Marshall Blog

 　
『生贄』の＜後編＞いきます！
　
ONOCHINの「欲トーク」の後は、明兄さんがジャズ・ビートを刻むハイハットに…ギターのもの悲しいメロディが重なる。
ONOCHINのギターのチョイスってすごくセンスが良いと思っていて、いつもナニを持って来るのか楽しみにしているのです。
今日のストラトは銀ラメ。
そういえば三文役者に「銀ラメ」って曲があったナァ。
アレはPANTAさんの作曲かな？
構成を覚えるのに四苦八苦したけど、いつも間違えた。
『生贄』の7曲目は最近つとに取り上げられる曲のひとつ「マッチポンプ」。「♪お金をちょうだい～」
まさに犬神サアカス團だけが作り出し得る独特な世界。そのまま続けて「浅草心中」。いつか明兄さんは「犬神の曲はメロがいいじゃん？」と自分でホメていたことがあったけど、ホントにそう思う。
実際にジックリ見ているわけではないが、私はテレビのワイドショウで、スポーツとエンターテイメントのコーナーになると即座に番組を替えるか、テレビを消すかしている。
そもそも「エンタメ」なんて言葉が気に喰わん。
スポーツは元々全く興味がない上に、明けても暮れても「ショーへ―」でしょ？
今はオフ・シーズンに入ってそう見かけなくなったようだけど。
一方のエンタメは音楽も映画も今のヤツはもうどうにもガマンができない。
そんな時には「日本のエンタメの裏世界には犬神サアカス團の曲があるじゃないか！」と気持ちを切り替えるのである。例えばこの「浅草心中」。
今、こんな曲を演っているバンドが他にいるか？っての。
まぁ、探せばいるのかも知れないが犬神サアカス團は2つ要らない。ああ、やっぱりこの曲の敦くんは素晴らしい。「どうもありがとう。
サァ、次は明兄さん…秋と言えば欲」
「欲だねぇ
食欲、睡眠欲とかね。欲は秋になると出て来るんだよ。
でもね、失った欲もありますよ。
物欲…欲しい物がない。
ロック・アーティストのフィギュアとか、おでん屋さんのプラモデルとか前は結構物欲があったの。
でも今は全然欲しくないね」「何にもないことが幸せだったと思うじゃない。
何でもないことが多分幸せかな？
逆に持っちゃうと捨てる時にお金がかかるとか考えてしまってもう買えないの。
みんなもそう思いませんか？
ただ犬神さんのTシャツは、みんなも欲しいと思うんだ。
犬神のチェキとかね…そういものは欲しいと思うんだけど、それ以外の物はいらない。
どうせ手に入れてもいずれまた処分するんだ」「ナニかを持つことってなんの意味があるのかな？
それよりもこういう場に来て音楽を体験したり、映画を観て体験したり、本を読んで体験したり…本は物だな…そういう体験だとか思い出を大切にした方がより人生が楽しいんじゃないかな。
なんでもないコトがきっと幸せと思うよ。
でも知識、情報は増やしたい。それもスマホで十分かな。
間違った知識も増えますけど、目先の欲しい情報はとりあえず得られる」「ところで今、ガムが売れないんだって。理由はゴミ箱がないからなんだよ。
そういう原理で、みんな捨てなきゃいけないって考えるじゃん？
だったら物を持たない方がいいな、ガムは買わない方がいいな、っていう風になって来ちゃったんだね。
でも犬神のグッズは欲しいじゃん？
推し活っていうのチョットまた違うからね」「推し活は身も心も豊かになる。
推しがいれば毎日のツラいことも忘れているしさ。
私の推しですか？イケメンかぁ？」と凶子姉さん。「身近じゃなくて写真とか画面越しにイケメンを見るときっと幸せかもしれない。
深く関わるのはチョット面倒くさい。
イケメンが別におもしろいヤツとは限らないからさ。
顔がいいだけでツマらないかも知れない。
