マーシャル・ブログ博物館 第12回:マーシャル・タイムマシン<その6>
今回のタイム・マシンは1973年1月発行の『Marshall WORLD』。
またまたタイトルのバナーが変った。
一番上。
「James Last(ジェイムス・ラスト)」というのはドイツの作曲家。
その人がレコードと自身が率いるオーケストラで大変な成功を収めている…という記事。
何でもこの時点で36枚ものアルバムを出しているとか。
そのオーケストラがMarshallを使って香港でコンサートを開いたのだそうだ。
この頃の香港はまだイギリスだった。
ジェイムス・ラストはこんな感じのお方。
ゼンゼン存じ上げませんでした。
「SWEET SOUND OF MARSHALL」というドデカいキャッチは「スイート(The Sweet)」の話題。
何を言っているのかというと、「相次ぐヒット曲の連発により当時2、3年でイギリス国内において確固たる地位を築いた。
そしてティーン向けからヘヴィなサウンドに方向転換を図ったことがカギとなっていて、もちろんそのサウンドはMarshallから」…といういつものパターン。
写真はベースの「スティーヴ・プリースト」。
ココは「ブライアン・コノリー」でしょうに!…と思うのだが、写真の代わりにブライアンの談話を紹介している。
「何度かこの方向転換について考えた。
ステージではレコードよりもっと幅広い音楽を演っていたからね。
するとマネージャーのニッキー・チンとマイク・チャップマンが従来のコマーシャルなモノとヘヴィなサウンドを融合してみてはどうか?と思い付いてくれたんだよ。
このシングル(1973年の最初のシングル曲「The Blockbuster」のこと)がその結果なんだ」
私はそう詳しくはないけれど…いいよねェ、スイート。
ハードロックとポップさが実にうまい具合に配合されていて今聴いても存分に楽しめる。
やりようによっては今の若い人にもウケるのではなかろうか?
ブライアンは「マネージャー」と呼んでいるけど、「ニッキー・チンとマイク・チャップマン」はスイートをはじめ、「スージー・クアトロ」他に曲を提供した強力なソング・ライティング・チーム。
「エアロスミス」なんかもそうだけど、向こうのロック・バンドってイザとなるとこうして平気でプロの作曲家の作品を導入しちゃうんだよね。
私はそれでいいと思っていて、こうした現象を「曲づくりの大政奉還」と呼んで支持している。
ところでこのサブ・キャッチに「Australasia」とあるでしょう?
「アレ?Australia(オーストラリア)の間違いじゃないの?」と思わない?
この「オーストラレイシア」というのは「オセアニア」より狭いあの辺の地域を指す名称で「オーストラリア、ニュージーランド、ニューギニア諸島」のことなのだそうだ。
日本では使わない言葉だが、イギリスではこうして普通に出て来る地名なのね?
ま、あの辺はみんなイギリスの子分だからね。
その下の写真のギタリストは「Terry Thaddeus(テリー・サデウス)」という。
知っている人はいますか?私は知りませんでした。
ココには「THE BEST guitarist of Malaya(マラヤ最高のギタリスト)」と書いてあって、「東のジミ・ヘンドリックス」の異名を取っていたそうだ。
なるほどYouTubeには「Little Wing」を巧みに演奏するビデオが上がっている。
そのテリーが「ラジオ・マレーシア」のためにMarshall使って2枚のアルバムをレコーディングしたという記事。
気になるのは最後のところ「昨年、テリーは名だたるクラブで演奏している世界的なソウル・バンドに加入し、日本に向けて旅立った」とあるんだけど、コレは一体どこのバンドのことなのだろう?
他にも多方面にわたって活躍をしていたテリーだが、2003年にガンで逝去された。
ココでもうひとつ…「『Malaya(マラヤ)』とあるけど、マレーシアの間違いじゃないの?」と、また思わない?
コレは「Federation of Malaya(マラヤ連邦)」といって、かつてはイギリスの植民地だったマレー半島の9州とペナン、マラッカによって結成された連邦のこと。
今も「イギリス連邦(コモンウェルス)」の一員なので、もしイギリスが戦争を始めたらマラヤの皆さんはチャールズ国王のために戦わなければいけません。
ビル・ヘイリー、ボ・ディドリー、ジェリー・リー・ルイス、フランク・ザッパ…「Star sounds on Marshall」だって!
ビル・ヘイリーを挙げている感覚がすごいが、写真では確かにビル・ヘイリーの背後に1959が写っている。
コレで「Rock 'round the Clock」を演ったのかな?
聴いてみたかったな…。
ボ・ディドリーはMarshallのサウンドが合いそうな気がするな。
ギターに内蔵されたエフェクターでギンギンに歪ませてMarshallを鳴らして欲しい。
おいおい、ジェリー・リー・ルイスはピアニストだぜ!
