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2017年6月30日 (金)

【シゲさんといっしょ】 Marshallの爆音でガラスを割ることができるかな?

 

「罰だ…罰が当たったんだ…」
  
『赤ひげ』って観たことある?
黒澤明が山本周五郎の原作を映画化。
映画を観た周五郎が「ナンダよ、オレの原作よりおもしろいじゃないか…」と唸ってしまったという。
話の中に桑野みゆき扮する薄幸の若い女性「おなか」が、山崎努が演じるまじめでやさしい車大工の「佐八」に見初められ、幸せに暮らすというシーンがある。
私は、おなかが佐八に傘を貸して二人が出会う雪のシーンが大スキでしてね。
黒澤映画にはやたらと雨は降るが、雪は珍しい。モノクロ・フィルムながら私にはこのシーンがナゼかカラー・フィルムより色鮮やかに美しく映るのだ。
さて、その若い二人の幸せも突如として起こる大地震によって崩壊してしまう。
おなかは、「罰だ…罰が当たったんだ…。私が幸せになったがために地震が起きてしまったんだ。私は幸せになってはいけないんだ…」と佐八に出会ったことを後悔し、忽然と姿を消してしまう。
ま、台詞は正確ではないけれど、おとといの朝の私の心境はコレに近いモノがあったな。
イヤ、私はやさしい家族とステキな友達に囲まれて十分にシアワセでして…私が言っているのは「罰」の部分ね。

Ah2 ここのところあまりにも忙しくて、Marshall Blogの記事を書く時間が十分に取れなかった。
「オセオセ」ってヤツ。
それでも何とか休まず更新を続けようと、火曜日も夜中までかかって資料を集め、おとといの朝も5時に起きてコツコツと文章を書き始めた。
記事は『Marshall Blog Archive』の一編。要するに今日の記事。元となるのは7年も前に書いた記事なので、飛び切りヒドい内容だ。
それを一から構成し直して、すべての文章を書き直したのだ。
そしたら、アータ、コレがまた実にうまくできちゃったんよ!
「こりゃいいぞ!」とひとり悦に浸りながら公開しようとしたら、どうもコンピュータの画面のようすがおかしい。
「マズイ!」と思った瞬間、苦心して書いた名文が瞬時にして消え去ってしまった!
このブログ屋のソフト、時々こうなるんよ。
「バックアップしておかなかったアンタが悪い!」というそしりは免れないんだけど、ココのところすごく順調に動いていたので、つい作業途中の保存を怠ってしまったんだね。
「うまく書けた!」と思っていただけにショックがあまりにも大きかったし、盛大にハラが立った。
前回、同様のことが起こった時は辛抱たまらずマウスを床にたたきつけて粉々にしてやった。
今度もそれやっちゃうとまたマウスを買ってこなければならないので、思いとどまってグッと我慢。
ガマン、ガマン、ガマン、ガマン…。
ところが、どうしても堪えきれず机を両手で思い切り叩いてやった。
バ~ン!
「グワァァァァァァァァァァ~!」…しまった!右ヒジが重度の腱鞘炎だったことを忘れていた!
ただでさえ痛くてヒーヒー言っているのに、その机を叩いたすべての衝撃が患部に集中したのだ。
信じられないほどの激痛!
その後47分ぐらい右手全体が痺れてたわ。
そこで冒頭の『赤ひげ』のシーンに戻る。
「罰だ…罰が当たったんだ…月曜日の記事であんなイタズラを二度もするからTORNADO-GRENADEとFury of Fearと…何よりも読者のみなさんの罰が当たったんだ…」
    
もうそれからしばらくはヤル気が全く起こらず。
も~、ヤダ。
ゼッタイヤダ!
ヤダヤダヤダヤダヤダヤダ!
だってどんなに頑張って書いたところで元のよりいいのができるワケないもん。ヒジも痛いし~。
…ということで昨日、一昨日と更新を休ませて頂いた。
今はもう気が収まった。
まぁね、結局失ったデータってナンダカンダ言って大したことないんだよね、私の場合。
新しく書いた方が案外いいのができたりするもんよ。
コレが更新お休みの理由のほぼ半分。
残りの理由は単に時間がなかったのです。
も~ここのところ予定がパンパンで、想定外の仕事が発生してしまうと対応しきれないのだ。
え、「自業自得」だろって?まったくおっしゃる通り!
…ってんで、お休みを頂いて何とか書き直し&作り直しの時間を捻出したというワケ。
オッと!ココで一回保存、保存…っと。
話は戻るけど、『赤ひげ』についてはまた別の機会に触れたいと思っている。
それはウチの父が2年前にこの世を去る時、まさに『赤ひげ』のワンシーンを見たからで、黒澤明のリアリズムに仰天したのだ。
  
