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2016年3月30日 (水)

【Marshall GALA レポート】 vol.12: 稲葉囃子

ああ、とうとう最後になってしまった。
あんなに手塩にかけて準備したMarshall GALAだったけど、イザ本番が始まるとアッという間だった。
ナンカTHE SHRED MASTERSが登場したのが遠い昔のような、ついさっきのことような…。
無事にココまで来れてうれしいような、もう終わっちゃうのが悲しいような…。

Marshall GALAのトリは稲葉囃子。
「日本のロック」の偉大なる遺産、四人囃子の音楽を本物のメンバーたちが伝えるありがたいグループ。
私は10代の頃から四人囃子が好きでしてねネェ。
一番最初に買ったLPはステージでお見せした数寄屋橋のHUNTERで買った中古の『ゴールデン・ピクニックス』だった。家から持ってきた。
1976年のリリースだから丸40年の年月が経った。帯もあるんだけど、よく聴いたものだからモロけて破れてしまっている。
しかし、このアルバムに詰まっている音楽は未来永劫スリ切れることのないオリジナリティに富んだもので、「日本のロック」が最もエキサイティングだった時代の空気を見事に閉じ込めている。

A_gp3大二さんと初めてお会いしたのは2003年、今はもうない新宿厚生年金会館大ホールで、四人囃子がProcol Harumと共演した時のことだった。
楽屋の廊下で休憩されている大二さんに私から話しかけた。大二さんは愛想よくお相手してくださってすごくうれしかった。
昔から大二さんのドラミングが大好きだったし、岡井大二のドラムなくしては四人囃子の音楽は成立不可能だったと信じている。
その13年後、私は演奏こそしないにしろ、まさかこうして大二さんと同じステージに立つことができるだなんて、あの時どうして想像できたであろう?
ましてや、HUNTERでわずかなお小遣いで中古の『ゴールデン・ピクニックス』を買ったロック好きの少年なんてナニをか言わんや…である。
それもこれも大二さんがNATALを愛用してくれているからで、私はMarshallに大感謝なのである。
自分が扱っている商品を自分が大好きなミュージシャンに使ってもらうことこそ、この仕事の醍醐味だ。今日はズットそれだ。私にとって最高の一日なのである。
大二さんにMarshall GALAへのご出演をお願いした際、「それでしたら稲葉囃子で出ることはできませんか?」と即答して頂き、うれしすぎてめまいがしたわい!

稲葉囃子の演奏の後はもうフィナーレになってしまい演奏後のインタビューができないので、演奏の前に大二さんにお話しを聞かせてもらった。
NATALの話しである。

10「ハッキリ言います。ドラマーに一番伝えたいのは、NATALは叩き勝手がよく、叩いた手応えがバツグンにいいドラムだということです。
アタックが固くて近代的なドラム・キットが多い中で、NATALは非常にヒューマンな音がするんです。
ヒューマンな音と近代的な音で鳴ってくれる。
今の時代の人にもマッチするし、ボクみたいに昔からやっている人達にもいい。柔らかい手応えをしてくれる。
非常に気に入っています。」

20v今日みんなで使い回しているNATALはアッシュという素材を使用したキットだが、大二さんが気に入っているとおっしゃる愛用のキットはバーチだ。
さぁ、いよいよMarshall GALAのヘッドライナーの演奏が始まる!

30e-ZUKAさんのセットでも活躍してくれたキーボードの坂下秀美。
坂下さんが奏でるDとEの繰り返しだけで成立しているごくシンプルなリフ。
いいリフ・メロディはいつだってシンプルだ。
初めてこの曲を聴いた時はあまりのカッコよさにビックリした。

40v1976年リリースの『包』収録の「機械じかけのラム」。

50cdバンドが動き出して坂下さんが弾く、ともすればメルヘンチックとも言えるリフに稲葉さんがヒットするA7#9が絡みつく。

60ギター/ボーカルに稲葉政裕。

80vベースは山崎洋。

90vそして、岡井大二。
この曲のイントロの大二さんが16で刻むハイハット(♪チキチキチキチキ)とその後のライド・シンバル(♪チンチキチキチン)のプレイは絶品だ。
Elvin JonesやTony WilliamsやArt Taylorなどの名手はシンバル・レガートだけでも十分に音楽になり、鑑賞に堪えうるが、ここでの大二さんのプレイがまさにそれだ。

100稲葉さんの歌がまたいい!
もうこの時代にコンピュータをテーマにした内容を歌詞に据えている。
この曲の出自はキューブリックの映画化で知られる、イギリスの小説家、アンソニー・バージェスの近未来小説『時計じかけのオレンジ(A Clockwork Orange)』だろう。
手塚治虫にコレを元ネタにした『時計じかけのりんご』という一編があった。
このあたりのことについてゴチョゴチョ書きたいところだが先を急ぐことにしよう。

