BARAKA:平石正樹追悼ライブ<前編>
過日Marshall Blogでもお悔やみの記事を掲載したが、ドラマー「平石正樹」さんの急逝により急遽「追悼公演」となったBARAKAの10月のZepp新宿でのライブのレポートをお送りする。
会場の入り口に並んだ花の数々。
BARAKAがこれまでに発表して来た数々のCD作品を紹介するロビーの壁面。
もちろんその場でゲット可能。
CDの他にも屋台村では色々なオリジナル・グッズに…
人気のTシャツ類も取り揃えられた。
別の階では在りし日の平石さんをフィーチュアした写真展のコーナーが設けられた。
開演の時間となり、客電が落ちるとステージ後方に平石さんの姿が浮かび上がった。
ステージの中央には平石さんが愛用した歴代のバス・ドラムが並んでいる。
会場内にタング・ドラムの音が流れ出し、やがてステージにBARAKAの2人が姿を現す。
高見一生
依知川伸一
いつものMarshall Blogのスタイルのライブ・レポートであれば、ココでドラムスを叩いている写真に「平石MAX正樹」と記すところなのだが今回はそれができない。
ナンと寂しいことよ。
1曲目はサンスクリット語で「輪廻転生」を意味する「Samsara」。
かつては平石さんがシンセ・パッドを使って奏でていたタング・ドラムのメロディ。
今日はループを使って再現し、そこに2人が深遠なメロディを重ねていった。
まるで何か途轍もなく神聖な儀式に足を踏み入れたかのような重厚な雰囲気でショウがスタート。
もうすでにハンカチを目に当てている女性が客席に散見された。
2曲目は一生さんが出す図太いクリーン・サウンドを使ったコード・ストラミングからスタート。
1曲目と雰囲気をガラリ替えて「Butterfly」。
ココからドラムスに西川貴博が加わる。
7/4拍子でハードにドライブ!
曲は次々と情景を変え、一生さんのソロのパートに突入する。
このギターの音!やっぱりいいわ~。
BARAKAのコンサートに来ればこのMarshallの原点ともいうべきサウンドを耳にすることができるのだ。
一生さんのMarshall。
メインで使用しているのは上段の「1987X」。
その下はMarshallの創立35周年を記念して発売した「1959WSP」とスピーカー・キャビネットはCelestionのグリーンバックを搭載した「1960AX」だ。
一生さんの足元のようす。
このセットで変幻自在のギター・サウンドを繰り出す。
一生さんのギターのスゴイところはどんなタイプのサウンドでもMarshallアンプの本来の音が通底していることだ。
一方、コチラは依知川さんの足元のようす。
この曲の冒頭のように、依知川さんが操る足鍵盤はBARAKAのライブには絶対になくてはならない楽器のひとつ。
今回も大活躍だった。
曲は依知川さんが奏でるベースのリフを中心に締めくくられる。
BARAKA節満開だ!
いつも通り、ご挨拶は依知川さんから。
「本来ならば今日はBARAKAの『28周年記念ライブ』…………でしたが…………9月の12日に平石正樹が旅立ちました。
今日は正樹を追悼してライブを行います。
皆さん、最後までどうぞよろしくお願い致します」
こみ上げる嗚咽を抑えて何とかご挨拶の冒頭を切り出した依知川さん。
「正樹はドラマーとして本当にカッコよかった。
パワーがあって、繊細さも兼ね備えた素晴らしいドラマーだったと思います。
そんな正樹がちょうど2年前の今頃ですか…体調が悪いということで病院に行ったところ病気が発覚しました。
それから彼はドラマーとしての仕事、そしてBARAKAの活動、BARAKAのリハーサル等のスケジュールを最優先し、その空いてる時間に治療を行なっていました。
『オレは死ぬのは怖くない。だけどもう少しドラムを叩きたい』と言っていました。
この4月まで普通にライブ活動をしていたんですが、それには病院の先生が本当に驚いていました。
去年の4月にはツアーで海外にも行きました。
『この治療をしながら海外に行く人なんていませんよ、平石さん!』と言われながら正樹は素晴らしいタイコを叩いてました。
そして今年の5月29日、LINE CUBE SHIBUYAでのライブが正樹にとって最後のステージとなりました」
「BARAKAは28年の間に761本のライブを行ってきました。
そして18枚のアルバムをリリースしました。
正樹と一緒にステージに立てなかったのは今日…それとその761回の内に1回だけありました。
彼の病気が発覚した次の日、千葉県の館山でアコースティック・ライブがあったんですが、それにはさすがに正樹も行けなかったんです。
ボクと一生もほとんど眠れずに館山に行って2人でライブをした思い出があります。
5月29日が終わってから、一生の手の骨折のことがあったんですけれども、何回かリハーサルがあって正樹も頑張っていたんですが、体調が悪くてリハーサルに来れない日が出てきました。
8月28日には先輩のライブがあって正樹はドラムスで参加しました。
その日のライブはすべてを振り絞るかのような素晴らしいドラミングでした。
終演後、一生と彼を送って行ったのですが、もうかなり消耗していてすべてを出し尽くした…という様子でした。
それから2週間…わずか2週間です。
アッという間に亡くなってしまいました。
それでもボクと一生はその2週間の間、正樹のウチや病院でほとんど毎日一緒に過ごすことができました」
「今回のライブをするにあたってはわずか1ヶ月しか時間がなかったんですが、BARAKAのスタッフが本当によく頑張ってくれました。
そして、サポートで参加してくださる3人のミュージシャン。
特にドラマーの2人には葛藤があったと思います。
正樹に変わるドラマーは世界のどこを探してもいません。これは当たり前の話です。
そんな中、同じドラマーとしてどういう気持ちで参加するか…そこには本当に大きな葛藤があったと思うのです。
それでも『ボクでよかったら。ワタシでよかったら』と快く参加してくれました。
どうか2人に…そしてキーボーズの稲ちゃんにも大きな拍手をお願いします。
今、正樹もココに来てると思います!」
「しめっぽいライブなんて、正樹は望んでないと思います。
絶対『思いっきり演ってくれ!』と祈っているハズです。
皆さん、どうか最後まで一緒に楽しんでください。お願いします」
ドラムスの西川さんを紹介して一緒にもう1曲。
スケールの大きなキメで曲が動き出すのは「Palm Trees of the Moldives」。
依知川さんのクリアなベースと…
西川さんのパワフルなドラムスのコンビネーションが実に鮮やか!
