伊藤ショボン太一インタビュー~松田聖子コンサート・ツアー『Parade』日本武道館公演から
6月10日のさいたまスーパーアリーナを皮切りに全国主要都市で展開している松田聖子さんのコンサートツアー『Parade』。
全ての公演でNATALドラムスが活躍しているのは既報の通り。
そこで7月7日、日本武道館へお邪魔して来た。
NATALの叩き手は伊藤ショボン太一。大きなステージ後方の一段低くなっているバンド・ピットがショボンちゃんとNATALの仕事場だ。ショボンちゃんのポジションから見た日本武道館の風景。メインのドラム・キットはNATALウォルナット。
正式な名称は「NATAL WALNUT ORIGINAL」。コンフィギュレーションは10"、12"、16"、22"。スネア・ドラムもキットとセットの14"×5.5"。
アルミ・シェル他のスネア・ドラムも用意されている。ハードウェアも全てNATAL。
実はこの日の直前の公演までペダルはシングルだった。
どうしてもドカドカやる必要が出て来たため、この武道館からツイン・ペダルが導入された。スローンもNATALで完璧な「NATALゾッキ」(「ゾッキ」が群馬地方の方言で「お揃い」という意味です。女性の服飾関係の方には「ゾッキ編み」という言葉でおなじみかも知れません)。元々はブビンガのキットを導入する計画で準備していたのだが、演奏曲目が決定した時点で急遽このウォルナットのキットに変更した。
ショボンちゃんはアッシュ、メイプル、バーチ等、NATALの全ての素材のキットを実戦で使って来ているので、音の違いがカッキリと耳に刻まれている。
そこで、選ばれた曲たちのイメージがブビンガではなく、ウォルナットだったというワケ。ステージに上がっているもうひとつの小ぶりのNATALがコレ。Cafe Racerシリーズの10"、14"、18"というキット。
スネアは14"×5.5"のメイプル。コチラはドカドカやらないのでペダルはシングルのスムース・カム。
アコースティック・コーナーで使用されている。これらのキットで「青い珊瑚礁」や「赤いスイートピー」とかを演っちゃってるワケ。
スゲな!…と、ひと通り大事な商売道具を拝見した後は楽屋へGo!
ココからはそのショボンちゃんのインタビュー。
ナゼNATALなの?
NATAL(以下「N」=「シゲ」):本日は松田聖子さんのコンサート・ツアー『Parade』の日本武道館公演の初日ですね。
お忙しいところお時間を割いて頂き誠にありがとうございます。
伊藤ショボン太一(以下「S」):イエイエ、こちらこそありがとうございます。NATALさんにはいつもお世話になっていますから!
N:どういたしまして!
しかし、ショボンちゃんともナンダカンダで長くなったね。
NATALドラムスが日本に入って来たのが2012年の暮れ近く。
その翌年ぐらいから使い始めてもらったのでカレコレ約10年!
でも、こんなインタビューなんてしたことなかったね。
S:ね~、早いものです。
N:一体NATALドラムスのどこがそんなに気に入ったんですか?
S:まずは音がいいこと…コレは大前提ですね。
昔からシェルが薄くて軽いタイコが好きなんですよ。
固くないタイコが好き。
N:固くないタイコ?
S:はい、作りが固くないヤツ…シェルが固すぎるのは苦手なんです。
N:使われているシェルの素材が硬いという意味ではなくて?
S:違います。
素材じゃなくて作り。作りが緩いのが好きなんです。
叩いた時に手に伝わって来る感じが固いドラムスってあるんですよ。
反対に柔らかい感じがするドラムスもあるワケです。
N:それがNATALなワケ?
