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2015年10月22日 (木)

【Music Jacket Gallery】サウンドトラック盤ジャケット特集<中編>

「More」といえばEARTHSHAKER。
このPink Floydが音楽を担当した、1969年の西ドイツ、フランス、ルクセンブルグの合作映画『More』について話しをする人に私はいまだかつて巡り合ったことがない。
もちろん私も映画を観たことがない。
ステファンというドイツの若者を主人公に据えた麻薬をテーマにした映画らしい。
Roger Watersの伝によれば、当時この作品を監督したバーベット・シュローダーは「音楽を映画の裏方にしたくない。車の中でラジオをつけると流れて来るようなもの…反対にテレビでその音楽が流れれば映画に正確に結びつくようにしたい。」と希望していたらしい。
…ということでCDを引っ張り出して来て聴いてみる…。
ん~、こういう映画なのか…とななりませんな~。
個人的には四人囃子の森さんや大二さんがよく演奏していた「Cymbaline」のイメージがあまりにも強烈で他の曲はあまり耳に入ってこないのが正直なところ。

もうひとつ正直に言うと、「モア」って『世界残酷物語』のテーマとゴッチャになっていたのよ、昔。Pink Floydあまり得意じゃないもんで…。
イヤ、久しぶりに「残酷ナントカ」っての思い出しけど、アレ何だったんだろうね?
ずいぶんいっぱいあったよ、ヤコペッティっていうんだっけ?恥ずかしながら中学の時にひとつだけ日比谷映画に観に行った記憶があるな。
重要作を上映する日比谷映画にかかっていたぐらいだからかなりのヒット・シリーズだったんだね。
ジャケットはしっかりHipgnosis。
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Pink Floydの7枚目のスタジオ盤はまたしてもバーベット・シュローダー映画のサントラ盤、『Obscured by Clouds』。
『雲の影』ってヤツだね。
映画の元のタイトルは『La Vallee』とう。
ところが、Floydはこのアルバムをサウンドトラックとして制作したのものの、録音終了後に映画会社とケンカ状態となり、映画のタイトルである『La Villee』ではなく『Obscured by Clouds』というタイトルで音源を発売するようにプッシュした。
一方、映画の方はそのまま『La Vallee』として公開された。
この映画も「Pink Floydが音楽を担当している」ということでスッカリ有名になってしまったようだ。映画の邦題は『ラ・ヴァレ』といい、内容は有閑マダムが自分探しの旅でニューギニアへ赴く…的な話しらしい。
キャストにはMiquette Giraudy(ミケット・ジラウディ)という女性が名を連ねているが、この人はGongのシンガー&キーボード・プレイヤーで、Steve Hillageの奥さんなのだそうだ。

もちろんジャケットはHipgnosisなのだが、コレ、木に腰かけている男の人の写真なんだって。そう見える?

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『フレンズ』か…。
世代というか、タイミングというか、この映画も「観た」っていう人に出会ったことないな。
日本公開が1971年11月っていうから私が9歳の時のことだ。
小学校2、3年…。知らないのも無理はないハズなのにナゼかリアルタイムの記憶にあるナァ。こんな子供が主人公の恋愛映画なんか私の映画の師匠である父が観てて推薦するワケないし…。
数年後にリバイバル公開でもして、それで知ったのかナァ。
とにかく、「エルトン・ジョン」という名前を知ったのはこの映画に絡んでのことだったような気がする。
私もレジは大好き。
レジとは彼の本名、Reginald Kenneth Dwightのディミニュティブ(=愛称)。年配のイギリスの連中は親しみを込めて彼を「レジ」と呼ぶ。
『Rock of Westies』までのアルバムは一枚を除いて全部持っていて、今でもよく聴いている。
その後のアルバムもホンノ少しだけ持っているが、聴く気がまったく起こらない。
『Lion King』あたりでも新しいファンを増やし、相変わらずトップ・ミュージシャンの地位を揺るぎないものにしているのであろうが、最近の作品は70年代前半に比べたら私にはあまりににもチョット、チョットチョットなのね。率直に言って全くおもしろくない。
偏ってはいるものの、ファンだから敢えて言わせてもらうが、才能を使い果たしてしまった…では説明がつかないぐらいの落差だ。
「Your Song」ばっかりやたら有名だけど、「Skyline Pegion」や「Border Song」だとか、「Burn Down the Mission」だとか…とても人間の仕業とは思えないほどいい曲が初期には目白押しだ。
それなのに、どうしてああなっちゃうんだろうネェ?
もしビートルズが解散しないで今も活動していたらどうなっていただろうか?

で、初期のアルバムで持っていない一枚というのはこの映画『フレンズ』のサントラ盤のこと。
リリースのポジションとしては、ライブ盤の『17-11-70』を除いて『Tumbleweed Connection』と『Madman Across the Water』の間。
この作品はずっと封印されていたのね。
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それが20年ぶりにこの世に出て来たのが1992年リリースのコレ。
『rare masters』というレア音源集。
レジの相棒のBernie Taupinは詞を書くに当たって送られてきた脚本を読むことはなく、ザッと目を通しただけだった。
そして、監督の息子のJohn Gilbertという音楽の担当者から映画の内容を聞いて、そのまま全曲書き上げたという。Bernieはまったく映画を見ずして作詞したのだ。
それをPaul Buckmasterが絶妙なアレンジを施して形に整えた。
録音はロンドンのトライデント・スタジオ
録音は前作の『Tumbleweed Connection』とほぼ同時期で、前作用に大切に書き溜めてあった曲が『Friends』からのシングルのB面に強引に使われてしまった他、録音の問題や映画との内容の齟齬に関する問題が発生し、レジは内容が気に入らず、結果、サントラ盤が20年もの間封印されてしまったのだそうだ。
映画は『アルフィー』や007の『二度死ぬ』、『私を愛したスパイ』、『ムーンレイカー』などを撮った名匠ルイス・ギルバートの演出でヒットした。
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しかし、ホントに初期のElton Johnの作曲の才たるや尋常ではござらんな。
『Goddbye Yellow Brick Road』の制作過程をたどるこのドキュメンタリーは面白かった。
このアルバムはホント、二枚組17曲、まったく捨て曲がない。
「Funeral for a Friend」、「Grey Seal」、「Saturday Noght's Alright for Fighting」のようなアップテンポの曲やタイトル・チューンの「Goddbye Yellow Brick Road」、「Bennie and the Jets」のミディアム・テンポの曲もいい。
でも、このアルバムの本当にスゴイところはバラードが素晴らしいことだ。
「Candle in the Wind」は言うに及ばず、「Sweet Painted Lady」、「Harmony」等、歌詞を覚えて一緒に歌いたくなるような名バラードが目白押しなのだ。
このDVDの中でレジが「Candle in the Light」について語るシーンはグッとくる。
で、これらの名曲はすべて5~10分で作られたらしい。
夜レジが寝ているうちにBernieが詞を書いて、それをピアノの上に置いておく。
すると、翌朝レジがピアノを弾きながらそれを読んで、「フムフム、♪Goodbye Norma Jean~ってか!」とやる。それでイッチョ上がりだったというのだ。
信じるか信じないかはあなた次第だけど、ま、天才のやることってのはそんなもんでしょ。
また、Davey Johnstone、Dee Murray、Nigel Olssonという鉄壁のバンド・メンバーにGus Dudgeonのプロデュース。
奇跡が起こる瞬間というのはちゃんとしたお膳立てがあるものなのだ。

N_img_0018エエイ、レジついでに…。
Elton Johnもうすぐ来ますな~。何でもチケットが18,000円だとか…。
レジが初めて日本に来たのは44年前の1971年で、その時はチケット代は2,500円!
Dee MurrayとNigel Olssonとのトリオ編成で、東京の会場は渋谷公会堂と新宿厚生年金会館だった。もう両方ともなくなっちゃった!

でもね…安心してください。レジのコンサートのチケットはイギリスでも高いですよ。
観に行ったことがあるのだ、イギリスで!

N_img_0025場所はとあるイングランドの地方都市。
下の写真はその様子。
見ての通りお客さんはジーさん、バーさんばっかり!コレ、どう見てもレジの全盛期だった70年代初頭でもオッサン、オバサンだったでしょうに。

Ad_img_0763_2会場となったのはクリケット場。住宅地の真ん中にある。
5月の終わりぐらいだったんだけど、寒かった。
でも、ビール会社が後援をしていてみんなそのビールを飲みながら楽しんでる。
その雰囲気が実にユッタリしていて、すごくいい感じなんだよね~。
「音楽」だけでなく、のーんびり「時間」と「雰囲気」も楽しんでいる感じ。

Ad_img_0762_2また、メンバーがDavey JohnstoneにNigel Olssonという昔の仲間(ベースのDee Murrayは1992年に物故)。加えて、日本でも携帯かなんかのCMで話題になったチェロのイケメンのデュオが加わっていた。
曲もジーさん&バーさんを意識してかのナミダナミダの完全懐メロ特集。コレでいいのだ。
なんつったって一曲目が「Funeral for a Friend」から「Love Lies Bleeding」だもん、レジを知っている人なら誰だって興奮するわね。
「Crocodile Rock」から「Rocket Man」から代表曲を片っ端から演っちゃう。
で、みんな一緒に歌うんだよ。
イヤなもんだよ、「♪ベ、ベ、ベ、ベニアンダジェッ~ツ」とか「♪ビーチ、ビーチ」とかしか一緒に歌えないんだから、こっちは。
ステージの内容としては、MCもほとんどなければ、レジもそうニコニコしているワケでもなく、「ハイハイ、演ればいんでしょ…」的にただずーっとヒット曲を並べた感じは否めなかったな。それでも、イギリスで観る…ということも手伝って十分感動した。
Davey JohnstoneがJoe Perryみたいに全曲でギターを取り換えるのが印象的だった。しかも全部違うギター。うまい人だよねこの人も。声も独特だし。

Ad_img_0749_2このバカが…真っ赤な顔しやがって…。
一緒に行ったヤツが気前よくジャンジャンとビールを買って来るもんだからトイレが近くなっちゃってマイッタ!
トイレから帰って来て自分の席に戻ろうとした時にちょうど一曲終わったところで大歓声が沸き起こった。
それで、コレはですね、その歓声を私が浴びたようにおどけて見せたワケ。「皆さん、ありがとう!」って。酔っぱらっちゃってるから。
そしたら、バカウケよ!イギリス人から大量の爆笑ゲットしました!

何やら完全にジャケットからハズれて自慢話しみたいにになっちゃってますな…。
ハイ、Elton John終わり!次ッ!

Ad_img_0755_2昔、今みたいに娯楽がたくさんなかった時代、映画は大きな楽しみのひとつだった…なんて書くとものすごい年寄りのように思われちゃうかもしれないけど、私が中学の頃まではまだみんな映画館へ頻繁に足を運んでいた。
すなわちビデオが出てくる前までの話しだ。
それより20年ぐらい前にテレビが現れた時に映画はもっと大きなダメージを受けたワケだが、ビデオの出現によってその打撃は決定的なものになり、映画館は次々と姿を消した。
さらにはインターネット。もうVHSが絶滅したなんて考えられないよね。「ベータマックス」なんて言葉を知っている若い人は一人とていまい。

昔はどんな町にも映画館があった。そこらの商店街の中にもあって、ごく普通に営業していたものだ。「豪華三本立て!」なんていってね。連続して三本も観ようものなら、尻はタマッタものではなかった。
それだけ映画が生活の中に浸透していただけに、映画に使われた音楽も歌謡曲のように普通に親しまれていた。
「太陽がいっぱい」、「ララのテーマ」、「タラのテーマ」、「野生のエルザ」、「ブーベの恋人」、「シェルブールの雨傘」、「ムーン・リバー」…若い人はまったく知らないだろうナァ。私は口ずさめる。
私の両親世代、そうだナァ、昭和10年代生まれの人はみなさんご存知だと思う。映画が大きな娯楽だった世代の方々だからだ。
あれらの名曲はどこへ行ってしまったのだろう…。
別の言い方をすると、その方々はいい音楽をたくさん聴いた世代の方でもある。
そして、ステレオがある家にはきっとこの手の「魅惑のスクリーン・ミュージック」の類のレコードがあったハズだ。
ああ、「昭和」はいいナァ。
こういう音楽もやがては忘れ去られ、消滅していく運命にあるのだろうナァ。
考えてみると、映画音楽っていうのはクラシックやジャズと違って、それ単体で成立しにくいものだから存続が難しいよね。
音楽のジャンルは問わないけど、誰かが題材として取り上げるか、せいぜい「映画音楽の夕べ」のようなコンサートで聴くかしか触れる機会がないもんね。
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チョット脱線。
下は最近買った007の30周年を記念した2枚組のテーマ・ソング集。007シリーズも名曲の宝庫だ。
それにまずジャケがいい。
007映画でおなじみの銃身から見たジェイムス・ボンドのシルエット。ちゃんと血もしたたり落ちている。
子供の頃、この渦巻きはなんじゃろな?と思っていた。
コレはみなさんご存知の「施条(しじょう)」というヤツ。発射される弾丸にヒネリを加えることによって弾道の安定性を図る銃身の内側に刻まれたらせん状の溝だ。英語では「ライフリング」という。
弾丸に回転を加えるために必ず銃身の内径は弾丸の外形より小さくできていて、そのため発射された弾丸にはこの施条の痕が刻まれる。「施条痕」というヤツね。
よくこの「施条痕」を調べると使用した銃がわかる…てなことを映画やドラマで見るでしょう?
アレ、どうしてわかるのかすごく不思議に思っていだったんだけど、今回調べていてビックリした。
もちろん、弾丸が銃身を通過する時に施条が何らかの番号や模様をつけたりするなんてことはできない。
弾丸の速さは44マグナムで時速1,296km、ライフルでは時速3,000kmを優に超す。そんなものに番号を打つことは不可能だ。
しからば、模様をつけるとなると施条の形をひとつひとつ変えることになり、そんなことをしたらコスト倒れしてしまう。
それでどうなっているかというと、施条を刻む工作機械の刃がどうしても刃こぼれをしてしまうため、完璧に同じ条件で施条を刻むことができない。
このことが結果的に形状が微妙に異なる施条を銃身内部に刻むことになり、弾丸についた施条を調べれば、指紋のように銃をアイデンティファイできるのだそうだ。
現在は工法が異なるそうだが、それでもこの施条痕によって銃の個別判定ができるらしい。
あ~、こういうことを知るのは楽しいな~。

で、007。
子供の頃は夢中になって観たものだけど、今となってはさすがに荒唐無稽でチョット…ね。
でも最初の方の作品は音楽が実によかった。
だいたいこの「ジェイムス・ボンドのテーマ」があまりに素晴らしい。
Shirley Bassey、Tom Jones、Nancy Sinatra…『死ぬのは奴らだ』でPaulにやらせたところなんかいいセンスだよね。今にして思うとこのロジャー・ムーア演ずる二代目ボンド(ジョージ・レイゼンビーは除く)の第一作目で、「ジェイムス・ボンド=ショーン・コネリー」のイメージを少しでも払拭するためにPaulを起用して話題をづくりに務めたのではないだろうか?


かつてMarshallのデモンストレーターをしていた現Procol Harumのギタリスト、Geoff Whitehornがかつて、「シゲ、世界で一番カッコいいコード知ってるかい?」と私に尋ねてきたことがあった。
「イヤ、知らない。教えて!」と答えて彼が弾いて見せてくれたのは、「Baug/E」とでも言おうか、6弦のEの開放にBaugを乗っけたボイシング。
すなわち「ジェイムス・ボンドのテーマ」のあの締めのコードだった。
このテーマを作曲したのはMonty Normanというイギリスの作曲家で、監督のイアン・フレミングがそれを気に入らず、後に007映画の音楽を多数手がけたJohn Barryに再アレンジを依頼したところ今の形になった。
結果、作者はJohn Barryということになって、お定まりの裁判沙汰になったとサ。こんな話ばっかり。

Cd_img_5405_2 ま~、映画音楽のレコードの教科書のようなジャケットですな~。
MGMでまとめたミュージカル曲集。MGMミュージカルといえばやっぱり『雨に唄えば』ということか?
このすぐ下に『ザ・ブルース・ブラザーズ』を持ってきた。この種明かしは後で…。

このレコード、収録曲を見るとなかなかにホネのある内容になっている。
考えてみるとこういうの誰が買っていたんだろうな…。ま、映画マニアってことになるんだろうけど、上に出ていたような「珠玉の~」みたいな映画音楽の特集盤の購入者とは違うような気がする。

とにかくですね、当該の映画を観ていようが、いまいが、私の感覚なんかではこの辺りの音楽を聴くことを強くお勧めしますね。
人生が豊かになります。
私は月に一回だけ中古レコード屋に繰り出して音楽の買い出しをするのを唯一無二の楽しみにしているのね。
買うモノは一切キマっていない。
何を見るかというと、まずジャズのコーナー(「エサ箱」という表現は好きじゃない。さんざん漁ってきたから…)から始まって、お店のディスプレイに沿って、たま~にブルース系をチラっと見て映画音楽⇒民族音楽⇒クラシック⇒日本のロック⇒海外のロック⇒プログレッシブ・ロックと回る。ヘヴィ・メタル系のロックは必要なアイテムがある時にだけピンポイントで探す。
一番時間をかけて丹念にチェックするのはジャズなんだけど、だいたい全部で二時間チョット。
よって一年のうち丸一日強はCDを探している計算になる。
以前に比べれば断然短くなった。
希少盤だ、レア盤なんてのはよっぽどのことが無い限り買わない。高いから。
何年も探し続けて、もしこの場を逃したら一生お目にかかれないな…というヤツにはそれなりにお金を払うが、後は立ち喰いの天玉そばより安く味わえるような、誰も買い手がつかないようなマイナー盤を買い漁っている。
「花より団子」の権化みたいなものだ。だってもう定番、有名盤の類はもういいでしょ。卒業。
それよりも無名でも何でもいいから、一枚でも一曲でも多くのいい音楽を聴いて死んでいきたいと思っているのだ。
今私の目の前にはまだほとんど手付かずの大きな山脈があって、今ヘンなルートで登頂を試みようとしているのがクラシック音楽。
それと少しでも標高の高いところに行きたいと願っているのがミュージカルなのだ。
だから、どんな話か皆目見当がつかない知らないミュージカル作品のサウンドトラックでも適正な価格(二束三文ということ)で見つかれば即買いするようにしている。
結構前の話しになるが、イタリア映画のサウンドトラックをゴソっと買ったことがあった。イタリア映画なんて『黄金の七人』以外まず見ないんだけどね。
買い込んだ理由のひとつは、その『黄金の七人』のArmando Trovajoliの作品がたくさん含まれていたいたこと。
この人は元々ジャズ・ピアニストなんだけど、ジャズ・ピアノのYngwieよろしく、愉快痛快、モノスゴイ早弾きを得意としている人で、映画音楽作家としてだけでなく、ピアニストとしても好きだったから。
もうひとつはジャケットというか、雰囲気がメチャクチャおしゃれだったのね。
内容はと言えば、決して喜ばしいものではなかったです。
でも、新しい音楽が聴けたのでOKとした。
こんな具合でミュージカル作品も集めようとしているんだけど、元々聴いている人が少ないのか、なかなか出て来ないね。
この時代、1920~1950年代のアメリカ人が作った音楽は本当に素晴らしいと思うね。実際はユダヤ人ということになるんだろうけど、ポピュラー音楽の美しさや楽しさがすべて詰まってる。
ティン・パン・アレイ・ミュージックというヤツね。
デス・メタルでも何でもいいから好きなロックを聴く傍ら、こうしたアメリカが本当に文化的な「力」を持っていた頃の音楽も聴くといい。
もう一回いうけど、人生が豊かになります。
ああ、この項誰も読まないだろうな…。
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おもしろかったネェ、『ザ・ブルース・ブラザーズ』。
みなさんが好きなのはどのシーン?
私はRay Charlesんトコかな?Arethaのところも滅法カッコよかった。
この映画がどうしてこんなにもカッコよく、そして楽しく作られたのかを考えてみるに、要するに50年代のミュージカル映画の文法に忠実に沿ったからではないだろうか?
スリル、お笑い、オフザケ、そして極上の音楽。出て来る音楽はR&Bでジャズではないが、映画のリズムとしては昔のミュージカル映画にソックリだと思うんだよね。

ところで、この2枚を並べた理由は…知ってる人は知ってるでしょう。
上の『雨に唄えば』のヒロインはデビー・レイノルズ。
下の『ザ・ブルース・ブラザーズ』の紅一点、バズーカ砲でジョン・ベルーシをつけ狙う謎の女を演じたのは『スター・ウォーズ』の「レーア姫」を演ったキャリー・フィッシャー。
この二人は母娘なのね。
そんだけ。
キャリー・フィッシャーのお父さん、すなわちデビー・レイノルズのダンナはエディ・フィッシャーという大歌手だった。
このオッサン、デビー・レイノルズの後、エリザベス・テイラーやコニー・スティーブンスと結婚してるんだゼ。

ジャケットについて何にも書かないけど、ま、いいでしょ。見ての通りだから。
ベルーシについてひと言…「Samurai Be-Bop Musician」には死ぬほど笑った!あの頃はZappaもまだ元気だったんだよ。
そうそう、ここコレで終わろうと思ったんだけど、ひとつ思い出した。
『Staturday Night Live』で「Samurai Delicatessen」とかいうコントがあったでしょ。ベルーシ扮する侍の格好をした総菜屋の店員がやたらとチーズバーガーを出したがるヤツ。
あの中で、サラリーマンが朝食に何か注文しようとすると、ベルーシがチーズバーガーを勧める。
するとそのサラリーマンは「イヤ、朝からチーズバーガーは食えんよ…」と断る。
コレね、若い頃、初めて見た時結構ビックリしたの。
アメリカ人って朝から晩までハンバーガー食べてもゼンゼン平気な人種かと思っていた。それが、朝はハンバーガーを食べないだなんて信じられない!というワケ。
その後、たくさんのアメリカ人の友達ができて、何人かに「朝からチーズバーガーを食えるか?」と訊いてみたが、全員「食えない」と言っていた。
それどころか、連中は何とはなしにハンバーガーをバカにしているような感じすらあるな。「貧乏人の食い物」的な扱いだ。
一度、ニューヨークで、現地の白人のアメリカ人の友人から「シゲ、朝は何を食べた?」と訊かれ、たまたま「M」の字のハンバーガーを食べたのでそのことを告げると、かなりのいきおいで「What?  #$%& is the most humble food on the planet!(ナニ?#$%&は地球上で最も卑しい食べ物なんだぞ!)」といわれたことがあって驚いた。そこまで言うか?みたいな。
私の友人だからもちろん金持ちではない。
私の経験からすると、中流気取りのアメリカ人ってすごくエリート意識があるように見えるね。その典型がこの「ファスト・フードは食わない」宣言。
それと、「好きな音楽は?」と訊くと「クラシック」って答えるヤツ。ウソこけ!レディ・ガガで喜んでるクセに!
ま、そういう自分も大して変わらんか?

そこへ行くとイギリス人は「バーガー、バーガー」って喜ぶよ。
ひとつイギリスでヤラれたのがメニューに「Beefburger」というのがあって、こっちとしては勝手ながら「薄切りの牛肉と玉ねぎをニンニクと醤油で炒めてパンに挟んであるヤツ」と想像してた。ま、そんなもん出て来るわけが全くないんだけど、和食に飢えるともう脳ミソが暴走しちゃうワケ。
で、出て来た。
必要以上に熱した厚手の白い皿の上に乗っていたものはただのハンバーガーだった。
ガッカリしたな~。イギリスで「バーガー」の名の付くものはみんな「ただのハンバーガー」ということを覚えた。
話はアメリカに戻って…20年近く前にニューヨークに行った時、セントラルパークで昼食を摂っていたらホームレスっぽい黒人に話しかけられた。
別に危険な雰囲気はまったくなく、お互いの食べ物の話になった。その人言ってたな「オイラぁ、バーガーが大スキだァ。ハンバーガーがあれば他に何もいらねェ。毎日3回ハンバーガー食っても飽きネェ」…ゾっとするわ。
その人、ハンバーガーも買えなかったのかなァ。その割にはしきりハトにエサを与えていたっけ。そのエサ代でバーガー買えばいいのに。
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私は観てないけど、この映画ハヤったよね~。
「1978年10月 来日 オリビアが運んできた秋…」。オリビア・ニュートン・ジョンの故国では春だわね~。
記録をひも解いてみると、この78年の来日では、新潟、金沢、京都、盛岡、和歌山、大阪、岡山、福岡、名古屋、横浜と回り、東京はナント武道館2デイズだった。
どーよ、この人気ぶり!
スゴかったんだから。
アタシャ、ゼンゼン興味なくて、1978年に行ったコンサートといえば…
ELO、Foreignor、Cheap Trick、Ted Nugent(以上、すべて武道館)、Rick Danko、Van Halen、Little Feat、Wishbone Ash、Genesis、Frank Mario & Mahogany Rushってとこか…。
見逃して悔しいのはScorpionsの初来日とWeather Reportだな。

Olivia Newton Johnはチョット違うけど、昔はいつも外人アイドル歌手ってのがいたよね。アグネス・チャンなんてのはその草分けになるのかな?
私の世代では、マギー・ミネンコとかルネ・シマールとか、インド人チャダとかいうのもいた。
ハーフ・タレントなんてのも一時は盛んだった。キャロライン洋子とかシェリーとか、ヒデとロザンナなんて足して2で割ればハーフだし。ゴールデン・ハーフなんて名前からしてスゴかった。
今は完全にボーダーレスになっちゃって、日本人が外人に漢字を教わって笑ってるぐらいだかね。

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映画『ロッキー・ホラー・ショウ』はよく観た、ビデオで。残念ながら映画館で観たこともなければ、舞台を観たこともない。
コレに近づいた理由は私の場合、「なぞなぞ商会」だったんだよね。高校生の時、なぞ商が「Time Warp」と「Sweet Transvestite」を日本語で演っているのを見てそれで興味を持った。
「Science Fiction, Double Feature」から始まっていい曲が目白押しなんだけど、途中からチョット苦しくなってくるのが私の正直なところ。
ジャネットが歌う「Toucha-Toucha-Touch Me」で持ち直すが、何となく尻すぼみ感を強く感じる。
以前ROLLYさんと話しをした時にこんなことをおっしゃっていた。「あの映画は質感が『キャバレー』にソックリなんですよね」…ROLLYさんはフランクフルター博士も舞台で演じているし、Orquesta Libreというグループとの活動では『キャバレー』の曲もレパートリーに取り入れているほどなのできっとそういうことに違いない。
それにしても海外でのこのミュージカルの時空を超えた浸透度たるや信じがたいものがある。
40~50代の人が「Time Warp」に合わせて腰に手を当てたり、左へジャンプしたりするならわかる。
その世代の人たちの多くは高校の卒業記念のダンス・パーティでこれを踊るからだ。いわゆる「プロム」というヤツ。映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のアレね。
我々で言えば町内の盆踊りで覚えた「東京音頭」か「ソーラン節」といったところか…。
ところが…だ。
今、日本に来ている20歳そこそこのアメリカの女の子に尋ねたところ、今はプロムで踊ることはなくても「Time Warp」を知っていて、踊ることができるのだそうだ。
それと、今年の5月にイギリスへ行った時に出席したパーティのディスコタイムでも老若男女を問わず皆さん「Time Warp」に合わせて踊り狂っていた。

この作品、映画のおかげでアメリカ製だと思っている人も多いようだが、ロンドン・ミュージカルだ。
初演は193年。スローン・スクエアにあるロイヤル・コート・シアターだった。
この下のアルバムはそのオリジナル・キャストの音源。いいジャケットだ。
今、ここでは右下の「UK RECORDS」というロゴに注目しておいてね。

St_img_0057世界中で焼直して上演された人気作品だけあっていろいろなバージョンの音源がリリースされている。
下は上の他に私が持っている音源。
左が映画のサウンドトラック盤。1975年。
右は1974年のOriginal Roxy Castバージョン。

Cd_img_5409_2こんなスコアも持ってる。Roxy CastのCDと一緒にブロードウェイで買った。中野のブロードウェイじゃないよ、ニューヨークのブロードウェイ。

Cd_img_3725 当然DVDも…2枚持ってる。
それにしてもこの作品は何だってこんなにイメージに統一性がないんだろう。
どこかのつけ麺屋さんみたいだ。名前は同じだけど店のつくりがてんでバラバラ…みたいな。
最後にひとつ…舞台でも映画でも主役を務めたTim Curry。天下のフランクフルター博士と『ホームアローン2』で出くわしてビックリ。

Cd_img_3732 おそらく人生のうちでもっとも数多く聴いたアルバムの上位に喰い込む作品の一角。10ccのサード・アルバム、タイトルもズバリ『Original Soundtrack』。…といっても何かの映画のための音楽ではない。
これと次作の『How Dare You!』はほんとに大好きでよく聴いた。
ヘタするとFrank Zappaを除くと私は初期の10ccが一番好きなのかもしれない。とにかくこうした頭を使ってこねくり回して作り込んだ音楽が好きなのだ。


前作『Sheet Music』からジャケットのデザインを担当したHipgnosis。イラストはHumphrey Oceanというイギリス人。
この人、Kilburn and the High Roseというパブ・ロックのバンドでベースを弾いていたことがあって、1973年のThe Whoのクリスマス・ツアーの前座を務めたことがあるそうだ。
また、ロンドンのナショナル・ポートレイト・ギャラリーに飾ってあるSir. Paul McCartneyの肖像画のうちのひとつはこの人の作品。世界に冠たる国立の肖像画美術館だからね、かなりすごいことだ。
ジャケットのアイデアはHipgnosisのAubley Powell。彼は作品のタイトルを聞いて、まず映画制作の関係の絵面にすることにした。マァ、誰でも思いつく。
そこで、このジャケットにある「スタインベック」と呼ばれる16mmフィルムの編集機をフィーチュアすることにし、実機を写真に撮った。
それをOceanに見せて、「可能な限り写真通りに鉛筆でイラスト化して欲しい」と頼んだ。
ちなみに35mmフィルムの編集機はMoviola(ムビオラ)という。黒澤明の関係の本に何回も出てくるので聞き覚えがあり、思い出して調べてみた。ほとんどの黒澤作品で記録を担当した野上照代によれば、黒澤さんは撮るたびにムビオラを除き込んで、丹念に画像をチェックするのが常だったという。
ところで、このジャケットの馬に乗っているカウボーイは誰だ?
これは誰のアイデアかは知らないが、1959年の『胸に輝く星』というヘンリー・フォンダ主演の映画のヒトコマで、描かれているのはアンソニー・パーキンス。
そう、ノーマン・ベイツがカウボーイ役を演っていたこともあったのだ。
アンソニー・パーキンスもハンサムで長身のいい役者だったが『サイコ』のノーマン役があまりにも強烈で、そのイメージが強すぎて他の役が出来なくなっちゃった。
パーキンスには気の毒だが、ヒッチコックさすがのキャスティングといわざるを得ない。

この作品を発表する前、10ccは名付け親でもあるJonathan KingのUK Recordsと契約をしていたが、別のレコード会社に移りたがっていた。
このJonathan Kingは10ccだけでなく、Genesisを発見してそのバンド名を与えたり、Bay City Rollersの最初のヒット曲「Keep on Dancing」をプロデュースしている。
また、それこそ興行二日目にオリジナルの「Rocky Horror Show」を見てビビビと来たのか、後援を申し出て20%の興行権をゲットしたそうだ。よって、上のロンドン・キャストのアルバムのプロデューサーはJonathan Kingとなっている。
だから前項で「ロゴに注目」と言ったのね。
マァ、とにかく目先のきく人であることは間違いない。
ところが、当時の10ccはこのKingと手を切りたがっていた。しかし、先立つものがない。
そこで中心メンバーであるEric Stewartがフォノグラム社が10ccを欲しがっていたことを思い出し、「I'm not in Love」を聞かせたところ、「金に糸目はつけない!」と100万ドルをもってして10ccとの契約をUK Recordsから奪取したのだそうだ。めでたしめでたし。
参考までに…このアルバムのレコーディング・エンジニアはEric Stewartが担当している。

ま、確かに「I'm not in Love」はいい曲だ。
でも、私は大した思い入れがない。
10ccを初めて聞いたのは中学3年生の時で、彼らのライブアルバム『Live and Let Live』が出た時だった。それで一曲目の「The Second Sitting for the Last Supper」にブっ飛んだ。
「世の中にこんなにもカッコいい曲があるのか!」
それですぐに全アルバムを揃えた…といっても『Deceptive Bends』までの6枚っきりだったが…。
どちらかというと『How Dare You!』の方がよく聴いたかもしれないが、いずれにしても『Original Soundtrack』と『How Dare You!』は10ccの東西の横綱だ。
その後、5ccになって『Bloody Tourist』が出て期待して臨んだが、全然おもしろくなかった。
さっきのElton Johnじゃないけど、どうしてこうも急にパタッと魅力がなくなるかな~。
このアルバム、名曲が目白押しで、大作の「Une Nuit A Paris」、楽しい「Life is a Minestrone」、大好きな「The Second Sitting for the Last Supper」、映画のタイトルが出てきてうれしいカンツォーネ仕立ての「The Film of my Love」等々、今でもひっぱり出してきては聴いている。「Blackmail(ゆすり、脅迫)」という英単語を覚えたのもこのアルバムだ。
こうしてみると、やっぱりLol Creme&Kevin Godley組の方が好きなんだな。
初めてロンドンに行った時、ホテルの部屋に入るなりつけたテレビから流れてきた曲が「Life is a Minestrone」だったことはもう何回も書いた。
一生聴き続けるアルバム。

St_img_0078ナショナル・ポートレイト・ギャラリーに飾ってあるHumphrey Oceanが描いたPaul McCartneyの肖像画とはこれ。
こないだ行った時に撮って来た。
ここの美術館にはもう一枚、若き日のPaulをデフォルメして描いた肖像画がある。

Cd_img_1707このアルバムについてはコチラをご覧くだされ。

St_img_0083「Big Sur Festival」というのは1964~1971年にカリフォルニアのBig Surというところで開催されたフォーク色の濃いフェスティバル。
1969年にはウッドストックの一月後に開催されたが、そう大きな話題として取り上げられることもなかったらしい。
これは1971年の最終回のもようを収めたライブ・アルバムで、Joen BaezやBlood Sweat & Tearsといったウッドストックでの成功組が出演して話題になったようだ。
どうでもいいけどきれいなところだネェ。混んでてイヤだけど…。

St_img_00801965年、カリフォルニアのワッツ市というところで大規模な黒人の暴動事件が起きた。その7年後にワッツ市の人々を称賛するためにStax Recordが企画したコンサートが「Wattstax」。
そのもようが映画となり日本では1973年に公開された。
ジャズ以外の黒人音楽にまったく疎い私ですら知っているような豪華な出演者陣だが、知ったかぶりは避けることにする。
Wattstaxコンサートは「黒いウッドストック」と呼ばれたらしく、そのせいかどうかはわからないが、よく『ウッドストック』と二本立てでやってたっけ。『ワッツタックス』か『バングラデシュ』。
中学の時に九段会館でこの映画を見ているハズなのだが、きれいさっぱり記憶がない。
そのころからコレ系の音楽がダメだったのね、ワタシ。

St_img_0084映画『トミー』は好きだった。
中学一年の時に日比谷のスカラ座に観に行った。
「刷り込み」っていうのか、The Whoの『Tommy』より、私にとっては映画のサウンドトラックの方が『トミー』なんだな。

St_img_0107映画を観に行ってお小遣いをはたいてミュージック・カセットを買った。

M_img_2275LPに比べて憐れな装丁だ。
レコードプレイヤーを持ってなかったのでカセットを買うより仕方なかったのだ。
『Tommy』のことはアチコチで書いているのでもう書かない。最近の記事のリンクだけ貼っておくことにしよう⇒コチラ
ちょっと付け加えておくと、このサントラの演奏にはNicky Hopkins、Ron Wood、Kenny Jonesらが参加している。
映画のピンボール対決のシーンではPete Townshendが出ているが、「The Pinball Wizard」の演奏はElton John Bandによるものだそうだ。
また、すべての曲でPeteがギターとシンセサイザーをオーバーダブしているらしい。

M_img_2281どうしてみんなコレやりたがるかネェ?
オーケストラ・バージョン。
ジャケットはとてもいいね。パチンコの玉?いえいえ、ピンボールの玉でしょ。
デザインと写真はTom Wikesというアメリカのデザイナー。
先ごろコロンビア・レコードの諸作のジャケット・デザインを数多く担当したJohn Bergという人が亡くなったが、このTom Wikesという人もいい加減すごい。
何をやった人か並べようものならすぐに紙幅が足りなくなっちゃう。でもちょっとやってみると…
The Rollings Stones : Flowers, Beggars Banquet
Captain Beefheart : Safe as Milk
Roger Nichols & The Small Circle of Friends
Van Dyke Parls : Song Cycle
Janis Joplin : Pearl
Dr. John : Gumbo
George Harrison : Darl Horse, All Things Must Pass
ええい、やっぱ面倒くせぇ!
とにかくあまりにも有名なアルバムが多くてキリがありゃせん!
そういう人がデザインしたジャケットなのだ。

こういうオーケストラものって物珍しさで買って聴いてはみるんだけど、二回は聴かない。それが私のやり方。

St_img_0102もうイッチョThe Whoでコレ。
原作はご存知『Quadrophenia(四重人格)』。
皆さん、この映画どう?好き?
60年代のロンドンの雰囲気が伝わる部分はうれしいが、映画としてはな~。
正確には覚えていないが、「ソイツをどこで手に入れた?」、「ブリクストンさ」とドラッグのやり取りするシーンが冒頭にある。
何年か前に行ったけど、やっぱりブリクストンってガラ悪いんだね~。その時のようすはコチラでレポートしているので是非。イヤ、別に危険な目には遭っていませんから。
ブリクストンはDavid Bowieの地元だ。

St_img_0108裏ジャケを見るとブライトンの海。
ブライトンはこの映画の第二の舞台だからね。

St_img_0111何年か前に行ってみた。

J_img_0898きれいなところでね~。
このずらりと並んだ建物のうちのひとつがSting扮するベルボーイが働いていたホテルなハズ。
ちなみに、最後に主人公のジミーがオートバイごと突っ込む白い崖の場所はブライトンよりもう少し東へ行ったセブン・シスターズというところだ。

J_img_0899ご多分にもれずSteely Danは大好き。
だから「FM」という曲も好き。
でも、この映画って何だったのかしらん?コレも「この映画を観た」って人に会ったことがない。
…と思ったら日本では未公開のままらしい。道理で…。
しかし、すごい顔ぶれだよね。このサントラは全米ヒットチャートで5位まで上がったらしい。
帯を見ると「ロードショー誌」が推薦しているようだけど、公開もしない映画なのに無責任じゃない?
この「FM」という曲の中に「Kick off your hi-heel sneakers」というクダリがあるが、「hi-heel sneakers」というのはTommy Tuckerというブルースの人の1963年の曲の名前。作曲はRobert Higginbothamという人。イコール。Tommy Tucker。
私がこの曲を知ったのはBlue MitchellというジャズトランぺッターのBlue Note盤。この人のコンボには若き日のChick Coreaがが在籍していたことはよく知られている。

St_img_0114コレはおもしろかったな~。ラルフ・マッチョがすごくよかった。
でもそれよりカッコよかったのがSteve Vaiだよね、Jack Butler。
ギター勝負のところはVai自身が弾いているのはおなじみだけど、クラシック・ギターは誰が弾いているか知ってる?
William Kanengiserという人。
私も「胸を張って知ってます!」というほどじゃ全くないんだけど、以前従事していた仕事でこの人の教則ビデオを扱っていたので名前は知ってる。
「あなたもクラシック・ギターが弾ける!」みたいな内容だったように記憶している。

St_img_0120「♪パララバイラバンバセネセシータウナポカデグラシア、ウナポカデグラシアパミパティーナヤリバヤリバ~」
まだできる。
コレ、もしかしたら私が全部歌える唯一の外国語の歌かもしれない。
長野のパブでハコバンをやっている時に覚えた。この曲の歌だけはナゼか私が担当していたのだ。
曲は「La Bamba」。おかげでカラオケでやるといつもよくウケた。
この映画は「La Bamba(元はトラディショナル)」や「Come on, Let's Go」や「Donna(私にとっては10ccなんだけど…)」のヒット曲で知られるRichie Valensの伝記映画。
テレビで見たのか、安いビデオで見たのか覚えていないが、コレが結構よくできていておもしろかった。
この手の映画ではJerry Lee Lewisの半世紀『グレート・ボールズ・オブ・ファイア』ってのもなかなかにヨカッタことを付け加えておこう

St_img_0131映画でRichieを演じるのはルー・ダイアモンド・フィリップス。そりゃカッコいいワイ。
でもね、実際のRichie Valensはハラペーニョ大盛のドンタコス風だ。
この人、不幸にも1959年に飛行機事故で18歳で亡くなってるんだよね。
となるとこの写真は最も年長で撮られたとしても18歳…マジか。

Cd_img_5412<前編>にも記した通り、サントラ盤は映画のワンシーンを使用したジャケット・デザインが多いのであまり書くことがなく、特に最後の方は内容が薄くなってしまった感があるがご容赦頂きたい。
もうちょっと書けたらモア・ベターだったんだけど…。でも、イヤぁ、映画ってホントにいいもんですね。それでは<後編>でPCの前のあなたとお会いしましょう。
それでは皆さん、さよなら、さよならん、さよなら。
そういえば、映画評論家っていう人たちもめっきりテレビに出なくまりましたナァ。
評論すべき映画がないんだろうナァ。

Music Jacket Gallery展示の詳しい情報はコチラ⇒金羊社MJG常設展

<つづく>

※本展示は2013年12月に終了しています。現在の展示内容は上記の金羊社ウェブサイトでご確認ください。
※ジャケット写真はすべて展示品を撮影したものです。また、斜めのアイテムは植村コレクションではなく、私の私物を勝手に付け加えたものです。

2015年8月 6日 (木)

【Music Jacket Gallery】 70'sバイブレーション YOKOHAMA

♪来たぜ横浜、レールに乗って、コリャ暑くてタマらんらん…

10

こんな私でも齢を重ねて来ると人間がこなれて来ましてナ…。
「アツイ、アツイ」と文句ばかり言っていないで、一年のうち今しかない折角のこの季節を今年はジ~ックリ味わって楽しもうじゃないか…と。

結果、アツイ、アツイ、アツイ、アツイ、アツイ、アシイ、マツイ、アツイ、アツイ、アツイ、マシイ、アツイ、アツイ、アシイ、アシイ、アツイ、アツイ、アツイ、マツイ、アツイ、アシイ、アツイ、アツイ、アツイ…ヘヘヘ、コピペして24回言ってやった。暑いから。
ハイ、ここでクイズです。
24回の内、何回ずつ「マ」と「シ」が入っていたでしょうか?…というのが問題。え、もっと「マシ」なクイズを出せって?ムリムリ、暑いんだもん。

もうネ、暑すぎなんですよ。
昔はこんなに暑くなかったよ。
イヤ、暑いにしても、もっと愛がある暑さだった。最近は「暑い」じゃなくて「熱い」もんね。
「昔」っていっても、そうだナァ、例えば1970年代。
気候は今ほど暑くなくてもロックはアツイ時代だったゼ!