絶対そうなのよ。だから見るだけ。
だから推し活みたいなことを始めると収集癖にもスイッチが入っちゃって物が増える。
難しいとこだよ。推し活っていうのも。
次の曲は…アッ、もしかしてみんなは今推し活中かな？
じゃあ推しと一緒に歌おうか！」「一緒に歌おう！」とくればまずは明兄さんのリズム。明兄さんのドラムスはNATAL（ナタール）のドラムス。そして「♪ロックンロール！」シャープなクイで「暗黒礼賛ロックンロール」だ！今日も出ました「暗黒礼賛」。
何度聴いても飽きない犬神サアカス團のスタンダード中のスタンダード。 再びVに持ち替えたONOCHIN。
ステージ下手へ移動してハードなソロをが炸裂させる！ONOCHINの使用しているMarshallは「JCM800 2204」と「1936」のコンビネーション、更にエフェクト音用に「ORIGIN50」だ。ソロに燃えるONOCHINの後ろでは…凶子姉さんと…敦くんのバッキングのフォーメーション。
楽しいね～！再び明兄さんのドラムスから…「栄光の日々」だ！
「♪思い出す　ホコリだらけの　栄光の日々」…いいネェ。
これは「埃」と「誇り」のダブル・ミーニングになっているんでしょ？
グイグイと盛り上がって… 2014年の『玉椿姫』から「虚像の誓い」。
いつもライヴが終わって流れるインストの曲の元ね。敦くんのスラップ・ベース・ソロ！ONOCHINはワウワウペダルを使っての激情型ギター・ソロ。おお！2人の途中のキメもバッチリ！カッ～コいい～！
ね～、こんな曲他では聞けないよ。
聞けたとしてもクォリティ的にどうなのよ！「MCをしたいと思います。どうぞ座ってください。
秋と言えば人肌が恋しくなったりさ、物悲しくなったりするじゃないですか？
私はみんなからの『愛』が欲しいです。
未来永劫、愛してくれる皆さんからの『愛』が欲しいです。
分かってますか？ファンのみなさん。
さっきも言ったように、ファンというのは『推し活』です。
推し活と言うのは、『チャリン』…アハハ！コレが、必要になってきます。
その全ての愛を私に注いで頂ければとってもうれしいな。
それが私の欲です。
どうぞよろしくお願いします」
「Amazonの欲しい物リストとかは絶対いらない…そういうことじゃないから。
『コレが欲しい、アレが欲しい』じゃなくて、『求めちゃって、求めちゃって』みたいなのが欲しいの。
『私、ただ生きているだけなのに、もう好きで好きで』みたいなのが欲しいから。
そういう催促はしないんですけど、心の中ではみんなが好きだといいナァと思っています。
チェキもいっぱい買ってくれるといいナァとも思っています。
私が犬神サアカス團のボーカリストとして一生、生活出来るようにして欲しいナァと思ってます」
私が食えるってことは、みんなを食べさせられるってことだから。
浅草心中ね。マタギでも何でもするわ…みんなを食べさせるから」
これで帰りのお財布がカラッカラになったお客さんが続出したとかしないとか…。残すところあと2曲！エエエ～！
まずは「運命のカルマ」。この曲、Spotifyに上がっている犬神サアカス團の曲の中で一番人気なんだよね。
実際に非の打ちどころがない名曲なんだけど、チョット意外。変拍子のキメからONOCHINの運命のソロ。
やっぱりいい音だ！
「♪ワンツー！」そして本編を締めくくったのは「たからもの」。そうか、「欲」というテーマを仄めかしての選曲だったんだな？
『生贄』の最後を飾るにふさわしい…強力なドライビング・チューン！凶子姉さんの舌が巻かれまくって痛快に本編終了！明兄さんが言っていたけど、私もホント物欲って収まっちゃったなぁ。
