THE CLASSY ROCK GIG / Koki Tetragon <前編>
Gregg Allmanが口の中でゴニョゴニョ歌うせいにしてしまっては熱心なオールマン・ファンに怒られること必定だが、「Stormy Monday」って「♪They call me stormy Monday」と歌っているのかと長いこと思っていた。
だって「オレのこと、『嵐の月曜日』って呼んでくれ」なんてカッコいいじゃんね。ハウンドドッグみたいだ。
コレは完全に私の思い違いで、Albert Kingの「The Hunter」と混同していた。
T-Bone Walkerに謝らなくちゃいけないね。
この「Call me ~」は他でも赤っ恥をかいたことがあった。
以前にも書いたことがあるのだが、初めてMarshallに行った時、時の重役たちや関係部署の担当者たちと中華料理店で昼食を摂った。
「そうだ、自己紹介ではコレを言おう。きっとウケるぞ~!」と事前に仕込んでおいたセリフを披露した。
食事の間に「チョット自己紹介させてください」と切り出しておいて、こう言ったのだ。
「I was born in 1962. Please call me 'Bluesbreaker'」
ドッカ~ン!大ウケ~…となる予定だったのだが、席にいた全員がビックリして私のセリフに凍り付いた。あのシラケぶりは本当にスゴかった。一世一代のドッチラケだった。
英語は通じていても、全く意味が伝わらないようだった。アータ、Marshall初のコンボ・アンプ、「Bluesbreaker」の正式な型番は「1962」じゃないのよ!
ビックリしたのはこっちだよ。
話を戻すと、この曲の正しくは正式な題名は「Call it Stormy Monday (But Tuesday is Just as Bad)」」といって、歌もこの通り歌っている。
「Stormy Monday進行」なんていうブルース・コード進行のバリエーションが有名だが、オリジナルは至ってシンプルな12小説のブルースだ。
変形ブルースだったら、Charlie Parlerの「Blues for Alice」とかTommy Flanaganの「Freight Train」の方が何枚も上手だけどね。ロックの人、誰かこのコード進行でブルースを演奏しないかナァ。
さて、「Stormy」…ここではチョット歌詞について触れたいんだけど、「一週間」っていう歌があるじゃない?「♪日曜日は市場に出かけ~」っていうヤツ。
この「Stormy Monday」って、同じようなコンセプトの歌詞で、失恋の一週間を歌っているんだよね。
月曜日は「嵐」!
火曜日は「悪」。
水曜日は「マァ、悪」。
木曜日は「哀しいわ~」。
金曜日は「鷲が飛ぶ」。
土曜日は「遊びに行くぜ!」。
日曜日は「教会へ行くのだ」。
面白いよね~。
ココで知っておかなければならないのは金曜日のこと。
歌詞は「The eagle flies on Friday」となっているんだけど、なんでいきなり「鷲」か?
コレ、「The eagle flies」とはアメリカの表現で「給料が出る」という意味なのね。
アメリカの紙幣に鷲のデザインが施してある(あった?最近見てないからわからんな)ことから、そういう表現をするようになったらしい。
だから土曜日には遊びに行けるワケ。アメリカはかつて週給がポピュラーで、金曜日が給料日だったからね。
そこで湧いてくる疑問はTraffic。
『When the Eagle Flies』というアルバムがあるでしょ?アレ、給料日の歌だったの?
イギリスの紙幣はエリザベス女王の姿が印刷されていても「鷲」の姿は見当たらない…と思って歌詞を調べると、少なくとも「給料」は全然関係ないもっと文学的な内容だった。
「給料」ということとは関係なしに、The Kinksの「Rainy Day in June」とかElton Johnの「Skyline Pegion」とか(訂正!コレは「鷲」じゃなくてもちろん「鳩」。「翼を広げてどうのこうの…」という歌詞が似通っているのでつい混同してしまった!)、「鷲」に関する歌詞の曲ってイギリスにも結構あるんだよね。
それにしても、この人、日曜日にチャンと教会に行くところがエライね。
「金持ちの彼女ができて遊んで暮らせますように…」とお願いするのだろうか。
今日のオープニング・トークは脱線が脱線を呼んでおりますが…。
いつも言っているように私は本当におつきあい程度にしかブルースを聴かないので、あんまりノメリ込むとすぐにメッキがハガれてしまうのでそろそろ結論。
Muddy Watersに「The Blues Had a Baby and They Named it Rock and Roll」という曲がある。
「ブルースには子供がいて、その子たちは『ロックンロール』と名付けられた」…まったく題名の通り。
この曲も歌詞がすごく面白い。
Muddy Watersも、James Brownも、Ray Charlesも、John Lee Hookerも、Otis Reddingも「ブルースには魂がある」と言ったとサ…その子供がロックンロールなんだよ」という歌なんだけど、ヴィクトリア女王そう言ったことになっているところがスゴイ!
