simo with 森園勝敏
毎度おなじみインストゥルメンタル・カルテット「simo」の9月はじめに開催されたライブのレポート。
今回も円熟した音楽達人たちの妙技をタップリと味わうショウとなった。
アレ?コレ、「simo」の綴りを間違えているわ。
s : Seki
i : Ishii
m: Miyano
o : Okai
で「simo」なんですよ。
今日はまずその音楽達人が使用した機材をチェックしよう。
まずは「s」。
関ちゃんのMarshall。
向かって右側はヘッドがモディファイド・シリーズ「1959MS」。
キャビネットは2x12"の「1936」。
左側はSTUDIOシリーズの「SV20H」とその1x12"キャビネット「SV112」。
これらの2セットをステレオで鳴らしている。
続いて「i」。
為人さんのアンプもMarshall。
「JVM410H」と「1960BV」を使用。
今Marshallはベースの機材を取り扱っていないので残念ながら「m」をスキップせざるを得なくて「i」に続くのは「o」。
大二さんの愛用のNATAL(ナタール)はバーチ。
スネアもNATAL。
現在は生産していない「Stave」シリーズだ。
さぁ、「s」と「i」と「o」で「sio」。
つまり「塩」。
塩をまいて災厄を振り払うかのような清々しいサウンドで歯茎が引き締まるような演奏を披露してくれた。
冒頭は「関雅樹」のア・カペラのギター・ソロから。
久しぶりにエクスプローラーを引っ提げ、ペダルでハーモニーを重ねて部厚いサウンドを作り出す。
そしてバンド・アンサンブルが加わる。
石井為人が奏でる愛らしいピアノのイントロに…
宮野和也と…
岡井大二が加わって…
「Yours」をプレイ。
simoショウのオープニングの定番曲だ。
続けては関ちゃんのファンク・ストラミングから「New」。
歯切れのよい図太いクリーン・トーンが飛び出してくる。
どんな風に「1959MS」をセットしたのかな?
フロント・パネル左から…
PRESENCE : 3
BASS : 5
MIDDLE : 5
TREBLE : 4
VOLUME I : 3
MASTER : 9
CLIP : OFF
BRIGHT : ON
やはりクリーン・サウンド狙いのセッティング。
バッチリよ!
宮野さんのドッシリした低音と…
大二さんの快いグルーヴのコンビネーション。
この「ノリのカタマリ」は「海苔の佃煮」ほどに美味。
そのsimo自慢のゴキゲンなリズム隊が作り出すグルーヴに乗って為人さんのファンキーなピアノ・ソロが炸裂。
関ちゃんがトリッキーなソロもバッチリとキマった!
そして更に早くも大二さんのソロが飛び出した。
ココでメンバー紹介。
「平日にもかかわらずたくさんお越し頂きましてありがとうございます。
私の師匠の森園勝敏を迎えてのsimo…昨年も何度かやったんですが、コレが好評で今年に入ってからはズッとこのスタイルで演っております」
ご挨拶のあとはギターを持ち替えて「Pinky」。
関ちゃんの頭の中にあるノスタルジックなイメージを音にしたsimoの愛奏曲。
為人さんの端正なソロが関ちゃんの思い出に彩を添える。
関ちゃんも曲のムードをに濃厚に演出するソロをプレイ。
この曲はレコーディングをした時以来かなりの回数を重ねて聴いてきたが、聴けば聴くほど味が出て来る1曲だ。
ココで森さんを迎え入れる。
「体調がよさそうですね」
「天気が悪いじゃん?元気は元気なんだけど気分的には元気じゃないんだよね。
気持ちが上がらないと体調が悪くなっちゃうよね」
森園勝敏
森さんが弾くイントロから「Mercy, Mercy, Mercy」。
アウト・フレーズをまぶしながらソロを展開する関ちゃん。
Marshallが出す図太いクリーン・トーンが実に美しい。
為人さんもトリッキーなフレーズを織り込んだピアノ・ソロを聴かせてくれた。
〆はいつも通り森さんのリードで中華風に。
中国のメロディといえば必ずこの「♪チャカチャカチャンチャンチャンチャンチャ~ン」が出て来るが、コレは「オリエンタル・リフ」とか「アジアン・リフ」とか言って中国の人が作ったメロディはないそうだ。
元は1847年の『アラジンと魔法のランプ』という劇に使われたモノ。
『アラジンと魔法のランプ』って中国人が出て来るんだっけ?