今日のアーカイヴ記事の初出は2010年6月4日のこと。
だからちょうど7年前だね。
恐らく古くからMarshall Blogをご覧頂いている方の記憶に残っている記事だと思う。
当時それほど反響が大きかったネタだ。
新しいMarshall Blogの読者も増えたので再掲することにした。
で、今回この元ネタを探すために昔の記事を見ていて気が付いたのだが、初代Marshall Blogは2008年の4月21日にスタートして、2011年末に終了。
途中私がMarshallから離れている間に約10ヶ月の空白期間があって、2012年の10月に復活して現在に至っている。
だから来年の4月で10周年を迎えるんよ。
ホントに10年なんてアッという間だね。
で、当該の昔の記事を読んでみる。
既に上に書いたが、文章がヘタで赤面しちゃったよ!
そもそも「ですます」調なんだもん。
こんなんで皆さんよく読んでくれたナァ。ホントに皆さんのあたたかい心に感謝しますわ。
  
さて、本題。
以前、私がMarshallのディストリビューターに勤めていた時の話。
ある時、机の上の電話が鳴った。
受話器を取ると、電話の主は初めて耳にする声で「テレビ番組の制作会社のモノ」と名乗った。
要件を聞くと、「スミマセ~ン!ギターの爆音でガラスを割ろうとしてるんスけど、どうスかね~?できますかね~!」というどちらかというと軽いノリ。
ナニ~?「ガラスを割ることができますか?」だと~?
オイオイ、こっちを誰だと思ってるんだ?Marshallさんだぞ!…と、今なら切り返すところだが、まずはMarshallに相談してきたところに感心。
何しろロンドンの二代目Marqueeが入っていたビルは、長年の爆音で建物自体が数ミリズレたというではないか。
その原因は間違いなくMarshallですよ。
爆音でガラスを割ることぐらい屁でもあるまい。
しかも実験でうまくガラスが割れれば「全国ネットのテレビ番組になる」というのだから張り切らざるを得ない。
この話を聞いた時、咄嗟に頭に浮かんだのは映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のオープニング・タイトル・シークエンス。
巨大なスピーカーが据え付けられたアンプにギターをつないで、OVERDRIVEをフルテンにセットし、先端が金属コーティングされたディア・ドロップ型のピックで弦をハジくと、スピーカーから発された爆音でマーティ・マクフライがスッ飛んでしまう…というヤツ。
まさにアレよ。
あのギター・アンプ「GA-5T」って型番なんだよね。
「GA」は「Guitar Amp」の頭文字なんだろうけど、「5T」って何だろうな?あの映画のことだから何か意味が込められているに違いない。
で、とにかく、アレを再現すればいいんでしょ?ってなもんで二つ返事で引き受けた。
となると、生来の悪乗り癖が出て、「もし実験がうまく行ったら本番の収録にはジミヘンのソックリさんにギターを弾いてもらってガラスを割りましょうよ!」なんて気の早いアイデアまで出してやった。
もちろん中野のシゲさんのことだ。
    
実はそれよりかなり前に、オペラ歌手が手にしたブランデーグラスを声で割るシーンをテレビで見たことがあった。
その番組の解説によると、グラスに加える衝撃は音量よりも音の周波数の方が大事であるということだった。
つまり、もっともガラスを振動させる音域の周波数帯がわかれば、音に変わりのあるでなし、ギターの音でもガラスを割ることができるだろうと素人ながらに思ったのだ。
しかも、こちとらMarshallよ。
音量に何の不足や不満があろうか!
  
…ということで、次はMarshall選び。
どのモデルが一番破壊力のある音を発するか…コレには結構悩まされた。
よく「爆音、爆音」というけど、人間の耳が感じるギターの音の大きさは歪んでいる音よりクリーンな音の方がはるかにデカい。
私の経験から言うと、今まで最もデカいと思われる音を出すギタリストはブルース・セットの時のGary Mooreだった。
高校一年の時に観た武道館のTed Nugentは、その当時最もラウドなギタリストと言われていたが、会場の差による音の聴こえ方や自分の経験値の高低にもよろうが、Garyの比ではなかったように思う。
そのGaryの音の大きさのカギは、歪みが浅く、クリーンに近いということだろう。
実際にJimi Hendrixを二度観たことのあるUli Jon Rothから聞いた話では、Jimiの音は猛烈に大きく、そしてクリーンだったそうだ。
こんなことを考えるとやはりココはGaryに倣って1959SLPか?

