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2023年3月 8日 (水)

【Marshall Blog Archive】森園勝敏インタビュー<後編>

 
「森園ブランド」のギター・プレイを文字で表す場合、どうしても使いたくなるのは 「いぶし銀」という表現だろう。

Img_0108「いぶし銀」というのは「銀」を「燻し」たモノかと思っていたらさにあらず。
シャケじゃない。
銀などの金属に硫黄のススを擦りつけて故意に曇らせる加工のことを「いぶしをかける」というらしい。
時間が経つとやがて黒ずんできてそれが実にいい風合いを出すようになる。
そこから「見た目が派手ではないが、本当に実力を持っていて高い評価を得る人やモノ」を指す表現としてこの言葉が使われるようになったのよ。
森さんが弾くブルースがまさに「いぶし銀」だ。
森さんが奏でる一音一音に重い意味と物語があるのだ。

Img_0401その演奏に耳を傾けていると、ギターを速く弾いたりする必要性が一体どこにあろうか?…と感じ入ってしまう。
一方では、50年の長きにわたり音楽づくりの現場から進化を見続けてきた「ロック楽器の歴史」の生き証人でもある。
森さんと話しをしていると「エ~ト、アレなんだっけナァ~」などという場面がほとんど出て来ない。
どんなに時間の経った事がらでも森園コンピュータが瞬時にして必要なデータを引き出しれてくるのだ。
その記憶力を駆使した語り口がまた実に巧妙でしてね。
「話し上手は聴き上手」…森さんは話す時だけでなく、人の話しを聴く時も恐ろしく真剣。
このインタビューではいちいち文字にしなかったが、間に挟まって私が解説するMarshallの歴史やこぼれ話しにジックリと耳をそばだてていらっしゃった。
こうした好奇心がまた森さんの音楽家としての厚みを倍増させているのであろう。
『森園勝敏インタビュー』の<後編>をどうぞお楽しみあれ!


フランク・ザッパ
M:またぞろ私的昔話しで…。
岡井大二さんからお聞きしたんですが、浅草国際劇場でフランク・ザッパとエレベーターでふたりきりになっちゃって…とてもコワかったって。
恐ろしいまでのオーラだったっておっしゃっていました。
K:アイツも?イヤ~、そうですよ。
楽屋が隣でね(これだけでもうスゴイ!)、ボクらの演奏が終わって戻って来ると、ちょうどザッパが部屋から出て来たんです。
その時、目と目が合ってボクはそのまま石になってしまって…それでボーっとしちゃって彼らの演奏を観ないでそのまま家に帰っちゃったんです。
Img_0414
M:エエ~ッ?! ナンで?! ナニも帰ることはないでしょうに!
K:イヤー、もうヤラれちゃって!
「ウワ~、ホンモノだ!」って思って…だってザッパですよ!
M:じゃ、本当に演奏を観ていないんですか?
K:本当に観ていない! 
ベースのロイ・エストラーダといっしょに部屋から出てきたの。
ボクはそれで夢遊病者のように家に帰ったんですよ!
M:モッタイない!
K:モッタイないと言えばモッタイないけど、もうそれで充分だったといえば充分だった。
それから何年か経ってLAのあるスタジオで自分のアルバムをレコーディングをしていた時に一番離れた部屋でザッパがレコーディングしていたんですよ。
M:エエ?! ナニを録っていたんでしょうかね?
K:『Joe's Garage』ですね。
その時も本人に会って目が合ったらホテルへ帰っていたかもしれないけど、いつスタジオへくるかわからないって感じだった。
M:助かりましたね。
K:ウン。ナンカね、『いつ来て、いつ帰ったか』なんて誰も知らない…みたいな感じでしたよ。
しかもスタジオに出入り口がやたらいっぱいあってね。