20Things Ain't What They Used To Be…昔はヨカッタね…。
そんな昔を呼び戻してくれる展示会に行って来た。
場所は見りゃわかる横浜の赤レンガ倉庫。

308月1日からの開催だが、関係者として、Music Jacket Galleryでおなじみの植村さんに一日早く内覧会に招待して頂いた。

50
『70'sバイブレーション YOKOHAMA』というのがその展示会だ。
そもそもタイトルがいい。
今なら「ヴァイブレーション」って表記しちゃうもんね。70年代にはそんなことしなかった。日本人には「v」も「b」もおんなじだ。

40なんか植村さんの本とイメージがソックリだな…。

10 そう、この展示会はまさに40年前への時間旅行。
ああ、我が青春時代がココに!

601階にはポスターが飾ってあって早くも70年代の雰囲気がただよう。

80メイン会場は1号館の2階。

70
まずは「ヨコハマ・ブルース」というコーナー。70年代の横浜を振り返る。

90私の母は生まれも育ちも横浜で、幼いころからよく訪れていた。そのため横浜にはすごく親近感がある。
そして運命か、はたまた偶然か、生まれも育ちも横浜の人と結婚した。結婚式もこの会場のすぐそばだった。
里帰り出産をしたため、ウチの上の子も横浜生まれだ。
ごく短かい間だったが本牧に住んだこともあった。

まだ伊勢佐木町の商店街に車が通っていた頃の光景を覚えている…。
そう、黒澤明の『天国と地獄』で誘拐犯の山崎努が被害者の三船敏郎にタバコの火を借りるところを目にした刑事の仲代達也が、車の中で「アイツは正真正銘の畜生だ!」と激怒するシーンだ。
コレはもっと小さい時だったから60年代だと思うのだが、横浜のどこかに縁日のようなものが立って、そこに見世物小屋があった。子供ながらにすごく驚いた。
当時、街角には少なくない数の傷痍軍人が立っていた。遠い記憶だ。
だからココに飾ってあった昔の写真をとても興味深く拝見させて頂いた。

100大瀧詠一さんのメモリアル・コーナー。

110多くのスペースを費やしていたのは70年代の歳時記。

130LPジャケットや、コンサートや映画のポスターを使って70年代を俯瞰する。

1401970年というと私は小学校2年生。
当然、映画にも音楽にもまだ興味がなかったナァ。
その時代にはっぴいえんどは「ゆでめん」を出していたんだネェ。
『原子心母』もこの年か…。

1501973年、この頃はまだ映画に夢中だった。
『スティング』のポスターが飾ってあるが、この作品は1973年に制作されて、翌74年に日本に入って来た。
『Band on the Run』は『氷の世界』や『ひこうき雲』や『HOSONO HOUSE』と同じ年なんだね~。160アレ?と思ったのは『燃えよドラゴン』。コレは間違いなく『スティング』より先に日本で公開されているハズ。
ナゼなら、『スティング』は1974年、中学に入ってひとりで新宿ミラノ座に観に行ったし、『燃えよドラゴン』は先日も記した通り小学校の時に父に連れられて観たのを覚えているからだ。
ま、どうでもいいことなんだけど…。
『一触即発』は1974年、続く『ゴールデン・ピクニックス』は1976年、大二さんや森さんが21~23歳の時の作品だ。今ではまったく考えられない。昔の人は本当に偉大だ。

165コンサートのポスター群がスゴイ。
『箱根アフロディーテ』や『ワンステップフェスティバル』等のイベント系のポスターでその内容をうかがい知るのが最高に楽しい。
そして、このZappa!
1976年、内田裕也さんの招聘によりZappaの生涯に一度だけ実現した来日公演。東京は浅草の国際劇場が会場に選ばれ、記者会見は吉原で行われた。青年館は追加公演で、このポスターに出ていない。
一昨日記した銀次さんが見たというリハーサルはこの時のもの。
『JAPANESE GIRL』はビックリした。仲の良い友達が出てすぐに買って聴かせてくれた。「なんて妙な声と音楽だろう」と思った。
『Hotel California』もよく覚えているな。友達から買ってすぐに売った。当時はハードロックに夢中で何とも物足りなかったのだ。それからというのも一度もウチのレコード棚に収まったことはない。
そうか、『Rumors』もこの年か…。今でもしょっちゅう聴いてる。
私的な意見だが、洋楽はこの辺りがピークだったと思う。プログレッシブ・ロックやハード・ロックが飽きられてきて、パンク/ニューウェイブに注目が集まり出したところでロックは進化を終了した。後は順列組合せと電子化、あるいはコンピュータ化で現在に至っている。
「ロックのピーク」、「ロックの黄金時代」は70年代に所属しているのだ。
もちろん60年代後半からここに至るまでのMarshallの途方もなく大きな役割は、今更説明する必要もあるまい。

170こうして1980年までのアイテムが順序立ててキチンと展示されている。

171展示場にはショウケースも設置されていてコンサートの半券などが展示されている。

180コレぞ我が青春。半分ぐらい持ってた…けど、引っ越しの混乱で父が捨ててしまった。
植村さんには遠く及ばないにせよ、映画から音楽にスイッチしてからというもの、お小遣いの類は100%レコードとホントコンサートに費やした。洋服なんかまったく興味がなかった。自分の小遣いでは靴下一足、パンツ一枚も買ったことがない。
それができたのは、70年代があったからに他ならない。それだけ夢中になれるロックがあったのだ。

190皆さんもひとつひとつに思い出があるんだろうナァ…。

195コレも見ごたえ十分だった!

205桑本正士、野上眞宏、迫水正一、井出情児、そして鋤田正義、各氏の写真展示だ。

210どれもこれも「日本のロック」の色香を存分に漂わせている。

230これが30年以上前に撮られた写真か?と疑いたくもなるような生々しさ。

240コンサートの写真も随分変わった。
最近のステージ写真といえば、お客さんを写した写真ばかり…。
または、観客と一緒に収まったミュージシャンの写真ばかりを見かける。その手の写真はこの時代ではマレにしか見ることができない。
恐らく観客を撮っているヒマなどなかったのだろう。ミュージシャンのパワーとクリエイティビティが今と格段に違うのだ。
私の写真を「古い」と言った人がいたが、全然構わないどころかうれしい。
私はこの時代のミュージシャンを撮りまくっていた人たちの写真を目指しているのだ。いつでも鋤田さんのように撮りたい。コレは私流に言わせてもらえば、アーティストへの限りないリスペクトなのだ。
今流行っている撮り方のステージ写真が、このような30年後の鑑賞に堪えられるかどうか…。今の音楽や映画と同じだ。

250ステージ写真だけでなく、アーティスト写真やオフステージの写真も多数展示されている。
いつか書こうと思っていたんだけど、Marshall Blogで使っている写真は転用防止に極端にデータを軽くしてある。だからクォリティがメチャクチャ低いのね。色もタッチもかなり劣化しちゃう。
「ああ、皆さんに軽くする前の元の写真をお見せしたい!」…と常々思っているんよ。
誰かこういう展示会を企画してくれないかな…。タイトルは『写真による、ある音楽バカの奮闘記』だ。

260ココはYMO関連のコーナー。
ちょうど松武秀樹さんがいらしていて仲良しの植村さんにご紹介して頂いた。うれしかった!

265実際にYMOが使用していた楽器や衣装が展示されている。

270好きな人にはタマらんでしょ~?

280やっぱり偉業を成し遂げた人が使う道具というのは威風堂々としてるね。

2901979年にTubesが来日した。
4つほど年上の友人が話していた。「チューブスってのはスゴイらしいよ。今度来日するじゃん?行こうかな…。前座がイエロー・マジック・オーケストラだっていうし…」コレがナゼか印象に残っている。
まだ大ブレイクする前、時折名前が聞かれるようになった頃で、そのすぐ後にYMOが世界的な人気を博そうだなんて、あの時のハードロック仲間の誰が想像したことだろう。

300
で、時代は大幅に下って、数年前Paul Gilbertがニューアルバムのプロモーションで単独来日した時、楽屋で「コレ知ってる?」なんてTubesの曲を弾きながら私に尋ねて来た。Paulと一緒になるとMarshallの話しよりロックの話しになってしまうのだ。
残念ながらTubesを通っていない私は「知らない」と答え、「じゃPaul、コレ知ってる?Tubesが日本に来た時、イエロー・マジック・オーケストラが前座をやったんだよ」と彼に伝えた。
すると彼は「エ?!シゲさん、それ観たの?」とすかさず問い返してきた。
実際にコンサートに行かなかった私は正直に「行かなかった」と答えるとPaulは少し笑って…「失敗したね」と言った。
後悔が倍増した。
320
上下の写真はYMOグッズ。テンコ盛り!

310ワールド・ツアーの写真も飾ってある。香津美さん、若い!
イーストヴィレッジのBottomlineで機材を積み下ろしている写真なんかもあって面白いことこの上なし!

33070年代だけでなく、60年代グッズの展示も用意されている。

340しかし、この時代のロックはスゴいよなぁ。

350他にもこの時代のロックに関するさまざまなグッズが飾ってある。

360ひとつひとつジックリ見ると実におもしろい。

370ミュー・ミュージック・マガジン(現ミュージック・マガジン)の表紙。

380コレは70年代のライブハウスの様子。そうだよナァ、新宿ロフト…こうなってた!忘れちゃうもんだね。もっと写真を撮っておけばよかった。
以前記事に書いたが、先日ロフト跡に行ってみたがどこにあったかハッキリとはわからなかった!

390そして、会場内には青山にあったレコード店、「パイドパイパーハウス」が復活して出店している。
コレもファンにはうれしいところだろう。

400「あ、買えるんだ~!」とうれしそうにCDを選んでいるお客さんが何人もいた。エコバッグ等のオリジナル・グッズも販売してるよ。

410こちらは一階の展示。

425植村コレクションだ。
70年代とくりゃ当然音楽の主役はLPだからね。

430先日の新宿の『ミュージック・ジャケット・ギャラリー』でも展示されたデカ帯!

450
今回は植村さんの著書に合わせて帯つきのLPが集められた。

460私は時折Marshall Blogに書いている通り、80年代に入ってからは時代のロックを自主的にはまったく聴かなくなってしまった。
言い換えればパンク/ニューウェイブ・ムーブメントの後のロック。
または大衆受けを狙った聴きやすいロック。
『ベストヒットUSA』に登場するロックといえばわかりやすいか?
70年代のロックで育った自分にとってはこれらのロックに何の刺激も受けなかったし、おもしろく感じなかった。80年代は私にとっては暗黒時代だった。
今でもいくつかの例外を除いては自分から新しいロックを聴くことはなくて、仕事上聴いて勉強しておかなければならないモノだけを聴いている。
それでもいつも何か面白いものはないか?と探してはいるけどね。
それは決して「新しいモノ」でなくてもいい。70年代のロックに対抗できそうなものであれば何でもいい。
私はこれまでひとりで約1,600を超える記事を新旧のMarshall Blogで書いてきた。
その中で生意気にも「私的ワガママロック論」を近所のガンコジジイのボヤキよろしく日常的に展開しているのだが、そのネタの礎になっているのは1965~1978年ぐらいまでのロックなのね。
もちろんその後に出て来た音楽に全く触れないということはない。特にギター史においては80年代の技術的進化を無視することは不可能だ。
でも基本的には1976~1982年ぐらい、年齢でいえば14~20歳ぐらいの間に夢中になって蓄えたロックの知識だけで勝負している。
ペロリペロリと自分の身体の薄皮を向くように知識や経験を開陳しているのだ。
いつも読んで頂いている方々にはその私の偏狭さをよくご理解頂いていることだと思う。
でも、私はそれでいいと思ってるのね。
ナゼならロックは、70年代半ばまで隆盛を極め、すべてやり尽くしてしまった音楽だと認識することに一切の疑義を感じ得ないからだ。すなわち、70年代のロックを聴いていないのはロックを聴かず、ロックを楽しんだことにはならないのだ。

いとしの「70年代」…ずいぶんと遠くに行ってしまった。

490コレで70年代への時間旅行はおしまい。

500さ、また現実の世界へ戻ろう…。

510『70'sバイブレーション YOKOHAMA』の会期は2015年8月1日から9月13日まで。
ココに紹介した展示物以外にコンサート等たくさんの催し物が用意されている。
同世代の方、あるいはそれ以上の方々、またロックの黄金時代に興味のある若い人…横浜へ行って時間旅行を楽しんできてください。

詳しい情報はコチラ⇒70'sバイブレーション YOKOHAMA公式ウェブサイト

520それにしても暑い…。早く帰ってシャワー浴びよう!

530Marshall BlogのMusic Jacket Galleryはコチラ

(一部敬称略 2015年7月30日 横浜赤レンガ倉庫1号館にて撮影)

2015年7月30日 (木)

MUSIC JACKET GALLERY 2015

最近facebookを通じて、「日本の音楽ビジネスのガラパゴス化」という現象に関する一文を目にした。
日本の音楽業界は「特有の側面を多く持っているがために、外人アーティストの参入や日本企業の海外での成功を妨げている」というのが命題になっていて、その原因を論じていらっしゃる。
書き手はこの業界に長い外人の方。
先方は覚えていらっしゃらないと思うが、実は私はこの方に数回お会いし存じ上げている。と~ても温厚で素敵な紳士だ。
音楽を見て来た環境が大きく異なることが想像されるため、熱心に反駁を加えるのは控えるが(この業界は世界規模でやたらと狭いし)、ひとつ、いや、ふたつ気になったことがあったので記しておきたいと思う。
私は学理的に音楽を分析するのは好きな方だが、ロックあたりで「文化」がどうだの「時代」がどうだとゴチャゴチャしかつめらしい言葉を使って大上段に構えた論議が好きではない。
第一、そんな文章はつまらん。
あ、この方の文章について言っているのではありませんよ。この方の文章の内容はストレートで読みやすい。
…なのでジーサンの言いたいことを上っ面だけ書かせてね。

さて、ひとつは「外人アーティストの参入」を妨げていると診る件について。
コレは日本にロックが普及してしまい、ロックのやり方を覚えてしまったため、ワザワザ言葉のわからない外国の音楽を聴かなくてもよくなったってことでしょうネェ。
それと、元来我々は西洋音楽についてはカテゴリーを問わず、すべて欧米がやることを手本にしてきたワケだけど、ロックに関していえば、パンク/ニューウェーブのムーブメントが収まったあたりから特に手本にすることがなくなっちゃたんじゃないかしら。
もう全部自分でできるもん!ということ。
簡単に言えば、洋楽がつまらなくなったということよ。
いつも書いているように私はゴリンゴリンの洋楽派だ。でも、つまらんものはつまらん。
それに日本人も生活様式や食べ物の欧米化で、ある種白人に近づき、それほど向こうの文化に憧れる必要がなくなったということもあるかもしれない。

でもね、コレは話が反れちゃうけど、キチンとした場所、すなわち紳士がタキシードを着、淑女がイブニング・ドレスをまとうような機会に接した時のあの猛烈な劣等感はマジでツライよ。
みんな色は白く、大きく美しい瞳、長いまつ毛、形のいい鼻梁とさわやかに上がった口角。
手足が長く、背筋がシャキとしていて、腰の位置が高く、男性の場合は肩の線や胸板の張り具合など問答無用でカッコイイ。
そして、自信タップリに腹の奥底から声を出して、歌うように話す自然な英語。
マンツーマンなら何でもない。
何十人にも囲まれて何時間も一緒に過ごしてごらんなさい。酒も入るし、つい自分もそうなっていると錯覚しちゃうんだな。そして、トイレの鏡で己が姿を目にした時の落胆ぶりったらない。
これは『国家の品格(新潮新書刊)』を著した数学者(新田次郎と藤原ていの次男)の藤原正彦氏ですら同書内で触れていた。
マァ、そんな時には「ナ~ニ、連中には着物は着れまい。よしんば着れても似合うまい…」と思うしかない。しかし、考えてみると自分も着物は着れないし、似合いもしないのだ!

話しは戻って…
それともうひとつは、「日本はいまだにCDが主流」ということ。スペシャル・バージョンでひと儲けしたい人やオマケが欲しいファンには好ましかろうが、新人やカルトなアーティストがお店にCDを置いてもらうのに四苦八苦しているという状況が指摘されている。
このあたりは「大きなお世話」でしょう。
コレについは国民性が強くからんでいるんじゃないかしら?
モノに対する感覚っていうのかな?
日本人は肉親が亡くなればお墓を建てて、家には仏壇を据えて、それらを丁寧に愛でることによって故人を偲ぶでしょ。結局モノが好きなワケ。
でも西洋の人は、死んだおじいちゃんが大切にしていた懐中時計一個がありさえすればいいの。一番大切にするのは思い出なのね。
もちろん連中だってお墓は建てるし、今でも火葬を避けたがる傾向が強い。
向こうの人は写真をとても大切にして、やたら飾るでしょ?あれは思い出を飾ってるワケ。モノより思い出の方が大切なんだ。
でも日本人は絶対に「モノ」。だからいつまでたってもCDという実在する「モノ」がスキなの。
「心はかたちを求め、かたちは心をすすめる」
これは稲荷町の仏壇屋のコピーだけど、仏教の何かの経典が出自になっていると聞いた。(その仏壇屋に尋ねた)
仏教で言ってるぐらいなんだから…それぐらいモノを愛でる国民なんですよ。
だから、みんなでCDという「音楽のモノ文化」を守ろう!

今日の本題…CDという親亀がコケれば、いとも簡単にコケてしまうのがジャケットだ。
そのジャケット文化を保護・普及する努力を続けているのが『MUSIC JACKET GALLERY』。
Marshall Blogではもうスッカリおなじみですな?
その特別展が今年も五月に東京で開催された。(開催期間は5月15日~24日)
私は、折悪くイギリス行きと重なってしまい今年はお邪魔することができなかった。
そこで、出展者のおひとりでもある日本屈指のLP/CDコレクター、植村和紀さんに写真を借り受けここにレポートさせて頂くことにした。

05

今年も会場は新宿の高島屋一階のオープンスペース。

10_2内容は今年も開催された「ミュージック・ジャケット大賞」の受賞作の紹介。候補作が50点展示され大賞をはじめとした受賞作品がを発表された。

30_2日本のジャケットデザイナーたちによる作品の数々を、その時代性と芸術性を軸に紹介するコーナー。

40v_2洋楽レコード国内盤のジャケットやオビの展示。
原題から大きくかけ離れた独自の邦題、味わい深い手書き文字によるタイトルデザイン等、洋楽レコード日本盤だけの「オビ付き」ジャケットを展示してその魅力をアッピール。
Roy Woodの『Mustard』が入ってるね。植村さんらしい。

50v_2そう、これらはすべて植村さんのコレクション
言い方を換えれば植村さんの本の現物展示だ。
この本についてはコチラ⇒【Music Jacket Gallery】 植村さんの本!

20v

ドワ~。こんなデカオビも!スゴイな…ナントカダイオウイカを釣り上げたみたいだ!

70v_2さらに、豪華・特殊パッケージをド~ンと展示。2014年に発売された豪華な特殊仕様のパッケージ(初回限定盤、リミテッド・エディション、立体パッケージ、BOX アーカイブ等)が集められた。

80v_2また、今回はジャケット・デザイナーによるトーク・ショーなどが企画され、ピーター・バラカンさんも檀上に上がった。
バラカンさん、『Hot Rats』を手にしてナニを語っていらっしゃるのかな?
氏の著書『わが青春のサウンドトラック(株式会社ミュージックマガジン刊)』や『ジャズ・ロックのおかげです(中山康樹、市川正二共著:径書房刊)』で『Hot Rats』を大推薦されているぐらいだからさぞかし熱意のこもったお話しが聞けたことだろう。
バラカンさんは1970年11月にロンドンでFrank Zappaをご覧になっているという…何ともうらやましい!

90_2他にも、普段見ることのできないCD とアナログレコードの製造過程をプレス工場潜入ムービーと途中生成物を展示してわかりやすく解説したり、音楽Blu-ray Discの映像作品を上映したりと例年通り盛りだくさんの内容でたくさんのお客さんの耳目を集め、ジャケットの楽しさや重要性をアッピールした。
考えてみりゃ、今度Marshall Blogも紹介してもらおうかな…。

昨年のレポートはコチラ⇒MUSIC JACKET GALLERY 2014

さて、盛りだくさんといえば、またまた植村さんがらみで興味深いイベントがもうすぐ開催される。
『70's バイブレーション!YOKOHAMA』と題した展示会。
キャッチ・コピーはこうだ…真夏の横浜・赤レンガ倉庫に70年代ニッポンの音楽とポップカルチャーが蘇る…。
ああ、麗しの70年代。
我がセイシュン時代。音楽の関しては「甘い」の一辺倒、恋愛に関しては「酸い」一筋!
開催は8月1日からだが、7月31日の内覧会&レセプションにご招待頂いたので、しっかり取材をして来たいと思っている。
Marshall Blogの宣伝にもなるかな?

70's バイブレーションYOKOHAMA!の詳しい情報はコチラ⇒公式ウェブサイト

100_2
Marshall Blogのミュージック・ジャケット・ギャラリーもよろしく!⇒コチラ

(一部敬称略 2015年5月16日 新宿高島屋特設会場にて撮影 ※写真提供:植村和紀氏)

2015年7月14日 (火)

【Music Jacket Gallery】サウンドトラック盤ジャケット特集<前編>

今回のミュージック・ジャケット・ギャラリーは「サウンドトラック盤」特集。
別項にも記した通り、私は父の影響を強く受け、元来映画が大好きで、映画あるいは映画音楽から音楽の世界に入った。

10_3それにしても、映画の世界も変わり果ててしまったナァ。
アニメばっかりになっちゃった。
昔はアニメは子供のものだった。そこへ1969年、手塚治虫が「大人のアニメ―ション」とか銘打って『千夜一夜物語』を制作した。ものの見事ズッコケて虫プロが傾いちゃったんじゃなかったけ?
手塚治虫はマンガはスゴイけど映像に関してはそれほどでもなかった…なんてことも言われているようだけど、失敗の原因のひとつは「大人はマンガを見なかった」からだったのではなかろうか?
今では大人も夢中になってアニメを見てる。
それと、何から何までディズニーになっちゃった。
興行収益の上位といえば、ここのところもう何年もアニメとディズニーなんじゃないの?(最近の邦画は対象外)
これはひとえにハリウッド映画の凋落が原因だと思っている。
アニメじゃなければCGの人形劇か、過去の名画のリメイクばっかりだ。
俳優も小ぶりになった。
ジェイムス・スチュアートやケーリー・グラントやハンフリー・ボガートのような本当にカッコよくて存在感のあるいい男優が見当たらなくなった。みんな軽い。
女優陣も美人の基準がスッカリひん曲がってしまって、グレース・ケリーやエリザベス・テイラーやデボラ・カー型の真性美人女優がいなくなっちゃった。
さらに、ピーター・ローレやアーネスト・ボーグナイン、マイケルJ.ポラード、あるいはジョン・カザールみたいな優れた性格俳優も見なくなった。
これは、作る映画の質が低くなったからなのではないか?いい作品がないから役者が育たない。必要ともされない。
では、いい映画とは何か?
それは「いい脚本」から作られる映画ということだ。
コレはヒッチコックや黒澤明も言っている。
ヒッチコックはストーリーを明解にするために短編小説しか素材に用いなかったし、『七人の侍』の脚本を書いた黒澤・橋本・小国のコンビネーションは世界の映画人がうらやんだという。
音楽でいえばメロディだ。
いいメロディがなくなってしまった今の音楽界と状況がよく似ている。

そんなだからとにかく映画を観なくなった。
子供の頃はアカデミー賞の結果を楽しみにしていたものだが、全く興味が失せてしまった。バカバカしくて…。もうだいぶ前になるけど、昔アカデミー賞の授賞式の会場に使われていたLAの「シュライン・オーディトリアム」に入った時は大興奮しちゃったぐらいなんだから。
まず最初の脱線。
この会場ではStan Getzのライブ・アルバムなんかが録音されているが、Genesisが『GENESIS ARCHIVE 1967-75』というボックスセットに、1975年1月24日にここで全曲演奏した『Lamb Lies Down on Broadway』の音源を残している。


しっかし、音楽でも映画でも、文句ばっかり言ってるナァ…。でも私は映画も音楽も心から愛しているのだ!
でも、いくら新しくても「いいものはいい」と言いますから。最近では五月にロンドンへ行く飛行機の中で観た若年性アルツハイマーの恐ろしさをテーマにした『アリスのままで(Still Alice)』というのがヨカッタ。
主演のジュリアン・ムーアやアレック・ボールドウィンの演技が素晴らしかったし、映画自体テーマにふさわしくコンパクトに、そしてとても丁寧に作ってあっ好感が持てた。

20_2そんな映画好きなものだから、MJGが「サウンドトラック特集」を企画していると聞いて「コリャ、記事を書くとなったら紙幅がいくらあっても足りないぞ…」と思ったりもしたが、植村さんには恐縮だが、そうはならなかった。
…というのも、映画の作品自体にはそれぞれ色々と思うところがあるのだが、「サウンドトラック盤のジャケット」ということになると、特段語るべきことが見つからなかったのだ。
なぜなら、コレは当然のことなのだが、サントラ盤のジャケットはその映画の有名なシーンのスチール写真やロゴやタイトル等々、映画のイメージを一発で想起させる意匠をそのまま使うのが普通だからだ。
要するにサントラ盤のジャケットのためのオリジナルのアイデアというものがほとんど見当たらない。
コレは仕方ない…というより他にやりようがない。
それでも好きな映画を中心にゴチャゴチャやってみた。
尚、展示は2013年10~12月のもので、現在の展示アイテムではないことを予めご了承ください。

では…

『E.T.』のサントラ盤とくれば、この指先を合わせるシーンか、例の満月をバックに自転車が空を飛ぶシーンということになるわな~。
コレは丸の内ピカデリーへ今の家内(今も昔もひとりだけです)と観に行った。ものすごく混んでいて、前から2列目ぐらいの席だった。
この頃のスピルバーグはヨカッタね。『激突(コレ、原題は「Duel」という。つまり「決闘」ね。そっちの方が良かったのでは?)』を見よ!デニス・ウィーバーよかったナァ。
『ジョーズ』、『未知との遭遇』、『レイダース』、そして『E.T.』。この辺りがピークかと思いきや、『シンドラー』でまたかましてくれた。
でも、私にとってのスピルバーグはここまでだったかな。
『戦火の馬』とかいうのを飛行機で観たけどツラかった。

帯に「ロードショー」誌のロゴが見える。私は「スクリーン」派だった。今にして思うと、よくもこんな洋画の専門誌がしのぎを削る時代があったもんだ。
ロードショー誌は2009年に廃刊になったそうだ。

40_3コレも家内と映画館で観たな。どこの映画館だったか覚えていない。
まさにこのジャケットなんかはコレ以外やりようがないでしょう。
この映画はおもしろかった。
「♪ゴッ~トバッタ~ズ」という主題歌もはやった。
この曲ではまったくその片鱗を見せないが、Ray Parker Jr.はカッティングの達人で、Herbie Hancockの『V.S.O.P.』ではすさまじいプレイを聞かせてくれる。

50_2このオムニバス映画はタイトルがアニメーションで、それがすごくヨカッタ。
でも映画自体はどうってことなかったことしか覚えていない。

60_2『ウエスト・サイド物語』は中学1年の時に日比谷のスカラ座にひとりで観に行ったことをよく覚えている。
あの頃はそういうオリジナル映画かと思っていた。
つまり、ミュージカル映画のほとんどがブロードウェイやウエスト・エンドの舞台がオリジナルであることを知らなかったのである。子供だったから。
『West Side Story』は1957年のブロードウェイで初演された。
そして、映画は1961年の公開。
妖しい口笛のメロディ。黄、赤、青と刻々と変わる画面に不規則に描かれた縦の線。
そこへいきなり入ってくるオーケストラの爆音!
その縦線が遠ざかって行くのと同時に現れるタイトル。そしてその縦線がマンハッタンの摩天楼だったことがわかる。
なんて、いかにも正確に覚えているように書いているけど、一部DVDで再確認した。
でもはじめて観た時は感動したナァ。全身にトリハダが立った。
このジャケットも映画のロゴを使わざるを得ないでしょう。


美術はソール・バス。いかにものデザイン!素晴らしすぎる。
ソール・バスの映画でのいい仕事を挙げたらきりがないが、特にヒッチコックの『北北西に進路をとれ』、『めまい』、『サイコ』がカッコいい。ヒッチコックとの仕事はこの三本だけだったそうだ。
もっとあってもよさそうなのに…。加えてこのあたりのバーナード・ハーマンの音楽も最高!
他にも私の大好きな『攻撃』、また『黄金の腕』をはじめとしたオットー・プレミンジャーの諸作、『シャイニング』のポスターとかね…挙げ出したらキリがない。
スピルバーグの『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』もそう。コレなんかスピルバーグがソール・バスにタイトルを作ってもらいたいがために制作したんじゃないかとさえ思っちゃう。
180_2
ちなみにこの京王百貨店の包装紙はソール・バスの仕事であることはよく知られている。ミノルタや紀文のロゴもソール・バスの手によるものだ。

Keioさて、『ウエスト・サイド物語に』もどって…。
当然上のサントラ盤のLPは持っているんだけど、チェックしてみたらCDは持っていなかった。
代わりにこんなのいかが?
コレは大阪の難波のレコード屋さんでヘロヘロになりながら売られていたシングル盤。100円か200円だった。
オリジナル・ブロードウェイ・キャストのレコーディングで「America」と「I Feel Pretty」のダブルA
面。
もう一枚同じデザインで「Tonight」のシングルがあったんだけどどっか行っちゃった…。

J_s41a7792下は私が持っている『ウエスト・サイド』色々。
上段左から…
●穐吉敏子=Charlie Mariano
●Dave LiebmanとGil Goldstein
●オリジナル・スコアを使ったナッシュヴィル交響楽団の全曲集
下段へ移って…
●Richie Cole
●定番のOscar Peterson Trio

別に意識してるワケではないんだけど、何となくこうして集まってしまう。
…というのはやっぱり素材がズバ抜けていいからなんだろうね。
私はこのレニーの代表作は、人類が作り出すことのできる「いい音楽」の限界のひとつだと思っている。これ以上いい曲を作るのは不可能なのではないか?
ミュージカルという括りで言えば、一般的ながら『サウンド・オブ・ミュージック』も『マイ・フェア・レディ』も『メリー・ポピンズ』もはたまた『ロッキー・ホラー・ショウ』もそれぞれ鉄壁の名曲で固められているけど、レニーにはかなわない。
その完璧さゆえか、下の各再演盤のほとんどが原曲をなぞっているだけに等しい内容になっているのが面白い。
かのDave Liebmanですらかなりオリジナル・メロディを忠実に奏でていて、いつものLiebman節があまり出て来ない。もっともそういうコンセプトで制作をしているんだろうけど…。
そこへいくとOscar Petersonの作品はかなり大胆なアレンジで挑戦していて、そこが定番たる所以なのかもしれない。
Richie ColeのヤツはVic Jurisのギターがぶっ飛んでいてカッコいい。
Toddも「Something's Coming」を演ってたね。

J_s41a7789ヒッチコック大好き。
登場人物はきれいに着飾った正統派美男美女ばかりだし、短編小説しか題材にしない脚本はよく書けているし、音楽は濃密だし、撮影は奇想天外だし…すべてヒッチコックの演出のなせるワザ。
映画本来の魅力が全部詰まってる。
この人もイギリス人。
アールズ・コートの住居跡にはブループラークがかかっているらしいが、五月に行った時チェックするの忘れた!
左下はヒッチコックの名言『It's only a movie』をタイトルにした伝記本。
1945年の『白い恐怖(Spellbound)』の撮影の時、当時大プロデューサーだったデヴィッド・O. セルズニックが送り込んだテクニカル・アドヴァイザーが気に入らなかったヒッチコック(ヒッチコックは撮影技術の大家)は、あるシーンを訂正しようとするそのアドヴァイザーに向かってこう言った;
「マァ、キミ、こんなのたかが映画じゃないか(my dear, it's only a movie)」
カッコいい~!彼ほどの巨匠がそう言ったのである。Mick Jaggerからさかのぼること約30年前のことだ。
で、この伝記は「ヒッチコックが好き」と言ったのを覚えていてくれたHal Leonardの社長が日本に来る時にお土産でプレゼントしてくれた自社取扱い商品。
プレゼントもさることながら、自分が言ったことを覚えていてくれたのがうれしい。あと、彼は私がFrank Zappa&ジャズ・マニアということも知っている。
お嬢ちゃんがShige Blog出ているので、パパに敬意を表して紹介しておこう⇒コチラ

J_s41a7823 ああ、また出てしまった。
この映画は一体何回観たことか…。
ジャケットのスチール写真はジョー・バック(ジョン・ヴォイト)とラッツォ(ダスティン・ホフマン)が自分たちが住処にしていた廃屋が解体されるのを茫然と眺めているシーン。
ジョーが寒そう。外套を買う金がないのだ。
この映画についてはもう何度かMarshall Blogに登場していて、もうここで書くことがないので、過去の記事を紹介しておく。
我ながらお気に入りの記事だ。Nilsonのところだけでも拾い読みして頂ければ幸いである。

Music Jacket Gallery~日本独自ジャケットLPコレクション<前編>  

前回、『乗り物ジャケット』の時にこの作品については『サウンドトラック盤』特集の時に触れる…と書いたのでもうチョット触れる。
それは、お定まりのNilsonの「Everybody's Talkin'(邦題:「うわさの男」)」のこと。まただ。でも書きたい。
この歌は、「自分の好きな服装にマッチする太陽が輝く気候のところに行くんだ。小石のように大洋をひとっ飛びするんだ!」というようなことを歌っている。
で、この曲は映画の最初と最後でガツンとフィーチュアされるんだけど、最初は田舎から飛び出して、ニューヨークで有閑マダムを相手にするハスラーを目指すカウボーイ姿のジョー・バックのために使われる。
そしてエンディングでは、健康のために陽光を求めてフロリダに向かうバスの中のアロハ・シャツ姿のラッツォのために流れる。
スゴイなぁ、ジョン・シュレシンジャー。この人、イギリス人だったのね?
コレ、英語の歌詞がリアル・タイムで理解できれば涙倍増でしょうな。私は違いますが…。
帰国子女のような英語の達人を除いて、残念ながら大抵の人は欧米の文化を本当に楽しんでいるとは言い難い。私も含めてですが…。でも努力はしてます。
そう考えるとドメスティックなエンタテインメントに人気が集中するのもムリはない気がしてきた。

70_2「ニック、ニック、ニック!」
この単車がカッコいいといって、小学校の時にクラスで流行った。
でも私はこの映画はあまり好きじゃなかったな。
だって面白くないんだもん。
それと、重厚なハリウッド映画をそれまでにもタップリ観ていたので、アメリカン・ニュー・シネマってのはどうもチープでタイプではなかった。
先の『真夜中のカウボーイ』や『俺たちに明日はない』もアメリカン・ニュー・シネマのひとつに数えられるけど、つ出来はすっかり別物だ。
だから、私はこの映画を小学校の時以来観ていない。
でも印象に残っているのはジャック・ニコルソンがウィスキー(バーボンかな?)をラッパ飲みして、たたんだ肘をバタつかせてこう叫ぶところ…ニック、ニック、ニック!

