LOUDNESS Special Live 2017~ATLANTIC YEARS~"MILESTONE" <前編>
「騒然としている」っていうのはこういう時に使う表現なんだろうな…。
LOUDNESSがニュー・アルバムを発表して日本のロック界が騒然とさせているのだ。
いくつかのロック雑誌では、メンバーへのインタビューなどは当然のこととして、いち早くニュー・アルバムでの高崎さんのギター・プレイを解析したり、全収録曲に関するアンケートをメンバーから答えてもらったりと、もうメディアも「お祭り騒ぎの様相を呈している」と言っても過言ではなかろう。
そりゃLOUDNESSだからね。
私事ながら、YOUNG GUITARさんの誌面では、私が昨年末に撮影したライブ写真を多数ご使用頂いており、鼻タ~カダカなのだ。
そして、ギターも!
最近あまりにもショックなニュースがギター界を駆け巡っていて暗澹たる気分になってしまうが、やっぱりナニがどうなってもギターはカッコいいものだよ。
一体どこからリフやギターソロがなくなってしまい、ジャンジャカやるだけの楽器になってしまったのかは知らないが、ギターはロックバンドの花形楽器でいなければならないし、「カッコいいモノ」と相場が決まっている。
そのカッコよさを高崎さんやLOUDNESSの音楽を通して体感してもらい、ギター人口が増えることを願って止みませんよ。
そして、ロック・ギターを志すからには必ず真空管のアンプを使って演奏して欲しい。
つまりMarshallでギターでギターを弾こうよ!…ということ。
高崎さんご愛用のギター、Killerさんの雑誌広告。
う~ん、この高崎さんもいい写真だ!ご採用ありがとうございます。
コレがそのニュー・アルバムの『Rise to Glory -8118-』。
今回、レコードも含めて色々な仕様でリリースされたが、私が持っているのはCDとDVDのセット。
CDの方にははもちろん皆が待ちに待った新曲がズラリと並べられている。
一方、DVDの方は2016年の年末に開催されたファンの人気曲で構成したコンサート『FAN's BEST SELLECTION~We are the LOUDNESS~』の模様が収められている。
この時もオフィシャル・フォトグラファーとして参加させて頂いたので、チラリチラリと私が映っちゃっているけどゴメンなさい。
私は光栄です。
オープニングのイメージ映像を経て「Ghetto Machine」から「Crazy Doctor」まで人気曲がウハウハのテンコ盛り。
その時のMarshall Blogの記事はコチラ<前編>とコチラ<後編>。そして、『Rise to Glory -8118-』。
このアルバムは2014年の『The Sun will Rise Again』以来、4年ぶりのオリジナル・アルバムとなるそうで、間に『Samsara Flight』他の記念アルバムのリリースはあったにせよ、4年のインターバルというのはLOUDNESS史上最長なのだそうだ。
アレから4年も経ったのか…ゼンゼンそんな感じがしないな。
まずジャケットを見る。
雷光を蓄えたLOUDNESSロゴの暗雲の下に浮かぶ世界のランドマークのシルエット。
シドニーのオペラハウス、シンガポールのマリーナベイサンズ、タージ・マハール、ピザの斜塔、北京の天壇公園、富士山に東京タワー、凱旋門にアンコールワット、自由の女神、ロンドンの国会議事堂にピラミッド。
雷門も入れて欲しかったけど、背が低いからムリですね?
そして、タイトル・チューンで二井原さんが歌う。
「♪From the Far East, we came to conquer across the seven seas」…もうジャケットとこの一節でこのアルバムを説明しきっているでしょう。LOUDNESSのアルバムを聴くと、新旧を問わず、やっぱり海外のバンドの香りがするんだよね。
私なんかには14歳の時に聴いたイギリスのハードロックたちと共通のものを感じる。
今回もそう。
「日本人離れしている」とかいう言い古された形容では決してなくて、LOUDNESSの中から自然に出て来るモノが世界が求めているモノということなんだね。
でもね、私は勝手ながら「Speed」だとか「S.D.I.」スタイルのモノスゴくハードな曲が詰まったアルバムになることを想像していた。
イヤ、何の根拠もない、オッサンのただの想像ですよ。
ところが、聴いた途端その想像が正しいモノだったことを知った。
わかりやすくて、聴きやすくて、やたらと楽しかったのだ。
しかし、楽しいだけではなくて、威厳に満ち溢れているのだ。
続けて3回聴いたわ。
とにかく曲がいい。
種類で分ければ同じ「ヘビィメタル」ということになるのかも知れないが、今の若い人たちが演っている類のモノとは全く別のモノ。
それにしても高崎さんのギターのスゴイこと!ソロもテンコ盛りで聴きどころばかりなのは当然なのだが、バッキングがまたスゴイんだよね。
まるで歌を歌っているようなのだ。
高崎晃信奉者にもタマらない作品になったことだろう。
そうそう、ひとつ不思議だったのは3曲目の「I'm Still Alive」のエンディング。意表を突くフェイドアウトには驚いた!