<コラム:森さんと大二さんとザッパさん>
この記事の推敲をしていて思い出した。
それはギターマガジン(リットーミュージック社刊)の2008年4月号に掲載された「フランク・ザッパ特集」。
私もMarshallとは関係なく、いちファンとして「おススメアルバム」のページを寄稿させて頂いた。
特集の扉に使われた写真のザッパのレコードは私のコレクションからお貸出しした。Gm 特集の中に古今のミュージシャンにお気に入りのアルバムを3つ挙げてもらう企画があって、森さんが登場された。

Km 森さんが選んだのはVERB時代のベスト・アルバム『Mothermania』、『Weasels Ripped my Flesh(いたち野郎)』と『One Size Fits All』だった。
で、後に大二さんにお聞きしたところ、その『Mothermania』は大二さんの所有物だったとか…。
イヤ、天下の四人囃子の創設メンバー2人といえども、高校時代からの友達同士だから起こり得る話だナァと思ったのだった。
しかもお気に入りの1位に選んだのが借り物というのも何となく森さんらしい感じがしてオモシロイ。
あ、私ももちろんオリジナル盤の『Motherania』を持っています。Mm  

レディ・ヴィオレッタ
M:コレも極めて「私的」に…。
あの時代の私の日本のロックのアルバムのベスト5を挙げるとすれば…『ゴールデン・ピクニックス /四人囃子』と『黒船 / サディスティック・ミカ・バンド』と『悪たれ小僧 / 頭脳警察』と『マラッカ / PANTA & HAL』、そして「外道」なんですけど、とりわけ『ゴールデン・ピクニックス』が好きでした。
すごく洋楽の香りがする。
名曲「レディ・ヴァイオレッタ」も入っているし…あの曲はまたどういうアイデアで出来上がったんです

Img_2568か?
K:イヤ、アイデアもクソもありません。
でも色々逸話があることはあります。
”逸話”真弓なんちゃって…。
M:それカットしときますか?
K:はい、お願いします(笑)。
あの頃マックスフィールド・パリッシュ(Maxfield Parrish 1870 - 1966)という絵描きさんの作品が大好きだったんです。
It's a Beautiful Day(1967年デビューのサンフランシスコのバンド)のジャケットに使われているような絵ですね

Ibd_2※このジャケットにはケント・ホリスターという画家がパリッシュの作品を模倣して描かれた絵が採用されている。「ジャケット・デザイン・ベスト〇〇」みたいな企画には必ずと言っていいほどランクインするとても美しいジャケット。B面1曲目の「Bombay Calling」という曲がDeep Purpleの「Child in Time」の元ネタになっていることはつとに有名。

M:はい。とてもステキなデザインですよね。
K:それで誰かに彼の画集をもらったんだけど、その中でたまたま見つけた絵のタイトルが「Lady Violetta(レディ・ヴィオレッタ)」なんです。
いくつかヴィオレッタが登場している作品があるんだけど…「Knave of Hearts」という物語に出てくるんですね。
ちょっとモナリザっぽい不思議なスマイルでね、とてもいい感じだったのでそれをイメージして曲にしたんです。

Lv_3※「Knave of Hearts」はルイス・キャロルの『不思議の国のアリス(Alice’s Adventures in Wonderland)』の登場人物、ハートのジャック。
森さんがおっしゃるように「Lady Violettaもの」はひとつではなく複数の作品が存在していて、そのウチのひとつが『Lady Violetta and Knave of Hearts』という作品。
もうひとつが『The Lady Violetta about to Make the Tarts』で、モナリザ的なスマイルを見せているのはコチラの方だろう。
ちなみに『アリス』に出てくる「トカゲのビル(Bill the Lizard)」という名前はこのインタビューの<前編>の『カラフル・クリーム』のところで登場した19世紀のイギリスの政治家、ベンジャミン・ディスレイリをもじったといわれているらしい。

K:その絵を見ながら友達のウチでポロポロやっているうちにできちゃったんですけど、後で気がついたらボズ・スキャッグスの「Here to Stay」という曲と丸っきりコード進行が同じだったんだよね!
M:サビも?

