2月生まれ 考えあまいが演奏うまい ~ THE FEBの20周年!<前編>
2月生まれのスゴ腕ミュージシャンたちが集うチームがTHE FEB。
今年で結成20周年を迎えた。
それを記念してライブCDやDVDを制作しようという計画が持ち上がり、本当にやっちゃった!
発売は2月28日。
28日か…しかし、ナンだって2月だけひと月の日数が少ないんだろう…と思ったことある?
暦、すなわちカレンダーの元はローマ帝国だよね。
ジュリアスがJulyになったり、アウグストゥヌスがAugustになったり、この2人が乱入して来たので、ラテン語で「7番目」を表す「sept」がついて、本来であれば7月になるハズのSeptemberが9月になったり、同じく8月がOctober(「oct-」は「8」。「オクターブ」とか「オクトパス」とか)と10月にさせられたり、とカレンダーには結構面白い話が詰まっている。
2月の「February」は、「Februus(フェブルウス)」というローマ神話に登場する「月の神様」の名前に由来していて、ラテン語では「厄払いの儀式の月」なのだそうだ。
で、この「February」ね、日本人は「フェブラリー」って発音したり、書いたりすると思うんだけど、いつか「日本人の『February』の発音はおかしい」…って言ってた外人がいた。
「フェブラリー」ではなくて、「フェブリュアリー」って発音するのが正しいとかいうことだったが、確かに私のバカ耳にですらMarshallの連中も「フェブリュアリー」と言っているように聴こえる。
で、28日しかない理由。
これには2つワケがあるとされているようだ。
ひとつは日数の調整に使われてしまったという話。
元々は1年は3月から始まって12月で終わっていた。
だからNovemberとDcemberは、それぞれラテン語で9番目を表す「Novemr」と「Decem」が語源になっている。(ギリシア語では「ノナ」と「デカ」)
「10」の方の「deci-」は「デシリットル」なんかでおなじみでしょ?
「dB(デシベル)」の「d」も10を表している…対数関数かナンカでサッパリわからないけど。
当時、暦というものは農耕のために作られたものなので、畑仕事がない冬場は暦なんでどうでもヨカッタ。
しかし。1年は365日であることがわかっていて、10番目の月の後、すなわち新しい年が始まる3月1日までの間、60日も空白じゃマズイんじゃん?ということで1月と2月を作った。
一方では、コレはよく知られている話だけど、7月と8月が連続して31日ある理由。
元々8月は30日で構成されていた。
ところが、上で触れた8月生まれのアウグストゥヌスが「あ、ナンやねん!カエサルの7月は31日なのにオレの月は30日やねん!アカンがな!」ということで8月も31日になってしまった。
…となると、「どこかの月の日数を1日削らなアカンがな。さもないと1年が366日になってまうで!」
というワケで、そうなると、どうしても1年の一番最後の2月が狙われるわナァ。
それでヤラれた。
つまり、アウグストゥヌスのワガママと調整が一番しやすかったため2月の日数が他の月に比べてすくないというワケ。
それでもFebruaryは耐え抜いた。
だから2月生まれの人は辛抱強いのだ…なんて話は聞いたことがないか?
「THE FEB」の名前をはじめて耳にした時のことを思い出した。
それは2011年5月22日、広規さんと森さんがデュオのライブをやるというので、横浜の石川町の「ZAIM」というお店まで遊びに行った時のこと。
この時、会場のスペースが小さいから…とMG15DFXとMB30を使ったんだ。
森さんは2月18日生まれ。
お2人は生年が一緒で誕生日が1日違い。
「へ~、偶然ですね~!」なんて話をしていると、「アノね、2月生まれのミュージシャンだけで集まる『THE FEB』っていうグループがあるんだよ」
その時、ツラ―っと考えてみて私の周囲で2月生まれの人が思い浮かばなかったので「『2月生まれの人の集い』なんてずいぶん珍しいナァ…」と思った。
その後、広規さんとはロンドンでご一緒させて頂いたり、他でもしょっちゅうお会いしていながらTHE FEBに話題が及ぶことはなかった…ように記憶している。
しかし、私の頭には「ざふぇぶ」という響きがシッカリと刻み込まれたのであった。
だから今回のプロジェクトが持ち上がり、お話しを伺った時には「はいはい、THE FEBですな?」ってなもんだったですよ。
そういえばこの時、広規さんのベースの調子が悪くなっちゃったんだよね。
それで、森さんのギターを借りて急遽ギタリストに転向。
広規さんぐらいのミュージシャンともなればベースとギターの区別なんてないようなもの。
弦の数と太さの違いぐらいのもんだ。
「天国への階段」のジミー・ペイジのソロをステージで完コピで弾かれているのを見たこともある。
すると、親切なお客さんがワザワザ自分の家にベースを取りに行ってくれて、それを広規さんに貸与するという展開となった。
そんな感動的な場面を交えてこの日のステージは幕を下ろしたのであった。
懐かしいナァ。
そして、それから7年後…いよいよTHE FEBと遭遇する日がやって来た。
会場は関内のSTORMY MONDAY。
おお~、また横浜だ。
伊藤広規⇒横浜⇒STORMY MONDAY⇒ライブ・レコーディング…とくればアータ、KOKI Tetragonの『The Classy Rock GIG at Yokohama STORMY MONDAY』でしょうよ、どうしたって。
『The Classy Rock GIG』のリリースが2017年の4月5日。
この時から1年も経たずして今回登場するのが…コレ。
『THE FEB』と冠したCDとDVDで構成する豪華ライブ・アルバム。
ジャケットは広規さん作品には欠かすことのできない「やましたみか」さんのデザイン。
いいよね~。好き。
あることがキッカケで「星と月とFEBのタイポグラフィでレイアウトしたバースデイケーキを作る」というアイデアがみかさんの頭の中に浮かんだ。
それは、20年も続いているTHE FEBに関わってきた全てのミュージシャンの方々のお誕生日をお祝いするような気持ちだったという。
ローソクの数やケーキに付いている星の数には特に意味はないそうだ。
そして、そのデザインもさることながら、このオレンジがいいんですよ~。
色もデザインのウチだね。
と~ころがですね~、この色を正確に写真に収めるのが実にムズカシイ!