51959slpfront 「クリーン」を追求するのであれば、驚異的なヘッドルームを誇るJVM410Hか?
CLEAN/GREENでフルテンにして、高域を上げてやればかなりの破壊力を発揮するハズだ。
待てよ、それだとガラスが割れる前にこっちの耳が割れてしまうかもしれないな…なんてことも思ったっけ。

5jvm410h イヤイヤ、やはりココはKT88を搭載した2203KKで真空管アンプのパワーを見せつけてやれ!…と、当時の一番の暴れん坊を起用しようかと思ったが、ボリュームを上げると歪んでしまうので、案外この実験には向いていないかも…。

2203kk 待てよ…Static-Xの例にあることだし、「暴力的」という観点であれば、MGの100Wヘッドもおもしろいかもしれないな…でもコレはないか。
コレもかなり身体に悪そうだからな。

Mg100hdfx 
そして、もうひとつ。
1959RR。
1959系統で音もデカいし、宣伝にもなる…ということで、最終的に実験には1959RRとJVM410Hを持っていくことにした。

1959rr 肝心なのはスピーカー・キャビネット。
コレははじめから1960に決めていた。
後はAngledにするかBaseにするかの選択だ。
AキャビよりBキャビの方がより単一指向性が強く、ガラスに当てる音のまとまりがよいだろうという考えからBを選んだ。

21960b

コレで準備は万端整った。
実験は文京区役所のところの坂の上にある某有名大学の理工学部精密機械工学科の音響スタジオで、ご担当の工学博士のご指導のもとで行われた。
それでは実験開始!

5img_0104_2 まずは1959RRを1960Bにつないで爆音の元をセットする。
一方、その対面には供試体となるフレームに収められた板ガラスが設置される。
「一体、どれぐらい大きい音なんですか?」なんて制作スタッフの方たちがかなりビビってる。
冗談じゃないよ、こっちは毎晩コレだよ。
そういえば昨晩のギタリストも1959RRだった。
「殺人兵器じゃあるまいし、大したことないですよ!」と答えて置いたが、今なら、「戦艦大和の大砲を打つ時、乗組員は全員頑丈な遮蔽壁の陰に隠れたんですってよ。そうしないと砲丸を発射のする時の音のショックで内臓がつぶれてしまうんだそうですよ」ぐらい言って脅かしてやったんだか…。
結局、スタジオにひとり残った私は私物のレスポールを1959RRにつなぎ、ボリュームを目イッパイ上げ、最も振動を与えやすいと思われる6弦のローフレットからひとつずつ音を出していった。

5img_0087

板ガラスについているマイクのようなモノは振動を測定するセンサーだ。

5img_0088

防音室の外ではそのセンサーから送られてきた信号を元に、どの周波数の音が最もガラスを振動させるかが測定される。
前述のオペラ歌手のブランデーグラスと同じ原理を利用するのだ。
そして測定の結果、140Hzあたりが一番振動を与えやすいということがわかった。
これがどの程度の音程かというと、平均律の音階で言えば、どうもDbが最も近い。
ギターやベースをたしなむ皆さんであれば経験がおありだろうが、この音が生み出す振動ってスゴイもので、ほんのチョット周波数が異なるだけで信じられぐらいの大きな差が生じる。
あのベースのデッド・ポイントなんて本当に不思議だもんね。
この日残された私の仕事は6弦を全音半下げて、日がな一日Dbの音を弾くだけ。
明けても暮れても「Db」、「C#」、「Des」、「Cisis」、「変ロ」、「嬰ハ」、「レのフラット」、「ドのシャープ」…コレばっか。

5img_0092

確かにガラスは盛大に振動している。
そこで、手っ取り早く、ガラスを1960に近づけて音を出してみる。
ダ~メ…割れる雰囲気すらなし。
後ろには持参したJVM410Hが見えているが、結局一度も使わなかった。

5img_0095 とにかく!
確かにガラスは大きく振動している、
そこで、ガラスのどの部分が一番振動しているのかを調べてみることになった。
下の写真は1960を寝かせて、その上にアクリル板をかぶせ、そこに球状の小さな発泡スチロールをバラ撒いたところ。
こうしてギターの音を出してガラスを振動させると、どのあたりが一番振動しているかがわかる。
出す音程によって球の動きが派手に変わり、おもしろかったな。

5img_0098

そうこうしているウチに大分ポイントが絞られてきた。
ガラスを最も大きく振動させる音の周波数帯はもう判明しているので、後はその音のエネルギーをいかに分散させずにガラス板に当てるか…ということが課題になった。

5img_0099 そこで、予め用意してきたアクリル製の箱を1960に被せて音の散逸を防いでみることにした。
さすがテレビ!金がかかってます!
さらに運搬時の事故を考慮してアルミ製のフレームに入れていた試供体のガラス板を裸の状態にした。
フレームの四辺についていたクッションがいいようにガラスの振動を吸収してしまっていたからだ。
そして私は「Db」!

