ROCK ABLAZE 2025 TOKYO<後編>~FEEL SO BAD
熱狂渦巻くFEEL SO BADのステージの中盤。
PONさんがメンバーを紹介して「オン・ドラムス………オレ~!」と叫ぶ。そして注意深くユッタリとしたリズム・パターンを叩き出すと…
Chrisと翔己くんがそのリズムに加わる。
そして、だりあさんがジックリと歌うのは「Heaven」。
翔己くんと…
だりあさんのスキャットがユニゾンで奏でるパートを経て…
Chrisの絶妙なクランチ加減のソロが続く。
ChrisはMarshall。
その心地よいクランチ・トーンはペダルではなく「JVM410H」が作っている。「どうもありがとうございます!
みんな楽しんでくれていますか?
さっきも話したように本当にFEEL SO BADね…非常にゴキゲンなんですが、1コだけだりあ自身が不安なことがあるんです。
みんなに弱音を吐いてもいいかな?
それはこのヒザ…特に右が非常に悪い。
皆さんは『変形性膝関節症』って知っていますか?」「本当だったらもうチョット年齢がイってからなる人が割と多いらしいんですが、私は若い頃にムチャをし過ぎました。
たくさん走って、たくさんジャンプして…とにかくナニかあるとすぐ走ったり飛んだりしちゃう。
ヒザをすんごく酷使していたみたいなんですね。
なので自分の中ではこうなってしまったことがものすごく悔しい。
でも悔しくてもムリはできないし…じゃあ、どうしよう?って考えた時に初心に帰ろうと思ったんです。
歌は心。
心を込めて今まで以上に丁寧に、そして大切に歌おうと思いました。
次の曲も心を込めて歌いたいと思います…なんてバラードが来ると思うかな?」
アラ~、お気の毒に。
とにかくお大事になさってくださいね。
もっとも私なんか運動が大キライで今も昔も全然使っていない割には時々ヒザの調子がおかしくなりますけどね。
写真を撮っていて脚立から降りる時がコワくて、コワくて! そうしてだりあさんが心を込めて歌ったのは「グレチャウゾ」!
全然バラードじゃない!
そんな人をダマすようなことをしたらグレちゃうよ!ってか?
バラードでもドライビン・ナンバーでも、きっといつも心を込めていらっしゃることでしょう。Chrisが弾くヘヴィなリフに合わせて…
「♪もうグレちゃうぞ やりたいことならイッパイだ!」
クルクルと変わっていく曲調。
ホントにこのバンドの曲はスゴイ。
歌詞もメロディもフックのカタマリだ。「ワン!」
PONさんのひと声、ひと啼きかな?で始まったのは「時計じかけの暴れん坊」。
だりあさんの歌声も勇ましいヘヴィ・チューン。
PONさんのドラム・ソロつきだぁ~!
機械じかけのパワーでスティックを縦横無尽に振り回す!
「機械じかけの~」というのは「外観はまともでも中身が奇妙なモノ」を表現する比喩表現なんだけど、PONさんのドラム・ソロは外も中もパワーで統一されとる!
そのPONさんが愛用してくれているのがNATALドラムス。
24インチのダブル・バスドラムでパワー倍増だ!
「はい、皆さん、身体はあったまっていますか?
もっとあっためようか?」
だりあさんが『スリー、フォー』って言ったら、みんな両手を使って同じ動きをしてくださいね!
いくよ!」…と、お客さんと次の曲の練習をしてすぐ本番!PONさんが叩き出すハチ切れんばかりのスネア・ドラムに思わず身体が動き出す!
PONさんのスネア・ドラムはNATALのアルミシェル。
8インチの極深胴が超ド級のサウンドを送り出す。「♪有酸素運動、有酸素運動」
これまた、まさにFSBならではの歌詞だねェ。
「運動」と「寸胴」のゴロ合わせが素晴らしい!「スリー・フォー!」
翔己くんの低音がウネりまくり…
Chrisの弾くリフが暴れ回る!
「スリー・フォー!」
イヤ~、コレは楽しいわ~!
