GENKI SESSION 2024 <前編>
久しぶりの『GENKI SESSION』。
3時間45分にわたる最上の素材と最高の演奏。
どこをどう切っても『音楽』があふれ出る素晴らしいショウだった!
今回ステージに上がったのは…人見元基難波弘之高橋ロジャー知久松本慎二日下部BURNY正則(以下「バーニー」)難波さんとロジャーさんは予てからのGENKI SESSIONのメンバー。
松本さんは難波さんのSENSE OF WONDERのベーシスト。
難波さんとバーニーはNUOVO IMMIGRATOのメンバー。
ロジャーさんと松本さんとバーニーは丸ごとASIAN BLACK。
そんな気心の知れた親戚が集っての演奏。
そりゃ非の打ちどころがないステージになるにキマってる! 「♪If I call her on the telephone」…オープニングはレイ・チャールズの「Hallelujah I Lover Her So」。
GENKI SESSIONの定番中の定番の1曲。
やっぱりコレがなくては始まらない。
1956年、この曲のオリジナル・レコーディングでテナー・サックスの朴訥なソロを吹いているのはドン・ウィルカーソン。
この人はBlue Noteに『Preach Brother』という人気盤を残している。
ギターのグラント・グリーンやピアノのソニー・クラークが参加しているので私もCDを持っているが聴かないナァ…ベラボーに泥臭いのよ。
でもジャケットはすこぶるカッコいい。 さっそく飛び出したゴキゲンなバーニーのソロ!もちろんバーニーはMarshall。
今日もヘッドは「SV20H」。
カバリングは純白の「エレファント・グレイン」。
いつも通り左上のHighトレブル・インプットにケーブルをつないでジャンプ(=リンク)なし。
2×12"のスピーカー・キャビネットは「1936」。
カバリングをヘッドとお揃いの「ホワイト・エレファント・グレイン」にして、フレット・クロスには「LC(=Large Checkered)」をチョイス。
肝心のスピーカー・ユニットは試行錯誤のうえCELESTIONの「G12M-65」、通称「クリーム・バック」を搭載した。足元のようす。客先にマイクを向けてお客さんも「♪ハレルヤ~!」。
1曲目が終わって割れんばかりの大歓声が舞台に浴びせかけられた。
この日を待ちに待っていたお客さんの熱気は尋常ではない!「サンキュー!
久しぶりの『GENKI SESSION』です。
そして久しぶりの東京キネマ俱楽部。
ようこそ鶯谷へ…やっぱいいナァ、鶯谷は。
最近、リハとかで渋谷や新宿に行ったりしましたが…どこも取りあえず外に出られないんだよ。
ナンカもう泣きそうになったよ、オレは。
5分もあれば渋谷駅からクロコダイルに行けるワケですよ。
ところが空中透明廊下みたいなのでアッチへ行ったりコッチへ行ったり、とにかく外に出れば何とかなると思うんだけど外に出られないんだよ!
クロコダイルに行くのに2、30分かかりましたよ」
すごくよくわかります。
「イヤ~いいよ、鶯谷は…どう?ココに来ると昭和のオヤジの飲み屋しかないのよ。
住みてぇ…マジで。
朝からやってる店があるんだよ。行っちゃうよね~」
「信濃路」とか有名ですからね。
鶯谷もいいですよ~。
江戸時代初期、芝の「増上寺」と並ぶ徳川家の菩提寺である「寛永寺」に来る皇族出身の住職が「江戸のウグイスはなまっているおすえ」とワザワザ京都からウグイスを取り寄せて放したのが「鶯谷」の由来。
鶯谷は山手線30駅の中で最も昇降客が少ない駅だからして静かだし。
近くには「鹿鳴館の華」と言われた奥さんの亮子さんも有名な明治の外交官「陸奥宗光」が住んでいた家が残っていて、三平やこぶ平の「海老名」家、入谷の「鬼子母神」もすぐそばですから。
「今日は久しぶりに演るんでね…最初にそうだ、そうなんだよ。
大谷令文さん…残念だったけどナァ。
MCでチョットずつ大谷令文の話をしていこうかと思っています。
ちなみにオレが割としょっちゅう着ているこのシャツね。
コレは30年ぐらい前、渋谷のエッグマンのライブの時に自分が着る物を持ってくるのを忘れてしまったのね。
なんか令文はその時物持ちが良くて、楽屋に何枚かアロハシャツを吊るしていたの。
で、『令文チョットそのアロハを5,000円で売ってくんない?』ってお願いした。
『OK!』って言ってくれて、それから2、30回…イヤ、もっと着てるか?
