今、一部では「ゴールド免許のあり方」についてモメているようですな。
何でも「ゴールド免許」保有者の21%はペーパードライバーだそうで…。
「運転しないヤツこそ講習を受けるべき」という論理も立派に成り立つような気がしますな。
かく言う私もしばらくゴールド免許だった。
地方から東京に帰って来て車に乗る必要がなくなったからだ。
今、Marshallに勤めるようになって、MarshallやNATALを運ぶ仕事が多く、車に乗る必要が出て来た。
そしたら一発よ、一発!
一日に二回切符を切られてアッサリ「違反野郎」の大悪人に転落。
それで、先日30年ぶりぐらいに鮫洲の試験場に免許の書き換えに行ってきた。
そして、そのサマ変わりにビックリ仰天。
私が免許をゲットした昭和56年頃は、鮫洲駅前の細い道には数え切れないほどの代書屋が立ち並び、まるで「海の家」のようににぎやかに客の呼び込みをやっていたものだった。
今は一軒だけになっていた。
他の代書屋さんはこの通り全部閉まっていた。
ところで、昔は何であんなに代書屋ってのがにぎわっていたのかしらん?…とベースの山本征史さんと話をしていたら、「イヤ、昔は字を書ける人が少なかったんじゃないですかね?」などとおっしゃる。
「そんなバカな…」と受け答えたのだが、調べてみるとどうもコレはまんざらでもないようだ。
一応日本は「識字率100%、文盲ゼロ」の国だからして、字が書けないとまではいかなくても、チョット複雑な書類が作れない人が昔は多かったようなのだ。
そこで活躍していたのが「あなたの代わりに免許更新に必要な書類をお作りします」という代書屋だったようだ。
試験場もスッカリきれいになって、コンピュータのおかげか、手続きもアッという間だった。(講習は長かった~)
昔は、教習所を卒業して「さぁ、思いっきり暴走するゾォ~!」という血気盛んな若者でゴッタ返していてね。何をやるにもものスゴク時間がかかってウンザリだったんよ。
…なんて話を友人としていたら、「ところで、何で鮫洲なんて行ったの?東陽町の方がゼンゼン近いじゃん?」と言うじゃない?
「へっ…?! トーヨーチョー?」
何のことかと思って尋ねると、今、東陽町に試験場があるんだってね~!知らなかった。
80年代半ばからしばらく東京を離れていたことと、ゴールド免許のおかげで近隣の警察署で用を済ますことができていたので、そういう設備が出来たことを本当に知らなかったのだ!
で、今日の舞台はその東陽町のdowntown records(ダウンタウン・レコーズ)というレコード屋さんだ。
永代通りからチョイと入ると目に飛び込んで来るアートのカタマリ。
そこがダウンタウンレコード。
「CD屋さん」ではない。
「レコード屋さん」だ。
以前にもMarshall Blogに登場して頂いたことがあるのでご記憶のある方も多かろう。
今、ダウンタウンレコードで開催しているのが梅村昇史+渡辺千春(パンプロ・ファクトリー=梅村家)による「絵」のイベント。
お二人のドローイングやスケッチ等のイラスト作品の展示のほかに、それらの作品をジャケットにした中古シングル盤を販売するという企画。
「作品展」と「産地直売会」が混ざり合ったアートイベントだ。
名付けて『ドローイング・レコード2016(梅春スケッチフェス)』。
主宰の梅村昇史さん。
「下町のひとりヒプノシス」として、もう何回もMarshall Blogにご登場頂いている。
先日の『1000のMarshall Blog』にもメッセージを寄せて頂いた。
一応、チラリとウチ系のポートフォリオをご紹介しておくと…
これまたおなじみ田川ヒロアキの『Ave Maria』のジャケット・デザイン。
帯のデザインも梅村さんの手によるもの
写真はワタシ。
梅村さんとの初仕事は2010年度版のMarshallのカタログの表紙だった。
何回も書くが、コレは古今東西で最もカッコいい楽器カタログの表紙だと信じている。
さて、今回の『ドローイング・レコード2016(梅春スケッチフェス)』の作品を見てみよう。
こちらはLPサイズの丸い盤に描かれたイラスト。
レコードとしてちゃんとクレジットも入っている。
コレは梅村さんの奥方の渡辺千春さんの作品。
また、千春さんがやさしくて可愛いイラストを描くんだ~。
コレも千春さんの作品。
入り口に貼ってあった江東区の子育て関連のイベントの告知ポスター。
コレも千春さんの仕事。
お店の一面を占めているのは梅村さんの作品群。
Marshall Blogでも紹介している通り、梅村さんは実際のCDジャケットのデザインを種々手がけているが、以前から「架空のレコード・ジャケット」というコンセプトの作品に取り組んでいる。
この30cmの真四角のスペースをキャンバスに見立てた美術作品だ。
コレはSoft Machineを思い出させるな…。
レーベルに刷り込まれたクレジットとコピーライト表示。
こういう細かい配慮がうれしい。
背面もちゃんと作り込んである。
とにかくどの作品も可愛くて、見ているとついついニコニコしてしまう。
コレは実際に商品になっている。
Frank Zappaの代表曲のひとつ「Peached en Regalia」のオルゴール付きCDだ。
右上のクレジットは上で紹介したモノとは異なり、コチラは「ROCK & ROLL MUSIC BOX SOUNDS」となっている。
コレはEPサイズ。
モチーフはもちろんZappaだ。
コチラは千春さんの作品。
いいナァ。
「RECORD PEOPLE ARE FLOWER PEOPLE」だって!