今では現エリザベス二世女王がイギリスの在位期間最長の国家元首になったが、この曲が作られた頃まだヴィクトリア女王がトップでイギリス最強の女王だった。
もちろんコレはシャレだけど、Muddy Watersが言っていることはすこぶる正しい。
「魂」が宿る音楽がブルース、そしてその子供が「ロック」なワケ。
コレはどうしようもない事実。戸籍は歴史的な音源を聴けば容易に調べることができる。
どこでどうおかしな血が混ざってしまったんんだか、今のロックは絶対にブルースの子供じゃないよね。80年代以降、血脈が途切れて「ロック家」はお金持ちの家からやってきたヨソの子ばっかりになっちゃった。
コレが言いたかっただけ。
ブルースって歌詞がスゴイんだよ。
とにかくスゴイ。
あの歌詞がダイレクトに理解できないのは悔しいナァ。
曲は何しろ全部同じなんだから、歌詞を理解しないでブルースを聴くのは、その魅力の半分も味わっていないことになるのではなかろうか…コレが私の最新のブルース感。
何かの突然変異で今の若い人たちが若い感性で積極的にブルースを取り入れたら面白いだろうナァ…これが私のリスナーとしての最近の夢。
さて、今日から3日間、横浜は関内、LIVE CAFE STORMY MONDAYからお届けする。
ドワッ!
ステージにMarshallのフル・スタック!
それにASTORIAにNATAL。
いい光景だ…私の眼がよろこんでる。
このステージに立つのは…
Marshall Blogでもおなじみの日本を代表する低音にしてグルーヴ・マスターの広規さんは、今年で音楽生活40周年を迎えた。
例によってやってみるか…40年前の出来事。
40年前は1977年。昭和で言えば52年。
私は中学3年で、ハード・ロックに飽きてきてプログレッシブ・ロックに夢中になり出した頃だった。
ラーメンが260円、銭湯が120円だったって(今は460円)。コーヒーは260円。
国鉄の初乗り運賃は60円!都バスは90円、タクシーの基本料金は380円だったって。
米ドルはこの年291円に始まって、241円で終わっている。円が50円も上がった。まだグイグイと日本が国力をアップさせていたいい時代だ。
英ポンドは460円ぐらいか…今は145円/£ぐらい。Marshallがまだベラボウに高かったのもうなずける。
レコードは2,500円だった。コレはハッキリ覚えてる。
ああ、「青酸コーラ事件」ってのあったね。
このころは「ロッキード事件」で大騒ぎしていたんだ。飛行機が学校になっただけで、あの方々のやることとレコードの値段は今でも変わらんね~。
総理大臣は福田赳夫。アメリカ大統領はこの時就任したカーター。
映画は「ロッキー」に「未知との遭遇」、「幸せの黄色いハンカチ」。今みたいにマンガ映画なんか全くお呼びでない。まだ大人のエンタテインメントと子供のそれが分かれていた時代とも言えよう。
ヒット曲はジュリーの「勝手にしやがれ」と「憎みきれないろくでなし」、そして何といってもピンクレディーのオンパレード!
「ペッパー警部」、「S.O.S.」、「カルメン'77」、「渚のシンドバッド」、スゲエな…「ウォンテッド」もこの年だ。
それとキャンディーズの「やさしい悪魔」とか。
「北の宿から」や「津軽海峡冬景色」も1977年。
まだ「花の中三トリオ」も大活躍。
ダメだ!とても書ききれない!
今の音楽界とは比べ物にならない。土台、曲のクォリティが今の音楽とはケタ違いだ。
誰か、今の音楽界を忖度してやってくれよ!
こんな年から広規さんはプロでベースを弾いている。
コレは広規さん40周年記念イヤーのロゴ・サイン。三上雅浩さんのデザイン。
広規さんはその40周年という節目にライブ・アルバムを制作した。
それが上のSTORMY MONDAYで収録した『The Classy Rock GIG at Yokohama STORMY MONDAY』。
ジャケットは、2012年の『Relaxin' at IWAKI ALIOS』以降、広規さんのアルバムのデザインを手掛ける「やましたみか」の作品。
内部に使用されているライブ写真は、今回も私が撮ったモノをご採用頂いた。
当日、みかさんから撮り方のリクエストを頂戴してはいたのだが、撮影スペースや照明の関係でなかなか思うようにいかず大苦戦を強いられた。
しかし…
その状況を忖度して頂き、バッチリと写真を収めこんでくれた!
みかさんとの仕事はこれで6作目となる。
シンプルで上品、それでいて深みのあるデザインがいつも素晴らしい。
私はと言えば、写真の他に今回もライナー・ノーツを担当させて頂いた。
そして、またやっちまった!