Boz_2K:サビも同じ。
M:そんなことってあるんですかね?
K:あったんですよ~。できてから10年ぐらい経って気がついたんです。
ボズだから歌ものでメロディは全然違いますけどね。
※この曲はボズの1971年発表のソロ4作目『Boz Scaggs & Band』に収録されているが、森さんおっしゃる通りサイズは違えどコード進行は本当にほとんど同じ…ドキッとするくらい同じ。
IIm7 – IM7の繰り返しに加え、サブドミナント・マイナー(IVm7)という印象的な展開がますます「同じ感」を引き立てている感じ。
でも、私は『ゴールデン・ピクニックス』の最後に収録されているこの曲の方が断然美しいと思う。
森さんはアドリブ・ソロの時にIIm7の時にG/Aを弾くことが多い。

K:四人囃子は大作主義だったので、A-B-Cみたいな単純な構成の曲が少ないんですが、珍しく『Lady Violetta』はそのうちのひとつ(笑)…A-Bだけだもんね。
でもアドリブはしやすい!(笑)
M:ところで、あの曲は「ヴァイオレッタ」ではなくて「ヴィオレッタ」と発音するのが正しいんですね?
K:そうです。
M:Marshall Blogが責任を持って訂正しておきましょう。
K:お願いします!私も最近一生懸命訂正して歩いているんですよ!
 
一触即発IsM:話しは戻って『一触即発』。
K:ウン、アレは本当に面白いレコーディングだった。
その前に『二十の原点』ていうのがあって、バーターだったんだよね。
「これをやれば、そっちをやらしてあげる」みたいなね。
当時はFM局もあまりなくて…イヤ、FMなんてなかったのかな?
AMでしか流れなかった。

Img_6029で、「一触即発」をかけてもらってもイントロだけで、歌が始まるはるか前に終わっちゃうんだよね。
M:知らない人は「ナンダ、この曲は歌が入ってたんだ?」みたいな?
K:そうそう!それで「円盤(空飛ぶ円盤に弟が乗ったよ)」を出したんですよ。
で、「円盤」も最初は歌が始まるまでイントロがかなり長かったんですけど、ムリヤリ短くしたんですよ。
M:あのB面の「ブエンディア」という曲がまた不思議。
K:そう。あの頃大二はもうあんまりロックを演る気がなくて、本人はもうCTIとかばっか聴いちゃって…。
今で言うフュージョンみたいなことをやりたがっていたんだよね。
M:確かにそんな感じの曲調ですよね。
K:ちなみに「レディ・ヴィオレッタ」はNHKの「明るい農村」で何回かかかりましたよ。
M:ホントに?! スゲェ~!
K:何がスゴイんだかわかりませんけどね!(爆笑)
M:普通かかりませんよ!
K:山岸(潤史さん)の曲で「モーニング・ブライト」ってあるんですけど、プリズムは「モーニング・ライト」で…ま、それをモジっているんですが、その曲と「ヴィオレッタ」が使われてた。
フュージョン・ブームの前でインストものが少ない時代だったんですよ。

Gbc_2※CTI(Creed Taylor Incorporated Records)は1967 年にA&R傘下に創設されたジャズ・レーベルで後に独立。ジョージ・ベンソン、ボブ・ジェイムス、ヒューバート・ロウズなどが在籍し、ストリングスを多用したドン・セベスキーの甘いアレンジが時代にマッチして人気を博した。
今聴くとどれもかなりアマアマ。いわゆるイージー・リスニング・ジャズ。
でも、フレディ・ハバードの『Red Clay』やジム・ホールの『Concierto(アランフェス協奏曲)』などのジャズ・スピリット旺盛な名作も多数残されている。
そういえばアラン・ホールズワースの『Velvet Darkness』もCTIだったね。
余計なことだけど、個人的にはケニー・バレルの『God Bless the Child』が好き…というのはあくまでも後からCTIを体験した人間のコメント。
大二さんのようにほぼリアルタイムでCTIを聴いた方々には、当時このテイストがどういう風に受け取られたのか大変興味がある。

 
ゴールデンピクニックス

71cpz3amj0l_ac_sl1500_ M:「Flying」ってどなたのアイデアだったんですか?