S:そう。10年前に高田馬場のバズーカ・スタジオで初めて叩いて、『ナンですか~、このドラムスは!?』となって…。
それで、「Stave(ステイヴ)」スネアを使わせてもらったら、アレが良すぎて大感動してしまいました。
アレがそれまで求めていた本当に出したかった音だったんですね。
N:すごく気に入ってたもんね。
S:はい、それから色々なキットを試させてもらいましたね…アッシュ、メイプル、ウォルナット。
で、その中でバーチがすごく気に入ってすぐに購入しました。
N:ありがとうございます。
S:あのキットは東京アクティブNEETsのスタジオに常設してあって、東京に出て来た時はアレを使います。
今でも大好きです。
下はそのバーチのキットを入手した頃のショボンちゃん。
スゴイ貫禄。とてもドラマーには見えん!そのバーチのキットとステイヴ・スネア。S:一方、ウォルナットのキットは秋田の実家のスタジオに設置してあってレコーディングの仕事を受注したり、放送したりする時に大活躍しています。
音がモチッとしていて、すごく太いので大好きなんです。
ウォルナットのキットを叩くショボンちゃん。
まだまだスゴイ貫禄だ。ウォルナットのキットは木目が飛びっきり美しいのもひとつの特長だ。
NATALの特徴
N:チョット一般的なことをお訊きします。
ショボンちゃんの感覚で…サウンドを決定するヘッドとキットが占める割合ってどれぐらいだと思います
か?
S:ヘッドが7~6割かな?…あとはシェルの材質と作り。
やっぱりヘッドは影響はがデカいと思います。
スネアは特にヘッドとスナッピー。
もちろん材質とかハンマリングとか、音を左右する要素は色々とありますが、でも、やっぱりヘッドですね。
例えば値段の安いスネア・ドラムでもちゃんとしたヘッドを張れば格段に音は良くなります。
N:それは叩き手の腕が良いということが大前提なんでしょうけどね。
それでもやっぱりギターの弦やサックスのリードに似てますよね。
その「音がモチッとしている」というのは?
S:ネバりっ気のある音って言うんですかね。
NATALはもちろんドラムス単体で叩いててもとても気持ちがいいんですけど、他の楽器が入った時にすごくキレイに混ざる感じがするんです。
私は他の楽器とのバランスをすごく気にしちゃう方なのでその辺りもすごく気に入っています。
N:まだNATALをご存知ないライブハウスに持って行くと、PAの方に褒められることがそう珍しくないんですよ。
あの天王洲アイルの時もそうだった。
叩いてる側の人はわからないかも知れないけど、その辺りのことはどう感じますか?
S:よく言われるんですが、「作り」というか、シェルが薄くてカチッとしてない分、余計な音の成分が出ていないのではないでしょうか?
だから、PAさんは特定の音の帯域をEQでカットするとかあんましなくていいのではないかと思います…勝手なイメージですけど。
中には「アレ~?ココまでココまで叩いていないんだけどな~」みたいなドラム・キットってあるんですよ。
音が出すぎちゃうんですよね。
ココまで鳴らすつもりはないんだけど、音がやたらとデカいな~みたいな感じ。
そうかと思うとバス・ドラムだけ音が軽くて自分に返って来なかったりする。
まぁ、叩き方が合わないということもあるんでしょうね。
叩き方は個人差が激しいですからね…その点、やっぱりNATALは完璧に自分に合うんです。
松田聖子さんのお仕事
N:ショボンちゃんとの長いお付き合いの中で、今回の松田聖子さんのツアーが最も大規模なお仕事だと思うのですが、どこも巨大な会場で、「NATALでヨカッタ」みたいなことを感じることはありますか?
S:音の評判は大変いいです。
N:ナニか特別言われたことってある?
S:こう言うとアレですけど…良いことを言われても覚えてないんですよね。
特にプレイに関してなんですが、「このパート、もうちょっと重くした方がいいよ」とか、「そっちの方がいいかも知れないね」なんて言われたことはすごく覚えてますけど。
「良かったよ~」はあんまり覚えてなくて…課題の方が覚えてる。。
N:音は良くて当たり前…ということにしておきましょう!