私はもうとにかく色んな音楽が聴きたくて、中古とはいえ長年にわたってCDを毎月40～50枚買っていた。
ところが、数年前からパタリと欲しくなくなった。
タワー・レコードのキャッチコピーに「No Music, No Life」ってあるでしょ？
プライベートの最近の私は「No Music, No Problem」になっちゃた。
今はどうしても読みたい本が適価で見つからない時には物欲が燃え上がるけど、それもすぐに鎮火しちゃう。
ラーメン食べればどの店もしょっぱいし、食べ放題は元は全く取れないし…齢を取るってのは明らかに死に近づいていることを知らせてくれるわ。
「メメント・モリ」ですわ。
　
さて、アンコール。
「アンコールどうもありがとう！
暑いね。でもなんかオモシロイよね。
盛り上がっちゃうんだよね」ココで次回の犬神サアカス團のライブのPR。
それは12月27日の明兄さんのお誕生日会。
犬神さんがホームにしている三軒茶屋「HEAVEN'S DOOR」の35周年を記念するそうです。
還暦なんだよ。
明兄さん曰く、敢えて「還暦」ということは打ち出さないんだって。
赤いチャンチャンコも着ないそうです。「もうコンスタントにやっていくということですよ。
区切りなんかない。
人間の一生っていうのは、幼年期から始まり、青年期があって、中年期を経て、老年期になる。
還暦ってもう老年期を意味してるって気がしないかい？
おジイちゃんだよ。オレが！
自分がおジイちゃんなるって認められないでしょ？普通。
オレが認めないってことは、Yoshikiも認めないって！
奥田民生も認めないし、シブがき隊とか、マッチもみんな認めないって！
死ぬまで…できるところまでやりますよ！」
そんな犬神サアカス團にピッタリの1曲…ということで、これまた定番の「命みぢかし恋せよ人類！」。『生贄』は犬神サアカス團の一大スタンダードで端正に締めくくられた。　　　最後にもう一度橋沢さんがご登場。
「ありがとうございます。
今年も楽しんでもらえましたか？」「こんな白い三角のを付けて再来年の1月に生前葬をやろうと思っているんです。
入口で香典払うと半返しがありますから。
『楽園』でやります。
結婚式は『本多劇場』でやった…離婚しましたけど。
生前葬にはちゃんとお坊さんも来るんですよ。
でも『生前葬のやりかたがわからない』と言われまして…まだ時間があるから調べているんです。
生きてる間は位牌の戒名を赤字で書くらしい。
どんな戒名が付けられるか？」「そのことを親に連絡したんですよ。
『お前、本当にやるのか？』って言うから『やるよ』と答えた。
そしたら『いいアイデアがあるんだけど』と言われました！
さすがウチの母親！どんなアイデアがあるんだかじっくり聞いてみたいと思っています。
平服で全然かまいませんので本当のお葬式のつもりで来てください」
「犬神サアカス團、来年もよろしくお願いします！」
　
犬神サアカス團の詳しい情報はコチラ⇒犬神サアカス團公式ウェブサイト＜おしまい＞

☆☆☆私の谷中墓地（その15）☆☆☆

さて、長々とやって来た谷中墓地の「甲地区」も今回でいよいよ最後。
次回からは「乙地区」に移動する予定にしているんだけど、「乙」の内容がまたどうにも濃いと来てる。
それにまだ「徳川慶喜」やら「渋沢栄一」やら名高い皆さんがゴマンと残っていますからね。
果たしてこのまま続けることができるのか自分でもわからないが、続けられる限りは書いていきたいと思っております。
　
さて、今回はまず「小平浪平（おだいらなみへい）」の墓。サザエさんのお父さんみたいな名前だけど、この方は「日立製作所」の創始者。
墓石の裏にはビッシリとその生涯が綴られている。
