FATE GEARのニュー・アルバム『7 years ago』
美しいステンド・グラス。
ステンド・グラスってのはいいよね。
宗教的な関わりを持っていなくても、見る者を何となく清廉な気持ちにしてくれる。
でも、ステンド・グラス、すなわり「Stained Glass」の「stain」ってのは単語としては「汚れ」という意味なんだよ。
「Stained」なんてバンドもいるね。
もちろん「Stained Glass」の「stained」の方は「着色された」という意味ね。
教会は結構スキ。
ロンドンを歩いていて名も知らない古い教会に出くわした時、チョコッと覗くだけでも大変に心が落ち着くものだ。
そういえば、コレも以前書いたことがあったけど、ニューヨークの5番街にある有名なセント・パトリック教会に早朝に行った時のこと、キチっとネクタイを締めた出勤前のビジネスマンが何人も来ていて朝の礼拝をしていた。
ひとりのサラリーマンがベンチで寝ているホームレスを見つけると、無言で財布を取り出し、スッとお札をそのホームレスの上に置いて、そして、あたかも何事もなかったかのように黙って教会を出て行った。
その時、「コレが『mercy』ってヤツか…」とそのステキな光景を目の当たりにして、朝早く教会を訪れた価値があったワイ…と思ったが、フト、「果たして自分にはコレができるだろうか?」と自問自答したね。
まずしないし、できないだろうナァ。
ついでに書くと、コレもビックリしたんだけど、ホームレスがマクドナルドに入って来て、テーブルに付いてすぐさまテーブルに突っ伏して居眠りをしてしまった。
それに気づいた店員がスススとそのテーブルに近寄って来た。
私はテッキリ「出て行ってください」と追い出すのかと思った。
ところが、その店員の手にはあたたかいコーヒーが握られていて、そのテーブルに突っ伏して寝ているホームレスの頭の横にそのコーヒーをそっと置いて、ナニも言わずカウンターに中に戻って行ったのだ。
コレも結構驚いたな…映画を観ているんじゃなくて、目の前で、しかも音楽もナニもなしに無音で起こった小さなドラマだったから。
アメリカって「国」は全く狂っているけど、「人」は捨てたもんじゃないんだよね。
ま、どこも同じか…。
「あ~、どうせまたロンドンの教会で撮って来た写真を載せて『今日は名所めぐり』じゃないんだけどね~、なんて言うんだろ?」なんて思ってるでしょ?
違うんよ。
敢えて場所は伏せるけど、コレ、東京の隣県の街中にある教会なの。
ビックリするよ。
外から見ると何の変哲もない近代的なビルディングなのね。
でも、中に入って階上に上がると、4フロア分や5フロア分は優にあろうかという巨大な吹き抜け構造になっていて、そこが美しい教会になっているのよ。
今回ココにMarshallファミリーのギアが運び込まれたのは、FATE GEARのニュー・アルバムのリード・チューンのミュージック・ビデオを撮影するためなのだ。
実はFATE GEARはチームの形態を大幅に変更した。
どういうことかというと、4人のコアとなるメンバーはそのままに、必要な人材を都度エキストラ的に迎える、いわゆる「プロジェクト」方式に移行した。
「Steely Dan式」と言えばわかりやすく思う人も多いかもしれない。
その「クルー」と称するメンバーとは…
ギターはMina隊長。ベースはErika。
ペダルやスローンもNATALだ。
ムービーには一切映らないんだけどね。
ここまで気を遣うところがスゴイ。まるで黒澤明だ。
黒澤明は『赤ひげ』で、中を一切撮らないにも関わらず、薬箪笥の引き出しにホンモノの薬を入れて撮影したという。
リアリズムが違って来るのだそうだ。
さて、今回撮影するのは4月にリリースが予定されているニュー・アルバムに収録されている「7years ago」という曲だ。
コレが曲と同名のニュー・アルバム『7 years ago』。
我々世代はロジャー・ディーンを連想せずにはいられないタッチ。
ファースト・アルバムのジャケットのデザインもHarukaちゃんの手によるもの。
コレが出た時、「ジャケットがいい」って書いたでしょ?