最近、止む無く事務所の照明をLEDに換えたのよ。
あんなにライブの撮影で苦しめられているLEDの室内照明具なんで使いたくなかったんだけど、「もう蛍光灯の室内照明器具なんてありませんよ」ってお店の人が言うので止む無くそれに従った…安かったし。
案の定、この照明器具がブツ撮りをする時の大きな苦労のタネになっちゃって…。
やっぱり色が正確に出ない。
下の写真も、はじめは事務所の中で撮影してみたんだけど、このオレンジの色がどうにも出ない。
「こんな色じゃみかさんに申し訳ないな…」と情けなくなった。
で、どうしたかというと、太陽光を使った。
つまり、屋外で撮るということ。
事務所の前の道路に黒い布を敷いて撮ったのが下の写真。
ま~、通りがかりの人が見るわ、見るわ。
あの人たち、全員このアルバムを買うだろうな…「ああ、あのオジさん、このCDのジャケットを撮影していたのか~!」って。
それでもホンモノはもっといい感じのオレンジだよ。
事実、制作の方々はチラシ等の色校でも結構苦労をされたと聞いた。
ついでに表4も道路で撮った。
コレも実にいいデザインだよね。
おしゃれで上品でやさしい。
そもそも、この「THE FEB」のフォントが素晴らしい。
装丁はCDとDVDを収納する紙ジャケ・トリプル・ゲイトフォールド仕様。
ん~、真ん中のライブの写真がまたいいね~!
右側を閉じると、収録曲と演奏メンバーのクレジット。
STORMY MONDAYの常連さんならこのデザインが何かは一目でわかるハズ。
このアイデアも秀逸だ。
帯も大切。
私は柔道をやっていたワケでもないのに帯が大スキなのです。
キャッチコピーは今日のタイトルで借用した「考えあまいが演奏うまい」。
いいこと言うわ~。
コレ、反対だったら大変だよ。
「考えシビアで演奏マズい」…コレじゃ聴けたもんじゃない。
もちろん、THE FEBは考えも演奏もシッカリしてますから!
そして、今回もステージの撮影だけでなく、ライナー・ノーツも担当させてもらったのです。
『Relaxin' at Iwaki ALIOS』、『A*I』から始まってコレで7作目。
まったく光栄でございます。
今回も書いた~!
ブルース門外漢の私じゃない?
正直、どうしようかと思っていたんだけど、書き出したら止まらない。
「アラアラ、困りますね…コレはマーブロではないんですよ!」なんてお小言もガマンして頂き、最初5,000という文字制限を大幅に振り切って7,000字にナンナンとしてしまった。
だって、色々と調べているウチに面白いことを発見して止まらなくなっちゃったんだもん!
あ、言っておきますけど、5,000なら5,000でビシっと抑えることもできますからね。
そういう字数が厳格に決まっている仕事で最も燃えたのがギター・マガジンさんに寄稿したジム・マーシャルの追悼文だったな。
広規さんの作品のライナーはいつも文字数の目安だけご指定頂いて、好きに書かせて頂いて何とか収めこんでもらっちゃう。
おかげで今回もライナーのレイアウトが、当初と比べて大きく変更してしまい、みかさんにご迷惑をおかけしてしまった。
呆れもせず最後までお付き合いくださったみかさんにこの場をお借りして御礼を申し上げます。
以上が2月28日にリリースされるTHE FEBのアルバムの情報。
…ということで、今日からTHE FEBの20周年を記念するそのレコーディング・ライブの模様を3回にわたってお送りする。
今回は出演者も多いので設営が大変!
楽器や撮影の機材で店内がゴッタ返しちゃってる。
それでも「演奏うまい」方々は「片づけもうまい」ので徐々に収まって来た。
ライナーノーツでもご紹介した頂いた通り、今回もMarshallとEDENがステージをサポートした。
まず、最初のセットの出演は…森園勝敏。
森さんはMarshall Blogにはモノスゴイ久しぶりのご登場!