ところでコレは完全に映画『イージー・ライダー』のサントラ盤の体をしているが、The Byrdsの『Ballad of Easy Rider』というアルバム。

80_2オリジナルのジャケットはこんな感じ。我々世代にはDoobie Brothersでおなじみの「Jesus is Just Alright」がこのアルバムからシングル・カットされている。この曲のオリジナルはゴスペル方面。

Balladridercover『イージー・ライダー』の正式なサントラ盤はこっち。
サウンドトラック盤というのはフィルムの音の入った部分を音源として独立させたものを指すため、そのことを鵜呑みにすれば、映画の内容とサントラ盤の内容が合致するハズなのだが、現実はゼンゼンそうはいっていない。
一番わかりやすい例は『ウッドストック』のサントラ盤であろうか。
あのLP三枚組はフェスティバルのライブ盤という扱いであればアレはアレで立派に成立する作品だと思うが、盤には「Music from the original soundtruck and more」と謳ってある。
いくら「more」と記してあってもゼンゼン内容が違うでないの。
その点この『イージー・ライダー』のサントラ盤は、映画の内容を可能な限り代弁すべく、進行に沿って曲が収められているそうだ。
これらの曲は、この映画の編集を担当したドン・キャンバーンという人がオートバイのフィルムを何時間も見て、そこからインスピレーションを得、自分のレコード・コレクションの中から選曲した。そして、その使用料たるや百万ドル(当時のレートで3億6千万円)にも上り、映画の製作費より高かったとか…ホンマかいな。
しかし、それだけこの映画における音楽の重要性が高く、また、ベトナム戦争が背景にあった1969年当時のロックに力があったことを示しているということだ。
Bob Dylanもこの映画の制作に協力も求められたが乗り気ではなく、イヤイヤ「It's Alright, Ma」という曲を提供し、The ByrdsのRoger McGuinnに演奏させた。
それだけでは満足できぬと制作サイドは曲を書き下ろすようにDylanに依頼する。
Dylanは「Ballad of Easy Rider」の一番だけをサラッと書いて制作サイドに告げた。
「マッギンに渡してくれ。そうすれば彼はどういうことかわかるハズだ」
ヤル気ね~!
Roger MuGuinnは曲を完成させて演奏した。
また、映画の中ではThe Bandの「The Weight」も使用されているが、サントラ盤への収録許可が下りなかったため、Smithというバンドが演奏したバージョンに差し替えられている。
Jimiは邦題で笑いが取れる曲のひとつ、『Axis: Bols as Love』から「If Six was Nine」が選ばれた。その邦題とは「もしも、もしも」。
カメか?このネタは三宅さんとジミの話しをしていると時折話題に上がる。
ま、何と言ってもこの映画の音楽で一番得をしたのはSteppenwolfじゃないかね~?「いつものラーメン」はさぞかし美味だったことだろう。
でもね、出て来る度に毎回かいているけど、このカナダのバンドは海外ではモノスゴイ人気だったんだってよ。

90_2今の時代、「いちご白書をもう一度」は知っていても、『いちご白書』を知らない人は結構いるのでは?この映画、原題を『The Strawberry Statement』という。
…なんてエラそうに言う私もこの映画は観ていない。
やっぱりCSNの曲が使われている。この時代のCSN強し!
観たこともないのにこの映画を取り上げたのは主題歌になっている「Circle Game」が好きだったから。
小学生の時、ラジオで聴いてBuffy Saint-Marieの激ちりめんビブラートに驚いた。
「ウワ!歌ヘッタ~!」って。
歌詞は「♪ロンドンロンドンロンドンサーコーゲー(←こう聞こえた)」しかわからなかったけれど、曲がものすごくよくて、メロディをすぐに覚えてしまった。
後に『Ladies of the Canyon』でJoni Mitchellのオリジナルを聴いたが、どうも違う。イヤ、全然違う。
三つ子の魂百まで…いまだにJoniが演奏するこの曲を聴くと「間違えて歌っている…」ように聴こえるのだ。

しかし、昔はこういう学生運動の映画なんてのがあったんだね。忘れていたよ。
音楽もしかり。
演る方も聴く方も、今こそ若者に頭脳警察のパワーを知って欲しい。

100_2「ア~イム・スパルタカス!」…キューブリックも好きだァ。
『スパルタカス』も『現金~』も『ロリータ』も『博士~』も『オレンジ』も『バリー・ロンドン』も『シャイニング』も『アイズ・ワイド~』も大好き。
『バリー~』からはリアルタイムで映画館へ観に行った。
何しろ『シャイニング』の舞台となったコロラドのホテルまで行ったけんね(ついででだけど)。
この『2001年宇宙の旅』ももちろん大好き。さっぱりワケがわからないんだけど、いつもジックリ観てしまう。
トム少佐は出て来ないけど、David Bowieの「Space Oddity」はココから。タイトルからしてもいかにも…。
それに、この映画の準主役、HAL-9000というコンピュータがあるでしょ?殺人コンピュータ。
あの「HAL」という名前はIBMの先を行くということで、I・B・Mの一文字ずつ前のアルファベットを採ったと言われているけど、違うんだって。
このHALはHercuristically programed ALgorithmic computerの略で「発見的学習能力をプログラムされたアルゴリズム・コンピュータ」という意味なのだそうだ。
IBMはキューブリックがコンピュータに殺人させたことがお気に召さず、このHALの語源のくだりも快く思わなかった。そんなもんだから、映画の中に映っていた会社のロゴを全部取り外すよう要求し、社員にもこの映画を観ないようにしたそうだ。大人げないナ…。
一方、PAN AMはこの映画に協力的で、キューブリックの要請に応じてロゴの使用を快諾した。あのスチュワーデス(キャビン・アテンダントっていうのか…?)の制服にPAN ANのロゴが付いているのはこのせい。
ところが、皮肉なことにパンアメリカン航空社はこの映画の舞台の10年前の1991年に破産してしまった。
昔、あのPAN AMのロゴの入ったバッグを持っている人をよく見かけたよね。「海外旅行行って来ました~!!!!」のサインだったんね、アレは。

キューブリック作品はいつも音楽がすごいでしょ?映像的なパワーを持っている。
『2001年』では何と言っても印象深いのは「ツァラトゥストラ」と「美しき青きドナウ」でしょう。リヒャルトとヨハンのシュトラウス・コンビ。
ワケはわからなくても「ツァラトゥストラ」の「♪ドンガンドンガン」で猿が一発で進化してしまいそうな猛烈なパワーを感じさせる。
宇宙船の「ドナウ」もしかり。
このサントラ盤、『第2集』とある。サントラ盤で連作?
確かにこの映画のサントラ盤はいくつかバリエーションがあったようだ。それで、劇中で使われているクラシック曲をフル・レングスで収録してあるバージョンはとても一枚には収まり切らず、こうして分割されたようだ。
他にもリゲティやハチャトゥリアン(あの「剣の舞ね」)といったクラシック曲がこの映画には使われたワケだが、実はこの映画のために書き下ろしたオリジナル・スコアがあったそうだ。
作者はアレックス・ノースという映画音楽作曲家。
キューブリックは、アタリで使っていたそれらのクラシック曲をそのまま本チャンに使ってしまったのだ。
ノースがこのことを知ったのはプレミアの時だったというのだから残酷な話しじゃあ~りませんか。
しかも、これには後日譚があって、「キューブリックは音楽の使い方に失敗して作品を台無しにしてしまった。もし、キューブリックがノースの作品を使っていたら『2001年』はもっとスゴイ作品になっていた」という人が現れた。
これが通りいっぺんの映画評論家かなんかだったら何の騒ぎにもならないが、この発言の主が、「超」がいくつも付く一流の映画音楽作曲家ジェリー・ゴールドスミスだったのである!
私はキューブリックに付いて行きます。

さて、このジャケットにある宇宙ステーション。機内で乗組員がジョギングするシーンがあるでしょ?あのセットだけで、当時の金額で2億7千万円(1$=360円換算)もかけたんだって。
1969年にアポロが月に行った時、あの月面着陸の映像は、実はキューブリックがどこかのスタジオで撮影したというまことしやかな噂が立った。そして、アームストロング船長が地球に帰って来て受けた最初のインタビューでその質問が出たという。
何しろこの話しをネタにしたような『カプリコン1』という映画もあった。アレのテリー・サバラスは最高だった。ジブリの『紅の豚』という作品の主人公のキャラクターは完全にアレが元ネタでしょ?だって声(森山純一郎)が同じだもんね。
で、アポロ11号のアームストロング船長は「フェイクより実際に月に行く方が簡単だ」と答えた。もし、キューブリックに任せておいたら本当に月に行くより費用がかかっていたかも知れないからね!
そういえば「月の石」見に行ったナァ。万博じゃないよ、上野の科学博物館。ウチは万博へは日帰りで行った。アメリカ館の長い行列に並んでいる時間なんかなかった。
ちなみに、万博が出て来る山田洋二の『家族』というロード・ムービーはおススメですぞ!

ところで、この映画はある種オムニバスのように内容をいくつかに割っていて、最後は「木星と無限のかなた(JUPITER AND BEYOND THE INFINITE)」という章で終わる。
何やら宇宙の大パノラマを主人公が暴走し、光の中に突入する(このシーンの撮影が一番大変だったらしい)と、そこには年老いた自分とモノリス、そして胎児がいた…みたいなサッパリワケがわからないシーンだ。ま、クライマックスといえばクライマックス。

一方、Pink Floydに『Meddle』っていうアルバムがある。あのブッチャーのテーマが入っている『おせっかい』ね。
このアルバムのB面は23分半にも及ぶ大作「Echoes」が占めている。
昔、四人囃子はこの曲を完璧に演奏できるバンドとして有名だったのだが、この「Echoes」という曲、実は『2001年』のその最後の章、「木星と無限のかなた」と完全にシンクロしてるっていうのよ。
言い換えれば映画の中で起こっていることを音にしたというのね。確かに歌詞にもそんなくだりがある。
「ホンマかいな?」と思って、早速DVDとCDを引っ張り出して来て、DVDに合わせてヘッドホンで「Echoes」を聴いてみた。しかも2回!
こんなことしてるからMJGの記事を書くのに膨大な時間を要してしまうのです。でもコレが楽しい!
できればひとりでも多くの人に読んでもらいたいのです。

さて、やり方は簡単。DVDの音を消して、チャプター機能を使って「木星と無限のかなた」まで飛ぶ。そして、そのタイトルが現れた瞬間に「Echoes」に合わせておいたCDのPLAYボタンを押すだけ。
画面は宇宙、音は例の「ピッ、ピッ」…。
コレが異常にピッタリくる。数か所画面に合わせてサウンドが変わるところもあるような気もしてくる。Nick Masonのドラムがいつもよりインテリジェントに聴こえる。
そして、そのまま見て、聴いていくと…ナント!映画と曲がまったく同時に終了するのよ!
コレ知ってた?有名な話しなのかしらん?今度、大二さんに会った時に訊いてみよう。
マ~ジで驚いたわ!
やるナァ、Floyd、『死刑台のエレベーター』よりスゴイわ。

関係ないけどよくテレビの右下の丸い小さな枠で別の映像を流すでしょう?芸能人水泳大会みたいなヤツ。最近、テレビでアレを指して「ワイプ、ワイプ」って呼んでるけど、正しくは「アイリス」っていうんじゃないの?映画用語。

110_2「ジャケット」といっても上着のことでもレコードのことでもない。
『フルメタル・ジャケット』とは「被覆鋼弾」という弾丸の種類の名前で、鉛でできた弾芯を真鍮で覆ったモノを指す。このジャケットに見られるヤツがそう。
このタイプの弾丸は貫通性に優れていて、軍用ライフルにはこの弾丸が使われる。一発で仕留めるためだ。
ナニを?
「人を」…だ。
だからヘルメットに書いてある…「BORN TO KiLL」って。
その横にはピースマーク。一種の撞着だろう。またはイヤミ。これは反戦映画だから。
ところで、日本人は鉄砲の弾丸を「タマ」と一口に呼ぶが、英語では「弾丸」と「薬きょう(cartridge)」とに分けて呼ぶ。
すっ飛んで行くヤツが「弾丸」だ。英語では「bullet」。
スティーヴ・マックィーンとジャクリーン・ビセットの『ブリット』がコレ。サンフランシスコの街の傾斜を利用したカーチェイスが壮絶で、サンフランシスコに行った時、現地の人にチョットだけロケ地を案内してもらってうれしかった。
そういえばこの映画も父に教わった作品のひとつ。
で、この「bullet」という言葉は「ブリット」でも「バレット」でも、恐らくネイティブには通じないだろう。
「ビューレット」と発音すればOK。
だから新幹線のことは「弾丸超特急」として、英語では「Bullet Train」と呼ばれている。
かつて、日本テレビの朝の番組に外タレが出演して、「日本で何がしたいですか?」の問いに「新幹線に乗りたい」と答えたところ、通訳が「ブルー・トレイン乗りたいそうです」と誤訳していた。
この時は「勝った!」と思った。
「Bullet Train」を「Blue Train」と聞き間違えたのだ。

さて、音楽を担当したAbigail Meadとは、キューブリックの末娘Vivianのペンネーム。
そのオリジナル曲の他にキューブリックは時代観を出そうとして、1962~1968年までのBillboardのTop100に入った曲を何百曲も聴いて選び、映画に挿入した。
The Rolling Stonesの「Paint it Black」やThe Dixie Cupsの「Chapel of Love」(60年代に活躍した黒人女性のコーラストリオ。Dr. Johnの名盤の誉れ高い『Gumbo』の一曲目の「Iko Iko」はニューオーリンズの伝承歌で、Mac Rebennac=Dr.Johnより先にkixie Cupsが歌って有名になった)の他に日本ではお世辞にも「良く知られた」なんて言えないマイナーな曲たちだ。
キューブリック曰く「あの映画には1968年以降の曲は一曲もないハズだ。」
舞台となったのが1968年のベトナムだったからだ。でも、確か、この映画の後半の狙撃兵のシーンはロンドンで撮影したと聞いた記憶がある。
キューブリックはイギリスが好きでブルックリン生まれながらイギリスで息を引き取っている。

このサントラ盤のジャケットも宣材物がそのまま転用された格好だ。
このヘルメットのイラストが際立つようにワザと真っ白の背景を選択したそうだ。

まだキューブリックいい?音楽がらみ。
やっぱりどれもセンスがいい。『オレンジ』のベートーベンとか「Singing in the Rain」、『博士』の「また会いましょう(We'll Meet Again)」とかね。
この人の音楽の使い方の特徴は、黒澤明が『生きる』で思いっきりやったように、「対位法」っていうのかな?…悲惨な場面に明るい音楽をかぶせるのが得意なんだよね。
それとクラシック。
ドンズバの『バリー・リンドン』はもちろんグッド。『シャイニング』ではシュトックハウゼンやペンデレツキやリゲティの現代音楽をウマく使った。
そして案外好きなのが遺作となった『アイズ・ワイド・シャット』。
ここでもハンガリーの作曲家リゲティの作品が使われている。「ムジカ・リチェルカータ」というピアノ曲がそれで、たった2つの音が行ったり来たりするだけで恐ろしく不気味な雰囲気を醸し出す。
イヤ、そういう風になるようにキューブリックがうまく使ったんだろうけど。
そして、ヤラれたのはショスタコーヴィチ。
月並みでお恥ずかしいのですが…「ジャズ組曲 第2番ワルツ2」ってヤツ?ジンタだよね、ジンタ。この場末の飲み屋のBGMでかかってるような曲をうまく使うんだよな~。
アタシャこれを知って、すぐにショスタコーヴィチの27枚組のCDボックスを買ったわ。交響曲、協奏曲、弦カル、ソナタ、どれもいいわ!
教えてくれてありがとう、スタン!

120_2戦争つながりで『地獄の黙示録』。
コレもサッパリわからなかったな。話しはわかるんだけど、だからナンダ?的な。
映像はスゴイ。さすがのコッポラ。
音楽は「The End」と「ワルキューレ」に尽きる。音楽自体の出来も素晴らしいんだけど、その使い方がやっぱり芸術的にスゴイよね。

ところで、ベトナム戦争をテーマにした映画の音楽ってナゼか当時のロックが頻繁に使われるよね。オリジナル・スコアがフィーチュアされることはまずない。
これはどうしたことだろう。
ひとつは「時代感」を出すためだろう。
そして、もうひとつはベトナム戦争の主役は「若者」だったということなのだろう。その若者の文化の象徴であるロックを画像にシンクロさせて現実感を出したんだと思う。一種の「対位法」だ。

こういう映画はもちろん「反戦」をアッピールして作っているワケなんだけど、「戦争狂い」のアメリカが作っているのはいかがなものか?…色々なことを知って来るとそんなことを考えてしまう…特に最近のアメリカを見てると。
フランク・キャプラの『素晴らしきかな人生!』や『スミス都へ行く』のように「アメリカは素晴らしい!」、「自由って素晴らしい!」、「正義って素晴らしい!」とアメリカン・ヒューマニズムをアッピールした映画が1930~1940年代にはたくさんあった。勧善懲悪の時代劇みたいなものだ。
恥ずかしながら私もキャプラは大好き。『或る夜の出来事』なんてタマらんよ。
つい「ああ、自分もアメリカ人に生まれたかった」と思ってしまう。
ところが、そういう「素晴らしい(はずの)アメリカ」の裏では、黒人やマイノリティに対し、壮絶な人種差別をしていていたワケでしょう。
他にもある。
例えば『12人の怒れる男』や『アラバマ物語』。
黒人擁護の、すなわち白人は立派である…みたいな映画をジャンジャン作った。今となってはイビツな「ノブレス・オブリッジ」に映る。

『アラバマ物語』をご覧になった方はいらっしゃいますか?
本題に入る前にひとつ…この『アラバマ物語』、いよいよ邦題がメチャクチャで、Lynyrd Skynyrdの伝記みたいだもんね。舞台は南部だけど、サザン・ロックは一切出て来ない。
原題はピューリッツァー賞を受賞した原作「To Kill a Mockingbird(モノマネ鳥を殺すこと)」と同じ。
この映画の主人公は、グレゴリー・ペック扮するアティカス・フィンチという弁護士で、人種差別の嵐が吹きすさぶ南部にあって立場が圧倒的に弱い黒人を弁護する役柄なんだけど、2003年、アメリカでこういうアンケートがあった。
「あなたが考えるアメリカン・ヒーローは誰ですか?」
リンカーン?
クラーク・ケント?
ビル・ゲイツ?
R2D2?
答えはナント、つまりアメリカン・ヒーローの人気ナンバー・ワンはアティカス・フィンチだった。
ホンマかいな?「作り」じゃないの?
コレ、すなわちこうした「アメリカ=いい国」のプロパガンダ映画がいまだに世代を超えて支持されていることを示しているのではなかろうか?…なんていう風に見えて来ちゃう。
おもしろいので、次点以降を記しておくと…
*インディアナ・ジョーンズ
*ジェイムズ・ボンド(イギリス人なんですけど…。ショーン・コネリーはスコティッシュ)
*リック・ブレイン(ハンフリー・ボガート扮する『カサブランカ』の主人公。「サム。その曲は弾くなと言ったろう!」の人ね。あれってヒーローなのかな?)
*ウィル・ケイン(『真昼の決闘』のゲーリー・クーパー。クーパーもイギリス人。ダンスタブルというMarshallから車で30分ぐらいの街の出身)
*クラリス・スターリング(『羊たちの沈黙』のジョディ・フォスター。彼女は私と同じ年で生年月日が一日違いだ)…とマァ、おなじみの名前が続く。
おもしろいのは、他国の人でも平気で選んじゃう。オスカー・シンドラーなんてのも13位に入ってる。
反対に悪役版もあって、一位は「レクター博士」だって。
以下…
*ノーマン・ベイツ(『サイコ』のアンソニー・パーキンス。「ベイツ・モーテル」ね)
…以上二人、精神異常者。
続いて…
*ダース・ベイダー
*西の魔女(誰だ。こんなの選んでんの?『オズの魔法使い』だよ、コリャ)
*ラッチト看護婦(『カッコーの巣の上で』のルイーズ・フレッチャー。日本だったら絶対に出て来ない)
*ポッターさん(『素晴らしき哉人生!』のクソじじい。でも、このライオネル・バリモア演じる意地悪ジイさんが本当に意地悪そうでいいんだな~)
…とマァ、こんな感じ。
どちらかというと悪役の方がおもしろい。ヒーローよりもはるかに役の振り幅が大きいからね。悪役に魅力がない映画はおもしろくない。
私が役者だったら断然悪役をやりたいな。
おかげさまで「悪人面」ではないので、見た目はいい人だけど、本当はエライ悪くてなにを考えているのかわからない…みたいな。誰だ?それなら地でイケるなんて言ってるのは?!

私だったら誰を選ぶかな…。今の気分だと、ヒーローはまたしても『攻撃』のジャック・パランス扮するコスタ大尉(「大尉」はアメリカ英語で「lieutenant」。コレ発音がメッチャムズカシイ。アメリカ式に発音すると「リューナン」みたいな。これに「Colnel」がついて「Lieutenant Colnel」になると「中佐」。私の同じ年のアメリカ人のイトコ、Danielはアメリカ空軍にかつて従軍していて、数年前に退役した。最終の階級はこの「Lieytenant Colnel」だったと電話で話していた。このことを普通のアメリカ人に話すとかなり驚く。私の年で、つまり当時40代後半で「中佐」になるのはかなりのエリートで、しかも25年勤め上げているとなると、退役後は信じられないぐらいの厚遇が待っているそうである。うらやましいな~。でも転勤ばかりで本当に大変だったと言っていた。頭もかなり薄いらしい。コレは母方のジーさんに似ちゃってるんだ~)
エー、どこまで行ったっけ?(Whre am I?)
あ、悪役だ。
悪役も『攻撃』から選ばせて頂く。ただし、それは臆病で部下を見殺しにしたエディ・アルバート扮するクーニー大尉ではなく、その上司のバートレット中佐。自分の利益しか考えないから。
『攻撃』はDVDにもなっているようなので、男女を問わず会社勤めの皆さんはゼヒ一度ご覧あれ。

イヤ~、今日は脱線が激しいな。思っていた通りだ。
ハイ、今日の〆。
最近の日本の世情と絡めるに、もうアメリカはウンザリだ。
犬神サアカス團じゃないけれど、いい加減「アメリカ病」を治療した方がいい。
今でも12月24日になるとアメリカでは『素晴らしき哉人生!』がテレビで放映されるとか…。かく言う私も何回観ても泣きますよ。この後また観ても多分泣くわ…。
良きにつけ、悪しきにつけ、それだけ映画というのは力を持っているのだ。
そして、いつの世も変わらないのはマーブロの脱線話しだ。
今日はチョット締まりが悪うございました。

130_2<中編>につづく

Music Jacket Gallery展示の詳しい情報はコチラ⇒金羊社MJG常設展

※本展示は2013年12月に終了しています。現在の展示内容は上記の金羊社ウェブサイトでご確認ください。


2015年4月24日 (金)

【Music Jacket Gallery】乗り物ジャケット特集<後編>

今回の特殊ジャケットは、「金属」転じて「乗り物」ということで、元の方…すなわちメタルで作られたCDパッケージが集められた。
メタルには重量感、安定感といった独特の質感がある。
こうした特質をふまえて作られたものがメタル・パッケージになるワケ。
今回の展示では、メタル・パッケージを象徴するPIL の『Metal Box』(1979年)のLP/CD/BOXなどの各アイテム、ヘヴィ・メタルの代表格であるIron Maidenデビュー20周年の6枚組CDボックス『Eddie's Archive』(2002年)、特製のトランクスとパンティが同梱されたサザンの『Suika』(1989年)など、様々な仕様のメタル・パッケージの楽しさと魅力を堪能して頂きたい。

380_2 Keith Richards / Talk is Ceap  (VIRGIN 1988)
Keith Richardsの初ソロ・アルバムの初回限定生産パッケージ。
彼のキャラクター・イメージである、つや消しブラックのドクロの缶に現在はほとんど発売されなくなった8cmCDが3枚収納されている。
アルバム・クレジットなどが入った丸型のブックレットも凝った仕様だ。
ちなみに世界で最初の8cmCDはFrank Zappaの「Peached en Regalia」ではなかったか?アダプターつきで販売していた。

390_3サザン・オール・スターズ / Suika (VICTOR ENTERTAINMENT 1989)
デビュー当初は「夏」のイメージが強かったサザンオールスターズ。
彼等の代表作品61曲を集大成した4枚組CDボックス。
夏の風物詩であるスイカをあしらったアートワークは秀逸で、アウトドア対応で持ち運びもできるのがポイント。ビニールで作った特製のトランクスとパンティが当時話題にもなった。

400Yoko Ono / Onobox Ultracase  (RYKODISK 1992)
前衛音楽家オノ・ヨーコの音楽を集大成した6枚組CD。
全世界で350セット限定生産のジュラルミン製ボックス。
ガラス製の「宇宙への鍵」、箱の裏地の楽譜のデザイン処理、CDを並べると自分の顔になるなど、随所にアーティスト気質がみなぎっている。
世界が破壊されても、この箱だけは未来永劫に残したいという強硬な意志もパッケージに込められている。

410The Rolling Stones / Steel Wheels  (VIRGIN 1989)
最古参R&Rバンド、The Rolling Stonesの初回限定生産パッケージ。
タイトルの「鉄の車輪」にちなんで、鉄製のパッケージを発売した。
3D(立体)や8角形の変形ものや、アンディ・ウォーホル作のジッパー・ジャケなどLP時代にも特殊ジャケは多くあったが、CDでは初のメタル・パッケージとなった。

420MR.BIG / Live at Budokan (ATLANTIC 1997)
再結成されて話題を集めたMR.BIGが1996年に来日した際の武道館公演を編集したライヴ盤。日本盤のみ初回限定で発売されたのが、この特製「武道缶」仕様というメタル・パッケージだ。
メタル缶の場合は丸型が多いが、この缶は八角形という特殊なもの。
アルミ製なので錆びにくく、保管には最適です。

430Iron Maiden / Eddie's Archive  (EMI 2002)
デビュー20周年を記念して発売された6枚組CDボックス。
Iron Maidenというネーミングとヘヴィ・メタルというジャンルをそのまま鉄製のパッケージに投影させている。
彫金仕立てのEddieもおどろおどろしいが、取っ手がついたグラスとファミリー・ツリーを描いた巻物などのオマケも一興だ。

440The Small Faces / Ogden's Nut Gone Flake (CASTLE COMMUNICATIONS 1989)
Small Facesの代表作、『Ogden's Nut Gone Flake』(1968)は、彼等初のコンセプト・アルバムであるだけでなく、いくつかの円形ジャケを組み合わせた特殊なギミック仕様。
このメタル缶は発売20周年を記念して作られたもので、ジャケのデザインによるコースターも同梱されている。

450Lou Reed / Magic and Loss  (SIRE 1992)
今は亡きニューヨークの至高なる詩人、Lou Reedの21作目のアルバム。
アンディ・ウォーホル作のバナナ・ジャケで有名なVelvet Underground出身。
この初回限定生産パッケージは鉄製のフロント・カヴァーに直接絵柄を印刷したもの。
1975年の問題作『Metal Machine Music』を思わず想起させる重厚なメタル・パッケージだ。

460布袋寅泰 / Guitarhythm (TOSHIBA EMI 1988)
今や日本のみならず、世界をも視野に入れた活動をしている布袋寅泰のライフワークともいえるGuitarhythmシリーズ。
このメタル・パッケージはプロモーション・オンリーの非売品だ。
中にはシリーズ第一弾のCDが収められている。ギター・ケースを象徴するかのような堅固なパッケージになっているのだ。

470Public Image Limited / Metal Box  (VIRGIN 1979)
PILの初回生産限定LPは、12インチ・シングルが3枚に分かれて鉄製の缶に収められている。CDはアルミ製の缶に1枚のみ収められている。
CD-BOXは、英国のみで発売された4枚組CDで、『Plastic Box』というメタルに対抗してつけられたシャレたネーミング。
実際これは金属にみせかけたプラスチック製で作られている。

480A Tribute to Metallica / Die Kurrups  ( CLEOPATRA 1993)
ドイツのインダストリアル・メタル・バンド、Die KurrupsのMetallicaのカバー集。
Metallicaも「Metalli-Can」という缶仕立ての限定パッケージを出しているが、こちらもほぼ同時期に出した缶パッケージだ。
中には、ヘヴィ・メタル系のお約束アイテムであるピンバッジ、キャップ、Tシャツなどがオマケとして同梱されている。

490Metalogy / Judas Priest  (COLUMBIA 2004)
Judasu Priestの未発表音源なども集大成した4枚組CDボックス。
革のブーツに革ジャン、太い腰ベルト、鋲仕立てのリスト・バンド、メタル・ファッションを象徴するこの鋲を四方に施したパッケージはまさにメタル特有の質感だ!
残念ながらこれは金属ではなくプラスチックに銀メッキを施したもの。
タイトルにある「-logy」という接尾語は「~学」を示す。したがってコレは「金属学」になりそうだが、「金属学」の正しい英語は「Metallography」だ。

N_img_9972Music Jacket Gallery展示の詳しい情報はコチラ⇒金羊社MJG常設展

※本展示は2013年9月に終了しています。現在の展示内容は上記の金羊社ウェブサイトでご確認ください。
(協力:立体展示品解説文原本執筆・植村和紀氏)

2015年4月23日 (木)

【Music Jacket Gallery】 乗り物ジャケット特集<中編>

一昨日、テレビのニュースでやってたけど、本気でLP人気が復活しているんだって?
こんなの過去20年ぐらいの間に何回喧伝されたかわからないので、あまり信用できないというのが正直なところ。
あるいは、仮に今人気が少し戻って来たとしても長くは続かないだろうな…というのが二番目の感想。
「ヤベ!あんなにLP売らなきゃヨカッタな!」というちょっとした後悔の念が三番目の感触。
それよりも何よりも、流行りもの好きの連中にLPを聴くためのハードを買わせるための「政府&マスコミ」のデマ(←これはドイツ語のDemagogieが語源)のような気させする。
だって、そうでしょ?
今までもSP、LP、MD、LD、DVDの類、オープン・リール、カセット等々、めまぐるしくハードは変遷してきた。時代のアダ花として「Lカセット」なんてのもあった。
こんなことをしていると、レコード会社は何種類ものフォーマットで同じものを作らなければならず、結局売れるソフトしか出さなくなってしまう。すなわち音楽文化の衰退だ。
まだCD化されていないLPってどれくらいあるんだろう?
これほどCDが定着し、はや配信に駆逐されようとしている昨今でも未CD化の音源は仰天するほど多いのではなかろうか?

何かの本で読んだんだけど、これは監督官庁の違いが大きく関わっており、ハードを担当する官庁がソフトのそれより上席だからという話しだ。
もちろんテクノロジーの進歩ということもあるが、ハードを作っている企業の方が大きいことが多いし、政府へのパイプが太いので話が通りやすい。
ま、世の中だいたいそういうもんだ。

番組中、LPを買っているお客さんへのインタビューで、「配信では音楽を聴いている感じがしない」と答えている若い人がいた。いいぞ、いいぞ!
そう、音楽をアルバムで聴かず、音楽配信で1曲ずつしか聴かないような傾向さえ抑え込むことさえできれば、音楽の媒体はLPでもCDでももうどっちでもいいと思っている。
いくらLPの方が音がいいったって、真価を発揮するのはかなり高級なオーディオ機器を持っているのが前提。
「LPの方が音があったかい」とか「特別なスープ」みたいなことをよく言ってるけど、ちょっとしたシステムを使って小音量で聴いているウチはLPとCD違いなんて変りゃしないって。
ただし!本当にすごいオーディオでLPを聴いたら、へへへ、アータ、CDの音なんてチャンチャラおかしくて聴けやしない。オモチャだよ。
コレは私の実体験で言ってます。
だから一般の人は無理をしないでCDの利便性を大いに享受すべきだと思うんだよね。
とにかくLPでもCDでもいいから色んないい音楽を聴いてもらいたいわ。
特に若い人たちにはドンドン時代をさかのぼっていい音楽を探す冒険をしてもらいたい。

ところで…ジャケットだけはナニをどう転んでもCDはLPにかなわない。
今日も植村コレクションと共にその魅力をお伝えする。

今回紹介するアイテムも2013年7月~9月に金羊社のギャラリーに展示されたもので、現在開催中の内容とはまったく異なることにご留意されたい。

「乗り物ジャケット」特集の<中編>のはじまり、はじまり~!

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かつてClimax Chicago Blues Bandと名乗っていたこのグループは1969年結成の古株だ。「Chicago」がバンド名に入っているのでアメリカのバンドみたいだけどさにあらず。イギリスは中西部、スタッフォードの出身だ。
デビューから3年後にバンド名から「Chicago」をハズして現在に至っている…ってまだやってのかよ!
このバンド、20枚にも及ぶアルバムをリリースしているが、私の認識がまちがっていなければ、ついぞ日本では人気の出なかったハズである。
私もHipgnosisのデザインで有名な『Tightly Knit(ハゲのオッサンが靴下を口に入れているヤツね)』とか『FM/Live』ぐらいしか持っていないが、テレキャスター丸出しのPete Haycockのギターがなかなかに味わい深くてよろしいな。
このバンド、歌ものはどうってことないのだが、インスト曲になるど猛然とカッコよくなる。聴きどころはどうしてもソコになるだろうナァ。

切手をモチーフにしたジャケットといえば、まずThelonious Monkの『Unique』が頭に浮かぶ。あとJohnny Griffinにも一枚あった。広い意味では『Free Live!』もそうかな?
この切手の中にはマンハッタンをバックにした飛行機が描かれている。「8」というのは当然8枚目のアルバムということ。
コレ、乗り物ジャケット?
「Stamp Album」というのはもちろん「切手帳」のこと。何かのシャレになっているのだろうか?
「切手」といえば、昔は趣味の筆頭に上がったけど、今でも集めている人いるのかしらん?「切手趣味週間」とかなつかしいね。
いいジャケットだ。

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また来たね、ポール。
Wingsの『Wings Over America』。この頃のPaulはヨカッタねぇ。向かうところ敵なしの絶好調感丸出しって感じだ。
テレビでもやってたもんね。
1976年の『Wings Over the World』というツアーの一部を収録したライブ盤。
このツアー、アメリカとカナダで31公演をこなし、60万人を動員した。だから一か所平均2万人という計算。
今はEXILEでも100万人以上動員する時代なので、アメリカ全土を回って60万人とは情けないように見えるが、40年近くも前の話しである。すさまじい人気ぶりだ。
今回の来日では22万人を動員するらしい。ざっと40億円ぐらい?ま、全部入って来るワケじゃないけどスゴイ。コレに物販のロイヤルティが加算されるってとこ?
「Hey Jude」1曲だけで、孫子の代まで遊んで暮らせるほどの富を得たとかいうよね?お金は邪魔にならないっていうけど、そんなにあるとチョットは邪魔なんじゃないの?

さて、このアルバム、LPで三枚組。国内盤には銀色のギンギンの帯が巻いてあった
このアルバム、最初は二枚組でリリースする計画だったが、『Wings from the Wings』という三枚組の海賊盤の売れ行きがやたら良いということを知って計画を変更した。
Paulは録音した全公演のテープを聴き、28曲のベストテイクを5つずつ選び、6週間かけて絞り込みミックスを実施したそうだ。
一部ではオバーダビングを余儀なくされた曲もあったらしい。なぜなら、観客の歌声が音痴すぎてそのまま収録できなかったのだ。

ジャケットはHipgnosis。
インナー・スリーヴとレコード・レーベルはすごくカッコいい。さすがHipgnosis。
内ジャケのイラストはJeff Cumminsという人の作品。この人はRainbowの『Straight Between the Eyes』やThe Moody Bluesの『Caught Live』やTed Nugentの『Weekend Warriors』なんかも手掛けている。
でも、コレって三枚組なのになんで普通のゲイトフォールドなんだろうね?
『Yessongs』みたいに豪華にするとか、『All Things Must Pass』みたいにボックスに入れればよかったのに…。
1974年のTodd Rundgrenの『Todd』は二枚組にも関わらずシングル・ジャケットなんだけど、あれは世界的な紙不足が原因だったとか。
この三枚組のリリースは1976年。紙不足は解消されていたと思うんだけど…。

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Mike Oldfieldの『Five Miles Out』、1982年の作品。
何と言ってもMike Oldfieldとくればひとりで2,400回だかダビングして作った『Tubular Bells』。
このアルバムはそれとは正反対にレギュラー・グループの体でレコーディングに臨んでいる。メンバーを見るとナゼか10ccのRick Fennが参加している他、Carl Palmerもゲストでパーカッションを担当している。

ジャケットのデザインはMike Oldfield自身。
この飛行機はロッキード社の「モデル10エレクトラ」という機種で、機体の装飾は、リンドバーグに続いて大西洋単独横断飛行を成功させた女性パイロット、アメリア・イヤハート(Amelia Earhart)が、1937年に赤道上世界一周に挑んだ時のもの。すなわち操縦しているのはアメリアということになる。
「Amelia」という名前に聞きおぼえがある人もいらっしゃるのでは?特にJoni Mitchellファン。
彼女の「Amrelia」という曲はこのAmelia Earhartのことを歌ったもの。MethenyやらJacoやらが登場することでやたら人気を得たJoniの映像作品、『Shadows and Light』には確かアメリアの映像が収録されていたような…。
アメリアはその1937年の飛行中、南太平洋で忽然と姿を消した。

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私もね、小学生の時に『エクソシスト』で『Tubular Bells』のメロディを初めて耳にして、中学生になってからアルバムを聴いた途端ハマってしまいましてネェ。
ナンダカンダで関連商品をこれだけ持ってる。
で、この内容を他の作品にも期待して買っちゃうんだよね~。『Hergest Ridge』、『Ommadawn』、『Incantations』、『Platinum』、『QE2』、本作、『Crisis』、『Discovery』…ココで止めた。
やっぱり『Tubular Bells』だけなんだよね~、聴けるの。
で、本作も同様。
A面全部を費やしている「Taurus II」なんてかなりの力作で決して悪いワケじゃないんだけど、とにかく何も残らない。また、そこがいいのかもしれないんだけど…。
そこいくとやっぱり『Tubular Bells』の衝撃はスゴかった。当時は一日何回も聴いちゃったもんね。
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このジャケット、内側が可愛いの。
「Taurus II」録音時のトラックシートが使用されている。こんなにたくさんの楽器が使われているのね?

1_img_9938Facesの1974年のライブ・アルバム。
日本では『フェイセズ・ライブ』ぐらいのタイトルになっていたけど、原題は『Coast to Coast:Overture and Beginners』と長い。
1973年にアナハイム・コンベンション・センター(今、NAMMをやっているところ)とハリウッドのパラディアムで収録された。
コレ、どう見ても「Faces」のアルバムに思えるが、Faceのレパートリーは3曲。一方、初登場となる曲も含めたRodのソロ・レパートリーは6曲と、Rodソロ優勢。
当時、Rodは「ソロ」名義でコンサートをしていなかったので、「Rod Stewart/Faces」と連名のクレジットとなった。
アメリカでは、LPはRodのソロ・アルバムをリリースしていたマーキュリーから、カセットと8トラ(!)はFacesのアルバムを取り扱っていたワーナーから発売された。
そうした複雑な事情があったためか、このアルバムは日本でだけしか販売されない時期があったそうだ。

大分前にMarshallの連中と会食をした時、比較的年配の女性たちとテーブルが一緒になった。
こんなことは滅多にないんだけど、昔のロックの話題になって、ある女性は「私はRodにメロメロだったの。Faceも何回も観たわ」とか「私は何と言ってもRegi。昔の曲なら全部歌えるわ!」…日本だったら「秀樹大好き!」とか「ひろみに夢中!」とかいう話しである。
こういうところに「ロックの国」と「そうでない国」の大きな差を感じるんですよ。

一方、私はどうもRod Stewartにのめり込めない。『Gasoline Alley』なんかは結構よかったりもするけど…。ナンカ素直にロック感を汲み取れない。
『Ooh La La』とか『Long Player』なんかはごくタマに聴くこともあるんだけど、同様にFacesも夢中になったことは一度もないのよ。
コレが、来日公演でのPaul Gilbertもそうだったけど、NAMMのアトラクションで出ているバンドなんかも「Stay With Me」を演ったりするんだよね。向こうの連中にはこの曲、スタンダードなの。それで例の「ギッタ~」って言うところをうれしそうに演るんだな。

あ、それとこのアルバムは山内テツがFacesに参加して初めての音源となった。
そして、この音源が録音された翌年の2月、Facesは来日を果たす。
Faceはメンバー全員大酒のみで、滞在中ローディと共に日本酒を毎晩飲み狂ったらしい。
山内さんも同様で、ステージ前にウイスキーのボトルを半分、ステージ中に残りの半分。終演後、またボトルを1本空けたという。これぐらい飲めないと外人とは付き合えないってことかもね。あ~、ミュージシャンにならなくてヨカッタ!
Rodはスコティッシュの家系だけに頷ける話だ。
スコティッシュといえば、かつてミュージックライフ誌の編集長だった東郷かおる子さんの著書『わが青春のロック黄金狂時代(角川SSC新書刊)』に書いてあったが、東郷さんも体当たりで英語を覚えたクチらしいが、Rodの英語は全く歯が立たなかったらしい。ナニを言っているのが全く聞き取れず冷や汗が出たという話し。ああ、よくわかるナァ、その気持ち!