もうとっくに元を取っています。
今日は令文に見守ってもらって…」「この辺でしゃべり倒しちゃうと終わんなくなっちゃうからね。
久しぶりでアレも演るわ、コレはどうなの?みたいなことをやっていたらアンコールの用意も含めて20曲ぐらいになったんだよね。
だから、サクサク演らないと終わんないんだよ。
しゃべりを少なくしないと大変なことになっちゃう。
じゃあいきます!」バーニーが弾くハードなリフに…松本さんのベースが絡んで…1974年のモントローズ『Paper Money』から「I Got the Fire」。
コレもGENKI SESSIONではおなじみの1曲。
早くもスッカリ息の合ったパフォーマンスを見せてくれる元基さんとバーニー!MarshallとレスポールJr.の組み合わせで奏でるこのサウンド、このフレーズ!
先日ASIAN BLACKのレポートの時に書いたように、やっぱりバーニーのギターのキーワードは「レスポール」や「ハムバッキング」ということになる。そして、曲が終わるや矢継ぎ早に飛び出したギター・リフは「Communication Breakedown」。
アレ?…ギターをテリーを持ち替えたゾ。
今「バーニーはレスポールとかハムバッキング」って言ったばっかりなんですけど…。わかっちゃいるけど素晴らしい元基さんの歌声!
どんな曲でもひと声発しただけでガ~っと自分だけの世界を作り上げてしまう。
声は最強の楽器だから!レッド・ツェッペリン・メドレーの2曲目は「How Many More Times」。難波さんはタンバリンでアンサンブルに色どりを添える。
そして、バーニーがボトルネックを使って幻想的なサウンドを再現するのは…
メドレーの終曲の「Whole Lotta Love」。松本さんが押し出すゴリンゴリンの低音と…ロジャーさんの豪放なドラミングが絶妙に絡みあって…♪ジャン、ジャン!のキメからあのギター・ソロへ。
なんだよ、シングルコイルのギターもいいな~。
結論!…ASIAN BLACKの時にあんなことを書かなきゃヨカッタわい!
そして曲のクライマックス。
あのア・カペラのパートからエンディングへと勇猛に突き進んだ!「バーニー日下部~!」
元基さんが声高らかに「GENKI SESSIONの新しいギタリスト」を紹介した。 続いてはロジャーさんのドラムスから。
コレも「ドラムス・イントロ当てクイズ」をやったら「She Loves You」とか「Rock and Roll」同様、大変に正解率が高い曲でしょう。元基さんとバーニーがユニゾンでメロディを奏でる「Move Over」。
電車なんかで席を詰めてもらう時なんか「Move over please(チョットどいて)」なんて言いますな。強力な推進力でグルーヴしまくる松本さんのベース! オリジナルのバージョンにはないボーカルズのピックアップ・ソロ。
もう「どうにもカッコいい!」としか言いようがない。
曲を締めくくったのは難波さん。
オリジナル・バージョンのギター・ソロの一節をクォートする密度の濃い~オルガン・ソロだった。難波さんはこのコンサートの翌月に71歳におなりになった。
「変わらないっスよね~!
よく私たちが昔の曲を演ってると『アレですか?70年代ロックですか?』って言われるんですけどね…『70代のロック』なんですよね。
今はまだ難波弘之さんおひとりだけですけど、そのウチみんなで70代ロック!」 「待ってまぁ~す!」
難波さんは昨年末、金属恵比須のライブのレポートの時にMarshall Blogにご登場頂いたけど、ホントにお若い。
私も約50年近く前にロックを聴き始めたんだけど、ビル・ヘイリーをロックの始まりとすれば、あの頃「ロック」はまだ20歳ぐらいの若~い音楽だったんだよね。
何が言いたいのかというと、その当時は当然70歳でロックを演る人なんて世界にひとりもいなかったであろうということ。
時の流れを感じるわ~。「ちょっとスローな曲を演ります」
元基さんの「スローな曲」は大歓迎。
松本さんが静かに音を3つ置いていくところからスタート。 ガラリと雰囲気を替えたのはビル・ウィザーズの「Ain't No Sunshine」。
こういう曲も元基さんにピッタリだ。
ギター・ソロをタップリと。
あ、またシングルコイル!