110またこの曲はベース・ラインがすこぶるカッコよい。

120全編を通して登場する例の坂下さんのリフ・メロディ。
140
出てくるたびにトリハダものだ。稲葉さんのギター・ソロ。
今日の稲葉さん、1959SLPと1960BXのコンビネーション。リンクはなし。
Bluesbreakerの時も極上の音色だったが、1959でも素晴らしいトーンを味あわせてくれる。

150そしてそれらをひとつにまとめ上げる大二さん。
130v
4分にも満たない曲なのに何たる濃度!
凡百のアーティストなら10分ぐらいに膨らませていたことだろう。Argentだったら15分までいくか?(それがまたArgentの魅力だったりもするんだけど…)
良質な曲と演奏力の高さが核分裂を引き起こし爆発的なパワーを生み出す最高の例といえよう。

160息を整えて…大二さんのフィルで次の曲が始まる。

170今度はさっき紹介した『ゴールデン・ピクニックス』から超絶技巧曲「なすのちゃわんやき」。

180cd「絶対音感を持っている人の気分を悪くしてやる」というテーマで、途中での転調なしに曲の最初と最後でキーが変わっているという曲…とよく聞くんだけど、絶対音感など無縁な私には「カッコいい曲」ということだけでしかない。

190v作曲は初代ベーシストの中村真一。
「なす」は野菜の「なす」ではなく、「那須高原」の「なす」なのだそうだ。
那須で合宿をしていた時、中村さんが「こんな曲作っちゃった」と持って来られたとか。
全編全パートが完璧に書き込まれた交響曲のような大作。
210
レコードで佐久間さんが吹いていたリコーダーのパートは坂下さんがシンセで代演する。

200昨夏に稲葉囃子を観た時、この曲は途中までしか演奏されなかった。
ナゼなら大変な曲だから。
そう、こういう曲こそが「超絶曲」だ。
でも、大二さんが我が家にいらしてMarshall GALAの選曲について話し合った際、この曲をリクエストさせて頂いた。
すると、いとも簡単に受け入れて頂いた。
おそらく山崎さんが採譜の労を引き受けて頂いたのであろう。
何でも四人囃子の曲は、不思議と楽譜になることが過去になかったそうで、「山崎トランスクリプション」が最初らしい。
そういえば以前のライブでも山崎さんは「譜面書きますよ~」とMCの時におっしゃっていた。
いい人だ~!
この曲のギターのパート譜は欲しいナァ。

220vよく聞くと3/4と4/4がやりたい放題絡み合ってるんだけど、何ひとつ不自然なところがない。
リズムが稲葉さんのソロ。
リズムは3/4+4/4+3/4+/4/5になってるのかな?…ココは一時的に転調する。

240v

そして曲はいままでの喧騒がウソだったような静けさに包まれる。坂下さんのエレピが美しい。

250v_calmそして動。
大二さんのダイナミクス・レンジの広さは驚異的だ。
でもね、不思議なのはどんなフォルテシシモでも、ピアニッシシモの時も撫でるように叩くんだよね。Dennis ChambersにしてもVinnie Colaiutalにしても、外人のドラマーってみんなそうじゃんね?
汗だくでシャカリキなって叩いているのに音がまったく小さい若いドラマーをよく見かけるが、どうしてこう違うんだろうね?

260すさまじいアンサンブル・パートを経て約3分半の一大パノラマは幕を下ろす。
この曲、録音当時は大二さんも坂下さんも22歳だったというのだから開いた口が塞がらない。
昔の人はスゴかった。

230

稲葉囃子、最後の曲。
すなわちMarshall GALA最後の曲は「一触即発」。
日本のロック史に残る大作だ。
私は自らの手でこの曲を紹介できることに無上の喜びと誇りを感じたよ。
しかしさ、どのジャケットも文句なしにいいよね。
内容がいいからなおさらよく見えるのだ。
おそらくコレは世界で一番有名なナマケモノだろう。

280cdイントロ・ドン!
ボリューム奏法で飛び出すDb7#9…ギターのボリュームが2ぐらいの時にもう「一触即発」だとわかる。

290v坂下さんのオルガンも猛烈にクレッシェンド!

330v
スネア一発、おなじみのフレーズが!
♪ズンズダズダ、ズンズダズダだ!
このフレーズのアイデアが「Whipping Post」から来てるとはネェ。

300v最初のギター・ソロ。
このソロのメロディは不滅だ。
「天国の階段」や「ハイウェイ・スター」のようにギター・ソロのメロディがスタンダードになっている日本の曲ってほとんどないでしょ?
あるとすればこの曲のこのパートだ。
しかし、稲葉さん、メッチャいい音だな~。
320v
高校2年の時にある楽器店主催のバンド・コンテストに出たことがあった。
お坊ちゃんのシンボルでもある、普通より2個ぐらいボタンが多く付いたおそろいの学生服で登場したバンドが、銀星団バージョンの「Take Five」と「一触即発」を演奏して優勝した。
実際裕福な家の子たちであることは必定で、当時最新機材だったボコーダーを使っていた。
演奏で負けたことはそう悔しくなかったが、バンドのメンバーに女の子がいたのが悔しかったな。
我々は何を演奏したかって?
三文役者のコピーを演った。変な高校生でしょ。だから三文役者とはもう40年近い付き合いだ。
この曲にはそんな妙な思い出があるのさ。