最後にひとつ。
ジャケットのことを調べようと久しぶりにCDを棚から引っ張り出して来て中をチェックしたが、まったくヒドイ!
元から記されていないのかも知れないが、ジャケット・デザインのクレジットはおろか、レコーディング・データも載っていない。歌詞と日本語解説だけ。
そもそもこのLPはゲイトフォールドでしょ?内ジャケの写真はどこへ行ったの?
やっぱりこういうところに音楽文化の民度の低さを感じるナァ。

1_img_9910スキスキ、Sparks!
出世作の『Kimono My House』がIslandからのリリースだったので、てっきりイギリスのバンドかと思っていた。RonとRusselのMael兄弟はアメリカ人だ。
それと、解説書等に「Mael」を「メイル」って表記してるけど、コレ本当に「メイル」って発音するのかな?
Sparksというとやっぱり『Kimono My House』ということになるんだろうけど、その前にもHalf Nelson名義の同名アルバム(Grace kellyのジャケット)とSparks名義の『A Woofer in Tweeter's Clothing』というアルバムをBearsvilleからリリースしている。
買って聴いたけどおもしろくない。
やっぱり『Kimono』からが断然いい。でも、それもそう長くは続かなかった。せいぜい『Big Beat』までかな~、私の場合。
でも、その初期の4枚はどれを聴いてもSparksでしか聴けない独特な曲作りで実によろしい。
有名な『Kimono』の1曲目、「This Town Ain't Big Enough for Both of Us」なんて「歌謡一部形式」だもんね。インストのパートは色々やっているけど、歌の部分はズッと同じメロディを繰り返しているだけ。サビなんてない。スゴイ発想だと思う。
あんなに魅力的なコーラスのメロディだもん。普通だったらサビを付けて展開させたくなっちゃうと思う。
弟のRusselの声で好き嫌いが分かれるかもしれないが、Sparksの場合はRusselの声がシックリくる。「Amateur Hour」なんか誰かカバーすればいいのに!今ならすごくウケるんじゃない?それとも誰か演ってるのかな?

それと、ジャケットが比較的いいんだよね。
1981年の『Whomp That Sucker』なんかすごくいい。まるで力石徹が矢吹丈をダブル・クロスカウンターで倒した時のようだ。内容は知らないけど。
それと1984年の『Pulling Rabbits Out of a Hat』のジャケットは一体どうしたことだろう?
コレ、完全にFrank Zappaの『Them or Us』の裏ジャケじゃんね。(同じ年のリリースでSparksの方が4か月早い)
この『Indiscreet』のジャケット写真を撮ったのはRichard Creamerという人。KISSのライブ写真や数多くのロック・ミュージシャンのアー写を撮っている。
他のジャケット写真としてはREO Speed Wagonの音叉を加えた魚のヤツ(ゴメンちゃい。REOって私かすりもしてないの)とか、Toddの2枚組ライブ・アルバム『Back to the Bars』なんかに関わっている。
チョットー待った~、チョットー待った~!と言う人もいるかもしれない。そう、「Toddの『Back to the Bars』のジャケットのデザインはHipgnosisじゃんかよ~!」っていうんでしょ?
ご明解。
でもね、内ジャケットのライブ写真はこのCreamerが撮っているんよ。あんまり出来はよくないと思うけど…。

この「♪ほっすぴたりてぃ」で楽しく始まる1975年の『Indiscreet』は『Half Nelson』から数えて5枚目のアルバム。プロデュースはTony Visconti。前作の『Propaganda』や『Kimono』ほどは当たらなかった。

ここでマーブロ流豆知識…Ron Maleやヒットラーのようなヒゲを日本では「チョビひげ」と言うが、英語ではどう表現するか…。
答えは「toothbrush moustache」、すなわち「歯ブラシひげ」だ。
Ronはプロのグラフィック・デザイナーでToddの『Runt:The Ballad of Todd Rundgren』の内ジャケなんかを手掛けている。

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「ロック名盤XX選」とか「ロック入門△△」の類の企画となるとかなりの確率で選出されるこのアルバム。
ClaptonやらWinwoodやらの当時のロック界の重鎮が集結したというとことが肝なんだろうけど、そんなにいいかナァ?
少なくとも入門者が聴いたところで何ら面白くはないのではなかろうか?
正直、私も実際かなり後になって聴いた。
職業柄、KellyさんのBlind Faithの方がなじみがあるぐらい。

それでもチョットした思い出があって…Geoff WhitehornがまだMarshallのデモンストレーターをしていた頃、FUZZY CONTROLをフィーチュアしたMarshallのイベントを開催したことがあった。
場所は今は無き渋谷のBOXXで、今は無き隣のAXにCharさんが偶然出演していた。
Paul Rogersの関係でCharさんと仲の良かったGeoffは、自分のリハーサルが終わると「オイ、シゲ、Charに会いに行こうぜ!」と言い出し、ふたりしてAXの楽屋を訪ねた。
「お~!」なんつってひとしきり盛り上がった後、Charさんは新しく導入したStratocasterを取り出しGeoffに渡した。
チョコチョコっと弾いた後、よせばいいのにGeoffは私にそのギターをパスしてきた。
私はそのままCharさんにギターを返そうとしたら、
「何だよ、お前も弾いてみろよ。ギターやってんだろ?」とCharさん。
その前にもCharさんとは何回かご一緒させて頂いていたが、目の前でギターを弾いたことなんて当然ありゃしない。
エライ恥ずかしかったが、仕方ないので教わったばかりのGeoffの曲をチラっと弾いてCharさんにギターを戻した。
するとCharさんはいきなりギターを弾きながらGeoffと私の前で歌い始めた。
その曲はこのアルバムに収録されている「Presence of the Lord」だった。
Charさんは歌の部分だけでなく、後半のインストの部分も弾き、キチッと丸々1曲仕上げて見せてくれた。
そういう態度がやはり一流であると感心した。そして、この時代の人たちはやはりこのアルバムをマスターしていることを思い知った。
そういえば何年か前に来日したJoe Bonamassaも「Had to Cry Today」を演奏していた。アレ、私よりだいぶ若いんだけどね。

さて、このジャケットが物議をかもしたことは有名だ。
トップレスの若い女性が男性のシンボルを想起させる飛行機のようなものを持っている…という図なのだから当り前だ。
今なら何でもないかもしれないけどね。このアルバムが出たのは1969年のことだ。
したがってアメリカではメンバーが写っている写真に差し替えられた。
このジャケットのアイデアと制作はEric Claptonの友人のBob Seidemannというカメラマンによるもの。
思想は「人類の創造性」だの「テクノロジーの進化」だのもっと崇高なものであった。
このSeidemann、他にもいい仕事を残しており、Jackson Browneの『Late for the Sky』、Neil Youngの『On the Beach』、Randy Newmanの『Little Criminals』、Heartの『Little Queen』、Herbie Hancockの『Mr. hands』、Larry Carltonの『Sleepwalk』等々のジャケット写真はこの人によるものだ。
他にもGreatful DeadやJanisのアー写も多数残している。

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これまた名盤の誉れ高いYesの『Fragile』。
邦題の『こわれもの』は実にウマいことやった。今だったら躊躇なく『フラジャイル』とやられただろう。
私はいつも言っているように「原題至上主義」だけど、こうしていいと思うものはちゃんと素直に「いい」と言います。
「Roundabout」や「Heart of the Sunrise」や「Mood for a Day」に人気が集まるのだろうが、私は断然「South Side of the Sky」。
このアルバム、1971年前の発表なんだよね。44年前!やっぱりコレと今の巷のロックとを比較すれば猛烈に今のロックが幼稚化しているとしか思えないだろう。
このアルバムとか次の『Close to the Edge』を経て、Frank Zappaが1975年にリリースする『One Size Fits All』までが、普遍的娯楽性を伴ったロックにおける、人間の英知と団体器楽演奏技術の頂点で、もう人類がこのあたりのレベルを凌駕することは永久にできないと思っている。

ひとつ言っておきたいのは…『海洋地形学(Tales from Topographic Oceans)』のことだ。『Fragile』→『Close to the Edge』→『Yessongs』と盛り上がりに盛り上がっちゃって、しかも、後ろに『Relayer』が控えちゃってるもんだから、まず人の口には上らない。
熱狂的なファンは知らんけど、Yes好きを自称する一般人の口からですら「『海洋地形学』がスキ」というのを聞いたことがない。
大抵「持ってるけどほとんど聴かない(←要するに聴いていない)」とか、「聴いたことがある」程度のものだ。
このアルバムの不幸は1曲目にある。
退屈なのだ。
でもLPでいうところのC&D面はヤケクソ性も感じられるほどの熱演で聴きどころ満載なのだ。2枚組なんかにしなければよかったのにね。

…と今、上に挙げたYesのアルバムのジャケットデザインは有名なRoger Dean。
「こわれもの」だから、メンバーはジャケットのイメージとして「磁器」を登場させるアイデアを出したらしいが、Roger Deanは星をふたつ登場させ、裏ジャケには破壊された星を描いた。
そして、破壊された星の光景が『Yessongs』のジャケットなんだと…要するに連作になっているのだ。
「こわれもの」とは「地球」のことなのね?
星に生えている木は「盆栽」をイメージして描いたらしい。

そういえば日本でもどこかにラウンドアバウトを作ったってニュースを大分前に見たけど、アレどうなったかね?
ちなみにMarshallの工場があるミルトン・キーンズはラウンドアバウトだらけだ。

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LPの時にはほぼA4大のブックレットが付いていた。
もちろんこちらもRoger Deanのイラスト。

N_img_5979頁をめくると、各メンバーのスナップ写真が掲載されていて、この写真もRoger Deanが撮ったものだそうだ。
ただし、Bill Brufordだけはステージの写真が使われており、コレは例外。
下の向かって右のページはRick Wakeman。
ゴチャゴチャ書いてあるのはすべてSpecial Thanks。
モーツァルトの名前まで入ってる。あとDavid Bowieの名前も…初期のBowieの曲のピアノはRickが弾いているからね。
待てよ…と思いJim Marshallの名前を探したが見当たらなかった。
ナゼ探したかって?
Rickは若い頃Jimの店でアルバイトしてたんよ。
その後もWater Ratsの会員同士で中がヨカッタ。
50周年記念コンサートの時には息子のAdam Wakemanがキーボードを担当した。

N_img_5984これは知らないバンド…と思って調べたら1972年結成のイギリスのプロト・パンク・バンドということだった。道理で知らないワケだ。
でも、このジャケット素晴らしい…Hipgnosisだもんね、当然。
1978年の『Crash Landing』というアルバム。
スペシャル・サンクスでPete Townshendの名前がクレジットされているらしい。
気になって音を聴いてみたら、アララ、かなりいい感じじゃないの!全然パンクじゃない。
今度見つけたら買ってみようっと!

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以上で「飛行機」系は終了。
後は鉄道やら船やら。

Brian Augerがわからない。どう楽しんでいいのかがわからない。
名盤の誉れ高いTrinityの『Streetnoise』ですらどうも…。
聴かないのをわかっていても何となくチビチビと買ってしまう。「Freedom Jazz Dance」とか「Maiden Voyage」とか、ジャズの有名曲をチラリチラリ取り入れているところがニクイ。

その両方が1974年にWhisky a Go Goで収録されたOblivion Expressのライブ盤『Live Oblivion』。
コレはスゴイ。ナニがスゴイってSteve Ferroneのドラム。そこを聴く。
でもギターはかなりトホホだよ。
この人も、優秀なギタリストでもそばにいればもっと人気が出たかも知れない。でも、イヤだったんだろうな、キーボード・メインのバンドとして…。
でも「忘却急行」なんていい名前だな。
そう、最近物忘れが多くて…ほっとけ!

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コレはかなり昔から知っているジャケット。なぜならHipgnosisの本、『Walk Away Rene』に出ていたからだ。
オランダのGreen Earingというグループの1976年の『To the Hilt』というアルバム。
「hilt」というのは「柄(つか・え)」という意味で、「to the hilt」で「徹底的に」とか「全面的に」という表現になる。
どう見ても助かりそうにないこのヒゲのおじちゃんは古いタイプの探偵らしい。
他にも、同じ写真を使ってサメのいる水槽に入れられたり、中誤記人に電ノコで頭をまっぷたつにされそうになったり、ビルから真っ逆さまに落っこちる写真と組みになっている。
いくつもの危機に遭遇し、何とかその苦境から脱出するのだが、またすぐに次の危機に直面してしまうのだ。
そうしてドップリと(to the hilt)危険に晒されながらも彼は危機と闘い、次のバトルへと立ち向かう…ということを表しているんだそうだ。

今回初めて音を聴いてみたが、ごく普通のハードロックで悪くはなさそうだ。

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説明不要ですな。
この黒いヤツもナニを表しているかは皆さんご存知でしょうからスキップ。
じゃ、コレのどこが乗り物かというと…家族の後ろに見えるボートやらヨットがそれにあたるっていうワケ。
これは合成写真で、後ろに見えるのは、アールズ・コート・エキシビジョン・センターで毎年開催されていたボートの展示会に設けられた人口の水溜りの写真だ。
アールズ・コートといえばLed Zeppelinのホームみたいな巨大なホール。Hipgnosisはそれを意識してこの写真を使ったのかしらん?

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1976年に発売されたFocusの未発表音源集『Ship of Memories』。
Focusは好き。
このアルバムの音源は1973年にコッツウォルズのスタジオで録音されたもの。
前半は硬派で後半は軟派って感じでバラエティに富んだレパートリーが楽しめて、未発表音源集とはいえ私は好き。『Humburger Concerto』よりゼンゼンいい。
しかし、ライナー・ノーツを読むと、バンド・メンバーは相次ぐツアーでスッカリ疲弊しきり、関係が悪化…レコーディングは相当大変だったようだ。
収録の「Focus V」なんて曲はJan Akkermanが寝ている間に作って、あとでダビングしたらしい。
で、常識的に考えるに、FocusファンというのはイコールJan Akkermanファンということになるだろう。
ま、Bert Ruiterが死ぬほど好きでFocusを聴いているファンはゼロではないかもしれないが、少ないことは間違いない。

私もJanファンで、ことあるごとにMarshall Blogでも言及してきた。会って写真も一緒に撮ってもらった。
そんなだからソロ・アルバムもずいぶん買った。結構出ているのはうれしいんだけど、玉石混淆もいいところで、7:3、イヤ、ヘタをすると8:2で「石」の方が多いのだ。
『10,000 Clowns On A Rainy Day』なんて1997年のライブアルバムなんて演奏はすごくいいのにせっかくのJanギターのトーンがあまりにもトホホだったりしちゃうんだよね。あれデジタル・アンプなのかナァ。
その点、このアルバムは比較的Janのギターが聴けるアルバムだと思う。
メインはレス・ポールなんだろうな。「Glider」という曲で明らかにストラトの持ち替えるところなんか実にカッコいい!
でもこの曲、「Mother Focus」と同じじゃん?
CDになって追加収録されたアメリカでのシングル・バージョンの「Hocus Pocus」も聴きもの。この曲、『Moving Waves』の本チャン・バージョンはリピートが多くて時折ウンザリしてしまうんだけど、このバージョンはコンパクトでスゴクいい。ギター・ソロもこっちの方がカッコいい。

ジャケットのデザインはオランダのCreamというところが担当している。
コレは戦艦大和(武蔵)とゼロ戦?

ちなみに「Jan Akkerman」は、英米人の前では「ジャーナッカマン」と発音してください。

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今度は飛行船。
ジャケットはJimmy Pageのチョイス。これはツェッペリン号ではなくてヒンデンブルグ号ですからね。
裏ジャケットの写真を撮影したのは元YardbirdsのChris Dreja。
何でもZeppelinのアルバムで、裏ジャケットも含めて4人が揃って撮影された写真が使われているのはコレだけだとか…。
Chrisは新バンドの結成に際し、Jimmy Pageからベーシストとしての参加を持ちかけられたが、「写真家になりたい」としてその誘いを断った。
モッタイね~。
でもそのおかげで我々はJPJのベースと音楽性を享受できることになったのだ。

Zeppelinは詳しい人がやたら多いのであんまり余計なことは書かないようにするべ。

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植村さんの『Led Zeppelin I』はゲイトフォールド仕様になっていた。

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今度は空飛ぶ円盤。
またしてもHipgnosis。問答無用の名ジャケットでしょ。
コレはよく聴いたナァ。
素晴らしい内容とカッコいいジャケット…パンク/ニューウェイブ前のロック黄金時代の産物だ。

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魚雷は乗り物ではありませ~ん!
The Pretty Thingsの『Silk Torpedo』。1974年の作品。
Pretty Thingsも比較的Hipgnosis度高し。
この次の『Savage Eye』も有名だ。
残念なのは、ジャケットはいいんだけど内容が…。
1963年結成の名門ブリティッシュ・ロックバンドで、『S.F.Sorrow』なんてのが名盤扱いされているけど、日本ではどうもウケている感触がない。
かく言う私も何枚か持っているけどiPodの在籍期間の短さは先のBrian Augerと一二を争う。
しっかし、このジャケット、メチャクチャいいナァ。

St最後はナント、ブランコ!
ひと目見てNeon ParkとわかるイラストをまとっているのはLittle Featの1972年のセカンド・アルバム、『Sailin' Shoes』。
日ごろからアメリカン・ロックは聴かん、と言っているがLittle Featは好き。

このジャケット、楽しそうにブランコに乗っているのはケーキ。ロココ期のフランスの画家、ジャン・オノレ・フラゴナールの「The Swing」という油絵が元になっている。
この作品、ナント、ロンドンの「ウォレス・コレクション」という博物館に収蔵されているらしいので今度渡英するチャンスがあったら観てこよう。
ちなみにこのウォレス・コレクションの隣の建物はかつてEMIの本社だった。The Beatlesのファースト、『Please Please Me』=『赤盤』並びに『青盤』はそこで撮影された。
右奥にいるのはMick Jaggarなんだって。
コレさ、ブランコ乗っているのは切ったケーキじゃなくて、切った後の残りの方なんだよね。こういう感覚が面白い。

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1978年の来日時には中野サンプラザに観に行った。二階席の一番前だった。

このコンサート・プラグラムの表紙を見ればわかるように『Waiting for Columbus』のレコ発ツアーというタイミングでものすごくヨカッタなぁ。
やっぱりLowell Georgeの存在感がハンパじゃなかった。
「Fat Man in the Bathtub」がオープニング曲ではなくて途中で演奏したのには驚いたのを覚えている。

N_img_0001Little FeatはLowell Georgeが没した後もPaul Barrereががんばってすごくいい感じだと聴いていたが、追いかけることはなかった。
しかし、ホンノ数か月前、下北沢でレンタル流れ品のLittle Featを280円(税別)で買った。
『Rock'n Roll Doctors』とかいう1990年のセントルイスのコンサートを収録したライブ盤で、コレがすさまじくよくて、なるほどLowell無き後も頑張っているというのを実感したのであった。
下の写真はコンサート・プラグラムの表4。

N_img_0003 …ということで2回にわたって「乗り物ジャケット」をお送りしましたがいかがでしたでしょうか?
イヤ~、ジャケットってホントにいいもんですネェ。

Music Jacket Gallery展示の詳しい情報はコチラ⇒金羊社MJG常設展

※記事内のジャケット写真は、展示アイテム以外のものは斜めに、もしくはサイズを小さくして掲載しています。
※本展示は2013年9月に終了しています。現在の展示内容は上記の金羊社ウェブサイトでご確認ください。

<後編>につづく

2015年4月16日 (木)

【Music Jacket Gallery】乗り物ジャケット特集<前編>

ミュージック・ジャケット・ギャラリーの今回のテーマは、前回の『動物』に続いて『乗り物』。
「続いて」というのは、乗り物が登場するレコード・ジャケットは動物同様、相当な数に上るからだ。

10_2しかも、動物の時もそうだったけど、ジャケットに登場する乗り物の種類も実にバラエティに富んでいる。
レコード・ジャケットに使われやすい題材のひとつといえよう。

20題材で圧倒的な多数派は飛行機と車になろうか…。

今回紹介するアイテムも2013年7月~9月に金羊社のギャラリーに展示されたもので、現在開催中の内容とはまったく異なることにご留意されたい。
では…!

30下のジャケットを見て思い出したのはジョージ・ルーカスの『アメリカン・グラフィティ』。ご覧になった方は多いだろう。
あの映画の時代設定は1962年の夏。
中学1年生の時に何かと2本立てで観たのだが、もう1本が何だったかどうしても思い出せないな…。
とにかく、リチャード・ドレイファスのホロ苦い恋愛体験をはじめとした、登場人物それぞれのエピソードと全編に流れる古き良きオールディーズの超名曲が絶妙にマッチしていて、子供心にとても感動した。
子供の時にこんな映画を観ればアメリカに憧れるにキマってる。
今ではサッパリだけど…。
サントラ盤も買った。当時はステレオを持っていなかったので、ミュージック・テープだった。映画を思い出しては繰り返し繰り返し聴いたおかげで、私は比較的早いうちからオールディーズの名曲を知っていた。
驚くのはこの映画がアメリカで公開されたのが1973年(日本は1974年)。
遠い昔の「なつかしきよきアメリカ」を描いた映画というイメージがあったが、アータ、コレって、公開のたった11年前の話しじゃないの!
1973年はPink Floydの『The Dark Side of the Moon』やらELPの『Brain Salad Surgery』、Yesの『Yessongs』らのプログレッシブ・ロックの定番やQueenや10ccがデビューした年。いわゆるロックの黄金時代の真っただ中。
いきおいブリティッシュ・ロックが栄華を極めていた時代で、『アメリカン・グラフィティ』の舞台からたった10年の間にどれだけロックが変化したか知るこ とができる。
フト考えるに…映画の舞台の1962年といえば、Marshallが最初のギター・アンプ、JTM45を発表した年だ。
アメリカでは「♪シェ~リ~」とやっている頃に、大西洋の向こうのロンドンではJimとPeteが着々とロックのハード化を推進していたのだ。

今の若い人は「Wolfman Jack」なんて名前聞いたこともないだろうな…。そういう人たちはどんどんオールディーズの曲なんかを聴くといいと思うんだけどね。
どれほど昔の曲のクォリティが高かったかと、現在のテレビで聴かれるような巷間の音楽がどれだけ薄味かを存分に知ることができるに違いない。

ちなみに、この「グラフィティ」という言葉は「graffito」の複数形で「落書き」という意味だ。
かつて、この映画をテレビで放映した時、解説の淀川長治さんが「グラフィーティ」と「フィ」にアクセントを置いて発音していた。これが面白くて、翌日学校での友達との会話の話題になったが、実はコレが正解。
「graffitti」は「fi」にアクセントがつく。
だから最近また話題になっているLed Zeppelinの「Physical Graffitti」も「フィズィカォ・グラフィーティ」と発音しないとネイティブには伝わりにくいかもしれない。

ウオッ!話しが幾重にも脱線してしまった!
ナニが言いたかったのかといえば、女の子にもてるための2大神器が「ロックンロールと車」。「ロックといえば車」…これは永遠のステレオタイプだ。
…と思われたが、現在はこんなことを唱える者はいないと考えてよいだろう。
何せ、最近では車を欲しがらないどころか、運転免許も取得しない若者が多いっていうもんね。
ま、かくいう私も「いい車が欲しい!」と思ったことは今までの人生の中でほとんどないんだけどね。
普通に走って機能がちゃんと果たせればそれで十分。要するにMarshallやNATALやEDENが運べればそれでOKなんよ。
私の場合、同じ金をかけるなら車よりも、超高級オーディオだな。
だからこんなジャケットを見ても、ナ~ンとも感じない。

1983年のStray Catsのサード・アルバム。Brian Setzer、ほっせ~な~!
タイトルの「Rant n' Rave」というのは「わめき散らす」という意味。同じ「R&R」で「Rock 'n' Roll」をもじっているのかな?
Brianなら話しはわかるけど、Lee RockerとSlim Jim Phantomの2人も教則ビデオを出していたの知ってる?
Lee Rockerのロカビリー・ベースのヤツはすごく人気があったんだよ。
このアルバム、サックスのMel Collinsが参加している。
ナンでやねん?!
50
わからないのよ。
Ry Cooderの楽しみ方が…。
アルバム結構持ってるんだよね。でも、どうもシックリ来ない。『Paradise and Lunch』と『Chicken Skin Music』をホ~ンのタマに聴くぐらいか…。
ブルースを自らすすんで聴かないのと同じように、つくづくダメなんだろうなナァ、ジャズ以外のアメリカン・ルーツ・ミュージック。
「お子ちゃまなのよ」と笑わば笑え。
Ryの名作のひとつに数えられるとされる1972年の本作、『Into the Purple Valley』も持ってるけど、聴かないナァ。
記憶にあるのはWoody Guthrieの「Vigilante Man」が入っていることぐらい?でも、この曲にしてもNazarethバージョンの方が圧倒的に印象深いもんナァ。
そういえばこの人、Beefheartのところにいたんだよね。
ずいぶん前にあるコンサート・プロモーターの方から聞いた話し。
Ryって来日してコンサート会場でグッズの即売をすると、他のアーティストに比べてケタ違いにCDが売れるらしい。もちろんツアーのサイズにもよるが、(当時)3,000枚ぐらいは軽かったとか…。
きっとコンサートの内容が素晴らしいんだろうね。
その昔、Rick Dankoの来日公演の時、前座で登場したJay Fergusonってのがすごくよくて、そのパフォーマンスに感動した、一緒に行った友人も同感で、会場でレコードを買った。
ところが!後でそのレコードを借りて聴いたけど、おもしろくも何ともなかったことを思い出す。
もちろんRy Cooderの場合はそんなことはなかろうが、私はチト…。

このジャケットは車といい、格好といいタイポグラフィといい、何かのクラシック映画のワン・シーンのパロディなんだろうね。とてもいい感じ。
『Rocky Horror Picture Show』にもこういうシーンが出て来るけどまさか…。

70上の『Into the Purple Valley』のプロデューサーのひとり、Van Dyke Parks。
みんな好きだよね、Van Dyke…またダメなの私。冗談抜きに時々俳優のDick Van Dykeと名前がこんがらがっちゃうぐらいなんだもん。
歴史的名盤の誉れ高い『Song Cycle』でさえも良さがよくわからん。どうにも途中で飽きちゃう。
それなのにナンダってココに取り上げてるんだ?の理由は後でわかる。でも大した理由じゃない。

コレは1972年のカリプソをテーマにしたセカンドアルバム。
カリプソはトリニダード・トバゴの音楽だ。このカリブ海に浮かぶ島国の首都はポート・オブ・スペインというが、ナント、イギリス連邦加盟国なのだそうだ。
そして、音楽好きには「20世紀最後にして最大のアコースティック楽器の発明」とされるスティール・ドラムの発祥の地としても認識しているところだろう。
カリプソという音楽は、ユーモアを交えて世情を揶揄する諧謔性に富んだ音楽だ。曲だけ聴いていると、やたら楽しい雰囲気だが歌詞の内容は極めて社会性に富んでいる。
このアルバムの収録曲はすべてカバーで、ほとんどがPD。
Van Dykeはカリプソ・ジャイアンツたちに敬意を表し、このアルバムに作曲者名をクレジットして印税をMighty Sparrowらに支払い救済しようとしたという。PDだと印税は発生しないんハズなんだけど…。

さて、この項、ここからが長い。今回のハイライト。映画方面に大脱線だ。
あんまり長くて一体何のジャケットについて話しているのかわからなくなるので、ここで一回当該のジャケットの写真を挙げておこう。
コレね。
160
さて、このアルバムの1曲目に「Jack Palance」という曲が入っている。作者のMighty Sparrowのオリジナル音源だ。
ジャック・パランスというのはアメリカの俳優のこと。ご存知であろうか?
では、有名な『シェーン』は知ってるでしょ?
あの中でアラン・ラッド扮するシェーンの敵の黒づくめの男、あの役を演じたのがジャック・パランス。
アーネスト・ボーグナインの向うを張るスゲエ顔をした性格俳優だ。
この歌は一種のコミック・ソングのようなもので、「週末に親友とナイト・クラブで呑んでいたら、若いアメリカ人と一緒にいる親戚のおばさんに出くわした。そのおばさん、もはや「おばあちゃん」で、顔はジャック・パランスのよう…」
ってジャック・パランスに失礼じゃないの!
カリプソとはそういう音楽らしい。

ここで、『シェーン』に話が飛ぶ。
ジャック・パランスとの決闘にも勝利してハッピー、ハッピー。
ラスト・シーンはあの金髪の少年が荒野を行くシェーンに向かって「Shane!  Come back!」と叫ぶ。アメリカ映画史上最も有名なラスト・シーンのひとつだ。
私もラスト・シーンだと思い込んでいた。
ところがこの後、この映画はヒッチコックもビックリのドンデン返しが待っていて、一気にサッド・ストーリーになるのである…ということが、サミュエル・L・ジャクソンとケビン・スペーシーが主演した『交渉人』にしきりに出てくる。
シェーンは生きているのか?それとも死んでいるのか?…みたいな。
すなわちシェーンは決闘には勝ったように見えたが、実はパランスの弾に当たって死んでしまった。しかし、少年を心配させまいとして、シェーンの亡霊が元気なフリをしている、というのだ。すなわち「帰ってきて!」と少年が叫んでいる相手は幽霊…。

コレが気になって、気になって、実際に観たよ、『シェーン』を!
するとですね、エンドロールと重なっていたかどうかは忘れたが、本当に最後の最後…決闘に勝ってピンピンしているハズのシェーンは…歩く馬の上でグッタリしている。ヤヤヤ?様子がおかしいぞ。
そしてその馬がたどり着いたところは…墓場だった。やっぱり死んでた。
あ~なんて賢い馬なんでしょう!…という話しではない。メッチャ後味悪いんだぜ、この映画。

「ジャック・パランス」に話しを戻す。実はココが一番書きたかったところ。
ジャック・パランスは『シェーン』の3年後、1956年に『攻撃(Attack!)』という異色戦争映画に出演する。
監督はロバート・アルドリッチ。『七人の侍』を30回だか50回だか観て勉強したというアクション映画の巨匠だ。
軍の醜い内幕を暴いたこの映画にはスポンサーがつかず、アルドリッチは自費でこの映画を制作した。
とにかくこの映画だけはひとりでも多くの人に観てもらいたい。特にサラリーマンかな?
リー・マービンの役どころである私欲にかられた軍の上役が、承知しておきながら無能で臆病な幼なじみ、エディ・アルバート扮するクーニーを指揮官に据える。それが悲劇を引き起こしてしまう。
この中で、ジャック・パランス扮するコスタは上官であるクーニーから無茶な作戦を強いられ、自分の部隊が全滅しそうになってしまう。助けると約束したクーニーが臆病風に吹かれてコスタの部隊を援護しなかったのだ。
命からがらクーニーの元に戻ったコスタは上官であるクーニーに言う、「今度裏切ったら必ずおまえを殺す」。上官に言うんだからスゴイ。
不幸にも再度同様の局面に出くわし、コスタはクーニーの救援を頼りに最前線に出向くが、クーニーはまたしても裏切り、コスタの部隊が壊滅状態に陥ってしまう。
しかし、コスタはドイツ軍の戦車に片腕を踏みつぶされても、クーニーを殺すために戻ってくる。
この時の形相がスゴイ。
おそらく全映画史上もっともすさまじい人間の形相であろう。
後は見てのお楽しみ。
私は父に薦められて小学生の時に初めてこの映画を観たが、大変なショックを受けた。
それから大人になってこの映画の見方が変わった。舞台である軍隊が、会社のように見えるのだ。会社なんて中身はクーニーだらけだから。
以上がジャック・パランスの話し。

最近はいい大人もくだらないマンガ映画なんか観てよろこんでいるようだが、昔だったら考えられない。映画もロックも、作り手も受けてもあまりにも幼稚になってしまった。
今こそこういう社会的に強いメッセージを含んだ映画を観て欲しい。娯楽性も満点だから。
要するにひたすら面白い映画なのだ。

ハイ、Van Dyke Parksの『Discover America』の話しをしています。
で、ジャケット。
バスの行き先が「トリニダード」と「ハリウッド」になってる。このバスに足がはえて「七国山病院」へ行けばいいのにナァ…メイ、大丈夫かな…?
「お前も観てるじゃねーか!」って?「トトロ」はウチの下の子が具合が悪くなった時に必ずビデオを観ていたので知ってる。他のジブリは1本もみたことない。
「火垂るの墓」を見ようとしたけどサクマのドロップのところで頭が痛くなっちゃって最後まで観たことない。かわいそうすぎちゃって…。野坂昭如の原作は読んだ。
ア、あと「顔なし」はテレビで観たわ。

スリーヴのクレジットを見ると、デザインは「Design Maru」とある。
コレ、日本の人かね?「Maru」なんて。調べたけどわからなかった。「丸」なんて軍事雑誌があったけどまだあるのかな?

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このDesign Maruという会社だか人だかが手掛けているジャケットにThe Carpentersの『Now & Then』がある。
コレ、名盤だよね。ジャケットもいい。
ちょうど「乗り物」だから紹介しちゃおう。
Carprnter兄妹が実家から赤い車で出かけるところらしい。両親にギャラの分け前でも持ってきたのかな?すごい額だぞ。

1_img_0281_2このジャケット、鏡開きになっていてドバっと広げるとこんなに大きくなる。30cm×3という大判。テレキャスと比べるとそのデカさが目立つ。

このテリー、すっかりページ押さえになっちゃって…というのはウソで結構弾いている。
16年ぐらい前、マンハッタンはグリニッジ・ビレッジにあるMatt Umanovという楽器店で格安で買った時は、まるで鉄板を弾いているようでゼンゼン鳴らなかったが、今は見違えるようにふくよかに鳴ってくれる。弾いていて実に気持ちがいい。
とにかく深みのあるアクションがタマらないのよ。
弾き込めば楽器がよくなる…なんてことはギターを弾き始めの頃は信じなかったけど、コレはホント。確かによくなる。
この現象は科学的に証明されていて、弾き込まれていないギターの木材の組織だか繊維はランダムの方向を向いているらしいんだけど、弾き込むと、その組織が同じ方を向くようになり、振動しやすくなるんだそうだ。キチンと並んだ組織を見たワケじゃないけど、すごく納得できる感じがする。

1_img_0283_2Blue Oyster Clut、1975年の2枚組ライブ・アルバム『On Your Feet or on Your Knees』。
バンドのマークでもある変形カギ十字の旗をつけたリムジンが、いかにも幽霊でも出てきそうな洋館の前に停まっている。
名前からして、すごくオカルティックな感じのするバンドだが、サウンドはナントもいえないB級ハードロックの雰囲気。下手をすると演歌っぽい空気が漂っていてなかなかに庶民的なバンドだった。
「オカルティック」ということであれば、ロンドンのFinsbury Park駅で地下鉄に飛び込んで自殺したGraham Bondの方が数段上だ。

「りんじニューズをもうじあげまず」という下手な日本語をはさんだ「Godzilla」という曲がすごく話題になり、来日も果たした。
当然、新宿厚生年金会館大ホールに観に行った。1979年のことだ。
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コレがその時のコンサート・プログラム。
メンバーのプロフィールに「胃潰瘍を持っている」とか「変わり者」とか、おおよそ音楽と関係ないことが書いてあっておかしい。
ステージの機材についてはまったく記憶にないが、写真によってはMarshallが並んでいるのが見える。
コンサートそのものはものすごくおもしろかった。
「Godzilla」もヨカッタけど、当時まだあまりお目にかかることのなかったレーザーを駆使したり、ストロボをうまく使ったりで、最高に楽しめた。

G_img_0006リード・ギターのDonald Roeserという人は気の利いたフレーズを連発するなかなかいいギタリストだよ。
で、このバンドの売りはクライマックスになると、キーボーディストもドラマーも全員ギターを持ち出して、5人でギター・ソロを弾いちゃう。何もこんなことする必要はないんだけど、実際に見るとやっぱり面白かったね。

Blue Oyster Cultというのは「Cully Stout Beer」のアナグラム(綴り変え)という話しだが、ホントかな?
「Stout Beer」というのギネスのような濃いビールのこと。「cully」というのは「だまされやすい人」とか「ヤツ」とか「男」という意味を表す単語だ。コレじゃ意味が通じないジャン?
スタウトは好きだナァ。
パブでコキコキとハンド・ポンプで時間をかけてパイント・グラスに注いでもらう間がタマらん。初めはあまりのぬるさにビックリしたが、今ではコレがいい。
イギリスに行くとラガー・ビールは飲まない。エールとスタウトだけ。コレを飲んじゃうとバドワイザーなんてとても、とても…。

MotorheadやMotly Crue等、「O」にウムラウト(ドイツ語で使う点々ね)をつけているバンドを見かけるが、Blue Oyster Cultが開祖らしい。これはベースのAllen Lanierのアイデアだったとか。
ウムラウトに変形カギ十字のロゴがこのバンドのCIだったということか?

G_img_0004Screaming Lord Sutch、1970年のアルバム、『Lord Sutch and Heavy Friends』。
このアルバムと2枚目の『Hands of Jack the Ripper』は我々世代には結構おなじみのアルバムではあるまいか?
…というのも1枚目にはJimmy Page、John Bonham、Jeff Beck、さらに2枚目にはRitchie Blackmore、Keith Moon、両方にNoel Redding等のビッグ・ネームが参加していて、あの時代の必聴アルバム選に大抵顔を出していたからだ。
ともすると、Lord SutchというのはRitchie Blackmoreの師匠だなんて話しまであって、一体どんだけギターがウマいんだ?なんて思ったりしたものである。
Lord Sutchはロックンロール・シンガーで、ギタリストでもなければ、「Lord(伯爵)」という称号が付いていてもまったく貴族なんかではない。
残念ながらここに挙がっているアルバムは聴いたことがないが、2枚目はRitchieのギターがカッコよかったりする。基本的にはちょっとへヴィなロックンロールといったところ。
ステージでは奇天烈な恰好をして、小芝居をし、お客さんと絡み合ったりするスタイルだった。
それでもビートルズが出現するまでは、イギリスで最も稼ぎのよいロック・ミュージシャンだったらしいよ。
よせばいいのに国政選挙に立候補したりして、政治活動も活発に展開したがまったく芳しい結果は得られなかった。

もうだいぶ前のことになるが、Jim Marshallの家にお邪魔した時のこと。当時Jimの家の壁にはところどころ額に収めた新旧の写真が飾ってあった。
ブッたまげたのは、その中にLord Sutchの写真が混ざっていたことだった。
その写真はトラックの荷台のような台車にMarshallアンプが積んであって、Lord Sutchが一緒に写っているというもの。
どういうことかと周囲の人に尋ねると、「ScreamingはJimと仲がよかった」という話だった。
そして、昨年末に上梓された、私が監修を務めた『アンプ大名鑑[Marshall編](スペースシャワー・ネットワーク刊)』 に当時のローカル紙のスクラップが掲載され、そのあたりの事情が明らかになった。
Jimが1963年に2番目の楽器店を開店させた時、当時かなりのスターだったLord Sutchがオープニング・セレモニーを担当したのだ。
そのローカル紙の記事を読むと、ここでも大分ハチャメチャだったことがわかる。

でも、どうもわからないのは、Jimが2番目の店を始めたのが1963年、この頃はもうLord Sutchはスターだった。ところが、このデビュー・アルバムの発表は1970年…エラく間が空いてる。
なんだってこんなにデビュー・アルバムが後になったんだろうね?
Lord Sutchは1990年に自ら命を絶った。

さて、このロールス・ロイスのジャケット…「Lord」という名前からして、日本ではホンモノの大金持ちと勘違いされていたこともあったらしい。

60
それにしてもイギリス人ってユニオン・ジャックが好きだよナァ。

G_img_7639ほぼシンメトリックなデザインが使いやすいのか、色んなものにやたらと利用される。星条旗より使われているんじゃない?
ウェールズを除く3つの国旗を組み合わせた意匠とはいえ、結果「+」と「×」を組み合わせただけのデザインなのにね~。

G_img_7351やはりかつては世界を征服した一等国の国旗としてのステイタスを感じさせるのかね?何しろみんなユニオン・ジャックが大好きだ。

G_img_7645Thin Lizzyのファースト・アルバム。1971年のリリース。
今でこそ当たり前のThin Lizzyだけど、私の感覚では日本での人気はかなり後になってから出たような気がする。それにGary Mooreの人気が拍車をかけた。
私はだいたい『Bad Reputation』ぐらいからリアルタイムで聴いていたが、学校でThin Linzzyを聴いているヤツなんて他にひとりもいなかったナァ。
『Live and Dangerous』は出てすぐ買った。
その後で「Gary MooreがThin Lizzyに入った」ってんでよろこんだ記憶があるような気もする。
ま、結局『Black Rose』までしか聴かなかったんだけどね。
「ギャリー・ムーア」とか「フィル・リノット」って呼んでた時代の話し。

それにしてもDecca時代のThin Lizzyなんて聴いている人なんているのかしら?
そうか…このジャケット、車だったんだねぇ。意識したことなかった。さすが植村さん。
このアルバム、ホッコリしててなかなかよろしいな。
ギターがEric Bellひとりなのでツイン・リードもできないし、売れようとする気がおおよそしないユッタリ感がかえって気持ちいい。

今、Thin Lizzyを聴いて感心するのはBrian Downeyのドラミングだ。
この人、ウマいねぇ~。
NATALドラマーですよ!