よほどマジメな方だったのであろうか？…ナニかご本人にまつわるオモシロいエピソードでもあれば、とインターネットをひっかき回してみたが、若い頃にご苦労なさった話しぐらいで我々がよろこぶような興味深い記述を見かけることはなかった。
ただ、カラッカラになっている墓が圧倒的に多い中、この小平さんの墓にはお花が供されていることが多いようだ。
日立製作所の人が管理をしているのかな？
ところで、日立は冷蔵庫や洗濯機のような「白物家電」からの撤退を検討しているようだけど、最近は家電製品を買おうと思うと、知らないブランドの商品ばかりでしょう？
アレはどうしたらいいんだろう？
いつから、どうしてああなっちゃったんだろう？
コレは「谷崎琢也陸軍中佐」とその奥さんの墓…と言っても全く存じ上げない方。
特に人に知られる業績が残っているワケではないようだが（失敬！）、「佐官」だから軍隊の中ではかなりエラかった方です。
で、ナゼここで取り上げる気になったのかというと、中佐の横の細長い墓石が目に留まったから。
そこには「愛馬櫻川號之墓」とあった。
すぐに昔勤めていた会社の事業部長と居酒屋でご一緒した時に聞いた話を思い出した。
戦地へ赴いたという九州ご出身のその部長は「絶対にばしゃしは食べない」とおっしゃっていた。
「馬刺し」のことね。
犬の「ポチ」、猫の「タマ」のように、「アオ」というスタンダードな馬の名前を口にされていたように記憶しているが、部長は戦地でアオに大変お世話になったのでとても桜肉を口にすることなどできないというワケだ。
きっとこの谷崎さんも同じ境遇にあったのであろう。私はとても「若き世代」ではないが、最近こんな本を読んだ。
「伊藤桂一」という著名な戦記作家が、若い女性の質問に答えながら15年戦争の中国戦線でどういうことが起こったのかをわかりやすく説明するという内容。
その中に軍馬に関する記述が出て来る。
戦地にあっては馬は軍隊にとって途轍もなく大切かつ貴重なモノなので、絶対におろさかな扱いをしないのだそうだ。
もちろん愛着も愛情も注がれる。
しかし、どんなに大切に扱っていても、戦場では馬が足に支障をきたして歩けなくなってしまう局面が出て来る。
するとどうするか…。
まさか人間が馬をおぶって行軍することは不可能なので銃を使って楽に死なせてやることになる。
もちろん馬を始末する人間にとってそれは耐え難く辛い責務となるが、泣く泣く馬の眉間に銃口を当てる。
すると馬は自分が置かれた状況をよくわかっているらしく、身じろぎひとつせずにただ涙を流すというのだ。
戦争はイヤだネェ…と思って自ら進んでこういう本を読んで勉強するようにしています。
何でもドイツでは「4年以内にロシアが攻めてくる」という前提で「兵隊の成り手が不足した際には徴兵制を導入する」ことを可能にする法案が可決したらしいね。
日本も「対岸の火事」では済まされないでしょう。「島薗順次郎」という医師の墓。
島薗はドイツに留学し、脚気の原因がビタミンの欠乏であることを発見し、証明した。
脚気は死に至る恐ろしい病気で、大の甘党で歯が全部虫歯だったという第14代将軍徳川家茂は脚気で亡くなった。
そして明治の昔、陸海ともに多くの軍人が命を落とした。
健康診断の時に昔はよく三角形のゴムのアタマが付いたトンカチで膝を軽く叩いて脚気かどうかの診断をしたじゃん…今もやっているのかな？
その原因は米の食べ過ぎによるビタミンB1の不足だ。
当時の軍人は給料を少しでも多く実家に送るために、おかずを少なくして食費を浮かし、米ばかりを食べて満腹にするのが習わしだった。
すると栄養のバランスが崩れて脚気に罹ってしまう。
それが原因で命を落とす者の数が尋常でなかったので陸軍と海軍の両方で研究が進められた。
