【Music Jacket Gallery】プロモーション・アルバム特集 <後編>
<後編>はいつも通りギャラリーの平面展示のアイテムをご紹介。
今回の『プロモーション・アルバム特集』では、ただでさえ一般の人の目には触れる機会が少ない宣伝用素材をご覧頂いたが、それの変形や立体のアイテムだからしてレア度はアップ!
お楽しみあれ。
解説は植村さんのオリジナル原稿に私が勝手に書き足しております。
★VARIOUS ARTISTS / AN INVITATION OF HEART OF VILLAGE GREEN (1989、1990)
シュガー・ベイブの初代マネージャー、元パイドパイパー・ハウスの店主で現在も様々な企画・監修者として知られる長門芳郎氏が設立したレーベル「ヴィレッジ・グリーン」のプレゼンテーション用CD。レーベルのコンセプトである人間味溢れるあたたかさ、アコースティックでシンプルな音楽にフィットした手作り感のあるデザインのブックレットやレーベルが印象的だ。
Vol.2はケース入りの2枚組だ。「ヴィレッジ・グリーン」なんてレーベル名はやっぱりThe Kinksからかしらん?
キンクスはいいよナァ。
コレはレイとデイヴの生家の前にある「クリソルド・アームズ」というパブ。
2人はココで初めて人前で演奏した。
店内に飾ってあるパネル。
「Fortis Green(フォーティス・グリーン)」というのはこのパブの近く、すなわちレイとデイヴが育った町の地名。
コレが『Village Green Preservation Society』の着想の原点なのかな?…と思って。
「The Kinksのロンドン」という特集を【名所めぐり】でやるつもりなんだけど、準備がゼンゼン進まん!
★VARIOUS ARTISTS / ビートルズ企画CD (1990)
ビートルズを擁する東芝EMIならではのトリビュート企画『ALL WE NEEDS IS LOVE~愛こそすべて~』のために作成されたプロモCD。
この当時、再結成していたサディスティック・ミカ・バンドの高橋幸宏・小原礼・桐島かれんと、高野寛によるカバー4曲が収録されている。
60年代に流行した4曲入りのコンパクト盤を模したレトロなデザインが秀逸。
★ナーヴ・カッツェ / 歓喜 (1991)
NAV KATZE (神経質な猫)とネーミングされた女性のトリオは、ブレイクこそしなかったがその独自の音楽性によってコアなファンを獲得した。
このプロモCDは1991年4月のデビュー・アルバム用のもの。
リーダー格の山口美和子の手書きの歌詞やファンタジー風味あふれるメルヘンチックなイラストを用いたブック仕様のプロモCDは、彼女たちの音楽性をアピールする最適なツールといえよう。
★FUNKAHIPS LIVE SHOW / FUNKAHIPS ALL STARS SONY MUSIC ENTERTAINMENT (1989)
日本を代表するR&B/ソウル・シンガー、久保田利伸を中心にGWINKO、AMAZONS、富樫明生、ブラザー・トム / コーンなどで結成されたFUNKAHIPS ALL STARSのライヴを業界向けにプレゼンしたCD(シングル発売のみで、アルバムは未発売)。
三面見開きのロング・サイズの特殊パッケージの内側は、Pファンクやファンカデリック・テイストのイラストレーションに彩られ絶妙な味わいを醸し出している。
★VARIOUS ARTISTS / THE MUSIC PEOPLE (1972)]
1968年に創立されたCBSソニー の5周年記念に製作されたプレゼン用の3枚組LP。
クラシック篇、ポピュラー篇、邦楽篇に分かれ、それぞれのライナーノーツに5年間の歩みとヒットのエピソードなどが綴られている。
ジャケットのイラストは和田誠氏によるもの。
このLPは当時ヒットしたギフト・パック・シリーズで販促のアルバイトをしていた植村氏が社員の方に頂いたものだそうだ。
大事に保管しておいたんだね。
この和田さんのイラスト、いいよね~。私にとってはナンといっても石丸電気のレコード用の黄色い紙袋。
アレ、途中でデザインがアップデイトされたんだよね。
考えてみると、LPの時代はお店の包装袋も大きくて楽しかったね。
滅多に買えないレコードだから紙袋まで大事に大事に取っておいたもんです。
石丸電気の紙袋も山ほど持ってたんだけど、いつの間にかなくなっちゃった。
ああ、またどうにかして手に入らないものか…と思っていたら近所の骨董品屋に置いてあったレコードの箱の中で発見した!