今度は赤いストラトキャスターだ。このソロがホントにスゴかった!
ワーミー・バーを巧みに操り、ブルージーなフレーズを織り込みながら、徐々に熱を帯びていき…これでもか!と情念のこもったプレイが続いてクライマックスを迎える。
まさに文句のつけようがない、「ロック・ギターの憲法」のようなソロだった。
それにしてもこのギター・サウンド。
ギターで人を感動させるならやっぱり真空管のギター・アンプじゃなくちゃムリだよ。
すなわちMarshallだ。バーニーのソロに呼応するかのように難波さんのエレピもソロがまたスゴかった! 元基さんのド迫力がアドリブのシャウトで曲は幕を降ろした。
11分を超す熱演。
「前半のハイライト」と言ってもいいんじゃないかしらん?「ナゼに静かになられたの?
少しずつ令文の思い出話を…。
さっき楽屋で『もしかすると令文が舞台にいてアンプの後ろで寝てるんじゃねぇか?』なんて話も出ましたよ。
『GENKI SESSION』は結構長くて30数年前からですね。
令文とか水野とかのオリジナルのメンバーで最初に演ったのは吉祥寺のシルバー・エレファントだった。
告知をしてなかったんでお客さんよりメンバーの方が多かったの」
「令文との付き合いは私が20代の頃にやっていたNOIZというバンドが大阪に行った時、令文のMARINOと対バンしてからなんですよ。
そこからの知り合いなので40年チョイぐらいのお付き合いだったんです。
でもね、令文とはもっと古い付き合いの人がいるワケですよ」
それはロジャーさん。
ロジャーさんの思い出話。
令文さんとは何しろ高校生の時からのお付き合いで、ロジャーさんが東京に出ていらした時によく羽田のお住まいに泊りにいらしたそうだ。
令文さんのお母さんが作って送って来てくれるカレーがとてもおいしくて、令文さんにダマって全部食べちゃったとか…。
「『オマエなぁ~』て、怒ってましたが『まぁ~、しゃあないなぁ』言うて…そんな兄貴みたいな存在でした。
今、そこに居りましたよ」確かに!
そんなロジャーさんの話を聞いていてホロっときちゃった。
というのは、実は私が最後に令文さんにお会いしたのはココ東京キネマ倶楽部で、2019年のGENKI SESSIONの時だった。
あの時、バンドの皆さんが食事に外出されて、ナゼか私は令文さんと楽屋で2人きりになった。
いつものように音楽とMarshallの話をした。
亡くなる4か月ほど前に夜に一度電話を頂戴したが、実際に令文さんにお会いしたのはこの時が最後だった。
令文さんについてはMarshall Blogで【I Remember 令文】と題した11本立ての追悼特集をしたのでココにはこれ以上詳しく書かないが、この日、愛用のMarshallと一緒にステージの上手にいらっしゃったことは間違いない。
ココでNOIZのレパートリーのコーナー。
まずはバーニーのストラミングをバックに「樹の歌」。やさしく、あたたかく歌い上げるバラードが聴く者の胸を打つ。そのままバーニーが出すガイド・トーンから「♪いつものように」。 曲は一転、ロジャーさんのハードなドラミングが炸裂するドライビング・チューン。松本さんのベースはバッキングにソロにと大暴れ!
そして、難波さんが操るシーケンサーが実にいいお味!そんなバックの激演に乗っかって元気さんは大熱唱!元基さんがバーニーに近づいて…背中を合わせて…腕をグルングルン!