我々日本人の耳にはもう中国メロディのステレオタイプになっているが、このメロディは聞く人によってアジア風にもネイティヴ・アメリカン風にもはたまたイングランド風にも聞こえるらしい。
その理由は、この音階。
コレは「ペンタトニック(五音音階)」という5つの音階でできていてる。
このペンタトニックというモノは世界中にあって、「沖縄ペンタ(ドミファソシ)」みたいに沖縄風にしか聞こえないモノもあるが、世界のさまざまな民族が親しんでいる共通の音階なのね。
だから聞く人の生活の環境に合った聞こえ方になるのだと思う。
「ペンタトニック」を説明する時に一番簡単なのはサブちゃんの「函館の女」を引っ張り出すことではなかろうか?
この曲で使われている音階は「ヨナ抜き」といって、ドレミファソラシドの4番目の「ファ」と7番目の「シ」を抜いたモノ。
ピアノの5つの黒鍵がそれにあたる。
だから黒鍵を何となくイジくっていればこの曲になっちゃう。
久しぶりに音楽に関することで脱線したな。
世界の異常気象からAIまでバラエティに富んだ話題のトーク。
関ちゃんはMarshallとNATAL、さらにMarshall Blogのことについて触れ、私のことを紹介してくれた。
いつもどうもありがとう!
もちろん今日使っている去年の新商品「1959MS」についても触れてくれた。
大二さんとNATALのコンビネーションが生み出す最高に気持ちのよいサウンドで「KTストリート」。
コレも毎回取り上げられるsimoスタンダード。
第1部を締めくくったのは森さんの「Zippo no Lighter」。
「no」は「の」。
「ジッポのライター」ということ。
「♪友達がくれたジッポのライター」と歌う。
サビ付ブルースって言えばよいのかな?
12小節のスタンダードなブルースのコード進行に自作のパートをくっつける手法。
サム・ジョーンズの「Unit 7」なんかがとても良い例だけど、このサビ付ってウマくやるとカッコいいんだよね。
もちろん「Zippo no Lighter」も完璧。
シンプルながら味わい深いの1曲だ。
「Zippoのライター」といえば…simoも喫煙率の高いチームだが、私もかつては愛煙家のひとりだった。
今からちょうど20年前、Marshallへ出張した時にロンドンでタバコを買おうとしたら当時の為替レートでひと箱1,500円もしたので買うのがバカバカしくなってピタリとタバコを止めた。
本当の「Cold turkey」よ。
この時からひと吸いもしていない。
私は決してヘヴィなスモーカーではなかったが目はチカチカ、指先はジンジンで1週間ぐらいは本当にツラかった。
タバコはこうして止めることができたけど、Zippoライターのオイルは今でも重用している。
もちろん肌の油っ気を補うためでも、ギターに火をつけるためでもなく…
ブックオフで買った本やレコードについている値札をキレイにハガすために使っているのだ。
特に下のような値札シールね。
この手の値札って簡単にハガせないように切れ込みを入れてイジワルしているんだよね。
爪でジョリジョリやるのが大変で、そういう時に脱脂綿に浸み込ませたライターのオイルをシールに吸わせてやる。
しばらくするとシールのノリが溶けて比較的簡単にそしてキレイにハガすことができる。
残っているシールの跡やチョットした汚れにも有効だ。
「値札」といえば「シタダシレッテル」…書きたいことはあるんだけど、長くなるので今日は止めておきます。
第2部は森さんと関ちゃんのトークでスタート。
最近の音楽について…。
一般的に曲のテンポが速くなっていてバラードでもテンポが速い、イントロが短く、ギター・ソロがない、歌詞ばかりを重視している、バックに対して歌の音量が大きすぎる…などなど。
仕事柄なんだろうけど、関ちゃんはテレビから流れて来るような最新の曲も聴いていることに感心するわ。
大二さんもしかり。
私なんかテレビを見ていて「エンタメ・コーナー!」なんてのが始まるとサッサとチェンネルを替えちゃうもんね。
ってんで、古き良き時代を顧みて80年代のヒット曲をひとつ。
マドンナの「Material Girl」。
大二さんのスネア・ドラムの処理がとてもいい雰囲気。
ベンドを活かした為人さんのシンセサイザー・ソロ。
ほとんど別の曲のように響く関ちゃんのこの大胆なアレンジは実にオモシロかった!
マドンナがハワード・ホークスの『紳士は金髪がお好き(Gentlemen Prefer Blondes)』のマリリン・モンローに扮したこの曲のビデオはヨカッタね。
もちろんモンローの方が断然魅力的だったけど…。
モンローが歌ったこの映画の主題曲もいいんだよな~、可愛くて大好き。
後年、ニコール・キッドマンが主演した『ムーラン・ルージュ(Moulin Rouge!)』でもとてもうまく使われてたいた。
ご本人もステージ前面に進み出ての大熱演!
