、最高の仕事をしてくれた。

J30まずは素材となる写真の撮影。
美瑞穂さんのコンセプトを梅村さんに伝え、指揮棒を持つヒロアキくんのカットから撮影に入った。
実はですね、ヒロアキくんの撮影って大変なんですよ。
…とうのは「~みたいにして!」というリクエストが一切できないのね。
かつてステージ・アクションの練習をしていて、「不動明王みたいに立ってみて!」と言われたのだが、それができなかった…イヤ、できるワケがない。
「スミマセン!不動明王って見たことないんですよ!」
「あ!そうか!」となる。
「横向いて」とか「ギターを立てて」とかいう単純なリクエストはもちろん正確に対応してくれるが、微妙な調整になると、毎回身体にタッチしてポーズを作ってあげなければならないのだ。
いつも笑顔のヒロアキくんだけど、この日は一日中ヘヴィなニコニコで疲れたと思うよ。
前回は扇風機の風でクタクタになったんだよね。

J130さて、本格的な撮影に入る前に美瑞穂さんのイメージを確認しておく必要がある。
お願いしてあった頭の中にあるイメージのイラストを見せてもらった。
出て来たのがコレ。
一同絶句。
「キラキラ~」はどうしても書きたかったのかな?
しかし、いくら美瑞穂さんが竹を割ったようなキャラでもコレは潔すぎるでしょう!
_j100v特に身体の描写が強烈だ。
コレって…

_j110v目の錯覚のヤツ?
どっちが長いのかな~?
実は同じで~す!
ウッソ~!ってか?

Eyeなるほどヒロアキくんの周囲に人や動物が集まって来てるわ。
ナゼか動物はネコだけ。
しかも、どういうワケか人よりネコの描写の方がはるかに細密だ。
美瑞穂さん、ネコ好きなのかな~。
そんな話聞いたことないな。
あ~、でもネコの身体も「目の錯覚」になってるわ。
イヤもう、<前編>で「竹を割ったような人」と美瑞穂さんを例えたが、このイラストの一撃で竹なんか粉々になっちゃうわ!

_j120vでも、考えていることはわかる。
ひと通り指揮棒を持っている所の写真を撮っておいて、他のカットの撮影に入った。
梅村さんはジャケットサイズの穴が開いた型紙を当ててレイアウトを考えている。

J50「じゃぁ、ギターを抱えてチョット歩いてみて~」

J60「もう一回もう一回!」と何度も何度も同じことをやってもらった。

J65頭の中のイメージに合うカットが撮れていそうだとすぐさま梅村さんのチェックが入る。
梅村さんもジャンジャンイメージを膨らませているのだ。

J90ジャケットに使うかどうかは別にしてアー写も獲っちゃおう!ということで、もう後はやりたい放題。

J160そして出来上がったのがコレ!

_2cdjacあ、違う!
こっちだった!
メッチャ気に入ってる。
こんなジャケット、最近見かけないでしょう?
コンセプトといい、レイアウトといい、色合いといい、フォントといい、写真といい…世界に出してもまったく恥ずかしくない第一級のCDジャケットになったと思っています。
ジャケットは中身を写す鏡ですからね、絶対に軽んじてはならない。
エ、指揮棒のカットはどうなったかって?

J10_cd安心してください。
ブックレット他で採用されています。
ヨカッタね、美瑞穂さん!やっぱりあのイラストがヨカッタんだよ!
それでね、ココでは見せていないけど、ブックレットの中のデザインにも注目してもらいたいの。
各ページがまったく異なるイメージになっていて、描き下ろしのイラストの可愛いさったらないよ。
私の写真もとてもうまく使って頂いた。
見た目と中身の音が完全にマッチした素晴らしいパッケージに仕上がったと思う。J140
あ、それと忘れちゃいけないのがオビ。
梅村さんはオビにも細心の気を配ってくれた。
ちょっとレトロな雰囲気の「テーマパーク」のフォントがいいね。

_spine_2  
それでは今回も収録曲をいとつずつ見ていこう! 

   
  
9. ハンバーグのうた
ボクシングでひと汗流して、KRYで選挙速報を見た後は楽しい夕ごはん。
今日はハンバーグだよ~。
ヒロアキくんは時折「ハンバーガー・ナイト」というイベントに出演してロックとハンバーグの融合という仕事に取り組んでいる。
そのイベントにマッチさせて作ったのがこの曲。
かつてコロスケがコロッケの歌を歌っていたけど、同じ趣向。
言わずともハンバーグの方が高級だ。
カリプソというか、一時流行ったMolavoiみたいなサウンドが楽しいね。
そういえば、カリプソってのは日本ではダメだね。
誰も演りたがらない。
ユーミンの「避暑地の出来事」ぐらい?
そういう意味ではこの曲はとても新鮮だ。
「カリプソ」っていうのはトリニダード・ドバゴ等のカリブ海の島々発祥の音楽。
Van Dyke Parksの『Discovery America』の1曲目の「Jack Palance」なんて曲がモロそれ。
陽気で明るいんだけど、歌っていることはシリアスで世情を揶揄したりすることが多いようだ。
私も中村とうようさんの監修したコンピレーション・アルバムを1枚持っていて、何年かに1回聴くが、なかなかいいモノですよ。
何しろアーティスト名がどれも大ゲサで、マイティ・デストロイヤーとかロード・インヴェイダーとかマクベス・ザ・グレートとか、一聴すると「え、カリプソってヘビメタなの?」みたいな名前ばっかりで笑える。
最後の「いっただきま~す!」ってのがカワイイ。
ん、でも待てよ、コレ空気抜いてないんじゃないの?
パッチン、パッチンってやるやつ。
でもいいか、曲が可愛いから。
食べちゃおう!

225v10年以上前に初めてドイツのフランクフルトに行った時は驚いたね~。
ハンブルグではないにしろ、「ドイツに来たらやっぱハンバーグでしょう」ということで本場のヤツを頂いた。
「コレがホントの本場ーグ!」なんちゃって、中央駅のそばの惣菜屋でアツアツのハンバーグとフランクフルト・ソーセージ、それのビールをしこたま買い込んで、さっそくホテルの自室で頂いた。
コレがね~、とてもじゃないけど食べれなかった。
何しろとにかく塩っ辛いのだ。
ウチの食事は比較的薄味なものだから、余計にそれがツラくて。
少し食べただけで舌がビリビリとシビれてきちゃってね。
すぐ食べるのを止めたわ。
そうした惣菜ではなく、ちゃんとしたレストランに行けばおいしいものはいくらでもあるんだけど、どれも概して塩味が濃いんだよな~。
あと酢!
酸っぱすぎるんだよね。
もともと酢が苦手な私は、とてもじゃないけどドレッシングがかかっているサラダを食べることができないのよ。
もうショッパムーチョにスッパムーチョなの。
でも豚肉自体の味は最高だ。
それとヴァイツェン・ビールは大好き。あの香り…。
イングリッシュ・エールの次に好き。
下は同じ惣菜屋で買ったホットドッグ。
長いソーセージをワザワザ丸いパンにはさんで食べるのが地元式だっていうんだよね。
「どうやって食べるのが正しいのか?」とドイツ人の友達に尋ねると「好きな食べ方で食べるのが正しいんだよ」だって。
コレはハンバーグほどしょっぱくはなかったけど、ニューヨークの$1のホットドッグの方がゼンゼンおいしい。
ドイツに滞在していた友人が、直後にイタリアに移動した際、しばらくの間イタリアの食事は何の味もしなかったそうである。

_rimg0007 こちらはハンバーガー・ナイトで供されるハンバーガーたち。
おいしそ~!
やっぱり食べ物は日本が一番よ!
ハンバーガー・ナイトではヒロアキくんの曲にちなんだオリジナル・メニューが用意される。
コレは小田原で開催した時の「KABOSSバーガー」。
テーマは『Over Drive』に収録されている「海岸通り」。

230kaboss大和のPAOの時はチェッカー・フラッグを装った。
カーレースといえば、ヒロアキくんのテーマ・ソング「My Eternal Dream」だ。
250paomy_eternal_dreamcfb
もうひとつ、こちらは川崎ウッドストックの「プレミアム・ラクレット・チーズ・バーガー」。
コレのテーマは何だろう?
「チーズを乗せて」かな?

240川崎の時の記念写真。
アレ?SUPER BLOODのベースの亮さんもいる!
左から2番目の塩湯さんはこの企画の立役者で、Marshall Blogのよき理解者でもある。
いつも私の文章を惜しみなくホメちぎってくれるのだ。
人間いくつになってもホメられるってのはうれしいもんです。

_その塩湯さんとヒロアキくんの打ち合わせ風景。
どう見てもイッパイやっているようにしか見えんがのう…。
塩湯さんが手にしているのはハンバーガー・ナイトのチラシ。
壁に貼ってあるヤツね。7261 こういうヤツ。
いいデザインだ。
ま、言たかないけど、ヒロアキくんの写真は私が撮ってるね。

7263   
  
10. カラムーチョZ ~秘密結社コイケヤのテーマ~
ショッパムーチョの話の後はカラムーチョ。
オリジナルはファンキー末吉さんの作曲とドラム、「アニソンの帝王」水木一郎さんの歌、ヒロアキくんのギターで制作された。
それを今回ヒロアキくんの歌でリメイク。
そもそも、ファンキーさんの作った曲の仮歌はヒロアキくんが歌ったモノで、それを水木さんにお聞かせしたのだとか…。
下はPVを撮影した時のスナップ。
水木さんの「ズエッ~ト!!!!」という声が聞こえてくるようだ。

260この曲についてはヒロアキくんがライブのMCでさんざん語って来たので、その他の詳しい説明は要らないだろう。
そのMCに良く出て来る「風になびく赤いマフラー」がコレ。
もらえるのかと思ったら「3,000円です」ってヤツね。
そういえば横浜のヤッチンのライブ時にこの曲を演奏するってんで、ライブハウスの向かいにあるコンビニで偶然見つけたカラムーチョを買って差し入れたんだっけ。
するとヒロアキくんはよろこんで、「ライブ中に紹介しますね!」って言ってたんだけど、スッカリ忘れられちゃったんだよナァ。
あのカラムーチョ代返してくれますか?
は~、今日はずっと座りっぱなしでコレを描いているのでお尻が痛いわ!

270v  
   
11~14. シンジケート・アドレス
コレはおもしろいな~。
よ~やるわ~。
<前編>の府中のところで触れた、「府中に夢中」につながったラジオのジングルがコレ。
1991年2月から2014年6月の長きにわたってJFN系全国27局で放送されたヘヴィメタルの専門ラジオ番組「Heavy Metal Syndicate」への投書の宛先を歌にしたシリーズ。
当然歌詞は住所ということになる。
途中から歌詞がメール・アドレスになるところがミソ。
つまり、1991年から2014年のある時点から、文字によるコミュニケーション・ツールの主役がeメールに替わったこともこの曲は示唆しているのだ。
実は11~14は社会派ナンバーだったのだ。
ちなみに現在は、歌詞にある住所、メール・アドレスとも無効になっている。
  
  
15. The War is Over
ココから3曲はパチスロ・セクション。
イヤ~、それにしてもコレどうしてロックとパチスロってのが頻繁にくっつくのかしらん?
アレは忘れもしない…いつだったっけナァ~。
Marshall Blogでパチスロの新機種の発表会を取材したこともあった。
 
まずは「真モグモグ風林火山2」の月野ワグマ武将歌。
ク~、この声!
聞き紛うことなき、二井原さんの声!
この曲は作詞作曲も二井原さんが手掛けている。
ドラムはファンキーさん。
ヒロアキくんの担当はアレンジとギターだ。
ク~、このギター!
まずイントロがいい。
そして、ギター・ソロ。
「キミを乗せて」もいい例なのだが、曲との関連性を考えてコンパクトに、そしてスリリングかつメロディアスに言いたいことを弾き切るギター・ソロにかけては、ヒロアキくんは随一の存在ではなかろうか?
どんな時でも絶対にグダグダとソロを弾かない。
やっぱりMarshall使ってるからかな~?
でも「ホンモノを使っている」というプライドがプレイに影響を与えていると信じたい。
やっぱりアナログ真空管アンプじゃないとダメね、ロック・ギターは!

280v  
  
16.遅い春越後
今度は「真モグモグ風林火山2」から上杉モグ信武将歌。
「ナニ!上杉は米を喰っておるのかッァァ?!」と地団駄踏んで悔しがったのは武田信玄。
そりゃマァ、越後と甲斐とじゃね~。
それでも武田信玄の軍隊というのは日本の歴史上、最も強かったらしい。
しかし、米じゃ新潟にかなわないわな。
この曲ではヒロアキくんが作曲とアレンジを担当。
ドラムはファンキーさん。
歌は渡辺英樹さんだ。
歌詞もヒロアキくんの作ったメロディに英樹さんが丁寧に言葉を乗せた。
本当に英樹さんの訃報には驚いたナァ。
私は付き合いは長くないのだが、王様とファンキーさんのはち王子様と英樹さんのトリオが好きでしてネェ。
熊谷まで取材に行ったことがあった。
下の写真はその時のもの。
高めのキーの英樹さんの張りのある声が今でも耳に残っている。
この曲ではその声で自作のロマンチックな詩を朗々と歌い上げている。
  
そのライブの時に、オープニング・アクトのような形で「インドの林檎」というギター漫談の芸人さんが出演した。
終演後、物販タイムの時に、あるお客さんが英樹さんに「インドの林檎さんはいらっしゃいませんか?」と訊いたのかナァ?
英樹さんはあのメッチャ抜けのいい声で「インドさ~ん!インドさ~ん!」とその芸人を呼び出した。
インドさん…おもしろくない?
すると、その芸人さんは今まで「インドさん」と呼ばれたことがなかったらしく、「イヤ、オレ、インドさんじゃないんだけどな~」と言ってお客さんの方へ寄って行った。
それを横で見ていておかしくて、おかしくて!
私の英樹さんの思い出のひとつ。

290v  
  
17. 風林火山
パチスロ三部作のシンガリは、「真モグモグ風林火山2」からファンキーさん作詞作曲ドラムスの武田モグ玄武将歌。
歌うは田川モグ晃。
ホラ貝の音に導かれて「♪風・林・火・山」!
コリャまたとびっきりやかましいな~!
ヒロアキくんの気合いが入りまくりの歌もいいんだけど、バッキングがカッコいいんだよね、この曲。
サビのベースがなんか変わってる。
下の写真は、2014年12月に原宿のクエスト・ホールで「真モグモグ風林火山2」の発表会が開催された時のもの。

300vこの時のベースは英樹さんだった。

310v滅多にこんなことないと思って、パチスロの新機種とMarshallの記念撮影をしておいた。
いいね、四角ってヤツは。
スッキリしてる。

320  
  
18. 平和の風
賭けごとの後は清らかに…。
ヒロアキくん自ら「代表曲になってきた」という重要なナンバー。
作詞は三木あずささん。
実際にいい曲だもんね。
おかげで「やっと、ずっと」を全く演らなくなっちゃった?
「平和の風」は、学校の合唱コンクールの課題曲になったり、コーラス隊のアレンジが施されたりと様々な場所で、また様々な形で愛唱されている。
ヒロアキくん自身もTAGAWAの『Wind』ではストリングスをバックに2バージョン歌っているし、今年リリースされた『Winds and Waves』というアルバムでは灘校のグリー・クラブが取り上げている。

330cdこの曲も色々スゴイ話があって、やっぱり名曲にはドラマが付きまとうね。
まずヒロアキくんのファンのシンガーソングライターの方が自分の歌のレッスンで「平和の風」を歌ったところ先生がスッカリ気に入ってしまった。
先生がファンになっちゃったワケ。
すると、その先生は自分が所属する「Nadeshiko」というコーラス・グループで「平和の風」を取り上げ、Nadeshikoがイタリアに遠征した際、大聖堂でこの曲を歌ったのだという。
下は「平和の風」を海の向こうに連れて行ってくれたNadeshikoの皆さんとヒロアキくん。

_2nd その「先生」、声楽科の薄井彰子さんと。

Ui 薄井先生は西武台千葉中学校という学校で教鞭を取っていらして、学内のコーラス・コンテストの課題曲に「平和の風」を選んでくださった。
完全に公私混同である。
イヤ、「平和の風」がそれに値するクォリティということなのだ。

340そのコンクールに審査員として参加したヒロアキくん。
後姿なのに目立つ。

350下は真剣に審査をするヒロアキくん。
  
ひとつ、すごく興味があるのは、女性がソロでこの曲を歌ったらどうなるだろうかということ。
そうだナァ、夏川りみちゃんみたいな美しく澄んだ声で、この曲をミッチリと歌い上げたら聴いた人は必ずナミダするのではないだろうか?
少なくともオレは泣くな。

36030分のミニ・コンサートもやっちゃった。
当然、「平和の風」も演奏した。
生徒さんが「すいません!ギターの弾き方間違えてますよ!」と教えてくれたとか、くれないとか。
「紅」は間違いなく演っていません。

_211272   
  
19. たんぽぽと風
今、シットリ地帯に入ってます。
<前編>でも触れた通り、私はヒロアキくんの音楽を時折「校歌ロック」と呼んでいるが、ヒロアキくん、本当に社歌を作っちゃった!
公私にわたるヒロアキくんの強力なサポーターで、レストランを幅広く営む「株式会社無州」の社歌だ。
ギターを提げているお方が社長の浅野さん。
何でT5なんですか?!コアじゃないですか!
ワタシャこの浅野さんが持っているギターのデモンストレーションを何回もやったんだよね。
なつかしいナァ。
そんなことは当然どうでもいいワケで…。
380コレは浅野社長のお父様が描いたイラスト。
誰かさんのイラストとは大違いだ。
「たんぽぽと風」にピッタリのイメージ!
ホント、このイラスト通り、この曲はヒロアキくんのやさしい一面が大きくフィーチュアされた一編となった。

370浅野社長は先日の『THEME PARK』発売記念コンサートにもお越し頂き、客席から花束をヒロアキくんに贈呈された。

390   
  
20. すきっちゃ 好きなほ! 下関
『THEME PARK』はヒロアキくんの故郷である下関をテーマにした曲で締めくくられる。
この曲は以前にシングル曲としてこの世に出ている。

_mosekijacket下関がある山口県って、飛び抜けて大きな都市ってないんだよね。
でも下関市の人口が一番多いとは知らなんだ。
ナンダ、ヒロアキくんってシティボーイだったのね?
山口の人口は下関、山口、宇部、周南、岩国、防府がベスト5で人口が10万以上。
秋芳洞があることでわかるように、山口というのは石灰岩質の地層なのかな?
宇部興産、徳山曹達(現トクヤマ)、小野田セメント(現太平洋セメント)といったセメント・メジャーの重要拠点がある。
一度、宇部興産の工場へ連れて行ってもらったことがあったが、あまりにもデカくてビックリ仰天したな~。
石灰の原石山からセメントのプラントの間に原石を迅速かつ効率的に運ぶための何kmにも及ぶ立派な専用道路が作ってあってね。
夜の宇部の町にも繰り出したけど、寂しかったナァ。
  
曲は潮騒で始まる。
関門海峡の浜に打ち寄せる波の音なのかな?
関門海峡はかつては馬関海峡と呼ばれた。
下関の「関」と門司の「門」で「関門」ならわかるけど、ナゼ「馬関」だったのかしらん?
一回気になっちゃうと調べないと気が済まない…コレが私の悪いクセ。
で、調べてみた。
下関市は、明治22年に市制が施行された時、「赤間関市(あかまがせきし)」という名称だった。
それで、誰がやったか、「赤間」の「間」の字に「馬」の字をあてて「赤馬関」とした。
そこから「馬関」という名称がひねり出されたとか。
1863年と1864年、長州藩はアメリカ、イギリス、フランス、オランダと大ゲンカをした。
いわゆる「下関戦争」というヤツ。
もちろん列強の圧倒的な火力の前に惨敗。
その講和の業務に当たった高杉晋作は「身分を取り払った、かつ最新式の兵器を備えた軍隊でなければ攘夷なんてできっこないほ!」と、馬関奇兵隊を結成する。
勉強になるな、マーブロは。
そして、この曲の作詞をしたのが、<前編>に登場したよさこいチーム「馬関奇兵隊」の総督、濱崎康一さんだっちゃ。
「府中に夢中」同様、下関の歴史と魅力がぶち歌い込まれちょる。
ライナーノーツのヒロアキくんの解説にあるように、下関を愛するスタッフがよーけボランティアで参加してくれとるっちゃ。
チョット山口弁を取り入れてみたが、「~っちゃ」と文を結ぶところを見ると、『うる星やつら』のラムちゃんってのは山口の出身なのかね?
で、ヒロアキくんは濱崎さんの詞を元に巧みに下関民謡を取り入れて曲を作った。
いくら地元賛歌とはいえ、そこはヒロアキくんのすること、当然クールでハードなギターが活躍する。
このソロのピッキングのニュアンスなんてあまりにもカッコいい!
これは完全にJVMのおかげです…ぐらい言わせてくれ!

_sukitya本当にヒロアキくんは仕事の幅が広い。
そして、モノスゴイ数の人たちに支えられているということを感じた。
それもヒロアキくんと美瑞穂さんの人徳のなせるワザだろう。
2人とも熱心に頑張っているからね。
美瑞穂さんの名誉のために…さっきは凄まじいイラストを紹介したけど、皆さんも薄々感づいていらっしゃるだろうが、実は美瑞穂さんは元々イラストレーターではない。
プロのアナウンサーなのです。
文章を読ませたら、アータ、いつもとは丸っきり別人のように素晴らしい滑舌で、また鈴を鳴らすような美しい声で朗読されるんよ。
それが今ではヒロアキくんのギター・テクまで務めちゃって!
始めのウチはギターの「ギ」の字も知らないで、ステージの上や楽屋で右往左往していたが、最近では「シールド」なんて言葉も使っちゃって、すっかりステージまわりのことにも慣れちゃった。
残念ながら「シールド」という言葉は海外では通用しないんだけどね。アレは日本語だということを知っておこう。。
その他、CDの販売からブッキングの世話まで、果てはイラストまで描かされて…まったく美瑞穂さんの熱心さと活躍ぶりには頭が下がる思いなのである。
2人で力を合わせてこれからもいい音楽を作り続けて欲しい。
  
さて、こうして様々なところから作曲の依頼を受けているワケだけど、重要な国政選挙が終わったところでひとつヒロアキくんにお願いがある。
Marshallのことではない。
ヒロアキくんはMarshallでなければギターを弾く気が起こらないのを私は十分知っているから。
お願いというのは…軍歌の作曲を依頼されても断って欲しいのだ。
イヤ、軍歌というのは大ゲサだが、これから北朝鮮の脅威をチラつかせて、世の中はヒト、モノともに一気に軍事に傾いていくだろう。
「戦車は1,000社」っていつか書いた通り、武器を作って売れば簡単に景気はよくなるからね。
しかしそんなことをして儲けを出せば、今の状況となっては人も差し出すようになることは火を見るより明らかだ。
山下達郎さんがコンサートで口にした言葉で、この『THEME PARK』の裏ライナーノーツを締めくくりたい。
何度でも引用する。
「平和でなければ音楽なんてできない」
ヒロアキくんが「平和の風」を運んでくれ!

410v(一部敬称略)


2017年10月24日 (火)

田川ヒロアキ『THEME PARK-テーマ・パーク-』を100倍、イヤ10倍、イヤイヤ1.5倍ぐらい楽しむ <前編>

  
去る10月11日、田川ヒロアキがニューアルバム『THEME PARK-テーマ・パーク』をリリースした。
コレが、予想をはるかに上回る反響で、関係者一同は驚きを隠せないでいる。
このアルバムは「ギタリストの田川ヒロアキ」よりも「作曲家の田川ヒロアキ」に焦点を当てたコンピレーション・アルバムだ。
つまり、ヒロアキくんが色々な団体からの委嘱を受けて作った曲と演奏が詰め込まれた楽しい作品。
ヒロアキくんとはカレコレ長い付き合いをさせて頂いている。
大切なMarshallのアーティスト並びにお客さんであり、仲のよい友人でもあり、公私ともに割と頻繁に連絡を取り合っているので、広範囲にわたる彼の音楽活動を常時把握しているつもりなのね。
でも、出て来るね~、知らないのが。
「こんなことやってたの?」などという驚きの発見もあって、今度のアルバムはプライベート的にもとても楽しいアルバムになった。
すでに公式音源として世に出回った作品も多く収録されているが、そこはヒロアキくんのこと…「へへへ、モッタイないから溜まっていた音源を根こそぎかき集めましたゼ!」などと乱暴なことはするワケがない。
自分の最新のイメージに合致するように、録り直し、作り直しがタップリと施されている。
もちろん本邦初公開の作品も聴きごたえ満点だ。
仲の良いのをいいことに、普段ヒロアキくんの音楽を「校歌ロック」などと呼んでいるが、『THEME PARK』には様々な局面を通して、ヒロアキ・ミュージックのコアな部分が収められたと思っている。
今回は委嘱作品集ということで、当然各々の曲にはバックグラウンドがある。
封入されているブックレットにヒロアキくん自身がそのバックグラウンドについて一筆認めているが、大きなお世話だがこっちはマーブロ、そのあたりのところをもっとワガママに深く掘り下げて、2回にわたり「裏ライナー・ノーツ」を編んでみたいと思う。
要するに「Making of THEME PARK」だ。

10vある日、マネージャーの美瑞穂さんから連絡があった。
電話の内容は、今度カクカクシカジカでコンピレーション・アルバムを作るのだが、何かタイトルのいいアイデアはないか?という。
困った時はすぐこのオジさんだ。
ま、こっちもキライではないので、すぐに協力しちゃう。
一旦電話を切って考えた。
「フーム…テーマ・ソングのコンピレーション・アルバムか…。テーマね~、テーマ、テーマ、テーマ…何かうまいシャレはないかな~」などと考えて、比較的すぐに出て来たのが「テーマ・パーク」という言葉。
チョット安直に過ぎるような気はしたが、色んなシチュエーションの音楽が入っていて、遊園地みたいににぎやかでいいかも…と思った。
問題は表記。
当然、CDのジャケットには「THEME PARK」とアルファベットの表記を採用することになるだろう。
そうした場合、日本人は「テーマ」というカタカナと音には十分に慣れているが、「theme」というつづりと「シーム」という音には全く親しみがないので、タイトルとしてこの言葉を採用するのは不利なのではないか…コレが心配だった。
ま、「theme」を何のひっかかりもなく読む人は「シーム」という発音を知っているだろうから問題はないけど、慣れない人は「テメエ!」なんて読んだりして。
ヒロアキくんは「平和の風」だからして、そんな好戦的なことは絶対しないから。
とにかく、美瑞穂さんにこのアイデアを伝えてみた。
すると「ワ~、それいいですね!『テーマ・パーク』にキメました!」
「チョチョチョチョ、もう少し考えた方がいいんじゃないの?!」
「イエイエ、気に入りました。いいですね。もうそれで行きます」
美瑞穂さんは、時折ルックスからは想像できないぐらい竹を割ったような側面を見せる人なのだ。
そして、上に書いたような読み方の問題についての心配を伝え、ひとつのアイデアをお伝えした。
それは、サブタイトル的に「テーマ・パーク」という表記をつけ加えてはどうか?ということだった。
こうして、と言っても何の紆余曲折もないのだが、タイトルが決定した。
ジャケットについても色々とありましてね~。
それは<後編>のお楽しみ!

20それでは『THEME PARK』に収録されている曲をひとつずつ見ていこう。
本稿の作成に当たっては、ヒロアキくんご本人と美瑞穂さんに全面的にご協力を頂いたことを最初にお伝えしておく。
  
  
1. キミを乗せて
2015年にリリースしたアルバム、『Over Drive』のリード・チューンの採録。

232015年のMarshall GALAでは山本征史さんと金光健司さんと演奏してくれたヒロアキくんの最近の愛奏曲だ。

50「再録」と言っても、ボーカルズとドラムスをリメイクした。
そして、何よりもご注目頂きたいのはギターの音。
『Over Drive』の時にはまだ使っていなかった、現在愛用しているJVMを思う存分駆使してギター・パートを録音し直してくれたのだ。

30v車好きのヒロアキくんは筑波サーキットでの国家演奏等、何度もカーレースに関係した仕事をしていて、Marshall Blogでも紹介してきた。

25この曲は、岡山国際サーキットで開催されるMAZDAの大イベント、「マツダファンフェスタ」のテーマ・ソングとなり、ローカルテレビのCMでも採用されていた。

30下は筑波サーキットで「君が代」をメタル調でグイングイン演っているところ。
残念ながら私は岡山には行っていないが、恐らくこんな調子でブチかましてくれたハズだ。
エンジンをかけるところからスタートするこの曲、聴けば聴くほど引き込まれていく…今頃言うのもナンだけど。
初めての車の運転に胸をときめかせる歌詞を、全く別の意味で独自に解釈された方もいてビックリ仰天したが、なるほどそれもおもしろい。チョットここには書けませんが。
コレね、キャッチーなメロディも魅力的なんだけど、アレンジがすごく練ってあって実によろしい。
「さぁ行け~!」って感じのギター・ソロも好き。
ただし、安全運転で行きましょう!

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2. 酎 High KING!
一瞬、日本語版Jefferson Starshipかと思うようなアメリカ調のハード・ロック。
広島県は呉市のライブハウス、「ケラウスランブラ」の20周年を記念して、マスターから依頼されたお店のテーマ・ソング。
下の写真はヒロアキくんがケラウスランブラに出演した時のもの。
な~んかメッチャ楽しそうだな。
スッカリ出来上がっちゃってるぞ、コレ。
左の白いギターを抱えているのがマスターのNaoさん。
「Marshall以外は使わない」という大のマーシャリスト。
残念ながらお店にお邪魔したことはないのだが、Marshallがドッサリ用意されていると聞く。
実にありがたい。
タイトルは「酎ハイの王様」なのね?
焼酎飲みながらハイキングするのかと思った。

60ナゼかと言うと、実は私はNaoさんと酒席をご一緒させて頂いたことがあって、その酒豪っぷりに仰天したからだ。
Naoさんなら焼酎をストレートでガブ飲みしながら野山の全力疾走するなんて、おちゃのこサイサイだろうと思った次第。
私もサラリーマンから、ミュージシャンから、色んな人と酒席を共にしてきたが、直さんはかなりイケる部類に入るだろうな。
さすがにレスラーや相撲取りと勝負するとそうなるかわからないが、ま、十分に渡り合えるだろうな。
かつて大酒豪と謳われた五代目古今亭志ん生は、関東大震災の時に、「こんなに揺れたんじゃ東京中の酒屋の酒が全部地面に飲まれちまう!」ってんで、家族を放っておいて酒屋に走ったという人。
「こんな時にナニやってんだ?酒なんかどうでもいいから好きにしない!」と酒屋の主人はトットと避難した。
志ん生は大よろこび…スゴい人がいたモノである。
その志ん生が双葉山に飲み比べの勝負を申し込まれたことがあったという。
双葉山は身長180cm、体重135kgとお相撲さんにしては決して大柄な部類ではないが、69連勝といういまだ敗れられていない記録を持つ大横綱だ。
その酒量も横綱級に間違いない。
この時、志ん生はすでに他のところでかなり飲んでしまっていて、スッカリ出来上がっていたのだが、「酒飲み」のメンツにかけてこの勝負を受けた。
結果…この時はさすがに双葉山に軍配が上がった。
しかし、もし志ん生が先に飲んでおらず、素面の状態で勝負に挑んでいたら志ん生が勝っていただろう…と自分で言っていた。それほどの大酒のみだった。
やっぱNaoさんもコレぐらいイケるでしょう。白鵬との取り組みが見てみたいものだ。
だから「酎High KING!」。
下の写真は手前から、おなじみMarshallの社長ジョナサン・エラリー、家で飲むと安心してすぐにウトウトしてしまう私、そしてNaoさん。
山口県柳井市のMarshall MUSEUM JAPANオープン時の時のショット。
たかだか5年前のことだけどなつかしいな~。

70またNaoさんは、このヒロアキくんが作った曲を大層気に入り、自分のプロデュースでCD化してしまった。
二井原さん、恭司さん、SHARAさん、てらちん等、ケラウスランブラにゆかりのあるミュージシャンがこぞって参加しているスーパーセッション作品に仕上がったとのこと。
Naoさん、ホントにこの曲がうれしかったんだね~。
ヒロアキくんはいい仕事をしたね!