90Peter Gabrielの1977年のファースト・ソロ・アルバム。
発売された当時、特にGenesisが好きだったワケではないんだけど、ナゼかコレは出てすぐに買ったナァ。
今は「ゲイブリエル」なんて表記しているけど、私の中では死ぬまで「ガブリエル」だ。それはこのアルバムがあったから。すごく気に入ってホントによく聴いた。
あんまり好きで西新宿のブートレッグ屋でコンサートのもようを収めた海賊盤を買った。あまりの音の悪さに絶句した。
後年、中古レコード屋へ下取りに出したところ、買った時の何倍もの値段で引き取ってくれて再度絶句した。
全曲好きだったけど、Robert Fripが泣きのブルース・ギターを聴かせる「Waiting for the Big One」という曲にはシビれた。
…ってんで、セカンド・アルバムが出た時、よろこんですぐに買いに走ったが、全然おもしろくなかった。その後、「So」というのは買って聴いたけどあのゲイト・リバーブが苦手で2回は聴いていない。

ジャケットはHipgnosis。3枚目までHipgnosisなのかな?
このジャケットに写っている青い車はHipgnosisのStorm Thorgersonの持ち物。ホースで水を撒いたところをモノクロで撮影し、後で車に青い色を入れたそうだ。

100Delany & Bonnieか…。
こういうのは全く聴いてこなかったナァ。
いつからアメリカン・ロックに興味がなくなっちゃったんだろう。Marshall Tucker Bandなんか集めていた時期もあったんだけどね。
それでも中高生時代、夢中になってロックを聴いていた頃に観た外タレって圧倒的にアメリカンが多いんだよね。それはもちろんアメリカのグループを選って観に行ったワケではなくて、アメリカから来るグループがただ多かっただけのことだろう。
これが1970年代前半だったら情勢は全く違っていたハズだ。
今ではFrank Zappa、Todd、Steve Millerだの以外で胸を張って好きだと言えるアメリカン・ロックのミュージシャンはいないって感じ。ジャズは別ね。さすがにジャズはアメリカ抜きには語れない。
そこに引き換え…

110好きだ~、Brand X!
1977年発表のライブ・アルバム『Liestock』。
やっぱブリティッシュだわ~。
ジャケットはHipgnosis。さすがの出来じゃない?アメリカにいるか?Hipgnosisが!アメリカ人にはわからねーだろーなー、このセンス!
Brand Xもほとんどのアルバム・ジャケットはHipgnosisが制作している。

このアルバムはロンドンの名だたるハコで録音されている。Ronnie Scott's、Hammersmith Odeon、Marquee…そしてミックスはかのTrident Studioで行われた。
タイトルの「livestock」…「live」アルバム用の「stock」ということなのだろうが、この「livestock」という単語の本当の意味は「家畜」だ。
だからこのジャケットのバックは牧草地になっている。
イギリスは大都会のロンドンから20分も電車に乗ればこういう光景が広がって牛や馬や羊がノンビリと草を食んでいるのを見ることができる。
だから本来であれば、このジャケットに写っているべきは家畜のハズなのだが、「どこでも車ドア」から出てきたのはなまめかしい女性のおみ足。
そういうシャレになっていると見た!

120このアルバムは、おそらく「人生でよく聴いたロックアルバム」の上位30傑に入るのではなかろうか?
もう~、問答無用で全部好き!すべての曲はもちろんジャケット、うちジャケット、インナー・スリーヴ(レコード袋)…等々。
こうしたアート・ワークはHipgnosis。代表作のひとつと言えるのではないか?
このアルバム、邦題は『びっくり電話』となっていた。こっちがビックリするわ、そうんな邦題!
原題の『How Dare You!』というのは「よくもそんなことができるなぁ!」という文句あるいは怒りの一言。おかげさまで私はまだ実際に言われたことも口にしたこともはない。
だからジャケットに出てくる人たちもみんなそういう表情をしている。
裏ジャケにも斜めに二分した画面に電話をかけたり受けたりしている男女の写真が載っていて、表ジャケットの男女やそこに写っている写真や背景の人物たちと謎っぽく絡み合っている。
色々想像してストーリーを読みほどこうとしたけどわからない。
ただ、雰囲気がナゼかUFOの『Force It』に似ている感じがするのは私だけであろうか?

ホント、全曲好きだけど、一番は最後の「Don't Hang Up」かな?
大好きな10ccだったけどLol CremeとKevin Godleyが抜けて5ccになってキビしくなった。
私は『Decptive Bends』からリアルタイムで聴いたけど、次のスタジオ・アルバム『Bloody Tourist』でズルリと来てすっかり興味を失ってしまった。暗黒の80年代の到来だ。
初めの5枚とライブ・アルバムは今でも聴いてる。

ところで、コレ乗り物ジャケット?

130以前、『日本独自LPジャケット』特集の時にChris Speddingのベスト盤を取り上げた。
決して横着するワケではないのだが、加筆してここに採録させて頂きたい。

Chris Speddingはかなり昔から名前を知っていた。
何かで読んだように記憶しているが、「日本で3大ギタリストといえば、クラプトン、ベック、ペイジだけど、本国イギリスに行くとクリス・スペディングが入る」…これが非常に印象的だった。
もちろんこんな「三大」なんてイギリスにはありゃせん。元より「三大」を好むのは日本人だけのようだ。
ChrisはJack Bruce、Ian Carr、Mike Gibbsとの共演を果たしたブリティッシュ・ジャズ・ロックの重鎮ギタリストだった。それで随分と気になって、いろんなアルバムを通じて彼のプレイに耳を傾けたが、納得がいったことは一度もなかったな。
他にもJohn Cale、Bryan Ferry、Elton John、Eno等とのレコーディングをした…こうして見ると、下手をすればこの人はイギリスでもっとも広範囲な活動を展開したギタリストかもしれない。

1977年、Bryan Ferryが単独で来日した時、中野サンプラザでクリス・スペディングを見た。トレードマークのフライングVを下げていたがそれ以外には特に目立つ点はなかった。この時、Andy McKay、Paul Thompson、Phil ManzaneraというRoxy勢に加えて、ベースがJohn Wettonだった。『Manifesto』で復活する前で、Roxyが休んでいただけにファンだった私にはメチャクチャうれしいコンサートだった。Roxyが復活して来日。その武道館のコンサートも観たが、あまりパッとしなかったな…。

その後、BSかなんかでRobert Gordonのバックを務めるChrisを観た。彼のフィーチュア・コーナーもあって、Chrisが有名ギタリストのモノマネを演っている「Guitar Jamboree」なんかを演奏していた。
その「Guitar Jamboree」が収録されているのがこの1976年のソロ・アルバム『Chris Spedding』。
この曲の中で取り上げているギタリストは、Albert King、Chuck Berry、Jimi Hendrix、ナゼかJack Bruce、Pete Townshend、Keith Richrds、George Harrison、Eric Clapton、Jimmy Page、Jeff Beck、Paul Kossoff、Leslie West、Dave Gilmour。
初めのうちは12小節にわたってモノマネをしているんだけど、Pete Townshendあたりからドンドン短くなって、しまいには2小節毎になってしまう。
有名なリフを弾くだけの完全に「演歌チャンチャカチャン」状態。こんなんじゃ売れんわナァ。

さて、肝心のギターの腕は…というと、Robert GordonのバックのようなロカビリーとかR&Rっぽいスタイルになると俄然すごくなる。。あまりにも正確でカッチリとしており、彼が60年代よりテクニック派のミュージシャンたちに重用されていたという長年の謎がいっぺんに解けた気がしたのだった。こういうギターはなかなか弾けないもんだ。

それにしてもアメリカっぽいジャケットだな…このジャケットを見たら、まさかこの人が「イギリス三大ギタリスト」の一角だなんて思う人はいまい…だから違うってば!

150今の若い人たちは「アル・カポネ」なんて名前を耳にしたことなんてないんじゃないかな?
『Live Dancing at Al Capone's Ballroom(アル・カポネのスーパー・グラフィティ)』というコンピレーション・アルバム。
子供の頃、「夢のバンド」みたいなことを考えなかった?ボーカルはロバート・プラント、ギターはジミ・ヘンドリックス、ベースはポール・マッカートニー、ドラムはピエール・モエルラン(←コレはウソ)…みたいに好きなミュージシャンをかき集めてバンドを組ませたらどうなるか…ということを想像する。
要するにゴジラ(東宝)とガメラ(大映)とガッパ(日活)とギララ(松竹)が戦ったらどうなるか?ということ。
ま、こんなこと考えてもただの時間の無駄なんだけどね。
して、このアルバムのコンセプトはそれと同じようなもので、イタリアン・マフィアの大物アル・アカポネが金と権力にまかせて集めた人気ミュージシャンによる豪華なコンサートというワケ。
Louis Armstrong、Mills Brothers、Andrew Sisters、Bill Haley & His Comets、Glenn Miller、Ella Fitagerald、Count Basie、Buddy Holly、Debbie Raynolds他、R&Rやオールディーズ、スウイング等のスターの音源が収録されている(ようだ…というのもゼンゼン知らなかったんだよね、このアルバム)。
そうか…コレも乗り物ジャケットか…。
アル・カポネの左頬にはしっかりとキズが刻まれている。そう、スカーフェイス。
この人、梅毒で死んだらしんだけど、世界で初めてペニシリンを投与された人だったんだって。
ちなみにネイティブ・スピーカーに「アル・カポネ」と言っても通じない。
「エァル・キャポーン」と発音するのが正しい。外人の前でこの名前を口にするチャンスはなかなか来ないけど。
40_2
さて、以上で車は終わり。
ここから飛行機ジャケット。
訊かれないんで今まで言わなかったけど、実は飛行機好きです。
国際線で長い間せまいところにジッとしているのはそりゃ辛いけど、乗ること自体は今でも少しワクワクしちゃう。
初めて乗ったのは13歳の時かナァ?だから約40年前か。北海道へ行かせてもらった。
あの頃は飛行機の中でもタバコが吸えて、席も自由席だった。
…「自由席」というのはもちろんウソだけど、28年前に新婚旅行先のアメリカへ行ったUA便は、一応席だけは分煙の格好を採っていたけど、まだ機内でタバコを吸うことができた。
今考えてみると、あんな狭いところでよくスパスパやってたよな。
私たちの席がちょうど喫煙と禁煙の境目で、禁煙感は皆無。当時私は吸っていなかったので四六時中迷惑そうな顔をしていたら、反対に禁煙席をあてがわれて苦しんでいるサラリーマンが席の交換を申し出てくれたんだったっけ。
その後、しばらくして吸うようになったが、また止めた。今はもう「全ライブハウス禁煙案」に大賛成。

はい。飛行機ジャケットの一発目はよりによってJeffersonが来たよ。
だ~か~ら~、Jeffersonは苦手なんですってば!
と言っても、どのジャケットをココで取り上げるのかは私の自由なんだけどね。コレ、名盤とされているんでしょ?1967年の『After Bathing at BAXTER'S』。
だから採り上げた…。
棚から引っ張り出して来て3回聴いた…。
感想…なし。
以上。

タイトルの「Baxter」というのはバンド用語でLSD(いわゆるacid)を意味する。「After Bathing at Baxter's」で「アシッドでブっ飛んだ後」ということになるんだそうだ。
ま、そんなこったろうと思ったわ。
ジャケットのイラストはRon Cobbという人の作品。
何やらロバート・アルドリッチ(奇しくも今日2回目の登場!)の名作『飛べ!フェニックス(The Flight of the Phoenix)』を連想させる。
このRon Cobbという人は、アメリカのマンガ家にして作家。レコード・ジャケットに関しては他に有名な作品が見当たらないが、映画の世界ではモノスゴイ仕事をした人。
『スター・ウォーズ』、『エイリアン』、『コナン・ザ・グレート』等の人気作品で登場アイテムのデザインに携わっているのだ。

170

Nilssonの『Aerial Vallet』。
Nilssonはすごく後になって好きになった。でも古くから名前になじみがあった。
私は友人から教えてもらい、中学2年生の時から数寄屋橋のハンターに通っていたが、「ナ行」のコーナーで最も回数多く出くわしたのが『Son of Schmilsson』だったからだ。
歌声はそれ以前から知っていた。
小学校の時に観た『真夜中のカウボーイ』の「Everybody's Talkin'(うわさの男←この訳はウマい!)」のことだ。
この曲はこのアルバムに収録されている。

『真夜中のカウボーイ』はジョン・シュレシンジャーの巧みな演出、ダスティン・ホフマンとジョン・ヴォイトの迫真の演技でアカデミー作品賞(現在まで年齢指定映画でアカデミー作品賞を獲得したのはこの作品だけ)他を獲得し、「Everybody's Talkin'」はヒットした。
今でも時折CMで使われたりしてご存知の方も多いだろう。よく聴くとギターのアルペジオがメチャクチャかっこいい。永遠に歌い継がれる名曲だ。
しかし!「Everybody's Talkin'」はNilssonの曲ではなく、Fred Neilのペンによるもの。
Nilssonもこの映画のために曲を提供したが採用されず、歌だけ歌うことになり大層悔しがったそうだ。
でもね、映画の主題歌としては、この曲で絶対よかったんだよ。
歌詞を把握してこの映画を観たら、ナゼこの曲が選ばれたかがよくわかるハズ。そして、泣ける!ものすごくウマく使われているのだ。
また後に『サウンドトラック・ジャケット特集』に『真夜中のカウボーイ』が出て来るので、その時にまた触れることにする…いつになるかわからないけど。

ジャケットのイラストは  
調べたけどわからなかった。

180

また出たBlue Oyster Cult!今度は飛行機だ。
ジャケットのイラストはRon Lesserという人の作品。映画関連のアートが中心のぺインターのようだ。
私が持っているCDはグループ名が緑色だ。

1974年、3枚目のアルバム『Secret Treaties』。
いいんだよナァ。どことなく昭和歌謡の香りがする。
1曲目は敏いとうとハッピー&ブルーだし、2曲目はマッチだし…。他の曲もどこか古臭くてすごく愛らしい。最後の「Astronomy」は名曲だ。
古いんだけど今聴いても新鮮…なんてことは全くなくて、古いものは古い。でも古いからいいものもある。
それがBlue Oyster Cult。

190「世界で最も美しい音を出すロック・バンド」とされたWhishbone Ash。
確かにナントカコアみたいな、やたら音がデカくて、低音ばっかりで、ボーカルがガナリ立てているメロディレスのロックに比べたら月とスッポンだ。
アレ、誰がロックをあんな風にしちゃったのよ?

私は高校1年生の時、Wishbone Ashのコピー・バンドを友達とやっていて、このアルバムはよく聴いた。
Ashはファーストから『There's the Rub』ぐらいまではホントによかった。
このバンドもアメリカからは絶対に出て来ないタイプのバンドであろう、いかにもイギリスらしいバンドだ。
以前にも書いたが、あまりに美しく崇高なサウンドゆえ、歌詞が追い付かず、当時歌を聴いてゲラゲラ笑ってしまう若者もイギリスにはいたらしい。
その点、我々はラッキーだ。
Wishbone Ashも観に行ったナァ。
近年、Ted Turner派とAndy Powell派に分かれてしまったが、私は偶然両方観た。3通りのWishbone Ashを観たことになる。

1973年の二枚組ライブ・アルバム『Live Dates』。
「Warrior」、「Throw Down the Sword」はニューキャッスルのシティ・ホールで録音されているんだね。知らなかった…というより意識したことがなかった。

これまただいぶ前のことになるが、「ステレオ・サウンド」誌の姉妹誌、「Beat Sound」という雑誌の企画で、大谷令文さんを迎えて名ライブ・アルバムでJBLスピーカーを聴き比べるという企画があった。
令文さんのお供で付いて行った。以前これもマーブロでレポートしたことがあったんだけどね…。
何しろスピーカーが変わるだけでバンドが変わっちゃったんじゃないか?と思うぐらいの差がそれぞれあってものすごく面白かった。
その時、このアルバムもリファレンスに使われたんだけど、ビックリしたのが音質の良さ。「アッラ~、コレこんなに音よかったけ?」みたいな。
内容もさることながら、録音もピカ一のライブ・アルバムなのだ。

Hipgnosisジャケットのチャンピオンといえば何と言ってもPink Floydだが、Wishbone Ashも『Argus』を頂点にかなりHipgnosis度高し。反対にHipgnosisから離れた80年代になるとまったく魅力を失ってしまった。
「世界で最も美しい音を出すロック・バンド」もロックのポップ化、あるいはパンク/ニューウェイヴの犠牲者だった。

2001980年のWishbone Ash、『Live Dates 2』。
ジャケットを『Live Dates』に似せてあるが、録音は1980年の『Just Testing』のレコ発ツアーから。
チョットみるとLAのShirine Auditriumかなんかで録ったのかと思ったらさにあらず。ハマースミス・オデオン他、イギリス国内ツアーの音源だった。
私は聴いたことがない。

210

<中編>につづく

(一部敬称略)

※Music Jacket Galleryの詳しい情報はコチラ⇒金羊社MJG常設展
※当展示は2013年7月~9月のもので現在の展示中のものとは異なります。

2015年2月18日 (水)

【Music Jacket Gallery】 植村さんの本!

売れに売れているそうだ…この『洋楽日本盤のレコード・デザイン(グラフィック社刊)』という本。
副題は『シングルと帯にみる日本独自の世界』とある。
レコード・ジャケットに関する本はゴマンとあるが、日本で制作したレコード類のオリジナル企画に視点を合わせたところが新鮮だったのであろう。
しかも、この本、LPやドーナツ盤に愛着を感じる世代もさることながら、30~40歳台のCD世代、あるいは、それ以降の世代の人たちに大ウケしているそうだ。
2月6日に販売され、早くも重刷が決定しそうだ!

10ナゼこの本をMarshall Blogで取り上げているかというと、著者が『Music Jacket Gallery』でおなじみの植村和紀さんなのだ。
ご出版おめでとうございます!

20v_2植村さんといえば何度もMarshall Blogにご登場いただいている日本屈指のLP、CDコレクターだ。
その植村さんが著した本ということで前々から楽しみにしていたというワケ。

植村さんのCDコレクションはコチラをご覧あれ!⇒The Amazing Uemura Collection

30v_2ご出版に際し、植村さんに少しお話しをうかがってきた。
そのお話しを散りばめながら、さっそくこの本を紹介しよう。

まずは表1。
レコード帯に関する本だけあって、チャンと帯がかかっている。東芝風の帯だ。
コレ、むかし「タスキ」って呼んでいる人もいたけど私は絶対「オビ」。
帯がかかっているといっても、これはもちろん印刷。少し端から離れていて下が見えているところがいかにもソレらしい。
この帯ってパンパンに張ってあるのとユルユルのヤツがあったよね。

40こちらは表4。

50_2ちょっと写真ではわかり辛いが、帯の白いところが透けて下地が見えている。
また帯の貼りしろが折り返したところで少しズレている!…といった凝りようがうれしい。
ま、LPが主流していた頃はバーコードもなんてものはなかったけどね。消費税もなかった。少子化問題も取り沙汰されない、戦争の心配もない、将来に希望を見出すことができたいい時代だった。帯はそんな時代の象徴のひとつなのだ、

60_2この本の内容は主に以下の3つのパートに分けられている。
①激レアな洋楽国内シングル盤のジャケットのコレクション。コレはすべてが植村コレクションにあらず。
②洋楽国内盤LPの帯のコレクション。コレは100%植村コレクション。
③最後は日本で独自に制作された洋楽LPのコレクション。これもすべて植村さんのコレクションから。

まずはシングル盤のコレクション。
岩渕さんというこれまた日本有数のコレクターが保有している約3,000枚のシングル盤の中からジャケット・デザインの優れているもの、邦題がおもしろいものを300枚に絞って掲載した。大変な作業だ。

下は60年代の大変貴重なシングル盤。マァ、出てるわ出てるわ、ゼンゼン知らないヤツら。
当時は圧倒的に邦楽優位で、レコード会社社内でも洋楽チームの地位は肩身の狭い思いをしていたらしい。
今はもっとそうか?邦楽:洋楽の比率は8:2を破り、とうとう洋楽の売り上げは20%を切ったらしい。

「Please Mr. Postman」で有名なMarveletsの「海には魚が多すぎる(Too Many Fish in the Sea)」なんて知ってる?誰が買ったんだろうね?漁師か?イヤイヤ漁師はサブちゃんを聴くよ。
この当時は漁獲量も多かったんだろうね~。今ではイワシが高級魚。マグロも獲れなくなってきてこれから先、一体どうすんの?
「Johnny Angel」やら「Pineapple Princess」あたりのオールディーズの名曲はさすがに知ってる。しかもスキだ。

71そんな洋楽の地位が低い環境下、なんだってこんなシングル盤をリリースしていたんだろう?
答えは「何もわからず右から左へ」…ということだったらしい。
そりゃそうだ。聴いたこともない音楽が次から次へと送り込まれてくるんだから、何でも出してみなけりゃわからない。
今なら「フフン…○○風だな?」なんていう聴き方もできるけど、当時は元となる「○○」がなかったんだからスゴイ。いわばすべてがオリジナルだったのだ。

そして販売に一役買ったのがジャケットのデザインだ。
ラジオで偶然耳にして気に入った曲をレコード屋に買いに行く。その曲は洒落たジャケットにくるまっていて、ああうれし…とこうなる。
そこでこれらのシングル盤のジャケット・デザインに心血を注いた人たちがいたワケだ。

例えば、下のThe Beach Boysスタンダードの1曲、「Fun, fun, fun」。この「ファン・ファン・ファン」というクルクルっとした文字。持てる才能を絞ってコレを編み出す。
当時は今みたいにコンピュータのフォントでチョコチョコ…なんてことはできなかったので、こうした文字をひとつひとつ人力でクリエイトしていったというのだ。いわゆる「手書き文字」。
音源と写真が海外から送られてきて、それらを組み合わせ、そこにオリジナルの手作り文字を入れて魅力的な商品に作り上げる…なんておもしろそうな仕事なんだろう。…と思うがコレが大変な仕事だったのだそうだ。

で、この本の巻頭には竹家鐵平さんというその仕事の第一人者の方へのインタビューが収められている。
コレがまたベラボウにおもしろい。
聴けば、竹家さんという方はとてもシャイで控えめな方。日本の洋楽レコード界にとてつもない業績を残されている。
そんなだから、会社をお辞めになった時、その足跡を記録した本を上梓しようという計画が持ち上がった。ところが竹家さんからキッパリお断りされたそうだ。
しかし、竹家さんのお仕事を後世に伝える義務感に燃えた植村さんを含むこの本の制作スタッフは、懸命に竹家さんの説得にあたり、時を経てようやくこのインタビューが実現したというものなのだ。
そう、私がいつも騒いでいるこうした「伝承作業」は、情報伝達の手段が進化した今こそ、あらゆる分野において真っ先にされなければならないことだと思う。
要するに温故知新の源の保全だ。
ま、最新のテクノロジーで古いことを学ぶなんて皮肉なことかもしれないが、「良いものは良い」のであ~る。この本もそれを教えてくれている「伝承本」のひとつだ。
72
右のページの左の上、The Whoの「A Legal Matter」なんだけど、B面が「The Kids Are Alright」になってる。
ま、「A Legal Matter」も悪くないけど、ココは「The Kids Are Alright」がA面でしょう?
ちなみにこのころのPeteはMarshallだ。太くてメチャクチャきれいなクリーン・トーンだ。
どうしてこうなったかと言うと…要するに海外から送られてくるものを「右から左に」ということらしい。…とこんなこともあったが、反対にAB面を故意にひっくり返してヒットを狙うなんてこともあった。
さらに、勝手に日本だけでシングル・カットしちゃうなんてこともしたらしい。

ところで、竹家さんはThe Beatlesのシングル盤のジャケットのデザインのほとんどを手掛けていらっしゃたということなのだが、ビックリしたことがひとつ。
60年代中盤、東芝音工は洋楽の分野においては業界ナンバー1だった。理由はThe BeatlesとThe Venturesを抱えていたからだ。社内のLPを含めた洋楽の全売り上げの65%がThe BeatlesとThe Venturesだったらしい。
でも驚いたのはこんなことではない。
ナント、当時The VenturesというのはThe Beatlesの10倍の売り上げを誇っていたというのである!
コレだもん、テケテケ、強いハズだよ。楽器もよく売れたにキマってら!
そこへ行くと今の楽器の世界ときたら…悲劇以外の何物でもないでしょ。テクノロジーばかり進化したものの、演奏する肝心の音楽の質が低下してしまったからだ。
しかも、デジタル・テクノロジーが生み出すサウンドは60年代や70年代の音に比べてどうか?劣悪としか言いようがないでしょう。ただ便利なだけだ。
何よりもマズイのは、やはりここでも「伝承」がなされていないことだ。
流行や利便性を追求するあまり、あの素晴らしいピュアな真空管のアンプだけが生み出せる美しいサウンドやPAスピーカーではなく、ギター・アンプのスピーカーが空気を震わせるホンモノの爆音を知っているベテランまでもがそちらに流れてしまって、後輩のその素晴らしさを伝承しようとしないことだ。
それなのにギターばかりビンテージ、ビンテージといって古いモノを希求するのは、高価な無農薬のコメや野菜を集めておいて、人口調味料やインスタントのだしを使って料理するようなものではないのか?
いつも言っているように、「楽器のブーム」なんてのはあり得ない。楽器は音楽をクリエイトするための「道具」なんだから。
今まで「ノコギリ」のブームなんてあったか?それとも「フライパン」のブームなんてあったか?そんなもんはありはしない。それらは材木を切ったり、食材を調子する「道具」だからだ。
テケテケの時代、それはギターのブームではなくて、「The Venturesの音楽」のブームだったということをもっとよく考えるべきだと思うね、楽器業界は。
すなわち、誰もが夢中になる「音楽」をクリエイトすることが先決なのだ。
73
そして、邦題。
コレは子供のころから「神戸牛のハンバーグ化」だと思っていたし、今でも原題主義に立っている。
何でこんなことするんじゃろね?…で、ようやくわかった。
もちろん売り上げを考えてのことなんだけど、昔はラジオの存在が大きく関わっていたという。
つまり、「いかにラジオでかけてもらえるか」…。
このことである。
『それでは次の曲、マーベレッツで「Too Many Fish in the Sea」です』というよりも、『それでは次の曲、マーベレッツで「海には魚が多すぎる」。最近はイワシが獲れないらしいよ~!』とやった方が、オンエアしてもらいやすいし、一般聴取者の耳にも入りやすいということ。
このThe Marveletsの曲がヒットしたかどうか知らんよ。
ま、Zappaの「Titties and Beer」という曲があって、「おっぱい印ビール」というキテレツな邦題が付いているが、ヒットしたなんて話しも聞いたことがない。

じゃ、当時はラジオを聴く人が多かったのか?ということになる。
実際に今よりは多かったのだろうが、それでもテレビが主役であったことには今と変わりはない。
深夜放送の影響力が莫大だったのである。

植村さんによれば、邦題は「一種のキャッチコピー」だという。
同感である。
中にはどう考えても悪ノリしているとしか考えられないヤツもあった。
まず筆頭に上がるのはJeff Beckの『ギター殺人者の凱旋』だろうネェ、月並みだけど。でも当時は実際にこのアルバムをこう呼んでいるヤツがいたもんね。
で、何やら「ジェフ・ベックの『ブロウ・バイ・ブロウ』というアルバムがスゴイ」と聞いて、レコード屋へ買いに行ったヤツがいた。
「すみません、ジェフ・ベックの『ブロウ・バイ・ブロウ』ください」とやったら出された商品が『ギター殺人者の凱旋』だったもんで、ソイツは「あ、すみません、コレ持ってます」と顔を真っ赤にして答えた。コレ、事実です。
ついでだから書くけど、この邦題は実は日本のレコード会社が考えたオリジナルではなくて、『Blow by Blow』の海外の宣伝に「The Return of the Axe Murderer」というキャッチコピーがあって、それをそのまま和訳してしまったというのが真相だ。
ギターのことを「axe(おの)」って言ったりするからね。でも、コレはギターが元じゃない。サックスだ。40年代のニューヨークのビバッパーたちはシャレや形状もあってか「サックス」のことをすでに「アックス」と呼んでいた。

で、このアルバム収録の人気曲、に邦題「哀しみの恋人たち」っていうのがあるでしょ?これは「'Cause We've Ended as Lovers」という現在完了の見本みたいな文章が原題。「もう私たち恋人じゃないから…」ぐらいの意味合いになろうか。
これは明らかに邦題のいいレアなケースの代表だろう。
「イヤ~、あの人の『こうずうぃーぶえんでっどあずらばーず』は完コピだね!」というより、「スゲー、あの人『哀しみの恋人たち』は完璧じゃん!」の方がシックリくる。
Kansasの「Carry on my Wayward Son」なんかも「伝承」としてうまくやった。

他方、「Walk This Way」を「お説教」に、「Sweet Emotuon」を「やりたい気持ち」にしたのは失策だった。
しかし、この「Sweet Emotion」って曲の邦題どうする?なんて場面があったのかな?
会議の席で「はい、多数決。「やりたい気持ち」の人、手を挙げて!」なんてキメてたりして。オイ、一体何の会議だ?!
こうした邦題は、どうも公序良俗に反しない限り、やりたい放題で担当者が好き勝手に決めることが多かったらしい。

それともうひとつ「コレはよくない」と思うのは、原題を流用する時に、冠詞や名詞の単複の区別を無視することだ。
こういうことが日本人の英語感覚をドンドン鈍らせるのだ。やはり「神戸牛のハンバーグ化」なのだ。

そうして四苦八苦して何とか洋楽を普及させようとした先達がいたにも関わらず、不思議というか、皮肉というか、浜崎あゆみに代表されるようにJ-POPの連中の曲のほとんどの曲名が英語表記になっちゃったね。
どういうことなんだ?まさか日本人の英語力がアップしたってか?ないない!ゼンゼンないよ。だって歌詞は丸っきり日本語だもん…。
ただ英語の方がカッコいいから…ということ以外考えられない。
でもね、コレって日本だけの現象ではなくて、同じアルファベットを使っている国でもそう。旧聞ではあるが、ドイツ人の友達も「ドイツ語じゃモノが売れない」って同じことを話していた。

そういえば、こんなこともあった。以前、教則ビデオの対訳のチェックの仕事をしていた時の話し。対訳の文中に「胡椒軍曹の寂しい心楽団」というのが出て来て絶句した。
私がチェックする前は本当にコレが印刷されて商品の一部として流通していたんだぜ。『ゴム魂』よりはマシか?
植村さんのご指摘。The Beatlesの曲って、『Revolver』以降のアルバムは邦題が付いていないって気が付いた?「With a Little Help From my Friends」は時折カバーなどでは「心の友」と呼ばれているようだが、植村さんのおっしゃる通り。
コレはThe Beatlesの人気も高まる一方の中、邦題を付けるのが苦しくなっちゃったかららしい。そりゃそうだよ、The Beatlesの曲名を勝手に変えるなんてさすがに良心がとがめる。
もし、あのまま続けていたら『Revolver』も「寝てるだけ」とか「黄色い潜水艦」、「彼女は言った、言った」なんてことになってたワケよ。、「いい日、日だまり」やら「ここ、そこ、どこもかしこも」…ポールがっくり。
もし私が担当者だったら1曲目は「税務署職員」として副題をこうつける「~住民税高くてスミマセン。それなのに無駄づかいしてゴメンね」。切手を買うんじゃない!
それとついでに…『サージェント~』って「ロック史の頂点に輝く名盤」みたいな扱いをされているけど、ロックの象徴ともいえるエイト・ビートの曲が案外少ないんだぜ。

74さらに脱線。
さっきの「ギター殺人者の凱旋」ではないが、この邦題もスゴかった。Meatloafのバラード「Two Out of Three Ain't Bad」で「66%の誘惑」。
原題の「two out of three」というのは「3つのうちの2つ」ということ。歌詞を読んでも何が「3」で何が「2」かはピンと来ないが、大分後になって邦題にピンときた。3つのうちの2つをパーセンテージで表せば余りは出るが、「66%」だ。
このタイトルに惹かれてシングルを買っちまったのは高校の時だ。
邦題おそるべし。
あ、さっきから例に挙げている邦題をつけたレコード会社、偶然全部同じだ!

2_66_2しかし、スゴイ時代だよね。プログレだってホラ…。
Pink FloydやYesには驚かないけど、Amon DuulだのThird Year BandだのBrian Augerだの、East of Edenだの…マジで売れると思ってたのかね?

75続いて「帯」。
もちろん帯は値段の提示をしたり、レコードの中身を簡単に説明して消費者の購買意欲をそそるためのものだが、書籍の補充カード(短冊)と同じ役割を果たしていた時代もあった。

帯は好きだナァ~。
破って捨てちゃう人の方が多かったんだってね~。
私は絶対にそんなことしなかった。丁寧にハズして袋にまとめて保管しておいた。
ずいぶんな量になったんだけど、引っ越しの混乱に紛れて父が全部捨てちまいやがった!
他に中学生の時から大事に集めていたコンサートのチケットの半券とかも捨てられてしまったんよ。
今、あればおもしろかったのにナァ。あの頃はまさかMarshall Blogなんてやるなんて夢にも思わなかったから。

帯が存在するということは日本国内盤があったということ。
コレを見ると、驚くほどコマメに国内盤をリリースしていたかがわかる。

76初めて見るものもあれば、おなじみのものもあってページをめくっていて実に楽しい。

77こんなMichael Gibbsのアルバムまで国内盤があったんだもんね。
植村さんによると昔は輸入盤の方が値段が高くて、輸入盤をムキ出しにして持って歩くのがひとつのステイタスだったのだそうだ。
だから帯はゼンゼン重要視されていなかった。昔の帯が希少になっているのはそういう事情が遠因のひとつになっている。
そういえば学生の時、Pablo Cruiseのファンだった家内にニュー・アルバムをプレゼントしたことがあった。
こっちは1枚でも多く自分のLPが欲しいのに、死ぬ気でそれを我慢してプレゼントしたワケだ。学生の2,500円は大金だ。今でも大金だ。
彼女はよろこびながら袋からレコードを取り出すと、真っ先に人差し指を帯に引っかけてバリっと破ってしまったのだ。
もちろん私が悲鳴を上げたことは言うまでもない。「だってジャケットが全部見えないジャン!」と彼女は横浜弁で答えたとさ…めでたくない、めでたくない。

78コレはヒドイ。Roy Woodの名盤『Boulders』が『ミュージシャンはマジシャン』だって!んなワケねーだろ!
このCaptain Beyondもスゴイ。『Sufficiently Breathless』が『衝撃の極地』だもんね。
いいナァ、こんな仕事したかったナァ。
アイルランドのFruuppはなかなかいいよ。

79こんな変形帯のアイデアも当然出てくる。
右ページの一番左はシリーズ企画で、The Mothers of InventionやJethro Tullも含めて全部で9作だけ制作された激レアアイテムだそうだ。

79_2Frank Zappa特集。
何しろ植村さんはZappa好きが高じて、転職をしてまで契約をしにLAのZappaの家まで行った人だ。
当然ヌカリはない。
私はコレラの邦題は好きじゃないけどね。
90

こうした手書き文字の帯もたくさん存在した。どれもほとんどタッチが同じだもんね。
ああ、帯おもしろいナァ~。
ああ、オレの帯~!

80_23番目のテーマは日本で独自に制作されたアルバム。
これもかなり好き勝手やってて楽しい。

79_4コレはMarshall Blogで過去に詳しくやっているので下をご覧いただきたい。

【Music Jacket Gallery】
日本独自ジャケットLPコレクション<前編>
日本独自ジャケットLPコレクション<中編>

79_5各ページの下欄に認められた植村さんの含蓄に富んだ解説がまたいい具合で、簡潔ながら実に読みごたえがある。
各グループやアーティストひとつにつき1枚ずつ掲載するという基本ルールを課したらしいが、どうしてもヒイキのバンドは複数枚が選ばれた。
膨大なコレクションの中から掲載アイテムを厳選し、狭い紙幅で解説を加えるのはさぞかし苦しい作業であったと思う。
将来の夢はレコードの博物館を作ることだという植村さん。今回のこの本を目にした人の多くがその夢が早くかなって欲しいと思ったに違いない。

繰り返すが、上記の内容には植村さんからうかがったお話しをふんだんに盛り込ませて頂いた。

『洋楽日本盤のレコード・デザイン』の詳しい情報はコチラ⇒グラフィック社刊公式ウェブサイト

235v
ここから第二部。
せっかくの機会なので私のコレクションもチョロリと並べて本稿末尾を汚させてもらうことにした。
先述の通り、帯のコレクションはとっくの昔に逸失してしまっているので、残っているものの中から本に出ていないと思われる、目についた手近なものをランダムに引っ張り出してきた。
植村さんの本とダブっているものがあったら失礼をお許し頂きたい。

●左のJose Felicianoは古い。「1968年のグラミー賞」がどうのと言っているぐらいだから45年ぐらい前のモノだ。レトロ感がハンパじゃない。もちろん中古でゲットしたもの。
●Pacoは観といてヨカッタ!しかも長野県の岡谷で観たのよ。
●Focusの未発表音源集の原題は『Ship Memories』。『美の魔術』とは一体ナニゴトか?
2曲目の「Can't Believe My Eyes」という曲のJan Akkermanがカッコいい!5曲目の「Gilder」は「Mother Focus」と同じじゃんかよ。でもこっちの方が素敵!
●Genesisの『静寂の嵐』の原題は『Wind & Wuthering』。「wuthering」というのは「風が激しく吹く」というイギリスの方言で、普通の辞書に出ていないように記憶している。
ブロンテの『嵐が丘』の原題は『Wuthering Heights』という。Kate Bushの名曲も同様。ヒースクリフとキャシーね。いずれにしても「静寂」とは関係ない。
●PMFのアルバムはナゼか2枚持っていて、その両方に帯が付いてた。CDもあって、それにイタリア語版のLPもあるので、何やらにぎやか…。Areaの方が好きなんだけどな。

110_2ここも何てことはないんだけど…
●Hermeto Pascoalのこのアルバムはジャケット(外も中も)も好きで大切にしてる。
●真ん中のHal WilnerのWeilのトリビュート・アルバムは大阪の阪急箕面駅の横のスーパーの上のレコード屋で500円で買った。ZappaのところのFowler兄弟なんかが参加している大好きな一枚。一時聴き狂った。
Hal Wilnerの2作はCDが見つからなくて苦労した。Weilの方は意外安くゲットしたが、Monkの方はいまだに見つからない。なんで廃盤になってんの?
●WingsはHipgnosisのカッコいいジャケットとまったく関係ない帯のデザインがかえっていい。この頃のPaulは曲もパフォーマンスも最高にカッコよかった。
●なつかしいRough DiamondはUriah HeepのDavis Byronがいたバンド。「笑うダイアモンド」と思っていたヤツがいたけど違うってば!コレ、帯がパラフィン紙でできてるんだよ。

120さて、上のThelonious Monkのトリビュート盤にはスゴイことが起こっている。
本体と帯に表示されている値段が違うのだ。
定価を変える時、金色の値段のシールを貼って急場をしのぐことは珍しくはない。ナ~ニ、どうせ100円とか200円の違いだろって?
とんでもない!
コレが、本体が2,800円で帯に表示されている定価が3,800円。ナント1,000円も値差があるのだ!
このアルバムは2枚組なので、3,800円が正しいのだろう。
チョットしたチェック漏れなんだろうけど、担当の人、相当怒られたんじゃなかろうか?

