犬神サアカス團~納涼!地獄の盆踊り<後編>
犬神サアカス團の単独公演『納涼!地獄の盆踊り』のレポートの<後編>。
「涼」を「納める」なんて「臨終」同様にとてもシャレた表現だと思う。
「人生の終わりに臨む」なんて素晴らしく詩的ではあるまいか?
この「納涼」、一方では「暑気払い」という言葉もあるでしょ?
これらの間には一体どういう違いがあるのか?
「納涼」は暑さを忘れて涼しさを味わうこと。
「暑気払い」は夏の暑さを打ち払うこと。
最終的には双方「暑さから逃れる」ということなのだが、キンキンに冷えた大ジョッキかなんかで暑さをブッ飛ばす「暑気払い」に対し、「納涼」は「心頭滅却すれば火もまた涼し」とまではいかないだろうが、暑さをコチラ側に採り込んでしまおうというワケ。
「風鈴」なんてのはその良い例なのかも。
でも今年の夏は違ったね。
ベトナムに行って2日目には日本に帰りたくて涙を流したほど暑いのがキライな私でも寂しかったね。
やっぱり暑い時には暑くなってくれないと!
最近の葉物野菜の値段を何とかしてくれ!
さて、凶子姉さんが幣(ぬさ)を振り回した次は「生霊(いけすだま)」。
この曲のリフもクールだナァ…まさに納涼だわ~。
そんなカッコいいリフは当然カッコいい音で弾かないと!
ということでMarshallがある。
ONOCHINが使っているのは「JCM800 2203」と「JCM800 1960A」。
コンボは「ORIGINN20C」だ。
ソリッドなベース・ラインを従えて…
「♪今夜あたしの生霊 体を抜け出してどこへ行く」
「♪今夜あたしの生霊 体を抜け出してどこへ行く」
「♪お前のところに行ったらば そうさお前を殺してやる!」
疾風迅雷のドライビング・パートが襲いかかってくる!
明兄さんのドラム・キットはNATAL(ナタール)のアッシュ。
この曲は前半のパートとサビの悲し気なメロディとの対比が素晴らしい。
コワイですね~。
何しろ「生霊」が一番コワイって言うからね。
もっとコワイのは…この曲の歌詞をインターネットで確認したところ、あるウェブサイトに「生霊/犬神サーカス団 <子供向け音楽>」と出ていたことだ。
コレって子供向けの曲なのッ?
ジャズ系の著名な音楽家「前田憲男」にも「生霊」という曲がある。
結構フリーがかっているんだけど、笙の和音をサックス・セクションが再現したりしてなかなかにカッコいい。
ただタイトルは「いけすだま」ではなくて「いきすだま」としている。
演奏は、「75年」と日本で一番長いキャリアを誇るジャズ・オーケストラ「宮間利之ニューハード」。
そして、この曲のライブ・バージョンが 『インスピレーション&パワー14』というコンピレーション・アルバムに収録されている。
演奏よりも下のジャケット・デザインの方が気になって紹介してみた。
明兄さんの「盆踊りの思い出」。
「男子は盆踊りに行っても踊らないんだよね。
隅っこの方でおしゃべりしたりしてる。
オレは違っていて、踊ったよ…おバアちゃん子だったから。
婦人部の人達に交じって踊るんだよ『アレ?友達ちが誰もいないナァ』とか言って」
「で、テキ屋が並んでるよね?…やきそば、イカ焼き、クジみたいの。
ある時、味噌おでん屋が出ていたのね。夏なのに味噌おでん。
おバアちゃんからお金をもらって買いに行ってみたら『おでん』なのにコンニャクしかないんだよ!
コレは『味噌おでん』じゃなくて『味噌田楽』じゃないか!と思ったね。
もしオレがテキ屋をやるんだったら他の具も用意するね…おでんなんだから!」
「味噌田楽」ってのはこういうヤツね。
コレ、何で「田楽」っていうのかと思っていい機会だから調べてみた。
コレはですねぇ、平安時代に五穀豊穣を祈って行った「田楽舞い」という神事の装束に似ているからなんだって。
コレが味噌田楽に似ているのか?
でも串に刺したおでんに見えなくはないな。
チビ太がいつも持って歩いているヤツね。
今気がついたんだけど、このチビ太のおでんの一番下に刺さっているギザギザの具はナルトなんだね。
ずっとちくわぶかと思っていた。
ハイ、関西ご出身の皆さん、出番です。
大阪には「ちくわぶ」ってないんですよね。
約40年前に箕面に住んでいた時、家内がおでんの具を買いにってちくわぶを探したところどこへ行っても見つからない。
そこでお店の人に尋ねてみると…
「ちくわぶ~?ちくわでっしゃろ?間違えたらアカンがな。
ちくわならそこにありまんがな。
え?ちくわとチャイまんの?…ちくわぶ?
