PROGRESSIVE LIVE 2026~池㞍家
今回はMarshall Blogでお馴染み「池㞍家」と「深井麻梨恵BAND」のダブルヘッドライナー・ショウのレポート。
会場は「プロッグ・ロックの聖地」。
ロンドンで言えば「UFO Club」。
「UFO Club」はピンク・フロイドがハウスバンドを務め、人気が出て卒業した後はその座をソフト・マシーンが受け継いだ。
「UFO」は「Unlimited Freak Out」の頭文字で、まぁ「どこまでもヘンテコに」ぐらいの意味かしらん?
1960年代の中盤に短期間にわたって「トッテナム・コートロード」というロンドンの中心街の地下に存在したが今は影も形もなく、かつてあったとされる下の写真の場所を探すのにエラく苦労した。
さて2019年、女性キーボード奏者3人による下のオムニバス・アルバムがリリースされた。
参加しているのは池㞍家、深井麻梨恵、SHOKO solo project "Sonicspace"の3組。
そしてその年の11月26日、当のプロッグ・ロックの聖地でそのCDの発売を記念するライブが開催された。
コレはその時の池㞍家のステージのようす。
この時からコロナを挟んで7年も経過したなんて信じられんな。
そして今回、池㞍家と麻梨恵ちゃんのバンドが「プログレ女王」の座をめぐって対バン形式で決闘をすることになった。
コレはその決闘の場に設けられた屋台村。
もちろん当該のCDも販売していた。
まずステージに登場したのは「池㞍家」。
池㞍喜子
池㞍晴之介
樋口征宏
伊藤"ショボン"太一
オープニングは6/8拍子のリフを挟み込みながら進行するさわやかチューン「Open Sesame」。
作曲者である喜子さんのオルガンやピアノをフィーチュアしながらに曲はパノラミックに展開していく。
昔調べたことがあったんだけど、この「開けゴマ」というのは『千夜一夜物語』の「アリババと40人の盗賊」の中に出て来る「Open sesame」というセリフの直訳なんだよね。
ではなぜ「ゴマ」なのか?…コレにはあまりにもいろんな言い伝えがあってどれが真説か収集がつかなくなっているようだ。
気心知れたリズム隊の2人。
よもや寸分のズレも見せることのないイキの合ったパフォーマンスに乗って…
ギター・ソロがフィーチュアされる。
「開けゴマ!」の呪文でいかにも「音楽の扉」が開いたかのようなにぎやかなオープニングで池㞍家のステージがスタートした。
私の場合、「Open sesame」というと真っ先出て来るのがコレ。
1960年に弱冠22歳の「フレディ・ハバード」がブルーノートから発表したデビュー・アルバム。
「ティナ・ブルックス」というテナーの人も「Open Sesame」というタイトル曲を作っているが、イヤイヤ、このアルバムはそれよりも同じブルックスが提供している「Gypsy Blue」というエキゾチックなマイナー・チューンが何といっても魅力的だ。
「こんばんは!
今日は平日のお忙しい中、お越し頂きましてありがとうございま~す!」
まずは「池㞍家とは何ぞや」の説明から。
池㞍家名義でステージに上がるのはかなり久しぶりのことで、ヘタをすると3、4年ぶりだとか。
そうかな~?…と思ったら「i3K」をやっているので実感が湧かないんだね。
ココでメンバーを紹介。
樋口さんはダブル・ヘッダー。
「今日は池㞍家と麻梨恵さんのバンドの両方の演奏で鍛えられますね!」
ホント、複雑な曲の数々を弾きこなすのは大変なことだと思いますよ。
ショボンちゃんもダブル・ヘッダーだ。
池㞍家とは20年来のお付き合い。
ご挨拶の後は晴くんが24、25歳の時に作った「池田屋」が続く。
ベースと…
ドラムスの2人から曲はスタート。
この時点でもうカッコいい!
ショボンちゃんのドラムスはいつも「NATAL」。
今回は「Cafe Racer」のキットに…
今はもう生産していない希少モデル「Staveスネア」を組み合わせている。
「今回は」なんて言っているけど、2019年の時も同じドラム・キットだった。
それだけ音が気に入っている…ということよ。
下はその前回のようす。
喜子さんがキリっとしたテーマ・メロディを奏でる。
世に知られる「池田屋騒動」といえば、1864年7月8日、急進的な尊王攘夷思想を掲げて京都の「池田屋」に集った長州藩の一行を新選組が襲撃した事件。
それだけに危険度が高そうなメロディだ。
一転、取り急ぎ長州の連中を一掃した解放感からなのか、ベース・ソロに入ると何やら楽し気なムードに。
コレがこの曲の大きな魅力のひとつ。
晴くんがゴキゲンなポップ・フレーズを弾き連ねていく。
ベース・ソロを引き継いだピアノ・ソロの調べも美しく…
さらに樋口さんもギター・ソロをポップにまとめ上げた。
イントロで新選組が池田屋に向かう様子を、そしてサビで襲撃のようすを描いたという情景音楽。
いいね~、こういうのは。
インストゥルメンタル・ミュージックの醍醐味だ。
喜子さんがしゃべっているのは池尻家が新しい音源を制作しているという情報。
次に演奏する曲がその音源に収録される予定になっていることを発表した。
その次の曲である「禁門」を解説する晴くん。
この日が世界初演。
リハーサルをした時、あまりにも難しすぎるのでこの日のセットリストに加えるかどうかについて迷ったとか。
おお!それはオモシロそうじゃないの!