130_2帯じゃなくて「フィルム+ステッカー」という仕様もあった。はがしたくてもガマン、ガマン。

140植村さんの本はロック作品ばかりなのでジャズLPの帯を少々…「少々」というのは、ジャズのLPは東日本大震災以降、ゴッソリ階下の倉庫にしまい込んでしまったのですぐに引っ張り出せるものがないのよ。
それにジャズのLPはカッコいいジャケット・デザインは多くても、おしなべて帯のデザインは単調でつまらないものが多い。
左の2枚は日本のジャズ・レーベルThree Blind Miceの水野修孝という人のビッグ・バンド作品。香津美さんが客演してバリバリ弾きまくっている。
右は八城一夫というピアニストの作品。

150『Put in Tune/八城一夫フィーチュアリング渡辺香津美』という1975年録音のドラムレスのピアノ・トリオ作。
帯にはこうある…『ベテラン八城一夫と気鋭のギタリスト渡辺香津美との出逢い』。
30年以上前に神保町のTONYで2,000円で買って以来の大大大愛聴盤。
ジャケットはトホホだが、内容はあまりにも素晴らしい。多分CD化されていないと思う…どうかCD化しないで!独り占めしておきたいのだ!

160_2帯はボックスものにもこうして平然と付いてきた。

170日本のロックを少々。
ウシャコダもおとぼけCATSも大好きだった。昔はいいバンドが山ほどいたんよ!

180●YMOは透明の盤が欲しくて買った。コレ、香津美さんのギター・ソロがそのまま収録されていたら芸術的価値が何倍にもなったし、みんな聴いたら驚いたろうにナァ。もっともそれがマズいので香津美さんはグループを離れたとかいうウワサも聞いたことがあるが…ウワサだよ。
後のノーカットのライブ音源『Faker Holic』で聴けるようになった香津美さんのソロはヤッパリスゴかった。
●驚いたことに『ゴールデン・ピクニックス』を録音した時の森さんや大二さんって、まだ22歳だったんだよね。今のうちのセガレたちより若かった。昔の人はスゴかった。22歳で「Lady Violetta」だからね。
このアルバムの「パリ野郎」とか「ネッシー」とか「ヴィオレッタ」を聴いていて思うのは、今の若い人のバンドって、つくづく器楽のメロディ、すなわち楽器で奏でるメロディがないよね。機材のことは詳しいかもしれないけど、楽器本来の魅力を発揮する場面が圧倒的に少ないと思うね。
●ハード・ロックを聴いている男の子ならみんなきっと好きだったBAD SCENE。アルバムが出ると聞いて浮足立った。そして、聴いてみんな撃沈した。ガックシ…。
あのカッコいいBAD SCENEはいずこへ?
これぞ「神戸牛のハンバーグ化」の極致。イヤ、「ピーマンの肉詰め」か?
「風に向かってぶっ飛ばせ」も「Rising Dream」もズタズタ…。さんまは目黒に限るのに!
「Bird of Fire」も「ペルシャの女」も「Dancing Wizard」も「フィーズ」も収録されていなかった。
今、あの頃の曲をそのまま吹き込んで若い連中に聴かせたらビックリするんじゃないかな?
「日本のロックはこんなにカッコよかったんだ!」って。
帯を見ると『誰が、ROCKを口あたりのいい音にしてしまったのか』って謳ってる。少なくともBAD
SCENE自身のせいではなかろう。
ギターの杉山さんと話した時、「今使っているストラトは都内のほとんどの楽器屋さんで試して一番音がヨカッタのを選んだ。Marshallは50Wが欲しかった」とおっしゃっていたのを覚えている。1987をお使いだったのだ。
●もしかしたら私の大したことないコレクションの中で一番聴いたアルバムはパンタ&HALの『マラッカ』かもしれない。

190_2パンタ&HALのスタジオ録音盤2枚、『マラッカ』と『1980X』。参加しているメンバーは異なるが、兄弟のような出で立ちだ。
双方、写真は鋤田正義さん。

200_2『1980X』は両面表1という仕様で、帯もそれに対応したデザインになっていた。
上の写真に見えるサインは、私が高校の時、このアルバム発表直後ぐらいに頂戴した。歌詞でPANTAさんと共同創作をしていた三文役者のボーカル、花之木哲さんの口利きでPANTA&HALのリハーサルにお邪魔した時のことだ。
私は高校の時、三文役者の(今でいう)ローディみたいなことをさせてもらっていたのだ。
場所は渋谷の明治通り沿いの場外馬券売り場の前あたりにあったVEGAスタジオ。
今にして思うと、いくら紹介があったにせよ、よくあんなどこの馬の骨かも知れない高校生をスタジオに入れてリハーサルを見せてくれたものだと思う。
きっとこのアルバムのレコ発コンサートのリハーサルか何かだったのだろう。
LPを差し出してサインをお願いするとPANTAさんは「毎度あり!」とおどけながら気さくに「どの曲がヨカッタ?」と私にお訊きになった。
私も気の利いたひとことでも言えればよかったのだが、緊張してしまって、前から知っていて聴きなじみのあったアルバムのオープナーである「トトトト、トゥ・シューズです」と月並みな返答をしてしまった。
するとPANTAさんは「あ、そう。『ナイフ』なんてすごくいいと思うんだけどな…」とおっしゃったことをよく覚えている。
あまりにもカッコいい浜田さんのドラムで始まる「ナイフ」もよかったし、「Audi 80」だって、シングル・カットされた「ルイーズ」だって「Kick the City」だってよかったのに!もちろん「トゥ・シューズ」もいい曲なんだけど…PANTAさん、きっと「つまらない子だ」と思ったに違いない。
休憩の時には、「HALのテーマ」のコード進行を平井光一さんに教わった。
メモ用紙がなかったのでLPを入れて行った石丸電気の紙袋のフタの部分の裏にズラズラと平井さんが口にするコード名をそのまま書いていった。13thだの9thだのMaj7だの…その時は丸っきりチンプンカンプンだった。
「それで後でわかる?」
平井さんは心配してくださったが、何しろ譜面の読み方なんてまったくわからない時分のことだ。小節の縦線なんてことは頭にまったくない。どうにもならなかったけど、その袋は長い間大切に保管していた。
とにかく大好きなバンドのそばにいられただけで猛烈にうれしかった。
それが今ではPANTAさんにもよくして頂いて…ああ、なんて幸せな人生なんだろう!

210_2本に合わせてシングルの話しもひとつ…。
これがそのシングルの「ルイーズ」。
1978年にイギリスで誕生した世界初の試験管ベイビー、ルイーズ・ブラウンの名前をタイトルに冠した曲。何てカッコいい曲と歌詞なんだろう!やっぱりこんなの聴いちゃうと今のロックってい一体どういうつもりなんだ?と思っちゃうよね。
そしてB面の「ステファンの6つ子」。B面といってもコレは両A面なんだな。
名曲中の名曲「ステファン」…今でも時々口ずさむ時がある。
ジャケットも銀ピカでイカしてる!ちょっとCal Shenkelみたいなタッチ?そう、「頭脳警察」という名前からもわかるようにPANTAさんは大のZappaファンなのだ。
このシングル盤は私の宝物のうちのひとつ。

220_2…ということで悪ノリして勝手に「第二部」なんてくっ付けちゃったけど、シングル盤や帯の魅力がいくらかでも伝わって、植村さんの本に興味を持って頂ければ幸いである。
しかし…この本に掲載されている作品の多くでMarshallが使われているだろうし、もしMarshallがなかったらページ数もグッと減っていたかもしれないジャン…なんてことを考えたのは日本で私ひとりだろうナァ。でも、それは事実なのだ。
おススメです。

240_2P.S. 植村さん、貴著へのクレジットありがとうございました。

(本項内における当該書籍の転用・掲載は著者の許可を得ています)

2015年2月10日 (火)

【Music Jacket Gallery】動物ジャケット特集<後編>

昨日、この『動物ジャケット特集』の<前編>を掲載したところ、予想以上の反響があり、「あんなのどうだ」、「こんなのもあるよ」というご意見を寄せて頂いた。
その中で吹き出してしまったのがAerosmithの『Nine Lives』のオリジナル・デザイン。ウマい!
アレはネコ?おっかない顔しているヤツ。
あのジャケットも確か宗教的な理由かなんかでデザインが変更になったんだよね?

Z_img_6653…ということで、みんな大好き動物ジャケット。<後編>いってみよ~!
(注:本展示は2013年4月~6月のものです。現在MJGではまったく別のアイテムが展示されています)

Z_img_6655『動物ジャケット特集』の<後編>はヘビ・コーナーから。
ロック系のレコード・ジャケットともなるとヘビも登場頻度が高い。
「ロックでヘビ」と来ればまずこの人が相場だろう。何せステージで共演してるぐらいだから…。
Alice Cooperのおでまし~。
1986年の『Constrictor』。
Alice Cooper、もうダ~イ好きなんだけど、これは知らん。
私のAlice Cooperは1977年の『From thr Inside』まで。80年代はロック離れを促した私にとっての暗黒時代なのだ。

70年代のAlice Cooperはとにもかくにも曲が最高にヨカッタ。「ロックかくあるべし」的な曲が目白押しだ。人気もバツグンでFM雑誌に「アリスは愛妻家」とかいってグラビアに出ていたのを覚えている。
好きな曲を挙げればキリがないが、Slashが『Guitar』というビデオで『Welcome to my Nightmare』に収録されている「Cold Ethyl」をこの世で最もカッコいいギター・リフと言っていたのを聞いてうれしくなった。
「ショック・ロック」と呼ばれたヘビやギロチンが登場するステージも魅力的だったのだろうが、そんなことをしなくても十分に楽しめるロックだった。
今でもロンドンのライブハウスに出演することがあって、何年か前にオックスフォード・ストリートの100Clubに登場するというので、ちょうどロンドンにいた私はチケットをゲットしようとしたが、ゼンゼン売り切れで臍を噛む思いをした。
MarshallはClassic Rock誌とのタイアップで、何年か前にChalk FarmにあるRoundhouseという有名な劇場を使ってイベントを開催したことがあった。その時のMCはナントAlice Cooperだった。心底行きたかった。

Z_img_6742Alice Cooperにはこういうドンズバのヘビジャケもある。カッコいい。「Under my wheels」や「Halo of Flies」が入ってもちろん内容も素晴らしい。
「♪Telephone is ringing, you got me on the run」…ク~、タマらん。

2_img_0008Uraih Heepも『Demons and Wizards』や『The Magician's Birthday』といったRoger Deanの数作を除いてはあまりジャケットに恵まれないグループだったと私は思う。
『Look at Yourself』もアイデアはおもしろいかもしれないけど、決してカッコよくはあるまい。

このヘビジャケは1977年の『Innocent Victims』。
ナニこれ?
このアルバム、本国イギリスではサッパリだったが、ドイツとニュージーランドでは大ウケしたそうだ。
ボーカルはもうDavid ByronではなくてJohn Lawtonという人。ドイツのバンド、Lucifer's Friendに在籍していた人。チョットしか聴いたことないけど、このLucifer's Friendというバンドはいいよ。

この前作、John Lawtonが参加した最初のアルバム『Firefly』は結構好きだったりもしてます。
2010年にロンドンでUriah Heepを観た時のボーカルさんはすさまじくハイ・トーンだったナァ。

このバンドのギタリスト、Mick Boxは忠実なるMarshallのユーザーで、1965年に発表したMarshall初の100Wモデル、JTM45/100のリイシューを愛用している。
このリイシュー・モデルの取扱説明書にMarshall Museum Japanの館長と私の名前がクレジットされているのは何回も書いた。このことを誇りに思っているので機会があれば何度でも書いちゃうよ。

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Hydra、このバンドは全く通過していない。でもこのジャケットはなんかものすごくなじみ深い感じがするナァ。
それだけ。
だって知らないんですもの!

Z_img_6745コレはスキだった~。私だって人の子よ。Michael Schenkerのギターにシビれた時期はある。高校の時、夢中になって聴いたナァ。
中野サンプラザに行った時のギターは元Lone StarのPaul Chapmanだった(この人、Gary Mooreの後釜としてアイルランドのSkid Rowにいたこともある)。結局UFOでもScorpionsでも来なかったし、みんなが「シェンカー、シェンカー」と騒ぐようになってスッカリ熱がさめてしまったため、Michael Schenkerはとうとう見ずじまいだったことは以前にも書いた。

このアルバムはドップリとキーボードが入った初のUFOのアルバムなのだが、思い違いをしていた。キーボードってPaul Raymondかとばっかり思っていたんだけど、UFO!、あ、チヤウUSO!
キーボードはDany Peyronelって人なのね。
プロデュースはTen Years AfterのLeo Lyons。

ジャケットはHipgnosis。
UFOは『Phenomenon』以降、アルバム・ジャケットのデザインにHipgnosisを起用したことがすごくバンドに利してると思うのは私だけではあるまい。
不思議なのはそのコンセプト。
『Force It』にしても本作にしても、『Lights Out』にしても、どうもバンド側から「こういうデザインにしてくれ」的なアイデアは出なかったような気がするのね。
「あ~、あ~、スキにやってくれ。なんなら勝手にタイトルも付けちゃって!」って感じ。
だって、『Phenomenon』から『Obsession』までHipgnosisジャケットの作品でタイトルと同名の曲が入っているのは『Lights Out』だけじゃん?
どうだろうか?

CGもなかった時代、Hipgnosisは実際にロケ等をして写真を撮っていたらしいが、このサルは合成だね。さすがに。
サルの左手の小指の影とかよくできてるナァ。
コレさ、裏ジャケってメンバーがみんなこのビニールの管を手にして自分の身体にくっつけて喜んでるじゃない?バンドのメンバーはみんな血がつながってる…ぐらいの意味なのかな?
でも、管を持ってないのってSchenkerだけなんだよね。絶対Philがイジワルしたんだよ。
「オイオイオイ、ドイツ人はダメよ、ダメダメ」
と言ったかどうかは私は知らない。

Z_img_6750この辺り、チョット雑になって来て申し訳ないんだけど、もうコレは呆れられるほどやっているのでリンクを貼って終わり。でも動物ジャケットなんだね。

詳しくはコチラ⇒【イギリス-ロック名所めぐりvol.9】 バタシー発電所

Z_img_6754ブタちゃんをもうひとつ。Blodwyn Pigじゃないよ、Black Oak Arkansasの『High on the Hog』。
まさか、ブタでBlack Oakが出てくるとは思わなんだ。
私は詳しくないんだけど、Jim Dandyカッコいいよね。日本では人気がでなかったようだけど、男性的なロックの最右翼で大変よろしい。
このアルバム、ドラムがTommy Aldridgeなのね。プロデューサーはTom Dowdだし。

ジャケットのイラストはJoe Petagnoというアメリカ人。
この人がまたスゴイときてる。メタラー好みのゴテゴテのイラストがよく知られているようだけど、Motorheadのロゴなんかもこの人のデザインだ。
他にも数多くのロック・アルバムのジャケットを制作している。
Nazarethの『Rampant』、『Greatest hits(「Love Hurts」が入ってるヤツね)』、Captain Beyondの『Sufficiently Breathless』、The Kinksの『Soap Opera』、Sweetの『Give us a Wink』、Heavy Metal Kids、The Baker Gurvitz Army等々渋めのバンドのオンパレードでうれしくなる。

プロレスラーのハルク・ホーガンってこのバンドにいたって話しを聴いたことがある。
あの体躯だからドラムかと思ったら、この人フレットレス・ベースがうまいらしい。
もひとつ。
今でもカルト的な人気を誇るShawn Laneは、1978年、弱冠14歳でこのバンドに加入してツアーに参加したとか…。

ところで、日本では「ブタ」のことを一辺倒で「pig」と呼ぶが、アメリカでは「hog」という言葉がよくブタに使われる。
その心は、子豚が「pig」。一方親豚、つまりデカくなると「hog」になって、そう呼び分けるらしい。

Z_img_6762
ブタの次はイタチ。イタチは英語で「weasel」…とくれば『Weasels Ripped my Flesh』。つまり『いたり野郎』だ。
コレも以前やったのでリンク。

詳しくはコチラ⇒【Music Jacket Gallery】ギター・ジャケット特集<後編>

Z_img_6756大好きな大好きなZappaだけど、この1984年の2枚組アルバム『Them or us』はあまり聴かないアルバム・グループの一員だ。曲はどれもいいんだけど、アルバムになるとナンカおもしろくないんだよね。
『Them or Us』という自伝もあった。

ジャケットはアメリカ人画家、Donald Roller Wilsonという人の作品。この人はこの『Them or Us』以外にも『Francesco Zappa』や『Boulez Conducts Zappa:The Perfect Stranger』のジャケットを担当した。
犬、猫、チンパンジー、ピクルス、アスパラガス、マッチなどをモチーフにした奇怪な作品はとても印象深いものだ。

Z_img_6746

ちなみにコレはこのアルバムの裏ジャケ(表4)。

5_img_0012_2 そしてこっちは1984年のツアーの音源をベースにしたブートレッグ『All You Need is Glove』の裏ジャケ。
ま、こんなんもある…ということで。はしたなくてスミマセン。

5_img_0017_2 お次はサイ。
これも以前やった。Adrian BelewもZappa出身だ。

詳しくはコチラ⇒【Music Jacket Gallery】ギター・ジャケット特集<後編>

Z_img_6760モグラもあるよ。
コレまたスキなんよ~、Matching Mole。邦題が『そっくりモグラ』で、この可愛いイラストのジャケットとくれば、知らない人はファンタジックな内容って思うよね。
確かに1曲目の「O Caroline」なんて曲はシングルカットもされた佳曲なんだけど、全体的にはRobert Wyattのセンスがブっ飛びまくるワン・アンド・オンリーのテイスト。
そもそもこの「O Caroline」はThe Beach Boysの「Caroline, No」のパロディ?
しっかしいい曲だナァ。この人の声はなんだろう。こんなにナイーヴで細っこいのに妙な説得力がある。
以前にもどこかに書いたがソロ・アルバム『Rock Bottom』の有名な「Sea Song」なんてのはものスゴイ力強さすら感じる。
このアルバム収録されている「Signed Curtain」なんて曲はスゴイよ。「♪ここはバース、ここはバース」、「♪ここはサビ~」、「♪そして次のパートへ~」、「♪ここは2番~」、「♪もっかい転調~」…なんて歌ってるだけだったりする。歌詞ができる前の仮歌みたいな。ところがメロディが素晴らしく、ゼンゼン聴けてしまう。
Robert Wyattはご存知の通り、下半身が不随となりドラムを演奏できなくなってしまったが、Soft MachineとかこのMatching Mole時代のドラミングはすこぶるカッコいい。
このアルバムでも「Part of the Dance」でのプレイは実にシャープだし、セカンド・アルバム『Little Red Record』の「Marchides」なんかは最高にカッコいい。John Marshallに替わってそのまま後期のSoft Machineに入れそうなテクニカルなプレイだ。

知っている人も多いと思うけど、「Marching Mole」というのは一種のシャレで、「Soft Machine」をフランス語に訳すと「Machine Molle」。それが転じて「Matching Mole」。「かみ合うモグラ」…つまり「そっくりモグラ」だ。
それにしてもギターのPhil Miller、ジャズよりのセンスはなかなか貴重なもの。後にIn Cahootsなんてバンドを立ち上げるが、もっと出て来てもいい人だと思うのだが…。

このイラストは『マザー・グース』あたりのイメージなのだろうか?

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『動物ジャケット特集』の最後はKate Bush。別に取っておいたワケではないんだけど…。
1980年の『Never for Ever』、邦題『魔物語』。
ジャケットのイラストはNick Priceという人の作品。ちょっとアルチンボルドのタッチみたいだ。
この人は1979年のツアー・プログラムのデザインをした人で、Kateはこのスカートの中から化け物やら動物が出て来るデザインをいたく気に入ったとか。
コンセプトは、「良きモノ」も「悪しきモノ」もあなたの中から出て来る…ということなのだそうだ。
すごくいいデザインだよね。Record Millerというイギリスの週刊の音楽紙で1980年の「ベスト・ジャケット」に選出されたそうだ。
ところが!

Z_img_6765これ見て。私が持っている国内盤CDのスリーブ。表1ですよ。
日本のレコード会社はオリジナルのデザインをマズイと思い、一部を拡大してジャケット・デザインにしてしまった。なんでやねん!?
ナニがマズかったんだかサッパリわからんな。今はオリジナル通りのものが流通している。

Kateのファースト・アルバム『The Kick Inside(1978年)』が出た時、私は高校生だったんだけど、とにかく「Dave Gilmourが惚れ込んだ」ということが話題になってたな。
で、聴いてみてビックリよ、あの声に。でも「Moving」とか「Wuthering Heights」とか「Them Heavy People」とか…いい曲が目白押しで評判はヨカッタ。
今ジャケットは目玉みたいなイラストになっちゃってるけど、当時はKateのクローズアップ写真だった。私はそっちの方に愛着があったので、そっちのデザインのCDを持ってる。

さて、、この『Never for Ever』というアルバムは、Kate初のチャートNo.1作になっただけでなく女性ソロ・アーティストにより初の全英No.1アルバムとなった。
昨年、Kateは長い沈黙を破ってロンドンでコンサートを開いた。Marshallの社長夫人はそれを観に行ったのだが、それはそれは素晴らしいものだったとか…いいナァ、ロンドン。

5_img_0019さて、<後編>の後半は立体展示品をお楽しみあれ。
「ボックス」と来れば地の果てまで追い求める植村さんの壮絶なコレクション。
今回は木製(ウッディ)なCDボックスの特集。金属製やプラスティック製の仕様と異なり、木製のパッケージには独特のぬくもりや安心するような質感がある。
地球温暖化が危機的状況にある今日では、エコ(紙)パックと同様にエコロジー的にもフィットしたパッケージといえるかもしれない。

VARIOUS ARTISTS / THE ENCYCLOPEDIA OF DOO WOP (COLLECTABLES 2000)
ライ ノ・レコードと並んで古い貴重な音源の復刻に定評のあるコレクタブル・レコードから発売のドゥー・ワップの歴史的音源を集大成した4枚組CDボックスの第 1弾。
木製の箱にはデジパックのCDと「THE COMPLETE BOOK OF DOO-WOP」という約500ページの資料本が同梱されており、ドゥー・ワップの歴史やアーティストのプロフィールなども堪能できる。
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VARIOUS ARTISTS / THE ENCYCLOPEDIA OF DOO WOP VOL.2  
(COLLECTABLES 2001)
コレクタブル・レコードがドゥー・ワップの歴史的音源を集大成した4枚組CDボックスの第2弾。
本作も貴重な音源100曲を収めたCDとニューヨークのR&B /ヴォーカル・グループを研究した資料本が同梱されている。
第1弾のボックスは白木の箱だが、本作の箱は硬質の木材を使用した箱が黒く塗られており、音楽性とマッチしている。

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VARIOUS ARTISTS / THE ENCYCLOPEDIA OF DOO WOP AMERICAN SINGING GROUPS VOL.3   (COLLECTABLES 2002)
コレクタブル・レコードがドゥー・ワップの歴史的音源を集大成した4枚組CDボックスの第3弾。
本作はドゥー・ワップだけでなく、広くシンギング・グループも網羅した100曲が収められている。
もちろん本作にも40年代から90年代のアメリカンのヴォーカル・グループ全般を詳述した約550ページの資料本が同梱されている。
こうなるとCDがオマケのように思えてきますな。

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VARIOUS ARTISTS / GOODBYE, BABYLON  (DUST-TO-DIGITAL 2003)
アトランタ・ジョージアで自主制作された6枚組CDボックス。
内容は1902年から41年までのアメリカのトラディショナル・ソングを160曲集大成したもの。
この木製の箱には黒人奴隷の労働の象徴でもある本物の綿(コットン)も収められている。約200ページの特製ブックレットには各曲のエピソードや歌詞も網羅されている。

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ZZ TOP / CHROME, SMOKE & BBQ : THE ZZ TOP BOX   (WARNER BROS. 2003)
超ド級の人気を誇り続けるZZトップの音源を集大成した4枚組CDボックス。
バーベキュー小屋を模した箱はあたかも本物を思わせる見事なつくりだ。
屋根を開くとパラパラ漫画が印刷された特製ブックレットが同梱されており、彼らのライヴでのコミカルな動きが楽しめる。アレ、おもしろいもんね。肩をクイっとかね。
この特殊仕様は素晴らしいものだ、保管しにくいのが難点だとか。
ちなみに、ロンドンでBilly GibbonsとDusty Hillに会ったことがあるが、落ち着いていてすごく感じがヨカッタ。
「日本に行ったらよろしく頼むよ!」なんてBillyは私に言っていたけど、来ないね。

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VARIOUS ARTISTS / 70’s THE SOUL EXPERIENCE  (RHINO 2001)
70年代にヒットしたソウル、R&B、ディスコなど136曲を収めた6枚組CDボックス。
車社会のアメリカではカートリッジ・テープは当時まだ全盛で、本作はこうしたカートリッジ・テープを収納する木箱を模したもの。
テープは思わず取り出したくなるほどリアルな作りで、さすがライノならではの特殊仕様のパッケージといえよう。

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凝ってるナァ。

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THE BEACH BOYS / U.S. SINGLE COLLECTION THE CAPITOL YEARS 1961-1965 (CAPITOL 2008)
夏の定番アーティスト=The Beach Boys前期のアメリカ盤シングルをCD化し、ピクチャー・スリーヴに収めた16枚組CDボックス。箱は硬質の段ボールで作られているが、ナゼか一部に本物の木が使用されているます。
おそらく木と紙という組み合わせで、エコロジー感を表現したかったのかもしれない。特製ブックレットの表紙は砂浜を表現する凝った仕様になっている。

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JANE’S ADDICTION / A CABINET OF CURIOUSITIES  (RHINO 2009)
ハード・コアの代表格であるJane's Addictionの未発表30曲を含む44曲を収録した3CD+1DVDの4枚組CDボックス。
タイトルどおり木製のキャビネットの再現性が見事で、鉄製の蝶番を開けると、中のモノが見える仕掛けだ。独創的で奇抜なパッケージでは右へ出るものがないといわれるライノならではの特殊パッケージの逸品。

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THE RESIDENTS / ROOSEVELT   (RALPH AMERICA 2001)
サンフランシスコのキテレツ変態ユニット=The Residentsの43作目の初回限定盤。
彼らの作品はその大半がサイト限定のものや初回限定のものばかりなので、完璧にコレクトするのは至難の業だ。
最新作は全世界10セット限定の『UBS (ULTIMATE BOX SET) 』 で彼らの100以上の全作品が本物の冷蔵庫に収納されており、価格は何と10万ドル(日本円で約940万円)という世界最高値。(2013年3月26日現在)アホやね。

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KISS / KISS BOX SPECIAL LIMITED EDITION   (UNIVERSAL 2001)
キッスのデビュー30周年を記念して発売された5枚組CDボックス。
本作はこの初回限定生産盤で、ギター・ケースを模した特殊仕様になっています。本作は硬質の木板に皮を貼って作られており、内部には毛足の長い赤い裏地も貼られている。
本物のギター・ケースさながらの見事な仕上がりだ。持ち運びにも便利なパッケージ。

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DAVID PEEL / ROCK ’N’ ROLL OUTLAW : THE APPLE AND ORANGE
RECORDINGS  (CAPTAIN TRIP 2003)
『ローマ法王とマリファナ』(1972)というアップルの国内盤LPが発売中止となり、今でも帯だけで数百万円もするという曰く付きのデヴィッド・ピール。
彼のプロテスト・フォークの世界を集大成した16枚組CDボックス。本作は日本のみの予約制による完全限定生産のため、この木箱でのボックスは貴重なものだ。数年前にコンパクトにリサイズされて再発されたが、やはり木箱がベスト。

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AC/DC / BACKTRACKS DELUXE COLLECTOR’S EDITION  (SONY2009)
2010年3月に来日し大きな話題を集めたAC/DCが発売した全世界5,000セット完全限定生産の6枚組(3CD+2DVD+1LP)CDボックス。
ギター・アンプを模した木箱は、1ワットの出力ながら実際に音が出るかなり凝った仕掛け。
164Pのハード・カヴァー本や、バックステージ・パスやチケットなどマニア垂涎のメモラビリアも同梱されている。

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Music Jacket Gallery展示の詳しい情報はコチラ⇒金羊社MJG常設展

※記事内のジャケット写真は展示アイテム以外のものは斜めにもしくはサイズを小さくして掲載しています。
※本展示は2013年6月に終了しています。現在の展示内容は上記の金羊社ウェブサイトでご確認ください。

(敬称略 ※協力:立体展示品解説文原本執筆・植村和紀氏)

2015年2月 9日 (月)

【Music Jacket Gallery】動物ジャケット特集<前編>

落語に詳しい父の影響もあってお笑いがスキ。Marshall Blogに時々落語の話しが出て来るのはそのため。
元旦には「爆笑ヒットパレード」で目を覚ますのが常だったんだけど、今年は朝からやってなかったね?
お笑いブームも急速に勢いを失っているようだ。

しかし、お笑いもずいぶん内容が変わった。
私はFrank Zappaのような音楽が好きなだけあって、お笑いも「英知と技術」がふんだんに盛り込まれたスタイルが好みなのだが、最近はダラダラと歌いながらネタを展開するパターンがやたら多くなった。リズム・ネタとかいうのも見ていて大変恥ずかしい…。
まだ「♪もしかしてだけど~」あたりはいいけど、時間合わせ程度に出て来るような若手芸人を見ていると、最近の音楽業界がそのままスライドしているかのように映る。
もっとキチッと話術を駆使して笑いを取っていた昔のお笑いを勉強するべきだと思うのだがいかがだろう?
ま、こんなことばっかり言っていると自分も人生幸朗みたいになっちゃうな…年も似通って来たし…イヤ、さすがにまだか…。
そんな中にあって、とても好きなお笑いバンド、じゃないや、グループに「東京03」がある。
おもしろいよね~。脚本がシッカリしていて、キャスティングもいつも的を得ているので、どれを見てもおもしろい。
同じ演劇タイプにアンジャッシュがいるが、あのスラップスティックぶりは、落語のネタがそのまま転用されている印象が私には強く、脚本のクォリティということになれば東京03に軍配を上げてしまう。
その東京03の大好きなネタのひとつに「バンドの方向性」というバンドマンのミーティングを描写したものがある。
ご存知の方も多いと思うが、このコントで一番おもしろいと感じるのはメンバー同士が「パンサー」、「ライオン」、「チーター」というステージネームで呼び合うところ。
まさか、今時こんなことをしているバンドがこの世にいるとは思えないが、「ロック・バンド」というものを極端にカリカチュアライズしていて何度見ても大笑いしてしまう。
恥かしいよね~、動物の名前のステージ・ネームなんて!
この辺りから本題に入る…って今までのフリは何だったのかッ?
テーマは「動物」だよ、「動物」。話しを「動物」に持っていきたかったのよ。

Z_img_6640日本の男子の名前で最も多く使われている動物の名前ってなんだろう?「竜」かな?ま、空想の動物だけど。干支の影響が大きいね。
黒澤明の『用心棒』では卯之助(仲代達也)とか亥之吉(加藤大介)、丑年に産気づいて寅年に生まれた「新田の丑寅(山茶花究)」なんてのも出て来る。
同じ干支から採った名前でもまさか「子吉(ネズ吉)」とか「申次郎(サルじろう)」とか「巳助(ヘビすけ)」なんてのはいまい。

そこへいくとバンド名は動物の名前が結構使われる。
なんでろうね?
カッコいいかな?
「そのものズバリ系」からいくと、Wolf、Lion、Eagles、Turtles、Monkys、The Beatlesもそうか…まだある、Camel、Badger、Scorpions…。

「空想系」ではGryphonとかT.Rex、Dynosaur Jr.。案外Dragonがないな…。Dragonsってのがいたか。他にパッと思いつかないけど、Dragon Ash以外にも海外にきっといるでしょ。

「組み合わせ系」となるとそれこそ枚挙にいとまがない。
Steppenwolf、Iron Butterfly、Stray Dog、Stray Cats、British Lions、Bonzo Dog Doo-Dah Band、Three Dog Night、Adam & The Ants、Whitesnake、Arctic Monkeys、Tiger of Pang Tang…あんまりありすぎて面倒くさくなってきた。
こうしたバンド名の中の王様は何といってもThe Animalsだね。そういう意味ではCountry McDonald & the Fishってのも強いな。
日本ではハナ肇とクレイジー・キャッツだけを挙げておくか…「キャッツ」というのは「ジャズメン」を意味するスラング。

…とバンド名にこれだけ動物の名前が使われていりゃジャケットに動物が登場するのも当たり前。
そんなワケで今回のMJGは動物がモチーフになっているレコード・ジャケットが集められた。
(当展示は2013年4月~6月のもので現在の展示中のものとは異なります)

Z_img_6647Vangelisは本名をEvangelos Odysseas Papathanassiou(エヴァンゲロス・オデッセィアス・パパサナシュー)というギリシャのミュージシャン。映画『炎のランナー』でオスカーをゲットして一躍有名になったが、私は聴かないな~。
Vangelisが以前やっていたグループ、Aphrodite's Childの『666』という1972年のアルバムはすごくいい。
Vangelisは以前『SFジャケット特集』でも登場したが、出て来る度にこの『666』のことしか触れることができずに申し訳ないですげど、他はそれこそ「It's Greek to me」なのだ!
「It's Greek to me! 」とは「私にとっては、ソイツぁまるでギリシャ語だよ!」…すなわち「チンプンカンプン」という意味の慣用表現。
私は外人と話していてそういう場面に遭遇することが少なくないので、実際にこの表現をよく使っている。どこでもバッチリ通じます。
ギリシャ語はご存知の通り、アルファベットではなく「ギリシャ文字」を使うので英語圏の人にとって「ナニが書いてあるんだかサッパリわからない」ところから来た表現。
また、今ギリシャがおかしくなってるね。EUも一体どうなることやら。

コレは『La Fete Sauvage』という1976年にリリースされたソロ・アルバム。日本では『野生の祭典』と訳されて1979年に発表された。
ライオンやらヒョウやら鳥やら色んな動物が描かれているが、それもそのはず、このアルバムは野生の動物を生態を記録した同名のフランス映画のサウンドトラック盤なのだ。

Z_img_6685The Incredible String Band、1974年の12枚目にして再結成前最後のアルバム。
時々Hipgnosisのジャケットで有名なString Driven Thingとゴッチャになってしまう…というぐらいなじみがない。
でも名前を知っているのはウッドストックのおかげだろう。映画にはカケラも出ていないが、こういうバンドが出てた…ということでバンドの名前を知っている人も多いのではなかろうか?
The Incredible String Bandは1966年に結成されたスコットランドのグループ。その音楽は「サイケデリック・フォーク」というジャンルに組み入れられるらしい。
Wes Montgomeryの『The Incredible Jazz Guitar』は本当に「incredible(信じられない)」にスゴイが、それと同じことを期待してこのバンドの音を聴いてみるとまったく事情が異なる。でも曲によってはなかなかに味わい深いものがあるね。
このアルバムに入っている「Ithkos」という20分近い長尺の曲なんかはかなりいい。

60年代の後半には大きな成功を収め、1968年の『The Hangman's Beautiful Daughter』というサード・アルバムはUKアルバムチャートの5位に食い込み、グラミー賞にもノミネートされている。
Robert Plantはこのサード・アルバムに影響を受け、後のLed Zeppelinの創作に活かしたともいわれているばかりでなく、『Sgt. Peppers Lonly Hearts Club Band』や『Their Stanic Magesties Request』にもその影響が及んでいると言われている。
それが「incredible」だったんだ!

ちなみにこのバンド、はじめウッドストックに出る予定はなかったのだが、ちょうどアメリカをツアー中していた最中だったため、偶然出演する機会に恵まれた。
「フォーク・デイ」だったウッドストックの初日にステージに上がる予定だったのだが、あいにくの雨に「ちっと勘弁してチョーダイな!」と出演を拒否。翌日に登場することになった。
その穴埋めはMelanieが務めた。これはBillboardのヒットチャートの6位まで上がった"Lay Down (Candles in the Rain)"というヒット曲があったからだという。「in the rain」ということね。
タイトルの『Hard Rop & Silken Twine』は「硬い綱と絹のより糸」という訳になるが一体どういう意味なのだろう?
ずいぶん調べたがわからなかった。
この暗くヌメッとした幻想的なイラストは魅力的だ。

Z_img_6688「♪いつものラーメン」でおなじみのSteppenwolf。日本では間違いなくこの「ラーメン」しか知られていないバンドは海外では我々が想像を絶するほど人気があったことは以前もこのコーナーで書いた。
「ステッペンウルフ」というといかにもそれらしく響くけど、「草原のオオカミ」という何とも青春っぽい意味。ヘルマン・ヘッセの「Der Steppenwolf」という小説がバンド名の由来らしい。
あまり変化がなくてやや一本調子というイメージが強かったけど、このライブ・アルバムなんかはへヴィなR&Bのテイストが色濃くていいナァ。何と言ってもJohn Kayの声がカッコいいもんね。
1曲目の「Sokie, sookie」はDon CovayとSteve Cropperの作。こんな曲を日本語で大胆に取り入れちゃうなんて、やっぱりサディスティックミカバンドはスゴかったナァ。
オオカミ以外の何物でもないストレートなジャケットもいい。


「オオカミ」っていうとウィリアム・ホールデンの『クリスマス・ツリー』って映画、小学生の時の時に観て泣いたっけ。白血病で余命いくばくもない幼い男の子が「オオカミを欲しい」だか「見たい」だか「千両ミカン」みたいな無理を言って、お父さんがなんとかゲットする…みたい話し。
この映画、テレンス・ヤングが監督してたんだね。しかもフランス映画だったんだ。知らなかった。
テレンス・ヤングは007の『ドクター・ノオ』とか『ロシアより愛をこめて』、『サンダーボール作戦』を監督した人。

Z_img_6690こちらはその名もズバリ、Wolfというバンド。Curved AirのヴァイオリニストDarryl Wayのバンド。
ロック・バンドでヴァイオリンという楽器は極端にマイノリティに属することは否めないが、プログレッシブ・ロック系のグループを中心に探せばヴァイオリニストが正式なメンバーとして在籍しているバンドが結構ある。
有名どころではKing CrimsonとかPFM、Kansas、UK?全然マイノリティじゃないか。他にもEast of Edenなんてのもいた。Jigね、jig。
変わり種ではヴィオラが入ったCaravanとか。
ヨーロッパは盛んだ。PFMをはじめとしてArti & Mestieri、Quella Vecchia Locanda、フランスではZaoか?Angeもヴァイオリニストがいるのかな?
毛色は違うけどCharlie Daniel's Bandなんてやり方もある。Jefferson Starshipにも昔Papa John Creachというカッコいい黒人のジーさんヴァイオリニストがいた。

日本はなかなかないね。Marshall Blogでも紹介したBand of Pegasusというバンドがガンバっている。武藤祐生さんとか高橋かおりさんとか実にいいヴァイオリニストがいらっしゃるんだけど、なかなか表に出て来るバンドがない。日本のロック界の幅の狭さを物語る一面かもしれない。

ちょっとヴァイオリンから離れるが、私は結構Curved Airが好きで、何年か前に後期のライブ音源を収めた海賊盤を買った。
さらに話題はズレるけど、最近流通する海賊盤ってのは音がいいネェ。昔はヒドかったんだゼェ。演奏よりノイズの方が大きいヤツとか向こうのほう~で演奏している感じのヤツとかザラにあった。
で、そのCurved Airの海賊盤、ドラムがアホみたいにウマくてビックリ仰天。Curved Airのドラムってこんなにスゴかったっけか?と思ってスリーブをチェックするとこれまたビックリ仰天!
PoliceのStewart Copelandだったのよ。
そうだ、後期のCurved Airに在籍していたことを忘れていた。
イヤ~、スゴイスゴイ。とても「♪ブーブーブーでバーバーバー」なんてやってる場合じゃない。
PoliceはAndy SummersがSoft Machine出身と知った時も驚いたが、ナンノナンノ、コテコテのジャズ・ロックになる前のサイケの時代だからね。ジミヘンとUSツアーをしたっつったっけか?