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3. 府中に夢中
寡聞にして「府中市」が東京の他にもあることを知らなかった。
そのもうひとつとは、広島県府中市。
ヒロアキくんはその府中市に2つ作品を提供している。
まずは「府中に夢中」。
下が府中。
市内に芦田川が流れる人口4万人弱の盆地。
市長さんが戸成さんとおっしゃるようだ。
自分の町の市長なのに「となり市長」ということになる。
「となりの市長」と言ってもジブリは関係ない。
さて、「府中に夢中」の歌詞はかつての五木ひろしの「横浜たそがれ」に似たつくりをしている。
山口洋子は演歌に頻出する単語を並べてこの曲の歌詞を作ったというが、「府中に夢中」は、花から虫から名所旧跡まで、府中の魅力をズラリと並べた内容となっている。
作詞は府中の子供さんたちとヒロアキくん。
ヨカッタよ、コレ、子供たちで。
こんなのオッサンにやらせたら、「♪府中よいとこ、温泉入って、酒かっくらって、ウマいもん喰って、また温泉入って、酒かッくらって…」ってな内容に絶対なっちゃうからね。
ヒロアキくんが編む愛らしいメロディに自分の町を愛し、称える子供たちの歌詞がうまく合わさったほほえましい一編。
しかし、そんなにいいの、府中って?
…と思ってチョコっと調べてみると…

80もう、こんな街並みを見ただけで行きたくなっちゃうね。
時折マーブロに紀行文を寄せているように、私はロンドンに行くようになってからというもの、古い町並みが大スキになっちゃってさ。
ホントにこんなんなってんすか、府中?
いいな~。
ところで、ヒロアキくんは山口県下関の出身だ。
それなのにナンだって広島のいち都市の歌を作ってるんだろうか?
不思議でしょ?
そのいきさつはカンタン。
府中市にお勤めのヘビメタ好きの切原さんという方がヒロアキくんの大ファンだったから。
こう書いてしまうとそれまでなんだけど、物事そう簡単にはいきませんからね。
実現までの道のりは長かった。

90切原さんは、故成毛滋さんの関係でヒロアキくんが参加したギタリストのコンピレーション・アルバム『Voo Doo Doll』(1995年)を聴いてヒロアキくんのプレイに注目した。
このCDにはヒロアキくんが今でも演奏している「Fly Away」と「Stranger Destroys Arms」の2曲が収録されていた。
そして、2000年。
全国ネットのラジオで14年間にわたり毎週オンエアされた『Heavy Metal Syndicate』で使用されたジングル、この『THEME PARK』にも収録されている「シンジケート・アドレス(後出)」がヒロアキくんの作品と演奏であることを知って狂喜乱舞。
以降、二井原さんのアルバム『Ashes to Glory』に参加したことなど、徐々にヒロアキくん周辺の情報が増え、下関でライブがある際は欠かさず足を運ぶようになった。
…なんて簡単に書いたけど、アータ、その距離たるや片道300km弱よ。
どんだけ好きなのッ?…「惚れて通えば千里も一里」ってヤツだね。
そうしている内に「いつか、田川さんに府中の曲を作って欲しい」という気持ちが芽生えた。
そして遂に、20年越しの思いがかない、府中の市政60周年を記念する2曲が完成したのであった!
こうして市に熱狂的なメタル・ファンの職員さんがいらっしゃらなければ、このアルバムの3曲目は「焼酎に夢中」になっていたかも知れない(また焼酎かよ!)。
さて、場所は変わって町田のライブハウス。
今月のはじめに開催された『THEME PARK』のレコ発ライブの会場でのこと。
終演後、カメラを片付けていると、「あの~」とお声をかけて頂いた方があった。
その方は銀色の鋲が無数に付けられた黒い上下のへヴィメタ・コスチュームに身を包み…というのはウソ。
ご丁寧にお名刺を差し出しながら自己紹介した方は当の切原さんだった。
「いつもMarshall Blogを楽しみにしています!」とおっしゃってくださった。
とてもうれしかった。
私が、この次に出て来る府中の名産品でもある「タンス太鼓」の話を持ち出すと、切原さんは「あ、アレは私のアイデアなんですよ!」と、うれしそうなお顔をされたのがとても印象的だった。
大変おとなしく温厚な方で、ヘヴィメタルのコンサートでコブシを突き上げてデス声を張り上げているようには見えなかった。(多分されていないと思う)
下の写真は地元のダンスチーム「トゥインクルハート」とのコラボレーションで「府中に夢中」を演奏しているところ。
舞台の裏の瓦屋根の家が気になるな…。
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4. Lofty Tree
府中シリーズの第2弾。
切原さんから「へヴィメタルでお願いします」との注文を受け、好きにやっちゃった1曲。
あ~あ…。
府中はモノ作りが盛んな町で、世界的なダイキャスト・メーカーのリョービや機械メーカーの北川鉄工所が現在でも本社を置いているところ。
江戸時代から家具づくりの伝統を受け継いでいて、その製品は「府中家具」として知られている。
チョット話は反れるが、アンガールズの田中卓志ってのはココの出身なのだそうだ。
イヤ、それだけではなくて、平幹二郎も府中の出身。
私が一番驚いたのは松本英彦。
もう亡くなってしまったが、ソニー・ロリンズ直系の日本を代表するテナー・サキソフォニストで、ジョージ川口や小野満らと組んだビッグ・フォーは1950年代、アイドル的な人気を誇った。
そのピアニストは中村八大だ。
私は生前富山で一度だけ松本さんの演奏を見たことがあった。
もうかなりのおジイさんだったが、プレイは恐ろしくモダンで音もメチャクチャカッコよかった。
話を戻す。
この曲はすでにTAGAWAのセカンド・アルバム『Wind』にも収録されている。

10cd_2『Wind』の時は「備後しんいち鬼炎太鼓」のみなさんとの共演だった。

96だから曲は以前から知っていた。
今回は『Wind』に比べて気持ちテンポが遅めなのかな?
サビのメロディはヒロアキくんならでは「校歌テイスト」が炸裂。
コレでいいのだ。
しかし、メロディの歌わせ方がウマいよね。
本当に歌っているようにギターを弾く。
でも知ってた?
当たり前のことなんだけど、ヒロアキくんの弾くギターって、呼吸も含めて歌い回しが実際に歌っている時と全く同じなんだよ。
つまり、ギターを弾いている時は歌っている時なの。
聴いたことはないけど、「Ave Maria」を歌わせたら、間違いなくギターと寸分違わない歌い回しをするよ。
それとギターの音もいいね!
Marshallだからね!
  
今回の「Lofty Tree」はヒロアキくんの完全単独パフォーマンス。
だから冒頭の太鼓の音もヒロアキくんが府中名物の「たんす太鼓」を使って録音した。
ヒロアキくんは曲ができるずっと前にこの太鼓を打っておいて、今回その時の音源を組み合わせたそうだ。
ダウンジャケットを着て打っている。相当寒かったのかな?

Ht この「たんす太鼓」は家具づくりのノウハウを活かし、胴を府中で製作。皮については石川県は松任の老舗太鼓メーカー、浅野太鼓に製作を依頼したそうだ。
実は、前の会社に勤めていた時、一時期私の隣の席にはこの浅野太鼓の御曹司が座っていた。
とってもいい子だった。カメラが好きで、私が撮ったライブの写真をいつも興味深そうに、また熱心に見てくれた。
彼、どうしてるかな…って私よりゼンゼン立派になっちゃったにキマってるわな!

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5. 維新の言霊
ヒロアキくんは「よさこい」への作品提供も盛んに行っている。
「よさこい」の作品だけをコンパイルしたアルバムもリリースしているのはファンの方ならご存知であろう。
160cd私はこのヒロアキくんの「よさこい」の仕事をとても高く評価している。
最近は高梨康治さんの「刃」のように和楽器を組み合わせたロックも盛んになってきているようで、何かの機会にヒロアキくんの「よさこい」作品が耳目を集めるようにならないかと期待しているのだ。
ナゼかって?
だってカッコいいじゃん。
「ロック」と「和」の融合ということは70年代から幾度となく取り組まれてきたことだけど、このヒロアキくんの「よさこい」はそれがかなり自然な形に仕上がっていると思うのだ。
時代が追いついたということなのかもしれない。
それとね、ひとつ気が付いたのは、最近の若いロック・バンドってかなり平気でドンガラガッタ風のメロディを取り入れているんだよね。
この手法こそが、もしかした真の「日本のロックの独立」なのではないか?とも感じたりもするのである。
180さて、この「維新の言霊」は下関のよさこいチーム「馬関奇兵隊」の代表曲だ。

120下の写真でヒロアキくんの右隣にいらっしゃるのが馬関奇兵隊リーダーのシリモンコン・ルーパスパットさん。
あまり日本語が得意でないのが難点だ。
あ、チガウわ!
コレは私の人生で一番暑かった2015年8月に山口市阿知須きらら浜で開催されたボーイスカウトの世界大会で撮影した時のもの。
この時、初めてナマの「よさこい」を拝見した。

150ヒロアキくんと談笑しているのがホンモノの馬関奇兵隊の総督、濱崎康一さん。
ありがたいことに濱崎さんも熱心なMarshall Blog読者でいらっしゃる。
こんなにたくさんの方々に読んで頂いてMarshall Blogはシアワセだ。

130ヒロアキくんの演奏に合わせて、いくつもの連が一か所で踊る光景はまさにスペクタクルだった。

140この時はバッキングトラック+ヒロアキくん+村岡山口県知事というフォーマットだった。
いつか、生のバンド演奏でヒロアキくんの「よさこい」に合わせて馬関奇兵隊が踊るところを見たいナァ。
この「維新の言霊」を聴いてその思いが募ったよ。

170ソリッドでハードな演奏の間で素晴らしいノドを聴かせてくれるのは清野明子さん。
生まれは横浜だが、2歳半から民謡を始め、全国レベルの民謡大会の賞を総ナメにした日本を代表する民謡歌手だ。
日体大をご卒業されているのがおもしろい。




Ak 美瑞穂さんによれば、底抜けに明るい方で、ナマの声は相当スゴイらしい。
濱崎さんのご縁で今回のレコーディングにご参加頂いたとのこと。
あっさり2テイクで撮っちゃったって!

Ak_2 歌詞では下関の歴史に欠かせない人物たちの言葉を連ねている。
「高杉晋作は男の中の男 エライじゃないか」…高杉晋作は江戸に出て来て、尊敬する師の吉田松陰の骸を小塚原(今の南千住)に掘り返しに行ったっていうんだよね。
小塚原には刑場があって、ナント、江戸年間で20万人がそこで処刑されたという。
昔はチョットした悪さでもすぐ死刑だったから。
明治になって廃止となり、今はJRの敷地になっている。
つまり民家が建てられないようにしてあるのだ。
ナゼか?
最近まで、夜はタクシーがその辺りに近寄らなかったという……そういうことです。♪明るく元気にいきましょう。
このあたりも興味深い話がゴロゴロしていましてね…また今度。
  
「恋は思案の他…とやら」というのは坂本龍馬の俚謡の一節。
何でもNHKの大河ドラマで福山雅治が歌ったらしいが、今回ヒロアキくんはオリジナルのメロディを付けて清野さんに歌ってもらった。
「俚謡(りよう)」というのは「里謡(さとうた)」と同じ意味で、民衆の間で歌い継がれた地元の歌のこと。
下関の遊郭で遊んで朝帰りをした龍馬が、怒って帰りをまっていた奥さんに向かって歌ったところ、彼女は笑い出してしまったという。
奥さんは「おりょう」さんだっけ?
この文句の意味は「男女の恋情は常識で説明できるものではない」ということ。
大変平たく言うとこの場合、「ヘソ下三寸、人格なし」ということになりますな。
それを笑って許したおりょうさんが立派!と考えるのはそれほど当たっていない。
江戸時代、幕府公認の遊郭である吉原は、鼻の下を伸ばしたオッサンがニヤニヤしながら行くところと思ったら大間違い。
吉原は当時、観光客が大挙して訪れる江戸の一大観光エリアだった。
それこそ当時の「テーマ・パーク」よ。
今のディズニーランドよりはるかににぎやかなアミューズメント・スポットだったのである。
それゆえ、男性がそこに遊びに出掛けるのは、度が過ぎない限りは家庭内で問題にしなかった。
「オイ、チト吉原へ行ってくらぁ」と旦那が言うと「あいよ、行っといで。遅くなるんじゃないよ、オマイさん」ってな具合。
反対に、「不倫」は「下の下」とされ、ご法度扱いだった。
「不義密通」は重罪で、ケースによってはさっきの小塚原に連れていかれれ、男女ともにカンタンに首を落とされた。
だから幕府、つまり政府はそうした遊び場を作って、そっち方面のストレスを発散させたんだね。(他にも理由あり)
もちろん、それなりに金がかかるので、稼ぎの少ない町人はそうおいそれと行けるワケでなかったことは付け加えるまでもあるまい。
そして、吉原以外の幕府が認証していない遊郭を「岡場所」と言った。
そうした岡場所は全国各地にあって、恐らく下関にもあったのだろう。
当然、龍馬もそこへ遊びに出掛ける。
そのこと自体は問題ではなくて、龍馬が朝帰りをしたことがおりょうさんの機嫌を損ねたのではないか?
吉原の場合は、夜中の2時に営業を終了し、宿泊した客は朝6時に店を出なければならない。
ちゃんと係りのモノが起こしに来るのだ。
龍馬はコレをやったのではないか?
当然、お泊りとなれば金もかかるし、おりょうさんに寂しい思いをさせることになるからね。
あることがキッカケで現在吉原のにわか研究をしております。
近日Marshall Blogで研究結果を発表しますので乞うご期待!
  
ところで、この曲は最初のインストのロック・パートの後、清野さんとヒロアキくんのデュオになるでしょ?
都都逸のパート。
ココでヒロアキくんは中国琵琶をJMD50に通して弾いたそうだ。
JMDシリーズはMarshall初のデジタル・アンプ。かつてヒロアキくんはそのコンボを愛用していた。
そうだよね、コレ琵琶の音だわ!三味線じゃないじゃん!
一応書いておきますが、落語なんかを聞いていると、どうも三味線の音色は陽気で、反対に琵琶の音色は陰気ということになっているらしい。
ま、演目の内容がゼンゼン違うからね。
以前にも書いたが、戦前は「琵琶語り」という音楽がモノスゴイ人気だったんだよ。
それが戦後、演者側の団体がゴタゴタしているウチに人気を失い、聴き手がいなくなりほぼ絶滅してしまった。
今、「絶滅」という意味では、トラディショナルなロックも同じ運命にあるのではないかと真剣に心配している。
で、真ん中あたりで清野さんがロック・ビートに乗って入ってくるんだけど、そこが気持ちいいんだ。
犬神サアカス團みたいなんだな。
そうそう、犬神凶子さんの歌い方って民謡なんだよね。
つまり、力まない。ス~っと声を出してくるんだ。
だからとても日本的で品があって美しい。
私は黒人のマネをして力んで歌う日本の女性歌手がもうどうにもならないぐらい苦手なのだ。
そして、その後はハード・ロック満開!このパートのカッコよさったらないよ!
このアルバムの聴きどころの1曲と言えるのではあるまいか?
  
  
6. 笑顔らんまん
続いても「よさこい」。
今度は下関の菊川町というところの子供のよさこいチーム、「綺楽凛」のナンバー。

Kirari_2 軽快な和風のメロディのテーマからシャープなギター・ソロを経てスリリングなキメへ。
その後、ガラッと様相を変え、可愛らしい歌が続く
歌を歌っているのはAYANOちゃん。
いい声だ。
何のてらいもなくストンと歌っているところがとても気持ちがいい。
下の写真のヒロアキくんの両側はAYANOちゃん(右)と「菊川よさこい連合」代表の畑村則子さん。
子供歌というのは案外大きなパワーを秘めていて、ヒロアキきんはそれを知っていてこのパートのメロディを紡いだに違いない。
そしてまたアップテンポになりハッピーハッピー。
このパート、コーラスで美瑞穂さんが参加しているのを聞き逃してはならない。
和太鼓の採用もさりげなくていいね。

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7. Victory!
まぁ~、ホントに色んなことやってるわ。
コレは知らなかった。
下関の「関門JAPANボクシングジム」のテーマ・ソング。
血汗が飛び交うハードなイメージからガッツリと激メタル調で作ったところ、「チョットこれは…」とNGが出されてしまったという。
なるほど、気を取り直して出来上がったのは「勇気あふれる熱きメロディ」って感じ?
気合いだ、気合いだ、気合いだ!
コレ、やったね~…真ん中のギターのハモリのパート。
メッチャかっこいいわ。
今回の作品はJVMを手に入れたということで、徹底的にギターの音に凝り、JVMの機能を使いまくったという。
意地でそうしたのかどうかは知らないが、何しろ、JVM210Hの持つチャンネルとモード、6種類のサウンドすべてを使ったという。
あ、近々、『あしたのジョー』の故郷ってのをMarshall Blogで案内するのでお楽しみに。

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7. KRYニュースライブ
「KRY」とは山口県で最も古い放送局「山口放送株式会社」のこと。
何で「KRY」なの思うよね?
その心は「KK.RADIO YAMAGUCHI」だそうだ。
そのニュース番組のテーマ・ソングをヒロアキくんが作曲している。

_img_0189アレ?
ヒロアキくん、山口へ帰るとずいぶんルックスが変わるんだな~…とは思いませんね。
「はい、みなさんこんばんは」と、ついつなげたくなる曲調はさすがヒロアキくん。_img_0191実は私はこのKRYの方々と接触したことがありましてね、編成業務局企画事業部長なんて方とご挨拶したことがあった。
それも柳井市にMarshall MUSEUM JAPANがオープンした時のことだ。

200KRYの方々が取材にお見えになったのね。

210ジョンもブラ下がりで取材を受けちゃって!
コレもなつかしいな~。
ちなみにヒロアキくんは後年、この場所で「手数セッション」として演奏したことがあるのだ。
KRYは来なかったようだ。

220<後編>につづく。
次回はジャケット制作の現場からスタート。衝撃的なモノをお見せします。
 
(一部敬称略)

2017年5月31日 (水)

CROSSWINDの未発表ライブ音源とLo-Dプラザの思い出

よくMarshall Blogに書いていることだが、「虫の知らせ」的な現象がやたらと身の回りで起こる。
別段困ることは何もないのだが、あんまり手の込んだヤツになるとさすがにうす気味悪くなる。
コレがラッキーな知らせだったら大いにありがたいのだが、そういうのはほとんどやって来ないね。
何かがキッカケで普段はまったく興味がない宝くじを買ったら大当たりしちゃった!…「ああ、アレは虫の知らせだったんだね~」みたいなヤツ。
来いよ、虫!
寄ってくるのはハエか蚊ばっかりじゃんか!
イヤ、知らず知らずのウチに「ラッキー虫の知らせ」も受けているのかも知れなくて、それに気が付いていないだけなのかもしれない。
また、人間はどちらかというとアンラッキーな事象に「虫の知らせ」を当てはめたがる習性があるのかも知れない。
今日の話はラッキーな部類に入るだろう。
それはこういうことだ。
私はよくジャズのピアノ・トリオを聴くのだが、好きなピアニストのひとりにKenny Barronという人がいる。
先日中古CD屋で目に留まったBilly Cobhamがリーダー名義のピアノ・トリオ盤『The Art of Three』に参加しているピアニストがKenny Barronだったので早速買ってみた。ベースはRon Carter。
コレが存外によくて、時々CD棚から引っ張り出しては聴いている。
で、数日前もこのCDを聴いていたのだが、その日は何となくBilly Conhamのドラミングがすごく気になった。
バックをやっている時は、何とも言えない硬質なスウィング感がとても気持ち良いのだが、ひとたびソロになると、やかましいというか、落ち着かないというか、場所違いというか、「コブさん、今演ってんのマハビシュヌではありませんよ!」と横から耳打ちしたくなるような感じ?
ま、それもこの人ならではのスタイルなんだけどね。
そこから、ますます気になり出して他のBilly CobhamのCDに乗り換えた。  

A3_2耳タコの「Stratus」を聴くのが辛いので、ファースト・ソロ・アルバムであるところの『Spectrum』は今回敬遠させていただいて、メッチャ久しぶりに2枚目のソロ・アルバムなんぞを聴いてみた。普段はまず聴くことのないアルバムだ。
その翌日のことだった。
ある友人から連絡があり、故小川銀次さんのバンド、CROSSWINDの未発表音源をクラウドファウンディングで制作することになったというのだ。
チョット、ビックリでしょ!
なぜなら、Billy Cobhamの2枚目のソロアルバムのタイトルが『Crosswinds』だからだ。

Cw2その新譜の音源というのは、かつて有楽町にあったLo-Dプラザでのライブ演奏を収録したものだ。
Lo-Dプラザは過去何回かMarshall Blogに登場しているので、熱心なマーブロ読者(そんなのいるのか?ありがたいことにいるんです!)は実際に行ったことはないにしても、名前を耳にしたことがあるかも知れない。
今日はそのLo-Dプラザのお話から。
チっ!こんなことになるなら今までチビチビ書くんじゃなかったよ…ということで、もう一回ちゃんとおさらいしておこう。
なんとならば、その連絡をくれた友人というのは、このLo-Dプラザでエンジニアをされていた方なのだ。
  
何か月か前に「ポタフェス」というポータブル・オーディオの展示会のレポートを掲載したでしょ?
なんとマァ、音楽やギター・アンプだけでなく、オーディオ機器のスタイルもデジタル・テクノロジーの革命を経て、すっかり変わり果ててしまったことに私は驚いてしまったワケだけど、40年ぐらい前は音楽を聴く時はチャンとしたオーディオ装置、いわゆる「ステレオ」で鑑賞するのが普通だった。
それがウォークマンの登場以来、アレよアレよと小型化が進んで、今では何もかも「こんなに小っちゃくなっちゃった!」状態になってしまったのはある意味残念なことだと思っている。
私も初代のウォークマンを手に入れて以来、40年近くの間その手のポータブル・オーディオの恩恵を受けているので、決して悪く言うつもりはないのだが、せめて家で音楽を聴く時は大きなスピーカーを鳴らす正式な再生装置を使うべきだと思っている。
時代が変わったといえばそれまでなのだが、昔はオーディオ機器もひとつのステイタスだったんだろうね。居間にステレオがあるのが当たり前の時代。だから50年ぐらい前のステレオは家具調だった。
こんなヤツ。
この電話器!ウチもコレだった。
でも、何もステレオの上に電話器を置くことはないと思うのだが…。
ウチは違ったけど、昔は玄関に電話器が設置してあった家をよく見かけた。アレはどういう理由からだったんだろう?

Cst そういう時代だったので、各家電メーカーがそれぞれ独自のオーディオ機器ブランドを持っていた。
コレも以前にも書いたけどね。忘れていませんよ。
三菱はダイアトーン(スリー・ダイヤだからね。岩崎弥太郎のステレオだ)
松下はテクニクス(当時は「松下電工」だった。雷門の提灯をありがとう!)
東芝はオーレックス(東芝にもそんな時代があった。毎年武道館でジャズ・フェスまでやってたんだから!)
サンヨーはオットー(親亀コケすぎ。三洋電気もろともなくなってしまった)
シャープはオプトニカ(ココも目の付けどころがちょっとマズかったか?)
…ってな具合。
DENONは「デンオン」と読んだし、KENWOODはTRIOという名前だった。
TRIOなんてレコードもやっていて、一時ECMを配給していたもんだから私が持っている『Travels』ぐらいまでのPat Methenyの初期のLPは全部トリオ・レコード製よ。
そして、日立。
日立のオーディオ機器ブランドは「Lo-D(ローディ)」という名前だった。
すごいよね、発電所のタービンやジェネレーターやエキサイターを作るメーカーがステレオのブランドを持っていたんだから。
こうした高速回転する重量のある発電機器を設置する時には「グラウト材」という特殊なセメントを使うんだ。
どうする?「セメント」で脱線する?それとも「発電所」?いくらでもできるよ。
でも、今日はやめておこう。
さて、Lo-D。
名前の由来は「Low Distortion」なのだそう。
ASTORIA CLASSICみたいなもんだね。ASTORIA CUSTOMは当たらない。
それで、各メーカーはそうしたオーディオ機器のデモンストレーションをするために、大都市にショウ・ルームを展開したんだね。
SONYビルなんてのはそれの親玉みたいなもんだ。
で、日立は有楽町のフードセンター(現銀座インズ)という高速道路の高架下に「Lo-Dプラザ」というショウルームを設置したというワケ。
コレがいつ始まったのかはわからないんだけど、クラスメイトの安藤君に教わって私が初めて行ったのは1976年ぐらいのことだったと思う。
私は最初映画キチガイだったので、有楽町にはなじみがあり、とても行きやすかったのだ。
ずいぶん通ったよ。
当時は土曜日にも学校があったので、日曜日になると毎週有楽町に足を向けた。
ナゼかというと、Lo-Dプラザには、オーディオ機器の視聴用に無料で聴けるレコードがたくさんあったからなのだ。
当時はLPレコードが一枚2,500円。
2,500円といえば子供にとっては大金だ。
大人になった今でも大金なのが情けなくもあり、不思議でもあり…。
当然YouTubeなんてあるワケがないので、今みたいに聴きたい音楽を無料で聴くなんてことは一切できなかった。
「もっと色んなレコードを聴きたい!」という欲望はもちろん激烈に強かったが、「不便」だと思ったことは一度もなかったし、音楽はお金を出して手に入れることに何の違和感もなかった。今でもそれが当り前だと思っている。
時代はまだCDが一般化するより十年も前の話で、「レンタル・レコード」なんていうのが登場するのはそれから四年ぐらい後のことだ。
だから、Lo-Dプラザに行って、レコードをそこで借りて、まったく買う気のないオーディオ機器を試すふりをして、次に買うべきレコードの下調べやロックの勉強をしたワケだ。
今にしてみると、何に興味を持って聴きに行っていたのかはほとんど覚えていないのだが、一枚だけハッキリと記憶しているのはサディスティック・ミカ・バンドの『ライブ・イン・ロンドン』だったが、何回か貸してもらって聴いたものの結局LPは買わずじまいだったな。
そうやって買った一枚のLPを大事に大事に何回も聴いたものだった。
不幸にして買ったLPが気に食わない内容だったとしても、ひたすら聴き込んで強引にお気に入りにした。
Cld
Lo-Dプラザにはスピーカーから盛大に音を出して聴く小部屋があって、日曜日はいつも満室で順番待ちだった。
一方、ヘッドホンを使って聴く装置が何台も並んでいて、私はいつもこっちだった。
他にもラジカセ等の小型オーディオ機器をディスプレイするコーナーや高級オーディオを体験するリスニング・ルームがあったのを覚えている。
…と、こんな説明をするより、その友人から写真をお借しりて、ココでお見せすればどんな様子だったかが一目瞭然なのだが、奇妙なことに写真がまったく残っていないらしいのだ。
今ならチョチョイとスマホで撮って残しておくところだろうが、昔は写真一枚撮るにしても、カメラを持って行って、撮影して、写真屋にフィルムを持って行って現像してもらわねばならなかったのだから大事だ。だからそう簡単に写真に残しておくなんてことなどできなかったんだね。
  
チョット脱線になるが、このLo-Dプラザの奥に「モーニング・サン」という輸入&中古レコード屋があった。
今はもう見る影もないが、昔は数寄屋橋の西銀座デパートとSONYビルの地下にハンターがあって、レコード好きにとっては有楽町も捨てたモノではなかった。
数寄屋橋のハンターは私が学校を出て就職した頃でもまだ残っていたな…と言っても1985~1986年ぐらいの話だからもう30年も経ってるか。
下の写真は数寄屋橋のハンターがあった場所。
私は14歳か15歳の時にココで生まれて初めて中古レコードというものを買った。ELPの『Tarkus』だった。
昔はこんなにきれいな内装ではなかった。

C2img_2499 ハンターは規模を拡大し、上の写真から50mほど離れた場所にもう一軒店を構えた。
そこで手に入れたのが下のTony Williams Lifetimeの『Energency!』。
大学の頃、どうしてもコレが手に入らなくてネェ。聴きたくて、聴きたくて…まんじりともしない日々を送っていた。
それがある日、その新しい方のハンターで発見したのだ。
まだカウンターの中にあって、値札も付いていない状態だったのだが、頼み込んで何とか売ってもらった。
当時は万単位のプレミアが付いていたやに聞いていたが、1,400円だった。
「へへへ、コレだから中古レコードはやめられまへんナァ」とか何とか言いながら家に持ち帰ったのではなかろうか?
で、聴いてガックシ。期待しずぎちゃったんだね。
今ではCDで簡単に手に入るが、コレはまだCDが世に現れる前の話。

C0r4a5836 まだ脱線中ね。
さて、そのLo-Dプラザの奥にあった「モーニング・サン」というレコード屋、いつまで営業していたんだろうか?
気が付いてみるとなくなっていて、洋品店になったのかな?
それでも二枚ほどその店でレコードを買ったことがあった。
一枚はコレ。
King Crimsonの『Earthbound』。
やっぱり15、16歳の時だった。
コレも以前に書いたことがあったが、当時このアルバムは音質が劣悪ということで国内盤が制作されておらず、聴くためには輸入盤を手に入れるしかなかった。
どうしても聴きたくて、Lo-Dプラザに行ったついでに、多分このお店で探したんだろうね。
店員さんが「ボク、何を探してるの?」…ま、本当に「ボク」と呼ばれたのかどうかは定かではないんだけど、とにかく店員さんに話しかけられて、「あ、キング・クリムゾンの『アースバウンド』です」と答えると、「あ~、今ないな~。イギリスから取り寄せてあげるよ!」と言うではないの。
「イ、イギリスから!?」とかなりビビった。
だって、コストがどれだけかかるかわからないじゃない?…と心配していたら「値段は普通のレコードと同じ」だというのでお願いすることにした。
すると今度は「やっぱりIsland盤がいいんでしょ?」と来た。
「あ、あいらんどぉ?」
こっちはロックを聴き始めて数年の15、16歳の子供だ。何のことかサッパリわからなかったが、「ええ、マァ…」と答えておいた。
そして、数か月後に「入荷した」という連絡を受けて手に入れたのが下のIsland盤の『Earthbound』。
2,000円だった。消費税などない時代のお話し。
Cimg_0096

もう一枚はKevin Ayers他の『JUNE1,1974』。
コレも聴きたかったのだが、当時国内盤は廃盤になっていてどうにも手に入らなかった。
それで、もう勝手がわかっていたので、コレは「モーニング・サン」にこちらからお願いしたような記憶がある。
私はこのアルバムでPeter Ollie Halsallという素晴らしいギタリストを知った。やはり15、16歳の頃。
世間的には決して貴重品というワケではあるまいがそれぞれ青春の思い出のアイテムとして今でも大切に保管してある。
私の青春はロックだったから。