チョット脱線しますよ。
この曲を聴いてどうしても書きたくなった。
2019年に亡くなったイラストレーターの和田誠さんね。
この人は驚異的な記憶力の持ち主で、映画や音楽を中心としたエンターテイメントに関する大エキスパートだった。
その見識を活かして映画を何作か監督し、小泉今日子の主演で1988年に撮った『快盗ルビィ』では主題歌も作っていた。
私、映画自体は観ていないんだけど、その主題歌の歌詞について和田さんがこんなことをおっしゃっていたことを覚えている。
「日本のポピュラーソングの歌詞って海外の曲みたいに韻を踏むことをあまりしないんですよね。そこでボクはこの曲にそれを詰め込んでみたんです」
それは「好きよ金銀サンゴ」と「憧れてたタンゴ」とか、「欲しいのはサファイア」と「それとも素敵なキス・オブ・ファイア」のようにまるで和田さんが描くイラストのようにとてもカワイイ洒落になっていた。ところで、日本語は音節の数が極端に少ない言語ゆえ、同音異義語の数が世界でもトップレベルらしい。
例えば同じ発音の「こうしょう」でも「交渉」、「高尚」、「公証」、「考証」、「口承」、「鉱床」、「厚相」、「哄笑」、「工廠」、「公娼」…のように数多くのバリエーションを持っている。
そんな言葉を普段から平気で使い分けている我々はかなり頭が良いワケよ。
日本語を学習する外国人はみんなコレにマイっちゃうんだから。
で、この言語のそうした状態が引き起こす現象のひとつが、ダジャレ、地口、語呂合わせといった「言葉遊びのしやすさ」なんですな。
要するに日本語はシャレを作りやすい。
ところが、こと日本のポピュラー・ソングに関して言うと、この利点が全く活かされていないというのが通説なワケ。
ビートルズの歌詞を聴けば一発でわかるように、海外のポピュラー・ソングは上手な「韻づくり」にかなりの労力を割くからね。
単語の最後の音が共通の言葉を並べて編んだ「逆引辞典(Reverse Loopup Dictionary)」なんてのがあるぐらいだから。
下は私が持っている英語学習用の逆引辞典。
滅多に使うことはないんだけど、例えば「-ter」で終わる単語なんてのを調べると、「Jupiter」、「writer」、「batter」とかズラ~っと並んでいる。
50年位前は、こうした辞書が英語の語彙を増やすために重用されていたらしい。歌詞に話を戻すと、韻を踏んでいる演歌なんて皆無だもんね。
ラップがあるじゃないか…って?
アレは少なくとも「音楽」のウチに入らないでしょう。
そこへ持って来て「運動」と「寸胴」、「大好きQueen」と「音楽はウィーン」。
ま、「Queen」は日本語ではないけれど、このFSBの歌詞の精神が素晴らしいと思うワケなのです。
諧謔精神のバランスも絶妙だ。
私だったら「シムラはアイーン」とかやっちゃいそうだもん。
そうした歌詞のアイデアを独特のメロディとハードな演奏に乗っけるんだからタマったもんじゃない。
大ゲサに言うと「日本のロックのひとつの理想形」と言えるのではないか?とさえ思っている。
脱線終わり!
「有酸素運動をして、みんな健康でいようね!
客席の皆さん、ハァハァいっておりました。
有酸素運動をするとても良い機会になったハズ。突然イヤー・モニターをハズしたPONさん。
「よし!このウザったいイヤモニをハズ外すぜ、チクショウ!
オレは解き放たれたぞ~!よしまだまだヤルぞ~!
佳境に入って来ましたがまだ演らなきゃいけない曲があるんだ。
FSBといえばコレしかないでしょ。
みんな、かかってこいよ!」みんなで絶叫したタイトルは「TOP OF THE WORLD」!
まさにロックの世界の頂点に立っているかのような4人!
「♪Top of the world!」
お客さんと大合唱して大盛り上がり。曲は一旦ブレイクするが再び息を吹き返して…
「♪モッシュ、モッシュ、ゆっく~り!」
「♪モッシュ、モッシュ、は~や~く!」完全にステージと客席が一体となって本編終了!
あ~楽しかった!アンコール。
PONさんが物販のアイテムを紹介して「演らなくてはならない我々のテーマソング」と紹介したのは「F.S.B.」。まさに「♪ナニもコワいモノなし」のF.S.B.!
最後の最後までオリジナリティあふれる最高のFSBサウンドを聴かせてくれた。
〆はPONさんのごあいさつ。
「どうもありがとう!」
次回も楽しみだ!<おしまい>
(一部敬称略 2025年6月20日 吉祥寺CRESCENDOにて撮影)