もちろん今回も二井原さんのスーパー・ヴォイスは絶好調なんだけど、最初と真ん中に差し込まれた2つのインスト曲もスゴク好き!
3月には国内でにツアーが予定されているが、これらの曲を生で聴くのが楽しみだね~。
ところで、聞けば今回のアルバムは世界同時発売で、Deep Purpleとレーベル・メイトになられたとか!
「8118」という新メトリックな数字はデビューの1981年から現在の2018年ということね?
この数字については少し後でもう一度触れる。
さて、時間軸を少し戻す。
LOUDNESSの4人は、前年に引き続いて2017年も最後の最後に六本木のEXシアターのステージに立った。
『LOUDNESS Special Live 2017~ATLANTIC YEARS~"MILESTONE"』と銘打ったプログラム。
「Milestone」と聞くとどうしてもね~…コレです。
Miles Davisの『Milestones』。
で、ですね、面白いことに気がついた。
メッチャどうでもいいことなんだけど、Miles Daivsは1968年ぐらいから急速にロックに傾倒し出して、1969年の『Bitches Blew』というアルバムで今で言うフュージョンの基礎のようなモノを作り、70年代に入るとギンギンのロックを演るようになった。
Blood Sweat & TearsやGreatful Deadの前座をやっていたんだから。
そのロック分野への移行の先駆けとなったのが下のアルバムに入っている、Ron Carter作の8ピートのブルース。
Milesはこの曲で生まれて初めて8ビートの曲を録音した。
曲のタイトルを「81」という。
ね、「8118」と絡んでくる。
「81」、メッチャかっこいい曲です。
そしてアルバムのタイトルは「E.S.P.」。
この符合、おもしろいね~。
「18はどうなんだ」って?
もちろんAlice Cooperでしょう。
まったくどうでもいい話だけど、私はこういうことを考えるのが大好きでしてね。
さて、今回は1985年発表の『Thunder in the East』、1986年の『Shadows of War』と『Lightning Strikes』、さらに1987年の『Hurricane Eyes』から選んだ曲を演奏するというゴージャズなショウ。
歴史がなければできませんからね、こういうのは。
また歴史ばっかり長くてもどうにもならない。
「充実した歴史」があるからこそ実現するコンサートなのだ。ステージ脇で出番を待つ高崎さんの愛器たち。
ステージにはMarshallの壁!
LOUDNESSのライジング・サン・ロゴが実にシックリ来る。
双方世界のロック・ステージでよく知られた顔だ。
ジトッ…開宴時間が近づき、会場内の空気の温度が少し上がった音。
そしてオープニンSEに包まれてLOUDNESSがステージに登場した!
高崎さんのお供。
世界がうらやむ高崎サウンドの発信源。
JMP-1ってのは世界的な大ヒット商品になったけど、日本ではナンダカンダ言って、「高崎晃の音がJMP-1」という向きがあまりにも強いよね。
こないだのNAMMでもどこかの外人に訊かれたわ。
高崎さん音が出るんであれば、ロックギターを志す人であれば誰でも欲しくなっちゃうよね。
ゴメンね、もうとっくの昔に生産終了してるの。
まずは『Thunder in the East』のセクション。
このイントロのメロディの1小節だけでドカンですわナァ。
そのまま続けて演奏したのは「Like Hell」。
ステージの下手からは山下さんの重低音が会場を征服しようとしてるし…
次の曲もイントロで「ガッチリ!」の1曲。
高崎さんの美しいアルペジオに…
「Heavy Chains」だ!