Cimg_0097

話をLo-Dプラザに戻す。
そのオーディオ機器ブランドの戦国時代、Lo-Dプラザが他のブランドのショウルームと大きく異なっていたのは、今でいう「ライブ・スペース」があって、歌謡曲からロックまで広範囲なジャンルにわたるアーティストが頻繁に出演していたことだろう。
当時私は国内のアーティストにほとんど興味がなかったので、満員になっているそのスペースを横目に見て、「ああ、また今日も誰か出ているのか…」程度のものだった。
それよりも自分の聴きたいレコードの方が優先だった。
当時はこんなプログラムを発行していたそうなのだが、見事に記憶がない。
「ヤングと音楽のふれあう広場」だもんね。
「ヤング」か…。
名実ともに「ヤング」もずいぶん遠くなったもんだ。
人間、ヤングよりオールドの時期の方がはるかに長いということを知るのは、オールドになってからなんだよな~。
右は1981年8月の発行。表紙の人…有名な方なのかな?こんな二重アゴの写真、今なら絶対NGでしょう。ノンビリしてたナァ。
左の人が肩からブラ下げているのは日立製のウォークマンか?
ヤケにデカいな。
あ!今気が付いた!
このお姉さんが右手をかけている白い複数の板!
このケースにレコード・ジャケットが入っていたの。
コレをめくっていって気に入ったレコードを探す。ケースには番号が付いていて、その番号を受け付けのお姉さんに伝えると当該のレコードを出して来てくれる…というシステムだった。
Cpg
さらにLo-Dプラザがスゴかったのは、抽選で当たった10人のお客さんに16チャンネルのミキサーが設置された客席に座ってもらい、目の前の生の演奏をマルチで録音させていたのだ。(ミキサーを8チャンネルで使う時は20名)
録音媒体はカセット・テープ。
当然、そこで売っている日立Maxellのモノを使用する。
私は高校の時にコレを二度ほどやらせて頂いた。
ひとつはPANTA&HAL。
実はこの時は生の演奏ではなくて、卓に8チャンネル分の音源が送られてきて、それをミキシングして、その場で2チャンネルにトラックダウンするというものだった。
正確な演奏日時はわからないが、まだ『マラッカ』をリリースする前だったのだろうか?「マラッカ」の歌詞がレコードとは異なっている。
まだ今さんがHALにいた頃で、卒倒もののすさまじいギター・ソロを聴かせてくれている。
特に「マーラーズ・パーラー」のオブリガードは人間ワザとは思えないほどの出来で、ずいぶんコピーさせて頂いた。
もう一回はBAD SCENEだった。
この時は本当の生の演奏で、3曲演奏した後、BAD SCENEに銀次さんがジョインして更に3曲を演奏した。
どの曲も銀次さんらしいプレイにあふれていて、とりわけ「Rising Dream」のソロはあまりにも素晴らしい。Maj7thのアルペジオがクロマチックで上がっていくアイデアがカッコよくてね、コレも高校の時にコピーさせて頂いた。
下がその時のカセット・テープ。
アレ?富士フィルムのテープだね。
ったく、エチケットを知らねーな、若いヤツは!って、私ですわ。
とにかく大切な宝物のひとつ。
しかし不思議なのは、実施日が異なるのにどうして同じテープに音源が収まっているんだろう?
二回分を考慮して初めから90分テープを用意していたワケはないので、「PANTA&HALのテープにまだ空きがあったな…」とワザワザ家から持って行ったのだろうか?
あの頃はカセット・テープだってそう安くはなかったからね。

50

これでLo-Dプラザがわかった。
そして、今回のCROSSWINDの未発表音源は、1981年9月13日、1982年1月30日と5月15日にLo-Dプラザに出演した時のモノが収録されているのだそうだ。
私の友人がその音源を蔵出しし、ナント35年ぶりに陽の目を見ることになる。
下はLo-Dプラザのステージで演奏するCROSSWIND。
こんなだったかな~。もっと広い感じがしたんだけど。
そうそう、各ミキサー卓に「録音中」っていうサインがついていたな。

Ccw4 下の写真は渋谷の屋根裏ね。
しかし、こうしてみると屋根裏もいい加減小さかったな~。
でも、そんな感じはまったくしなかった。
私は高校二年の時にこのステージで銀次さんを観たことがあった。
RCサクセションで活動していた時のことだ。
大ブレイク寸前で、当時屋根裏でもっとも集客力の大きい二大バンドのウチのひとつだっただけに息もできないほどの超満員だった。
もうひとつの人気バンドはPANTA& HALだった。

Yu_2

持っているクラスメイトにカセットに録音してもらってよく聴いていたので、私はCROSSWINDのレコードはとうとう買わずじまいだった。
銀次さんのギターが殺人的にカッコよくてね~。
2001年の『マーシャル祭り2』にご出演頂いたのも、その時分のあこがれ感によるものだった。
結局大分後になってCDを買い込んだ。
「フュージョン」と形容するにはあまりにもハードなサウンで、当時の日本のロック・シーンでは他に類を見ないバンドだった。
日本人ばなれしていてジャケットもいいよね。真ん中のセカンド・アルバムなんてまるでフランスのAngeのアルバム・ジャケットのようだ。

60そして、今回のアルバムは今はやりのクラウド・ファンディングでの制作となる。
クラウドファンディングっていうのも私のような古い人間から見るとナンカ違和感のカタマリなんだよね~。
この手法について深い知識を持ち合わせているワケではないので大言は控えるべきだが、要するに「カンパ」っていうことなんでしょ?
私なんかが思うには、本当にいい音楽なら、やっぱりレコード会社が率先して作るべきだと思うんですよ。
そんなにね、誰も彼もが音楽をやったって、いいモノができる可能性なんか万にひとつもありゃせんって。
コレね、音楽だけじゃなくて、今の世の中何でも同じで、食べ物なんかもそうなんだけど、いいモノを教えないからドンドンおかしなモノばかりになってるんだよ。
それで、そのおかしなものばかりの中でラクして商売をしようとするから、ますます状況が悪くなっているんだと思う。
音楽に関して言うと、傍で見ていて今の若い人は本当に憐れだと思いますよ。
いい音楽を厳選して、レコード会社がコッテリと金をかけていいモノを作るだよ。
とにかくミュージシャンがタオルやシャツやチェキを売らなければ生活できないような状況を打破してやらないと!
「ミュージシャン」という職業は自分たちだけのいい音楽を作ってそれを形にすることなんだから。
断じてタオルやシャツを作って売るのが仕事ではない。
ま、古いと思ってもらって結構。
とにかくコンピュータの利便性が「無償」を武器に、「風情」どころか「芸術」までも壊滅的な状態に追い込んだことを人類はよく見つめ直すことですな。
私は「CD」というフィジカルな製品がある限り、それを支持します。
お、ナニが言いたかったかというと、小川銀次のような不世出のギタリストが作った音楽をナニが悲しくてカンパで形にしなきゃならないのか?ってことよ。
久しぶりに毒づいてみたけど、逆らったところで時代の趨勢にかなうワケがないこともわかってる。
結果、形はどうあれCROSSWINDの新しい音源が世の中に出て来ることは大歓迎であることは間違いない。
私は内容を耳にしているワケではないが、この時点で既にひとつ言いたいのは、「若い人」、特にひとりでもの若いギタリストやギターの勉強をしている人たちに聴いてもらいたいということだ。
銀次さんのギターを通じて「オリジナリティ」という言葉の意味を自分なりに分析してもらいたいと思う。
Cwc
さて、そのクラウドファンディングの案内がこの動画だ。
6月2日から出資者を募るそうだ。
興味のある人はゼヒご参加あれ。

今年の8月で三回忌を迎える銀次さん。
このプロジェクトがその三回忌に合わせた動きであることは言うまでもない。
また、「CROSSWIND」という唯一無二のバンドの名前を後世に残すことを目的にもしている。
さらに、経費を差し引いた売上金はすべて銀次さんの奥様のご遺族に贈られるとのことだ。
  
今日は過去の記事と内容が重複してしまうので銀次さん自身のことについてはほとんど触れなかった。
代わりに銀次さんの思い出や関連情報を掲載した過去のMarshall Blogの記事を紹介しておく。
★【訃報】 小川銀次さんのこと

★Ginji Lives!~小川銀次、新譜をリリース!

10v_2※今日のバナーは、銀次さんが2001年の『マーシャル祭り2』にご出演された際、JCM2000 DSL50をステレオでお使いになられたことより現行のDSL100の図柄を採用しました。

(Marshall並びにMarshall Blogは記事内のクラウドファンディング事業には関わってはおりません。ご質問他、いかなるトラブルも関知いたしませんこと予めご了承ください)

2017年5月 9日 (火)

川島だりあ LIVE SHOWCASE 3・2・1 GO!~川島だりあバンドの巻

私は一切できませんが、ARESZの音楽に合わせてみんなで頭を振り狂った後は、いよいよヘッド・ライナーの登場だ。

06川島だりあバンドだ。

10コレが3月15日、すなわちこのライブの二日前に発売となった川島だりあのソロ・アルバム『LIFE=NOW』。
2016年4月に配信でリリースされた同名のサード・ソロ・アルバムにボーナス・トラックを追加。
さらに全曲のベース・パートをFEEL SO BADの新メンバーであるSYOIが差し替え。
加えて数曲のギター・ソロを新しく取り直した強力盤。
地球がサッカー・ボールになってるのね?

30cdアルバムの4曲目に収録されている「Introduction Goal」のSEが流れる中、メンバーが登場。
だりあさんを支えるメンバーは…

50vARESZから那都己<なつき>。

60vFEEL SO BADからCHRIS。

80v
その両方から翔己<しょうい>。

70vドラムスは、ひこ。

90vそして、一曲目は「Goal」。

100コレがまた実に独特なんだよね~。
20
パワフルなこのライブ・バージョンも結構だけど、CDの方のこの曲のアレンジはスゴイよ。こんなの他にない!

110vショッパナっから一発でだりあムード!

120v続けてはアルバム二曲目の「Judgment Day」で突っ走る!

130ドライブ感満点のCHRISのギターもMarshallが鳴らしてる!

140vヘッドはJVM410H、キャビネットは1960Bだ。

145v那都己くんももちろんARESZから引き続きMarshall。
JCM2000 TSL100と1960A。

150続いて「Dive Into Myself」。

Img_0352翔己くんの鍵盤のようなベースが面白い。

S41a0231へヴィにしてシットリ感濃厚の印象的な一曲だ。

170ここで、だりあさん、Chris、那都己くんの三人がステージを降りる。
そして代わって登場したのがFEEL SO BADの倉田冬樹!

180vそう、冬樹さんもインストゥルメンタルのソロ・アルバムをリリースしたのだ。
タイトルは『Tyrannosaurus The Guitar World with SYOI』。
だりあさんの『LIFE=NOW』同様、配信でリリースしていた『Tyrannosaurus』のインスト曲に新曲を二つ追加。
さらにだりあさんの『LIFE=NOW』に収録されている「Going My Way」とさっきオープニングで実際に演奏した「Goal」のインストゥルメンタル・ヴァージョンを収録した。
そして、タイトルにあるように、コチラでも全編で翔己くんの六弦ベースが大活躍している。

190cdまずはアルバムから「Journey to the Planet」をプレイ。

200今回、冬樹さんは那都己くんのTSLを使用した。

210vアルバムではMichael Schenkerに捧げた曲も収録されているが、今日はSatriani。

270

先日の来日公演でも演奏していた「Surfin' with the Alien」をカッコよくキメでくれた。

Img_0404 冬樹さんと翔己くんのスリリングにして濃密な演奏が続く。

230

ちなみにひこくんが叩いているドラム・キットはNATALのアッシュね。

220翔己くんの六弦ベースをフィーチュアして一曲。
ココでの前回のステージでも披露した「6弦Bassの為の超絶技巧曲1番 ロ短調」だ。

250
フィンガーボードの上を縦横無尽に両手の指が舞う!

260
この冬樹さんが奏でる奇抜なフレーズがタマりませんな。
自身のアルバムだけでなくだりあさんの『LIFE=NOW』でもその奇天烈感が大爆発している。

240v

冬樹さんのセットを締めっくくったのは、もちろんアルバム収録曲の「火の鳥」。
コレも前回このステージで演奏され喝采を浴びた一編だ。

290しかし、今日は盛りだくさんだね~。
今度はだりあさんとCHRISがステージに戻ってZARDのカバーを一曲。
『LIFE=NOW』の最後に収録されている「あの微笑みを忘れないで」。

300vだりあさんが作曲してZARDに提供した曲。
ZARDの中でも最も人気のある曲だ。
最前列には、曲を始める前から落涙する熱心な女性ファンの姿もあった。

310vだりあさんも感極まってこの通り。
バック陣の優しくあたたかい演奏が感動を際立てた。

320ステージはさらに転換を重ねる。
冬樹さんが退場し、那都己くんが戻る。
スタート時の状態に戻り、FEEL SO BADのレパートリーを二曲プレイした。

330まずは1995年の四枚目のシングル「憂鬱な快楽」。

340vお客さんは勝手知ったるところで大騒ぎ!

350もう一曲は1994年の「BACK YARD RAISE MAN」。

360シャープな演奏でだりあさんをガッチリとサポートするバック陣!

370vエネルギッシュなパフォーマンスも大きな見どころだった。

380v本編の最後を飾ったのは『LIFE=NOW』のリード・チューン、「譲れない場所~Hometown~」。

390思い入れタップリに熱唱するだりあさん。
ハードな曲もいいけど、こういうタイプの曲がすごくよく似合うね。

400vまぁ、とにかく「FSB TURBO DREAMS祭り」とでも形容したくなるような盛りだくさんのレコ発ライブだった。

410そしてアンコール。
今日の出演者が全員集合!

420遊びに来ていたPONさんがNATALの前に座った!

430v曲はだりあさんの右手が示してる!
もちろん「バリバリ最強NO.1」!

440やっぱコレは死ぬほど盛り上がるわな~!

450PONさんの切れ味鋭いドラミングが大爆発。
NATALのアッシュ…いい音するわ~。
イヤ、さすがPONさん、いい音出してくれるわ~!

460ナンダカンダで一番目立ってます!

465…とみんなで大騒ぎして、ライブは終了したとさ…。
おもしろかった~!

470だりあさん、冬樹さん、ソロ・アルバム発売おめでとうございます。
ふたりはソロだけでなく、FEEL SO BADとしても動き出してますからね~。
今後の活動に大注目!

FEEL SO BADの詳しい情報はコチラ⇒FSB TURBO DREAMS Official Website

ARESZの詳しい情報はコチラ⇒official website of ARESZ

10_2 1965年創業のNATAL(ナタール)はMarshallのドラム・ブランドです。

M_natal_square

★NATALの詳しい情報はコチラ⇒NATAL Drums Official Web Site(英語版)
★NATAL製品は全国有名楽器店にてお求めください。
★NATALドラムは高田馬場バズーカスタジオでお試しになれます。バーチ、メイプル、そしてアッシュのキットの他、各種スネアドラムも用意しています。ドラマーの方、「NATALの部屋」ご指名でお出かけください。
詳しくはコチラ⇒バズーカスタジオ公式ウェブサイト

(一部敬称略 2017年3月17日 六本木新世界にて撮影)

2017年5月 8日 (月)

川島だりあ LIVE SHOWCASE 3・2・1 GO!~ARESZの巻

終わっちゃったね~、ゴールデン・ウィーク。
今年は1日と2日を休まなくても、後半がガツンと4連休でうれしかったね~…と、いっても私は休みも週末も関係ないんだけどね。
いつもは大抵どこにも出かけないで、テレビで高速道路の渋滞情報を見て連休気分に浸っているんだけど、今年は観光というか、勉強というか、仕事というか、二か所ほどお出かけをしてきた。
ひとつは千葉の香取市の佐原というところ。
かつてMarshall Blogで栃木市や松阪を仔細に紹介したことがあるように、ロンドンを訪れて以来、古い町並みにすごく興味があって、この佐原はその手の格好の観光スポットなのです。
ユックリお邪魔できて大満足。
ココで何度も書いているように、わが街だって「東京大空襲」さえなければ、残っている古い建造物を修繕&補強して、いくらでも昔の街並みを存続することができた。そして、世界に冠たる一大観光都市になっていたハズだ…なんて話を百年以上続いているという佐原の荒物屋のおジイさんとしていたら、「水戸がそうなんですよ」とおっしゃっていた。
おジイさんは続けて…都心部の空襲を終えたアメリカの爆撃機が、余らせておいても帰路の燃料を食うだけ、と必要もないのに残った爆弾を水戸に落として行ったのだそうだ。
水戸は尾張、紀州と並ぶ徳川家の一角であり(異説あり)、戦前は昔の風情をそのまま残す、それはそれは魅力的な街だったと聞いた…ヒデエ話だよナァ。
戦時中、「あの美しい街を壊してはいけない」とルーズベルトだかトルーマンが京都への爆撃を禁止した…とかいう話があるが、これは作り話らしいね。
で、ここ佐原はさしたる工業がなかったので空襲を免れ、こうして古い町並み残すこととなった。(註:「街」と「町」は使い分けています。表記ユレではござらん)

40r4a5120でもね、この佐原を訪れたのは、古い町並みを見に行きたかっただけではない。
また、BAD SCENEが好きだったからではない。(「佐原」は「さわら」と読むのであって、「サハラ」とは読まない)
一番の理由は、佐原がチョット前まで一番興味のあった歴史上の人物の出身地だからということ。
その辺りのことはあまりにも音楽とは関係ないのでMarshall Blogで触れるワケにはいかないが、佐原が期待通り色々と興味深い町だったので、時間がある時にShige Blogで一作編みたいと思っている。
シーボルトとか間宮林蔵も関係しちゃうよ。

40r4a5091もう一か所は車。
何かと茨城がらみっぽいが、「つくばサーキット」へ行ってきた。

4img_0064こっちは仕事なので、後日Marshall Blogでレポートすることになる。
双方、道中さしたる渋滞もなかったし、結果、近年まれに見るいいゴールデン・ウィークになったかな?

4img_0393さて、本題。
時は3月にさかのぼる。
遅くなっちゃってゴメンちゃい。
再活動を始めたFEEL SO BADの川島だりあと倉田冬樹がそれぞれソロ・アルバムをリリースし、記念のライブが開催された。
今日&明日はそのもようをお届けする。

10その記念ライブの冒頭に登場したのは、FEEL SO BAD の倉田冬樹が最近作『Skill』をプロデュースしているARESZ。
Marshall Blogでももうおなじみの顔ぶれだろう。

20瑠海狐<るみこ>

30v那都己<なつき>

40v雅己<まさみ>

50v翔己<しょうい>

60vサポート・ドラムの鉄兵。

70ドラム・キットはNATALアッシュだ。

75この五人が奏でた最初の曲は「BATTLE MODE」。

80ノッケから瑠海狐さんのMarshallボイス炸裂!
ニコニコしながらこの声を出すところが恐ろしくもスゴイ!

90「♪ホイホイホイ」のデス声が瑠海狐さんの後を追う。
240v

那都己くんのコンパクトなギター・ソロ。まずは小手調べ。

100v小手調べにしろ、取り調べにしろ那都己くんはMarshall。
JCM2000 TSL100と1960Aだ。

110v「♪ロックロックロック」と続くのは「Come on baby☆ロック魂」。
「今日は精一杯キャッチーな曲を演奏している」のだそうだ…どこがやねん!

180

ARESZの大きな魅力のひとつはやはりこのふたりのツイン・ベース。

165
六弦ベースを使い、ソロの他、両手を使ってARESZのアンサンブルを分厚くするのが翔己くんの仕事。
150

音作りの基本はMarshall 3560。
パワー・アンプはEDEN等を使用。
キャビネットは1960を使うことが多いが、この日はキャビネットもEDENのD410XSTだ。
それらを併用して爆音を轟かせることもあり。

140vそれ以外の普通のベース的なパートは雅己くんが受け持つ。

160v「あのだりあ様のソロ・ライブです!光栄です。体重も、顔の大きさも3倍ある私が同じステージに立てるなんて光栄です!」とやっておいて、ダイエット中の進捗状況を報告。
ダイエットか…そういえばそんなのあったね~。

120

三曲目は三々七拍子を取り入れたという「神いづる國の祝い囃子」。

170三々七拍子はいいよね。
やっぱり運動会だな。小学生の時、先輩の応援団の演技にあこがれたもんだ。
昔、日野皓正も思いっきり三々七拍子を突っ込んだ曲をやってたっけね。
ちなみに「三々七拍子」は4/4拍子だ。

190那都己くんは七弦プレイヤー。
曲を追うごとに激しくなるソロ・プレイが小気味よい。

200v対する翔己くんもギターばりのシュレッディングで対抗する。
ギター、キーボーズ、ベース(当たり前か)の役割を六弦ベース一本でこなしている感覚か。
昔はこういうことができる楽器と言えば鍵盤楽器と相場がキマっていたんだけどね。
ベースでやっちゃうところがヘソ曲がりだ…イヤイヤ、ユニークだ。

210vそして、雅己くんは本来のベースらしいベースで着実にバンドをプッシュする。

230vお!ETとエリオット君!?
違うか…。

280v あ、片方は合ってた。

Y「だりあ様からの命令に対する答えは二文字のみ。『御意』でございます」と、だりあさんからのリクエストに応えて「闘争本能」。

220v

この和風のメロディが何ともいえんのよ~!
そこに楔を打ち込むかのようなシャープなギター・ソロ。
その楔は当然Marshall製だ!

260v

そして、瑠海狐さんの「クラ~ッシュ!」の掛け声でお客さんがジェスチャーで曲に参加。
たこ焼き、グリコ、さくら、大阪城、人形焼…と瑠海狐さんから指示が下る。
写真は「たこ焼き(ひとつ)」楽しいね~。
この日は他に、ミトコンドリアやインドイボイノシシをはじめ、ニューギニアヒメテングフルーツコウモリ、リュウグウノオトヒメノモトユイノキリハズシなどの指示が出た(ウソです)。

290ポジションの関係でチョットうまく撮れなんだが、ベースふたりがお互いにネックをこすり合わせるという荒技も!

Img_0167 「♪ひらり、ひらり」と闘争本能をムキ出しにした後は早くもこの日最後の曲。
「血のつながらない暗黙の同志の皆さんに捧げます…Soldiers Of Cause!!」。

250v

スゴイな~。
コレだけは絶対にマネできないな。

270

「もっと~!」と猛り狂いながら客席をあおる瑠海狐さんをすさまじいパワーでバックアップする4人!

300

310v

320v

330v

340vそして~、キメのポーズへ。

350キマった~!
今日もとにかくスゴかった。

360v<お知らせ>
さて、今日も六弦ベースとMarshall、EDENを使って華麗なプレイを見せてくれた翔己くん。

130v

「特別音楽セミナー」と題して、来る5月22日、ベース・クリニックを開催するそうだ。
実はこの企画、ARESZのメンバーが順番で講師を務めていて、前回は雅己くんが担当した。
今後も続いていく予定なのでお楽しみに!
もちろん、ARESZのライブのスケジュールも相変わらずギッチギチに組まれていることはいう間でもないよね。

  
ARESZの詳しい情報はコチラ⇒official website of ARESZ

380v<つづく>

(一部敬称略 2017年3月17日 六本木新世界にて撮影)

2017年4月 5日 (水)

THE CLASSY ROCK GIG / Koki Tetragon <後編>

休憩の間も広規さんはステージに居座って「クリスマス・イブ」のベース弾き語りを披露するというサービスぶり!
「本物だ~!」とお客さんは大喜び。歌はさておいて、ベースは本物!
ところで、<後編>になってからでナンですが、このギグに「THE CLASSY GIG」というタイトルがつけられた経緯は…CDのライナー・ノーツをご参照あれ!

20_3さて、「固い、固い」と言っていた第一部もアッという間に終了し、Koki Tetragonの「THE CLASSY ROCK GIG」も第二部に突入する。

30窪田晴男

40v_2松川純一郎

50v_3岡井大二

60v_3伊藤広規

70v_3第二部のオープニングは「Red Baron」。
Jeff Beckが取り上げてからというもの「Stratus(ストラトゥス)」が一種のスタンダードになっちゃったね。
下手すると「Stratus」がJeff Beckの曲だと思っている人もいるようだけど、違うからね。
この「Red Baron」も「Stratus」もBilly Cobhamの『Spectrum』収録のナンバーだ。
オリジナルのギターはTommy Bolin。
ベースはLealand Sklar。
LeeってNAMMへ行くと毎日会場をウロウロしていて、やたらと見かけるんだよね。あの猛烈なヒゲなもんだからすごく目立つ。
『Spectrum』のドラムスって誰だっけ?…ってBilly Cobhamか!

Img_0341最近Billy Cobhamの『The Art of Three』というピアノ・トリオ・アルバムを聴いたんだけど、これが存外にヨカッタ。
ナゼかというとピアノがKenny Barronなのね。好きなピアニストなのだ。
ベースはRon Carter。
Billy Cobhamも実にいいんだけど、ドラム・ソロになるとあの調子なもんだからズルっと来ちゃう。でも、それが彼のスタイルだからね。
「Red Baron」と「Kenny Barron」を引っ掛けてみた。
あ、イカン、今日は脱線しないつもりだったんだ!

171bu3miul_sl1500_松川さんと話したんだけど、もう猫も杓子もの「Stratus」はチトご勘弁…ということで「Red Baron」を選んだそうだ。
「Burn」、「Spain」は私の「家では聴かない曲」の東西の横綱。それに引っ張られてロドリーゴの「アランフェス協奏曲」も第一楽章しか聴かない。こうなると第一楽章の方が断然カッコいい。
そんな「Red Baron」を艶っぽく弾く松川さんの相棒は…

90_2Marshall ASTORIA CUSTOM。

100_3窪田さんの後ろにおいてある緑のASTORIA CLASSICとセットで「抹茶とあずき」って言ってた人がいたけど、うまいこと言うな~。

80_rb

「Stratus」のいつ終わるかもわからない、果てしなく延々と続く単調なベース・ラインから逃れた広規さん。
自在に曲の中を泳ぐ。やっぱり「Red Baron」で正解。
この曲はアルバムに収録されていないので、お聴きになりたい方は初回盤特典で音源をゲットするべし!
130_2
窪田さんのスペイシーなソロがスリリング!

120_2ここでも重量感に満ちた円熟のドラミングを聴かせてくれる大二さん。

140_3大二さんのドラム・キットはNATALのメイプル。

150_3スネア・ドラムはNATALの人気商品Staveシリーズのアッシュだ。Staveとは「桶」という意味。

160v_2続いてはそのTommy Bolinの「Teaser」。

170v_ts早逝した天才アメリカ人ギタリストの人気アルバムのタイトル曲。
若い頃、『Come Taste the Band』を聴いて、Ritchie Blackmore在籍時との変わりように「Tommy BolinがDeep Purpleをおかしくした」とTommyをウラんでいるヤツがいたけど、そんなバカな…。
それに『Come Tastes the Band』ってすごくいいアルバムだと思うんですけど。

180vKoki Tetragonバージョンはオリジナルよりチョイとハードな演奏。
その気風の良さが買われてのことか、アルバムのオープナーに選ばれている。

190v_2広規さんのMC。
「固さもチョットはチョットほぐれた感じがあるね…」
お客さん拍手←なんで?
「レコーディングしていることをスッカリ忘れてました。忘れちゃうぐらいじゃないとダメだよね。そうじゃないとチャンと弾こうとしちゃう危ない自分がヤバいよね。」
え~ッ?
窪田さん、「広規さんはどれだけマジメにならないかということで今までの人生やって来られたんですよね?」
広規さん「(即答で!)そうなの!どうでもいい気持と的確なプレイがいいものを生むんですよ。ところが、『どうでもいい気持』ってのがまた難しいんですよ」
…と、何だかわかるような、わかんないような…。含蓄があるような、ないような…。

270v_2

大二さん、それを聞いて後ろで大爆笑!大二さんもそうなんでしょう?
そこかしこに挟まれた脱力系MCがまた最高に面白かった。
「みんなノッてるか~?」なんて絶対やらないから。
せいぜい「みなさんのアルコール血中濃度の方は上がってますか?(窪田さん)」ぐらい。
でも、広規さんも大二さんも、演奏中は全身全霊を自分の出す音に傾けていることはよ~くわかっていますから!

275v
お次はそれこそJeff Beck。
JeffとTony Hymasの共作で「Brush with the Blues」。
これもCDには収録されなかった一曲。

230_bb

演奏の直前、「あ、ゴメン!晴男ちゃんにこの曲のコードを書くの忘れてた!」と松川さんの告白が!
それを聞いた広規さん、「じゃ、演ろう!」

1img_0702_2 ま、何ら問題なく演っちゃいましたが…。
今度はジミヘンで「The Wind Cries Mary」。

200_wcmこの曲はCDをお聴き頂ければおわかりのように、ほとんどオリジナル通りの演奏となった。

210ジミヘン・スタンダードの中ではどちらかと言えば地味な部類に入るが、そういえば、この曲をガツンとアレンジして演っている人って見たことがないな。
Gil Evansも取り上げていないし。
小品ながら完成度が高いということなのだろう。

220v_2いくら音楽の化学反応を期待する偶発性の高いギグとはいえ、基本的な曲順はキマっていた。
しかし、次の場面は違った。
松川さんが「どうしようかな…『ウエイト』しようか?」と言ってダンベルでも持ち出すのかと思ったら(ウソ、ホントは思いませんよ)、The Bandの「The Weight」をプレイ。

240v_wtいくら人気のある有名曲とはいえ、一番の聴かせどころのコーラスまでバッチリなのには驚いた。
残念ながらCDには収録されなかったが、第一部の「The Joker」に呼応したかのような第二部のいいアクセントになった。

250_3そういえば、こんなシーンも…。

130_ld_jc「え、コレな~に? ’D'なの?」…とその場でコードを確認。
広規さんのバンドなのにゼンゼン曲が頭に入っていない!
で、笑っちゃったのは譜面のこと。
松川さんの「もったいないから五線紙は使わないで広告のウラにサインペンでコードを書いている」という話。
こういう皆さんはセッションの時、コード進行とキメだけを書いた簡易な譜面を使っているのね。
曲を知っているので、そういう譜面はほぼ備忘録のような役割にすぎない。
で、広規さん、「だいたい、オタマジャクシが書いてあっても読めないからね(←コレはご謙遜でしょう)。
だってさ~、ヘ音の譜面なんて’ラ’が’ド’だなんて信じられる~?オレなんか「毎回(ラのところから)ドレミファソラシドって勘定しているんだから!幅で読んでるのよ、幅で。」
これには大爆笑。
そうなんだよね。ま、しくみと気持ちはわかるけど、あのヘ音記号の譜面ってのは、ト音の楽器をやっている人には実に煩わしいんだよね。
私もハコバンをやっていた時にずいぶんベースの譜面を書いたんだけど、初めのうちは、知らない間に途中からト音で記譜しちゃたりして。
でも、他に「ハ音記号」ってのがあって、ヴィオラが使うことは知っていたんだけど、コレは「ソプラノ記号」とか「アルト記号」とかそのパートによって基音となる「ド」の場所が移動させて使うんだってね~。
そんなの意味があるのかと疑問に思うが、記譜する方も読譜する方も慣れると使いやすいんだろうね。
反対にサックスの連中がフルートの譜面を読むのがすごく面倒だ…というのもわかる。
でも、「幅で読む」というのは本当らしいね。
マァ、とにかく広規さんほどの大音楽家がそんなことを言うもんだからひとり吹き出しちゃったよ!

140_2 先ごろ亡くなったLeon Russellが好きだという松川さん。
何かLeonの曲を演ろうと思って取り上げたのが「I Got the Same Old Blues」。
それで、よくよく調べてみたらJ. J. Caleの曲だったという。

280v_sob
9小節のブルース。
Lynard SkynardやBryan Ferryもカバーしている不思議な曲。そんな半端な小節数がまったく気にならない。
Lynardの演奏はまるで自分たちの曲であるかのようにメッチャかっこよく演ってる。
Koki Tetragonの演奏はナチュラル。
ココにこなければ生涯知ることのなかった曲。
そういう曲に出会うのもこういうギグの大きな楽しみのひとつだ。

320

ギグもいよいよ佳境。
コレもこのメンバーなら出るべくして出たといってもおかしくはないであろうJoe Walshのスタンダード、「Rocky Montain Way」。

330_2「Teaser」が終わった時、「Tommy Bolinできたから今日はもういいや!」なんてご満悦な松川さんだったけど、この曲って何となくすごく松川さんっぽいイメージがあるんだけどいかがなもんだろう?
ASTORIA CUSTOMのハードな部分がすごくうまく活かされたギター・サウンド!

340vザッコザッコと快適なビートに乗って皆さん気持ちよさそうだ!

350vやっぱりこうした3連の曲にリズム名人の至芸が現れますな。

360v大二さん、今日も終始ニコニコとゴキゲンのドラミング!

