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2013年10月29日 (火)

黒猫チェルシー+OKAMOTO'S presents 『ミュージックヒストリーグレイテストゴールデン☆ヒッツラボセミナーゼミナール研究所』

本当にいい夜だった。
まずは黒猫チェルシーと再会したこと…。以前、何回かMarshall Blogに登場していただいたことがあった。

10黒猫チェルシーは…

ボーカル、渡辺大知

10vギター、澤竜次

20vベース、宮田岳…今日はキーボードを担当。

30v_2ドラム、岡本啓佑。

40v_2以前にもMarshall Blogに出て頂いた…というのは、そう、澤さんはMarshallプレイヤー。

50v_2JMP時代の(JCM800シリーズが出る1981年より前に製造された)2203に1960TVを使用している。
若いのに伝統に根ざした素晴らしいギター・サウンドだ!

60v_2さて、この『ミュージックヒストリーグレイテストゴールデン☆ヒッツラボセミナーゼミナール研究所』と題したコンサート…素晴らしい企画だった。
黒猫チェルシーとOKAMOTO'Sのメンバーが研究員に扮し、ロックの生誕から発展していく過程、を調査し、時代を象徴する名曲を再演するのだ。研究員だから白衣を着ている。

合間合間にはその時代の代表的な出来事を紹介するハマ・オカモトさんの愉快なMCがはさまれる。

勉強不足で申し訳ないのだが、「OKAMOTO'S」というバンド名はメンバーの名字が全員「OKAMOTO」さんだからなんですってね。
フィンガー5の「玉元」さんと同じか…って違うよね~。Ramonesと同じく「バンドメンバー皆兄弟」的な発想なのだそうだ。

70_2出だしは50年代のロックンロール期。

80v「Jailhouse Rock(監獄ロック) / Elvis Presley」と「Johnny B. Goode / Chuck Berry」が研究された。

90vやはり、長年の風雪に耐えてきたオリジナルは強い。諸説あろうが、やはり「ロック」をさかのぼればコレに突き当たる。

100_2若いのにメンバーたちも演奏が楽しそうだ。

11060年代のMods、British Invation期。
「Jampin’ Jack Flash / The Rolling Stones」。
続いて「The Kids Are Alright / The Who」 この曲が出るたぁビックリだ。

120The Whoのギタリスト、Pete TownshendなくしてはMarshallは生まれなかった。
ところで、この時代のThe Whoの音楽がレコード会社の都合によって日本にスムーズに配給されず、浸透しなかったのは、日本のロック・シーンのひとつの大きな悲劇といえるだろう。

130The Beatlesの「Ob-La-Di, Ob-La-da」。イントロのピアノはジョンが力いっぱいヤケクソで弾いている話しも披露された。
このタイトルはナイジェリア、ベナン、トーゴあたりの2000万人の民族によって話されているヨルバ語で「人生はつづくよ」というような意味。
ベナンへ行った時、現地の人にこんなことを言ってみる…「ツライことがあってもくじけてなんかいられない。これで人生が終わりってワケじゃないもんね!」
すると、現地の人は励ますように「オブ・ラ・ディ・オブ・ラ・ダ!」と言ってくれるのだ。その時、絶対歌っちゃうな…。「デスモンド~」って。

140そして、Dylanの「Like a Rolling Stone」。
How do they feel?って訊かれて、人生、生きている内に体験してみたいことのウチのひとつ…ボブ・ディランの歌をネイティブのようにナチュラルに楽しむこと。
ビートルズは大分できるようになった。ディランの言葉もサッパリわからないワケではないが、もっと楽に理解したい。
Bob Dylanの一番好きな曲は「My Back Page」。なんか今の自分のことのよう。私も昔より今の方が若いような気がする。そうした一種の「あるある体験」をディランの歌で味わいたいのだ。
そういう意味ではBruce Springsteenなんかもいいんだろうナァ。Zappaの曲で好きなもののひとつは「Black Page」。

ジャズやファンクが好きなアメリカ人の友達がかつてスプリングスティーンはスキと言いだして驚いたことがあった。彼がそういう音楽を聴いていたなんてついぞ思いつかなかったし、私にはスプリングスティーンのよさがわからないからね。
彼が言うには「ブルースはオレたちのことを歌っているんだ。彼の歌に共感しない労働者はいないよ」。
イギリス人も同じようなことを言っていた。だからスプリングスティーンはSunderlandなどというイングランド最北の大して大きくない街まで入り込む。なぜならそのあたりはサッチャー登場以前、造船と鉄鋼で繁栄したエリアだからだ。一声で数万人が集まるのはアメリカと同じ。

そして、日本はこういう音楽環境にない。

150vここでGSを挟んで来た!実にうまい展開!
「バンバンバン / ザ・スパイダース」、「トンネル天国 / ザ・ダイナマイツ」。私が幼稚園の頃。
日本独自の軽音楽、GSが生まれたキッカケはもちろんビートルズだ。
このあたりのことを記した『さよならビートルズ/中山康樹(双葉新書)』というおもしろい音楽評論がある。
現在のロック・シーンがつまらないと思っている諸兄には興味深く読むことができるハズだ。特にレコード会社に勤める若い人には読んでもらいたいと思う。

160ロックがへヴィ化、アート化していった70年代前半を代表して選ばれたのは「Purple Haze / Jimi Hendrix」と「Smoke on the Water / Deep Purple」。
この時代のロックは間違いなくMarshallなくしては実現しなかった。
そしてすべてのロック史を通じてもっともクリエイティヴにして、一番カッコよく、最高におもしろい時代だ。

17070年代の後半に出現したパンク・ロック・ロンドンからSex Pistolsの「Anarchy in the UK」とニューヨーク・パンクからRamonesで「Do You Remember Rock’N’Roll radio?を演奏。

個人的にはこの後あたりからロックがメッキリおもしろくなくなった。
パンクとかニューウェイブというのはまったくの苦手。それでも『Never Mind the Bollocks』あたりは今聴くとナカナカいいよね。
プロデューサーのChris Thomasがこんなことを話しているのを聴いたことがある。「あれでもギターのパートは12回重ねた箇所があるんだ。そして、12回録るうち、ワザと一回もチューニングをさせなかった。チューニングを自然に狂わせて音を厚くしようとしたんだ」…これがパンクか?Pink Floydあたりがトライしそうな手法ではあるまいか?
この後、録音技術の進化にきれいに反比例するようにロックはドンドン幼稚化ししていった。おそらく今が一番ボトムではなかろうか?