も~、どうにも欲しくて、欲しくて…。
箱の中の何がしかのレコードを買って、オマケにその袋を付けてもらおうと思ったんだけど、どうにも買いたいレコードがない。
そこで、ダメ元で「袋だけ売ってください!」と頼み込んでみた。
はじめ判断に困っていた店のオジちゃんが「ん~、袋だけ売って金を取るワケにもいくめぇ。ええい、持ってけドロボー!」と景気よく譲ってくれたのが下の袋。
コレはビニールだけど、昔は紙製だった。
表は、クラシックの人たち。
ブルーノ・ワルターとかカール・ベームとかマウリッツォ・ポリー二が出ているのが何となく時代を感じさせるナ。
裏はポピュラー音楽。
今回の<中編>で取り上げたけど、ジョージ・ベンソンの姿を見ると結構最近のモノというイメージがある。
イヴ・モンタンが出ているのが渋い。 チョット、和田誠さんで脱線。
2019年の10月に亡くなってしまったのはとても残念だった。
ナゼ、お亡くなりになった時のことを覚えているのかというと、私はちょうど上海にいて、空港に向かう帰りのバスの中で見た携帯で知ったのでとても印象に残っているのです。
同行していた若い連中にその訃報を伝えたところ、ビクともしなかったことはチョットした驚きだった。
私は、イラストは言うに及ばず、和田さんが書いた映画に関する文章が好きなのね。
今、ちょうど姉妹ブログの『Shige Blog』に映画の思い出について書いているんだけど、私は音楽に狂う前は父の影響で幼い頃から洋画に夢中だった。
そんなだから、和田さんの異常なまでの記憶力に基づいた感想とも解説ともつかない文章を読んでいると何とも幸せな気分になるワケ。
私のキライな表現のひとつではあるが、今よく言う「愛を感じる」っていうヤツ。
私もどうでもいいことに関する記憶については、タマに人から驚かれるが、和田さんの記憶力は超ド級だ。(「超ド級」についてはコチラをどうぞ⇒FATE GEAR最新作『KILLERS IN THE SKY』MV撮影レポート~私の横須賀)
やはり幼い頃に観ているからなのであろうが、スタッフにキャスト、役者の演技はもちろん、セリフからカメラワーク、音楽まで細かく覚えていて、まるで昨日観て来たかのようにイキイキと語るんだよね。
映画の中の名セリフを集めた『お楽しみはこれからだ』の最初の3冊(4冊目は大分後になってから上梓された)と下段の山田宏一さんとの対談集は夢中になって読んだ。
そして「映画ってこうやって観るものなのか…」と、映画の本当の楽しみ方を知ったような気になったのは1980年代に入った頃か、はたまたその前だったか…やっぱり私の記憶力はダメだね。
コレらの本は今でも時々引っ張り出しては読んでいる。
ちなみに「お楽しみはこれからだ」はガーシュインの「Swanee」でブレイクしたアル・ジョルスンの生涯を描いた『ジョルスン物語(The Jolson Story)』に出て来るセリフ。
オリジナルは「You ain't heard nothing yet!(あなたはまだナニも聴いていない)」という「ain't」と二重否定を使った下品な文章。
ジョルスンのペット・フレーズだったのかな?
けだし名訳!
余談ながら、1945年のジョージ・ガーシュインの伝記映画『アメリカ交響楽(Rhapsody in Blue)』にスターになってからのアル・ジョルソンが出て来るんだけど、コレがとてもいい感じ!