S:ハイ…でも、音の評判は本当にすごく良いですよ。
自分でプレイバックを聴いてもメチャメチャ良くて…。
キックとスネアは自分の目標の音があって、ヴィニー・カリウタみたいな音を出したいみたいな。
その点、結構海外ドラマーみたいな音が出せてるな~、みたいな感じ?
N:それはヨカッタ!でも、ショボンちゃんのドラミングはホント、あんまり日本人っぽくないもんね。
NATALのカホン
N:ゴメン…話題を飛ばします。カホンについて。
S:NATALのカホンってすごくいいですよ。
単純に低音がすごく出る。
サイズがちょっと大きめな感じなのかな?
N:で、ブラシで叩くでしょ?
S:そう、単純に、手が痛くなっちゃうから。
タマにしか演らないので手で叩くと腫れちゃうんですよね。
で、手が腫れちゃうとスティックを持つ手が変わっちゃうんです
だからカホンはスティックで演るようにしているんです。
先日、シゲさんがプレイを聞いてくれて、ホメて頂いたのは良かったナァ~って思っています。
N:イヤ、ホントにスゴかった。カホンとブラシだけであんなにスウィングできるなんて思っていなかった!
S:確かにドラムを叩く時と全く同じ感じで演っているんですよ。
N:やっぱりアレも作りが緩いとかあるのかしらん?
S:緩いと思いますよ。
柔らかくて軽めで…それがすごくいいんだと思います。
NATALのカホンをプレイするショボンちゃん。手で直接叩かず必ずカホン用のブラシを使用する。
コレが凄まじいスウィング・ビートを生み出す。
好きなドラム・キット
N:さて、ドラム・キットの話に戻って…。
これまで色々なメーカーのモノを使ってきて、やっぱり国産と輸入ブランドに違いってあると思う?
S:かなりあると思いますよ。
日本の楽器はほぼ全部試しましたが、どれも海外ブランドのモノよりカッチリ作られているんですよね。
でも作りがとっても良い分、暴れる要素が少ない。
そういう意味で私は作りがチョット粗いぐらいの方が好きなんです。
つまり、カッチリしてるヤツって鳴りすぎちゃうんですよ。
私の場合はそうでない方が叩いてて気持ちいいんです。
N:コンフィギュレーションのこだわりってありますか?
今回のメインのキットは10"、12"、16"、22"だけど、それじゃないとダメとか…。
S:イエイエ、でもタムだったら10"&12"か、10”&13"がいいかな?
12”&13"はあんまり好きじゃないんです。
セッティングの問題もあって、私はイスをチョット低めにセットするのでタムが高くなると叩きにくくなっちゃう。
N:グリップの違いもありますよね?
S:あります、あります。大いに違いあります。
マッチドだとタムに結構角度を付けても大丈夫なんですよ。
でもレギュラーの場合、タムに角度を付けると力が伝わらない。
チョット角度を浅めにしておかないと上から行くときに叩きにくい。
あ、それと好きなドラマーが全部10"&12"っていうのもあります!
N:深さは?
S:浅い方が好きですね、個人的には。
ウチで使ってるバーチとウォルナットは10"の6.5"と12"の7"かな?
N:あ、思い出した!
あのバーチのキットが入って来た時、タムが薄くかったからショボンちゃん即決したんだよ!
三茶のスタジオでそんな話をしたような記憶がある。
そんな話をしている間もショボンちゃんはズ~っとスティックとパッドを手放さないでポコポコやってた。
S:そうでしたかね?でも確かに自分のNATALがすぐに欲しくて即断したのは覚えています。
キットとヘッド
N:たとえば「NATALは10"がいいんですよ~」みたいな特定の良さが出ているところってありますか?