370v最後を締めくくったのは、Bob Dylanのバラード、「To Make You Feel My Love」。
Billy JoelとAdelにカバーされたラッキーな曲だ。
そうそう、浅草博徒一代のDylanもとうとうノーベル賞を受け取ったんだってね。
(浅草博徒一代とボブ・ディランの関係が気になる方はShige Blogをどうぞ)

390vシットリと締めくくった本編。
それに続くアンコールも味わい深いバラードだった。
Princeの「Purple Rain」。
分厚いコーラスもすこぶる素敵だったが、延々とリフレインされる二本のギターのフレーズが最高に感動的だった。

400しかし、アメリカだったね。
今日のブリティッシュ勢の要素といえば、元はアメリカとはいえEric Claptonアレンジの「Steady Rollin' Man」、最初にロンドンでブレイクしたJimi Hendrixの「The Wind Cries Mary」、後はAdelぐらいか…これとてDylanのカバー。
イギリス人が作った曲はゼロだった!
イザとなるとアメリカ勢はやっぱり強いか…。
今度はThe Kinks、The Who、Dave Clark Fiveあたりの60年代の名曲を特集したTHE CLASSY ROCK GIGもいいな。ね~、大二さん!
最後はワザワザ熊本から駆けつけてくれた広規さんファンも交えて会場に残ったお客さんと記念撮影。
お疲れさまでした~!

410さて、<中編>、<後編>と二回にわたってお送りした「THE CLASSY ROCk GIG at Yokohama STORMY MONDAY」。
その様子を具にとらえたCDとDVDは本日正式発売です!

420で、ココで<前編>に戻ってアイテムをチェック!

1dvd広規さん、改めまして40周年おめでとうございます!

80_5

せっかくの機会なのでMarshall BlogとShige Blogの過去の広規さん関連の記事のリンクをココに記しておきますので未読の方はゼヒ!
  

★Shige Blog 2012年5月1日初出
名盤誕生!伊藤広規ライブ・アルバム『Relaxin' at IWAKI ALIOS』 

★Marshall Blog 2012年12月5日
ミート・ザ・リズム・セクション~A*I(青山純&伊藤広規)登場!

★Shige Blog 2012年12月5日初出
青山純&伊藤広規『A*I』のライナー・ノーツと撮影

★Marshall Blog 2013年10月30日
本日発売の伊藤広規ニュー・アルバム、そしてチャリティ・コンサート

 

<広規さんとのイギリス珍道中はコチラ>
★Shige Blog 2012年8月23日初出
Relaxin' in London 伊藤広規、ロンドンを往く 1 <マーシャルとアビィ・ロード>

★Shige Blog2012年8月24日 初出
Relaxin' in London 伊藤広規、ロンドンを往く 2 <いつでもどこでもリラキシン!>

★Shige Blog2012年8月31日 初出
Relaxin' in London 伊藤広規、ロンドンを往く 3 <ウォータールー・ブリッジにて>


★Shige Blog2012年9月11日 初出
Relaxin' in London 伊藤広規、ロンドンを往く 4 <バトラーズ・ワーフでシェー!>

   
1965年創業のNATAL(ナタール)はMarshallのドラム・ブランドです。

M_natal_square

★NATALの詳しい情報はコチラ⇒NATAL Drums Official Web Site(英語版)
★NATAL製品は全国有名楽器店にてお求めください。
★NATALドラムは高田馬場バズーカスタジオでお試しになれます。バーチ、メイプル、そしてアッシュのキットの他、各種スネアドラムも用意しています。ドラマーの方、「NATALの部屋」ご指名でお出かけください。
詳しくはコチラ⇒バズーカスタジオ公式ウェブサイト

(一部敬称略 2017年1月30日 関内LIVE CAFE STORMY MONDAYにて撮影)

2017年4月 4日 (火)

THE CLASSY ROCK GIG / Koki Tetragon <中編>

さて、いよいよ始まったKoki Tetragonの「THE CLASSY ROCK GIG」。
昨日も書いたように、ライナー・ノーツに記したことをココで繰り返したくはないのだが、ま、ほんの少し重複させて頂くことをお許し願いたい。
  
今回もバンド名をつけることになって、私の方から「Koki Tetragon」という名前を提案させて頂いた。
「4人」、「40周年」と、「4」にちなんだ名前がふさわしい…というお題を頂戴していた。
とくれば「Quartet」というのが最も一般的だ。
でもそれでは面白くも何ともない。
そこで「四角形」の意味を持つ「テトラゴン」という単語が思いついた。
怪獣みたいで強そうでしょ?

10v実うぃ言うと、この単語はいきなり頭に浮かんで来たモノではなくて、テナー・サックスの名手、Joe Hendersonの1968年のアルバム『Tetragon』が先に脳裏をよぎったのだ。
Marshall Blog読者ならAllan Holdsworth好きの方も多かろう。
彼が独自の解釈でジャズのスタンダードを演奏したアルバム、『None Too Soon』に収録されている「Isotope」と「Inner Urge」はJoe Hendersonの作品だ。ナゼにAllanがジョーヘンの曲を2曲も選んだのかが知りたいところだが、理由は不明。ま、好きなんだろうね。ちなみに『None Too Soon』はDuke Ellingtonの曲、「All Too Soon」のモジリだ。
渡辺香津美さんは17歳の時にリリースしたデビュー・アルバムでこの「Isotope」を演奏している。
この『Tetragon』、学生の時に聴きたかったんだけど、当時はLPからCDへの移行期で、どうしても手に入らなくて臍を噛む思いをした。
それだけに「tetragon」という英単語が印象に残っていたというワケ。今はCDで入手できるようになったが、結局いまだに聴いたことがない。

Tetr もうひとつ、ナゼゆえ今回のような狭隘なスペースでライブ・レコーディング並びにビデオ・シューティングをしたのか…コレもライナー・ノーツに書いたんだけど…。
それは、演者と観客がフレンドリーな空間でしか起こりえない「音楽の化学反応」のようなものを記録したかったからだ。
もちろん、音楽の化学反応を起こさせるにもってこいの材料と道具が用意された。
15_2そして、見事にその化学反応の瞬間をとらえたのがこのCD『The Classy Rock GIG at Yokohama STORMY MONDAY』と…20_2DVDの『The Classy Rock GIG at Yokohama STORMY MONDAY』だ。

1img_0769 それでは当日の演奏の模様をレポートしていくことにしよう。
オープニングはThe Metersの「Cissy Strut」。

30_cs松川さんのギターのカッティングから始まり…

40v広規さんのベースがそれに絡みつく。

50v_2そして大二さんのドラムスが加わった時には、普通の人ならトリハダが立っていることだろう。

60v_2そして窪田さんの繊細にしてダイナミックなソロ。

70v_21曲目から広規さんのソロもタップリとフィーチュアされた。
80_2
さすが、キャリア40年の重みはダテじゃない!
スラップもハーモニクスも出てこないベースらしい王道ソロだ。
しかし、音がいいナァ~。広規さんとMarshallのコンビネーションの音だ。

76v昨日も記した通り、今年は広規さんの音楽生活40年の大きな節目の年だ。
3年前にはMarshall Blogでもレポートした還暦のお祝いを開き、今年は40周年。
ノリにノッてる広規さんなのよ!

そうそう、最近こういうのを教わった。
Marshall Blogに登場するARESZという大阪のへヴィメタル・バンドのシンガーの瑠海狐(るみこ)さんが曲間のMCでこうガナリたてる…「女は80歳~、男は110歳からぁ~!!』…コレが気に入っちゃって!
瑠海狐さん的には人生のスタートラインは、女は80歳。そして、男は110歳からで、皆さん、まだまだ人生が始まってないですよ!スタートラインにも立ってないですよ!…ということ。
長ェ助走だな~。私ですら人生のスタートまで50年以上あるわ!
でも、なんか元気が出てくるセリフだな…と思って気に入ってるの。
ケンタッキー・フライド・チキンのオッサンも60歳になってアレを興したっていうもんね。
80 2曲目はRobert JohnsonのオリジナルをEric Claptonが『461 Ocean Boulevard』でカバーした「Steady Rollin' Man」。

90v_srmCDでも2曲目に収録されている。
広規さんは1曲目が終了した途端、「固いね~。緊張したときはHなことを考えればいいんだよ~」なんて変なアドバイスをされていたが、果たしてそうかな~?
早くもなかなかのレイド・バック状態で演奏を練り上げた。

100_2窪田さんの音頭でお客さんと「カンパ~イ」!

125
こんなことアータ、東京ドームじゃできないよ~!
「音楽の化学反応」もさることながら、もうすっかりアルコール反応が出ている?
まさに企画の勝利!

126

3曲目は「Lady Day and John Coltrane」という曲。
演奏する直前に「コレ、どういうヤツだっけ?」なんてセッション・リーダーである広規さんがおっしゃってマンマとお客さんの爆笑を誘っていたが、コレは私も全然知らなかった。
Gil Scott-Heronという「ジャズの詩人」を標榜する人の作品…と思ったら、ちょっと前にロフト・ジャズの中心人物であったアルト・サックスのArthur Blytheが亡くなり、その調べごとをしていたところ、この「Gil Scott-Heron」という名前を発見した。
ロフト・ジャズの人なのね?
ロフト・ジャズというのは1970年代にニューヨークで起こった、自分たちの解釈で伝統的なジャズを演奏するムーブメント。

160v

「つらいことがたくさんあるけど、ビリー・ホリディとジョン・コルトレーンを聴くと元気が出るということを歌っている」という松川さんのコメントに窪田さんも「そうかな~?!」
窪田さんに激しく同意。
何か音楽を聴いて気持ちを入れ替えようなんて時にコルトレーンを聴く人なんているのかね?
ミンガスなら経験があるけど。
何しろ「私の人生にレジャーはなかった」と言った音楽の求道者がコルトレーンだ。その音楽を聴いて「修行するぞ!」という気持ちならわかるよ。
香津美さんは後年のフリー・ジャズ期のアルバム『OM』を聴く時、体中に油を塗って電気を消して聴いてみたとかおっしゃっていた。
「何だってでそんなことをしたんですか?」とお訊きしたところ、「イヤ、そうすればコルトレーンの考えていることがわかると思って…」とのお答え。コレは修行の一種でしょう。
私も『Expression』あたりでそれをやってみようかと思っている。
120
ハイ、ライナー・ノーツからゴソッと切り捨てたパートにガッツリ加筆してここで大脱線してみたいと思います。
Marshall Blogには滅多に名前が出ることがないJohn Cortraneだからして、ココでロック・ファンの皆さんにおススメの「聴いて元気が出るかも知れない」コルトレーンのリーダー・アルバムの名盤5枚をレーベル別に紹介させて頂こうと思う。
 
【Soultrane】
まずは1959年代後半のPrestige期。
この時期の作品は「ジャズを聴く」という観点ではどのアルバムも楽しい。
「こんなのホントにあんの?」なんて曲がテンコ盛りで勉強にもなるのね。
『Traning In』とか『Lush Life』にしようかと迷ったが、Prestige期最強の人気盤にして名盤の『Soultrane』には負けるか…。

St
【Blue Trane】
このアルバムは今でもよく聴くんだけど、ビートルズで言えば『Sgt. Peppers』、Zappaで言えば『One Size Fits All』、Fleetwood Macで言えば『Rumors』をいつも連想しちゃんだよね。
要するに非の打ちどころがないんだな。
録音は上の『Soultrane』より先なのだが、ズッと先進的なイメージがあるのは曲調もさることながらやはりBlue Noteというレーベルの効果か?
「-trane」だの「Train」だの言っているのは彼のニックネームが「トレーン」だったから。

Bt
【Giant Steps】
Atlantic期。
Elvin不在のRoy Hanesによる「My Favorite Things」がさく裂する『Selflessness』は確かに聴いて元気がでそうな気もするが、やはりコレはハズせないだろう。
2拍ずつ転調する「Giant Steps」のカッコよさもあるが、コルトレーン・スタンダードが数多く収録されているという魅力も捨てきれまい。
この時期、『Coltrane Jazz』も『Coltrane Sound』もいいんだよな~。
この写真!
サキソフォニストの写真を撮る時には必ず何枚か真似してしまう構図。

Gs
【Ascension】
問題はImpulse期。
コルトレーンの代名詞的活動時期なだけにアルバムも宝の山で、一枚を選ぶことに無理があるが、黄金のカルテットの絶頂期とフリージャズをカギに選ぶと自然とコレが浮かび上がらざるを得ないんじゃない?
グジャグジャのフリー状態からイン・テンポになって、猛然とハードにスイングしていく瞬間は何度聴いても感動するわい。
「ascension」とは「上昇」という意味。
あと、『Larks' Tongue in Aspic』あたりのKing Crimsonファンには『Kulu Se Mama』なんかがハマるかもしれない。
どこにでも出てくる『A Love Supreme』や『Live at Village Vanguard』は故意にハズした。

As
【Kenny Burrell & John Coltrane】
最後、5枚目…Marshall Blogなのでギターものを1枚。
Kenny Burrellとの双頭アルバム、『Kenny Burrell & John Coltrane』。
昨日紹介したTommy Flanaganの変形ブルース「Freight Train」はこのアルバムの1曲目。
フリー期のコルトレーンがWes Montgomeryを自分のコンボに誘ったが、「イヤ、無調の音楽チョット勘弁してチョ…」と、断られたという話が残っているが、果たしてコルトレーンってギターが好きだったのかな?
ちなみに、ザッと考えてみると、コルトレーンのリーダー・アルバムに参加しているギタリストって…ひとりもいないんじゃないかな?
さぁ、これで元気になったでしょ?
え、Billy Holidayはどこへ行ったのかって?ごめん、私Billie Holidayって数枚のアルバムは持っていてもほとんど聴かないのですわ。

Kb さて、Koki Tetragon。
「Lady Day and John Coltrane」はこの日一番のアップ・テンポ・ナンバー。
イヤ、スゴかった。
ウネちゃって、ウネちゃって!

150_2

広規さんと大二さんのコンビネーションがすさまじいのなんのって!

Img_0192今、現存する日本のリズムでは最強のチームのひとつではなかろうか?

110v♪チンチキチキチン、チンチキチキチン…「機械じかけのラム」でおなじみの大二さんお得意のシンバル・レガートが気持ちいい~!
ココも間違いなくトリハダ・ポイント。

165広規さんのMCをお借りして、コルトレーンだけじゃなくてLady Dayにも触れておこう。
あ、「Lady Day」というのはBillie Holidayのニックネームね。
ビリーが時の大統領フランクリン・ルーズベルトにちなんで、恋仲だったテナー・サックスの巨人、Lester Youngに「Prez(=President)」というアダ名をつけたところ、レスターはビリーに「Lady Day」というニッネームをお返ししたという。
何でも広規さんがダイアナ・ロスが演った映画『ビリー・ホリディ物語』を観に行った時に併映していたのが『ジョニーは戦場へ行った』だったそう。先に『ジョニー』をご覧になった。
ドルトン・トランボね。
現代は『Johnny Got his Gun』というんだけど、コレ、『Annie Get Your Gun(アニーよ銃をとれ) 』にひっかけていたのかな?
「アニー」はアニー・オークレーという女流射撃名人を主役に据えたミュージカル。
「There's no Business Like Show Business(ショウほど素敵な商売はない)」や「Doin' What Comes Naturally」、英米の子供ならきっと歌える「Anything You Can Do」といった名曲が収められた楽しい作品。
映画はジュディ・ガーランドが体調不良を理由に途中で降板し、ベティ・ハットンが主役を務めたが、ジュディの声でアニーを観てみたかった!
一方、「アニー」ではなくて「ジョニー」…この映画を観たことがある人ならおわかりの通り、そう、あまりに悲惨。
その悲惨なインパクトがあまりにも大きすぎて、広規さんは『ビリー・ホリディ物語』のことをナニひとつ覚えていらっしゃらないという。
わかるわ~。
私が小学生か中学生の時に観た際も二本立てだった。新小岩の西友にあった第一劇場で観たのは覚えているんだけど、もう1本が何だったかをサッパリ覚えていない。
ジョニーが自分の身体の状態を知るシーンはかなりのショックだったし、看護婦さんがジョニーの胸に字を書いて意思疎通を図るシーンは印象的だった。
大人も夢中になってる幼稚なマンガ映画などではなく、戦争によって「ありのまま」ではいられなくなった若者を描いた、こういう悲惨な社会的な映画を今の若い人たちにドンドン見せるべきだと思いますよ。

S41a0495今回のギグはメンバーの楽器の音にも十分に注目して頂きたいのだが、松川さんのギターの音!

170vASTORIA CUSTOMのいいところが存分にフィーチュアされている。
輪郭のはっきりしたクランチ。音の芯の太さはやっぱりMarshallならではのもの。
こんな音をほぼ生音で体験できるのもこうした規模でのライブならではのことだ。

180_2「A」でスローなブルースを1曲。
本番前には「Red House」というウワサもあったように記憶しているが、違う曲だった。
曲名はわかりません。ブルース疎いから。
今度松川さんに訊いとかなきゃ!

190_sb楽しそうに演奏しているのはSteve Miller Bandの「The Joker」。
こりゃタマらん。
アメリカン・ロックをあまり好んで聴かない私だけど、Steve Miller Bandは大好き!

200_jkコレ、平坦な歌詞を覚えるのが結構大変だと思うんだけど、松川さんは正確に歌われていた。

210v_2ギター・ソロガッツリかますちょっとハードな「The Joker」もまたよきかな。

220v松川さんは選曲に歌にギターにと超大活躍!Junichiro Tetragonでもあるぞ!

230_3もちろんこのミディアムテンポの名曲でもグイグイとグルーブを送り込む広規さん!

240v_2それを受けての大二さんのドラムスにうっとり。
叩き手の良さはもちろんだけど、NATALってやっぱり音がいいナァ~。

250v…とここまでで第一部は終了。
前半は割合軽く流した感じ?いえいえ、中身はかなりハードでした。

260_3『THE CLASSY ROCK GIG 』のCDとDVDの発売は明日です! Cddvd

<つづく>

1965年創業のNATAL(ナタール)はMarshallのドラム・ブランドです。

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詳しくはコチラ⇒バズーカスタジオ公式ウェブサイト

(一部敬称略 2017年1月30日 関内LIVE CAFE STORMY MONDAYにて撮影)

2017年4月 3日 (月)

THE CLASSY ROCK GIG / Koki Tetragon <前編>

Gregg Allmanが口の中でゴニョゴニョ歌うせいにしてしまっては熱心なオールマン・ファンに怒られること必定だが、「Stormy Monday」って「♪They call me stormy Monday」と歌っているのかと長いこと思っていた。
だって「オレのこと、『嵐の月曜日』って呼んでくれ」なんてカッコいいじゃんね。ハウンドドッグみたいだ。
コレは完全に私の思い違いで、Albert Kingの「The Hunter」と混同していた。
T-Bone Walkerに謝らなくちゃいけないね。
この「Call me ~」は他でも赤っ恥をかいたことがあった。
以前にも書いたことがあるのだが、初めてMarshallに行った時、時の重役たちや関係部署の担当者たちと中華料理店で昼食を摂った。
「そうだ、自己紹介ではコレを言おう。きっとウケるぞ~!」と事前に仕込んでおいたセリフを披露した。
食事の間に「チョット自己紹介させてください」と切り出しておいて、こう言ったのだ。
「I was born in 1962.  Please call me 'Bluesbreaker'」
ドッカ~ン!大ウケ~…となる予定だったのだが、席にいた全員がビックリして私のセリフに凍り付いた。あのシラケぶりは本当にスゴかった。一世一代のドッチラケだった。
英語は通じていても、全く意味が伝わらないようだった。アータ、Marshall初のコンボ・アンプ、「Bluesbreaker」の正式な型番は「1962」じゃないのよ!
ビックリしたのはこっちだよ。
話を戻すと、この曲の正しくは正式な題名は「Call it Stormy Monday (But Tuesday is Just as Bad)」」といって、歌もこの通り歌っている。
「Stormy Monday進行」なんていうブルース・コード進行のバリエーションが有名だが、オリジナルは至ってシンプルな12小説のブルースだ。
変形ブルースだったら、Charlie Parlerの「Blues for Alice」とかTommy Flanaganの「Freight Train」の方が何枚も上手だけどね。ロックの人、誰かこのコード進行でブルースを演奏しないかナァ。
さて、「Stormy」…ここではチョット歌詞について触れたいんだけど、「一週間」っていう歌があるじゃない?「♪日曜日は市場に出かけ~」っていうヤツ。
この「Stormy Monday」って、同じようなコンセプトの歌詞で、失恋の一週間を歌っているんだよね。
月曜日は「嵐」!
火曜日は「悪」。
水曜日は「マァ、悪」。
木曜日は「哀しいわ~」。
金曜日は「鷲が飛ぶ」。
土曜日は「遊びに行くぜ!」。
日曜日は「教会へ行くのだ」。
面白いよね~。
ココで知っておかなければならないのは金曜日のこと。
歌詞は「The eagle flies on Friday」となっているんだけど、なんでいきなり「鷲」か?
コレ、「The eagle flies」とはアメリカの表現で「給料が出る」という意味なのね。
アメリカの紙幣に鷲のデザインが施してある(あった?最近見てないからわからんな)ことから、そういう表現をするようになったらしい。
だから土曜日には遊びに行けるワケ。アメリカはかつて週給がポピュラーで、金曜日が給料日だったからね。
そこで湧いてくる疑問はTraffic。
『When the Eagle Flies』というアルバムがあるでしょ?アレ、給料日の歌だったの?
イギリスの紙幣はエリザベス女王の姿が印刷されていても「鷲」の姿は見当たらない…と思って歌詞を調べると、少なくとも「給料」は全然関係ないもっと文学的な内容だった。
「給料」ということとは関係なしに、The Kinksの「Rainy Day in June」とかElton Johnの「Skyline Pegion」とか(訂正!コレは「鷲」じゃなくてもちろん「鳩」。「翼を広げてどうのこうの…」という歌詞が似通っているのでつい混同してしまった!)、「鷲」に関する歌詞の曲ってイギリスにも結構あるんだよね。
それにしても、この人、日曜日にチャンと教会に行くところがエライね。
「金持ちの彼女ができて遊んで暮らせますように…」とお願いするのだろうか。
今日のオープニング・トークは脱線が脱線を呼んでおりますが…。
いつも言っているように私は本当におつきあい程度にしかブルースを聴かないので、あんまりノメリ込むとすぐにメッキがハガれてしまうのでそろそろ結論。
  
Muddy Watersに「The Blues Had a Baby and They Named it Rock and Roll」という曲がある。
「ブルースには子供がいて、その子たちは『ロックンロール』と名付けられた」…まったく題名の通り。
この曲も歌詞がすごく面白い。
Muddy Watersも、James Brownも、Ray Charlesも、John Lee Hookerも、Otis Reddingも「ブルースには魂がある」と言ったとサ…その子供がロックンロールなんだよ」という歌なんだけど、ヴィクトリア女王そう言ったことになっているところがスゴイ!
今では現エリザベス二世女王がイギリスの在位期間最長の国家元首になったが、この曲が作られた頃まだヴィクトリア女王がトップでイギリス最強の女王だった。
もちろんコレはシャレだけど、Muddy Watersが言っていることはすこぶる正しい。
「魂」が宿る音楽がブルース、そしてその子供が「ロック」なワケ。
コレはどうしようもない事実。戸籍は歴史的な音源を聴けば容易に調べることができる。
どこでどうおかしな血が混ざってしまったんんだか、今のロックは絶対にブルースの子供じゃないよね。80年代以降、血脈が途切れて「ロック家」はお金持ちの家からやってきたヨソの子ばっかりになっちゃった。
コレが言いたかっただけ。
ブルースって歌詞がスゴイんだよ。
とにかくスゴイ。
あの歌詞がダイレクトに理解できないのは悔しいナァ。
曲は何しろ全部同じなんだから、歌詞を理解しないでブルースを聴くのは、その魅力の半分も味わっていないことになるのではなかろうか…コレが私の最新のブルース感。
何かの突然変異で今の若い人たちが若い感性で積極的にブルースを取り入れたら面白いだろうナァ…これが私のリスナーとしての最近の夢。
  
さて、今日から3日間、横浜は関内、LIVE CAFE STORMY MONDAYからお届けする。

10ドワッ!
ステージにMarshallのフル・スタック!
それにASTORIAにNATAL。
いい光景だ…私の眼がよろこんでる。
このステージに立つのは…

20ベースに伊藤広規。

30vドラムスは岡井大二。

50v下手のギターに松川純一郎。

70v
ステージ上手は窪田晴男。

60vMarshall Blogでもおなじみの日本を代表する低音にしてグルーヴ・マスターの広規さんは、今年で音楽生活40周年を迎えた。
例によってやってみるか…40年前の出来事。
40年前は1977年。昭和で言えば52年。
私は中学3年で、ハード・ロックに飽きてきてプログレッシブ・ロックに夢中になり出した頃だった。
ラーメンが260円、銭湯が120円だったって(今は460円)。コーヒーは260円。
国鉄の初乗り運賃は60円!都バスは90円、タクシーの基本料金は380円だったって。
米ドルはこの年291円に始まって、241円で終わっている。円が50円も上がった。まだグイグイと日本が国力をアップさせていたいい時代だ。
英ポンドは460円ぐらいか…今は145円/£ぐらい。Marshallがまだベラボウに高かったのもうなずける。
レコードは2,500円だった。コレはハッキリ覚えてる。
ああ、「青酸コーラ事件」ってのあったね。
このころは「ロッキード事件」で大騒ぎしていたんだ。飛行機が学校になっただけで、あの方々のやることとレコードの値段は今でも変わらんね~。
総理大臣は福田赳夫。アメリカ大統領はこの時就任したカーター。
映画は「ロッキー」に「未知との遭遇」、「幸せの黄色いハンカチ」。今みたいにマンガ映画なんか全くお呼びでない。まだ大人のエンタテインメントと子供のそれが分かれていた時代とも言えよう。
ヒット曲はジュリーの「勝手にしやがれ」と「憎みきれないろくでなし」、そして何といってもピンクレディーのオンパレード!
「ペッパー警部」、「S.O.S.」、「カルメン'77」、「渚のシンドバッド」、スゲエな…「ウォンテッド」もこの年だ。
それとキャンディーズの「やさしい悪魔」とか。
「北の宿から」や「津軽海峡冬景色」も1977年。
まだ「花の中三トリオ」も大活躍。
ダメだ!とても書ききれない!
今の音楽界とは比べ物にならない。土台、曲のクォリティが今の音楽とはケタ違いだ。
誰か、今の音楽界を忖度してやってくれよ!
こんな年から広規さんはプロでベースを弾いている。
コレは広規さん40周年記念イヤーのロゴ・サイン。三上雅浩さんのデザイン。

80広規さんはその40周年という節目にライブ・アルバムを制作した。
それが上のSTORMY MONDAYで収録した『The Classy Rock GIG at Yokohama STORMY MONDAY』。

90まず、ジャケットがいいよね。

140

ジャケットは、2012年の『Relaxin' at IWAKI ALIOS』以降、広規さんのアルバムのデザインを手掛ける「やましたみか」の作品。

100

内部に使用されているライブ写真は、今回も私が撮ったモノをご採用頂いた。

130当日、みかさんから撮り方のリクエストを頂戴してはいたのだが、撮影スペースや照明の関係でなかなか思うようにいかず大苦戦を強いられた。
しかし…
160
その状況を忖度して頂き、バッチリと写真を収めこんでくれた!

145みかさんとの仕事はこれで6作目となる。
シンプルで上品、それでいて深みのあるデザインがいつも素晴らしい。

150私はと言えば、写真の他に今回もライナー・ノーツを担当させて頂いた。
そして、またやっちまった!
制作スタッフの皆さん、ゴメンナサイ。
あれほど「3,000字」と言われていたのに、例によって書き出したら止まらない。
少しずつ長くなっていって、一時は9,000字近くまで膨らんでしまった。
John ColtraneやSteve Millerのこととかをもっと書いたんだけど、考えてみりゃ「Marshall Blogがあるわ…」と思ってバッサリとカットした。
それでも削りに削って、7,000字。
かかる状況を忖度して頂き、何とかすべて収めこんで頂いた。
この世は「忖度」でできているんだナァ。
ナニが書いてあるかはCDを買ってのお楽しみ。Marshall Blogとの重複はホンの少し。

110_ln

120_ln収録曲は全部で10曲。

170

バンド名はKoki Tetragon。
僭越ながら私のアイデアをご採用頂いた。
ナゼ、そんな名前か…はライナー・ノーツに書いてあるのでそちらをご参照いただきたい。
アッレ~、コレ、この分だと案外マーブロに書くことなくなっちゃうな…。
とにかく!広規さんを中心とした音楽達人の名人芸がテンコ盛りだ。

180まずはそのCDに収録されている極上サウンドの素を紹介しておく。
最初に触れるべきは広規さんのMarshall。

190vヘッドは1979年製の1992 SUPER BASS。
「JMP」と呼ばれているこのルックスは1981年にJCM800シリーズに移行するまで。
1972年までは「T1992」というトレモロつきのモデルも生産していた。

200vスピーカー・キャビネットはJCM800時代のベース用4×12"の1984。
「JCM800時代」というのは、この型番はベース用のキャビネットとして何度も使われており、その歴史はとても古く、最古の1984はストレート・タイプの1960として、何と1964年に登場している。
この1984は3代目のモデルで、このあと第5世代まで生産された。

1s41a0980 大二さんのNATALはメイプルのF20というキット。フィニッシュはシー・スパークル。
会場の規模を考慮し、20"バスドラムのキットが使用された。

210vキットのオーナーはサイバーニュウニュウのセミメタルA太郎氏。
この場をお借りしてご厚意に深謝申し上げます。

220_2スネアはNATALのステイヴ・シリーズ。
大二さんが叩くと説得力の塊のようなサウンドが飛び出してくる。

230_2そして松川さんはMarshall ASTORIAを使用。

240v赤いヤツね。
ASTORIA CUSTOM。
1チャンネル・モデル。
ビロードのような美しいディストーション・サウンドが身上だ。
その奥に見えるのはお店のVALVESTATE…なつかしい~!

250_2松川さんの足元のようす。
基本的にディストーション・サウンドはASTORIAで作っておいて、ブースター系のペダルでサウンドに色付けを与えていた。

260_2

窪田さんの後ろにもASTORIA。

270vこちらはクリーン・サウンド専門のASTORIA CLASSIC。
実際には使用されることはなかった。

280_2そして、広規さんのライブに欠かせない物といえば…この南阿蘇のキャラメル・プディング。
当日会場でも大人気だった。
ソロソロ食べたいな~、オーダーしよう、そうしよう!
  
キャラメル・プディングの詳しい情報はコチラ⇒オフィシャル・ブログ

285_2会場はこんな感じ。
写真ではよくわからないかも知れないが、会場の奥には数台のビデオカメラが設置され、動画の撮影も敢行された。

290そして、その動画もDVDとなってCDと同時に発売される。
タイトルはCDと同じ『The Classy Rock GIG at Yokohama STORMY MONDAY』。

1img_0769 装丁もCDと同じ鏡開きのデジパック仕様。

1img_0782 こちらの方でも光栄なことに私が撮った写真をご採用頂いた。
1img_0777
ライナー・ノーツはバンド・メンバーの対談だ。

1img_0779
ん~、みかさんうまいことやったな~。
…というのはね~、ここの現場はメンバーさんのポジションによって光の量が極端に違うんですよ。
カメラというモノは明るいものと暗いものを同時に均等に撮ることはできないでね~、どちらかに露出を合わせなければならないことになる。
それをシャッターを切るたびに考えて、判断して、カメラを操作してるんだけど、そう簡単にいくとは限らない。
要するにこのステージの場合、松川のところだけが明るすぎちゃうんだね。
それをデザイナーのみかさんが勘案してうまく写真を料理してくれたというワケ。
ですので安心してお買い求め頂けます。
1img_0775
収録曲はCDと同じ。

1img_0772で、ですね、ライブ会場やCDショップ(TOWER RECORD、HMV、ディスクユニオン)でCDやDVDをお買い上げの方には「オマケ」がつくよ!
例えば、表がKoki Tetragon、裏がSTORMY MONDAYの特製ピック。

S_1235104678_n

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または、CDジャケ・デザインの缶バッジ。
さらにCDやDVDに収録されなかった曲を収録したCDなども用意されている。
すべて初回プレス盤のみの早いもの勝ち特典。

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さて、実況を元に戻して…向こう正面の私!
「はい、私です。こちら狭いです!」
  
カメラの設置場所などを確保する必要などもあったので、お客さんは20人限定。
ナゼ、こんなにタイトな環境で演奏したのかの理由は次回に譲るとして…それでもさすがにキツイ!

300広規さん、客席に入りこんじゃって…ソロソロ始めまっせ~!

310さあ、いよいよ演奏が始まったぞ!
  