もうひとつ余談。
私はこの和田さんの手引きで『ジョルスン物語』を観て、後にヒッチコックの『引き裂かれたカーテン(Torn Curtain)』で重要な役を演じるルドヴィク・ドナス、あるいはルードヴィッヒ・デナートという俳優を覚えた。
★スピッツ / INTRODUCING スピッツ (1990)
スピッツの業界お披露目用のCDだそうだ。
スピッツは1990年3月に初のCD『ヒバリのこころ』でインディーズからデビュー。
デビュー半年前に制作されたこのプロモCDには、1989年9月にデモ・テープとしてレコーディングされた特別な音源が収録されている。
このインディーズCDが未だにかなりの高値で売られていることを考慮するとその貴重さは推して知るベしだ。
★BONNIE RAITT / “PROPER” PIZZA (1991)
1991年の『LUCK OF THE DRAW』発売時にEMIミュージック・ジャパンが独自に制作したプ
ロモーション用のCD。
そのアルバムからは5曲、前作の『NICK OF TIME』からは3曲を収録している。
宅配ピザの箱を模したこのプロモCDは、「EIGHT HOT SLICE」といったメニューや、レーベル面がピザになっている凝りよう。
ヒット曲をすばやくデリヴァリーするというメッセージが込められているワケね。
ちなみに「luck of the draw」は「運任せ」、「nick of time」というのは「in the nick of time」という風に使って「ちょうどいい時に」という意味を表す。
★FRANK ZAPPA / FORMULA EXPLOSIVA ZAPPA (1998)
1993年に没してからも過去の貴重な音源が尚もアーカイヴとして精力的にリリースされ続けているフランク・ザッパ。
これまでに世に出た作品は彼の残した音楽マテリアルの2~3%にしかすぎないというのだからまだまだ楽しみだ。
この4枚組CDボックスは、1998年にRYKODISCとしてのカタログが完成したことを記念してブラジルのみの限定でプロモーション用に作成された極めてレアなもの。
CDの他には、Tシャツ、ポスター、シール(アイロン・プリント用)、ポスト・カード、ピンバッチが洗剤(?)の箱に同梱されている。
Tシャツのデザインは『We're Only in It for Money』のジャケット裏から。なんかいい加減な雰囲気もしないでもないな…。
昔チューインガムについていた水に濡らして台紙をペロッと剥がすタイプのシール。
何だか色んなものを好き勝手に組み合わせて作っちゃった感じがするね。
それにしても肝心のCDのセレクションがサッパリわからん。
『Cheap Thrills(廉価ベスト盤)』に『Grand Wazoo』、『Zoot Allures』に『Sheik Yerbouti』だゼ。
まったく理解できん。
そこが無責任感丸出しでまた面白い!
★PAUL McCARTNEY / JAPAN TOUR‘90 SPECIAL (1990)
ポール・マッカートニーの初来日を記念して日本だけで特別に作成されたプロモCDがコレ。
パッケージ自体はいわゆるプロモCDの典型だがこの収録音源はかなり貴重なもので、ポール本人が日本向けに来日ステージのことや曲作りのことなどをしゃべっている。
「日本人は冷たい」とか言っているのかな?
当時の担当者がイギリスへの出張帰りにロンドンでポールに直接会ってテープ録音をして来たという。スゲエ。コレはロンドンのソーホーにあるポールの事務所。
正確にはポールが運営する音楽出版社。昔はカーテンが開いていて中で従業員が忙しそうにしていたんだけどね。
いつの頃からかこんなんなっちゃった。
★HINO TERUMASA / ON THE ROAD (1989)
日野皓正の1989年『ON THE ROAD』の発売にあわせてプロモーション用に作成されたCD。
このアルバムにはラテン・テイストに溢れる作品が多く収録されているので、それを印象付けるためにコーヒー豆などを入れる麻の袋にCDを収納している。
パッケージとしては非常に目立つが、やたらとCDが取り出しにくく、CDに麻の毛が付いてしまうとのこと。
★VARIOUS ARTISTS / 25 ANNIVERSARY (1991)
日本の音楽出版社(音楽の原盤・出版権を持つ会社)の中でもトップ・クラスのフジパシフィック音楽出版の創立25周年を記念してプレゼンテーション用に作成された2枚組CD。
興味深いのは「CALENDAR SONGS」と題して、同社のもつ管理楽曲を季節や月といった括りでリストアップし、その中から25曲(25周年にあわせて)を収録している点だ。
今回も見応え充分のコレクションでありました。
ジャケットって本当に奥が深いですね~!
現在は休止しているが、MJGは予め閲覧を申し込んでおけば誰でもご覧になれます。
再開の暁にはゼヒ足をお運び頂き、レコード・ジャケットの楽しさと重要性を味わってくださいまし。
MJGの詳しい情報はコチラ⇒[金羊社]MJG常設展公式ウェブサイト
さて、最後に…。
このレコード・ジャケットを提供しているのは先ほどから何度もお名前を拝借している日本屈指のコレクター、植村和紀さん。
何度かMarshall Blogにも直接ご登場頂いてきた。
植村さんのコレクションの情報はコチラ⇒The Amazing Uemura Collection~Music Jacket Galleryの源
その植村さんが西荻窪で経営されているカフェがその名もズバリの『MUSIC JACKET GALLERY』。
時折ココでしか聴けないライブも開催している最高の音楽空間。
やさしい植村さんが笑顔で迎えてくれます。
音楽好きの方はゼヒお立ち寄りください!
MUSIC JACKET GALLEYの詳しい情報はコチラ⇒公式Twitter
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