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2018年2月21日 (水)

2月生まれ 考えあまいが演奏うまい ~ THE FEBの20周年!<後編>

 
さて、休憩をはさんだ後は、THE FEBの20周年を記念するライブも最後のセットに突入する。
ココで今までのブルース三昧と雰囲気がガラリと変わる。

10小川美潮の登場だ!
そもそも、今回のCDやDVD制作のアイデアは美潮さんのご発案だったそうだ。

20v美潮さんのバックを務めるのは…
森園勝敏

30v松川純一郎

40v伊藤広規

50v杉山卓夫

60v西本明

70v小森啓資
…という面々。
2月生まれが4人、それ以外が3人。

80vアレ?そうか…今日は2月生まれの方は山ほどいても、ステージに上がった女性は美潮さんひとりだけだったんだ!
コレは時代を表している感じがするナァ。
今、若いミュージシャンでこの手のセッション・コンサートを開いたら、間違いなく半数は女性になるだろう。
  
さて、実はですね、今日のこの時を首を長くして待っていたのですわ。
そう、私は美潮さんのファンなのだ。
私の友人にも美潮さんの大ファンがいて、ソイツは娘さんに「美汐ちゃん」という名前をつけた。
ウチはセガレが2人なんだけど、今にして思えば「美志夫くん」とヤル手もあるにはあったな。
高校の時に聴いたチャクラのサウンドがとにかく魅力的だった。
私がデビュー・アルバムを買ったのは、新小岩の「ヤマサトーホー堂」だった。
「この店先でプロモーションをすれば売れる」と、後に全国的に有名な演歌の聖地となったこのお店は完全にファミリー・ビジネスで、お嬢さんが店番をやっている時を狙って買いに行ったような気がする…もちろんカワイコちゃんだったからだ。
アレは1980年のことだったのか…もうチョット前のような気もしていたんだけど。
その頃、パンクだ、ニューウェイブだ、テクノだ…と、斯界のロックにウンザリし出した頃で、チャクラもピコピコとテクノポップの要素はあったにせよ、「福の種」のような「和」のテイストがものすごく新鮮で、すごく気に入ってしまった。
少しエッチな歌詞にドキドキしたりしてね。
そして、ナニよりも、カニよりもシビれてしまったのが、美潮さんの歌声と歌い方。
それ以前には恐らく一度も耳にしたことがないタイプのモノだった。
ある時、何かの雑誌に「中学生の時にひとりでフランク・ザッパを観にくような変な少女でした」という美潮さんのインタビューが掲載されていて余計に好きになった。
私は残念ながらフランク・ザッパを観ることはかなわなかったが、私も中学3年生の時からザッパが大好きだったので「やっぱり!」というような印象を覚えた。
偶然のことではあったが、『8時だよ!全員集合』に出演したチャクラも見た。
FM東京でオンエアされたスタジオライブの音源は今でも大切に保管している。
チャクラのファースト・アルバムには、沖縄のメロディをレゲエのリズムに乗せた「島の娘」という曲が収録されていて、そのスタジオ・ライブでも取り上げていた。
コレがもう最高にカッコよかった。もちろんコピーした。
ギターの板倉さんが短いソロの中で正統的なバップ・フレーズを弾いてみせたのだ。
『夜のヒットスタジオ』の「せんせい」も衝撃的だったナァ。リアルタイムで観たわ。
ところが、肝心のナマのチャクラは最後まで観ずじまいだった。
当時一緒にやっていたバンドのドラマーが「昨日、新宿ロフトにチャクラを観に行って来たけど、すごく楽しかった!」と言っていたのを思い出す。
あの時彼にくっついて行けばヨカッタなぁ。
フランク・ザッパはまだ年齢的に行くキッカケがなかったので仕方ないが、チャクラを見逃したのは一生の不覚だわ。
そんなに好きなら後からでも美潮さんのライブに観に行きゃいいじゃんよ!…と言われそうだけど、大学に入るとロックからスッカリ遠ざかってしまったのでその機会がなかった。
そして、とうとう数年前に渋谷のジアンジアンのウラのライブハウスでホッピーさんのライブにご出演された時にキャッチした。
ドラムスがポンタさんで、坂田明さんを交え、ホッピーさんを中心に、4人でコッテコテのフリー・ジャズを演ってらした。
今回は「調性のある音楽」ということでありがたいと言えばありがたい。