エエエエッ?『ぶゥ』ってなんやねん、『ぶゥ』って?
『ちくわぶゥ』なんて聞いたことあらへんわ!」
と、妙に「ぶゥ」を強調されて家内は玉砕。
心を痛めて店を離れ、コレで関西の人がちくわぶを食べないことを学習した。
関東では人気のおでんの具なのにネェ。
しかし、最終的には千里中央の阪急デパートで発見された。
もうひとつ…コレ、ちくわぶって小麦粉をこねて棒に刺して、ギザギザに成形しているだけのモノだと思うでしょ?
トンデモナイ!
チャンとした良質のちくわぶって素材を層にして棒に巻き付けてあるんですよ。
ダシの染み込んだちくわぶを口に入れるとその層がハガれて風味が広がり実に美味しい。
そこらのス―パーで売っているようなのはダメよ。
高級なちくわぶね。
実は今朝の新聞の出ていた12歳の女の子の投稿で知ったんだけど、それによると「ちくわぶ」は京都料理(多分「麩」のことだろう)をマネて小麦粉で作った「東京名物」なんだって。
それじゃ箕面の人が「ぶゥ」をご存じなくても無理はなかったのね?
ココからは犬神サアカス團のライブでは欠かせない「ダンス天国コーナー」。
行くぞ~!
まずは「♪フゥワッフゥワッ」と「愛の亡霊」。
いつもの明兄さんが叩くスネア・ドラムから「天変地異」。
「天変」とは天空に現れる異変で日食、月食、隕石、大雨、暴風等のこと。
「地異」とは地上に起こる異変で洪水、地震、津波、火山の噴火等のこと。
ま、ナニがナンでも「死にたくない!」ワケだ。
ところで凶子姉さんのお腹の天変地異はどうなったのか?
今日は全員参加型の「天変地異」。
お客さんも一緒に「死にたくない!」。
世の中にはこういう人もいるんだけどネェ。
ONOCHINが奏でるアメリカ国家から…
「ビバ!アメリカ」!
今日もタンバリンを片手に「アメリカ病」に罹患した哀れな日本人を熱心に歌い上げる。
毎度おなじみ「ABC、LSD、CIA、USA!」のコール&レスポンス。
ま、今は「ICC」でしょう。
以前からとはいえ、最早アメリカ自体が重篤な病気に罹っているからナァ。
凶子姉さんの「盆踊りの思い出」。
「祭りとか盆踊りとか大好きです。
ウウワッ!てなって行きたくなっちゃう。
それで子供の頃、イトコとお揃いで浴衣を作ってもらったんだけど、その浴衣の色が子供にしてはチョット変わった色だったのね。
近所の友達から目印にされちゃって、『凶子ちゃんがアソコにいる!』みたいになっていたんですよ。
お母さんかお婆ちゃんが作ってくれて、すごく気に入っていたのか、仕立て直して大分大きくなるまで着ていました」
「ところで盆踊りにひとりで来ている人っていなかった?
盆踊りとかお祭りってみんなで行くものじゃない?
それなのに踊りもしないし、屋台のモノを食べるワケでもないし、ひとりで来て何もしない人。
そういう人をすごく不思議に思っていたんですよ。
それで大人になっても近所で盆踊りをやっているとやっぱり行きたくなるんですよ。
それで行くじゃん?…そしてハッと気がついたんですよ」
「アレ?あたしひとりで来てんじゃん?!
それであのひとりで来ていた人の意味がわかった。
だから今は盆踊りをやっていても通りがかるぐらいにしています」
そんな凶子姉さんの思い出というか、現状を耳にしたところで本日最後のセクション。
さぁ、最後まで爆走するぞォ~!
まずは私が知っている限り、私が経験してきた限りで犬神サアカス團のライブで最頻出の曲。
明さんのドラムスから全員参加の「暗黒礼賛ロックンロール」。
今日もみんなで「ロックンロール!」
もう「犬神サアカス團の代名詞」とも言えようこの曲。
実際、不思議と飽きが来ないんだよね。
センター台に乗ってONOCHINがソロをブチかます!
この写真オモシロいでしょう?
パッと見ると凶子姉さんの顔を貼り付けたみたいになってる。
今日もシャープなソロが飛び出した!
続けざまに「スケ番ロック」で暴走だ!
疾走するドライビング・ビートに乗って…
一晩中でも暴走しそうな凶子姉さんが猛シャウト!
この曲の爽快感は他の追随を許さんな。
そして本編を締めくくったのが「犬神天国」。
イケイケ明兄さん!
突っ走るドラムスにベースと…
ギターが加わって…
「♪ヘイヘイヘイヘイへ~」
そのまま「爆走All Night Long」。
なんか最後の方は「爆走」ばっかりになっちゃったナ。
ま、いいか本当に爆走していたから!