陸軍の軍医のトップは「森林太郎」、すなわち「森鴎外」。
鴎外もドイツに留学してドイツ医学のもと脚気の研究をしたが、細菌説を唱えて米食を禁ずることをしなかった。
一方、海軍のトップは「高木兼寛」軍医総監。
高木はロンドンへ留学し、イギリス医学を学んだ。 高木は西洋人に脚気の患者が1人もいないことに着目し、原因は細菌ではなく食物ではないか？という仮説を立てた。
日本人と西洋人の食事の最大の違いは…主食が米かパンか（正確にはパンは西洋人にとって主食ではない。主食は肉）。
そこで高木は海軍の食事にパン食を導入した。
日本人は米を喰わなきゃ力が出ないワケで、「パンなんか喰っていられるか！」と大変な抵抗を受けたが実験を強行した。
すると、たくさんの死者を出していた脚気の患者徐々に減り、海軍は見事に脚気を駆逐することに成功した。
一方、森軍医総監は持論を曲げずに細菌説を採り続け、陸軍は相変わらず脚気による死者を出し続けた。
…というのが私が知っている脚気回りの話し。
このことが書いてある吉村先生の小説は下の『白い航跡』。
島薗順次郎も陸軍で「ビタミン説」と唱えた…一体どうなっているんでしょうね？
ひとつ確かなことは『白い航跡』が大変にオモシロい小説だということか？
ちなみに高木兼寛は「慈恵医大」の創設者だよ。「甲地区」最後にして今回のハイライト。
「彰義隊」いきます！
下は「飯田宣之（のぶゆき）」という元彰義隊隊員の墓。この人は上の戦争で亡くなったワケではなく、御一新後、文部省に仕えて68歳で亡くなった。彰義隊に関しては吉村先生の最後の長編作品の『彰義隊』と…谷中・根津・千駄木を取り扱うタウン誌『谷根千』を主宰した作家の「森まゆみ」の本に元ネタを求めよう。谷中墓地から跨線橋を渡り、日暮里方面へ降りて来た「芋坂」というところに…

有名な「羽二重団子」がある。
夏目漱石や正岡子規も食べに来た老舗中の老舗。
『吾輩は猫である』にも出て来る。
店のチョットしたスペースに彰義隊にちなんだ物が陳列されている。その迎えにあるのが「善性寺」。ここにも彰義隊員の墓がある。上野の山から降りて来てこの寺に逃げ込んで息絶えた「亀田」と「岸」2氏の墓だそうだ。

この寺には昭和31年12月に総理大臣に就任し、健康を理由に翌年の2月に辞任した「石橋湛山」の墓がある。
その後に総理大臣のイスに座ったのが「岸信介」だ。
場所は変わって上野の西郷どん。
この銅像を制作したのは「高村光雲」とされているがそれは頭だけ。
身体は東京美術学校（今の東京藝術大学）で教師をしていた「岡崎雪声」という人。
それを合体させたものだから、頭と胴体の大きさの比率が狂っていて、どう見てもデカ頭に仕上がっている。
西郷どんが連れている犬の「ツン」はまた別の「後藤貞行」という彫刻家が制作した。
コレは森まゆみさんの指摘だったように記憶しているが、西郷どんたちが率いる薩長軍は寛永寺に攻め込んだワケだから、銅像の向きが反対ではないか？…私もそう思う。
一節によると西郷どんは今の松坂屋の場所に陣を構えて軍隊の指揮をしたとか。その銅像のほぼ真裏にあるのがコレ…「彰義隊の墓」。
　
慶応4年5月（1868年）、上の山で戦争があった。
攻め入ったのはニセの錦の御旗を振りかざした薩長を中心としたインチキ官軍。
それを迎え撃った幕府側の軍隊が「彰義隊」だ。
戦争は半日で決着がつき、彰義隊は惨敗した。
だって武器のレベルがアホほど違うんだもん、グラバーと他のヤツらめ。
碑には「戦死之墓」とあって、それを揮毫したのは前回取り上げた「山岡鉄舟」だそうだ。傍らに立つ顕彰碑には駒形の「本久寺」の「持田貫道」という和尚さんが上野戦争の様子を描写した撰文が刻まれている。