この後、何度も登場したのがこのフォーメーション。
2人ともとても楽しそうだった!"いつものように"バッチリとキマって第1部を締めくくった。休憩をはさんでの第2部は難波さんのコーナーから。
物悲しいピアノから始まる「花、太陽、雨」。澄んだ難波さんの声で歌い上げる井上堯之さん作曲の1971年のPYGのナンバー。
コレは日本の「70年代ロック」ね。
GENKI SESSIONで難波さんがいつも取り上げられてきた1曲だ。
松本さんのベース・ソロが大きくフィーチュアされて…ス~っと難波さんのオルガンが入って来てメロディアスなソロを綴る。そして、バーニーが音を慎重に選びながら難波さんのソロを引き継いでいく。やがて曲は元基さんがハーモニーをつけるリフレインのパートを得てロマンチックに完結する。
元は約5分の普通のバラード・ナンバーだが、難波さんの手に掛かれば、原曲の味わいを損なうことなく器楽演奏のパートをタップリとフィーチュアする15分に及ぶプロッグ・ロック風味の大作に早変わり!
再び場面がガラリと替わる。
バーニーが奏でるこのシャープなリフ!
おお~!ロジャーさんの「難聴」だ!タイトル通り、ロジャーさんが難聴をテーマに歌い、そしてストレートにドライブしまくる爽快なナンバー。曲間のロジャーさんの語り…
「久しぶりです…5年ぶりです。
5年の間に難聴もますますヒドくなっております。
今年もセミの啼き声が聞こえませんでした。
風鈴の音なんて全く聞こえません。
まぁ~、難聴、痛風、五十肩といろいろ病気シリーズを演っていましたけど、2年ほど前にあまりシャレにならない病気に罹りましてですね。
実は結構大変やったんです。
6ヶ月ぐらい休みましたけど、バッチリ合う薬がありまして戻って参りました!
(大拍手)
まだまだやりまっせ~‼
GENKI SESSIONもまだまだやりますので、ロジャー高橋ともども今後ともよろしくお願いします!」「♪聞こえネェ!オレは難聴!」バーニーのソロが炸裂!
当然ココはスロットル全開だ!
「難聴」懐かしいナァ。
ロジャーさんはかつて令文さんとオガンちゃんで「TRIO the COLLAGENS」というトリオを組んでいて『ROUGH&DANGEROUS!』というライブ・アルバムをリリースした。
そのアルバムのクローザーが「組曲:難聴」だった。
この曲の歌詞の一部に「♪お願い皆さん!アンプの音を下げてくれよ!」という一節があって、そのパートを耳にするたびに少々気が咎めたものだった。
ジャケットに私が撮った写真をご採用頂いたのはとても良い記念になった。
ロジャーさん、とにかく色々とお大事になさってくださいませ。
「イヤ~、最高だよ。
それこそGENKI SESSIONの最初の頃は『ロジャー・コーナー』的にモノマネのコーナーがあったんですよ」
ロジャーさんがすかさず「エッ、鳳啓助でございます」。
「時代を感じるナァ。その頃はごく普通のモノマネだと思ってたけどナァ…人生幸朗とかね。
懐かしいナァ…」
確かに…昔は大河内伝次郎とか、嵐寛寿郎とか、長谷川一夫のモノマネをする人が普通にテレビに出ていたからね。
田中角栄以外の政治家のモノマネをする人もよく見かけた。
今にして思うと女優のモノマネをした人って見たことがなかったような気がするな。
女性の声帯模写芸人なんてのがいなかったんだろうね。
高峰秀子とか原節子とか田中絹代のモノマネなんて見てみたいものです。
それにしてもテレビのモノマネの番組なんて全く見なくなったナァ。
だってモノマネしている元がサッパリわからなくて見たところでオモシロくも何ともないんだもん! またまた場面がガラリと替わる。
難波さんのピアノでジックリと歌い込むのは「Cry Me a River」。この曲もGENKI SESSIONで毎回取り上げられてきた曲。
私には「待ってました!」のひとつ。
こういう曲が聴けるのもGENKI SESSIONの楽しみなのだ。
以前にも書いたことがあるが、この曲はエラ・フィッツジェラルドやペギー・リーやジュリー・ロンドンが歌った名録音が数多く残されている。「Cry me a river」とは「川1本分泣いて」という意味だそうだが、まさにバーニーのギターは「泣き」。
いい音だ。
やっぱりバーニーはストラトだな。
ちなみにそのたくさんの音源の中でもとりわけ人気の高いジュリー・ロンドンの録音でギターの伴奏をつけているのは名手バーニー・ケッセルである。
何たる偶然!
ああ、いつまでも聴いていたい…そんな演奏だった。
この後も素晴らしい演奏がガンガン続いた。<後編>に続く。
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