『ウッポニウム・デヴァンダの新しいテキスト』~梅村昇史の作品展
先週末、Marshall Blogの一周年を迎えるにあたり、たくさんのお祝いや励ましのお言葉を頂きました。この場をお借りしまして厚く御礼申し上げます。
これほどまでに皆様のご支持を頂戴していると、もはや街中でヘタなこともできず、鼻クソをホジりながら中古CDを探すなどもってのほか!…などと改めて気を引き締めた次第です。
イヤ、中古CDを見る時は真剣ですので本当は鼻はホジりません。
そんなことよりも、とにもかくにも皆様に愛され、可愛がって頂けるような紙面づくりに邁進したいと思っております。
今後ともご指導ご支援のほど何卒よろしくお願い申し上げます。
さて、Marshall Blog、毎日ご覧になって頂いていらっしゃる方は毎日。一日おきにご覧になっていらっしゃる方は一日おきに御対面いただいているのがブログの先頭のバナー。
ことあるごとに触れてきたのでご存知の方も多いかと思うが、このバナーは梅村デザイン研究所を主宰する「下町のヒプノシス」、梅村昇史先生の作品だ。
私はこの梅村さんの作風が大好きで、ヴィジュアル的なアイテムが必要な時は、ナニをするにも梅村さんにご相談させていただいている。
いつも「痒いところに手が届く」仕事をしていただいていて、はじめて出来上がった作品に接する時、「オーッ!」っと感動の声をあげてしまうのを常としている。
それもそのはず、ヒプノシスは言うに及ばす、カル・シェンケルやソウル・バス、果てはデヴィッド・アレンの線描画まで私の趣味が氏と似通っているのだ。
また、梅村さんは私のフランク・ザッパの師匠でもある。ロック、ジャズ、クラシック、現代音楽に及ぶ幅広い音楽の知識やそこから発する独特の音楽論はいつも私を刺激してくれる。
その梅村氏が作品展を開いた。「梅村作品のお祭り」だから「うめまつり」だ。
時期が大幅にズレているところも梅村さんらしくておもしろい。
梅村さんの奥さまの渡辺千春さんもとても素敵な作品を輩出しているイラストレーターだ。先だっては「うめまつり」に先行して作品展を同じ場所で開催した。
会場は東陽町のレコード・ショップ、ダウンタウン・レコード。
おシャレな店内にストックされているLPは一枚一枚まるで宝石のように大切に取り扱われていて実に気持ちがよい。
CDのジャケットからタクシー会社のウェブサイト、近くの鍼灸院のチラシ…とありとあらゆる仕事をこなす梅村氏。柔軟性も抜群だ。
で、今回の作品展は「本とレコード」をテーマに作品が出展された。
ここはCDジャケットやアーティストのパンフレット等の展示。
これは泣く子もダマる大人気の「在日ファンク」のCDジャケット。
着色も柔らかいものが多く、意匠もさることながら、絵の可愛らしさにいつも感心してしまう。
これはJimi Hendrixの『Rockin' the USA』シリーズのジャケット。
同シリーズ。
Shige Blogのバナー。
そのとなりはMarshallの日本語版カタログの表紙。これをはじめて見た時は感激した。古今東西、楽器の日本語版カタログの表紙でこれよりカッコいいものはないと思ってる。
これはSoft Machineの『Floating World Live』の日本版に使われたイラスト。
手掛けたCDジャケットの実物。
ところで私の持っている『Garden Shed』のCDってレコード針のスクラッチ・ノイズがエラク目立つんだけど、皆さんのはいかが?
これは今回の作品展用に描き下ろしたイラスト集。
可愛いものからキテレツなものまで見ていてまったく飽きない。
コレ、真っ白のLPジャケット、すなわち30cm四方の白い厚紙の真ん中に穴が空けてあって、そこにレコードを入れるとレーベルが穴から顔を出し、作品が完結する仕組みになっている。
音楽関連の作品。
これは2009年にZappa Plays Zappaが初来日した時の宣伝用チラシ。都内レコード店でイベントまでやったんだよね。
思えば植村さんのご紹介で、あの時はじめて梅村さんにお会いしたのだった。
収納されている7枚のCD。もちろんこのレーベルも梅村さんの作品だ。
Soft Machine、『Floating Live』の実物。(CD盤はアタリです)
『The Soft Macine Legacy』のCDジャケット。(CD盤はアタリです)
梅村さんお得意のコラージュ技法。Clint Eastwood作品の関連サントラ。Lalo Schifrinってアルゼンチンの人なのね?知らなかった!