さて、Wolf。
「ウルフ」と言えば「ウルフ金串」。『あしたのジョー』って登場人物の名前もカッコよかったよね。
このバンドは3枚のオリジナル・アルバムを発表しているが、これは最初の2枚とアルバム未収録曲をコンパイルしたベスト盤…なのかな?
今、こういう格好をした日本のバンドがいますね。このアルバムは1976年の制作。今から39年前のことだ。
この女の人は誰だろう。Diana Rossの出来損ないみたいな…もうちょっと選んだ方がヨカッタのでは?

Z_img_6693WolfのギタリストはJohn Etherridge。後にAllan Holdsworthの後を継いでSoft Machineに入ることになる超絶ギタリスト。
このアルバムでもクリーンなトーンでバリバリ弾きまくっている。
Etheridgeについては『名所めぐり』で触れたこともあるね。
もう少し彼のキャリアについて書き足すと、彼は「Zappatistas」というFrank Zappaのトリビュート・バンドでライブ・アルバムを出していたりするが、コレが結構トホホ。
一方、驚いちゃうのがStephane Grappelliのバンドにもいたということ。
Grappelliが共演したギタリストといえば、まずはDjango Reinhardt…あとは思いつくままに書けば、Barney Kessel、Joe Pass、Larry Coryell、Martin Taylor、Marc Ducret、Philip Catherine、Diz Disley等々…ギター・ジャズ好きなら思わず顔がほころぶ面々だ。
すなわち、ここに肩を並べるEtheridgeはジャズ・ギター界においてもすなわち相当腕利きということになる。
要するにEtheridgeはジャズのギタリストなのだが、このアルバムなんかを聴いている限りでは、バップ・フレーズなどはただのひとつも出てこない。
かなりクリーンに近いサウンドで猛烈な速さでスケールを行ったり来たりするプレイが目立つ。無理して例えれば、全部ピッキングしているAllan Holdsworthみたいな?

このアルバム、最後の「Toy Symphony」という曲はすごくカッコいいんだけど、私的にはその他の曲にあまりに魅力を感じないな~。4曲目なんかギターのチューニングが甘いんじゃないかな?
「Satulation Point」というのは「飽和点」と訳されているが、「極限」と言い換えてもOK。
ただし、このアルバムのどこが「極限」なのかはわからない。
ア、でも私、ゼンゼン嫌いではないのよ。

ファースト・アルバムのジャケットはオオカミそのものが登場していた。それともあれはイヌか?イヤ、オオカミか。
このジャケットの絵はなんだろう?
オオカミを罠にかけて穴に落として退治しようってのかな?気の毒に…おお神様!(←シャレになってますよ)

「オオカミ」のコーナー、最後にもうひとつ。
「狼狽」という言葉があるでしょ?「狼(ロウ)」は読んで字のごとく「オオカミ」のこと。「狽(バイ)」もオオカミの一種。双方中国の伝説の動物で、Nick LoweとSteve Vaiというワケではない。
それでこの「狼」、前足が長くて後ろ足が短い。そして、「狽」はその逆で前足が短くて後ろ足が長い。つまり、ソロで活動することが難しく、どこへ行くにもいつも組になってる。
ところが何かの拍子にバラバラになると。「オイオイ、どうするんだよ!」とハラホロヒレハラになってしまい、うまく歩くことすらできずうろたえてしまう。
つまり「狼狽」してしまう…コレがこの言葉の語源。お後がよろしいようで…。

Z_img_6695次、これにはイヤな思い出がある…British Lions。
このアルバムが発表されたのは1978年。
私に言わせれば、この辺りから段々ロックがつまらなくなってきた…ということになる。どういうことかと言うと、ギター・ヒーローの不在とパンク/ニュー・ウェーブの台頭である。

ライオンがユニオンジャックを食いちぎるイラスト。今にして思うと伝統を引き裂く的な、つまりパンク的なことを標榜していたのだろうか?
このバンドはMott The Hoopleの残党が結成したグループ。私は元来モットが苦手なのよ。

ところが忘れもしない…行きつけの石丸電気レコード館の2階(洋楽フロア。当時このフロアが一番にぎわっていた)で顔見知りの店員に「何かギターのカッコいいバンドはありませんか?」と尋ねたところ、コレを出してきた。
店員さんの名前は今でも覚えている。当時、後々になって知ったのだが、この店員さんの家が偶然我が家の近所で、国鉄のストライキの時に通勤するための自転車を貸したりする仲になったからだ。
昔はアレ、ストライキってのよくやってたよね。私は中学から電車通学だったのでストはうれしかったナァ。
で、この店員さんが自信ありげに出してきたのがリリースされて幾日も経っていないこのアルバムだった。
「コレはカッコいいよ~!」
期待に胸を膨らませてレコードに針を下した。「One More Chance to Run」とかいう1曲目はマァマァだったけど、後はからっきし受付なかった。
子供の頃はLP一枚買うのは大事だからね。後悔した。1回しか聴いていないアルバムの最右翼。
でもジャケットは中身ほどは悪くない。
そういえばJCM2000 TSLの頃はMarshallも広告にライオンを使ってたな。

そしてそれから間もなく満を持して登場したギター・ヒーローがいた。
Edward Van Halen。
でもね、私はVan Halenのファースト・アルバムは買わなかった。だってみんなで大騒ぎしてるんだもん。
そう、根っからのヘソ曲りなのね…でもヘソ曲りだからこそ、人とは違うものを求めて色んな音楽を聴く楽しみを知ったよ。

Z_img_6699_2これはHipgnosisか。なんでワニ?
Brand Xの5枚目のスタジオ・アルバム、『Do They Hurt?』。
マァ、文句ばっかり言って恐縮だけど、Brand Xも『Moroccan Roll』か『Live Stock』までだナァ。でも、Percy Jonesのソロ・アルバムも含めてナンダカンダで全部持ってるわ。
『Product』以降はなんかゆるくなっちゃってどうもピンとこない。それよりも以前紹介したSarah Pillowという女性歌手のバックのBrand Xの方がカッコいい。
このアルバムは『Product』のアウトテイク集ということになっている。
タイトルとジャケットの意味は調べたけどわからなかった。
Brand Xのバンド名の由来は以前に説明した

仙波清彦さん、鬼怒無月さん、大二さんら、腕利きのミュージシャンが集まってBrand XやKing Crimsonらの複雑な曲を演奏するコンサートがかつてあった。アレまた観たいナァ。

この項、最後に…。ワニって噛む力は500kgとかものスゴイんだけど、口を開ける力が滅法弱く、輪ゴムをクルリと口にハメられると、なんとワニのヤツ、口を開けることすらできなくなってしまうそうだ。知ってた?
せっかくの動物特集なのでもうひとつ。ラクダは後ろ足を触れるのが大キライ。だからバッタリどこかでラクダに出くわしても決して後ろ足に触ってはいけない。さもないと蹴っ飛ばされるよ。
そういえばまだCamelが出てないね。

Z_img_6703_2そういえば高校の時「マンドリル」ってアダ名のヤツがいたっけな。同じ猿の仲間でもそのものズバリの「サル」とか「ゴリラ」とかいうアダ名のヤツはそう珍しくないけど、「マンドリル」ってのはかなりマニアックだ。
でも、そいつ、本当に目の下が長くてマンドリルみたいな顔をしていた。
子供たちのつけるアダ名ってのは残酷なものが多いけど、思わず吹き出してしまうような傑作も結構あったよね。
チョット中近東っぽい顔をしているだけで「サウジ」と呼んでみたり、イカみたいな顔をしているので「ウンコイカ」って呼ばれているヤツもいた。

さて、このMandrill。
1968年にNYCはブルックリンで結成されたバンド。
このジャケットのせいか、子供の頃から気になっていたけど、その音を聴く機会がなかった。
今回この記事を書くためにチラリと聴いてみると、ガッチリとブラスが入ったシリアスなファンク・ロック。
私的には進んで聴くタイプの音楽ではないがなかなかカッコいい。

動物図鑑の1ページを切り抜いたかのようなジャケット。この目の下の白いところが実に気になる。柔らかいのかな?きっとメスを惹きつける役割をしているとかいうのだろう。

Z_img_6707今度はゴリラ。
The Bonzo Dog Doo-Dah Bandの1967年のファースト・アルバム『Gorilla』。
このジャケットはイギリスのリイシュー盤。
Bonzo Dogはどうもよくわからん。
古いジャズや当時のポップ・ミュージック・シーンの他、バラエティに富んだ音楽の種類をパロっていることはわかるし、何の問題もないのだが、何がおもしろいのかがピンと来ない。

それでも「Intro and The Outro」なんて曲なんかは、悪ふざけの極致的な展開で単純に楽しめる。
何しろただ延々とメンバー紹介をするだけで1曲終わってしまう。
Neil InnesやVivian Stanshallの本物のメンバーから、ジョン・ウェインやヒトラー、アン王女や総理大臣、俳優、実業家等々まったく好き勝手にいろんな人物が登場する。
Eric Claptonがウクレレで出てくるが、本物かな?ちゃんとウクレレを弾いてる。
それにLord Snooty and his Palsというのはイギリスのコミック雑誌「The Beano」に出てくるキャラクター。
まさか、ClaptonとJohn Mayallの『Bluesbreakers and Eric Clapton』のジャケットに引っかけてるのかな?
Count Basie Orchestraも登場するんだけど、なんと担当はトライアングル。「チーン」とやって出番終わり。こういうのはおもしろい。
ところでこの曲、絶対Duke Ellingtonの「C Jam Blues」のパクリでしょう?

私は流行ものに疎いので知らなかったのだが、90年代にイギリスで「Cool Britanica」というイギリスの文化をアッピールするムーブメントがあったらしい。
この動きは60年代のイギリスの文化にインスパイアされたもので、音楽に関して言えばSpice GirlsやOasisらがその代表だった。
「Cool Britanica」という言葉、この『Gollira』の1曲目のタイトルから採られたのだそうだ。

それと、ジャケットに「Dedicated to Kong who must have been a great bloke」と記されてある。
「bloke」というのは「ヤツ」みたいな意味で、英文としては「スゲエヤツになるはずだったコングに捧げる」ということになる。
コレの出典がどうしてもわからなかった。「kong」はどうも「king」のようなのだが、悔しいけどいつの時代の誰がどの王を指して言っているのかが解読できなかった。面目ない…。

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1972年、5枚目にしてオリジナルThe Bonzo Dog Band最後のアルバムがこの『Let's Make Up and Be Friendly』。
セカンド・アルバムの『The Doughnut in Granny's Greenhouse』からすでに「Doo-Dah」は削除されThe Bonzo Dog Bandとなっている。
このあたりともなると、『Gorilla』あたりのジャズ指向はまったくなくなってごく普通のロック・アルバムに仕上がっている。

Led ZeppelinのJohn Bonhamのことをみんな「ボンゾ」って呼ぶでしょう?これはJohn Bonhamがこの「ボンゾ」に似ていることから付いたニックネームってことになっているけど、そもそも「ボンゾ」って何か知ってる?
「ボンゾ」とは犬のこと。どの犬種にも属さない、人を笑わせるために生まれてきた陽気な犬ということになっている。
このアルバムのジャケットのイラストこそが「Bonzo Dog」。
The Bonzo Dog Bandの作品にこのBonzo Dogが登場するのはこのアルバムだけ。
ま、確かにニコニコしていて可愛いけど、「コレに似てる」とは言われたくないよね?

Bonzoは1920年代のイギリスの漫画家George E. Studdyによるもの。このBonzoが国民的な人気を博したことによってこの人は20世紀初頭のイギリスでもっとも有名な漫画家になったそうだ。ディズニーのミッキー・マウスより数年前の話し。

もうひとつ。このBonzo Dogを調べていて初めて知った。
「bonzo」という言葉が英語にあるそうだ。これは「津波」のように、日本語の「凡僧(ぼんぞ)」が元で、英単語としての意味は「Self-immolation」。
「immolation」というのは「生贄に供すこと」だが、一般に「Self-immolation」で「焼身自殺」を指す。つまり「bonzo」とは「焼身自殺」という意味だ。
政治的抵抗の手段としてお坊さんが焼身自殺したなんて話しを聞いたことがあるでしょう?
仏教では焼身自殺はタブーに当たらないため、僧侶はこの手段を採るのだそうだ。そこから「凡僧」と「焼身自殺」が結び付けられたのではないか…といわれているのだそうだ。
あ、The Bonzo Dog Bandはそんな物騒なこととは関係なく楽しいですからね。

ちなみに、このアルバムの最後に入っている「Slush」という曲はあの「メカゴジラ!」で有名な外道のオープニングSEだ。今でも秀人さんはこの「Slush」を出囃子のように使っており、コレが流れてこないと外道がステージに上がらないようなイメージがあるのは決して私だけではないだろう。

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Fleetwood Macも長い活動の間に著しくスタイルを変えたバンドのひとつだ。
今の若い人たちの口から決して出ることのないバンド名のひとつであろう。一方、知っている人のこのバンドに対する認識はいかなるものだろう。
すなわちPeter Green時代、Bob Welch時代、噂時代、その後…区分けはこんなもんでいいでしょう?…コレらのどれがあなたにとってのMacですか?ということ。
日本で今でもMacを聴いているというコアな人は、ナンダカンダでPeter Green時代の支持者が一番多いのではなかろうか?
Fleetwood Macは1967年にPeter Greenがロンドンで結成したバンド。
John Mayallのバンド・メンバーのsurname、つまり苗字を引っ付けてPeter Greenがバンド名にした。すなわち、Mick FleetwoodとJohn McVieだ。
今風に言えば「品川庄司」とか「ますだおかだ」とか「前田前田」とかと同じ。
もしくは、John McVieがBig Jim Sullivanとこのバンドを組んでいたらバンド名は「ビッグ・マック」だったということになる。
でもね、こういうことが起こってもおかしくなかったかもしれない…のがブリティッシュ・ロックのおもしろさなんだよね。ロンドンはせまいから。
Big Jim SullivanがUxbridgeに住んでいたと聞いたことがある。すなわちJim Marshallのドラムショップのあるところね。ロンドンの西のはずれ。
だからどこかでJohn McVieと一緒になっていてもゼンゼン不思議はないし、Big JimもBluesbreakersを絶対に見てるハズ。惜しかったな、Big Mac。

ここに挙げられているのは1969年のMacの3枚目のアルバム『Then Play On』。
このアルバム、マァ、内容に富んでいるというか、焦点が定まらないというか、やたらバラエティ豊かな曲が詰まっている。
しかし、何と言ってもこのアルバム聴きどころはPeter Green作の「Oh Well」であることは間違いない。ブルースとハードロックがミックスされた曲の初期の秀作とされ、何しろLed Zeppelinの「Black Dog」のお手本になったと言われた曲だ。
「Oh Well」は1969年にシングルとしてリリースされ、元来英米盤ともにこのアルバムには収録されていなかった。
その後、この曲がヒットすると、アメリカ盤はオリジナル・アルバムから2曲が削られ「Oh Well」が収められた。

ジャケットはイギリスの画家、Maxwell Armfield(1881 - 1982)の「Domesticated Mural Painting(家庭用壁掛け絵画)」という作品。ロンドンの高級マンションの壁にかける絵として制作されたもの。
制作時の素材が違うのか、他の作品とは仕上がりを異にしているものの、メルヘンチックな作品が持ち味のようだ。

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Mick FleetwoodはNATALのパーカッションを使用していたが、このアルバム冒頭の「Coming Your Way」や「Oh Well」のパーカッションがNATALの音かと思うとうれしい。確かではないけどね。
NATAL(ナタール)は1965年創業のイギリスの老舗パーカッション・ブランド。現在はMarshall傘下でドラム・キットやパーカッションを製造販売している。

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1973年、7枚目のスタジオ・アルバムの『Penguin』。『Peter Green's Fleetwood Mac』から大分遠い所へ来た。
ペンギンはJohn McVieのお気に入りで、バンドのマスコットとされていた。
コレはBob Welchが加入してから3番目の作品。私はBob Welch期が一番好き。
でもね、恥ずかしながら…この人イギリス人だと思ってた。加えて、後にMacに加入するLindsey Buckinghamもアメリカ人だとは知らなんだ。
だって、名前がBuckinghamじゃん!
イギリスには「-shir(シャー)」という行政区画がある。「Yorkshire(ヨークシャー)」なんてのは犬でおなじみでしょ?
同様に「Buckinghamshire(バッキンガムシャー)」というエリアがある。Marshallの工場があるミルトン・キーンズもそこに位置している。
そんなだもん、Lindsey Buckinghamがイギリス人だと思い込んでいたとしても何の無理もないじゃん?

このアルバム、なかなかいいんだよね。1曲目からChristine McVie節が全開で。Christineの声っていいナァ。『Rumours』なんかでも「Don't Stop」とか「You Make Loving Fun」がいい。ま、さすがの私でも、この化け物アルバムは全曲いいと思うけどね。
『Penguin』はアメリカではチャートのトップ50に入り、それまでのMacのアルバムで最高位を記録した。

本作にはSavoy BrownやIdle Race(Roy Wood やJeff Lynneが所属していたグループ)にいたDave Walkerというボーカルが参加している。しかし、ボーカル・スタイルや態度が「Macらしくない」とされ、次作の『Mystery to Me』のレコーディング中にビークになった。そして、その次作でDave Walkerが関わった部分はすべてボツにしたそうな。
ま、確かに声が立派すぎちゃうような感じなんだよね。
たとえて言うなら先代の円楽みたいな感じ。あんな太いな声で噺をされたら説教聞いているみたいで…私は苦手だった。
落語は志ん朝とか小朝とか、ちょっとかん高くて素っ頓狂な声がベスト・マッチする。

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そういえば次作の『Mystery to me』も動物ジャケットだ。
実はコレは私が初めて買ったFleetwood Macのアルバムだった。
コレもBob Welch在籍時の作品。BobはMac脱退後、鳴かず飛ばずだったParisを経て、1977年、ソロ・アルバム『French Kiss』のヒットにこぎつける。
後年は健康が思わしくなく、2012年病苦を理由に自ら命を絶った。私はちょうどこの時イギリスにいて、結構話題になっていたことを覚えている。
そういえばJohn Entwistleが亡くなった時もロンドンにいた。コレはさすがにものすごい話題になっていて、行く楽器屋すべてでこの話が出ていた。

2_img_0014しっかし…あきれるほどカッコいいよな、Area。問答無用でカッコいい。
この音楽に感動しない人間なんてこの世にいるのかしら?…と思いたくなるのは大きなお世話か?
なんだってそこまで音楽をカッコよくするアイデアを持ってるんだ?と不思議になる。
本当は誰にも知られず自分だけのものにしておきたい。それぐらいカッコいい。
Zappa、Hermeto Pascoal、Area…この3点セットは欠かせないナァ。

本当にズップリと使っているマニアの人が聞いたら入門編過ぎて笑っちゃうかも知れないけど、PFMを筆頭に、Arti & Mestieri、Banco del Mutuo Soccorso、Latte e Miele、New Trolls、Le Orme、Osanna、Museo Rosenbach、Quella Vecchia Locanda、Formula 3、Acqua Fragile、Il Volo、Maxophone等々…イタリアン・ロックは好きで結構聴いた。好きなグループが目白押しだけど、Areaが一番だな。
ブルガリア風だの、地中海風だの、微分音階だの、変拍子だのと、私にとってAreaの音楽は魅力に満ち満ちたものだが、ジャズというかフリー・ジャズの要素が濃いところがさらにその魅力を引き立たせている。
それほど好きなのに、ひとつたりとも曲名が覚えられん!自ら「International Popular Group」を標榜していワリに最後までイタリア語で通した。おかげで曲名をスンナリ読むことすらできない。したがって、何をうたっているのかもサッパリわからん。
でもこのガンコさがまたいい。

これはAreaの6枚目のスタジオ・アルバム、『1978 Gli Dei Se Ne Vanno, Gli Arrabbiati Restano!』。タイトル通り1978年の発表。
白血病で亡くなった中心人物、ボーカルのDemetrio Stratosが参加した最後の作品。
タイトルは英訳すると「The gods leave, The Angry remain」…「神々は去り、怒りが残る」ぐらいの意味。
ジャケットをマジマジと見たことがなかったけど、動物系だったんだね。
この吹き出しは、「リスナーがアルバムを聴いて感じたことを入れろ」ということかね?笑点か?

話しはまだそれるが、この漫画に使われる吹き出し、英語でなんて言うか知ってる?
こないだ偶然知ったんだけど、こういうのは「speech bubble」っていうんだって。おもしろいでしょ?
よく見ると、ライオンに話しかける女の子の吹き出しは実際のセリフになっているんだけど、ライオンの方は心のセリフになってる。「何て言おうと後でこいつカジっちゃおっと!」なんてことを思ってるのかね?
このイラストがタイトルとどう関係しているのはわからない。

コレ、いいよ~。Areaのアルバムはどれもいいけど、これはとても聴きやすい。繰り返しになるけど、よくもこんなにカッコいい音楽が作れるな…と感心してしまう。曲もアレンジも演奏も最高。
「fff」という曲ではMcCoy Tynerそっくりのピアノが出てきたりして…Coltrane Qurtet時代のMcCoy。
ギターでもドラムでも、日本には腕の立つミュージシャンがゴマンといるのに、どうしてこういう音楽を演奏するバンドが出てこなかったんだろう?
このバンドの一番基礎になっている音楽は民族音楽ではなくて、ジャズだと思うんだよね。
で、ジャズの連中はロックをバカにしてるし、ロックの連中はまったくジャズが演奏できない、という基本的な日本の音楽環境の傾向が邪魔している要因のひとつなんだろうなと思う。
それと、この手の音楽をよろこぶリスナーが圧倒的に少ないというのも決定的な理由だろう…こんな音楽日本で売れるワケないもんね。(ジャズ臭はなかったが日本のPOCHAKAITE MALKOはすごくヨカッタ)

今回、この記事を書くにあたってこのアルバムを何回か聴き直したが、どうにもカッコよくて止まらなくなっちゃって、結局持っているAreaのアルバム全部聴き直ちまった!

Z_img_6718コレは動物ジャケットの代表でしょうな~。もちろんHipgnosis。
文字が入っていないくて、牛が野っぱらにたたずんでこっちを見てるだけ。今考えるとスゴイ感覚だ。あの重厚なA面の音楽とは何の関係も見い出せない。
Pink Floydは当時何の制限もなくあらゆるタイプの音楽を取り入れようとしていて、新しいアルバム・ジャケットには、何か質素かつ簡素なものにしたいということをリクエストしていたらしい。
したがって、このジャケットと中の音楽が結びつかないというのはPink Floydの思惑通りなのだ。

HipgnosisのStorm ThorgersonはAndy Warholの「Cow Wallpaper」にヒントを得、ロンドンから30km北の牧草地へ出かけ(ロンドンから電車で20分も行けば、たくさんの牛やら馬やら羊やらブラブラしている)、最初に出会った牛を写真に収め、このジャケットを仕上げたという。
この牝牛の名前は「ルルベル3世」ちゃん。
Thorgersonはこのデザインを振り返って「この牛は、しばし過小評価されたり、無視されがちだったPink Floydのユーモアの部分を提示していると思う」と語ったそうだ。
「果たしてこの牛は何の意味を表しているのだ?」としかつめらしく考えるのではなく、「なんでウッシやねん?」程度におもしろがるのが正解のようだ。
確かに裏に出ている3頭の牛の写真を見るとそんな感じがするわい。

Pink Floydはほとんどの作品のジャケットがHipgnosisの手によるものなので、どれも素晴らしいが、コレと『The Dark Side of the Moon』はさすがにインパクトが大きいね。
アタシャ、あんまり聴かないけど…途中で飽きてきちゃうんだよね。

Z_img_6726ここからはブルドッグ・ゾーン。ブルドッグもその強烈なルックスから、最もカリカチュアライズされやすい動物といえよう。
こういう鼻の低い犬は飛行機に乗せると、気圧の関係で呼吸困難になって死んでしまうという話しを聞いたことがあるがホントなのかしらん?

まずはBen Sidranの『Don't Let Go』。
このアルバム、カッコいいんだゼェ~、1曲目のインストだけ…。というのは、この人、どうも歌が…。
インストのパートはすこぶるスゴイかっこいいのに歌がヘラヘラっと入ってくるとどうにも情けない。
感覚としてはMose Alisonを聞いた時のような感じか?

しっかしブルドッグってのはスゴイ顔をしている。なんでこんな顔か知ってる?
「ブルドッグ」というぐらいだから牛と戦ういわゆる闘犬なんだけど、牛にガッツリ食いつけるように、改良して下あごを出して、カジるパワーをアップさせたんだと。その結果、顔があんな風に変形してしまったらしい。気の毒に。あんな顔にされちゃって…いい犬迷惑だ。
このジャケットのブルちゃんもスゴイ顔してる。

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さて、Ben Sidran。この人はSteve Miller Bandの出身でブルドッグとは縁もゆかりもない優しい感じのルックスだ。「Dr. Jazz」の異名を取るジャズ・ピアニストにしてジャズ評論家でもある。

下はジャズの調べごとをする時いまだによく使っている『完全ブルーノート・ブック(ジャズ批評社刊)』というディスク・ガイドなんだけど、BenはMilesの『vol.1 & 2』、『Sonny Clark Trio』、Cannonball Adderleyの『Sometin' Else』、『Introducing The Three Sounds』、Bud Powellの『The Scene Changes』、Duke Pearsonの『Profile』、Joe Hendersonの『Page One』等々、ピアニストのリーダー・アルバムを中心に少なくない数のアルバムに解説を付けている。
さすが「Dr. Jazz」、視点が優れているのか、翻訳者の腕がよいのか、「言い得て妙」的な、非常に的確な批評を加えているのである。
何よりも「めっちゃジャズ好きやねん」という雰囲気が伝わってくるのがいい。
Ben Sidranと一緒にしてはあまりにも図々しいのはわかっているが、「Marshall Blogには音楽への『愛』を感じる」といううれしいご評価を本当によく頂戴する。最高にうれしいです。
でもね、私はただただ音楽や映画が好きで、人の迷惑を省みず、無責任に感じていることや願っていることを素直に書きなぐっているだけのつもりなんですよ…。
ところが、今度は私がBenの文章を読むと、彼のジャズへの強い愛情を感じ、「ハハン、皆さんがMarshall Blogに関して私に言ってくれるのはこういうことなのか…」とようやく理解するのだ。

2_img_0004ここにジャズのことを書ける機会があまりないので、ここぞとばかりBen Sidranの衣を借りてもう少し書く。
Benの「ジャズへの愛情」をムキ出しにした1曲を紹介しておこう。
それは1982年の『Old Songs for New Depression』というアルバムに収録されている。
アレ、このタイトル?って思った人もいるかもしれない。
そう、Bette Midlerに『Songs for new Depression(1976年)』というアルバムがあるからね。その関連性はわからない。
Benの方はMarcus Miller、Buddy Williams、Richie Cole、Bob Malachが参加したいつも通りのジャズ/ロック混成盤。スタンダードの「Old Folks」やら「Makin' Whoopie」、Mingusの「Nostalgia in Times Square」なんかを取り上げている。
その「Benのジャズへの愛情ムキ出し」の1曲とは「Piano Players」というの作品。何しろ2分チョットの間に好きなジャズ・ピアニストの名前をひたすら歌い上げるというキテレツな曲なのだ。
で、私が聞き取れる範囲でBenが口にしている名前を列挙すると…

George Shearing/Freddie Redd/Sonny Clark/Bud Powell/Walter Bishop Jr./Walter Davis/Walter Norris/Wynton Kelly/Art Tatum/Phenious Newborn Jr./Thelonious Monk/Jerry Roll Morton/Horace Silver/Horace Parlan/Barry Harris/Red Garland/Herbie Nichols/Harold Mabern/Tommy Flanagan/Duke Ellington/Jay McShann/Count Basie/Fats Waller/Eroll Garner/Kenny Drew/Bobby Timmons/Duke Pearson/Duke Jordan/Hank Jones/Bill Evans/Elmo Hope/Al Haig/Ceder Walton/Roland Hanna/Dodo Marmarosa…。

この中ではWalter Norrisという人だけ知らなんだ。後の人たちの95%は、参加している音源を私は日常的に楽しんでいる。
Benはただ名前を挙げるだけでなく、チョットしたシャレも織り込んでいて、たとえばピアノの巨人、Oscar Petersonは「Oscar got the Grammy」という形で登場させている。もちろんコレは「Oscar」がアカデミー賞の愛称で、グラミー賞に引っ掛けていることは言うまでもない。
また、もうひとりの巨人、McCoy Tynerは「Real McCoy」と呼ばれている。「Real McCoy」というのは「正真正銘のホンモノ」という意味で、実際、McMcoy TynerはBlue Noteに『Real McCoy』というアルバムを残している。
私の英語耳がもっとよければ、まだシャレを聴き解くことができていたかも知れない。興味のある方はどこかで歌詞を検索して研究してみてくだされ。

おもしろいのはコンテンポラリーなピアニストの代表格、Heith Jarrett、Herbie Hancock、Chick Corea等が出て来ないのだ。あるいは私が聴き逃しているのかもしれない。でも、Benにしてみれば自分と同格とみなしているのかもね!
ハイ、ジャズおわり。

2_img_0011_2Beggars Operaはファーストの「なんちゃってクラシック」みたいなアルバムしか持っていないけど、ここも恐ろしくジャケットのイメージに統一感がないバンドだ。
『犬をこっちへやるな!』という意味のタイトルなので、ジャケットのデザインは至極妥当な線なのだろうけど…。

「Beggars Opera」は1969年に結成されたグラスゴーのバンド。何年か前にエジンバラまで行った時にグラスゴーまで足を伸ばしたかったんだけど時間がなくてあきらめた。「世界で3番目に古い」という地下鉄を見てみたかったのだ。
エジンバラについてはShige Blogにも何本か紀行文を寄せているので是非コチラをご覧頂きたい。読んで頂かないと、せっかく書いている私がかわいそうだ。

Beggars Operaについては何にも思い入れがないので、ジャケットが犬、ということだけなのだが、昔から名前がカッコいいな…と思っていた。日本にもよくMarshall Blogに登場してくれる「摩天楼オペラ」というバンドがあるが、グラスゴーの方は「乞食のオペラ」だからね。
実はコレ、元々18世紀末に「the Beggar's Opera」というイギリスのオペラ(「バラッド・オペラ」というイタリアの重厚なオペラに向こうを張った気軽で楽しいオペラのスタイル)があって、それが元になっているのかも知れない。
後年、ブレヒトとワイルがこの作品を下地に作り上げたのが「The Ballad of Mach the Knife」で有名な『三文オペラ(Three Penny Opera)』なのである。そんだけ。
ちなみに「Mach the Knife」は「モリタート(Sonny Rollinsがあまりにも有名)」とか「メッキ―・メッサーの殺人大道歌」とか、何だか知らんがやたらと別名を持った曲だが、カラオケなんかに入っている邦題の定番は「匕首マッキー」。「匕首」は「あいくち」と読みますからね。要するにドスだ。

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コレは全然知らなかった。またまたブルドッグのジャケットかと思ったらバンド名がBulldogだった。それじゃ仕方ない。The Rascals系のバンド。1972年のデビュー・アルバムだ。
The Rascalsファンならともかく、普通の人にはほとんど知られていないグループだと思うが、男臭い絶叫型ボーカルがゴージャスなアレンジに乗って展開する実にゴキゲンなロックンロール・バンドなのですよ。
今度中古で安いCDを見つけたらゲットしよっと!

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今度はアライグマ。
J.J. Caleの『Naturally』。
「Cocaine」や「After Midnight」でJ.J. Caleの名前も知られるようになっているのかしら?
私はJ.J. CaleをJohn Caleと時折間違えてしまうぐらいの距離にいるもんでサッパリわからない。
「Hideaway」の時のように、J.J. Caleを救済するためにClaptonが「After Midnight」を取り上げているのかと思ったんよ。そしたらコレ逆なのね。Eric Claptonの方が先にレコーディングしているんですな…。
特段アライグマが好きなワケでもないし、その程度しか書くことはないんだけど、どうしてもJ.J. Caleに触れておきたいことがあるので取り上げた。
それは桑田圭祐のことである。
ゾッとするぐらい似てる。

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アライグマの次はアナグマ。
「Badger」とは「アナグマ」のこと。そして、Yesの初代キーボード、Tony KayeがYes脱退後に結成したバンド。
コレがね、また実にいいんだ。
デビュー・アルバムにしていきなりライブ盤。録音されたのはロンドンはフィンズベリー・パークのRainbow Theatre。Yesの前座での出演だった。
楽屋はどんな雰囲気だったんだろう?
コ・プロデューサーにJon Andersonを迎えている。
ジャケットはRoger Dean。
これだけYesの要素が揃っていれば、サウンドは当然Yes色が濃いことが予想されるがさにあらず。
もっと単純明快でハードだ。キーボード・プレイヤーが興したバンドだけあってオルガンやメロトロンを多用したアレンジがサウンドを分厚くしていて実にカッコいい。
一時メロトロンを多用したLA出身のBigelfが気炎を吐いたが、基本的にはGreensladeやUriah Heepのようなキーボードをフィーチュアしたバンドが絶滅してしまったことは認めざるを得ない。とても残念なことだ。
先日も石黒彰さんと話していたんだけど、「キーボード・ヒーロー」がまったくいなくなった」というご指摘あった。
まったく同感。
確固たるギター・ヒーローの不在も顕著だが、キーボードのヒーローに至ってはトキより希少。いや、トキはまだ生存しているけど、キーボード・ヒーローは絶滅して久しい感がある。
だって、思い返してもごらんよ、keith Emersonに始まってRick Wakeman、Jon Lord、Ken Hensley、Dave greenslade(まだまだ知ってるけど今日はこの辺でカンベンしといてやろう)…。みんないなくなっちゃった。
これはキーボード・プレイヤーがいなくなっちゃったんじゃなくて、プログレッシブ・ロックを筆頭にキーボードを使うロックがなくなっちゃった…ということに他ならない。すなわち、ロックという音楽の間口が狭まってしまったということだ。70年代はやっぱり素晴らしい。

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ジャケットはゲイトフォールドになっていて、ピラリと開くとアナグマが飛び出すというJethro Tullの『Stand Up』式。さすがRoger Dean。

このTony Kaye(Modern Jazz QuartetのドラムがConnie Kayで、時々言い間違えてしまいそうになるんよ)、Detectiveなんてバンドをやったもした後に、この次に出て来るBadfingerに在籍したりもした。映画『This Is Spinal Tap』のオーディションに落ちたりもしているらしいよ。

しかし、元いたバンドの前座を務めるなんてどういう気持ちなのかね?Tonyも新グループでYesに追いつけ追い越せ!という意気込みだったんだろうな~。
で、一山当てたか? 
否、結果は皮肉なことに「イエス」とはならなかった。セカンド・アルバムでJeff Beckが客演したりして話題にもなったようだが、すっかり穴にこもってしまって姿を消してしまった。名前がアナグマじゃあな…。

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Badfingerというと、「ビートルズの弟バンド」や「悲劇のグループ」か…?、もうひとつ、しばらく前にMariah Careyがヒットさせた「Without You」の出元ということが言えよう。「Without You」はHarry Nilsonの作品ではない。

『Sgt. Peppers~』の「With a Little Help From my Friend」の元の曲名は「Badfinger Boogie(どこがじゃ?でもカッコいい名前!)」。このウェールズ出身のバンドの名前はここから採られた。もともとはThe Iveysといった。
「Without You」だとか「No Matter What」なんてポップ・チューンを耳にするとPilotあたりとイメージがダブってしまいやすいんだけど、ライブ盤なんかを聴くとかなりハードなロックを演ってるんだよ、このグループ。

私は特段Badfingerのファンというワケではないが、70年代中盤までのアルバムはほとんど持っていて、どれもなかなかジャケットがいいと思っている。
ダリとキリコを合体させたようなイラストの『Magic Christian Music』、『No Dice』の写真もカッコいいし、『Badfinger』も洒落ている。

この『Ass』は4枚目のアルバムでビートルズのAppleレーベルからの最後の作品。
ジャケットのイラストは、Appleとはゴタゴタ続きで、Warnerへの移籍を目前にしたバンドの気持ちを表しているのだそうだ。
つまり、ロバがBadfinger、はるか遠くのニンジンがWarnerということ。
このイラストを手掛けたのはグラミー受賞の経験もあるPeter Corriston。
「Badfingerの悲劇」をゴチャゴチャ書こうかと思ったけどヤメた。
なんとならば、そんなことよりもこのこのジャケットをデザインした人を紹介する方が大切かも知れないと思ったからだ。

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「Peter Corriston」という名前を聞いたことある?この人マジですごい。デザインの良し悪しとかクォリテイは別にして、イヤイヤ、クォリティも極めて高いんだけど。
下手すりゃHignosisと比肩するような実績をロック界に残しているといっても…これは過言か?かなりのトホホもあるからね。
トホホの代表はコレじゃん?
Focusの『Live at the Rainbow』のアメリカ盤。Corristonの作品だ。これはさすがに手抜きとしか言いようがない。

1_img_0007_2こっちの方が断然いいよね?

1_img_0008しかし、いい方の作品もすごい。Led Zeppelinの『Physical Graffitti』、The Rolling Stonesの『Some Girds』や『Tatoo You』他、J. Giles Bandのいろいろ、Foghatの『Live』他、KISSの『Dressed to Kill』等々…キリがないのでもうやめる。
でも、個人的に驚いたのはこのオッサン、ジャズの方でもいい仕事をしていて、Chick Coreaの『My Spanish Heart(有名な「Armando’s Rumba」が入ってるヤツね)』や『The Leprechaun(妖精;Steve Baddがスゴイ)』、George Bensonの『Blue Benson』、Gil Evansの『Priestess』、Ornette Colemanの『Of Human Beings(Jamaaladeen Tacumaがカッコいい)』なんかもPeter Corristonの作品だ。

<後編>につづく

(一部敬称略)

※Music Jacket Galleryの詳しい情報はコチラ⇒金羊社MJG常設展
※当展示は2013年4月~6月のもので現在の展示中のものとは異なります。

2014年7月30日 (水)

【Music Jacket Gallery】ギター・ジャケット特集<後編>

BTO…知ってる?カナダのバンド。
Bachman-Turner Overdrive…略してBTO。何となくThe Band of Shigeo Rolloverみたいな名前のイメージだ。「over」が共通なだけか?