Img_0126_3K:アレはね、「何かビートルズを1曲入れよう」ということになったんです。
あのバンドのメンバーは全員音楽の好みが違っていて、唯一話しがまとまるのがビートルズだったんですね。
M:ピンク・フロイドもダメなんですか?
K:ん~、でもボクがピンク・フロイドに興味を持ったのは「Echoes」からですからね。
大二と知り合った頃よくアイツのウチへ遊びに行くと『神秘(A Saucerful of Secrets:ピンク・フロイドの2作目。ヒプノシスが初めて手がけたレコードジャケット)』とかをかけながらひとりでドラムを叩いてましたよ。
ボクは気が付くと寝てて、「ア~、こんなのどこが面白いんだよ…」って。
インチキな感じがするナァ~って思っていたんです。
M:そういえば「Cymbaline」とかも演られてましたよね。

Img_0420ザッパでは「Holiday in Berlin」…。
K:野音の「Holiday in Berlin」ね。でも、アレはギターはボクじゃないんですよ。
M:エ?どなた?
K:小林克己。ちょっとあの時具合が悪くてね…デヘヘ。
M:そうなんですか~。
で、「フライング」…アレってビートルズのオリジナル曲の中で唯一の純粋なブルースですよね?
「ブルース形式」って言った方がいいのかな。
K:あ~、そうかもね。
でもおおよそブルースには聴こえない。
レスリーを使ったギターがすごくよくてね。
深いトレモロがまたいいんだ。今でも聴きますよ。
※エコーズ Echoes: ピンク・フロイド6枚目のスタジオ作品『おせっかい(Meddle)』のB面すべてを占める23分の大作。当時、四人囃子はこの「エコーズ」を完璧に演奏できるバンドとして有名だった。
「スリット・スキャン」と呼ばれる手法を駆使して撮影したキューブリックの『2001年宇宙の旅』の最後の前衛的なシーンと「Echoes」がシンクロしていることはよく知られている。実際の映画ではリゲティの音楽が使われている。
※ビートルズのブルース:後年気が付いたのだが、もう1曲ビートルズのブルース形式の曲を発見した。それがナンだったかは忘れた。
確かナンカあるハズ。

 …と、結局は自分の訊きたいことばかり訊いてしまう公私混同のワガママなインタビューとなったが、個人的には大満足。
こうした記録をドンドン残しておかないと日本のロックは後でヒドイ目に遭うことになるのだ。
ひとつ、今でも気になっていることがあって、今度森さんにお会いした時に直にお訊きしてみようと思うのだが、四人囃子の初代ベーシストの中村真一さんの追悼コンサートの時…だったと思ったが、森さんはCharさんと演奏した。
その時Charさんがこうおっしゃった。
「ああいうストラトの使い方をしたのは日本では森が初めてなんだよ」
その時、誰も何も反応しなかったのだが、私にはこのCharさんの言葉がとても印象的だった。
一体どういう使い方なんだろう?
なるほど森さんが弾くストラトキャスターの音は素晴らしく美しい。
そのCharさんの言葉の意味を確かめるためにナマの森さんのプレイを体験しに行って頂きたい。
もちろん森さんがMarshallをお使いになる時に!
それにしても驚異的な記憶力の持ち主だ。
ココには書けない、もしくは書かないほうがいいような話しも実はたくさん披歴して頂いたのだが、それらのどれもがあたかも先月に起こった出来事のようにお話しになられていた。
できることなら、ギターだけでなく、お話しもいつまでも聴いていたかった!
550v 

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