90v美潮さんのセットの1曲目は「犬の日々」。
ミュージカルの『キャッツ』ってあるでしょ?「ジェリクル・キャッツ」だの「メモリー」だのの『キャッツ』。
アレはイギリスの劇作家のT.S.エリオットの子供向けの詩集『キャッツ - ポッサムおじさんの猫とつき合う法(The Old Possum's Book of Practical Cats )』を元にアンドリュー・ロイド・ウェーバーが曲を付けてミュージカルに仕立て上げたモノ。
Rum Tum Tugger、Mungojerrie、Rumpelteazer、Old Deuteronomy、Mr.Mistoffelees、Macavity、Skimbleshanks…なんてね、私はゼンゼン猫好きなワケではないけど、この作品は信じられないぐらいの名曲揃いでブロードウェイで通算3回観た。
で、そのエリオットの原作を共訳詩をしたのが北村太郎さんという方。
この方の家は関東大震災の混乱の後、合羽橋に移り住んで「小松庵」というソバ屋さんを営んでいたんですってネェ。
合羽橋といえば、厨房器具店が集まる世界的に有名なエリア。
ココの厨房器具店と神保町の古本店の集まりようは世界一なのだそうだ。
実は合羽橋はそれだけではない。
徳川家の菩提寺である上野の東叡山寛永寺と浅草の金龍山浅草寺を結ぶもっとも近い道が走っていて、江戸時代には将軍がそこを行き来していたという。
その通りは、今ではサビれにサビれた商店街だが、奇跡的に障害物がなく、スカイツリーが根元まで見える珍しい通りとしても知られている。
で、寛永寺の山主だった輪王寺宮(りんのうじのみや)、後の北白川宮能久親王(きたしらかわのみやよしひさしんのう)は、上野戦争の際同じ皇族であったにもかかわらず、長州藩が作ったインチキ「錦の御旗」の元、倒幕に迫る薩長の朝廷軍に追い立てられ、尾久や三河島を逃げ回った後、この合羽橋の東光院にかくまわれた…っていうんだよね~。
アータ、輪王寺宮っていうのは「もうひとりの天皇」と言われたぐらい地位が高い人だったんですよ。
そして、幸宥(こうゆう)というこの寺の当時の住職は宮を追って一緒に東北地方の逃避行を続けた。
コレが今も合羽橋に残る東光院(移転後らしい)。

1_2img_5645 イカンイカン、こんなに脱線するつもりはなかったのに!
「犬の日々」は、その北村さんが書いたオリジナルの歌詞にベーシストの山村哲也さんが曲をつけた作品。

110_lwk森さんがメロディを弾くイントロに導かれて、美潮さんがひと声発するだけで独特の世界ができあがってしまう。
「声」の力っていうのは本当にスゴイ。

100v「次は英語の歌を歌っちゃいます」
美潮さんが取り上げたのはMichael Franksの「The Lady Wants to Know」。

120ギターが耳元で囁いているような森さんのあまりにも繊細な間奏。

140vこの曲が収録されているMichael Franksの『Sleeping Gypsy』ってのは一時期流行ったよね~。
1977年か…。
私なんかはまだ中学生でハードロックに狂っていた頃だけど、このアルバムのジャケットはよく目にした。
もしかしたら「ラリー・カールトン」なんて名前はコレで初めて耳にしたのかも知れないナァ。
Michaek Franksの曲は多分これからも聴かないと思うけど、美潮さんの歌だったら聴きたいな。