一生さんのギターが加わる。
何のためらいもなくズコ~ンとやっちゃうところが実に気持ちいい~!
テーマからソロへ。
例によってヨソでは決して耳にすることがない「一生フレーズ」が次へと次へと飛び出した!
再び依知川さんのお話。
「正樹は『伸一と一生にはBARAKAを続けて欲しい』と何度も言っていました。
良いのか、悪いのか…今後、BARAKAは一生とボクの2人体制でやっていきます。
2人でもライブをやっていきます。
そして、今日のように友人のミュージシャンにサポートして頂いて演ることもあります。
BARAKAはこれからも続きますので、皆さんどうぞ応援をよろしくお願いします。
今日は北海道や九州、日本全国からこんなにたくさんの方がいらしてくださいました。
心から感謝致します。ありがとうございます!」
ココで2人目のゲスト、稲垣雅紀が登場。
キーボーズを迎えて「四人BARAKA」。
再び依知川さんのベースと…
西川さんのドラムスのコンビネーションからビリー・コブハムの「Stratus」。
稲垣さんと一生さんでおなじみのテーマを弾き分ける。
そして稲垣さんのシンセサイザー・ソロ。
おいしいフレーズがテンコ盛り!
稲垣さんは依知川さんが取り組んでいる「61年会」という1961年生まれの皆さんが集まる会で長期間にわたってご一緒されている方でBARAKAとは何度か一緒にライブを演ったことがあった。
「BARAKA+稲垣」で「バラカイナ」だって!
外部のミュージシャンがBARAKAのステージ上がったのはコレまでただひとり…稲垣さんだけだそうだ。
もちろん一生さんはテーマに、バッキングに、ソロにとワイルドなプレイをブチかましてくれた。
続いての曲。
稲垣さんのキーボーズに…
一生さんのクリーン・トーンで奏でるテーマ・メロディが被さる。
曲は「Stella Maris」。
依知川さんがパーム・ミュートをしながら5/4拍子のパターンを提示する。
ドラマティックに曲が展開して…
一生さんが今度はディストーション・ギターでテーマを奏でるが、決して熱くはならない。
この様子を夏目漱石が文字にすれば、きっと『夢十夜』の中に収録しただろう…みたいな曲。
わかりにくい例えでゴメンね。
「ハイ皆さん、こんにちは。元気?
今日はこういうアレですけれども。
まっ、前向きに口角を上げて…口角上げて泣いていきましょう。
ボクたちもウルウルしながら演っていますが、この後、色々な催し物も用意しておりますのでひとつ楽しみにして頂けたら思います。
よろしくお願いします」
「じゃあ、チョットこの時間を利用して発声練習しよか?ね、とりあえず。
客席がA、B、Cと3列あるじゃないですか…1,2,3かわからんけど。
『カエルのうた』をやっとく?
Aが『♪カ~エ~ル~のう~た~が~』って歌うでしょ、そしたらBセクションがそれを受けて歌う。
そしたらまたCセクションが歌う。
『♪カ~エ~ル~のう~た~が~』のとこをずっと歌ってくださいネ。
なんの輪唱にもならんのをチョット試してみたい」
「さぁ、いくよ。1、2,3、4!」
A:『♪カ~エ~ル~のう~た~が~』
B:『♪カ~エ~ル~のう~た~が~』
C:『♪カ~エ~ル~のう~た~が~』
「ありがとう!
ね、カエルのうたが往復してくるでしょ?…行き当たりばったりしゃべってすいません!」
ここで4人目のゲスト、30年以上のお付き合いだというドラマーの磯部潤が加わる…そして磯部さんからひと言。
「よろしくお願いいたします。
正樹さんとのツイン・ドラムスを演ってりる気分で演奏させて頂きたいと思います。
今日はよろしくお願いします」
さて、さっそく磯部さんのドラムスから始まる曲は…
一生さんが「イチかバチかやってみたい」と紹介した「Ground Book」。
稲垣さんと…
一生さんが徐々に重なっていき猛烈な緊張感を演出する。
曲の最後の方で出て来る依知川さんと磯部さんのコンビネーションのパートが実にカッコいい!
ぜんぜんイチかバチかには見えない完璧なパフォーマンスだった。
ココで稲垣さんがステージを降りて「三人BARAKA」に戻る。
モジュレーションをやや深めにかけたギター。
ホンの少し歪んだ音色が小気味よい。
曲はBARAKAのキラー・チューンのひとつ「Maverick」。
5/4、7/4、4/4拍子…様々なリズムに乗ったパートがスリリングに連なっていく。
BARAKAの曲を覚えて演奏するのはさぞかし大変だろうナァ~…などというのは余計な心配。
磯部さんがサクサクと寸分の狂いも見せずBARAKAワールドの1/3の構築して見せてくれた。
BARAKAの詳しい情報はコチラ⇒BARAKA Official Web Site
<後編>につづく