5img_0101_2部屋にブルーシートが敷き詰められた。
そう、ガラスが割れた時に破片が飛び散る恐れがあるからだ。
そして、カメラが回される。
…と、いうことは~!

5img_0103

割れんわ。
ダメよ、ダメダメ。
結局、ゼンゼン割れませんでした~!
もっともコレぐらいでそう簡単に割れているようじゃAC/DCあたりのコンサートでは死人が出ちゃうかもしれないもんね。
ご期待に沿えずスミマセン。
ナンダ、コレだけかって?
コレだけよ。
割れんのよ。

5img_0102

で!
チャンスが巡って来るかどうかはわからないけど、次回に備えてわかったことを記しておく。
いずれも大学の先生による分析だ。
まず、試験に供したガラス板が厚すぎる!
私もそう思ったんだよね~。
厚さ2mmのガラス板を使用したのだが、丈夫すぎるって。しかも、最初はそれをクッションの付いたフレームに入れていた。そんなもん割れっこないって。
もっと薄いスリガラスのようなものだったらイケたかも…とのこと。
先生ヨォ、ナンだってそれを先に言ってくれなかったんだよ~…『飛び出せ!青春』の片桐風に言いたくもなってしまうような気もしたよ。
ちなみに『飛び出せ!青春』の柴田の役を演じたのは、冒頭の『赤ひげ』に子役でありながら天才的な演技で準主役を務めた頭師佳孝。また、この人は『どですかでん』で主役を演じた。
しかし、この頃日本ではサッカーは日本ではまだポピュラーなスポーツではなかった。今のサッカー人気に太陽学園のサッカー部OBはさぞかし驚いていることだろうナァ。

Glass 次に、オペラ歌手の場合の円状のブランデーグラスは外から与えられた力が分散しにくく、歪率が高くなりやすい。
つまり、ガラスは剛性が低いので、ひとたび供試体が歪めばパキッといきやすいのだ。
その点、普通の板硝子は与えられたエネルギーが四方に発散しやすいので不利。

Bg_2 まだある。
今回使用したスタジオのようなデッドな空間は音が壁に吸音されてしまい、音エネルギーがパワーダウンしてしまう。
よって、四方をコンクリートに囲まれたような反響が豊かな環境が望ましい。
戦車の中などが最も実験場に適しているのではないか…って、戦車の中でMarshallを鳴らしたらガラスが割れる前にこっちのアタマが割れるわ!
そもそも1960を戦車のハッチから入れることはできませんから。

It 最後に…
音量的にはガラスを割ることができるレベルに十分に達している(ヤッタ!)。
しかし、スピーカー・キャビネットの特性として、音が四方に散逸してしまい、どうしてもパワー不足に陥ってしまう。
その点、オペラ歌手の場合のように人の声の場合は、口を丸めることによって音エネルギーを一点に集中させることができる。
したがって、巨大な漏斗のような器具で1960の4つのスピーカーから出てくる音を一箇所にまとめ、それをガラスに当てることができれば割れるのではないか…。

5tiltま、結論としては、普通の環境でギターの爆音を用いてガラスを割ることができないということがよくわかった。
そりゃそうだよね。
それと実験のやり方がマズかったね。
ま、手前ミソながら、チャンとしていたのはMarshallの音量だけということか?
だから言ったでしょ?「こっちを誰だと思ってんだ?Marshallさんだぞ!」って。
デジタル・アンプじゃここまでできなかったろうナァ。
実際の私の任務はDbを弾くことだけだったが、メッチャおもしろかったナ。
もうひとつ興味深かったのは、テレビ関係の方々の動向。
今の人たちは知らないだろうけど、もう本当に『シャボン玉ホリデー』の「キントト映画」のなべおさみと安田伸の状態。
「ヤスダ~!」てのあったでしょ。アレと同じ。
社会勉強になりましたわ。
ちなみにクレイジーキャッツでテナー・サックスを吹いていた安田さんは高校時代に東大か一橋大を目指していたが、音楽に夢中になり東京藝術大学に入学し、キチンとした音楽教育を受けた。
昔のお笑いはこうしたインテリが混ざっていたのでとても面白かった。
イギリス流に言えば、「モンティ・パイソン」、「フォルティ・タワーズ」、「Mr.ビーン」と言ったところか…。
今みたいに裸になって笑いを取ろうとするヤツなんていなかった。

   
…ってなことを書いたところで全部消えちゃったワケよ。
ハラを立てても仕方ないでしょ?
オッと!保存、保存…っと。