デニス・クエイドが主演してこの人の半生を描いた1989年の『グレート・ボールズ・オブ・ファイア(原題同じ)』はなかなか良い出来だった。
この写真が目に入った時、フランク・ザッパが取り上げられているのかと思い小躍りしたがそうではなかった。
ザッパは1959を使っていたからね。
ザッパのギター・テクを務めていた日本人の方から聞いた話では、ザッパはとても状態の良いビンテージのMarshallを自宅に何台も保有していたそうだ。
第2面に移る。
一番上は第1面に出て来たジェイムス・ラストの記事をさらに詳しくレポートしている。
ラストさんはそんなにスゴい人だったのか。
イスラエルのトップ・バンド「Jericho」の紹介。
元々は「The Churchills」というバンドがあって、メンバーの「ジェリコ・ジョンソン」が独立し、やがてそれを省略して「Jericho」というバンド名として活動した。
「中東の倍音にくるまれたソリッド・エレクトリック・ロック」と形容されたそうだが、コレが聴いてみるとなかなかいいのよ。
ワイルドな歌とギターをフィーチュアした70年代の前半にはきっとゴロゴロしていたであろうハードロックの見本のようなサウンド。
またこんなサウンドがもてはやされるようになるといいな。
メンバーにはマンドリンやブズーキを演奏するメンバーもいたようだ。
この記事によると、このバンドは「ズービン・メータ」とも共演しているらしい。
聴いてみたい!
今、イスラエルはこんなことをやっている場合じゃないでしょう。
やっぱり「音楽で平和にする」ことはほぼ不可能だが、「平和でないと音楽ができない」ことは確かなのよ。
「ジョーディ(Geordie)」の紹介。
Marshall Blogでは何回も書いているけど、「Geordie」というのはニューキャッスル出身の人のアダ名。
日本で言う「浜っ子」とか「水戸っぽ」とかいうのと同じ。
同じようにリヴァプールは「Scouser(スコウサー)」、バーミンガムは「Brummie(ブラ三―)」、マンチャスターは「Mancunian(マンキュニアン)」というアダ名がある。
ジョーディは文字通りニューキャッスルのバンドでAC/DCのブライアン・ジョンソンが在籍していたことでよく知られている。
今でも活動を続けていて、かつてMarshallでエンジニアをしていた私の親友のスティーヴ・ドーソンがギターを弾いている。
近郊のサウス・シールズに住むそのスティーヴの案内でニューキャッスルの街を見て回ったことがあったがとてもオモシロかった。
ブライアン・フェリー、スティング、エリック・バードン、チャス・チャンドラー、ハンク・マーヴィンあたりな皆ニューキャッスルの出身だ。
この辺りのことはこんな記事を書いているのでゼヒご覧あれ。
↓ ↓ ↓
★【イギリス - ロック名所めぐり vol.13】 Newcastle(ニューキャッスル)はよいところ
★【Shige Blog】 イギリス紀行2012 その10~ニューキャッスル
★【Shige Blog】 イギリス紀行2012 その11~ニューキャッスル2
イギリスの月間音楽雑誌の懸賞に当選した2人にローズ・モーリスの社長のモーリス・ウルフからMarshall製品がプレゼントされた…という記事。
向かって左の「クリス・サムブルック」さんは25Wのコンボ・アンプと100Wのキャビネット。
右側のジョン・マーチャントさんにはPA用のセット・アップ「2003」がプレゼントされた。
「セット・アップ」というのは「スタック」ということ。
PA用の100Wヘッドの「2003」は、下のカタログの写真のように「2043」というコラムスピーカーのペアと組み合わせて販売されていたようだ。
コレ、当時の値段でいくらしていたかというと、合計で301ポンド。
1973年当時にポンドの為替は666円という悪魔の皆さんが知ったら大喜びするようなレートだった。
するとこのPAアンプのスタックは当時の価格で200,466円。
かなりの大盤ぶるまいじゃないの?
それではコレが今の価値だとどうなるか…45~50万円ぐらいだって。
一方、サムブルックさんの方。
「25Wのコンボ」というのはナニを指しているかわからなかったが、「100Wのキャビネット」といえば上の写真にあるように当然「1960」ということになるでしょう。
1973年当時の1960の定価は109ポンドだった。
同じ計算をすると、日本円で72,564円。
コレは今の17~18万円ぐらいに相当するらしい。
「世界中の楽器ショウでMarshallが展示されています」という記事。
写真は直近に開催されたイタリアのミラノの展示会のようす。
「メッチャかっこいい『Marshall Super Sound』Tシャツが50ペンス(当時の日本円で333円、梱包料&送料別)で買えるチャンス」
ロンドンのローズ・モーリスへ55ペンス送れば写真のTシャツが手に入るというシステム。
「1965年結成の南アフリカ最古のグループ」と紹介されている「The Staccatos(スタッカートス)」というバンド。
キャッチは「STACCOS」と表記されている。
「stucco」で「漆喰」という意味なんだけど、コレは一種のシャレなのかしらん?