伊藤広規の詳しい情報はコチラ⇒ITO KOKI official web site

330『THE CLASSY ROCK GIG 』のCDとDVDの発売は4月5日です!

Cddvd <つづく>

1965年創業のNATAL(ナタール)はMarshallのドラム・ブランドです。

M_natal_square

★NATALの詳しい情報はコチラ⇒NATAL Drums Official Web Site(英語版)
★NATAL製品は全国有名楽器店にてお求めください。
★NATALドラムは高田馬場バズーカスタジオでお試しになれます。バーチ、メイプル、そしてアッシュのキットの他、各種スネアドラムも用意しています。ドラマーの方、「NATALの部屋」ご指名でお出かけください。
詳しくはコチラ⇒バズーカスタジオ公式ウェブサイト

(一部敬称略 2017年1月30日 関内LIVE CAFE STORMY MONDAYにて撮影)

2017年1月24日 (火)

四人囃子ニュー・アルバム発表記念 岡井大二スペシャル・インタビュー <vol.4:最終回>

さて、発売がいよいよ明日に迫った四人囃子のニュー・アルバム、『四人囃子 ANTHOLOGY~錯~』。
大二さんのスペシャル・インタビューを交えてここまで三回にわたり、ヘタな文章で熱弁を振るってきたが、もうオールド・ファンだの若者だの言ってはいられない。
四人囃子の名前しか知らない人、ゼンゼン知らない人…エエイ!とにかくこれを機にひとりでも多くの人に四人囃子が作った音楽を聴いてもらうことを願っている。
決戦前夜の戦国武将みたいなことを言っているが、それもこれも、大二さんのセリフのせいだ。
「メンバーが直接制作に関わった作品を世に出すのはこれが最後になるかも知れない」…なんて寂しいことをおっしゃるから!
  
大二さんの狙い通り、今回初めて四人囃子の音楽に接する人もいるだろう。
もちろん誰にでも、何事にも、「好み」というものがあるだろう。
しかし、四人囃子の音楽がつまらないと思ったら、その人はもうロックを楽しむことができないのでないだろうか?
イギリスの文学者、サミュエル・ジャクソンの名言と同じだ。
「ロンドンに飽きた者は人生に飽きた者だ」
もちろん「ロンドン」のところに「四人囃子」を代入してもらうワケだが、この名言には続きがあって…
「ロンドンに飽きた者は人生に飽きた者だ。ロンドンには人生が与え得るもの全てがあるから」
後半の「ロンドン」には「四人囃子」を、「人生」のところを「ロック」という言葉に置き換えて読んで頂きたい。
チョット大上段に構えてみたが、とにかく!明日このアルバムをゲットして、永久に日本のロックの歴史に残り続けるであろう、40年の風雪に耐えた名曲の数々でロックが持つクリエイティヴィティを存分に味わって頂きたいと思う。
しかも高音質で!

9_さて、『錯』紹介の最終回はDVD。
収録されているのは、まず『ROCK LEGEND』の名のもと、2008年4月19日にJCBホール(現東京ドームシティホール)で開催されたクリエイションとのダブル・ヘッドライナー・ショウ。「ツーマン」ではない…そんな言葉はない。
ショウとしてはCSですでに放送されたものだが、今回はその際にカットされた「おまつり」を収録。
アンコールで演奏したピンク・フロイドの「Cymbaline」を除いたその日の公演のすべてが収録されている。
この公演では「オレの犬」と「SAKUMA#1」という新曲が披露され、ここにDVDの形で収録されることになった。
さらにもう一曲の新曲「Rumble」も収録。
コチラは2003年11月1日の、同じく『ROCK LEGEND』の追加公演であるCLUB CITTA'でのもよう。
すなわち、プロコル・ハルムとのダブル・ヘッドライナー。「ツーマン」ではない…そんな言葉はない。
私もこの公演を厚生年金会館で観たことは大二さんとのインタビューの中で触れた。
そして、DVDは「眠い月(Nemui-Tsuki)」で締めくくられる。
コレは2002年10月25日に同じく新宿厚生年金会館で収録されたものだ。
頭脳警察とのダブル・ヘッドライナーだった。「ツーマン」ではない…そんな言葉はない。
コレも観たな。二階席まで超満員だったよ。
頭脳警察のオープニングSEが「Who Are the Brain Police?」だったけな~。
CD同様、DVDも高画質&高音質で、いつでも四人囃子のコンサートを体験できることになったワケだ。
  
さて、大二さんに『錯』のサンプル盤を送って頂いてからの約三週間、この記事を書くために、ほぼ毎日四人囃子の音楽を聴いて来た。
『錯』だけではなく、聴き比べのために、他のアルバムのほとんどをCD棚から引っ張り出してきて改めて聴き直したのだ。
私もこれほど集中的に四人囃子の音楽を聴くことは、この先もうないかも知れない。
元より大好きなグループなのでとても楽しかった。
四人囃子というと、必ず「プログレッシブ・ロック」、それから「高い演奏能力」という枕詞がついて回る。
私は四人囃子に「プログレッシブ・ロック・バンド」のレッテルを貼ることを良しとしない事はすでに書いたし、同じ意見をお持ちの方も多いようだ。
しかし、演奏能力の高さについては何人(なんぴと)も否定できまい。
『一触即発』を21歳(大二さん基準)で、『ゴールデン・ピクニックス』をたった23歳で作り上げた能力は「奇跡」としかいいようがない。
そして、今回根を詰めて四人囃子の音楽を聴いて、その奇跡を実現させた要因のひとつに「歌詞」があると思った。
初期の歌詞を書いているのは末松康生さんではあるが、その内容の独創性については今更ココに書くまでもないだろう。
興味を引いたのはその言葉の選び方だ。
「おまつり」の「♪文句を忘れてフシだけで歌ったのさ」の「文句」なんて和風でいいな。そういえば、歌詞のことを昔は「文句」と言っていたよ。
「空と雲」の「♪長く細い坂の途中に お前の黄色いウチがあったよ」の「ウチ」。「ウチ」というのは江戸っ子の言葉だ。江戸っ子は「イエ」とは言わない。
そう、四人囃子は東京のバンドなのさ!
「ネッシー」だって「♪水はやさしい」だなんて…最近は恐ろしい水が多くなってしまったが、なんて素敵な言葉の連なりだろう。
どれもこの歌詞あっての曲、そしてこの曲あっての歌詞…に仕上がっていると思うのだ。
とにかく音楽は曲のクォリティがすべてだということを教えてくれる。
四日間ホメ続けたのでさすがにもう言葉がないが、「いまさら四人囃子」だの「たかが四人囃子」だのと間違えても言ってくれなさんなよ!
    

お待ちかねの大二さんのスペシャル・インタビューの最終回は、日本の音楽マーケットの話やNATALについて語っていただいた。

Img_0414

日本のマーケット

 M:(Marshall、以下「M」)こと音楽に関して言えば、日本はやっぱり昔から独特のマーケットということになるとお思いですか?
O:(岡井大二、以下「O」)数字だけで見れば日本の音楽マーケットは世界二位の国ですよね。
でも、残念ながらとにかくファー・イーストで「東洋の島国」。
で、90年代の後半あたりから、ポピュラリティを持つ音楽の傾向が圧倒的にドメスティックになってしまいました。
要するに海外の情報がたいして重要ではなくなっちゃった。
国内で何でも手に入るようになって、元の発想ネタが海外のナニから来ているかとかは、興味の

Img_0012先ではなくなってしまったみたい。
M:まったくそうですよね。
自分と考え方の方向性が同じで安心しました!
O:今の音楽業界を憂えているか?憂えていないか?と訊かれたら「憂えている」と答えますね。
M:とにかく売れればいい…という感じしかして来ない。
O:制作する側に「制作マインド」みたいなものがあるとしたら、「いいものが売れるようになっていって欲しい」と思うのが「制作マインド」なんじゃないかなと思います。
M:そうあって欲しい!
O:そう思いたいんだけど現実は違っていて、制作する側の人たちがチャンと対峙して自分にとっても大切な「いい音楽」を聴くのは、家に帰ってからのプライベートだけ…仕事とは別なのかな。
仕事で徹底的に叩き込まれるのは、売れたものが「いい音楽」ということ。
M:苦痛だろうな~。でも今の世の中にあっては、それこそが仕事ですから。
O:売れたもん勝ち…ということです。
M:まったく。
若いバンドさんたちの会話を聞いていてすごくそう思います。
小さいライブハウスをやって、中型のライブハウスに出るようになって、ホールでコンサートができるようになって、次は武道館でハイ上がり!…と、まるで双六のよう。
そこに音楽が存在していないような感じがします。
ステージのMCで「いい音楽」とか「音楽が好き」とやたらと「音楽」という言葉を口にするのがまた変な感じがする。


  
名盤の秘密

  
M:私もいい加減色んな音楽を聴いてきましたが、どのジャンルでもやっぱり「いいモノ」と呼ばれ

Img_01042_2ているものは良いですよね。
駄盤の類も好きで、いろいろ買い込んで来ては聴いていますが、やっぱり「名盤」と呼ばれているものには最終的にどう転んでもかなわない。
一般の人なら死ぬまで知らないような無名のプログレ・バンドのアルバムなんかもおもしろいんですが、それらはどうやっても『宮殿』を駆逐することはできません。結局何回も聴くことはない。
「名盤」といわれているジャズのアルバムもそうです。
O:その曲とか、そのテイクに行きつくまでにナニがあったかということなんです。
やはり名盤というものはその「ナニか」がふんだんに詰め込まれているから名盤になるんです。
M:なるほど!そんなこと考えてみたことなかった。
O:コレは100m走で例えれば、コンマ何秒早かったから名盤になったのではなくて、誰もやらない走り方で100m走ったから名盤になったんです。
M:とってもよくわかります。言い得て妙ですね!

    

☆この辺りでふたりとも大分アルコールが回ってきて完全に雑談タイムとなった。ナニせ笑い声で言葉が聞き取れない箇所も少なくなかったのです。

 

外タレの思い出
 
O:昔、高校生の時にバンド・コンテストに出ましてね、高中くんが出ていたんですよ。
ボクらよりひとつ年上でね。
M:何を弾かれていたですか?
O:テン・イヤーズ・アフターの「ウッド・チョッパーズ・ボール」…すごくウマかった。
その時に半ズボンはいてジェスロ・タルを演奏した小学生ドラマーがいたんですよ。

Img_0015「This Was」かなんかを演ったんですけど、すごく上手だった。
M:どなただったんですか?
O:古田たかしだったんです。
M:しーたかさん?!
O:そう。こっちは高校生で、負けまいとシャカリキになりましたね。
M:天下の大二さんでも!?
当然タルはご覧になっていますよね?
O:もちろん!
伝説の厚生年金。「あの素晴らしさを語れ」と言われたら今でも30分は余裕で語れます。
M:いいな~!うらやましい。
ご覧になった方はみんな「アレはよかった!」っておっしゃいますもんね。
私は何年か前に「『アクララング』全曲演ります」の時にようやく観ることができました。
O:音楽もライブ・パフォーマンスも「時代の違う音楽」として完成したものを見せられて、スゴイな!って思うわけです。
それまでにない音楽ですから。
M:そんな感覚に浸ってみたい…。
O:同じように、すごくそう感じたのはピンク・フロイドが最初に来た時、それからデヴィッド・ボウイの初来日…。
M:サンフランシスコから船で来たってヤツですね?オルセイア号。
帰りはウラジオストックまで船で行って、シベリア鉄道でイギリスまで行ったとか…。
O:アレ、本当にそうなの?
M:噂ではフィリピンあたりまで飛行機で来てそこから船で日本に来たとか…。
O:やっぱり?
あと正統派ロックスタイルの外タレで理屈抜きに「やっぱり外タレすごい!」、「気持ちいい!」…と思ったのはハンブル・パイとロリー・ギャラガーですかね。
M:ああ!スティーヴ・マリオットの肉声って聴いてみたかったな~!
  

コーラスの妙

  
M:外タレの話で思い出すのは、野音で楽屋のモニターで四人囃子の皆さんとルネッサンスを観ていた時、「コーラスがうまいね~」と騒いでいたら、大二さんが「向こうの連中ってコーラスする時って声を似せれんるんだよ」っておっしゃった。
O:そう。あのサウンドの音楽をやるにはこの声…みたいな発声の仕方っていうのがごく自然にあるんですよ。特に白人。
我々も民謡とか演歌って特に習わなくても何となくわかる部分があるでしょ?アレと同じなんです

Img_0103よ。
ホリーズなんかを聴いているとよくわかる。
M:「バス・ストップ」の?
O:そう。
マージー・ビートの発声の仕方とハモリ方なんですよ。
そのマッチングの具合がいいんです。ビートルズも最初の頃はそうだった。
で、そのコツを覚えた元がカリフォルニアのコーラスなんですね。喉の絞り方っていうのかな?
M:ビーチ・ボーイズみたいな?
O:そんな感じ。アレは日本でいったら例えば関西弁の発声で全部歌う感じ。
M:エエ~?
O:だからあの発声でコーラスをやっているバンドってアメリカの東海岸にはほとんどいないんですよ…(間)…ウン、確かに出ていない。
M:ハモリ方も教わらなくてもわかっている。
DNA的にそういう能力を持っているようですよね。
O:そう!我々にはそういうDNAはない。
ところが「間」には滅法強い!
M:ハハハ!リズムではなくて「間」!
O:そう。
「間」なの。イヨ~、ポン!の「ポン」を入れるところが自然にわかるでしょ?外人にはそれがケッコー苦手。

 

フランク・ザッパの思い出

M:フランク・ザッパのお話を…。
O:コワかった~。
M:エレベーターで二人きりになっちゃったんですよね?
O:そう!でもリハも本番も全部見ることができました。
M:小川銀次さんもリハをご覧になったとおっしゃっていた。
「一体リハなんかどうやって入ったんですか?」と尋ねたら「エ、円谷英二の息子って言ったら入れてくれたよ」って。

S41a1399今となっては本当かどうかはわかりませんが、まったく銀次さんらしい。
O:ハハハ!
M:で、サウンド・チェックの時にザッパがPAミキサーの人に向かって「○○HzをXXだけ上げて…」とかいちいち細かい指示を出していたそうです。
すると外の音が劇的に変わったとか。
O:そうでしょうね~。
ボクはあの時、テリー・ボジオのドラム・キットに座ったんですよ。
で、あんなかわいい顔をしていて、身体がデカいの知らなかったもんだからキットが大きいんでビックリしました。
ツーバスなんか思いっきり足を広げないと届かなかった。
M:私も15年ぐらい前にバーミンガムのドラム・ショップで実物を見ました。
テリーがイギリスに行くとそのキットが出動するんだとか。
今の冗談みたいなキットになる前でしたけど、点数は多かった。やっぱりデカいと思いました。
O:そうでしょ?
M:その時の実際の演奏はいかがでした?
今はその時のツアーのオーストラリア公演の音源が公式にCDになっています。
日本公演といえば、私は西部講堂と大阪の音源も聴いているんですが、マァ、「手抜き感」は拭えないかと…。
O:手抜と言えば手抜きなのでしょう、リラックスしてて。
でも、存在も、曲も、演奏も、世界中のどこにコレと同じものがあるんだ?というぐらいスゴイものでしたよ。
M:やっぱり?いいな~。
しかも会場は国際劇場。記者会見は吉原。裕也さんも実にイキなことをされた!
それで、若かりし日のテリーをご覧になってどう思われました?
私は高校生の時、すなわちその3年後の1979年にUKの来日公演でテリーを初めて観たんですが、ドラム・ソロに腰を抜かしました。
O:それはもうスゴかった!それしか言えない!

 

NATALについて

 

M:ちょっとドラムの話をしますと、大二さんぐらいの大御所になられると…。

S41a0198O:ゼンゼン、大御所じゃないですよ!
M:イエイエ、大の大御所でいらっしゃる!
で、ゼンゼン道具なんてお気にされないのかと勝手に思い込んでいたんです。
ところが、NATALをお試しになられた時、すごくシビアで、実は結構驚いたんです。
「ああ、なんでもいいよ!」っておっしゃるかと思ったらすごく真剣だった。
決して変に「細かい」という印象はありませんでしたが…。
O:イヤ、こちらもNATALが思った以上にいい楽器だったので、チャンと試してみようと思ったんです。
M:それで、大二さんがバスドラムにミュートを入れていないのを発見して、いつか向山テツさんがすごくビックリされていましたよね?
アレはどういうことなんですか?
O:だって、バスドラムにミュートを入れるとか入れないのは、趣味とか意地では済まない問題ですからね。
もはや入れるのが当たり前。でもNATALのバスドラはそれが不要。
アレはNATALだからできるんですよ!
M:お、うれしい予感!
O:なんでミュートを入れるかと言ったら、スッピンだとペダルを踏んだ時に「バイ~ン」とヘッドのうねりが鳴ってしまうのがうるさいから入れるワケです。
ミュートを入れなくて済むのはそうならないからで、あのNATALの作りだからこそ、そういうことができるんです。

Img_0017M:なるほど。
O:NATALのドラムは胴の鳴りがチャンと出るから、あとは何を好きにやっても出てくる音がすごくいいんですね。
M:NATALが要因ということは言うつもりはありませんが、とにかく大二さんのドラムは音もプレイも外人っぽい。
O:もしウシさんがそう思ってくれているのならとてもうれしいですし、本当にそうであったとすれば、それには自分なりの理由があるんです。
かなり持論なんだろうな…と思う。
M:え?どんな?
O:あのね、チョットこれは書いて欲しくないんですけど…

<筆者注:…と。ここでカット。

大二さんドラミングの秘密をご自身でご説明頂いた。なるほど~。テクニックというよりもリズムに関すること。
ちなみにこれは「企業秘密」とかいう理由で大二さんが文字お越しをご希望されなかったのではない。大二さんはそんなケチな人ではない。

ご考察が個人的なものであり、普遍性が低いという大二さんの謙虚な態度によるものであることをご了解頂きたい>

M:なるほど。そういう意味では森さんもそうだし、チャーさんなんかも同じような外国の空気を感じますよね。
モノマネではないオリジナルのロックをダイレクトに体験できた世代。
O:その通り。
あと、山岸(潤史)も昔からそうだよね。
M:よくわかります。
NATALが大二さんのおメガネにかなって心底ヨカッタと思っています。
O:イエイエ…「おメガネ」だなんて!

 

ドラムの音

 M:それで、いつも思うんですが。大二さんのドラミングはかなり音が大きいですよね?
すごく軽く叩いているように見えても大きい。
ところが、ゼンゼン耳障りではない。いわゆる「遠鳴り」っていうヤツ。

Img_0556エルヴィンとかポール・モチアンなんかもそうでした。
手をチョットしか動かしていないのに出てくる音がすごくクリアで大きい。
何より音が美しく、音楽的です。
で、反対に最近の若いドラマーってシャカリキになって叩いているのに音がすごく小さいように思えます。
それと、手足がすごく早く動いてテクニカルなんだけど、バッチンバッチンいってるだけで、まったく音楽的ではないように聞こえる若いドラマーをよく見かけます。
このあたりどうお思いになりますか?
O:アレは相当小さい音ですよ。
ウシさんは90年代のイギリスのバンド…例えばブラーとかオアシスとかのドラムを聴いてどう思いますか?
M:ゴメンナサイ。双方Marshallなんですが…印象にまったくありません。
O:そうか…。
あのね、いわゆる「ハード・ショット」とか「ストロング・ショット」のドラミングというのは、アメリカではなくて、実はイギリスから出てきたモノなんですね。
ボーナムとか、コージーとか…。イアン・ペイスはこんなに太いスティックで、あのスピードでアレをやったんです。
それで、正統派のハードロックを見渡した時に、そういうドラマーって、80年代になるまでアメリカから出てこなかったんですよ。アピスくらいか…。
正統派なハードロックはあってもそういうドラマーはいないんです。
M:確かにそうですね。
70年代のアメリカのドラム・ヒーローって聞いたことがない。まさかのドン・ブリューワー?
O:そう、ヒーローはそれほどいないんですよ。
コレは注目すべきことだと思うんですが、「個性的なドラム」っていうのは圧倒的にイギリスのバンド・ドラマーになるんです。
ボーカルとギター以外のパートで個性的なサウンドを作った…つまり、個人的なスタイルがサウンドを作って注目されたのは圧倒的にブリティッシュ・ドラマーなんです。
ボーナムもペイスもアメリカにはいなかった。
M:なるほど。考えたことなかった。それだけマーシャルがうるさかったってことかな?
O:ハハハ!
それで、その「ハード・ショット」なんですが、90年代になって、PAとモニターの技術が発達して、その出元のイギリスのバンドからドラムの音がちっちゃくなっちゃったんです。
M:ギター・アンプと同じですね。
O:イギリス勢から率先して音が小さくなっちゃった!
ボクはブラーが大好きだけど、あの時代からハード・ヒッターがいなくなって、ガックンと音が小さくなったんです。

Img_0053_2M:そういうハード・ショットを必要とする音楽がなくなってしまったということですよね。
O:もちろんそれもありますし、ステージの上で大きい音を出す必要が一切なくなってしまったんです。
結果、ハード・ヒッターが残ったのはアメリカを中心としたヘヴィ・メタルとデス・メタルぐらいでしょう。
M:ギターというか、ギター・アンプと同じ流れですね。
O:後はメタリカ系?
そういうバンドはとことんやり続けると思ったら、そのメタリカですら最近はキレイに音を出していますよね。
M:しかし、大二さん、ブラーとかオアシスとかそういう新しいものまでご熱心によくカバーされますよね。
私はMarshall Blogなんてのをやっていて、本当はすべてのロックに対して全方位外交をしなければならない立場だと思うんですが、その前に、もうリスナーに徹して思いっきりワガママにやらせてもらおうと思って…。
O:うん。
でも、これはボクが作る側の人間だから「勉強」のためにそういう若い世代のロックを聴いている…とかいうことではないんです。
ボクは手足をもがれようと、何をされようと一生オープンな音楽ファンでいるつもりなんです。
    

…と、大二さんが音楽への尽きぬ興味と愛情を宣言されたところでこの三時間半に及んだインタビューの幕を降ろすことにする。
途中の私の無駄話や笑い声で聞き取れない箇所、書いても第三者には通じないような話題もあって、内容はだいぶスリムになった。
大二さんのお話をお聞きしていてとにかく思ったのは、「いいミュージシャンはいいリスナーたれ」ということだ。
かつて井上ひさしが言っていたが、何かの本を書く時、最低でも書架二つ分の関連書籍を読むと言っていた。彼がタヌキかなんかの本を書くことになった時、神保町からタヌキに関する本が無くなったという話も聞いたことがある。
こうして何かをクリエイトする人というものは、常にアウトプットをはるかに上回るインプットの蓄積があるのもだ。
大二さんはロックの日本上陸とともに、当時のオリジナリティあふれる音楽を浴びるようにインプットし続けた傍ら、自分たちの音楽を創造した稀有な存在である。
そんなアーティストの話が面白くなかろうハズがない。
ここまで三回のインタビューへの反応はすこぶる良好であった。
今日でこのシリーズは完結するが、大二さんの狙い同様、老若男女を問わずひとりでも多くに方にこのインタビューを読んで頂くことを切望する。
って最後に書いてもしょうがないじゃんね!
インタビューを読んで「おもしろい」と思った人はゼヒ拡散して頂きたい。
そして、これが少しでもロックの延命対策に役立てばうれしく思う。
大好きなバンドの、最も好きなドラマーを三時間半にわたって独り占めし、自分の好きな話をうかがうことができたのは最高の幸せだった。
大二さん、ご協力ありがとうございました。

Img_0273  

四人囃子よ永遠に…。

<アウトロ>
昨日登場していただいた四人囃子研究家の灘井さんから『Fullhouse Matinee』に関する資料を追加して頂いた。
コンサートのプログラムだ。
コレは欲しいな~!尚、灘井さんには『Fullhouse Matinee』周りの情報以外にもたくさんの貴重なご助言を頂戴しました。
この場をお借り致しまして厚く御礼申し上げます。

9_pg1_4 大二さん若ッ!
念のため記しておきますが、右端が1989年ごろの岡井大二さんです。

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(一部敬称略 ※協力:灘井敏彦氏)

1965年創業のNATAL(ナタール)はMarshallのドラム・ブランドです。

M_natal_square
★NATALの詳しい情報はコチラ⇒NATAL Drums Official Web Site(英語版)
★NATAL製品は全国有名楽器店にてお求めください。
★NATALドラムは高田馬場バズーカスタジオでお試しになれます。バーチ、メイプル、そしてアッシュのキットの他、各種スネアドラムも用意しています。ドラマーの方、「NATALの部屋」ご指名でお出かけください。 詳しくはコチラ⇒バズーカスタジオ公式ウェブサイト

(一部敬称略 2016年10月20日 下北沢楽園にて撮影)

2017年1月23日 (月)

四人囃子ニュー・アルバム発表記念 岡井大二スペシャル・インタビュー <vol.3>

大二さん、読売新聞にご登場されてましたな…紙幅の関係もあり、記事の内容は四人囃子のプロフィールと『錯』の紹介にほぼとどまっているが、それほど『錯』の話題性が高いということ、あるいは四人囃子の音楽への再注目の兆しの表れであると信じたい。
こうした過去の素晴らしい音楽に耳目が集まりチョットした「社会現象」にまでなってくれるとうれしいのだが…。
そこまでが私の「野望」の第一章。
そうした社会現象で若い人たちがそうしたカッコいい昔のロックに興味を持ってもらうことが野望の第二章。
そして野望の最終章は、その若い人たちが過去のチャンとしたロックのエキスを吸収して、自分たちの感性で今のロックを作ってもらうことだ。
ま、マーブロに書いていることよ。
大二さんの言葉を借りれば「日本のオリジナルロック第一世代を知らない世代にも体感してほしい(読売新聞のインタビューより)」ということだ。
『錯』の発売まであと二日…25日の夜、または26日の朝のフェイスブックの投稿が「『錯』買いました!四人囃子最高!」という投稿で埋め尽くされることを期待している。

さて、『四人囃子ニュー・アルバム発表記念 岡井大二スペシャル・インタビュー』の第三回目の今日は『錯』の「Live Takes」を聴いてみよう。

9_今日も試聴に当たってはmarantzのCDデッキをMarshall HEADPHONESのWOBURNにつないだオーディオ・セットを使用した。

Wbさて、この「Live Takes」に収録されている内容は、『From the Vaults』と『Fullhouse Matinee』、さらに『'73四人囃子』から一曲が選ばれた音源であり、すでに世に出回っているもので、初出の音源は含まれてはいない。
「なんだよ、未発表の音源入ってないのかよ!」なんて文句を言うことなかれ。
だからはじめっから「ない」と言ってる。
その代わりに、それらの歴史的音源がデジタル・テクノロジーの進化を得てさらに良質な音源で楽しむことができる。
選曲や音質において、まさに大二さんがおっしゃるように、「四人囃子という名前しか知らない人にも楽しめるアルバム」ということが「Live Takes」でもいえるワケだ。
さて、収録曲は10曲のうち、9曲が『From the Vaults』からの選曲。
「一触即発」、「おまつり」、「泳ぐなネッシー」、「ピンポン玉の嘆き」、「機械しかけのラム」、「Nocto-Vision For You」と、四人囃子の活動を俯瞰して選ばれた代表曲が惜しげもなく収められている。
ちなみに「ピンポン玉の嘆き」は1973年7月21日、杉並公会堂における初演のもの。
私ごとながら…1978年か1979年に「Plumage」という民間のロック・サークルのコンサートがココで開かれ、サークルに参加していた高校生だった私もそこでギター弾かせてもらったのだが、ヘッドライナーで出演したBAD SCENEと同じ舞台に立ててうれしかったのを覚えている。
さて、四人囃子というと必ず「日本を代表するプログレッシブ・ロック・バンド」というキャッチが付いて回る。
話を戻して…私は大のプログレッシブ・ロック好きだが、四人囃子の音楽をプログレッシブ・ロックと感じて聴いたことがほとんどない。
大二さんは四人囃子の活動を「ポピュラー音楽でエポック・メイキングなことをする、というのが基本理念だった(読売新聞より)」とおっしゃっている。
まさにその通りのことをされたとは思うが、「プログレッシブ・ロックのバンド」という感覚が今でもないのだ。
ところが、この「ピンポン玉の嘆き」だけは別で、四人囃子を「プログレッシブ・ロックのバンド」たらしめているのは、この7/8拍子の一曲だけなのではないか?とまで思ったりするのだ。
「プログレッシブ・ロック」というカテゴリーの定義が極めて曖昧なので、コレはあくまで個人的な意見なんだけどね。

9_img_0225そして、9曲のうち、5曲が1989年9月22日と23日にMZA有明で開催されたリユニオン・コンサート『Fullhouse Matinee』で収録されたものだ。
二日のうち23日は昼夜の二回公演。すなわち「マチネー」があったワケだ。
一応記しておくと、「matinee(アメリカじんは『マリニー』みたいに発音する)」というのは昼間興行のことで、ブロードウェイの人気ミュージカルでは週末と水曜日にマチネーがある。
ロンドンのウエスト・エンドは木曜日、あるいは水曜日と土曜日とショウによって異なる。ちなみにウエスト・エンドは日曜日はお休みだ。
当然のごとく、主役級の役者さんは一日にミュージカルを二回演ることは体力的に難しいのでマチネーは代役を立てることが結構ある。
当然代役となると人気も落ちる。
すると、当日売りのチケットがものスゴイ値引きをされて売り出される。
ショウの内容自体はまったく同じなので、安くショウを楽しむにはコレを利用するのも一興だ。
私はといえば、もうだいぶ前の話だが、ブロードウェイに行った時、ジュリー・アンドリュース主演のミュージカルがかかっていて、マチネーで格安チケットが出ていた。
「ヨッシャ!」と思い、チケットを買いに行くと、案の定代役。で、やめた。
変にプライドの高い私としては「代役が演じたミュージカル」は後で自慢が効かないと計算したのだ。
ま、私なんかそんなもんですわ。
それで、四人囃子、ご存知の通り、このコンサートの音源はすでに二枚組のライブ・アルバムとして発表されている。
下の写真がそれ。
1989年といえば、私はロックから離れていたどころか、転勤で東京からも離れて信州で安穏としたサラリーマン生活を送っていた。当然ネクタイとスーツを着用していた。
したがって、このコンサートが開かれたことも知らなかったし、MZA有明なんて小屋も知らなかった。
そういう意味では「日清パワーステーション」も経験していないのです。
その時代のライブハウスいえば、東京に帰って来て辛うじて渋谷の「On Air East」でTower of Powerを観たぐらいか?(Galibardi氏の無事を祈る!)
それじゃダメじゃん!って?
ナンノナンノ!「それじゃダメだ」と笑わば笑え。
アタシャ後楽園ホールでロイ・ブキャナンやフランク・マリノを観た。後楽園ホールだぜ!ボクシングの試合じゃないぜ!ワイルドだろう?
浅草国際でキング・クリムゾンの初来日も観てるから!国際劇場だぜ!
ま、どうあがいてもこの後のインタビューに出てくる大二さんの話にはかなわないんだけどサ…。
さて、話を戻す。
『Wish You Were Here』を連想せずにはいられないヒプノシスっぽいジャケットがカッコいい。
9_img_0223_2
元の音源も何ら文句の付けようもない音質なのに、今回はそれに「迫力」というスパイスを存分に振りかけたイメージに仕上がった。
まぁ、この味を知っちゃうと、そうおいそれとは元には戻れないだろうナァ。
今回、『錯』の音質をチェックするために、『Fullhouse Matinee』と『From the Vaults』と、三枚の音を聴き比べていた。
すると、『Fulhouse Matinee』と『錯』では、一曲目の「Nocto-Vision For You」の満さんの歌いだしのピッチが異なることを発見した!…と喜び勇んでいた。
しかし、「待てよ…」と思い、ココに書く前に念のため確認をすることにした。
教えを乞うたのはMarshall GALAでの稲葉囃子のスタッフもお願いした四人囃子研究家である灘井氏だ。
ちなみに灘井さんは、四人囃子やCharさん、金子マリさんらが参加した、四人囃子の初代ベーシストである中村真一さんの追悼コンサートにご出演されギターの腕も披露されている。
そして、私の研究の結果は当然のごとく空振り。
私は『Fullhouse』→『Vaults』→『錯』と同じ音源を三段構えでリマスターしているものと思い込んでいたのだ。
今回の『錯』の音源は、『Vaults』にすでに収録されているコンサートの23日のマチネーの音源をリマスターしたものであって、『Fullhouse Matinee』のモノとは異なる音源だったのだ。
ああ、単なる私の勘違いでこんなに紙幅を割いてしまった!
お詫びに全公演をご覧になった灘井さんからの情報を付け足すことにしよう。
セットリストは基本的に全公演共通だったそうだ。
衣装も同じで森さんの髪型に少々変化があった程度。
そして、23日夜の最終の公演のみ二度アンコールに応えた。その時は出演者全員がお揃いのTシャツを召していたそうだ。
下は灘井さんからお借りしたその時のチケットの半券。
おもしろいのは、初めの二公演の席が「G列」と前の方であるのに対し、一番下の23日の夜の公演のみ「T列」と大分後ろの方になっている。
もちろん皆さん最終公演のみのダブル・アンコールを見越していたワケではないのであろうが…そうか、みんな最後の方を見たいんだな~…と、東京にすらいなかった私はそんなことしか分析できません。
灘井さん、どうもありがとうございます!