なるほど…冒頭は4・4・4・5と演る17/16拍子のギター・リフから。
樋口さんが使用しているのはMarshallの去年の新商品「1959MS」。
1965年から生産し続けてきたMarshallのシンボルともいえる「1959」をグレードアップして自在な音量で最上の歪みと幅広いサウンドが得られるようにしたモデル。
樋口さんは「Volume(ここではゲインの役割)」をフル・アップしてアンプを歪ませた音作りをしていた。
音が滅法太く、最高にヌケの良いギター・サウンド!
ちなみに7年前もシッカリとMarshallを使ってくれていた。
この手の音楽を演る人は「デジタル機材を大幅に取り入れている」という先入観というか、被害妄想が私にはあるんだけど、樋口さんはそうではなく真空管アンプのサウンドの素晴らしさを理解し、そして尊重してくれている。
こうしてわかっている人に「1959MS」を使ってもらえるとうれしいね。
ナンダカンダ言ってもデジタル機器とは音がゼンゼン違うもん。
一聴してそれとわかる変拍子で語られるドラマ。
この緊張感がタマりません!
樋口さんのソロ。
ン~、やっぱりいい音!
「禁門の変」は池田屋騒動の約ひと月後に京都守護職の「松平容保」らの排除をもくろんで長州藩が京都御所を襲った事件。
そんなテーマだからして喜子さんのソロも大変にハードだこと!
ヘヴィな曲調が続いてカットアウトするところが何とも思わせぶりでいい感じ。
この事件を機に長州藩は「朝敵」となり第一次長州征伐が実施される。
それなのにおかしなことになっちゃって…薩摩が会津をダマしたんだ。
入隊したことはないにせよ私は「彰義隊」を支持する佐幕派だから。
以前にも書いたことがあったと思うけど「松平容保」のひ孫さんに会ったこともあるのよ。
コレは以前にも紹介したことがあったかしらん?
日本ペンクラブが選出した新選組に関する話を1冊にまとめた『新選組読本』というアンソロジー。
コレに司馬遼太郎の「王者の護衛者」という松平容保が京都守護職に就く前後のことを書いた短編が収められていて、新選組が発足したキッカケがシレっと記されている。
私は普段滅多なことでは司馬遼太郎を読まないんだけどコレはオモシロかった。
こんなことが書いてある…容保は風呂に入る時以外、肌身離さず小さな筒を身につけていた。
そして容保が亡くなり、明治になってからその筒の中身を検めてみるとそこに手紙が入っていた。
その手紙は「宸翰(しんかん)」、すなわち孝明天皇が容保に宛てたお手紙だった。
そこに一体ナニが書かれていたのか…。
私はこの宸翰の話を知っていた。
ということは他のナニかの本でこの話を読んでいるワケなんだけど、それがナンだったかどうしても思い出せないでいる。
それとも有名な話なのかしらん?
その宸翰には、タイミングさえ合っていれば明治維新をチャラにできるようなことが書いてあったのだ。
続いての曲も現在音源制作に取り組んでいるところの1曲。
時代は下ってタイトルは「戊辰」。
新選組に関する連作だからもちろん作曲者は晴くん。
「1959MS」が出すズ太いクリーン・トーンによるアルペジオに…
ドラムスが加わって始まる7/4拍子のユッタリとした1曲。
喜子さんがシンプルなテーマを奏でていく。
曲は様々な仕掛けを含みながらグイグイとクライマックスに向かっていった。
サラっとはしているがとても味わい深い曲。
ちなみに先に揚げた容保のひ孫さんに言わせれば、会津の皆さんは1886年を指す時にはいまだに「明治維新」という表現を避けて「戊辰」という言葉を使うそうだ。
だから明治元年から数えて満150年を迎えた8年前の2018年、会津では「維新150年」ではなく「戊辰150年」と言っていたようだ。
戊辰というのは「イヌとタツ」が組み合わさる5番目の干支で、次の戊辰の年は22年後の2048年にやって来る。
ショボンちゃんが池袋で「池尻家の晴くん」に間違えられた話などでMCも盛り上がる。
ナニせこのチームは全員がマイクを握って語るからね、話が尽きるなどということはあり得ない。
久しぶりに取り上げたという「YAKUDOSHI」。
この曲を作って厄が落ちたという喜子さんのピアノで曲は始まる。
リズムはワルツ。
ちなみにショボンちゃんは今年が厄年だそうです。
晴くんのベースをタップリとフィーチュア。
続いて喜子さんがスケールの大きなピアノ・ソロを奏で…
樋口さんがメロディをリードするアンサンブルからソロへ。
厄も逃げ出す鉄壁のパフォーマンスだった!
池㞍家最後の曲の前に告知。
ライブの予約が出来るQRコードを喜子さんが提示。
最近はみんなコレだわね。
コレは配信を見ている人もスキャンできるのか?
早速「予約しました!」という声が客席から上がった。
そして麻梨恵ちゃん登場。
この日は「対バン形式のプログレ女王の決闘」ということなので早速果し合いが始まった!
そのお題は喜子さん作、冒頭で紹介したCDにも収録されている「Breaking the Limit」。
まぁ、よくもこんなに弾きまくりますナァ…というほどの5人の熱演で池尻家のステージが締めくくられた。
相変わらず緻密にしてダイナミックな演奏を互いに称え合い、客席からは大きな拍手が送られた。
池㞍尻家の詳しい情報はコチラ⇒池㞍家Official Website
<つづく>
(一部敬称略 2026年8月7日 吉祥寺シルバーエレファントにて撮影)