130vしかし、失礼ながら演奏ウマいナァ。
まるでCDを聴いているようだった。

150前回、KOKI Tetragonの時に松川さんの選曲で「Lady Day and John Coltrane」という曲を教わった。
先日、川崎のチッタに行った時に入った近所の喫茶店でこの曲が流れていて驚いたんだけど、私が勉強不足なだけで、さほど珍しい曲でもないのかな?
例の「落ち込んだ時はビリー・ホリディやジョン・コルトレーンを聴いて元気をだそうぜ!」みたいな歌ね。
で、この「The Lady Wants to Know」にもコルトレーンが出て来るんだよね。
「パパはコルトレーンみたい、ベイビーはマイルスみたい」って。
どうしてコルトレーンがこうやって出て来るんだろうネェ。
すごい不思議。
同じテナーでデクスター・ゴードンとかコールマン・ホーキンスとか、ベン・ウェブスターじゃイヤなのかな?
私だったらジョニー・グリフィンとかスティーブ・マーカスとかタビー・ヘイズがいいな。
それでですよ、こういうところに出て来るコルトレーンはいつのコルトレーンを指しているのか知りたいナァ。
ご存知の通り、ジョン・コルトレーンは音楽のスタイルを常に変え続けつつ、41年という短い生涯を音楽に捧げた修行僧のような音楽家だ。
「私の人生にレジャーはなかった」というセリフが有名なぐらいの音楽の化身だ。
パパはいつのコルトレーンみたいなんだろう?
若きPrestige時代かな?充実のAtlantic時代かな?自己の音楽道を極限まで追求して燃え尽きるImpulse時代かな?それとも『Blue Train』狙いかな?
この曲調から察するに『Expression』や『Meditation』なんかは除外されるんだろうな~。
『Ascention』はOK。
え、コレって「Coltrane」じゃなくて「cold train」って歌ってるの?

160美潮さんの「♪エンヤ~コラヤット」のフリつきで始まったのは「南の花嫁さん」。

170_mnhこの曲は知らなかった。
1942年だから、戦中の高峰三枝子のヒット曲。
「♪おみやげはナ~ニ」でグッとこない人はいないだろう。
本当に可愛い曲だ。
昔はいい曲がたくさんあった。
ライナーノーツに詳述した通りこの曲は元は中国の曲なのだが、海外から入った来た曲といえば、「ブンガワン・ソロ」なんかも実によろしいな。
今って、比較的年配の方から子供までが歌えるヒット曲ってまったくないんだよね。
我々の頃は山ほどあった。
「懐かしの昭和メロディ」のような番組をよく東京12チャンネル(現テレビ東京)でやってるでしょ?
あそこで出て来る古い歌って、正確に歌詞を吟じれるワケではなないにしろ、ほとんど知ってるんだよね。
え、「人間が古いから」だって?
チガウチガウ!
それらは我々が子供の頃に流行っていた曲なんだって!
それなのに知ってる。
どうだろう、そういうのはピンクレディぐらいまでかねェ?
パソコンやらゲームやら他に楽しみが増えたのでヒット曲がなくなってしまったのか、ヒット曲がないからみんな音楽から離れてしまったのか…きっとその両方なんだと思う。
ゴメンナサイ…ここから先はまた別の機会に別の記事内で書くことにします。
今の日本の音楽界で最近ものすごく気になっていることがあるのです。

180vさて、絶対に聴き逃してはならないのはこのアレンジ。
じ~つ~に、カッコいい!
原曲のメロディをバッチリと活かしつつ、極めてコンテンポラリーな仕上がりになった。
こういう仕事ってとても素晴らしいと思う。

190その秀逸なアレンジを忠実にこなす皆さんの腕前がまた見事ときてる。

200vで、結局最終的には美潮さんワールド。
「チャクラの新曲」と言われて聴かされたら私なんか「やった!」なんて喜んじゃうね、きっと。
それだけ美潮さんの持つ個性ってのは強力なのだ。
ク~、楽しいな~、THE FEB!
210vでも、次で最後の曲なの。
皆さんは温泉に行くと何回お風呂に入りますか?
私はいつも4回を目標にしているの。
宿に到着する時間にもよるけど、着いてすぐ1回。
夕食の前に1回。
寝る前に1回。
そして、翌日の朝に1回。
マァ、大抵3回止まりになっちゃうんだけどね。
決して欲張っているワケではなくて、大好きなの…温泉が。
信州に8年近く住んでいた時にガッチリとハマったね。
だから、いい湯であればリュックを背負って山の上まで行っちゃうよ…というのが最後の曲。

220軽快なスカのリズムに乗って展開する楽しいナンバーは「山登り銭湯」。
260美潮さんがチャクラの後に結成した「美潮バンド」時代のレパートリー。

225岡沢さんのパワフルなコーラスがメッチャ印象的!