Mza_tick1_3

Mza_tick2

Mza_tick3 もうひとつ。
『From the Vaults』以外の音源は『'73四人囃子』の「円盤」だ。
『錯』には「(Full Length Version)」と記されているが、『'73』と内容は同じ。
何をもって「Full Length」なのかを灘井さんと話したのだが、我々の間では「シングルの短いバージョンとは異なり、丸々一曲全部を演奏しているという意味で『Full』なのではないか?」という結果に落ち着いた。
再三書いている通り、音質はオリジナルに比べて格段に良くなっている。
まるで見慣れたモノクロの映画が総天然色になったかのようだ。
そして、若さあふれるパワフルな演奏!
こうして「ロックがロックだった時代」の素晴らしい音源の質が向上することも若く、新しいリスナーがひとりでも増やしてくれるキッカケになることを願ってやまないい。
黙ってりゃいいんだけど、知ってることは言わないと気が済まない性質なので書いてしまうが…このジャケットに写っている1959のフルスタック(UNIT3)は四人囃子のものではなく、対バンの安全バンドのものだったとか…あ~書かなきゃヨカッタ。

73さて、大二さんのインタビューの三回目。
今回はまたビートルズの話に始まって、大二さんの音楽論について語って頂いた。

S41a9563

さらにビートルズ

O(岡井大二、以下「O」):もう一度、ビートルズについて言うと、彼らが日本に来たのは1966年の6月です。
あの時に飛行機から降りてきた彼らの格好はご存知ですよね?
M(Marshall、つまり私、以下「M」):マッシュルーム・カットに日本航空の法被。
O:そうです。
そしてあのツアーの後に「もうレコーディングしかやらない」と宣言しますでしょ?
M:フィリピンで散々な目に遭ってしまってツアーにウンザリ…。
O:それでスタジオに引きこもって1966年中に『リボルバー』を出してるんですよ。
M:はい。

SffO:さらに引きこもって、年が明けて1967年になった途端「ストロベリー・フィールズ」のシングル盤を出してるんですね。
そして、その年の夏に、つまり、日本に来た1年後に『サージェント・ペパーズ』を出してるんですよ!
1枚のアルバムを挟んで(『リボルバー』のこと)、曲からファッションから全部変わっちゃった!
M:そういうことだったんですね。
O:日本に来た時の新曲が「ペイパーバック・ライター」です。
サウンドはハードになって何かを予感させるものあっても、ビート・バンドの域は出ていない。
それが『リボルバー』から変わっていって『サージェント・ペパーズ』ですよ。
それで、ケンカしたりしても最後には『アビィ・ロード』を作ってしまったワケですよね。
M:大二さんたちの世代の方はナマでそれを見続けたんですもんね~!

Img_0019_3O:ビートルズのこの変化の順番を目の前で同時期に見ていたという「幸福感」は、申し訳ないんですが、後の世代の方々にはわからないでしょうね。
M:私の世代になりますと、『ラバー・ソウル』が65年、『リヴォルバー』が66年、そして『サージェント・ペパーズ』が67年ということは後で教わって知っていても、その間の「一年」に起きた変化にまったく実感が湧かない。
生まれてはいたんですが…。

言ってみれば、本能寺の変が1582年、関ケ原が1600年、それから徳川幕府ができたということを知っているのとまったく同じなんですよ。
こんなことに実感が湧くワケはありません。

それと同じこと…うらやましすぎます。
マァ、最近は「いい国作ろう江戸幕府」なんて言っている若い人もいるようだから「実感」も何もありませんが…。
でも大二さん!私だってダテに年を喰ってはいませんよ!
O:ほう?!
Mもう大分前の話になりますけど、イギリスに行って、若い楽器店の連中と大勢で食事をする機会がありましてね…話題はもう自然と音楽の話になる。
私が「生でレインボウを観た」、「ライブ・イン・ジャパンの時に客席にいた」なんて話をするとそのイギリス人の若い子たちが「スゲエ!握手してください!」って言うんですよ!

Img_0679_3O:ワハハ!
M:大分スケールが小さいですね、こっちは!もう5年早く生まれていればナァ。
O:そうか~。
もうちょっとビートルズの話をすると、人気に乗じて初めて4チャンネルを駆使して「コレがマルチ・チャンネル・レコーディングの極致」というサウンドを作ったのが『ラバー・ソウル』ですよね。
M:はい。
Oで、『サージェント』は4チャンネルのテレコを2台用意して、1チャンネルをシンク信号に使って7チャンネルで録音した。
でも今、7チャンネル渡されて「サージェントと同じ音づくりしてみろ」と言われても誰もできない。
M:そうでしょうね~。
O:で、なんでそんなことができたのかというと、時代の空気みたいなものもあったと思いますが、とにかく発想がブっ飛んでいた。
ビートルズだけじゃなくて、ストーンズも色々やっていたし、ザ・フーは『トミー』を作る、『ラバー・ソウル』のエンジニアだったノーマン・スミスが『サージェント』を作っているとなりのスタジオでプロデューサーとしてピンク・フロイドのファースト・アルバムを作る。
あの1枚目の衝撃たるやスゴかったですからね。
宇宙みたいな、夢みたいな、コワイような、気持ちいいような…またまたナンダこりゃ?となったワケです。
M:今では「ピンク・フロイドのファースト・アルバム」以外のモノではないかもしれませんが、当時はあの音楽が相当新しく響いて本当に『夜明けの口笛吹き』だったんでしょうねェ。
O:音楽雑誌を見れば、アメリカではフランク・ザッパみたいのが出て来る…。

Pfボブ・ディランがどうして変わっちゃったのか?
グレイトフル・デッドも出て来た。
デッドの2枚目(註:Anthem of the Sun、1968年)なんかも少年にはスゴイと興奮しても、どうなっているのか分析なんかできないんです。生活も健康的だったし…(笑)。
M:わかってます、わかってます!
Oとにかく英米で何が起こっているかわからない。
無知な少年だったから、元よりビートニクの文学のことも、ティモシー・リリーの精神世界のことも知らない、ヒッピーってなに?
ベトナム戦争は泥沼化してる、世界が混沌の極み…こうしたことが1960年代の終わりにいっぺんに起こちゃったワケです。
それで、ビートルズはアメリカで名声を得てからたった3年でそういうムーブメントの中心になっちゃったんですね。
このあたりは世界の音楽界の明治維新みたいなものだったんです。
M:私は幼稚園で、パーマをかけたら、それを見た親戚のオバさんが「ビートルズか?」と言ったのを覚えています。
そうした世の中の文化的な大きな変化は英米のお話しでしょ?
O:そうですね。日本にはそれに関するハンパなデータしか入ってこなかったですね。
レコードは一応手には入りました。どんな人たちかは雑誌の写真で何となくでわかるんですが、どんなことが起こっているのかがわからないワケです、少年からすると…。

S41a9510M:そういう感覚がピンと来ないですね。
O:そのあたりのことがわかってきたのはようやく90年代に入ってからですね。
さすがにインターネット以前に本や映画を通じてわかってきたんです。
M:90年代?
O:そんなもんです。
60年代の歴史上の人たちの本当の姿や、何が行われていたのかを広く日本人が知ったのは90年代に入ってからでしょうね。
M:時差が10年どころじゃない!

 

オリジナル曲で勝負!

M:オリジナルで勝負しよう…ということになった時、「何をどうしよう」ということはご自分たちなりのお考えというものはあったんですか?
O:何をしていいかということはわからなかったけど、何となく勘が働いたんでしょうね。
M:たとえば「ブエンディア」なんていきなりボサノバだったりしますでしょ?
あの時代にああいうアイデアはどこから出て来たんですか?
O:「一触即発」、「おまつり」、坂下(秀実さん)による「泳ぐなネッシー」なんかは『一触即発』を作る前からのレパートリーなんです。
M:「ネッシー」のコード進行のアイデアなんかはI-I7-IV-IVm-I、いわゆるターンバックっていえばいいのかな?
基本的なコード進行。アレをすごくゆっくり弾いていたりしますよね?
でも、「ブエンディア」のボサノバのアイデアは不思議。

Se_2O:まぁ、あれは「こういうの好き~」ってだけでやった感じですよ。
ジョビンの「Wave」あたりがようやくピンときて、「こんな気持ちいい音楽があったか~。こういうの演りて~な~」っていう感じでしたからね…なんて時に、「空飛ぶ円盤に弟がのったよ」をシングルで出すことによってバーターで移籍ができることになったんです。
M:お、またバーター。
O:「円盤」をシングルで出すのは忍びなかったんですけど…。
M:え、いいじゃないですか。
O:でも、出すことになって…ところがイザとなると今度はカップリング曲がない!
それで、「四人囃子用の曲じゃないけど、オレ、インストが一曲あるよ」ってB面に入れたのが「ブエンディア」だったんです。
だからアレは四人囃子向けの曲ではなかった。個人的な趣味です。
M:へぇ~。

 

昔のライブハウス

M:その頃、ライブハウスの状況というのはどんな感じだったんですか?
O:「グループ・サウンズの先輩達が出ているところ」ということになりますね。
M:さっきの話ですね?
O:で、伴奏を聴かせるスペースと音楽に合わせて踊るスペースに分かれているところが多く、そういうところでは踊るスペースの方が圧倒的に広いんです。
M:昔のジャズみたいに、要するに踊るためのバンド演奏だったワケですよね?

Img_0003O:そういうことです。ゴーゴー・バンドです。
それで、人気の出たグループ・サウンズの歌や演奏だけを聴かせるスペースとしてできたのが、ACB(アシベ)でいえば、「ニューACB」というところだったんです。踊る方は「ゴーゴーACB」。
で、そういう演奏だけを聴かせるスペースが増えていったんですが、あくまでも女の子たちがあこがれのグループを観に行くところでしたね。
M:なるほど。
O:だから、今の感覚で言う「ライブハウス」というのはロック・ポップ系にはなかったですね、当時は。
で、やっとそれらしいものが出て来た…。
M:え、どこですか?
O:…というのが、実は渋谷で言えば「ジァンジァン」だったんですね。
M:へ~。子供の頃、アレは芝居小屋だと思っていました。
O:そうそう。
だから「ありとあらゆるパフォーマンスに開放する」という意味合いがあるスペースだったんです。
M:色んなのが出てましたもんね。他には?
O:「ロック・バンドのためのスペース」ということであれば、吉祥寺のOZ(筆者注:1972年6月から翌年の9月という短期間に渡り営業していたライブハウス。久保田麻琴と夕焼け楽団、裸のラリーズ、南正人、タージ・マハル旅行団、カルメン・マキ&OZ、安全バンド、四人囃子、クリエイション、頭脳警察、ウエスト・ロード・ブルース・バンド等が出演した)なんてのもそう。
あとは屋根裏、そしてロフトですよね。
M:当時は吉祥寺なんてまだ閑散としていたんじゃないですか?
O:かなりさびしかったですね。
M:あとはホール・コンサートですか?
杉並公会堂なんかよく使われていましたよね?アレは何か特別な意味があったんですか?
O:ゼンゼンなかったです。ひとこと「地元」だから。
当時は各町の公会堂がグループ・サウンズのTV収録の場だったりもしたんですよ。
M:それと昔は学園祭が盛んでしたよネェ?「学園祭の女王」なんてね。
今はもうゼンゼンですよね?
O:今は実行委員会とかイベントのサークルとかの人たちが、「企画を立ててビジネスが成立するか?」みたいなシミュレーションの勉強の場になってしまったんですよ。
昔は、「ロックの息吹」なんて時代ですから、「学園祭」というイベントで晴れて自分たちの好きなバンドを呼んで演奏してもらうことができる場だったんですね。
そんな機会ですから呼ばれる方も張り切って演った。

 

音楽を作るということ

M:いつもMarshall Blogで騒いでいるんですが、今の若い人たちのロック界を見渡すと、「ロック」という言葉は残っていても、我々が持っている感覚で言うところの「ロック・バンド」というものはほとんど存在しない。
かといって歌謡曲もなくなってしまった。

Img_0524O:そうですね。
我々の世代が言う「正統派ロック・バンド」というのはいないですね。
それで言うと、最近の傾向として、デスクトップだけで音楽を作る人も多いですよね?
ウシさんはそういう人をミュージシャンとして認めていますか?
M:それなら「作曲家」ということになって、「ミュージシャン」っていう感じがしないかも。
O:「作曲家」は「ミュージシャン」ではない?
M:ミュージシャンは生の楽器を演奏する人のことを指すようなイメージがありますね。
O:そういうことね。「演奏」ということを重視するワケですね?
ボクはチョット考え方が変わっていて、絵に例えましょうか?
M:お願いします。
O:「匠」とか「道」の世界で考えれば、まずデッサン2,000枚描けということになるんですね。(筆者注:大二さんのお父上は、武蔵野美術大学の教授や同美術学園の学園長を務めたデザイナーの岡井睦明さん)
でも「絵を描く」ということになった時、最初からペンキを壁に投げつけたいヤツもいるんですよ。
M:ジャクソン・ポラックみたいな?
O:ダリのように細密な絵を描く人もいれば、谷岡ヤスジみたいに(筆者注:古すぎて鼻血ブー!)ドヘタ風味の四コマ漫画でいい味を出しちゃう人もいるんですね。
M:確かに。
O:要するに「出来上がり」なんですよ。
「何を生み出すか?」が一番だと思うんです。
家づくりに例えて言うと、大工さんにあたるのが 「プレーヤー」で、腕・技術を通してセンスを発揮するスタンスだと思うんです。
でもボクは設計の具合に一番興味があって、アホなものでも独創的なものにワクワクするんです。音楽の場合は発想に具体的な規制は無く自由ですから、例えば半分フランス庭園で半分日本庭園なんてことをしてもいいし、フランス庭園のド真ん中に鳥居を建てちゃうことだってできる。
出来ることなら月までハシゴ立てたい…みたいな。
M:できません!
Oだから自分の感覚で言葉を使い分けると、大工として名工を目指すのが「プレーヤー」の世界、設計図を提出して未完の想像物を世に問うのが「ミュージシャン」の世界、と考えています。
もちろん、ひとりの音楽家においてくっきり境目がある訳ではないのですが…。

S41a0872_2「プレーヤーとして」と話題にする時と、「ミュージシャンとして」と話題にする時とボクにとっては違うんです。
M:なるほど。
そういう言葉の使い分けであれば、私の感覚は作曲する人が「アーティスト」、それを演奏する人が「ミュージシャン」っていうのはあります。
もっともコレは私が考えたワケではなく、西欧人の受け売りです。横文字だけあって彼らはそれらの言葉を使い分けているように見えます。
O:で、一番大切なのは設計することからなんじゃないかということなんです。
M:はい!
O:「音楽」で言うと、「曲を創造する」ということになる。
コピーして演奏するより、どんなにボロクソに言われようと、落ち込んでしまおうと、自分はオリジナル曲を作るということの方が「ものづくり」ということにおいては、はるかに尊いと考えちゃうし、個性的な発想の人を尊敬するし、憧れてしまう。
「創作物」の積み重ねがあっての音楽の歴史だと思うんですよ。
M:私は何も作ることができませんが…まったく同感です。
O:「創作」や「ものづくり」に制約はありません。
例えばコンピュータしかイジれない人が何か曲を作る。
それに対して聴く側には賛否両論があったとしても、また、実際に上手に演奏できたとしても、コピー・バンドをやっている人達よりは、ボクはそのデスクトップ・ミュージックで画期的な作品を生み出す方の人を評価したいんですね。
M:よくわかりますが、実際そういう人はいるんですか?
O:ん~(笑)ま、そうは滅多にいませんね、確かに。
絵心・筆心のようなことが、奏でるという場には重要ですもんね。
M:それでは、スイートやエアロスミスのように職業作曲家に曲を作ってもらうというスタイルはどうお思いになりますか?
例えば、スイートはニッキー・チンとマイク・チャップマンというソングライティング・チームの曲を演奏して、たて続けにヒットを飛ばしました。(註:このふたりはスージー・クアトロやスモーキーなどにも曲を提供した大ヒット・メーカー。スージーの「Wild One」なんていいもんね~。チョット郁恵ちゃ

S41a5215_3んの「夏のお嬢さん」みたいだけど…)
エアロスミスも復活後は曲の提供を受けていますよね?
ロックはもうチャンとした音楽教育を受けたプロの作詞家や作曲家に「創作」の主導権を渡したらどうかと思うんですが…。
他の人が同じ曲を演らない限りは「持ち歌」ということでオリジナル・ソングになるワケですから。
O:それはまったくその通りですね。
M:曲は職業作曲が作って、あとはバンドがピロピロしようが、ドカドカやろうがそれは自由。
そこで腕自慢をすればいい。
O:わかります。
M:しかし、あのピロピロ系の方々というのは大変だと思いますよ。
「様式」にとらわれて他のことをするのが罪悪となってしまっているように見えます。
それこそが個性でもあるのかもしれませんが…。
O:最初にアレから入っちゃうとね~。抜け出すのがムズカシイのかも…。

<vol.4:最終回>につづく。

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(一部敬称略 ※協力:灘井敏彦氏)

2017年1月18日 (水)

四人囃子ニュー・アルバム発表記念 岡井大二スペシャル・インタビュー <vol.2>

昨日から岡井大二のインタビューつきで紹介している1月25日発売の四人囃子の新作『錯』。
「シンサクサク」というぐらいベテラン・ファンも初心者もサクサク聴けちゃうベスト盤。
四人囃子の世界には誰が入ってきてもいいし、誰でもそばにくれば、その素晴らしさを教えてくれる…そんなアルバムだ。

9_ 今日は2枚のCDのうち、『Studio Takes』を聴いてみよう。
鑑賞に当たっては、一昨日紹介したMarshall HEADHONESのBluetoothスピーカー、WOBURNに…

400 marantzのCDデッキをRCAで接続したセットを使用した。

Ncd_2

Bo『Studio Takes』の一曲目は、1978年の『包』収録の「Mongoloid-Trek」。
市ヶ谷の一口坂スタジオでのテスト・テイク。
いきなり脱線になってしまうが…いつも混んでる角ッコの小諸そばの交差点を降りて行った左側が一口坂スタジオだった。
私は、高崎晃さんが菅沼考三さんの『Convergence』というソロ・アルバムのレコーディングに客演した時、MarshallのJMD-1のお伴で丸一日お邪魔させて頂いたことがある。
その時、「あ~四人囃子もココでレコーディングしたのか!」と感慨にふけったのを覚えている。
レコーディングは昼頃から始まって、プレイバックをチェックする時以外、ほとんどスタジオから出てくることもなく、夜中までブっ続けで取り組んでいたにはビックリした。ものすごい集中力!(ベースはMASAKIさんだった)
その一口坂スタジオも5年前になくなってしまった。

さて、せっかくなので、このアルバムに託した大二さんの狙いにまんまと引っかかったことにして、「バンド名は知っているけど四人囃子の音楽を聴いたことがない人物」に成りきって聴いてみることにしよう。
  
ふ~ん、コレが四人囃子ってヤツか…まず普通にバンド名がいいんだよね~。でも普通に一回も曲を聴いたことがないからな…普通に楽しみだ。
ん~、ジャケットが普通にいいな~。
この曲は普通に歌がないな。四人囃子ってのは普通にインストのバンドだったのか?
なかなか普通に変わったメロディだな…普通にドラムがスゴイな。
ウワ!なんだこのキメ!普通にカッコいい!
なんだ、普通にメッチャかっこいいじゃねーの!もっと普通に聴いておけばよかったよ!
次の曲はナンダ?「カーニバルが普通にやってくるぞ」ってか?お、普通に歌入りだな?
  

Gpあ~、ダメだダメだ!ヤメヤメ!
今の若い人になったつもりでやってみたけど、満さんの「♪こわれかかった真っ赤な車に乗って」の声が聴こえた途端に顔が普通に浮かんじゃって!
とても四人囃子を初めて聴いている体の小芝居なんて普通にできない!…あ、「普通」が伝染っちゃった。
ということで「普通モード」に戻ることにする。(この「普通」は正しい使い方だ)
  

「円盤」みたいな言い回しになるが、佐藤満さんは2000年に開催した「マーシャル祭り」にご出演して頂いたことがあるのだ。
そう、この新しい四人囃子のベスト・アルバムは満さん時代のレパートリーから始まる。
ココからして今までの編集盤とは違う雰囲気満点。
『ゴールデン・ピクニックス』収録の「カーニバル」にしても満さんバージョンを持ってきたところがおもしろい。
この「カーニバル」と続く「ハレソラ」は1977年のFMの番組のスタジオ・ライブ。
アタマ3曲を満囃子で構成したのはものすごく新鮮な感じがするね。

Pjこうしたアンソロジー系のアルバムとなると、どうしても時系列を重視した曲順にすることが多いが、思いっきりタブーを破ったところがいかにも四人囃子らしくていい。
大二さんがよく口にする「エポック・メイキング」だ。
私は森園囃子も満囃子も両方大好きなので、抵抗があるどころか、むしろ大歓迎。
ところでこの音!…ナンダこれ?
昨日の記事で説明した通り、今回のアルバムは、既発の『From the Vaults』とその続編の音源をリマスターしたものが中心になっている。
リマスターのやりようでこんなに音が変わっちゃうのか~?
『From the Vaults』の発売からそう時間は経っていないのにもう技術が進歩しちゃったのかしらん?
どうして最初からこうしなかったんじゃ?!…という感じ。
私は貧乏性なのか、「音質が良くなったので同じCDを買い直す」なんてことにはほとんど興味がなくて、その分の資金があれば、一枚でも聴いたことのないCDを買いたいのね。
別に余命を宣告されているワケでは決してないんだけど、死ぬまでに一枚でも多くのいい音楽を聴きたいと思ってるの。
でも、コレはチョットそれを考え直した方がいいかも!って思っちゃったよ。
写真で言うと、以前の音はjpeg。今回の音質はRAWで撮って、明暗や彩度等を最良の手を加えて補正した感じ。
「デジタル処理」ということではまったく作業は同じか!
そうだナァ、わかりやすく言うと、メンバーが10歳ぐらい若返って演奏している感じがする。
大二さんのドラムの暴れ方が激しくなっているのもスゴイが、満さんのギターが以前のものとはゼンゼン違う!ピッキングのひとつひとつが「必殺」という感じ?

Is今回のCDの目玉のひとつでもある「おまつり」と「一触即発」は『From the Vaults 2』に収録されていた、小分けのパーツをガッツリとひとつにまとめ上げて微調整を加えたもの。
すなわち、小分けにされていたパーツを組み合わせて作ったオリジナル・バージョンの元、すなわち小分けされたパーツを聴かせてくれたのが『Vaults 2』。
今回は、また別の手法でそのパーツをつなぎ直して一編にしたということ。
あのハエ人間の映画があったじゃない?瞬間移動装置のヤツ。
人間の体を細胞まで分解して、それを別の場所に電送して組成し直すとかいう。
アレに似ていると言っていいのかな?
映画では移動中にハエが入ってしまってハラホロヒレハラになってしまう。
一方、『錯』では移動中に「岡井大二」という音楽を知り尽くした最高プロデューサーに入って頂いて、『Vaults 2』の音源より尚一層聴きやすい二編が出来上がった。
コレにも「四人囃子の音楽を普通に知らない人」にも聴いてもらいたい…という例の目論見がカラんでいる。

その他、「なすのちゃわんやき」、「泳ぐなネッシー」、Marshall GALAでも演奏してくれた(私が頼んだんだけど)「機械じかけのラム」等、各アルバムの人気曲がガチッと収録されている。
個人的には「昼下がりの熱い日」を入れてくれたのがうれしいな。この曲の満さんのソロは「ロック・ギターかくあるべし」を聴かせてくれる。
『Studio Takes』に収録された曲をアルバム別に分類すると、12曲中、森園期の曲が7曲、満期の曲が5曲。
そして、パフォーマンスというくくりで数えれば、双方6曲ずつのちょうど半々となった。
いいバランスじゃないか!
四人囃子に関する文物には、まるで枕詞のように「20歳そこそこでこんなスゴイ音楽を作っていた」という一節がいつも出てくる。
なのでMarshall Blogでは今回それを避けようと思っていたんだけれど、ここ数日この音源を聴いていて、また新しい刺激を受けちゃうとやっぱりそれに触れざるを得ないね。
今の同年齢の若い人達がやっていることを九九だとすれば、四人囃子がやったことは微積分ぐらいになるのではなかろうか?
こんなことを書いたら若いミュージシャンは「ほんとに普通にそうなのかよ!」ということになるだろう。
そう思うったら、このアルバムを聴いてみればいい。作戦は成功だ!
  
さて、大二さんのロング・インタビューの第二回目。
おかげさまで昨日の第一回目のインタビューは各方面から大好評を頂戴した。
ありがとうございました!
今日はまず、大二さんの大好きなプロコル・ハルムの話からスタートだよ!

Img_00312

プロコル・ハルムの魅力

 
M:ところで、四人囃子の皆さんはプロコル・ハルムがお好きですよね~?
結果、共演もされましたし。
O:ウン。

Img_0013M:どういうところこにシビれちゃってるんですか?
O:たぶん、ジェスロ・タルなんかも同じ理由で好きということになると思うんですけど、ボクは、一般にクラシックとかジャズのテンション・コードなんかを必死に取り入れて作ったイギリスのロックミュージックって、かえってダサく感じちゃうんです。
で、人によっては、ツェッペリンのこのフレーズだったら許せるけど、こっちはベタでイヤだとかいう部分が分かれている。
やっていることは近くてスレスレなんですよ。
イギリス特有の産物であるプログレ系とかのフレーズなんていうのは、アメリカ人からしたらベタで聴いていられないか、えらくカッコいいかのどっちかしかない。
ジェネシスなんかがまさにそうですよね。
M:童謡か~?みたいな。
O:そう。
それで話を戻すと、ボクなんかにすると、プロコル・ハルムみたいにクラシックのエレガンスさを作曲の段階でごく自然に取り入れている部分なんかがすこくカッコよく感じるんです。
M:へ~!
O:ディープ・パープルをはじめ、色んなバンドが実験的に取り組んだ、「オーケストラとの共演」とかとは違って感じた。
M:「エドモントン・シンフォニー・オーケストラ(筆者注:1972年のライブ・アルバムでプロコル・ハルムが共演したカナダのオーケストラ)」?
O:というか、オーケストラと共演するかどうかというのではなくて、曲作りなんですね。アメリカ人と

Ghは感覚が違う…当たり前だけど。
その典型例であり最高傑作が『グランド・ホテル』ですよね。
M:同感です。
『グランド・ホテル』についてはROLLYさんも先日新宿のライブハウスの楽屋で熱弁を奮っていらっしゃいましたね。
O:ああ~、そうだったね~。
それと『Thick as a Brick(ジェラルドの汚れなき世界←この邦題こそ「thick as a brick」だ!)』もそう。

M:アレのA面の最後なんか童謡ですもんね。
O:でもね、アレも和声を色々勉強した人なんかが聴くとベタで聴いていられないんですよ。

Tab

♪ダカダカダッ、ダカダカダッ、ダダダダ…。
M:(続けて歌う)チキチキチッ、チキチキチッ、チチチチ、ビョ~ン…。
O:ベタでしょ?
M:最高です。一生聴き続けるレコード。

<ここでプロコル・ハルムの「コンキスタドール」がBGMにかかる>
O:これ(「コンキスタドール」のこと)は当時、最高にカッコいいと思ったけど、今ではベタすぎちゃうな…好きだったけど。
M:で、そのプロコル・ハルムとのご共演はいかがでした?
O:アレね、最初の話しはキング・クリムゾンだったんですよ。
M:えッ!!
アレはKさんの企画ですよね?
O:そう、で、企画を持ちかけて下さった時に「観に来るお客さんがクリムゾンと囃子じゃ同じ気持ちで楽しめないような気がするんですが…」と言ったんです。
M:私はゼンゼンOKですけど!
それでどうなったんですか?

Img_0234O:「それじゃ、誰だったら一緒に演れる感じなんですか?」とKさんが訊くので、「ん~、プロコル・ハルムだったらシャレになるかな?」と答えたんです。
「じゃ、呼んじゃおうか?」となった。
M:ギャハハ、「シャレ」?!
O:そう!
それでしばらくしてKさんから連絡があって、「岡井さん、プロコル・ハルム呼んだからね!ちゃんとやってくださいよ!」って。
M:え~!それでキマったんですか?! いかにもKさんらしい!
Kさんって私の大学の先輩なんですよ。
それで、あの時、ギターでジェフ・ホワイトホーンもやって来た!
日本酒を持って会いに行きました。
2003年か…もうずいぶん昔の話になりましたね。
今は無き厚生年金の楽屋の廊下で恐る恐る大二さんとお話させて頂いたのをハッキリと覚えていますよ!
O;そんな!ウシさんがボクに恐る恐る話していたことなんてあったっけ?!
M:今でこそこんな感じですけど、最初の頃はビビってましたよ!
O:そうだったかな~?
M:だって相手は「岡井大二」ですからね!
イカン!案の定、話が大分脱線してしまいました!

 

大二さんのロック体験

M:その頃の洋楽はどういう感じだったんですか?
O:はい、それでボクらの当時の状況をもう少し詳しく話すと、やっぱり我々もずいぶん音楽の雑誌を読みましたが、今にして思うとその情報って正直、全然アテにならなかったんです。
ファー・イーストの国に入ってくるのは抜粋して限られた情報で、それが記事になっていたんですね。
M:そうだったらしいですね。
O:さっき、「日本の音楽の状況は10年遅れている」と言いましたが、ボクらが中学、高校の時は1960年代の後半になるんですね。
M:よさそうな時代!
O:1960年代の後半と言うのは…一番わかりやすく言うと、1967年のビートルズの『サージェン

Sgtト・ペパーズ』の前後という時期なんです。
大ゲサに言うと、ポップ・ミュージック・シーンにおいては世界的に明治維新よりゼンゼン大きな出来事が起こってしまったワケ。
時代背景がまずあるのですが、世界の世相。そこから哲学も文学も急進していて、あらゆるものが変わりました。
M:私、5歳でした。「サージェント前後論」というのはよく耳にしますが、本当にそうだったんですか?
O:当然音楽もまったくそこから変わるんです。
例えば曲作り、アレンジ、録音技術、ファッション…そもそもラブソングではない曲がヒットするということはそれ以前には、ほぼあり得なかったんです。
M:ある時に気が付いたんですが、ロック史に燦然と輝く『サージェント』って意外に8ビートの曲って少ないんですよね。
O:うん、意外にハネてるのが多い。
M:矛盾していませんかね?4ビートの曲が多いアルバムがロックの歴史を変えたなんて…。
O:近田(春夫)君もそれを言っていましたね。
近田君は「みんなスゴイって言っているけど、オレはいまいち好きじゃない。♪ツッチャツッチャが多いんだよね~」って言い方でしたけど。
M:ハハハ!「♪ツッチャ、ツッチャ」っていうのがいいな!
O:ま、それは曲のタイプの話ですよね。そういう曲が多いということ。
で、『サージェント』というアルバムが総合的な仕上がりと結果的に成し得てしまったことは前人未到で、どうしようもないぐらい大きなことだったんです。
M:やっぱりお兄さんがレコードを買って帰ってきたとか?
O:イヤ、『サージェント』の頃はもう自分で買っていましたね。
M:『サージェント・ペパーズ』がある日新譜として発売されて、それをレコード屋に買いに行くっていうことにどうも実感がわきません!
O:友達と分担して別のレコードを買って貸し借りしたものです。
今でも同窓会ではそんな話で盛り上がりますよ!