本人に尋ねたら、ホラね、Harukaちゃんは正式に美術の教育を受けているんだって。
やっぱりその道をキチンと勉強した人の作るモノは一味違うもんよ。
歌詞カードの背景にはムービーを撮影した教会の写真があしらわれている。
で、私はというと、上のアーティスト写真とイメージ写真の撮影を担当させて頂いた。
それがサ、また例によって時間がなくて大慌てで撮ったのよ。
ムービーの撮影が終わったところで照明をセットして、光をキメて…。
メンバーの皆さんには転換の時間を省くために近くで待機をしてもらっておいて、次から次へと超特急で撮影した。
下の写真もしかり。
隊長にとにかくジッと立ってもらっておいて、あの手この手でシャッターを切りまくった!
「30分で!」というのははじめから不可能だったのはわかっていたけど、大分早く片づけた。今までで一番大慌ての現場だった。
メンバーの皆さん、ご協力ありがとうございました。
すごくいいロケーションだったので、時間さえあればもっと色々やってみたかった!
でも、面白かった。
さらにヴァイオリンのJillが加わった。
私はプログレ愛好家なのでヴァイオリンが入ったロックって好きなんだよね~。
Jillちゃんの愛器もギアだらけ!
駒の辺りが光ってるんだぜ!
いきなり「♪惨劇の鼓動」という絶叫から始まるこの「7 years ago」。
はじめ聴いた時ビックリして飛び上がっちゃったよ!
FATE GEARらしい息もつかせないスリリングなスピード・チューン。
中間のギター・ソロの落ち着いたプレイが印象的だった隊長。
頭を上下左右に振りきっての大熱演はHarukaちゃん。
こういう仕事はドラマーさんが圧倒的に一番大変な目に遭います。
「多人数制プロジェクト」という触れ込みに生まれ変わったということだが、こういうのもいいのかもね。
アルバム制作に関しては、その都度、画家が必要な色の絵の具を選ぶようにミュージシャンを選んで理想とする音楽を作る。
ソロ・アーティストというのはそういうモノだけど、グループでやったっていいじゃない。
昔はバンドというのは「運命共同体」という体をなしていたが、今はひとりのミュージシャンはいくつものバンドを掛け持ちしているのが普通だもん…もうこんな形態があってもおかしくはない。
そもそも、レコーディング技術の発達により、「CDとライブでの生の演奏がまったく別モノ」なんてのは常識になってしまったのだから、『Revolver』以降のビートルズのように、ライブでの再現性を考えずにスタジオの制作物に徹底的に凝るのもいいことだと思う。
爆音の向こう側から聞こえて来るヴァイオリンの音色がいいんだよね~。
ヴァイオリン1本あるのとないのとでは曲の印象がガラリと変わるから不思議だ。
隊長の後を引き継いで華麗なソロを聴かせるYuriちゃん。
スゴイんだよErikaさまのアクションが!
以前観たライブの時もそりゃスゴかったけど、この撮影でもスゴかった。
当然何回もテイクを重ねるワケなんだけど、毎回燃え尽きそうな激しい動きで曲のドラマ感を豊かにした。
Manamiちゃんと荊ちゃんのコンビネーションもバッチリ!
ところで、この多人数制、アルバムでは大山まきちゃんが筆頭シンガーとして、4曲であの激ノドを披露しているのがうれしい。
まきちゃん、カッコいいでね~。
そして、ナタ友でもある山口PON昌人氏もアルバムにコメントを寄せてくれている。
私はPONさんの紹介でまきちゃんを知った。
広がるね~、Marshallファミリーの輪!
ハイ、休憩!
お仕事とはいえ大変ですよ、同じことを何回もやるってのは。
でも、同じことを同じように何回もできるのが「プロフェッショナル」なんですよ。
私には到底ムリ!
そして出来上がったのがコレ!
アルバムが発表されるまでの間、このムービーで新生FATE GEARとMarshall、NATAL、EDENとのコラボレーションをお楽しみアレ!
FATE GEARのニュー・アルバム『7 years ago』は4月11日の発売。
ひと足先に聴かせてもらったけど、壮大な序曲「Prelude of Earth」に始まるFATE GEARの新しい世界は「多人数制」の利点を活かし、しかも、Mina隊長を中心にしたバンドのコンシステンシーが最後まで貫かれている一大ガール・メタル・アルバムに仕上がっている。
FATE GEARにはもうドンドン好きなことをやって暴れまくってもらいたい!
MarshallとNATALとEDENと一緒にね!
来る3月22日は初台DORRSで開催される「闘魂地獄祭り~第9獄~」に出演。
他にもアルバムのリリースに向けて色々なイベントが予定されているので、ウェブサイトをチェックして欲しい。
FATE GEARの詳しい情報はコチラ⇒FATE GEAR official site