制作スタッフの皆さん、ゴメンナサイ。
あれほど「3,000字」と言われていたのに、例によって書き出したら止まらない。
少しずつ長くなっていって、一時は9,000字近くまで膨らんでしまった。
John ColtraneやSteve Millerのこととかをもっと書いたんだけど、考えてみりゃ「Marshall Blogがあるわ…」と思ってバッサリとカットした。
それでも削りに削って、7,000字。
かかる状況を忖度して頂き、何とかすべて収めこんで頂いた。
この世は「忖度」でできているんだナァ。
ナニが書いてあるかはCDを買ってのお楽しみ。Marshall Blogとの重複はホンの少し。
バンド名はKoki Tetragon。
僭越ながら私のアイデアをご採用頂いた。
ナゼ、そんな名前か…はライナー・ノーツに書いてあるのでそちらをご参照いただきたい。
アッレ~、コレ、この分だと案外マーブロに書くことなくなっちゃうな…。
とにかく!広規さんを中心とした音楽達人の名人芸がテンコ盛りだ。
まずはそのCDに収録されている極上サウンドの素を紹介しておく。
最初に触れるべきは広規さんのMarshall。
ヘッドは1979年製の1992 SUPER BASS。
「JMP」と呼ばれているこのルックスは1981年にJCM800シリーズに移行するまで。
1972年までは「T1992」というトレモロつきのモデルも生産していた。
スピーカー・キャビネットはJCM800時代のベース用4×12"の1984。
「JCM800時代」というのは、この型番はベース用のキャビネットとして何度も使われており、その歴史はとても古く、最古の1984はストレート・タイプの1960として、何と1964年に登場している。
この1984は3代目のモデルで、このあと第5世代まで生産された。
大二さんのNATALはメイプルのF20というキット。フィニッシュはシー・スパークル。
会場の規模を考慮し、20"バスドラムのキットが使用された。
キットのオーナーはサイバーニュウニュウのセミメタルA太郎氏。
この場をお借りしてご厚意に深謝申し上げます。
スネアはNATALのステイヴ・シリーズ。
大二さんが叩くと説得力の塊のようなサウンドが飛び出してくる。
赤いヤツね。
ASTORIA CUSTOM。
1チャンネル・モデル。
ビロードのような美しいディストーション・サウンドが身上だ。
その奥に見えるのはお店のVALVESTATE…なつかしい~!
松川さんの足元のようす。
基本的にディストーション・サウンドはASTORIAで作っておいて、ブースター系のペダルでサウンドに色付けを与えていた。
窪田さんの後ろにもASTORIA。
こちらはクリーン・サウンド専門のASTORIA CLASSIC。
実際には使用されることはなかった。
そして、広規さんのライブに欠かせない物といえば…この南阿蘇のキャラメル・プディング。
当日会場でも大人気だった。
ソロソロ食べたいな~、オーダーしよう、そうしよう!
キャラメル・プディングの詳しい情報はコチラ⇒オフィシャル・ブログ
会場はこんな感じ。
写真ではよくわからないかも知れないが、会場の奥には数台のビデオカメラが設置され、動画の撮影も敢行された。
そして、その動画もDVDとなってCDと同時に発売される。
タイトルはCDと同じ『The Classy Rock GIG at Yokohama STORMY MONDAY』。
こちらの方でも光栄なことに私が撮った写真をご採用頂いた。
ライナー・ノーツはバンド・メンバーの対談だ。
ん~、みかさんうまいことやったな~。
…というのはね~、ここの現場はメンバーさんのポジションによって光の量が極端に違うんですよ。
カメラというモノは明るいものと暗いものを同時に均等に撮ることはできないでね~、どちらかに露出を合わせなければならないことになる。
それをシャッターを切るたびに考えて、判断して、カメラを操作してるんだけど、そう簡単にいくとは限らない。
要するにこのステージの場合、松川のところだけが明るすぎちゃうんだね。
それをデザイナーのみかさんが勘案してうまく写真を料理してくれたというワケ。
ですので安心してお買い求め頂けます。
収録曲はCDと同じ。
で、ですね、ライブ会場やCDショップ(TOWER RECORD、HMV、ディスクユニオン)でCDやDVDをお買い上げの方には「オマケ」がつくよ!
例えば、表がKoki Tetragon、裏がSTORMY MONDAYの特製ピック。
または、CDジャケ・デザインの缶バッジ。
さらにCDやDVDに収録されなかった曲を収録したCDなども用意されている。
すべて初回プレス盤のみの早いもの勝ち特典。
さて、実況を元に戻して…向こう正面の私!
「はい、私です。こちら狭いです!」
カメラの設置場所などを確保する必要などもあったので、お客さんは20人限定。
ナゼ、こんなにタイトな環境で演奏したのかの理由は次回に譲るとして…それでもさすがにキツイ!
さあ、いよいよ演奏が始まったぞ!
伊藤広規の詳しい情報はコチラ⇒ITO KOKI official web site
『THE CLASSY ROCK GIG 』のCDとDVDの発売は4月5日です!
1965年創業のNATAL(ナタール)はMarshallのドラム・ブランドです。
★NATALの詳しい情報はコチラ⇒NATAL Drums Official Web Site(英語版)
★NATAL製品は全国有名楽器店にてお求めください。
★NATALドラムは高田馬場バズーカスタジオでお試しになれます。バーチ、メイプル、そしてアッシュのキットの他、各種スネアドラムも用意しています。ドラマーの方、「NATALの部屋」ご指名でお出かけください。
詳しくはコチラ⇒バズーカスタジオ公式ウェブサイト
(一部敬称略 2017年1月30日 関内LIVE CAFE STORMY MONDAYにて撮影)