千春さんは豆本の製作家でもある。
コレがレコード入り、ジャケット。
ホントは反対なんだけど…。
ココでの主役は梅村さんと千春さんのイラストだからね!
中身は何が入っているかはわからない。
ウチはポスト・カードを数枚ゲット。
「WHAT'S NEW IN CANTERBURY?」はZappaの「WHAT'S NEW IN BALTIMORE」のもじり。
メリーランド州ボルチモアは全米でも治安の悪いことで有名なところ。
NFLのフランチャイズ・チームは、昔は「コルツ」だったのだが、今は「レイヴンズ」になっている。ギターがうまそうなチームだ。
コルツはインディアナポリスに行ったそうだ。インディアナポリスは「インディアナ/ポリス」ではなくて「インディ/アナーポリス」と発音する、なったってWes Montgomeryの故郷だからね。
なぜ「カンタベリー」なのかというと、このデザインはSoft Machineの『フローティング・ワールド・ライブ』の国内盤のジャケットのイラストなのだ。
このアルバム、輸入盤より梅村さん盤のジャケットの方がゼンゼンよかった。
ちなみに去年久しぶりにカンタベリーに行ったけどナニも変わっていなかった。
しかし、可愛いイラストだな~。
ココにある「Flogs With Pretty Little Eyes」もZappaネタ。
オリジナルはZappaの息子アーメット作詞による「Flogs with Dirty Little Lips」(『Them or Us』収録)。
コレは『Just Another Band from L.A.』。
Zappaの同乗者が胴部ってところが手塚治虫の『W3』みたいで可愛いナァ。
主題歌の最後の「♪ワンダースリ~」という部分を覚えいるんだよね。
でも、テレビで『W3』を放映していたのが1965年。私が3歳の時だからして、さすが覚えているワケがない…とういことは再放送で見ていたのか。
なつかしくなってこの主題歌の動画見てみたら、バーバーショップ・ハーモニーだよ。
昔の人は本当にスゴかった。
コレが元の『Just Another Band from L.A.』。
梅村さんのポストカードに載っている「GOING TO EL MONTE LEGION STADIUM」というのはこのアルバムにも収録されている「Dog Breath」の歌詞の一部。(初出は1969年の『Uncle Meat』)
1963年、ZappaはThe Mother of Inventionを結成する前にRay Collinsと「Memories of El Monte」というドゥーワップの曲を作り、The Penguinsというグループが歌ってチョットしたヒットとなった。
ちなみにこの「El Monte Legion Stadium」はキャパ7,000のインドアの大ホールでビートルズも演奏したことがあるという。
今は駐車場になっているらしい。
ところで、この1972年のZappaのアルバムの聴きどころは何と言ってもLPのA面を占める「Billy the Montain」だろう。
私よりチョット年上で、とても仲のよくしている生粋のLA生まれのアメリカの友達が、1969年あたりからZappaのコンサートに何回も行っていて、「Billy the Mountain」も生で観たというのを聴いてとてもうらやましかった。
この人、Duane Allmanもホンモノを見たそうだ。
人間はゼッタイに平等ではない!
千春さん作のクリスマス・カードもゲット。
さて、この展示会は11月24歩から12月5日まで開催しているが、12月2日には『ドローイング・レコードのパーティー〜でも、おむすびとお茶しかないけど!(仮)』なる企画が予定されている。
梅村家の夜食である「顔つきおむすび」を食べる会だそうだ。
12月2日金曜日18:00から。合い言葉は「夜食 in 夕方」。
「顔つきおむすび」とはこういうモノ。
それと、今回併催されていたのがコレ。
プラスチックの薄い板に何かを描いてオーブンで焼き固めるヤツがあるでしょ?
アレで80~90年代のロックのレコード・ジャケットや写真を再現したそうだ。
製作者は中学生だ。
ところで、コチラのダウンタウンレコードさん、はじめの方に「レコード屋さん」って書いたでしょう?
この通り…本当のレコード屋さんなのだ。
つまり、CDを一枚も置いていない。
若い人が見たらどう思うのかな?