S:まずは10"はすごくいいですよ。
でも、こういうのはヘッドとか使う環境によるところが大きいんですよ。
例を挙げれば、ウチのスタジオにあるウォルナットの場合、ウチの部屋だとツープライのヘッドにすると12"より10"の方が鳴りやすい…とか。
私はワンプライも結構好きなんですが、ワンプライを張ると10"より12"の方がよく鳴ったりするんです。
マァ、まだ研究しなくてはイケないんですが、またそういうことを試すものとてもオモシロいんです、NATALAは。
N:簡単に言ってワンプライとツープライの違いって…?
S:ツープライの方がアタックが出て、中音域が下がるロック系のサウンドかな。
一方、ジャズを演る時はワンプライです。
実は今のウォルナットのキットにはワンプライなんですが、どちらかというと好き。
でもツープライより耐久力がないんですよね。
叩いた感じも音の伸びが軽いところが好きで今の聖子さん用のキットもワンプライなんですよ。
N:じゃ、10"より12"の方がよく鳴るんだ?
S:イエイエ、両方とてもよく鳴っていますよ~!
このツアーをやっていて、ツープライも合いそうな感じがするのでまたチョット色々試そうかと思っています。もちろんキットは常にNATALで不動です。
N:私は根っからの「ギター属」の人間でドラムスのことは通りいっぺんのことしか知りませんが、これだけ皆さんの演奏をお聴きしていて、NATALってクリアよりコーテッド・ヘッドの方が楽器の良さが出るような印象があります。
S:ウン、確かにクリアを張ると音がスッキリしすぎる感じがあります。
自分のイメージだとツープライのヘッドを張ると音量が下がる感じ。
ツープライは剛性が高いシェルの方が合うと思う。
私も個人的にはNATALにはワンプライを張った音の方が好き…すごく合います。
でもワンプライって難しくって、パワーヒッターだとどうしても打面が結構ヘコんじゃう。
自分はあまり強く叩かない方なんですけど、それでも毎日使っているとひと月はとてももたない。
N:木原塁さんのオーケストラで小さいキットを使ってもらったでしょ?
アレ、音良かったですよね?…ま、叩き手がいいんでしょうけど。
今回のツアーでも使ってもらっていますが…。
S:イエイエ。
ハイ、あのCafe Racer、ものすごく音がいいです。
特に小規模のセッションの時とか最高ですよ!
アレはメープルでしたっけ?
N:イイエ、Cafe Racerシリーズはチューリップ・ウッドという材を使っているんですよ。
S:チューリップ?へぇ~。
N:だから富山産です…ウソです。
横浜のHey-Joeで「鴨のナントカ」を食べながらドラム・ソロを演ったあの緑のキットもCafe Racer。
今はなきHey-Joeでのショボンちゃん。 S:ハイ、Cafe Racerでしたね。
イヤ~、アレも鳴りが軽い分、音が明るい素晴らしいキットですよ。
音ヌケはいいし、とにかく音が明るいですからね、Cafe Racerは。
N:ウン、おかげさまでどこへもっていってもすごく評判良いです。
S:そうだと思いますよ。Cafe Racerもホントに良い。
音量も出そうと思えばチャンと出るし。
今日のあの小さいキットを使う時ってどうしても抑えめの演奏の時が多いんですけど、それでもやっぱりバスドラもドン!って出るし。
N:いつも信じられないぐらい軽く叩いてるもんね。
S:あの塁さんの時ね…ホントに軽く叩いたんです。だいたい30%か40%の力。
撫でるように軽く叩いてあの音です。
木原塁さんのオーケストラのショボンちゃん。
N:ナニかNATALにリクエストってあります?
S:イイエ、品質的には大満足していますので…でも、シゲさんにひとつあります。
N:エ、ナニ?
S:24"バスのブビンガのキットがあったでしょ?
タムがメッチャ深胴の…アレもものスゴク音がいいんですよ。
また今度チョット試させてもらえませんか?
N:ナンダ、そんなことか…いつでも大歓迎ですよ!こうしてショボンちゃんはこの日もNATALとともに日本武道館のステージに上がったのであった。
8月18&19日には武道館での追加公演も決定した!
スゲな。
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