篆額は德川家第16代当主の「德川家達」。
昔の寛永寺は広大な境内を持っていて、広小路側の入り口には「黒門」という門が立っていた。
下はその黒門のモニュメント。
裏の谷中や根津の方でドンパチやっている一方でニセの官軍は黒門を突破して幕府軍の総本山である「寛永寺」に攻め入り、親分の「輪王寺宮（りんのうじのみや＝北白川宮能久親王）」を目指した。場所は替わってココは南千住にある「円通寺」。ココにその実際の黒門が移設されている。ニセの官軍が打ち放った銃丸だらけ。
この頃の銃弾は「椎の実弾（しいのみだま）」と呼ばれ、谷中あたりの明治の子供は地面からそれをほじくり出して遊んだらしい。そしてこの円通寺にも彰義隊員の墓やら碑がある。薩長軍は地域の住民に彰義隊員の亡骸を処分することを禁じた。
つまり遺体が街中に野ざらしにされたワケだ。
ヒドイでしょ？
それだけではなく、会津との一戦では官軍の連中はココにはとても書けないような残忍で程度が低くいことをして喜んでいた…という記述を読んだことがある。
「打倒幕府！」というだけで「志」などナニも持ち合わせていなかった。
そんなヒドい状態を見るにみかねた当時の円通寺の和尚が彰義隊員の遺体を自分の寺に引き取り、ココに手厚く葬ったのだそうだ。なぜかは知らないが「新門辰五郎」の碑もココに立っている。谷中へ戻って…。
「経王寺」という日蓮宗のお寺。
ココのご住職は「冠（かんむり）」さんとおっしゃる。
ヘヴィ・メタル・シンガーの「冠徹也」さん以外の冠さんに初めて出くわした。
「かんむり」さんと聞くとかなりの珍名さんに思えるが、人口で言うと私の名字の方が断然珍しく、「冠」さんの半分もいない。ホラ、ココの山門も穴だらけ。経王寺に逃げ込んだ彰義隊員を追っかけまして銃をブッ放した跡だ。その経王寺のすぐ下が有名な谷中商店街の「夕やけだんだん」だ。
この階段は西に向かっているので前方に美しい夕やけが広がるという寸法。
「日暮里の師匠」の古今亭志ん生や金原亭馬生の家は坂を下りて右に曲がってしばらく行ったところ。この「夕やけだんだん」というのは、実は森まゆみさんが名づけの親なのだそうだ。それが今ではこのザマだ。
森さんは「これじゃ『夕焼けが見えないだんだん』になってしまう」と嘆いていらっしゃった。
コレを仕方ないと考える輩もいるようなのでもうナニも言うつもりはないが、ロンドンだったらまずこんなことは起こらないだろう。少し上野方面に戻って「寛永寺」。
今年は創建400年！…なんだけどこの「根本中堂」はまったくオリジナルではない。
川越の別院を移設したもの。
元々の本堂は今の国立博物館の辺りにあったのだが、どこかの狼藉者が焼き尽くしてしまった。根本中堂の向かって右隣にあるのは「葵の間」と呼ばれる家屋。
徳川慶喜が皇室への恭順を示し、上野戦争の直前までココに蟄居したためそう呼ばれている。
幕府軍のトップ、輪王寺宮は寛永寺から一旦尾久方面へ逃げ、また戻って来て浅草方面へ向かった。
その時に一時的に宮さまをかくまった寺院のひとつがこの「海禅寺」。
私は子供の頃からこの石でできた門柱（門扉はないけど）をすごくカッコいいと思っていた。
この寺は小浜藩士だった尊王攘夷の志士「梅田雲浜（うんぴん）」の墓があることで知られる。その後、輪王寺宮は合羽橋の「東光院」に移動して一時身を潜め、その後東北方面へ逃れ「奥羽越列藩同盟」に合流する。
東光院は輪王寺宮をかくまった廉として、以降50年間住職を置くことを禁じられた。
彰義隊と輪王寺宮の顛末は吉村先生の『彰義隊』でどうぞ。
＜つづく＞
　（一部敬称略　2025年10月15日　下北沢小劇場楽園にて撮影）