次の曲は「♪ギュイ~ン!」とハードなギターでスタート。
宮野さんのベースがシャープに入り込んでくると…
いつもの「Senor Blues」だ!
森さんのソロ。
音数は決して多くはないが説得力は抜群だ。
コワい先生の怒鳴り声より、言葉少なに諭す先生の言葉の方が後で効いてくるのと同じ。
為人さんのピアノ・ソロが続く。
関ちゃんは「Softly as in a Morning Sunrise」を引用しつつのハードなソロをブッ放した。
ココで今年8月16日に物故された「末松康生」さんについてのトーク。
末松さんは四人囃子の数々の名曲の歌詞を手掛け、自らも「よろんで」というブルース・バンドを率いて歌とハーモニカで活躍していらっしゃった。
生前は西武沿線にお住まいで、関ちゃんはお誘いを受けて焼肉を2人でご一緒した思い出があるという。
もちろん森さんと大二さんは長年のお付き合いだ。
「謎の多い人であんまりよくわからないところもあったね。
出たがりなんだよ。
末松さんは昔、役者を目指していたんだよね。
四人囃子をやりかけていた頃、アングラ劇団のミュージカルで『フランケンシュタイン』っていうのがあってサ、音楽を担当していた人が手に負えないと言ってオレに丸投げしてきたんだよ。
で、劇には出演者それぞれの曲があって、末松さんからは『オレのはブルースにしてくれよ』って頼まれたんだよね。
『やりたいこととできることは違う』とよく言っていたよ」
「末松さんはsimoが所沢で演る時には必ず自分でチケットを買って観に来てくださったんです。
それで出演しちゃう。
だから末松さんが最後に人前で歌ったのは所沢のsimoのステージだったと思います」
私はお客さんとしての末松さんと何度かお会いしてご挨拶をした程度の関わりしかなかったが、一度だけ歌とハーモニカに接したことがあった。
それは2012月12月28日、森さんが「Republic Saxophone」名義で西荻窪の「Terra」に出演した時のことだった。
下はその時のようす。
14年前の森さんと関ちゃん…
大二さん…
そして為人さん。
ずいぶんふくよかでいらっしゃったのね。
ショウの終盤で末松さんが登場した。
私は高校の頃に四人囃子のファンになったのでもちろん「末松康生」のお名前は存じ上げていた。
だからこの時は「この人が日本のピート・シンフィールドか~」と勝手に思い込んで感動したものだった。
末松さんを偲んで『一触即発』から「空と雲」。
「♪長く細い坂の途中に お前の黄色いうちがあったよ」
友達からもらった犬を連れて、食べ物を買ってそこを訪れる話。
スゴイなぁ、言葉でこういう世界を作るというのは…。
「うち」なんて言葉を使っているところを見ると末松さんは東京の方なのかな?
「家」を「うち」と読むのは東京の人で、「いえ」と読むのは地方の人…ということをどこかの本で読んだことがある。
私は東京生まれ東京育ちで、確かに自分の家を指しては「いえ」とは言わないな。
関ちゃんもコーラスを添えて末松さんを追悼した。
この場をお借りして名作詞家のご冥福を心よりお祈り致します。
四人囃子つながりで「眠い月」。
曲の進行とともに音の厚みがドンドン増していき…
クライマックスで聴く者すべてを圧倒する。
「話はガラリと変わって…」という森さんの言葉で雰囲気がガラリと替わって…
森さん十八番のブルース・コーナー。
フレディ・キングの「I’m Tore Down」。
トラディショナル、コンテンポラリーの別を問わずブルース・フレーズがガンガンと飛び交って…
為人さんのファンキーなエレピで「Feelin' Alright」に突入!
本編の最後を熱唱で締めくくる森さん。
リズム隊の2人も定番中の定番曲ゆえ…
最後の最後までゴキゲンなグルーヴを叩き出してくれた。
本編終了。
今日もベテランならではの味わい深い名人技の数々を披露してくれた。
アンコール。
simo自体とメンバー各自の活動予定を発表。
そういえば…
前回「ゲストの表記が目立ちすぎる!」と話題になった下のチラシ…アレは今回どうなったか。
ハハハ、こんな風に改善されていました。
そしてsimoのCD『ROCK EXTRA』も紹介された。
ひと通り連絡事項が終わるやいなやシレっと森さんが弾き出したのは「Lady Violetta」のメロディ。
今日も日本のロック史に燦然と輝くこの名曲でsimoのステージが締めくくられた。
simoと関雅樹の詳しい情報はコチラ⇒Seki's Web
(一部敬称略 2026年9月3日 新中野LIVE CAFE BENTENにて撮影)