私なんかはこういう光景が当たり前の時代に育ったので何の違和感もないが…。
お店は非の打ちどころがまったくないまでに、いつ来ても清潔感にあふれ返っている。
でも、キレイなのはそれだけじゃなくて、展示している商品がどれも驚くほど美品なのだ。
それでいてお値段もすこぶる良心的だ。
「マニアック」という言葉はあまり好きではなくて、自分から使うことはないが、ま、こういうのを「マニアック」って言うんだろうな~。
何しろ、まずエサ箱の仕訳がスゴイ。
「60年ロック」、「70年代ロック」なんて表示はどこでも見かけるが、ダウンタウンさんときたら細かいところでは「'64~'66」とか「67'~69'」みたいに2年区切り!
要するに、それほどこの時代はロックの変化が激しく、リスナーの嗜好も別れるところ…ということか。
こんなことお店の人がよほどのマニアでない限り絶対にできない。
この「映画音楽」のコーナーがまたスゴイときてる。
私も40年以上中古レコード屋に通っているが、そもそも映画音楽だけに一列まるごとスペースを与えているなんてお店は他に知らん。
Neal Hefti、John Barry、Jerry Goldsmith、Armando Trovajoliなんて仕訳ラベルは他ではまずお目にかかることはあるまい。
『モン・パリ』なんて、どうにもなつかしいね。
それとね、うれしいのはこの展示品の分量。
スキスキでしょ?
こうしておけば、盤を持ち上げないでペラペラとめくるようにしてアイテムをチェックすることができる。
盤がパンパンに詰まっているとそうはいかない。
まだ血気盛んな頃、私はあのLPレコードを持ち上げては落とす作業の速さにかけては誰にも負けなかった。
でも、もうそんなことをする元気もないし、ガツガツしてまで欲しいと思うアイテムも多くなくなった。
今では、ジャズとかクラシックを中心に、一枚一枚ゆっくりチェックして、知らないアイテムとの出会いを楽しんでいる。
すると、ダウンタウンさんのディスプレイはとてもありがたい。
そもそも静かだし、ジャケットの痛みも防ぐことができる。
前回は、超美品でが格安だったThe Whoの『Quadphenia』とウエスト・ロード・ブルースバンドのライブ盤を頂いてきた。
今回はコレ。
『冒険者たち』の主題歌…「Laetitia(レティシア)」っていうのか?
私はこの映画を父のススメで小学生の時に初めて観た記憶があるが、モノスゴイ感動したな。
以前にもどこかに書いたことがあったと思うが、ジョアンナ・シムカスが最高にチャーミングだった。この人、「シムカス」なんていうsurnameなので、てっきりギリシア系アメリカ人かと思っていたら、リトアニア系のカナダ人だった。
そのジョアンナ・シムカスの役名が「レティシア」。
映画の中には印象的なシーンがいくつがあるが、凶弾に斃れたレティシアを潜水服にくるみ、深海に沈めるシーンは子供ながらに美しいと思った。
そして、全編に流れるテーマ・ソング。
このシングル盤はアラン・ドロンの歌が入っているが、映画の中では悲しげな口笛がメロディを奏でるインスト・バージョンが使われる。
もうこのメロディがタメらなくてね~。映画を観て、その場で覚えた。
作曲はフランスの映画音楽の大家、「フランソワ・ド・ルーベ(François de Roubaix)」という人。詳しくは知らないが、アラン・ドロンとチャールズ・ブロンソンの『さらば友よ』なんかもこの人の作品だ。アレもカッコいい曲だった。
ハリウッドは別して、フランスもイタリアも映画に使われるオリジナル・スコアっていいものが多いよね…あ、もちろん昔の話。
もう一枚は加藤登紀子と長谷川きよしの1978年の二枚組ライブ・アルバム。
私にしては珍しいジャンル。
最近、長谷川さんの声が聴きたくなっていたこと、去年野音で加藤さんを撮らせて頂いたこと、バックに中野督夫さんが参加していること…等の理由でゲット。もちろんお値打ち価格。
メモが貼ってあるでしょ?
ダウンタウンさんでは、LP一枚一枚にこうして簡単な解説を記したメモを付けている。
コレは破天荒に大変な作業ですよ。
何が大変かって、聴かなきゃならないもん。つまり、時間がかかるということ。
最近「~に愛を感じる」みたいな言い方が流行っているけど、このお店のレコードや音楽に対する愛情にこそ、その表現を使って欲しい。
下の写真では見えないが、正面後ろのラックに一週間前に亡くなったMose AllisonのLPを飾り、追悼の意を表していた。
私はMose Allisonのホワホワした声が苦手で決してファンではないが、facebookで訃報を投稿したがほとんど反応がなかった。
つまり日本人の多くがMose Allisonを知らないようだった。だからダウンタウンさん「サスガ!」と思った。
ジャズのシンガー/ピアニストだが、ロック・ファンにはThe Whoの「A Young Man's Blues」を作曲した人と説明すればよいだろう。
ダウンタウンレコードの詳しい情報はコチラ⇒オフィシャル・ウェブサイト
『ドローイング・レコード2016(梅春スケッチフェス)』の開催は12月5日まで。
パンプロファクトリーの詳しい情報はコチラ⇒ハルタンタハルタンチ
(2016年11月26日 東陽町ダウンタウンレコードにて撮影)