調べてみるとココで結成が1965年とされているのは誤りで、1961年に結成し、1999年に解散。
そして2019年に再結成を遂げてコロナに立ち向かったという。
スゲエな。
結果、南アで「最も活動期間が長いバンド」ということだ。
第3面。
「彼らが取り組んでいることは美しい音楽の創造…それ以上でもそれ以下でもない」
どこのバンドのことだと思う?
答えは「バークレイ・ジェイムス・ハーベスト(バークレイ・ジェイムス・ハーベスト)」。
30年ぐらい前、私はこのバンドがチャーター機でツアーをするような大変な人気バンドであることをこのMarshallの新聞で知った。
そこで何枚かアルバムを買って聴いてみた。
ただ大人しいだけで、残念ながらナニがいいのかサッパリわからなかった。
私もいい加減長いことロックを聴いて来て、随分と色んな人と接してきたがこれまで誰かの口から「バークレイ・ジェイムス・ハーベスト」という固有名詞が出て来たのを一度も耳にしたことがない。
もし、「Marshall WORLD」の記述が真実であるとすれば(マァ、真実なのでしょう)、このバンドほど日本国内と海外での人気や知名度の差が大きいバンドはないのではなかろうか?
キャッチの「BABY」とは1972年にリリースした『Baby James Harvest』というアルバムから。
コレは聴いたことがない…多分一生聴くこともないでしょう。
今、スウェーデンに「Scapa Flow」というバンドがあるようだが、この記事の「Scapa Flow」はこの記事の8年前に結成されたセミプロのバンドでジミ・ヘンドリックスの音楽を追求していたらしい。
道理で調べても出てこないワケだ。
1973年の8年前といえば1965年。
ジミヘンのコピーだかナンだか知らないが、ジミがチャス・チャンドラーに連れられてロンドンに渡ったのが1966年9月のことだからね…何ならイギリスではジミより古いバンドということになる。
香港のソロ・アーティストを集めて「Special Marshall Show」と銘打って開催したコンサートのレポート。
何でも大盛況ですぐに2回目を企画する…ぐらいのことが書いてある。
しかし、こうして頻繁にというか、気軽に香港での出来事が報じられるのを目にすると、いかにも香港がイギリスだったということを実感する。
第4面。
もう一度スイートの話題。
セイシェルで開催されたフェスティバルにスイートが出演。
コレがセイシェルにおける初めてのインターナショナルなバンドのパフォーマンスになった。
ひとつは「Reef Hotel」というところでのライブ。
「マッシブなアンプを背に火星人のような衣装に身を包んだ連中が奏でるヘヴィな音楽は地元の人の度肝を抜いたようだ」…まぁ、そうでしょう。
その爆音は静かな島のココナッツ農園の8km先まで聞こえたそうだ。
それはもちろんMarshallが出したギター・サウンドだ。
もう1回の出演は「ミス・セイシェル」の選考会だった。
そんなスイートの「Action」にキツネも逃げ出したんじゃないの~?
そのセイシェルのフェスティバルで開かれたバンド・コンテストで「Nightshades」というバンドが優勝したという記事。
このコンテストは地元のMarshallの販売代理店が企画したそうだ。
このセイシェルも「イギリス連邦」加盟国だ。
「100%Marshallのバンド」とさも自信ありげに紹介しているのは「オカルト・ロック」を標榜するフロリダのバンド「Magus」。
色々調べてみたがサッパリ手がかりがつかめなかった。
「京都市下京区堀川東四条通り柏屋町の村木ヨシサダさん」からのお便り。
「日本であなたのアンプを使っているたくさんのバンドを見かけます。その音は信じられないぐらい素晴らしい。
私は京都のバンドでギターを弾いています。近い将来Marshallを入手したいと願っています」
村木さん、この時20歳として現在は73歳。
まだMarshallでギターを弾いていらっしゃるかしらん?
右側はヨークシャのジョンさんから。
「最近、Marshallを積んでライブ会場を移動している時、車が2回横転する事故に見舞われました。
Marshallは車外に放り出され道路の上を転がっていきました。
そして私は病院に担ぎ込まれました。
後にMarshallの状態を確認すると…全く問題ありませんでした」
私も経験がある。
大学生の時、「JMP1959」と「1960AX」を持っていたんだけど、自分の部屋から1960を運び出すとき、どうしてもその重さに耐えきれず、階段から落としてしまった。
1960は階段を転げ落ち、凄まじい勢いで階下の戸をブチ破って外に転がり出てしまった。
下にいたバアさんが腰を抜かして驚き、様子を見に来た。
しかし、チェックをしてみるとその1960はほぼ無傷だった。
Marshallのキャビネットがいかに堅牢であるかを見た瞬間だった。
また新しいカタログが出来しました!
いけいけドンドン!である。
<つづく>