230vこの曲でも美潮さんのカワイさ全開!
他の人が歌ったところで意味はないだろうし、歌って欲しくない。

240vTAKEさんのソロ。
起伏に富んだ濃い内容がうれしい。
美潮さんが指摘されていたが、TAKEさんがかけているのは本当に「ハズキ・ルーぺ」なのかッ?
あの舘ひろしのCMはいいナァ。
かつて老眼鏡の宣伝をアレほどまでにスタイリッシュに仕上げたことはなかろう。
女の子のお父さんは、ああして娘とデートするモノなのか?
私なんか、おかげさまでだいぶ膝が回復して来た長男とオリジン弁当を食べるのが関の山だ。
しかし、「舘ひろし」とくれば「猫ひろし」。「タチ」に「ネコ」。
このネーミングのセンスもハズキルーペのCMほどに素晴らしいとは思わない?

250vコレもカワイイ曲だなァ。
みんな銭湯好きなのね~。
そういえば「私の秋葉原」という記事で紹介した燕湯という銭湯、誰か行ったかな?

255イヤ~、恐るべし2月生まれ!
誰か「THE NOV」やって~…そう、私は11月生まれなのです。

270vアンコールは出演者全員でにぎやかに演ったよ。

280_hc「奴らとお嬢さん」という曲。
コレはDVDだけに収録されているからね。

290カリプソ。
コレも楽しかった。
ライナーノーツでも触れたんだけど、日本ではカリプソってほとんど耳にしないよね。
ジャズ・ファンの間ではソニー・ロリンズの「St. Thomas」や「Don't Stop the Carnival」なんてカリプソ曲は良く知られているだろう。後年、トニー・ウィリアムスと演った『No problem』に収録されている「Coconut Bread」なんて実にいい曲だ。
他にもフレディ・ハバードの「Breaking Point」なんて意表をつく展開ということもあってカッコいいことこの上ない。
日本ではどうだろう?
荒井由実の「避暑地の出来事」ぐらい?
私が知らないだけなんだろうけど、寂しいね。
今の日本のミュージシャンたちはもっと色んなリズムを取り入れるべきだと思う。
昔の方がはるかににぎやかだった。
カリプソについてはかつてヴァン・ダイク・パークスを引き合いに出して【Music Jacket Gallery】の「乗り物ジャケット特集<前編>」で解説したことがあるので是非ご覧頂きたい。

300どんなリズムでも自家薬籠中の小森さん。
メリハリの効いたスティックさばきが快感だ。

310vソロで、時にはツインで分厚いサウンドを奏でたキーボーズ・チーム。

340タイトルにあるように、曲中の「奴ら」と「お嬢さん」のコール&レスポンスが楽しい!

320

350皆さんから「OS、OS」と呼ばれていた岡沢さん、ナニをやっても破壊力がハンパじゃなかった!

360あ~楽しかった!

370vダルセーニョして…2月生まれのスゴ腕ミュージシャンが集まったチーム、THE FEB。
その結成20周年を記念したコンサートを3日間にわたってレポートした。

380その模様を収めたCD&DVDが『THE FEB』。
一部先行発売もしているようだが、正式なリリースは2月28日。

400それに先立って2月23日にはアルバムの収録場所となった横浜STORMY MONDAY。
そして、その5日後、27日には原宿クロコダイルでそれぞれ発売記念ライブが開催される。

410v最後の最後になるが、予告編が仕上がっているので紹介しておこう。

「23日と27日、2月生まれの我々(一部を除く)がお待ちしていま~す!」

420伊藤広規の詳しい情報はコチラ⇒ITO KOKI official web site

Sm 

200
(一部敬称略 2017年11月2日 LIVE CAFE STORMY MONDAY YOKOHAMAにて撮影)