310「♪気持ちのいい夕方に ボタンの穴から覗いたら クシャミなんか出そうになって ああ、空が破ける」
コレは一体どういうことだ?
でもこの歌詞でなければダメなんだ。

360

「21世紀の精神異常者」を初めて聞いたイギリスの連中もこういう感じだったのか?「Cat Food」なんかスゴイもんね。
この曲に「さくらが咲いた ありがとう がんばろう」なんて歌詞がついていたらどう思う?
やっぱり四人囃子は完璧だ。

340それにしてもカッコいい大二さんのドラミング。
リハーサルの時から三宅さんが「タマらないですね~」と何度も私に言いに来てくれたのがとてもうれしかった。
三宅さんも大二さんのドラミングに「本物」の空気を大いに感じ取っていたのだ。

350v稲葉さん、まさに空が破れんばかりの大熱唱!
四人囃子の全期のレパートリーを歌えるところがファンとしてはうれしいね。

380

さらにギター・ソロ。
さすがに名手中の名手、うまくまとめるな~。

370vこの後、この曲がこの曲であるべきところの空前絶後のドラマチックな大アンサンブルへと展開していく。

390一時もステージから目を離せない!
実際、出演者の方々も二階席からジックリとこの「日本のロックの権化」の演奏を味わっていたようだ。

400v後で聞いた話しだが、若手のドラマーから技術的な質問もされていたという大二さん。
そうなんですよ。
そういう新旧ミュージシャンの交流もMarshall GALAが大いに期待するところだったのだ。
この話を聞いた時「我が意を得たり!」とすごくうれしかった。

410vいよいよクライマックス!
稲葉さんの歌にもますます力が入る!

420坂下さんの不吉なオルガンが鳴り響く中…

440v4人が一丸となって複雑なキメを合わせる。

430v

一度聴いたら忘れない日本のロック史の中でも最も強引なキメ技だ!

450そして、曲の頭に戻った時の感動には筆舌しがたいものがある。
私はこの曲を一応知っているので、この頭のフレーズをそでで聴いていて、「ああ、Marshall GALAもコレで終わるか…」という感慨にひとりふけってしまった。
それにしても、自分の手でこの素晴らしい音楽を紹介することができたのは最高にうれしかった。

460vしかし!
出演者の方々、スタッフの若い人たち(特にTORNADOのリョータくん)、そして、お客さん…皆さんにジックリと稲葉囃子をご覧になって頂いて、とても好意的な感想を頂戴したことは何物にも代えがたい喜びだった。
コレを機会に、特に若い方々にこの時代の音楽を聴いてもらって、ロックに関する知見を広めて頂ければと願う次第である。
また、もし若いミュージシャンがこの演奏に刺激を感じてくれたとしたら、大いにこのエキスを吸収してもらいたいと思う。そして、若い人達だけが持ち得る時代の感性を絡めて新鮮な音楽をクリエイトしてもらいたいと思う。
いつも言っているように、音楽の将来は過去にしかないと思っている。

四人囃子の資料満載のウェブサイトはコチラ⇒四人囃子Official Web Site

470これでエントリーした9つのバンドの演奏がすべて終了した。
さて、最優秀賞は一体どのバンドの頭上に輝くのか!?優勝者にはMarshall一年分をプレゼント!ってどんなやねん?
ああ、終わってしまった。
楽しかったな~。みんなカッコよかったな~。
ありがとうございました。
でも、Marshall GALAのレポートはまだ終わらないよ。
明日もお楽しみに!
480
P.S. Marshall GALAの翌日、ご丁寧にも大二さんから出演に関するお礼のメッセージを頂戴した。
どうしようかと迷ったが、後進の方々のためにほぼ原文通り引用させて頂くことにする。
Marshall GALA、本当にお疲れ様でした。 出演させて頂いてとてもありがたく思っております。
ありがとうございました。
しかし、さすがウシさんのセレクションですね。どのバンドもメチャ上手!
マジで驚きましたし、勉強になりました。
それぞれの方々に 機会があったらオジさんビックリで腰抜かしてた!とお伝え下さい
大二さん、ありがとうございます。
この場をお借りしてお伝えさせて頂きました。
イエイエ、それよりもまだ勉強されるおつもり?
まったく頭が下がる思いである。

つづく

(一部敬称略 2016年3月6日 東京キネマ倶楽部にて撮影 ※撮影:Nica Azuma ※Special Thanks: Ai Ohnuma of Neo-Zonk and Kenichi Morita)