180研究は日本のロックにも及んだ。
憂歌団の「嫌んなった」。こんな曲がでるとはネェ~。憂歌団、ヨカッタな~。
高校1年ぐらいの時に観て、それから大分経って就職して大阪に赴任した時に新御堂沿いのライブハウスで観た。大阪で観る憂歌団は格別だった。もちろん「嫌んなった」も演った。

190vそして、日本語ロック紛争の説明があって「はいからはくち / はっぴいえんど」。これも驚いたな。でも、私にとっても日本語ロックの最大のショックは頭脳警察だ。いまだに一番カッコいい日本語のロックだと思ってい る。
よくパンクの元祖とか言われるがやめてもらいたい。チョットとんがったロックをすべて「パンクの元祖」と形容するのは勘弁して欲しい。「punk」と いうのは「チンピラ」という意味だ。チンピラがゲーテの詩にメロディをつけたりはしない。

200_2これはずいぶん盛り上がっていた。サンハウスの「レモンティー」。サンハウスは名曲が多いからね。
以前にも書いたが、郡山市立美術館からご指名を受けて、200人以上の聴衆を前に鮎川誠さん、シーナさんと鼎談をしたことがある。お題は「スインギン・ロンドン」。
鮎川さんは『'60ロック自伝』という本を著しているほどのお方だ。何せリアルタイムだから滅法強い。「お弁当を包んでいた新聞でビートルズの名前を知った」なんていう話しをはじめ実に楽しかった。
その中で鮎川さんは自分の曲をその当時のロックに敬意を表した「改作」とおっしゃっていた。立派だと思った。サンハウスは今でも時々好きで聴いている。
今の若い人たちもなるべくオリジナル世代に近いロックを聴いて、いい部分を吸収して、そこに自分たちの感性を注ぎ込んで新しいものを作ってもらいたいと思う。つまらないモノをいくら聴いたところでおもしろいモノは絶対に出て来ないのはもう明らかなのだから…。

210v_2そして、今日う偶然に2回目の登場のフィンガー5で「学園天国」。これは時代や世代を超えて盛り上がるね~。曲がいいもん!

220v時代は80年代に突入。
「JUMP / Van Halen」、「Twilight / ELO」…。
「銀河鉄道999 / ゴダイゴ」、「タッチ / 岩崎良美」とつづく。

230vさらに、時代は下って「リンダリンダ / The Blue Hearts」、「空も飛べるはず / スピッツ」、「ガッツだぜ!! / ウルフルズ」…

240「Give it away / Red Chill Hot Pappers」、「Smells like teen sprit / Nirvana」
このあたりになると私の研究もおとなしくなってくる。レッチリは好きだけど。

250ここから先は演奏した曲を記す。

小さな恋の歌 / MONGOL800
大切なもの / ロードオブメジャー
リライト / ASIAN KUNG-FU GENERATION
恋のメガラバ / マキシマム ザ ホルモン

260Fantasista / Dragon Ash
ロックンロールは鳴り止まないっ / 神聖かまってちゃん
アルクアラウンド / サカナクション
世界はそれを愛と呼ぶんだぜ / サンボマスター
280ここへ来て洋楽がまったく姿を消した。
こうして、近い将来アメリカやイギリスで作られる音楽が日本から姿を消し、日本は「音楽鎖国政策」を完遂する。
しかし、そんなことはお構いなしに若い観客は大喜びだ。

270_2アンコールではそれぞれのバンドのオリジナル曲を演奏した。
OKAMOTO'Sは「JOY JOY JOY」、黒猫チェルシーは「恋はPEACH PUNK」。

290双方とてもいいバンドだ。
それはこうしてキチンと音楽のルーツを研究し、自分たちの音楽に吸収しているからに他ならない。

300v_2それにしてもいい企画だった。アッという間の3時間半。
後半に入り、レパートリーが国内の最近のモノになるに連れお客さんの反応が良くなったのは仕方あるまい。
「The Kids Are Alright」で喜んでるオッサンは自分ひとりだったことも間違いない。
でも予想以上に若いお客さんが60~70年代の曲も楽しんでいるように見えたのはとてもうれしかった。

ハッキリ言おう。ワカモノよ!
君たちはまだロックの「ロ」の字も聴いていない!いや、聴かされていないのだ。
オブ・ラ・ディ・オブ・ラ・ダ!人生は長い。まだまだカッコいいロックが山ほど残されているゾ!
今f現在、その「カッコいいロック」は将来ではなくて過去にある。
その過去をぶっ飛ばすようなカッコいいロックをクリエイトして欲しい。そのためには、今は黒猫チェルシーやOKAMOTO'sのように過去のロックを勉強することだ。80年代のロックは過去ではないからね、注意。60~70年代のロックを研究する。
しゃがまなければ大きなジャンプはできん!

310黒猫チェルシーの詳しい情報はコチラ⇒黒猫チェルシーオフィシャルサイト

320(一部敬称略 2013年9月8日 東京キネマ倶楽部にて撮影)