 

ビートルズのすごさ

M:ビートルズの曲って、歌詞の意味がダイレクトでわかって、そして歌ってみるところに大きな楽しみがあると思っているんです。実際に歌詞を口にしてあのメロディに乗っけるとすごく気持ちがいい。
そういうところも受けたんだろうなって思います。あ、日本の話じゃないですよ。
O:それもあるでしょうね。
ボクはね、少年時代は少なくともビートルズ派じゃなかったんですよ!男の子だから。
キャーキャー言われているモノよりも、「やっぱりサ~、ストーンズ、ヤードバーズ、スペンサー・デイヴィス・グループだよね~!」って感じ…シャドウズ、デイヴ・クラーク・ファイブから入ったクセに!
M:大二さんってヴェンチャーズじゃなくて、シャドウズ派なんですよね。いつかクロコダイルで

Img_0559Charさんとそんなお話をされていた。
O:そうなんです。
で、あの頃は男の子と女の子の好みがハッキリ分かれていた。
ビートルズは海外から入って来たとびっきりのアイドルでしたからね。
M:我々の世代はクイーンが女の子、キッスが男の子かな?いずれにしても古くなりましたね!

O:ボクはビートルズに命をかけてきた熱心なマニアではまったくないんです。
でも、ビートルズについて考えてみると、録音技術にしても、ポップスでこんな曲が作れちゃうんだ!という曲作りにしても、まわりのスタッフも含めて、ビートルズというのはファウンダー的作業のとんでもない重なりでできているんですね。
まさしくエポックメイキングで。

Img_0019M:「史上初の…」づくしですね?
O:そういうことです。
曲作りについてはあらゆる作曲家が、感覚オンリーで作曲しているジョン・レノンとポール・マッカートニーって何てスゴイんだって言っていますよね?
それからほんのチョット後のエルトン・ジョンとかの世代になると音楽の知識やクオリティも上がって、ピアノから曲を作ったりするワケですが、ビートルズは本当にほぼ「感覚」だけで作曲してるワケです。
リバプールの田舎の青年たちがですよ!
元はただの「あこがれ」だったのに。
M:『ビートルズ・アンソロジー』かな?ポールが「From me to you」だったと思いますが、サビのコードを発見して時はうれしかった…なんて言っていますもんね。
「発見」ですから!
O:たった何年かの間にあれだけのメロディを作ったことは、誰がどう考えても彼らは異常なまでの天才なんですよ。
で、彼らが目指した曲も演奏も、彼らにとっては「コレが画期的というもんだ!」なんてことはなかったんですね。
ただただ、やりたいことをやっただけ。
それなのに世界中で色んなもののパロディの対象になるほど行き渡ってしまったのは、ファウンダーとしてのオリジナリティがあまりにも詰め込まれ過ぎてるんです。
M:そうか…。
そうやって指摘されないと、当たり前すぎてただただ「いいな~」で終わっちゃいます。
O:トータル・アルバムなんてモノを考えたり、演奏不可能なアレンジで曲を作ったり、そういうことをするためのプロデューサーやエンジニアとの関係までも作った。
で、『リボルバー』あたりからドンドンおかしくなっていった…ホントは『ラバー・ソウル』あたりからなんですが…。
M:『ラバー・ソウル』は本当に素晴らしい!
O:『リボルバー』と『サージェント・ペパーズ』の前に「ストロベリー・フィールズ/ペニー・レイン」のシングル盤があって…。
ココで一番最初のボクの話に戻ると、当時の日本の少年からすると、やれビートルズがヒゲを生やしてトータル・アルバムなんてのを作るは、やれジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスなんてバンドが出て来るわ…あのヤードバーズにいたギターのウマいエリック・クラプトンが始めたバンドは「ブルース・ロック」とか言うらしい。…さらにアート・ロックなんてのも出て来るし…。
そういうのがいきなり1966~1967年のたった2年の間に出て来ちゃったんです。
M:すごい時代ですよね!まさに百花繚乱!いいな~!
O:そこでビートルズ以外のアイドルのバンドは、わがデイヴ・クラーク・ファイブを含めてみんないきなり消えていっちゃうんです。

S41a0871ホンの1~2年の間にガラッと入れ替わっちゃった。
M:私はデイヴ・クラーク・ファイブって聴いて来なかったんですが、大二さんがお好きなのを知っていて、このインタビューのために色々と聴いてみたんですが、メッチャかっこいいですよね!
O:そうでしょ?!
ちょっとデイヴ・クラーク・ファイブのことをしゃべらせてもらうと…彼らのスゴイところは、当時イギリスではビートルズ全盛だったでしょ?
だからビートルズの先輩でも後輩でもみんなマージー・ビートっぽいものを強制的に演らされたんですね。
でも、デイヴ・クラーク・ファイブだけは一切ビートルズ・サウンドに関係しなかったんです。
M:へ~。チョット黒っぽくて…声もすごくカッコいいですもんね。
O:歌もうまいし、とにかくアカ抜けてた。
M:ロンドンのバンドですよね?
O:そうです。無理です…当時ああいうサウンドが作れるのはロンドンのバンドじゃないと無理だった…無理だったはずです。
M:それにしてもですよ、私がロックを聴き始めたのはビートルズが解散して5年後ぐらいの時分からだったんですが、それでも、「ストロベリー・フィールズ」なんかも先に「名曲」と刷り込まれて「フムフム、これが名曲か…」となるワケです。ゼンゼン後追いの状態。
そこへ行くと大二さんの世代の方々は「今度のビートルズの新曲って『ストロベリーなんとか』だってよ!食べ物の歌かな?」なんて言ってレコードを買いにいらしたワケでしょ?
O:そうですね。
M:それで、買って帰って来てさっそく聴くと、あのメロトロンの「♪ホエ、ホエ、ホエ」って今まで耳にしたことがないような妙に元気がない音が飛び出して来る。
こういうのってどうだったんですか?
O:まったくわかんないですよ!「なんじゃこれ!?」です。でもとにかくワクワクする。

<vol.3>につづく。明日はインタビューお休み。<vol.3>は来週の掲載となる予定です。

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(一部敬称略)

2017年1月17日 (火)

四人囃子ニュー・アルバム発表記念 岡井大二スペシャル・インタビュー <vol.1>

2017年1月25日、四人囃子のニュー・アルバムがリリースされる。
タイトルは『四人囃子 ANTHOLOGY~錯~』。
「錯」…何かPink Floydのアルバムのタイトルみたいだね。
毎年、年末に京都の清水寺のお坊さんが「今年の漢字」なんてやっているけど、四人囃子の場合だと「錯」になるのか…。
レコード会社の解説によると、「多くのメンバーの変遷を経て、アメーバのごとくその音楽性を変容させていった四人囃子のバンド・カラーを代表するイメージ」を漢字一字で表現したのだそうだ。
私だったら「金」てつけるな。
値千金の「金」…奇しくも2016年の清水寺の漢字と重なった。
  
アルバムは『Studio Takes』と『Live Takes』からなるCDが2枚と、2008年のコンサートを中心に収録したDVDが1枚という構成だ。
ウ~ム、まずジャケットがいい。
そもそも四人囃子は『一触即発』、『ゴールデン・ピクニックス』、『包』等、ジャケットがとてもヨカッタもんね。
9_CDは2001年にリリースされた未発表音源集、『From the Vaults』と『From the Vaults 2』から選ばれた曲にリマスタリングを施したトラックと、『Studio Takes』の方には岡井大二監修のもと、「一触即発」や「おまつり」のオルタネイティブ・バージョンが今回初めてCDに収録される。
当時、Frank Zappaのように頻繁にアレンジを変えていた四人囃子のオルタネイティブ・バージョンは大歓迎だ。
下がその『From the Vaults』と『From the Vaults 2』。
左は特典のボーナスCD。1974年の中野公会堂での「Cymbaline」と1976年、渋谷公会堂でのZappaの「Overture to a Holiday in Berlin」が収録されている。
残念ながら現在は絶版になっていて入手困難なのだそうだ。
ダメよ~、ダメダメ、そういうことをしちゃ。

9_img_0467私が持っている『2』には2010年に日比谷野音で開催された「プログレッシブ・ロック・フェス」の時に頂いた大二さん、森さん、佐久間さん、坂下さんのサインが入っているのよ。

Img_00182 『2』はもう一部持っていて、大二さんから頂戴した「Thank You!! ウシさん!!」のサインが入ったバージョン。ウチの宝物だ。
自慢コーナー終わり。

9_img_0470_2もう少しこの『錯』について記す。
大二さんとレコード会社のインタビューによれば、年齢やバンドの状態を鑑みて、メンバーが直接関わって音源を出すという形はこれが最後になるのではないか…という。
そんな…寂しいこと言わないで~!
佐久間さんに対しての追悼ができていないことが、ずっと大二さんの心残りだったという。その気持ちを込めた作品でもあるのだそうだ。
そして、大二さんの気持ちとしては、「四人囃子という名前は聞いたことがあっても、実際の音楽を聴いたことがない」という人たちに手軽に聴いてもらいたい…ということを意識したそうだ。
私ですら現役当時の四人囃子は見たことがないため、昔からの熱心なファンの前では決して大きな声では言えないが、今回のこのアルバム、すごくよくできていると思った。
大二さんがこだわったという選曲や曲順への配慮が手に取るようにわかる。
その配慮が奏功して、まるで新録のニュー・アルバムのように聴こえるのだ。
まさに「anthorogy(選集、名曲集)」というタイトルに偽りのない良質なベスト・アルバムに仕上がっていると思う。
  
さて、Marshall Blogでは、このアルバムの発売を記念し、CDの紹介を交えながら、大二さんのスペシャル・ロング・インタビューを今日から4回にわたって掲載する。
実はこれから皆さんに読んで頂くロング・インタビューは、今回のアルバムとまったく関係のない環境で行われた。
平たく言えば、だいぶ前に実施したインタビューということ。
したがって、インタビュー中に『錯』の話題はツユほども出てこない。
では、何だってMarshall Blogでそんなインタビューをしたのかと言うと、チョー大ゲサに言えば、日本のロックの揺籃期から現在に至るまで、実際にその変遷を体験した方のお言葉を半永久的に記録しておきたかったのだ。
とは言ってもそこはMarshall Blogのこと、固っ苦しい話は抜きで、日ごろから私が知りたいと思っていた昔の日本ロックの状況を興味本位で大二さんから聞き出した…と思って読んで頂ければそれでOK。
ただ、若いミュージシャンを指導している立場にいらっしゃるような方々、また、お子さんがロックに興味を持っているようなロック好きのご両親には、内容に満足がいけばゼヒ若い人たちに読むようにご指導頂きたいと願っている。
実際に大二さんと同じ時代を体験した方が懐かしんで読んで頂くのももちろん大歓迎だが、若い人たちに読んで頂き、少しでも元来あったロックの姿を知っておいてもらいたいと思うのだ。
それで、もしこのインタビューを読んで昔のロックに興味を持ったなら、それこそ今回の四人囃子のアルバムを聴いてみるもよし、ビートルズに興味を持つもよし、あるいはデイヴ・クラーク・ファイブでもよし、そこから始まる音楽の無限のよろこびと楽しさ、そしてカッコよさを知ってもらいたい。
若い人たちはまだ何も知らない。
  
ところで、どうしてドラマーの大二さんがMarshall Blogかと言えば~、そう、大二さんはMarshallのドラム・ブランドNATALのエンドーサー(正確にはエンドーシー)なのであ~る!

Img_0415 インタビューに際しては大二さんに拙宅にご足労頂き、アルコールをチビチビ摂取しながら行われた。
肴は刺身。ワザワザちょいと足を延ばして買い出しに行ってきた。
マグロは天然。おいしかった~!
なんてことはどうでもいいか。
何しろ、後半ではインタビュアーの私もスッカリいい気分になっちゃって、後で録音した会話を聴いて恥ずかしくなってしまった!そもそも笑い声で言葉が聞き取れない箇所があったぐらいだった。
そんな雰囲気の中でのインタビュー、はじまりはじまり~。
養殖ではない、天然のロックの時代のお話をお楽しみあれ。

  

日本のロックの今

Marshall(以下「M」):大二さん、お忙しいところ本日はどうもありがとうございます。よろしくお願いします。
岡井大二(以下「O」):いいえ!こちらこそよろしくお願いします。
M:ではさっそく…日本におけるロックを取り巻く環境が我々の頃と大きく変わって久しいですよね。
O:日本だけでなく、海外でも状況は同じですね。
M:最近の日本の若い人たちは、「ビートルズを知らない」ということが普通になってきているみたいですね。

Img_0017O:アノですね、ロックとかポップスとかに興味を持って、そういうものを好んで聴いている以上、好きとか嫌いとかいうことは別にして、まさか「ビートルズを知らない人がいる」ということは日本ならではの現象なのではないでしょうか?
イギリスは母国ですから別にして、アメリカではあり得ないことだったはず…ところが日本ではあり得ているんですよね!しかも、とっくに!

M:そう「とっくに」です。
O:2000年以降、ビートルズを知らないポピュラーミュージック界の音楽人が確かにイッパイ出て来てしまっているらしい。
で、それは果たして「世代の違い」とかいうことだけで済む話なのかな?…と思っちゃいます。
M:私もまったくそう思います。
私はイギリスへ行く機会が比較的多く、現地ではいまだにビートルズのスゴさを肌で感じる部分があって…。
とにかく日本人の音楽に対する姿勢が欧米とはまったく違うということをいつも思い知らされます。向こうの人たちは子供から大人まで本当に音楽を日常的によく聴いていて、またよく知っている。
O:私はアメリカ人になりたい…とか、イギリス人になりたい…とか、そういう憧れはまったくないんです。日本人としての誇りも持っていますから。
ですけど、たまたま興味を持って好きになっちゃった「音楽」に関してだけは別ですね。

Img_0054野球で言えば、頂点を目指したい人がいれば、今の段階ではメジャーリーグを目指すしかないでしょ?
それと同じで、ポップ・ミュージックに関して言えば、質の高さ、レンジの広さ、ディープさ…いろんな点において、日本は海外の音楽事情にいまだに多くの事柄で追いついていないと正直思うんです。
そんな状態にもかかわらず、世間全体で音楽に集まる興味が年々薄れているのは、ナンダかなあと思いますね。
M:興味が薄れているというより、ロック系の音楽に関して言えば、「J-POP」という新しいカテゴリーを作り、すべてそこに押し込んでしまって、みんな黙ってそれだけ聴いているような…。「洋楽なんかもう要らない!」という「鎖国状態」と言うと大ゲサですけど…そんな感じ?
それは島国特有のキャラクターなのかな~?
イギリスも島国ですが、ゼンゼン違う感じがする。
アソコではどんな田舎のパブでも金曜日と土曜日の夜には地元のバンドが登場して、レッド・ツェッペリンやザ・フーの名曲をお客さんと一緒に歌う。
それを見ていて、同じ島国でも音楽のあり方が日本とすごく違うのを実感しました。
連中は英語で歌えるから…というのは抜きにしてです。
だってツェッペリンの曲にしたって「Rock and Roll」みたいなスタンダードなんかじゃなくて、「Rumble On」とかを演っちゃうんですよ!
本物だってライブでほとんど演らなかったのに!
レッド・ツェッペリンが一般の人の日ごろの生活の中にある感じがしましたね。
ザ・フーにしても「The Seeker」とかを演っておじさん、おばさんが大合唱してる。

S41a9546O:いいなあ~。
M;土台、あの音楽は連中のモノですからね。
加えて、ロックが大人のためのものという部分が残っているように感じます。イヤ、残されている…というのかな?
そこへ行くと、今この国の「ロック」と呼ばれているモノはあまりにもお子様向けになってしまっていると思います。
O:「売上」ということだけでなく…、世間の「評判指数」とでも言いましょうか…。
いわゆる評価っていうモノが売上の高いアーティストの所に何でもかんでも集まり過ぎちゃって、「たまには音楽でも」という感じの人達から見たミュージック・シーンのイメージを作っているんですよね。
M:はい。それで更にみんなそれのマネをして終わっちゃう。
O:実際、世界的にはインディーズとか自主制作でワールド・ワイドに活動している人もいるじゃないですか。それも新世代、かつディープでなかなかいいものを作っている人もいるんです。
で、日本にもそういう人たちはいて、まったくいなくなったワケでは決してない。
でも、さっきの「評判指数」の高い人の音楽は「大人向けでない」というか、面と向かってジックリ相対して楽しむための音楽とは思えないものが多いのは確かですよね。

 

昔のロック・シーン

M: 公私混同かも知れませんが、今日、大二さんから正式に歴史的なお話をうかがうのをとても楽しみにしていました。
まず、四人囃子がデビューした頃の日本のロック界とかその周辺のお話を聞かせていただけますか?
O:まず、自論かもしれないけど、知っておいて欲しい「時代の背景」というものがあるんですね。
それは、当時、アメリカやイギリスと日本では音楽シーンの状況にキッパリ10年の時差があったということです。
M:10年も?
O:例えば、1955年がロックンロールの始まりと言うことになっていますよね?
M:「Rock Around the Clock」。
O:そうです。
そのあたりからビートルズが出て来るまでの10年間…ビートルズがアメリカに進出を果たしたのは1964年ですから…それまでのその約10年は「評判指数」のトップが エルヴィス・プレスリー の時代だったんです。彼の人生を総括した場合、最終的には「偉大なキング・オブ・芸能人」として殿堂入りしているワケです。
Img_0014その後、ブリティッシュ・インヴェイジョンでビートルズの時代が来ますよね。
プレスリーと何が違ったかと言うと、「オリジナル曲」の存在の有無なんですね。
プレスリーは職業作曲家が作った曲を歌う「芸能人」としての歌手でした。
それが、ブリティッシュ・インヴェイジョンをキッカケに自分たちの「創作物」を売る時代になった。
ビートルズの世代というのはストーンズにしても、ジミ・ヘンドリックスにしても、レッド・ツェッペリンにしても、1940年代生まれの人たちなんです。
それで、ボクは昭和28年ですから1953年の生まれで、ポスト団塊世代のアタマの世代なんですね。
日本のポップスとロック音楽シーンにおいて、ボクらの前の世代はグループ・サウンズの方々なんです。
先輩達は人気者となり、レコードやTV出演などの場では世間の「評判指数」の高い音楽を演った。
でもその裏では自分達が本当にやりたい音楽スタイルを色々と見せてくれたんです。
M:なるほど。
O:それとGS旋風の前のソロ歌手時代は、主にアメリカのポップスの焼き直しが若い世代向けのヒット・ソングスだったんです。
そういうソロ歌手からウエスタン・カーニバルを経て、グループ・サウンズへとつながっていった。
まず、そういう流れがあって、そこまでは「芸能界」の時代だったんです。
M:日劇何周の頃ですね?
O:そう。
そして、その後が僕らの世代なんですよ…ボクらの世代からオリジナル曲が中心になる時代に入るんです。
自分たちで曲を作って、それをどう演奏して、どう発表するか…ということをやるようになった。
そして、それがレコード・デビューする時の「カギ」になってきた。
M:大きな変化ですよね?
O:はい。
また聴く側にも変化が表れて、「この人、この連中はどういう音楽を演っているのか?」ということが興味の対象になっていったんですね。
顔を知らなくても、「聴こえてくるモノ」で興味の対象を選ぶというように変わってきた。
M:演る方も聴く方も独自性が出てきた時代?
O:そういうことですね。
で、ボクらは大方1950年代生まれのミュージシャンですよね?
そうすると…ホラ、ね?
向こうとキッチリ10年違っているんです。
M:ホントだ…。ビートルズと10年のズレ。
O:でしょ?

Img_0232そして、この図式がそのままズレて続いて行くんです。
我々の先輩たちは「本当はこういう音楽をやりたい」とか「本当はこういう音楽が得意なんだけど」という自分たちの理想の音楽を表立ってはできないので、ライブハウスなどの比較的裏のシチュエーションで演っていた。
当時は「ゴーゴー・クラブ」って呼んでいたりしたんですが…。
M:たとえば?どんな曲が取り上げられていたんでしょうか?
O:ストーンズをやったり、アニマルズをやったり…。
で、ボクらはそういう先輩たちの演奏にあこがれていたんですが、どんどん音楽の状況が変わっていく中で、ボクらは「次世代」というような強い意識もあったんです。
M:その当時の「次世代」ね。
O:もちろん。
要するに、洋楽をマネたにしても、それを更に発展させたものを作りたいと思ったんです。
批判されようが、「ダサい!」と言われようが、とにかく「オリジナル曲」という自分たちの「創作物」を世に出したかった。
ボクらがそういう志向の始まり世代に当たるんですね。
結果、日本の音楽シーンもポップスやロックの本場の国から10年ズレていることになるんです。M:確かにそういうことになりますね~。
O:そこから始まったんですね。
まあ、大ゲサに言うと、世界的に見れば「ビートルズ世代」っていうのが「次世代」の人で、日本においては、ジャンルを問わずに物作り・曲作り・スタイル作りが活動の前提になってくる「ボクらの世代」がそれにあたるんですね。

S41a0142M:「ボクら」の「ら」とおっしゃいますと?
O:バンド・スタイルのアーティストだけで言っても、はっぴいえんど、フラワー・トラベリン・バンド等の先輩バンドを始め、ミカ・バンド、クリエーション、OZ、シュガー・ベイブ、ムーン・ライダース…とにかく続々と出てきました。
キャロルはあのロックンロールのスタイルで出て来たし、一方ではウエスト・ロード・ブルース・バンドみたいなのもいました。
ホントのブルースのマニアですからねね。
M:「マディ・ウォーターズ命」みたいな。
O:「好き」だけでは済まない。
追求度がハンパない。もう洋楽に聴こえてましたもんね。
素晴らしかった。
M:ホトケさんの声と歌、メッチャかっこいいですもんね!
O:でもね、ウエストの連中と話をすると、「お前らは好きにオリジナルを作っ分だけ自由に演れたんだよ」…なんて話してくれたこともありました。
M:それは「ブルース・スタイル」…という枠の制限という意味ですか?
O:だと思います。
その他にもスモーキー・メディスンが出て来て、その後バックス・バニーでしょ。
センチメンタル・シティ・ロマンスもそうだし、そんな中でボクらもオリジナル曲でデビュー・アルバムを出したワケです。

  

ロックのレコード・ビジネス

M:で、四人囃子は「自由が利きそうだ」ということで東宝レコードを選んで『二十歳の原点』とバーターで『一触即発』を制作した…という話は以前にもうかがっていますが、果たしてその時代、レコード会社は『一触即発』のような作品が世間で受け入れられると思っていたのでしょうか?
O:そこはまず…聞いてビックリするかもしれませんが、そもそもビートルズとヴェンチャーズこそ日本でも枚数が出て、レコード会社としてのビジネスが成立していましたが、その他はですね…「まさか!」というぐらいに、まだその頃は日本国内では枚数が出ていないという時代なんですよ。
M:なるほど…。

S41a5219O:ローリング・ストーンズにおいては、かわいそうに…キング・レコードはロンドン・レーベル時代のストーンズのアルバムでは、それほど商売になっていないと思います。
M:初期の全盛期なのに!
O:ワーナーに移って『山羊の頭のスープ』の「アンジー」でやっと日本でもストーンズが商売になり出したんです。
そういう意味ではツェッペリンの方が全然ビジネスになっていたんじゃないかな?
M:レコード業界に深い関係をお持ちになる、日本を代表するレコード・コレクターの方からお聞きしたのですが、当時レコード会社の稼ぎ頭は、圧倒的にヴェンチャーズだったそうです。
ビートルズももちろん強かったけど、ヴェンチャーズの比ではなかったらしい。
O:そうでしょうね。全国津々浦々ということでいえばヴェンチャーズの方が全然上だったに違いない。
M:ストーンズですら「アンジー」までは商売にならなかった…というのはやはりそれが「ロック」だったから?つまり歌謡曲とは全然違うということ?
O:まあ、そういうことになると思います。「ロック」というものがまだ定着していなかった。
M:まだロックと歌謡曲がまったく分かれていた時代ですよね?
O:そうなんですが、実は、70年代に入ると、日本の音楽市場に歌謡曲に分類されない新しい息吹が既に生まれているんです。
M:え、それは何ですか?
O:それは日本のフォークなんです。
M:あ、フォークか!
O:ボクは本当はフォークかロックかは、サウンドのスタイルで分かれるようなものではないと思っています。
でも、とりあえず日本では「フォーク系」とか「ロック系」のジャンル分けがあって、日本中の若者に日本のフォークが届き始めていて、レコード会社は既に大きな手応えを感じていたんですね。
M:社会的な背景もありましたもんね。
O:そうです。
そして、そこへ更に加わりそうなものとして 「日本のロック」 が登場してきました。
だから最初のウシさんの質問に答えると、四人囃子がレコード会社にどう受け止められていたかというのは、「新たな市場とジャンルが作られつつある、だったらそこは早めに手を出しておこう!」…ということだったのだと思います。
そしてレコード会社のスタッフもフォーク、ロックの息吹真っ只中の人達がこぞって入社している時代になっていたんですね。
M:実体験を経た方のお言葉をこうしてお聞きすると本当に「日本のロックが動き出してきた!」という感じがしてきますよ!

 

日本人とブルース

M:日本の場合、イギリスのようにブルースのムーブメントみたいなものがありませんでした。
イギリスのロックの動きを俯瞰して日本と照らし合わせると、そのブルース体験の欠落が今の日本のロックをある意味、四面楚歌にしてしまっていると私は思っているんです。
イギリスはそういう歴史的な下地があるので、いつでも先祖返りしてマーケットに熱湯を注ぐことができる。
ま、どうも今ではそれがすぐにぬるくなっちゃうようですけど…。
O:ウン。
ブルースって、例えばロバート・ジョンソンなんかは1930年代の人ですよね。30年代の音楽。
でも、アメリカにおいてですらブルースがポピュラーなシーンに根付いたのは50年代なんですよね。
今で言う有名な人たちの大半が50年代以降に名前が知れ渡った。チャック・ベリーやファッツ・ドミノとかと一緒のムーヴメントで出てきた…というのも、1955年にやっとアメリカで黒人の音楽が放送されるようになったから。
それまでは生粋の黒人の音楽と言えるものは公共の電波に乗せてもらえなかった。

M:40年代は、シナトラとかビング・クロスビーがアイドルだったワケですからね。

Img_0294_2O:そう。
ではロバート・ジョンソンの30年代のアメリカがどうだったかと言うと、グレン・ミラー楽団のようなスウィング・ジャズ・オーケストラによる高度なダンス・ミュージックの時代ですよね。
M:エリントンでもベイシーでも踊るためのジャズでしたからね。観賞用の音楽ではなかった。

O:ですよね。
で、いま我々が話しをしようとしているタイプのブルースはどうだったかというと、ジャズでも「ブルース」という形式はあったにしても、根っこの「ブルース」という音楽自体は、ローカルにそれぞれのエリアで恵まれない黒人が演っていたというレベルで、国全土に響き渡るような一般的なものでは決してなかった。
M:グレン・ミラーの「In the Mood」とか「Pennsylvania 65000」とかの大ヒット曲は普通のブルース形式でできているのに!
O:一方では近代クラシックや映画音楽なんかも含めて、1900年代に入ってから更に音楽はもうとんでもなく進化しちゃった。
その後、やっと黒人音楽が表に出て来てブルースも耳にするようになるんですけど、第二次世界大戦の間に米軍兵の手によってアメリカのレコードがイギリスに渡った。
それがイギリスの新たなミュージシャンを生んで、そこでブルースが根付いた。
R&Bなんかもそう。なぜイギリスにそういうブルース系の音楽の下地があるかというと、アメリカ軍が駐留したせいなんですよね。
M:そうだ!
O:そこで、日本のことを考えてみると「日本は10年ズレ状態」ですよね?
日本にとって多くの場合のブルースはエリック・クラプトンに代表されるような「ブルー・アイド・ブルース」なんです。
M:いわゆる「ブルース・ロック」ですよね?
少なくともイギリスにおけるロニー・ドネガンの「Rock Island Line」のような現象とは違う。英米の大分後追いの現象。
O:そうそう。
「ブルース・ロック」なんです。日本の若者が60年代、70年代にロックムーブメントと同時に好きになったスタイルのブルースは「ブルース・ロック」だったんです。
M:すごくよくわかる。

Img_0065O:それで、その頃ブリティッシュ・インヴェイジョンを成し遂げた以後のイギリスはどうなったかというと、独自で独特の進化を急速に遂げていったワケ。
で更に、クラプトンはアメリカの土臭い音楽に心頭していって、ジェフ・ベックはブルース・スタイルかどうかよりもエレクトリック・ギターの可能性を追求したし、ジミー・ペイジはレッド・ツェッペリンという音楽を作った。
ボクはレッド・ツェッペリンってのは究極のプログレッシブ・ロック・バンドなんじゃないかな…って考えてたりするんです。ある意味で、プロコル・ハルムやジェスロ・タルなんかもそう。
だから、イギリスでブルースが本当に若者の人気の的とされていたのは60年代のある時期だけなんだと思うんですよね。
M:でも、「ブルース」が「ブルース」として入ってきたところが日本とゼンゼン違う。
O:うん、キッカケが本当のブルースだったんですね、イギリスの場合は。日本は「ブルースの二世」から始まっている。
M:モノマネのモノマネから始まった。
O:そうなると思います。
M:モノマネのモノマネはくみしやすいですからね。

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<vol.2>につづく

2016年6月30日 (木)

KRUBERABLINKAニュー・アルバム発売!~先行レコ発Rock Show☆

TAGAWAのニュー・アルバムが発売となったことをレポートしたが、実は昨日、もう一枚重要なアルバムが世に送り出された。
送り主は赤尾和重率いるKRUBERABLINKA。
Marshall Blogには久々の登場となる。
今日のMarshall Blogはそのアルバムの紹介とレコ発ライブのレポートで構成する。

Img_0031

これがそのニュー・アルバム『Conicalify』。
くどいようだが、昨日発売となった出来たてのホヤホヤだ。
あ~、辞書を引いてもダメダメ。
「conicarify」という言葉は世の中にない。
では、ナニか?
よく道路工事の現場に赤い三角のヤツが置いてあるでしょ?
アレ、「コーン」というじゃない?「円錐」という意味。
だから「とんがりコーン」というのは「とうもろこし」と「円錐形」のダブル・ミーニングになってる。
で、coneの形容詞、すなわち「円錐形の」という意味の単語は「conic」。
タイトルは「conicalify」…「-fy」というのは動詞だ。
でも、この単語に「円錐形にする」という動詞はない。
そこで和重さんが「Conicalify」という言葉を作っちゃった。
このバンドは、歌詞はもちろんのこと、『Kaizu』とか『Blanko』とか、言語に対する感覚が独特だ。
今回、メタリックなアルバムにするつもりで、曲が出来る前からこのタイトルを考えていたそうだ。
和重さんにとって「メタル」のイメージは、「コニカル・スタッズ」。革ジャンやらリスト・バンドにひっついてる円錐状の金属の鋲。
今までは、メロン、キウイ、夜光虫、ピエロ…と命のあるものをテーマにすることが多かったが、今作は「円錐」を無機質なモノと捉え、KRUBERABLINKAの新境地を見出だそうとしている。
で、ただの「cone」や「conical」では味気ないので仮想の動詞をクリエイトしたというワケ。
キモは「オラオラ、トンガって行くで~!」ということだ。
そんな和重さんの思惑通り、どの曲にも他では決して聴くことのできないKRUBERABLINKAの創造的な音世界が広がっている。
ベテラン勢のこうしたオリジナル・レパートリーは大歓迎だ。まちがいなくConicalified!