ヘヴィ12ビートの極致。私はこの曲がすごく好きなんだけど、ファンの人気投票には入ってこなかったんだよね。
こんな曲、普通日本人は作らないでしょう?
文句のつけようがない歌のメロディ。
そして、パート、パートにあまりにもピタリとハマる高崎さんのギター。
最高にカッコいい。
ここのところしばらく取り上げられなかったので今回「Heavy Chains」が取り上げられてうれしかった。
MCを挟んでまだ続く『Thunder in the East』セクション。
あと2曲選ばれたのは…まず「We could be Together」。
ん~、ナント内容の詰まったソロよ!
こんなにハードなのにメロディアス。
でもメロディアスなのに甘くない。『Thunder』からのもう1曲は「Clockwork Toy」。
そして、煙の出るような高崎さんのソロ。
ゴメン、曲といい演奏といい、やっぱり日本人離れしてるわ。
ステージの照明が落ちて、ドラムスのライザーに腰をかける高崎さんが浮かび上がる。
前曲とは雰囲気がガラリと変わる。
みんな大好きな「let it go」だからね。
ココなんだよねLOUDNESSのスゴイところって。
つまり…曲のクォリティが高いのは毎回書いてる通り。
自分が作ったワケでもないのにエラそうに書いちゃって恐縮なんですけど…。
で、LOUDNESSって「これさっきと同じ曲じゃないの?」とか「コレさっき演らなかった?」なんて曲がないでしょ?
それぞれの曲すべてが強い個性と存在感を持っているの。
2時間なら2時間、ずっと同じ曲を演っているように聴こえるバンドってあるからね。
特に若いメタル系のバンドさんを見ているとそういうことが起こりやすいように思う。LOUDNESSの場合は、それぞれの曲が丸っきり異なる顔や身体をしているんだけど、曲についている名札がすべてLOUDNESSというところがスゴイのね。
こういう所が海外のバンドっぽいワケよ。
「Let it go」も「」In the Mirror」も「Speed」も「So Lonely」もLOUNDNESSという地続きの大陸にあるんだけど、異なる文化を持った国々なんですよ。
だからLOUDNESSの旅は飽きない。
「速い曲を演りますよ!」と『Shadows of War』のセクションを締めくくったのは「Black Star Oblivion」。
ね、イントロといい、中間部のキメといい、他の曲とはまた違う雰囲気なんだよね。
そして、この「♪Black star oblivion」のリフレインは一度聴いたら忘れない。
ところで…
高崎さん、お誕生日おめでとうございます!
あたかも狙ったかのように今日LOUDNESSの記事をアップしたけど、高崎さんのお誕生日だと気がついたのは数十分前のことで、丸っきりの偶然なのです。
2月22日…そういえば大分前に高崎さんと「CATCH-22」の話を昔したことがあった。
久しぶりだからやっておくと、「CATCH-22」というのは、ジョセフ・ヒラ―というアメリカ人が書いた小説ね。
アメリカ空軍の軍規の第22項に「頭が狂ってしまった者は自らが請願すれば除隊することができる」とあるが、「頭が狂ったと自分から言い出す者は、頭が狂っていない証拠」とされていて、つまりは軍隊を永久に辞めることができないというパラドックスを表現する言葉。
まだアメリカに徴兵制度があった1961年の小説だからね。
この小説の評判がよく、アメリカでは「矛盾している状態」を指す時に「Oh, it's a catch22, right?(アレ、それって矛盾してるじゃん?)」などと日常会話のひとつの表現として定着したらしい。
私が英語で説明する話はいつも矛盾だらけのハズなんだけど、不思議と外人がコレを口にするのを聞いたことはない…もう今は使われない表現なのかな?
今度Marshallの誰かに試してみようかと思ってる。
残念ながら私は観てないのだが、「CATCH-22」は映画化もされていて、私が小学生の頃に名画座でかかっていたのを覚えている。今クレジットを見ると、その超豪華キャストに驚くよ。監督はマイク・ニコルズだし…ということでAmazonにお願いしました。
しかし、高崎さんも2月生まれだもんな~。
昨日までMarshall Blogでレポートしていた2月生まれのミュージシャンが集まるチーム、THE FEBに参加したら面白いだろうなナァ。LOUDNESSの詳しい情報はコチラ⇒LOUDNESS Official Website