昨日が森さんのお誕生日!
おめでとうございます。
今回はASTORIAのDUALを使用。
最近は歪みにご執心だとか…。
松川さんはKOKI Tetragonに引き続いてATORIA CUSTOM。
伊藤広規
広規さんも今日がお誕生日!
おめでとうございます。
それにしてもこのバンドは2月生まれが多いな…あ、そういうのをやってるんだった!
KOKI Tetragonの時はMarshallだったが、今回はEDEN。
WTP-600を使用した。
ココからライブのレポートになるワケなんだけど、ココまで書いてフト気がついた。
とてもやりにくいことに気がついたのだ。
だってDVDが付いてるワケじゃん?
私がいくら解説してみたところで、そんなヘタな文章を読むよりDVDを見ればいいんだもんね。
しからば、曲の解説をば…と、いきたいところだけど、おいしいパートやキモとなる部分は全部ライナーノーツに詰め込んじゃったんだよね~…コレは困った。
でも、マーブロはマーブロなりにいつもの調子でやっていくことにした。
まずは松川さんのボーカルズで「Talk to me Baby」。
Willie Dixon作のブルース。
森さんがトレモロ・アームとクライ・ベイビーでボトルネックのような雰囲気を醸し出す。
レイドバック&ホンワカした雰囲気郡息で滑り出した20年目のTHE FEB。
次もWillie Dixonとブルース・ピアニストのEddie Boydの共作で「Third Degree」。
森さんの「ゴーアヘ、ゴーアヘ(Go ahead)」に押されてフロント・ピックアップで歌いまくる。
「タラ~っとした感じだね~。レコーディングしています」と言う松川さんが大スキだというT-Bone Walker。
ドンズバで「T-Bone Shuffle」。
この曲でも杉山さんのソロがジックリとフィーチュアされた。
ライナーにも書いたんだけど、ピアノとオルガンのツイン・キーボーズってのはいいもんですな。
ファンキーに「Big Legged Woman」。
森さんはFreddie Kingの曲をよく取り上げるね。
「マツ!」のかけ声に応えて…
松川さんがハードにソロをキメる!
しかし…こういう曲での広規さんのバッキングはホントにスゴイ。
ベース・ラインだけでご飯が3回おかわりできる。
何でもなく弾いているように見えるんだけどね~。
ウネってんだよね~。ウズ巻いてんだよね~。
ラーメン好きの広規さんだけあってそのウズ巻き加減はナルトそのもの。
こういうのは、Count Basie OrchestraのFreddie Greenのギターと種類が同じなんだよ、きっと。
周囲の音の隙間を縫って弾いているってイメージ。
キーボーズもフィーチュアされて…
そして、小野さん。
キメ細かいビロードのようなドラム・ソロ!
コレは完全に私の私見だけど、レギュラー・グリップのドラマーの方って絶対にマジメな人だ。
イヤ、マッチド・グリップの人が不真面目というワケでは決してござらんよ。
実はCDやDVDに収録されなかった曲もあった。
次はそんな曲。
小野さんがマレットに持ち帰って演奏したのはFleetwood Macの1968年のシングル「Albatross」。
間違いなく森さんの選曲でしょう。
だってこの曲、Peter Greenが「Sleepwalk」の影響を受けて作ったと言われているんでしょう?
森さん「Sleepwalk」が大スキ…なハズ。
大分前に森さんと音楽の話をしている時、「Macってさ~、『Future Games』とかホントにいいんだよね~」としみじみおっしゃっていたのを覚えている。
私も『Bare Trees』とか『Mystery to me』とか『Penguin』とか、Bob Welch時代のMacが一番好きだった。
やっぱり怪物アルバム『Rumours』はどうしたって素晴らしいと思うんだけど、反対にPeter Green時代のアルバムって持ってはいたものの、ほとんど聴かなかったナ。
あ、ちなみにこの辺りでMic Fleetwoodが使っているパーカッションはNATAL製ですからね。
それとMacといえば、Christine MacVieの声。
メッチャいいと思わない?
今ではスッカリ英米混成のチャンポン・バンドになっちゃったけど(当のBob Welchはアメリカ人)、Fleetwood Macやっぱりイギリスが生んだ大名門バンドだよな~。
数年前にハマースミス・オデオンでMacのコンサートがあって、Marshallの社長ご夫妻がそれを観に行くといって楽しみにしていた。
それとKate Bushね。Kateのコンサートはホントに素晴らしかったと言っていたナ。
いいな~。
私はやっぱりイギリスがいい。
この「Albatross」、すごくヨカッタんだけど、残念ながらアルバムには収録されなかった。
松川さんのボーカルズでNeil Youngの「Cinamon Girl」も演奏された。
スミマセン…私、Neil Youngについてはナニも書けません…本当にナニも知らないんです。
考えはちっとも甘くないし、演奏もウマいままライブはズンズン進行していく。
THE FEBの詳しい情報はコチラ⇒伊藤広規 公式サイト
(一部敬称略 2017年11月2日 LIVE CAFE STORMY MONDAY YOKOHAMAにて撮影)