Jimi Hendrixの『Rockin' the USA』シリーズの実物CD。
弘田三枝子の『サルサ人形の家』。以前、SHOW-YAのところで紹介したヤツ。
本邦初公開。
これはおなじみの田川ヒロアキの『Ave Maria』のオリジナル・アイデア。まだタイトル名も入っていない。
これも同様。
双方私の撮った写真を使ってデザインされている。LPで見てみたかった!
ガラリと代わって制作サイドの意向で最終的にはこのデザインとなった。
これもカッコいい。
私なんぞの写真をどれもこんなにカッコよく使ってもらっちゃって!「馬子にも衣装」とはこのこった!
これはGreatful Deadの本。タイトルはよく見ると「スケルトンキー」とカタカナで表記されている。
以下は、梅村さんが創作した架空のシングル盤ジャケット。これがまた楽しい!
LPもそうだけど、この正方形の中の意匠というものは独特の世界を作り出す。
これらのレコードは会場で販売されている。ただし架空のレコードなので盤は関係ないものが入っている。あくまでもジャケットのデザインを味わう。
このあたりなんかこのまますぐ「おかあさんといっしょ」のサントラに使えそう。
これは氏が制作したZappaの架空のLiveアルバムのジャケット。私の宝物。ものすごくよくできていて、最近のZappaの作品のジャケットよりはるかによろしい。
Joe Traversももうデザインを梅村さんに任せればいいのに…。
ちなみにZappa Pays Zappaが初来日して渋谷のO-EASTに出演した時、Jamie Kime他のメンバーとあのさかの下のラーメン屋に言った。
みんな味噌ラーメンの熱さにヒーヒーいいながらおいしそうに食べてた。餃子が人気だった。
Joeはコーラを頼んだが、お店に置いてなくてスタスタ外へ出て行って自販機でコーラを買って戻って来た。ゼンゼンそういうの平気なのね。
私はお腹が空いていなかったのでビールを飲んだ。みんなにもすすめたが、「ビールなんか飲んだら演奏できなくなっちゃううよ!」と誰も口にしなかった。やっぱ毎晩弾いてても大変なんだね…Zappaの曲。
梅村さんのセンスのよさはこうした線描のようなシンプルな作品でより強調される。
「David Allenがスキ」というのも大いにうなずける。
でも、本人曰く「私は絵描きではなくて、デザイナーなんですよ…」。
しかし、こんなん絶対描けんな…。
これはCarnationのTシャツのデザインで不採用になったもの。すごくいいのにナァ。
これは、奥様の渡辺千春さんの作品。千春さんのイラストをポチ袋にした。作っても作ってすぐ売り切れちゃう!ウチの家内も今回ようやくゲットできた!
こちらも千春さんが取り組んでいる豆本。メッチャよくできてる!
この豆本のおかげでメガネを新調することを決心。帰り道にすぐ作ってもらえるメガネ屋さんに寄ったよ。
でも、私は自分のメガネをその場で受け取ることができなかった。え、ナゼかって?遠近両用は時間かかるんだってサ!
毎日一日中、ずっとパソコンに向かってりゃ目も悪くなるわな。え、PC関係ない?ハイ、その通りの老眼です。
私が梅村作品が好きな理由は、まず「品がある」ということ。そして、総じて可愛らしい。遊び心も満ち溢れている。何と言うか、見ていてイヤなところがまったくないのだ。
加えて、50~60年代、もっとも洗練されていた時代の欧米の意匠をキッチリと学び、それに流されることなく独自の世界を築いているということ。
そ して、「足し算と引き算の妙」とでも言えばよかろうか、アレを足しても、コレを削ってもダメ…というギリギリのバランス感覚が素晴らしい。これは色彩につ いてもいえて、作品の中で使われている色すべてが全力で引っ張り合って、あるいは押し合ってバランスを取っているような印象を受けるのである。
そんな梅村ワールドをこの作品展でタップリと味わっていただきたい。
梅村昇史の作品展は、10月25日(金)から11月4日(月)pm1:00~pm8:00、江東区東陽町ダウンタウンレコード(03-3645-0155)にて開催中。
※29日(火)と30日(水)はお店の定休日になりますので展示もお休みとなります。
梅村昇史の詳しい情報はコチラ⇒梅村デザイン研究所/パンプロファクトリー
(一部敬称略 2013年10月27日 東陽町ダウンタウンレコードにて撮影 ※記事中には実際に展示されていないアイテムも掲載されています)