550cd

個人的にうれしいのは裏ジャケとスリーブ内側の写真。
私めが撮ったものをご採用頂いた。NATALもバッチリ写ってる。
写真に関して、いつも和重さんからはもったいないぐらいのお褒めの言葉を頂戴するが、ナンノナンノ!これは完全に被写体がいいからなのです。
信念を持って命をかけて自分の音楽を成就させんと、もがき苦しんでいるようなアーティストは得てしてイイのが撮れるものだのだ。

1_img_0423_2 ここから先は5月に開催されたレコ発ライブのレポート。
実は、今回もがき苦しんだのは私の方でしてね。
何しろ暗かった~!
そのあたり割り引いてこの先読んでね。
会場は四谷三丁目の「ソケーズ。ロック(Sokehs Rock)」。
一体、何年ぶりに来たかな?
私、中学の時に「鼠径ヘルニア」を患ったことがありましてね…この店の名前を耳にするとどうもあの時のこと思い出しちゃうんだな。
「ソケース・ロック」とはミクロネシアのポンペイ島にある玄武岩でできた岩山で、その地区の大水を止めたという伝説が残っているらしい。
もちろん写真で見ただけだが、ビックリものの美しい景観だ。
お店はそこから名付けられたそうだ。

オープナーはセカンド・アルバムのタイトル・チューン「海図」。

20

赤尾和重

30v鈴木広美

40v鎌田 学

60v
泉谷 賢

50vそうか、言われてみると、コレって初の東京でのワンマン・コンサートなんだね。
おめでとうKRUBERABLINKA!

70続けて「Mandarin」という曲。
相変わらずのド迫力なお声と素晴らしい歌いまわし!
そんじょそこらの楽器じゃこのヴォイスをサポートできゃしない…ということで…

80v広美さんはMarshall。

90vJVM210Hと1936。
1960を使わなかったのは店のスペースを考慮してのこと。

100v鎌田さんはEDENの上下。

110WT-800とD410XLTだ。

120vとくれば当然ドラムはNATAL。

130v12"、13"、16"、24"のメイプル。
フィニッシュはシルバー・スパークル。

140「私、Marshall大スキなんですよ!」…と、実際に和重さんがステージでこれらのバックラインを紹介してくれた。

150_zs3曲目は「Zulu Suit」。
「♪ズ~ル~」の響きが耳に残るセカンド・アルバム『Kaizu』収録のノリのいいナンバー。

160v鎌田さんのベース・ソロもフィーチュア!

170v正統的なプレイで存在感満点のベースだ!

175_bsolo


〜MC
⑦Blanko (with solos ver,)

江戸川乱歩のようなタイトルの「夜光虫」は前作『Blanko』に入っている超シットリのバラード。

180_yc鎌田さんはフレットレスに持ち換え。
懐かしいナァ、MODULUS。
私、サウンフランシスコの工場に二度ほど行ったことがあるんよ。
その時の社長とは今でも大の仲良しだ。
初めて行った時、近所の比較的高級なレストランに連れて行ってもらったんだけど、隣のテーブルにDavid Grismanが座っていたっけ。
195
ジ~ックリと歌い込む和重さんも実に味わい深い。
そこら辺の女性シンガーとは重みが違う、重みが!
広美さんのソロも曲に絡み込んで雰囲気バツグン。

185続いては「ピエロの心臓」。
230_tb
コレは5/8拍子かな?

210v_ph

変拍子が何ともいえない重苦しいムードを醸し出している。
Z
奇数拍子がもたらす独特の雰囲気ってスゴイもんなんだな。
いつもMarshall Blogに書いているようにZappa好きな私は変拍子が飛び交うヘンテコりんな音楽ばかり聴いて悦に浸っているのだが、変拍子がこういう仕事をするという感覚はなかった。
メロディや歌詞が変拍子にマッチした好例といえるのではないか?効果バツグンってヤツ。
同じ変拍子でも、こういうのもあれば、Pat Methenyの「First Circle」みたいなのもあって、音楽ってのは面白いね~。Patのは22/8拍子とかいうんだっけ?

220

ここで広美さんのギター・ソロ。

200v

弾くわ弾くわ!
JVMとの相性もゴキゲン!

190そしてそのまま「帳」へ。
コレも『Kaizu』からのチョイス。

240この曲はリズムといい、メロディといい、私の感覚ではすごくKRUBERABLINKAを感じさせる。

260vドへヴィなドライビング・チューン。

270v和重さんの雄叫びが爆発する前半のクライマックス!

280vクライマックスのテンションはそのままに「Blanko」。

300_blkこの曲もアルバム・タイトル曲だけあって「いかにもKRUBERABLINKA」という雰囲気に満ち溢れている。

310v第一部はここまで。
レコ発ライブなのにまだ新作から1曲も演ってない!

320休憩をはさんでステージに上がったのはお召替えした和重さんと広美さんのふたり。
アコースティック・コーナーだ。

330_ac和重さんはマイクを一切使わず地声で熱唱。

340v曲は「Kiwi」。トリの方ね、果物じゃない。でも、果物のキウィはトリのキウィを連想させるから同じ名前になったらしいよ。
私はキウィ食べないナァ。
この曲CDではギターのアレンジが面白かったけど、こうしてギター一本でほのぼの演るのもすごくいいね。

350もう一曲はまた『Kaizu』から「単細胞」。
生Caz…素敵でした!

360vメンバーがステージが上がって演奏したのはあまりにも雰囲気が違う「Ghidoran」。
そう、メタル・タイムなのだ!

370_ghidoややスローでとびっきりへヴィなナンバーだ。
和重さんのはち切れんばかりのヴォイスがスゴイ!1959の声だ!

380vそして、ここでようやく『Conicalify』からの曲が披露された。
まずは「Chamber」。
6弦を全音下げたヘヴィなリフが作りだす正統派ブリティッシュ・ハードロック。

390_cham和重さんの歌が入った瞬間、「KRUBERABLINKAのロック」になる。

400v続けて『Conicalify』から「場所」。

410_bsこの曲も広美さんのエッジ―なリフでスタート。
やっぱりいいね~、こうしたシッカリした「リフ」を持った曲というのは。ロックはこうでなくちゃイカン!
CDを聴く時には大変に凝ったアレンジのギター・パートに注目してもらいたい。

430v
しかし、この声!
まさに肉食系ボーカル。
和重さんの歌を聴くと、この世にハード・ロックがあってヨカッタ!と思う。

S41a0479 和重さんの歌と歌詞、広美さんのギターと曲、そして、それらにエネルギーを注入し、ドラマチック演出する二人の鉄壁のリズム隊。

420それにハードロックの神様のバックアップ…『Conicalify』もそうした要素で出来上がっている。

450

もう一曲『Conicalify』から「Cypress」。
「Cypress」とは「糸杉」のこと。
「糸杉」といえばゴッホ。糸杉を描いた数多くの作品を残しているのはご存知の通り。
メトロポリタン美術館の「糸杉」とか近代美術館の「星月夜」なんてホンモノを見るとスゴイよ。もう絵からパワーやら空気感が出まくってんの。
この曲の歌詞を読む限りゴッホとは関係なさそうだ。
ちなみにゴッホは英語で「ゴッ」と発音する。「ホ」は言わない。

440_cy歌とギターで静かに始まり、リズム隊がバシッと入って来るところなんざトリハダものだ。
『Conicalify』は五曲入りのミニ・アルバムだが、この日その内の三曲を取り上げた。
他にも目の覚めるようなスピード・チューンの「Test tube」、パワフルでエキゾチックな雰囲気が印象的な「Caldera」が収録されている。
従来のファンならニヤリとするような典型的なKRUBERABLINKA節が満載だと思うし、彼女たちの音楽が未経験のブリティッシュ・ハードロック・ファンにとってはこのアルバムは新しい楽しみとの出会いに場になるだろう。
若い人たちにも是非聴いてもらいたい。

450v_gok本編の最後はファースト・アルバム収録の「業火」。

460vファースト・アルバムは衝撃的だったな~。
サウンドは往年のブリティッシュ・ハードながら、懐古主義的なところが微塵もなく、かといってチャラチャラと流行りの要素を取り入れるなんて愚行をまったくせず、「今」のハードロックを演じて見せた。
そして、その衝撃が『Kaizu』、『Blanko』を経て、『Conicalify』に見事つながった。
やっぱり流行りのモノはダメだよ。古くなって消えて行くだけ。

480vアンコールは「Going Down」。
コレは日本ではJeff Beckが広めたことになっているのかな?Freddie Kingかな?
作曲はDon Nixという人。
テネシー出身(田無じゃないよ)のアメリカのミュージシャン兼プロデューサーでLeon RussellのShelter Recordsに参画しているほか、たくさんの有名アーティストをプロデュースした。
ジョージと組んでバングラデシュのコンサートを手掛けたのもこの人。
470

日本のミュージシャンもジャム・セッションなんかでよく取り上げるが、和重さんが歌うとまたひと味もふた味も違うナァ~。

S41a0500 そして、KRUBERABLINKAのキラー・チューン、『Don’t be so mad』。

S41a0451四人が一丸となった素晴らしいパフォーマンスは、初の東京でもワンマン・コンサートを締めくくるにふさわしいものであった!

500v

S41a0425

530v昨日発売された『Conicalify』、ハードロック・ファンはとにかく聴いてみてくだされ!
間違いなく「Conicalified」されるから。
ショウの間、Marshallファミリー・ブランドやMarshall Blogの紹介をして頂いた赤尾和重さんにはこの場をお借りして心から御礼申し上げる次第である。
KRUBERABLINKAの益々のご活躍をお祈り申し上げております!Long live hard rock!

550cd

KRUBERABLINKAの詳しい情報はコチラ⇒KRUBERABLINKA Facebook

540v1965年創業のNATAL(ナタール)はMarshallのドラム・ブランドです。

M_natal_square

★NATALの詳しい情報はコチラ⇒NATAL Drums Official Web Site(英語版)
★NATAL製品は全国有名楽器店にてお求めください。
★NATALドラムは高田馬場バズーカスタジオでお試しになれます。バーチ、メイプル、そしてアッシュのキットの他、各種スネアドラムも用意しています。ドラマーの方、「NATALの部屋」ご指名でお出かけください。
詳しくはコチラ⇒バズーカスタジオ公式ウェブサイト


(一部敬称略 2016年5月21日 四谷Sokehs Rockにて撮影)


2016年6月29日 (水)

TAGAWAセカンド・アルバム『Wind』発表!~レコーディング潜入レポート

出ない
出ます
出る
出るとき
出れば
出ろ
…で今日出たのがTAGAWのセカンド・アルバム『Wind』!
2009年のLOUD PARKの再演的な意味合いで結成されたTAGAWA。(その時のようすはコチラ
一枚目のアルバム『Flying Carpet』を早速リリースしたものの、超多忙な三人のこと、果たしてそれに続くアルバムの発表などあるのかどうか、実は前々からチョット訝しんでいたのだが…。
おめでとうTAGAWA!

アルバムの話に入る前に…知ってた?
「出す」は「五段活用」して「出る」は下一段活用するんだってよ!上のヤツは「出る」の方。
んなこと知らないよね~!
意味は似てても、「出す」は他動詞で「出る」は自動詞だから活用が違うんだって。
普段、英文を書くときは自動詞と他動詞の違いを気をつけているけど、「慣れ」ってのは恐ろしいもので、我々は習わなくても正確にこれらの言葉を使うことができる。
今はどうなっているのか知らないけど、こういうの中三ぐらいで勉強したよね?
わかるワケもなければ、おもしろいと思うワケがない!


一方、おもしろかったのは当のTAGAWAの『Wind』。
ジャケットはファーストの『Flying Carpet』同様のスワロフスキー入りのゴージャス・バージョン。
シャケ写は「空飛ぶじゅうたん」に乗り込んだ三人のメンバーだ!
実は、このアルバムのレコーディングのお邪魔していたのだ。

10ちょうどこの日は浩二さんのお誕生日に当たっていた。

20vレコーディング作業に入る前にお誕生会!

30おめでとうございます!
浩二さん、51になるのか…。パワフルだナァ!
この日も「51」にふさわしい暴走機関車のような壮絶なドラミングを見せてくれた。

40vさて、レコーディング。
まずは楽器のセットをして…

50機器の調整に入る。

60スゴイね、メカが!
150年ぐらい前は蓄音機一台を囲んで録音していたのに…。

70全員のサウンド・チェックの前にまずはギター・アンプのチョイス。

80v数か月前に試してもらったASTORIAがスッカリ気に入ってしまったヒロアキくん。
今回のレコーディングに使ってみたい!ということでCUSTOMとDUALを用意した。

90v前回一番気に入ったのはDUALだった。

100さすが、ヒロアキくん。
すでに勝手知ったるところで、スラスラとセッティングして早速ニンマリ。
やっぱりASTORIAの弾き心地はタマらんもんね~。

110vで、やっぱりDUALが採用された。

120vそして、メインのアンプもサササとセッティング。

130vヘッドは愛機、JVM210H。

140ブースに入っているキャビネットはこれまたヒロアキくんの相棒、1936V。

150収録する曲の打ち合わせをして…るようには見えないか?

160絶対に妥協を許さない音にうるさい人たちばかりだもんでエンジニアさんも大変!

170vさて『Wind』、前作はバンド名にならってヒロアキくんの作品がフィーチュアされたが、今回はメンバーが曲を持ち寄ったり、太鼓と共演したり、ゴージャスなストリングスが加わったりの一大スペクタクル。
そうした新企画のひとつで、この日はてらちん作詞&歌の「Crazy Gun」の収録だった。
この曲は、ヒロアキくんの中でAC/DCっぽいサウンドを欲していたため、JVMよりはクラシカルな歪みのASTORIA DUALを使用した。

180リズム隊のお二方も準備OK!
270
残念ながら時間がなくててらちんの歌入れまでスタジオにいることができなかったが、完成した音源を聴いてビックリ!
てらちんの歌、メッチャいいのよ!
何の予備知識もない人にいきなり「Crazy Gun」を聴かせたら、誰もてらちんが歌っていることを当てられないのではなかろうか。

190v浩二さんも「Running Light」という曲を提供。
シンプルなリフでタイトなロック感を爆発させるへヴィ・チューンだ。

200vプレイバックを聴いてみよう。
ん~、バッチリ、バッチリ!と思う私はアマチュアの極み。
みなさん、チョットでも気に食わないともうダメよ。トコトンやり直す。
コレ、忍耐の要る仕事だぜ~。

210今回もライブでよく演っている田川ナンバーが再録された。
お、録音するパートが変わったのでアンプをJVMにチェンジした。

220今回収録されたおなじみの曲は「Bound」、「キミを乗せて」、「Lofty Tree」、「平和の風」等。

230vが、前作の「My Eternal Dream」同様、リズム隊が変わっているので、どれもまるで別の曲のように聞こえる。

240てらちんは冒頭のナンバー、「Jack and Coke」も提供している。

250v様々な試みがなされたアルバムだが、ストリングスの起用は意外だった。
なかんずくボーナス・トラックで収録されている「平和の風」のストリングス・バージョンには驚いた。
第一ヴァイオリン、第二ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスからなる編成、人気アレンジャー本田優一郎氏による平歌パートのカウンター・メロディが素晴らしい。いわゆる「対位法」というヤツ。

260v今日はここで脱線させて頂く。
最近、武満透と立花隆の対談集、『武満徹・音楽創造への旅(文藝春秋社刊)』という本に夢中になっている。
紙幅をギリギリまで字で埋め尽くした二段組で、しかも800ページ近くの大著なのだが、メッチャクチャ面白い!重いのをガマンして寝っ転がって読んでたら肩がおかしくなっちゃった。あの時は『NAONのYAON』の数日前でかなりビビったけど何とか治った!とにかく面白すぎて読み出したら止まらない。
ご存知の通り、武満徹は正規の音楽教育を受けずして世界的な作曲家になった奇跡の大天才だが、この本の中で、「西洋音楽というのは、結局は対位法の技術なんですね。僕は正式に音楽の教育をうけていないので対位法がよくわからない。いつも引け目を感じているんです」…みたいなことを言っている。
なんかカッコよくない?
世界的に有名な大作曲家がこんなことを言うなんて…ってなことを書きたかったの。
さすがは「知の巨人」、立花隆が膨大な量のインタビューを、数々の証言を交え、すさまじく緻密な構成で読ませる名著だ。音楽好きにはタマらん一冊。
そして、そんな一曲が『Wind』には収められているというワケ。

Tttt ところで『Wind』の発売は本日だが、レコ初ツアーは先行して行われ、月曜日に千秋楽を迎え幕を閉じた。

290写真はその時のようす。

300v演奏に、トークに、と盛りだくさんの内容。

310vもちろん、後日Marshall Blogでレポートするのでお楽しみに!

320vまずはTAGAWAのセカンド・アルバム、『Wind』をお楽しみあれ!

『Wind』の詳しい情報はコチラ⇒FretPiano

330(一部敬称略)

2016年5月18日 (水)

MEJIBRAY情報!~未公開写真つき

順調に快進撃を続けるMEJIBRAY。
昨年末には『NEXT MAJORITY VENOMOS』と銘打ったワンマン・ツアーを敢行。
東京はEX THEATER ROPPONGIで千秋楽を迎えた。

10当然、ステージにはMarshallの壁!

20「猛毒」のSEでスタートした狂熱のステージ。

30

40MiA

50背後にはMarshallウォール!

60愛用のJVM410Hはステージそでにセットされている。

70恋一

80メト

90vオープニングの「枷と知能」から猛然とブッ飛ばし続ける。

100v「SECRET No.03」や「パラダイム・パラドックス」、「NENOMS」といった人気曲が次から次へと飛び出し観客をたたみ込む!

110vトーチやレーザーなどステージの演出もゴージャス!

120ひと際大きく響く「MiA~!」の歓声!

130メンバー渾身のパフォーマンスは見ごたえ十分だった!

140ほとんどMCがないのはMEJIBRAYのスタイル。
この日も演奏に集中した18曲で本編を終わらせた。

150アンコールは、3月にリリースされたシングル曲「Agitato GRIMOIRE」だった。

160v「Agitato GRIMOIRE」に続き、4月に二ケ月連続でシングルをリリース。
17枚目のシングルは「THE END」。

170cd_4今回も3種類のスリーブで登場だ。

180cdこれが通常盤。

190cdさらに!
MEJIBRAYは「THE END」を引っ提げてデビュー5周年を記念した全国ツアー『THE END to be or not to be』の真っただ中。
千秋楽は6月10&11日、赤坂BLITZの2Days。
快進撃のMEJIBRAYなのだ!

MEJIBRAYの詳しい情報はコチラ⇒MEJIBRAY Official Web Site

200(一部敬称略 2015年12月18日 EX THEATER ROPPONGIにて撮影)

2016年4月12日 (火)

杉本篤彦のニューアルバムはJVM!~公開レコーディングの現場から

ソウルフルでR&B、ゴキゲンなジャズを聴かせてくれる杉本篤彦。
Marshall Blogに登場する数少ないジャズ・ギタリストのひとりだ。
その杉本さんが公開レコーディングを敢行するということを耳にし、現場にお邪魔してきた。
30

これがそのニュー・アルバム『Tomorrow Land』。
露出を抑え、低い色温度の風合いのジャケットがまずいい。

10cdレコーディングは基本的に「せーの」の一発録りだ。
まずはリハーサルで曲を確認。
20
杉本さんのギターの他にメンバーは…
キーボードの星牧人

40ベースは平岩カツミ。

50ドラムに板垣正美

60そして、杉本さんはMarshall!
そうでなきゃMarshall Blogに登場しない。

70v今回はJVM201Hと1936。

80v_2もちろん使うのはクリーン・トーン。
CLEAN/GREENで歪まない設定にして、キャビネットにはキャスターを装着した。
杉本さんはフルアコのようにかなりボディ鳴りのよいセミアコをご使用になっていので、低音がダブつかないよう配慮したのだ。
…というといかにもこの時に試行錯誤を重ねたように思われるかもしれないが、実はこのセッティングは昨夏の葉山ジャズで実証済み。
あの時の音

があまりにも素晴らしかったので、同じ組み合わせでレコーディングに臨んだというワケ。

90杉本さんは以前、トランジスタ駆動のMarshallの汎用モデルMGシリーズをご使用されていたが、
それでもバツグンにいい音を出されていた。
トランジスタ・アンプといって侮ることなかれ、ジャズ・ギターの大巨人、Wes Montgomeryもトランジスタ・アンプで進撃を重ねたのだ。

100でも、やっぱり真空管アンプの方がいいな。
ウォームさが違う。かといって甘ったるくなりすぎず、キリっとした音像が実に気持ちいい。
とにもかくにも「いい音」としか言いようがあるまい。

110vバックを務めるのは、他の現場でも杉本さんの作品を演奏する機会がある方々だが、初めて演奏する曲もないワケではない。
それなのにシレっと曲をさらっただけでリハーサルは終了。
ま、ジャズの人はみんなこうなのは先刻承知だけど、やはり演奏技術の高さに舌を巻いてしまう。
今のMarshall Blogで書いたかどうかは定かではないが、私の大学時代からの親友で現在プロで活躍しているサックソフォニストがいる。
彼に誘われてある小編成のジャズ・オーケストラのコンサートにお邪魔したことがあった。
ゲストで有名な男性ボーカルが登場して、スタンダード曲の「Too Close for Comfort」をMel Tormeの『Swings Shubert Alley』のスコアで演奏した。
ジャスを聴き始めたころよく聴いた好きなレコードだったし、Sammy Davis Jr.も愛唱していた大スキな曲だったのでうれしかった。友人は確か2番テナーを吹いていた。
彼も無類の酒好きで、帰りに「ウチでイッパイやっていかないか?」と誘うと、気持ちよくそれに応えてくれた。
早速イッパイやり始めた。BGMは当然ジャズだ。「そうだ…」と思い出して、『Swings Shubert Alley』をかけた。
1曲目に収録されているのがその「Too Close for Comfort」なのだが、彼は曲が始まってしばらくしてこう言った…。
「アレ?コレってオレたちがさっき演った曲じゃん?」
こっちはそれをわかっていてそのCDをかけたんだけど…。
彼はこの曲を知らなくて、ステージで初見で吹いたというのである。
それに驚くと、「え、なんで?それができなきゃお金は一銭ももらえないじゃん?」と涼しい顔をして言ってのけやがった。
イヤ、音楽家なんだから譜面がスラスラ読めて当たり前なんだけど、こちとら「ロックの国から来た人間」だからして、こういうことに心底驚いちゃうんだよね。
だって、ロックのギターの連中が「譜面」と呼んでいる、コード進行とちょっとしたキメの譜割りが記してあるモノとはワケが違う。
職人ってのはホントにスゴイ。
でも、上には上がいて、モダン・ジャズの開祖にして人類史上最高のアルト・サックス奏者Charlie Parkerは、自身の『With Strings』というアルバムのレコーディングにクラシックのミュージシャンを呼んだ時、彼らの読譜力や演奏能力に舌を巻いたというのだ。Parkerが驚いたということに驚く。クラシックの曲の譜面ってホントすごいもんね。
ま、何はともあれ、家で寝っ転がって、ジャズでもクラシックでも好きなCDでも聴いているのが一番ラクでいい。
これを書いていて思い出したけど、その友人がウチに来た別の機会に飲み過ぎてヒジが滑り落ち、座っていたイスのひじ掛けに脇腹を強打してしまったことがあった。
酔いが醒めてみると、どうにもその脇腹が痛い。
何日経ってもまったく痛みが収まらないので、病院でレントゲンを撮ってみたら見事にアバラ骨にヒビが入ってやがんの。
アレ、手術するほどじゃもちろんないし、治療のしようがないっていうんだよね。放っておくより仕方がないという。
しばらくの間ものすごくツラかった。
ハイ、本番の準備ができたようなので今日の脱線終わり。

115お客さんが入って会場の空気が変わる。

120_2…といたいところだけど、4人とももう完全に音楽に入り込んでいて、周囲のことなどまったく意に介さないようす。

130_2

140v_2

150v_2

160v譜面を掲げて杉本さんが曲を紹介し、レコーディングの段取りが説明される。

170コレ、杉本さん直筆の譜面。
メッチャクチャきれい!このまま販売できる。
愛用の写譜ペンを使用されているとのことだが、コレなかなかうまく使えないんだよね。
私も昔チョットやってみたけど、グチャグチャになっちゃってとてもこうはならなかった。
杉本さんの書く譜面は「読みやすい」とミュージシャン仲間からも好評なのだそうだ。
この譜面書きの作業もかなり性格が現れるよね。

180_2杉本さんらしいハート・ウォーミングかつソウルフルな曲が聴く者の心をとらえて離さない。

200vバックの皆さんも杉本さんの頭と心の中にある音を、正確に自分の担当楽器の音に変換していく。
240
このピリピリ感がタマらんね!

210vプレイバックを聴く。

190
星さんが手直しを希望して、演奏を差し替える。
こんなところも見せてくれちゃうのだ。
でもね、どこがマズかったのかがサッパリわからん!
手直ししてもどこが良くなったのかメッキリわからん!
自分の耳の悪さと才能の無さが身にしみるわい。

220しっかしギター、いい音だな~。
Marshallを敬遠するジャズ・ギタリストもいるけど、全然使い方次第だと思うんですけどね。
John Abercrombieなんて実にいいと思うけどな。
逆にクセのあるアンプだけに、杉本さんみたいに武器にしてしまえばいいのよ。
杉本さん、今度はASTORIA CLASSICだな…絶対お気に召していただけるハズ。

230こうしてベーシック・トラックがライブ感満点でレコーディングされ、後日他のレコーディング・スタジオで若干の手直しが施された。
もちろんそちらもJVMを使って作業が行われた。

250Marshallのジャズ・サウンドにあふれた杉本さん渾身のニュー・アルバム『Tomorrow Land』…あなたにも是非お聴き頂きたい!

10cd

杉本篤彦の詳しい情報はコチラ⇒杉本篤彦オフィシャルブログ

260(一部敬称略 2015年12月26日 都内某レコーディング・スタジオにて撮影)

2016年4月 6日 (水)

Metal Never Die!~ TORNADO-GRENADEのファースト・フル・アルバム

夜中の廃工場。
時は2月の上旬。
遠いわ、寒いわ、眠いわ、の三重苦を乗り越えてでも行く必要があった。
ナゼならそこにMarshall、NATAL、EDENがあったから。
そう、私にとってはチョモランマであり、K2であり、カンチェンジュンガなのだ!
そして、TORNADE-GRANADEの連中が待っていてくれたから。
ここは3月23日に初めてのフル・アルバムをリリースしたTORNADE-GRANADEのプロモーション・ビデオ撮影の現場なのだ。

10これがそのファースト・フル・アルバム。
タイトルは『LOVERUPTION』という。
「love」と「-ruption」を組み合わせた造語かな?「loveruption」なんて英単語は存在しない…ハズ。
「-ruption」というのはラテン語を語源としていて、「破砕」とか「破壊」を意味する。
だから「失恋」という意味かな?
でも、アルバム冒頭の序曲的インストゥルメンタルのタイトルは「Love Eruption」となっている。
「eruption」は「噴火」という意味なので、やっぱり「爆発する愛情」っていう意味なんだろうね。

アルバム全体を通して聴いて、テーマは「愛」ということなのだろうが、私にはこの若い5人組の「へヴィ・メタルへの愛情」と見て取った。
以下、『LOVERUPTION』については逐一触れていく。
240cd
さて、完成したビデオは最後に見て頂くとして…。
そのビデオに出演しているモデルさんも現場に来ていたのでハイ、ポーズ…はいいんだけど、かわいそうに、寒そ~!
現場が「廃工場」と聞いて、こっちはモモヒキはいてセーター着て、ダウンを決め込んで行ったワケ。年取るといったん風邪引くとなかなか治んないだよ。
それなのにこの真冬の真夜中、火の気のないところで肩出しちゃって…風邪ひかなかったかしら?
どうもありがとう!

20vバンドさんはめ~いっぱい元気!
ヤル気満々だ~!
若いって素晴らしい。
だいたいコレで夜中の12時チョット前。
いつもなら完全に床に入って本を読んでいる時間。文庫の2、3ページも読めば一発で眠くなる時間だ。

30

ボーカルの塚本"JOE"旭。

40vギターの松浦カズマ。

50v同じくギターの真壁雄太。絶対に人見知りをしない。

60vベースの寺沢リョータ。

70vドラムのドラゴンシャドウ村田。

80v収録するのはアルバムのリード・チューン「Love Never Dies」だ。

90「love」は抽象名詞で数えられないので、動詞に三単現の「s」をつけることができない。にもかかわらず「dies」としているのは「ひとつの愛の物語」ということなのだろう。

100冒頭で触れた通り、このアルバムには「愛」や「Love」という言葉がふんだんに盛り込まれている。

110親しみやすいメロディにあまりにも甘ったるい純愛物語…。

130そんな激甘テイストが超激辛のテクニカルでシャープなメタル・サウンドと絡みあう。
コレガいい。
140vこの辺りは我々の世代のロックにはまったくあり得ない感覚だ。
現実的に我々が若い頃には絶対にこんなロックの曲はあり得なかった。
ロック・チューンに「愛」なんて言葉を乗せるのは御法度だったのだ。それは歌謡曲とフォーク、あるいはニュー・ミュージックの仕事だった。
まず、このあたりの感覚がおもしろい。

150vMarshall Blogでは、よく「今の世代の感性を生かした上での温故知新」を実践する若いバンド期待していることを書いているが、このバンドはそのひとつの理想形だと思っている。

170v
サウンドとしては、伝統的なハード・ロック・サウンドと遠慮会釈のないシュレッディングで特段新しいものないが、コレでいいのよ。
「新しい」ということだけがいいというワケでもないし、「新しい」と思ってやってるつもりで、おもしろくも何ともない音楽いかに多いことよ。
170

黄金時代のロックのテイストをそのまま復元している若いバンドもいて、それはそれでとてもうれしいのだが、チョット違うような気がしている。
ナゼなら、70年代のサウンドが聴きたければレコードやCDで実物を味わえばいいワケだし、当時のホンモノの空気感を体験している世代は(私だけかもしれないが)、はるかに年下の若いバンドのそういうサウンドに違和感を覚えてしまうことにある時気がついたのだ。
そう、コレは「空気感」の違いとしかいいようがなくて、そうしたバンドのストイックな姿勢に息苦しい印象を受けてしまうのだ。
まったくうるさいことを言うジジイだ、私は。

160vそういう意味ではTORNADO-GRENADEはゲーム世代の、アニメ世代の、スマホ世代しかできない「肉食ロック」をノビノビと演っているように見えるのだ。
例えば8曲目に収録されている「Love Bliazzard」。
ブギである。
これまたいつもMarshall Blogに書いていることで、令文さんの受け売りでもあるが、「最近の若いバンドには『3』の感覚が欠落している」…つまり若いバンドはシャッフルやブギを知らないのではないか?ということなのだが、TORNADO-GRENADEはドロッドロの愛の言葉を乗せてブギを演奏して見せている。
しかも、胸のすくようなハードなブギだ。
そう、Status Quoのように演奏する必要はない。
ナゼなら君たちは若いんだから。
フト考えたのは、この曲のタイトルはリョータくんからお父さんへのプレゼントかな?と一瞬思ったのだが、JOEくんの作品なので私の期待は邪推に終わった。

190v本人たちにとっては不本意かもしれないが、私なんか彼らのステージを見ていると、カッコつけているのがカッコ悪くておもしろいし、カッコつけていないところが自然ですごくカッコよく見える…。
だいたい「♪荒神見ない、荒神見ない」なんて料理を忌み嫌う曲かと思っちゃったよ。
そうしたら「Cause in Midnight」だった。
ちなみに「荒神様」は台所の神様とされている。

180この2人のギター・アンサンブルも見事だ。
最近雄太くんはJubileeを愛用して、お揃いのグレーのキャビを狙っている。

200収録曲すべての編曲を担当しや数曲の作品を提供しているカズマくんは1987で「Marshall Eruption」してくれている。

210もう、眠くて付き合っていられないんで、トットと失礼させて頂いたが、撮影は朝まで続いたようだ。
あ~、早く帰って来てヨカッタ。

220お待たせしました!
それではトクとご覧あれい、「Love Never Die」!

上で触れた以外にも聴きどころ満載の若メタル。
是非、ご注目頂きたい。

240cd

TORNADO-GRENADEの詳しい情報はコチラ⇒Official Web Site

230
(一部敬称略 2016年2月上旬 埼玉某所にて撮影)