これにて本編終了。
アンコールまでの間、休憩がてら<前編>で予告した「私の地獄の盆踊り」を開陳します。
犬神サアカス團の4人が語ってくれた思い出の盆踊りがスッ飛んでしまうような内容だと思う。
ココは浅草にある「浄土真宗東本願寺派本山東本願寺」。
京都の東本願寺の別院として1651年に創建された名古刹だ。
この境内で毎年盆踊り大会が開催される。
巨大な本堂を背後に櫓を組んだその光景は壮観である。
いいネェ、盆踊りは。
ココの盆踊りは櫓の上ではなく、本堂の前のスペースに太鼓をセットしてチームを組んで打っている。
太鼓は「打つ」、ドラムスは「叩く」ね。
コレは重要無形文化財保持者の鼓奏者「大倉正之助」さんのマネージャーから教わった。
櫓にはお手本を示す踊り手さんが数人上がって…
♪押して~、押して~
かついで、かついで
チョチョンがチョンったらチョチョンがチョン
大勢の人が櫓を中心に踊りながらユックリと回る光景は盆踊りそのもの。
コレが日本の夏じゃないか!
それが…
コレは今年のようす。
時間も遅くなってきてスゴイ人出。
盛り上がっていることは盛り上がっているんだけど様子がチトおかしい。
音を聞いてもらえれば一発でわかってもらえるんだけど…。
櫓の上にはヘッドホンをつけた浴衣装束のオッサンが何やらターンテーブルのようなモノをイジくっているではないか!
皆さんが踊っている音楽は「東京音頭」でも「炭坑節」でも、はたまた「花笠音頭」でもない。
何と田原俊彦や近藤真彦、それにサザンオールスターズの曲等、80年代に流行した歌謡曲ばかりなのだ!
強引に従来型の振り付けで踊ろうとしている人もいるにはいるのだが、かかっている音楽が「ギンギラギンにさりげなく」だけに到底マッチしない。
すぐに脱落していってしまう。
マイクを手にしたDJ風のオッサンが「ノッてるか~!」と声を張り上げて来場者をアオっているではないか!
「イエ~!」
当意即妙にそのアオリに応える来場者たち。
私はライブハウスでグルグル輪になって駆けずり回っている連中を指して「オイオイ!それは町の盆踊りでやってくれ!」と事あるごとに苦言を呈してきた。
ところがこの東本願寺の惨劇を目にして、私の苦言が全く通用しないことがわかった。
「オイオイ!それはライブハウスでやってくれ!」
私も盆踊りに関しては明兄さん同様、近所の友達と踊って楽しんだ思い出があるので、この光景はまさに「地獄の盆踊り」だった。
外国人も混ざって楽しそうに身体を動かしていたが、コレは断じてチガウから!
「楽しければいいじゃないか!」という向きもあろうが、「楽しければいい」というモノでは決してない。
コレは日本人から「伝統を守る」という気性が欠落してしまったとしか思えない愚行だと思う。
「こうでもしないと人が集まらない」というコトであれば止めたっていいじゃないか。
キテレツな形で残すくらいなら、そんな伝統は消滅してしまった方がマシだ。
明さん、凶子さん、コレが今の東京の盆踊りなんですよ。
それともココだけなのかしらん?
最新の盆踊りの状況に驚いた後はアンコール。
まずはおなじみ「かわいい音頭」。
今、屋台村で販売している新しい「かわいい団扇」。
メンバーもお客さんも団扇を手にして盆踊り状態!
コッチのほうがよっぽどチャンとした盆踊りだわ。
んんん?
スゲエ!早速フリフリを取り付けてオリジナル団扇を振っている人がいる!
「♪アタシやっぱり…かわいい~」
アンコールの儀式が終わったところで「光と影のトッカータ」!
鉄壁の犬神スタンダード!
ここでもシャープなギター・ソロが飛び出して…
最後は「♪オ~オ~オ~オ~オ~オ~」。
締めくくりの定番「命みぢかし恋せよ人類!」だ!
最後まで疾駆するリズム!
明兄さんの指揮でお客さんも大合唱!
「ありがとうございました!」
明兄さんの「ペロリ・スティック」もキマった!
そういえば私のピロリ菌どうなったかな?
こないだ胃カメラ飲んだのよ。
名残り惜しゅうございますが…メンバーひとりひとりが台にのって最後のご挨拶。
「ありがとうございました!」
こうして『地獄の盆踊り』は楽しくにぎやかに幕を下ろした。
犬神サアカス團の詳しい情報はコチラ⇒犬神サアカス團公式ウェブサイト
♪ハァァァァ~、チョチョンがチョン。
※今回も『私の谷中墓地』は休載します。
(一部敬称略 2026年8月29日 三軒茶屋HEAVEN'S DOORにて撮影)