仕事柄、たくさんのミュージシャンと音楽の話しをすることが多いのだが、このBTOの話しをしたことのある人はほとんどいなかったように思う。会話の中に名前が出たとしても「カナダのバンド」という話題のくくりでチラっと通り過ぎる程度であったことは間違いない。
しかし!「American Woman」で有名なThe Guess WhoのRandy Buchmanが中心になって結成されたこのバンド、ものスゴイ人気だったのよ。
70年代の活動中、5枚のアルバムをアメリカのTop40に送りこみ6曲のシングルをチャートインさせ、世界で3,000万枚のアルバムを売り上げた。
私は特段ファンではなかったが、へヴィでポップな気の利いた曲はなかなか魅力的で、海外では「Deadheads」に向こうを張った「Gearheads」という熱狂的なファン集団が結成されていたらしい。「Gearheads」は彼らのロゴ・マークから名づけられた。

BTOは1976年の10月に来日。この時の音源がこのライブ・アルバムになった。『JAPAN TOUR』というタイトルになっているが、公演は福岡、大阪、名古屋、東京の4か所だけ。ただ、東京公演の会場は日本武道館だった。当時日本でもそれだけの認知度があったワケね。

このアルバム、すごく印象に残っていることがひとつある。
リリースされた時、中学校でロック好きの仲間が集まって、恐ら「くミュージック・ライフ」かなんかを見ておしゃべりをしていた時の話し。
まったくロックなど聴かないクラスメイトが我々のそばを通りかかって、このアルバムの広告かレコード評を目にしてこう言った。
「あ、ウチのアネキ、このコンサート行ってたよ」
BTOなんて知らなかったし、もちろんこの時は何とも思わなかったのだが、今にして思うと、そういう一般市民(?)がBTOなんて観に行っていた時代だったのである。
ロックがロックだった時代、ロックは「洋楽」を意味していた…とこのアルバムに接するたびに、この時の話しが脳裡によみがえり、よき時代に想いを馳せるのである。

2010年、Bachman & Turnerと冠したほぼ再結成のBTOをロンドンで観た。
やはりロンドンでも観客の歓迎ぶりはかなり大きなもので海外での人気を実感した。
ここで驚いたことがふたつ…。
ひとつはこの、Randy Bachmanのキコリのようなルックスによるイメージも大きいが、へヴィ級の代表のようなバンドが、コンボ・アンプを使っていたこと。しかもMarshallじゃねェッ!
スケールがメッチャ小さく見えたね。オイオイ、レコーディングならいいけど、そんなちっぽけなアンプじゃハイウェイをぶっ飛ばせないぜ!やっぱりここはMarshallの壁で演って欲しいところだろう。

それと、あの野太い声の主がRandy Backmanではなく、Fred Turnerの方だったことだ。え、そんなことも知らないのかって?いいの、いいの、特段ファンじゃないから。
このFred Turner、首に手ぬぐいをかけて、石鹸を入れた洗面器を小脇に抱えて横丁の銭湯に行くようなイメージで、何となく浅草で見かけるような気がする。その人があんな声を出すもんだからビックリした。
でも、そう思っていたのは私だけではなくて、相手が誰だったかは覚えてないが、この話しをすると「エ?!アレ、Randy Bachmanが歌ってるんじゃないの~?」と驚いていた。人間、見てくれはとても大切だ。

ジャケットはメンバーの集合シーンとバックに輝くバンド・ロゴ…ライブ・アルバムのジャケット写真の典型パターン。
スモークがいい具合だ。この時代のスモークはドライアイスで作っていたのかな?
ホント、最近はスモークたきすぎだって!照明効果かなんか知らんが、鮭じゃあるまいしあんなに燻しちゃいけない。小さいライブハウスのスモーク地獄はフォトグラファー泣かせなんよ。。

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Adrian Belewの『Lone Rhino』。
この人、一時トレードマークの動物の鳴き声でエアコンかなんかのCMに出てたよね?
こっちはKing Crimsonに加入する前、David Bowieのバンドに加入する前、すなわちZappaのバンドにいた時から知っているので何とも思わないが、一般の視聴者はあのCMを見てBelewのことを一体ナンダと思ったろうか?
ま、ギターを使った外国のお笑い芸人かなんかだろうね。

先回の来日時、出版社から頂戴したお仕事でステージの写真を撮らせてもらった。King Crimsonの初来日から数えて32年ぶりの生Adrianだった。
その時のようすをコチラに記しておいたので是非ご覧頂きたい⇒Shige Blog:エイドリアン・ブリューを撮ったよ

サイと対峙するAdrian。サイの背中には鳥が一羽。いい写真だ。
写真はT-REXやDavid Bowieの写真で有名な鋤田正義さん。

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Dweezil Zappaの『My Guitar Wants to Kill Your Mama』。ああ、なんてカッコいいタイトルなんだろう。
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オリジナルはお父さま。この『Weasels Ripped my Flesh(いたち野郎)』に収録されている。ジャケットのイラストはNeon Park。Little Featとかのジャケットの人ね。そういえば、Lowell Georgeはこのアルバムに参加している。
あ、こっちはMJG展示アイテムではないよ!展示アイテム意外の写真は小さくするか、斜めにして区別することにした。

コレ、自分を疎ましく思うガール・フレンドのお母さんをオレのギターが殺したがってるぜ!という歌。お父さんなんか燃やされそうになっちゃう…という物騒な歌。
昔、手塚治虫の『どろろ』であったじゃない?「妖刀」っての?刀が血を欲しがって、その刀を持ったヤツが殺人鬼になっちゃう話し。
バック・グラウンドは全然違うけど、なんかアレを思い出しちゃう。

残念ながらDweezilのは聴いたことはないんだけど、お父さまのはもうカッコよくて手の施しようがない。3分25秒の間、めまぐるしく変化するシーンに耳は釘づけだ。

Weasels 1975年発表のScorpionsのサード・アルバム。
Scorpionsを初めて聴いたのはいつのことだったかな~。『Virgin Killer』の直後ぐらいかしら?『Taken by Force』は間違いなくまだ出ていなかったと思うので1977年ぐらいのことか…。
ロック狂の兄を持つ同級生にすすめられ、「ドイツのグループ」ということに違和感を覚えながら、この『In Trance』と『Fly to the Rainbow』を買ったように記憶している。
他のところでも書いたけど、コレ、「Dark Lady」で景気よく始まるのはいいんだけど、2曲目のタイトル曲からやたら重苦しくなっちゃうのが苦手であんまり聴かなかったなぁ。

おなじみのバンド・ロゴはこのアルバムから登場した。
『Virgin Killer』、『Taken by Force』、『Tokyo Tapes』と何かとジャケットのトラブルが多いScorpionsだが、最初に物言いがついたアルバムがコレ。
下に見られるオリジナル・デザインは女性の胸があらわになっているため、NGとなったのだ。
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NGとなった後はこのように問題の個所が塗りつぶしとなりバストが完全に見えなくなった。オッパイが見たくて言うわけじゃないけど、やっぱり面白くなくなっちゃうよね。

この白いストラトはUli Jon Rothの私物で、このジャケットのアイデアもUliの発案とされていたが、後年インタビューでそれを正した。
内容はこうだ。
「初期のScorpionsのジャケット・デザインはレコード会社によるものでバンドはまったくクチを出していない。私が関わった作品のうちでもっとも恥ずべきモノだ」
ま、この『In Trance』はまだいい方だと思うけど、確かに『Fly to the Rainbow』は問答無用でカッコ悪いよな…子供の頃からそう思っていた。

Bkところで、このジャケットの写真を撮影した人はMichael Von GimbutというドイツのフォトグラファーでScorpions関連では他に『Virgin Killer』の表裏ジャケや『Taken by Force』のジャケットを撮った人。
他にもドイツ人ピアニスト、Joachim Kühnの『Springfever』なども手掛けている。
チョイと脱線するが、このアルバム、大好きなベルギー人のギタリスト、Phillp Catherineが参加しているので買ってみたが、つまらなかったな~。やっとの思いで1枚聴き通した。
Joachim Kühnは他にもJan AkkermanやRay Gomez目当てで買った『Sumshower』なんてのも失敗だった。
Jan Akkerman好きならデュオのライブ盤『Live! The Kiel Concert - The Stuttgart Concert 』がいい。
ソロ・ピアノの『Joachim Kühn Plays Lili Marleen』はなかなかヨカッタ。
他にもOrnette ColemanとやってるヤツとかArchie Sheppとの共演盤とか気になる作品もあるが危険度も高そうだ。

JkScorpionsのことを調べていて、ウチのLP棚をめくっていたらこんなのが出てきた。
2008年に来日した時に楽屋でUliからもらった中野サンプラザでのセット・リスト。ズボンのポケットに入れてシワくちゃにしちゃったのは私。
彼の楽屋には2日ともお邪魔させてもらったが、両日ともショウの直前に曲を決めていた。

Sl_4コレは1978年にScorpionsが2度目に来日した時のコンサート・プログラム。
Michael Schenkerが来るっていってたのに来なかった。
UFOでSchenkerが来日するいう話しもあったが来なかった。ギターはLone StarのPaul Chapmanだった。
結局私は一度も本物のMichael Schenkerを見ずじまいだ。このようすだと一生見れそうにないな…。

L_img_0005お定まりのプログラムの内容チェック!
1978年、Van Halenの初来日公演の広告が出てる。行った、行った、厚生年金。
Al Greenは飛ばしてと…それとLittle Feat。
中野サンプラザの2階席の一番前だった。双方行っといて本当によかったコンサートのうちのひとつ。

Img_0012これ、Soft Machineの『Third』なんだって。
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普通はコレじゃんね。

Sm3 裏はこんな感じ。こっちが表かな?
ファースト、セカンドのサイケデリック調からガラリと雰囲気を変えてフリー・ジャズのテイストとなったサード・アルバム。好き。

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そう、カンタベリー・ミュージック好きでしてね~。
わざわざ現地まで行った!

Rimg0134街の雰囲気はおおよそSoft MachineでもCaravanでもはたまたHatfield & the Northでもない。ただの美しい寺町(?)。これまた近いうちに『名所めぐり』で案内するので乞うご期待。

Rimg0150ガラリと変わってTed Nugent。
この人、全米ライフル協会の会員ですごい国粋主義者らしい。「ジャップのメーカーのギターでブルースができるかよ!」なんて言ったとか言わないとか…。そんなこと言っちゃイヤですよね~。
だからイギリス製のMarshallも使わないんかね?
したがって、ギターもアメリカ製だ。ジャケットに写っているのが愛用のGibsonのByrdland。

「Cat Scratch Fever」って流行ったよね。私はこの人に近寄りもしないけど、このアルバムあたりはリアル・タイムで、「Hammerdown」とかいう曲がカッコよかったような記憶がある。
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このByerdlandというギターはBilly ByrdとHank Garlandというふたりのギタリストのアイデアによって開発され、1955年にGibsonが発売した。
Billyの「Byad」とGarlandの「land」を合体させた名前を持つ、L5CESやSuper400と並ぶハイエンドモデルだ。
Gibsonはその後、異なるハードウェアを搭載するなどして廉価版のES-350Tを発表した。
珍しいでしょ、こんなにギターの話しをするなんて…。

実はこのES-350Tってギターが昔欲しくてね~。ナゼなら70年代に渡辺香津美さんが愛用していたからなのだ。
ギター特集に免じてもらって今日一番の脱線をさせて頂く。ギターつながりだからいいでしょう?
それは香津美さんのこと。
世界で名の通った日本のギタリストというと、何といってもロックでは「高崎晃」だが、ことジャズになるとまず「渡辺香津美」の名前が挙がる。
昔からジャズの枠にとらわれない活動を展開されているが、バップ・ギタリストということでくくれば私は香津美さんが軽く世界の5本指に入ると思っている。…というか、普通の人間はこんなにギター弾けませんよ。
音速で弾きまくる速弾きシュレッディングももちろん大変な超絶技巧だが、音楽の複雑さやフレーズの難易度から見れば、バップ・ギターの方がはるかに技巧を要することは間違いない。
それも美しく太い音色と高濃度の歌心で弾き倒すワケだ。たまらんワケだ。

ということで、70年代のクロスオーバー・ブームに乗って香津美さんが押しも押されぬ大スター・ギタリストになる以前、Three Blind Miceあたりの香津美さんの参加作品が大好きでずいぶん集めて回った。

その頃の一番好きなアルバムがコレ。
これはThree Blind Miceではないが、八城一夫さんというピアニストとのドラムレス・トリオ。
1975年の録音だから香津美さんが22歳の時の作品だ。
ここでの香津美さんのプレイはもうただただ素晴らしい。もう完全に外人状態。
今でもよく聴いているアルバム。
おそらくここでそのES-350Tを弾かれているハズ。

W_img_0005この頃の香津美さんの参加作でロック・ファンにもスンナリ楽しめそうなアルバムを2枚紹介しましょうね。
向かって右が水野修孝という人の『ジャズ・オーケストラ’75』というビッグ・バンドの作品。ここでゲスト・ソロイスとトして香津美さんが参加し、宮間利之とニュー・ハードをバックに縦横無尽のソロを展開する。リズム隊のゲストとしてはポンタさんや岡沢章さんも参加している豪華布陣。
このジャケットに香津美さんがES-350Tを弾いている写真が掲載されているのでこの頃の愛器であったことは間違いない。
向かって左はそのライブ盤『水野修孝の世界』という、右の内容のライブ盤。ここでの香津美さんこそスゴイ。もうジャズとロックのフレーズがこんがらがっちゃって、出るわ出るわ、留まるところを知らない。これまた当時の香津美さんのトレードマークだったAlembicが七色のトーンをクリエイトしている。
この2枚からおいしいところをコンパイルしたCDはかなりおススメ。

香津美さんとご一緒させていただいた機会にES-350Tの所在を直接尋ねてみたが、すでに手放してしてしまったそう。

W_img_0021さて、Byrdlandに話しを戻そう。
先に書いたようにこのモデルはギタリストのBilly ByrdとHank Garlandのアイデアで作られた。
Billy Byrdという人は知らないが、Hank Garlandはなかなかいいよ。…といっても1枚しかもっていない。
『Jazz Wind from a New Direction』という1960年の作品。下がソレ。これもギター・ジャケットだね。ちゃんとByrdlandが写ってる。
このHank Garlandという人、普通のジャズ・ギター史にはまず名前が出てこない人だが、なかなかの名手。よどみなく繰り出す複雑なアドリブ・メロディは小型Tal Farlowを思わせる。
このアルバム、もうひとつ大きな聴きどころがある。
それはGary Burtonのヴァイブだ。文句なしの快演!次から次へと繰り出すバップ・フレーズがあまりにも素晴らしい。
この鍵盤打楽器というのは鍵盤楽器の複雑な音楽性を打楽器の技術で実現するという究極的に演奏がムズカシイ楽器とされている。
あの超絶ギターを弾くPeter Ollie Halsallは(私が言う「超絶」は速弾きという意味ではない)、はじめヴィブラフォン奏者を目指したが、あまりにもムズカシイので断念してギターに転向したというくらい。
PattoでOllieがヴィブラフォンを演奏している音源が残されているが、聴いてみるとトンデモなくうまい。それにもかかわらず、この最高のギタリストが断念してしまったというのだから鍵盤打楽器のムズカシさが窺えるというものだ。
で、このGary Burton、『Duster』とか『Lofty Fake Anagram』等のジャズ・ロック作品(ギターということでいえばこのあたりのLarry Coryellの破れかぶれさが最高にカッコいい)の評価が高いが、本作のようなストレート・アヘッドなプレイが実によろしい。
バークリーの先生も務めているが。生徒さんに言わせるとヴァイブにかけては「宇宙一」ウマいとか。
…てんで、このアルバム、おススメです。ドラムはJoe Morelloだし。

L_img_0022ビックリ!Ted Nugentの話しをしてたんだっけ?忘れてたわ。ずいぶん遠いところまで来たな。
ということでTed Nugentには何の思い入れもない…のだけれど、恥ずかしながら来日公演へ行ってますから。
1979年。武道館。
確かこの時、「世界一音が大きいコンサート」みたいなふれこみだったと思う。確かに音はデカいと思ったけど、最近のコンサートに比べたら屁でもなかったのかもしれない。
正直、演奏の内容は何も覚えていないが、コンサート自体は印象的なものとなった。

…というのは、コンサートの最中に武道館のアリーナで警備員と外人の客が大乱闘を展開したのだ。
当時、コンサートでは保全を目的にイスから立ち上がることさえ禁じられていて、感極まってイスから腰を上げるお客さんがいると警備員がスッ飛んできて「立たないでください!」と注意するのが普通であった。
その日、外人のお客さんが普通のコンサートより多く来場していた。酒でも入っていたのかもしれない。
コンサートの半ばにもなると大分盛り上がってきて、外人たちが立ち上がり出したのだろう。それを厳しく注意する警備員とその注意を聞き容れない外人客との一大バトルが始まったのだ。
他の警備員も加勢するわ、ヨソの外人客も乱闘に加わるわで武道館のアリーナが一時大騒ぎになった。
オモシロかったな~。一緒に行ったヤツが中学校一ケンカが強いヤツで、その乱闘に加わらないかとちょっとヒヤヒヤしたっけ。

しかし、昔のコンサートはよかった。ちゃんと音楽を聴く場所だった。
そんな風に立ち上がることすら禁じられていた時代だからお客さんはスタンディング・オベーションという行為すらしなかったし、一般的にもそうした行為は知られていなかった。でも、滅多に見ることのできないホンモノのロックを演奏する海外のバンドが目の前にいたのだから、そりゃジックリ聴いた。
いつからコンサート会場は盆踊り会場になってしまったのだろうか?

L_img_0003こっちのプログラムにはUFOとEaglesの来日公演の告知が掲載されている。

L_img_0010このカテゴリーでRoy Woodが登場するのは初めてかな?ロン・ウッドじゃないよ、ロイ・ウッド。
The MoveやElectric Light Orchestraの創設者のウチのひとり。「ウチ」のもうひとりはといえばJeff Lynneだ。(今回はBev Bevanには我慢してもらおう)

The Moveに関して言えば、イギリス人の友達によるとThe Moveはいわゆる「ポップ・バンド」という扱いになっていて、「ロック」とは一線を画しているようだ。
後期のThe Moveはかなりハードな曲が多いが、ファースト・アルバムなんかは「ビートルズに続け!」的な感じは否めないもんね。
でも、それがいいのよ。
そのヒット曲を書いていたのがRoy Wood。Ron Woodじゃないよ。

この人も日本ではかなり過小評価されている人のうちのひとりだろう。
驚異のマルチ・プレイヤーでロック楽器から管楽器、チェロまで何でもひとりでこなしてしまう。
でも、Toddだってそれぐらいのことをするし(2度目の来日公演の時にはサックスを吹いて、ドラムも叩いた)、マルチ・プレイーというのは、マァ、それほど珍しくもないのかもしれない。
このRoy Woodがスゴイのは、それだけでなく何しろものすごくいい曲を作る才能に長けていることだ。
誰も口にはしないが、70年代の日本のニューミュージック系の人たちはかなりRoy Woodを研究したのではないかと私はニラんでいる。

これは短命に終わったRoyのバンドWizzo Bandの唯一のアルバム『Super Active Wizzo』。
ジャズ・オリエンテッドという触れ込みだったらしいが、ま、ジャズには聴こえないな。残念ながら内容もあまりおもしろくない。
Bo Didleyモデルを下げてポーズをキメるRoyのジャケットはカッコいいが…。

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Roy好きの植村さんの本格コレクションには遠く遠く及ばないが、私もかなり好きでしてね。気が付くと結構ゴチャゴチャ集まってる。
今、Roy Woodってどうしてるんだろう…。

Jb_img_0005『Standing Ovaton』以降、Larry Coryellもこのクラシックのシリーズにはずいぶんのめり込んでいたね。
『シェエラザード』だの『火の鳥』だの『春の祭典』だの…。
このあたり、アコギ夢中期ではStephane Grappelli、Philip Catherine、Niels Pedersenと組んだ『Young Django』が愛聴盤。Catherineとのデュオ盤『Twin House』もいい。
それと、ポーランドのヴァイオリニスト、Michael Urbaniakとのデュエットも好きでよく聴いた。

問題は、まぁ、粗製乱造といったら失礼に当たるが、どう見てもB級、あるいはC級の域を出なさそうにない作品が目白押しの、その前のエレキ・ジャズ・ロック期だ。
サイドマンとして参加したものも含めると、ザックザク出てくる。でも、B&C級とわかっていても何となく手が出てしまうんだな~。
で、結果、気が付いてみるとこれまた結構集まっちゃってる。
よくライバル視されるJohn McLaughlinのストイックな姿勢と全然違う。初めは私もMcLaughlinの方が好きだった。
プレイもそう。McLaughlinの緻密さとは対照的なCoryellのヤケクソさとういうかアバウトさ…いつの間にか、Coryellの方がよくなっちゃってる自分に気づくんよ。

今でも時々ジャズのアルバムには手が出ちゃうもんね。隠れた名演的にはSonny Rollinsの『Don't Ask』が大好き。
この人、母方の方だったか、インドネシアあたりの東南アジア人の血が入っているらしい。それでちょっとああいう風貌。これがまた親しみやすさを増してくれてもいる。
このダリ丸出しのジャケットは魅力的だ。

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コチラはCoryell名義のアコギ・ギター・トリオ。お相手はJohn ScofieldとJoe Beck。
全部Ovationだよ。時代を感じるね~。1979年の作品。
カッコいいジャケットだ。

この中に「Zimbabwe(ジンバブエ)」というブルースが収録されていて、かつてFMでCoryellと香津美さんのデュエット・バージョンがオンエアされたことがあった。めっちゃカッコよかった。
Coryellは、敬意を表し香津美さんのことを「Kazumi-san」と必ず「さん」付けで呼ぶという話しを聞いたことがある。何となくうれしい話しだ。

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そうそう、ジョンスコとギター・トリオで思い出した。前にも紹介しているかもしれないけど、ロック・ファンの皆さんにもなじみやすいと思われるCharles Mingusのアルバムを一枚。
『Three or Four Shades of Blues』という1977年の晩年の作品。(Mingusは1979年に他界)
長いキャリアの中で(多分)ギタリストを起用したことがなかったMingusがLarry Coryell、Phiip Catherine、John Scofieldというクセモノ3人を集めて制作したハードな好盤。
同年に『Me Myself & I』というアルバムがあって、そこにはJack WilkinsやTed Dumbarが参加しているが、Mingusがいっしょにプレイしていないので、Mingusとギターの共演は『Three or Four Shades of Blues』だけになろうか?
まぁ、カッコいいから。ギター好きの人は一度聴いてみるといい。

34 『Land of the Midnight Sun』?『Elegant Gypsy』?『Casino』?…流行ったよね~ディメオラ。あの時代のお年頃の音楽好きは間違いなくみんな聴いたでしょ?
でもね、私はコレ…『Electric Rendevous』が好きだった。
収録されている「Crusin'」という曲をタモリがオールナイトニッポンで流してね、それが気に入ってアルバムを買った。この曲Jan Hammerがドラムを叩いてるんだっけ?

まだ渋谷のタワーレコードがハンズの先にあった頃で、King Crimsonの『Discipline』とLarry Carltonの『Sleepwalk』を同時に買ったのを覚えている。もちろん、もちろん全部その時の新譜レコード。いい時代だったな~。
イヤ、ま、だからなんだ?という話しなんだけど、年を取ってくるとこんなことでも懐かしく思えてくるんよ。

しかし、このジャケット、今見るとかなりダサいな。特になんでこんなにレスポールが痩せ細っちゃってんだ?!
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これは買ったことがない。Al DiMeolaのライブ盤。なんで買ったことがないかというと、ダビングしてもらったカセット・テープを何回も聴いたから。
それも、当時アルバイトしていた病院に入院していた中学生の子に頼んでエア・チェックしてもらった。あの子あの後元気にやってるかな…といってももう50近いのか…。

何でも当時Di MeolaはドラムがSteve Gaddじゃないとツアーに出ないとかいう話があって、Gaddのスケジュールの空きを待ってツアーを組んでこのアルバムをライブ・レコーディングしたとか…。

タイトルの「TOUR DE FORCE」とは「大作」とか「力作」という意味。他に「離れ業」なんていう意味もある。
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Manはわからない。1968年、ウェールズで結成された名門ブリティッシュ・ロック・バンド。これしか知らない。アルバムも1枚しか持ってないし、印象が薄い。
このアルバムは1975年に発表された『Maximum Darkness』というライブ盤。ロンドンはチョーク・ファームのThe Roundhouseで収録された。(The Roundhouseはそのうち『名所めぐり』で紹介します)
ずいぶん昔から、ハンターなんかでよく見かけたジャケットだ。子供ながらにカッコいいとは思ったものの一度も聴いたことがない。SGがいいよね。
そもそも日本に「マン・ファン(←変な言葉だな)」なんているのかしらん?いつか聴いてみようとは思っている。
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いつの時代もカッコいいね~、Jeff Beck。このジャケットの写真、何かのアルバムに封入されているポスターにもなってるんだっけ?
この頃はレスポール。コレがまたよく似合う。やっぱりすごいギタリストはギターがよく似合う。どんな服よりもギターとストラップがよく似合うのだ。

Jeff BeckのMarshall Blog発、最新の情報ということでコチラをご覧いただきたい⇒Jeff Beck のMarshall 2014
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…ということで『ギター特集』いかがだったろう。
やっぱりギターは不滅だね。「ギターを使う音楽が古い」だなんて発言は厳に慎むべきであろう。こんな発言をすれば自分が恥をかくだけだ。もし、この発言が広く受容される時は「世界の終り」が来るだろう。

さて、ここからは同時に開催された立体展示のアイテムをご覧いただく。
今回は特殊仕様のアナログ・ボックス・セット。CDのボックス・セットとは異なり、LPのボックス・セットはゴージャス感が強かった。
ハコに入っているという強みを生かし、大抵は分厚いブックレットが付属していたことも喜びのひとつだった。そして何といってもその重量。重さと値段がニアリー・イコールで、持っていることがひとつのステイタスだったりして。
それで、レコード棚に収めた時の背表紙の幅がまたうれしいと来てる。
私も何セットか持っているが、吹けば飛ぶ屁のようなものだ。
そこで、植村さんの相変わらずのすさまじいコレクションに舌鼓を打ってもらいたい。

● THE WHO / LIVE AT LEEDS (SUPER DELUXE COLLECTOR’S EDITION) (UNIVERSAL 2010)
ロンドン・オリンピックの閉会式で話題を集めたザ・フーの名ライヴ『Live at Leeds』の6枚組ボックス(1LP+1SINGLE+4CD)。
ここ数年のボックスものの大半にはLP(しかも重量盤)が同梱され、ハード・カバー・ブックレットが付属されるケースが多い。このセットでは当時付属されていたメモラビアも見事に再現されている

ロックを聴く者でこのアルバムを通過しないものはいまい。私も大好き。
ってんで3年前にイギリスに行った時、リーズを訪ねようかと計画した。ところが、友人にこのことを尋ねると街のようすが新しくなってしまい、面白くもなんともないという。それで往訪をあきらめ、ヨークに行くことにした
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● FRANK ZAPPA / BEAT THE BOOTS ! VOL.1 LIMITED EDITION BOX SET ( RHINO 1991)
巨星Frank Zappaが巷に横溢していた海賊盤に対抗すべく、67年から82年までの自分の海賊盤を自らリマスターし、オフィシャルな8枚組LPボックスに集大成したもの。
開くと観客がポップアップするという驚きの特殊パッケージも実にザッパらしいし、ライノならでの見事なアイデアだ。
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Tシャツ等のオマケもうれしい。
私も持っているが、もったいなくて開けられない。買った時の状態そのままにしてある。
「それじゃ聴けないじゃないか」って?
このシリーズは奇特なことにバラ売りの国内版のCDが制作されて、それを聴いているので大丈夫。

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● THE BEACH BOYS / THE SMILE SESSIONS (COLLECTOR’S BOX) (CAPITOL 2011)
デビュー50周年記念で数年前30年以上ぶりに来日したThe Beach Boysの幻のアルバム、『Smile』の全音源を集大成させた9枚組ボックス(2LP+2SINGLE+5CD)。内容もさることながら、オリジナル・アートワークを3Dで表現したパッケージが秀逸。資料満載のハード・カヴァー・ブックレットも充実している。
みんな『Smile』好きね。
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● THE ROLLING STONES / GOLDEN HISTORY OF THE ROLLING STONES (キング1971)
当時ロンドン・デッカとレーベル契約をしていたキング・レコードが日本独自に企画・発売した5枚組LPボックス。サイケ調にデザインされた分厚いカートン・ボックスに同梱されたのは2種類の特大ポスター(年表)と80ページに及ぶ特製ブックレット。
60年代から70年代初頭にかけて日本独自のデザインによるジャケットは多く見られましたが、ボックスものは極めて珍しいといえる。

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● DAVID BOWIE / SOUND + VISION (RYKODISC 1989)
元祖グラム・ロック・スターというより、英国を代表するアーティストの1人であるDavid Bowieの代表曲や未発表曲などを編集した6枚組(2枚組LPが3セット)LPボックス。
Bowieのパッケージはどれもハイセンスなものが多いが、このBowieのイラストが直接プリントされたプラスティック・ボックスそのものがもはやアートといえるだろう。
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ん~、ハイセンス!
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● 小沢昭一:取材・構成 / ドキュメント 日本の放浪芸(日本ビクター1971)
俳優である小沢昭一が60年代後半から数年をかけて全国各地の放浪芸(大道芸、門付芸など)をフィールドワークで集大成させた7枚組LPボックス。
60ページに及ぶLPサイズの解説書は、貴重な写真も含め民俗学としても極めて貴重な資料といえる。1999年に同作品は初CD化されたが、解説書もそのままコンパクトになったために非常に読み難くなってしまった。
そうなんだよね。
ジャズのLPは裏ジャケに著名な音楽評論家が書いたライナー・ノーツが掲載されていることが多い。で、そのライナーが情報の宝庫だということになっている。
それはわかってるんだけど、あれだけ細かい英語を読むのは大変億劫だでねェ。よっぽどの必要性に迫られない限り読むことはありませんよ、正直。
それがCDになって、オリジナルの体をキープしようとしている気持ちはわかるんだけど、そのまま縮小しちゃったら読めるワケないじゃんよ。
はじめから「読まないですよね?ほんなら縮小させて頂きますんで、よろしく」と考えているとしか思えない。こうなると読みたくなってくる。
中にはその文章をLPサイズの紙に印刷して4つにたたんでCDのケースに入れておいてくれたりするメーカーもある。これは親切。
後はブックレットに文章をそのまま転載するとかね。
もうね、小さい字はツライわ。ホントこんなにツライものだとは思わなんだよ。そろそろ天眼鏡をゲットしようかと思ってる。
名詞の片隅に小さく入ってるemailアドレスなんか読めないってば!
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● 大瀧詠一 / NIAGARA VOX (CBS・ソニー)
日本のフィル・スペクターこと大瀧詠一のナイアガラ・レコードでの作品を集大成した9枚組LPボックス。
目玉は多羅尾伴内、宿霧十軒、我田引水などの別名義作品による2枚のアウトテイク集。当時八曜社から刊行されていたナイアガラの定本も同梱されている。70年代前半に数多くの名デザインを手がけたWORKSHOP MU!!の代表作品ともいえるものだ。
大瀧さんの急逝にも驚いた。
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● VARIOUS ARTISTS / THE MUSIC PEOPLE (CBS・ソニー 1972)
1968年に創立されたCBS・ソニーが5周年記念として業界プロモーション用に制作した3枚組LPボックス。
3枚は、クラシック編、ポピュラー編、邦楽編に分かれ、各ライナーノーツには5年間の歩みとヒットのエピソードなどが綴られている。非売品ながら、ジャケットのイラストは和田誠氏によるものだ。一般発売しても遜色のない見事なクオリティ。
秋葉原の大手電気店のあの黄色いレコード袋がなつかしいね!
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● あがた森魚 / 永遠の遠国 (永遠製菓 1985)
ここ数年精力的に力作をリリースしているあがた森魚が、自主制作で発売した豪華5大付録付きの3枚組LPボックス。
77年に予約限定で制作を開始したが、制作費の不足から途中で中断、ようやく完成したのが8年後の85年。 
当時25,000円とい高価格にもかかわらず、限定250セットを予約で完売、最終的には追加プレスの200セットも完売した。
手作りによるおまけセットなどは自主制作ならではの温かさに溢れるもので、まさにアートな音楽箱。
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● 一柳 慧 : 作曲 / オペラ 横尾忠則を歌う(THE END 1969)
世界的にも著名な画家・イラストレーターである横尾忠則が、オノ・ヨーコの最初の夫であった現代音楽家の一柳慧とコラボした画期的なレコード。
内容はミュージック・コンクリートといえる音のコラージュで、当時世界初の2枚組ピクチャー・レコードとしても話題を集めた。
2005年には横尾氏の所有するオリジナル原画から復刻した限定1,000セットの4枚組CDボックスも発売されたが、即日完売したとのこと。
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● SIGUR ROS / IN A FROZEN SEA (ARTIST IN RESIDENCE 2008)
今やBjorkと並びアイスランドを代表する独創的なSigur Rosが、アナログLPのみで限定発売した7枚組ボックス。
彼等の静謐な世界を表現したアートブック仕様に収められたLPのレーベル・デザインと内袋のデザインとが見事にシンクロしており、そんな所にも彼等のアートに対する美意識の高さが現れている。
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● PUBLIC IMAGE LIMITED / METAL BOX (VIRGIN 1979)
Public Image Limited(PIL)の2作目『Metal Box』は、初回限定生産で3枚の12インチがアルバム・タイトルに因んだ缶に入れられて発売されました。John Lydonはとりわけ音質にはこだわりがあり、よりクオリティを求めて45回転12インチ・アナログという仕様になったといわれている。
この缶カラのジャケット、入れ物?、植村さんによるときれいに保管しておくのは相当難しいとのこと。ひとたび缶が空気に触れてしまうと酸化してしまい、年月を経てサビサビになってしまうのだ。ハハン、なるほど。Small Facesの『Ogden』の中古品でキレイなやつなんてほとんど見たことないもんね。
コレクターの苦労は尽きないのであ~る!
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Music Jacket Gallery展示の詳しい情報はコチラ⇒金羊社MJG常設展

※記事内のジャケット写真は展示アイテム以外のものは斜めにもしくはサイズを小さくして掲載しています。
※本展示は2012年9月に終了しています。現在の展示内容は上記の金羊社ウェブサイトでご確認ください。

(敬称略 ※協力:立体展示本項解説文原本執筆・植村和紀氏、金羊社・奥平周一氏 )

2014年6月25日 (水)

【Music Jacket Gallery】ギター・ジャケット特集<前編>

大変に古いネタである。アッという間に1年半も経っちまった!
読者の皆さま、調子っぱずれのレポートで申し訳ありませ~ん。
そして、植村さんゴメンなさい。せっかくの『ミュージック・ジャケット・ギャラリー5周年』だったのに…。

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今回ご紹介するアイテムは、MJG常設展で2012年10月~12月まで展示されたもの。
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MJGの5周年を記念して、ロックの花形楽器、「ギター」に関するジャケットが集められた。
今でこそほとんどイジらなくなってしまったが、私も14歳の時からギターを始めてプロ・ギタリストを夢見た身…この企画を耳にした時、「お~、そりゃいいや。記事が長くなりすぎちゃったらどうしよう!」なんて思っていたのだが、イザ、ギャラリーの展示を見て口をアングリ…。
なじみのないレコードの比率が予想をはるかに上回っていたのだ。

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ま、自分が好んで聴く音楽が偏っていて、完全に一般的でないことは認めるし、それを誇りに思っていたりもするのだが、ちょっとビックリ。「エ…自分はこれほどまでギターから遠い音楽を聴いてきたのか?」みたいな。
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その一番の原因はブルースなのね。(Marshall Blogでは「ブルーズ」とは表記しません。理由は強情だから…ではなくて、英語圏の人たちが「ブルース」と「ス」を濁らせずに発音していることを確認できたから。それなら、昔から「ブルース」と表記してきたんだもの、変える必要はないと思ってるの)
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今回の展示は存外にブルース作品が多く、ブルースを聴いて育たなかった私には馴染みのあるアイテムがいつもより少なかったのだ。
それと案外多いと感じたのがニュー・ウェイヴ系の作品。これも苦手。加えてテケテケ系。
もちろん植村さんは普遍性を重視して万遍なくチョイスされたのであろう。
反対に考えてみると、ブルースやニューウェイブ系、テケテケ系の作品のジャケットにはギターの登場頻度が高いということが言えるのかもしれない。ちょっと強引にすぎるか…?
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それにしてもこのギター群!
軽音楽の世界においては、断トツでレコード(CD)・ジャケットへの登場回数が多い楽器であろう。主役であるボーカリストの唯一の楽器、マイクロフォンの登場回数より多いのではなかろうか?
それはギターが主役だった時代があり、主役がギターを抱える時代があり、ギターがファッションだった時代もあり…いつの時代も音楽はギターと過ごしてきたということだ。
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最近、売れっ子の若手バンドの中心の子が何かのインタビューで「今時、まだギター使ってるの?」とか「ギターは時代遅れ」とか驚くべき発言をしたと報じられていた。
私がギャーギャー騒がずともかなりの批判を浴びたようだが至極当然のことだろう。
何でそんなことを言ってしまったのか…。
これは音楽を聴いていない証拠なんだろうね。「ボクはロックをちゃんと聴いていませ~ん!」と音楽を知らないことを自ら白状してしまったのではなかろうか?

芸術は、よいインプットなくしてはよいアウトプットはあり得ないと思っている。よくマーブロで言っている通り「よいミュージシャンは、よいリスナー」というヤツだ。
もし、過去の偉大な音楽家たちの音楽を真剣に聴いてリスペクトしていれば、この子にこんな発言ができるワケがない。
私は、音楽に流行があるのは仕方ないと思うが、基本的には流行で聴くものではないと思っている。また、音楽が新しい必要などナニもないと思っている。耳がトロいせいかも知れないが、現実的に巷間に流れている音楽が「新しい音楽」に響くことはまったくない。
目先の金儲けのために「流行」が「伝統」を壊すべきではないと信じている。
さもないと、本当に音楽に「世界の終り」が来ちゃうよ!

それではギター・ジャケットの世界をのぞいてみよう!偏ってるけどね…。
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いきなりFrank Zappa。

まずは『Shut Up'n Play Yer Guitar』。
Frank Zappaはギタリストである。「ギターの真の三大イノヴェーター」として、Allan Holdsworth(引退するんだってね)、Edward Van Halen、そしてFrank Zappaの名前を挙げる専門家もいるようだ。
このアルバムのウラジャケにこう記されている…
「このアルバムがリリースされる前、Zappaキチガイなら誰でも知っていることを認識している人はごくわずかだった。それは…「Frank Zappaはギターが弾ける」ということだ。
新聞や雑誌が軟弱なギタリストをもてはやし、一方では気分を害するような歌を歌う、とZappaを非難している間も、Zappaはどんな言葉を以てするよりはるかに冒涜的な役割をこの楽器を通じて演じてきた。マスコミの連中はZappaの発する言葉で先に気分を害してしまい、Zappaがギターで語ることに耳を傾けなかった。このアルバムで聴けるZappaの数々のソロは、Zappaのギターを聴くことを忘れたライターたちを恥じ入らせるための証明になるかもしれない」

拙訳で恐縮だが、Zappaのギター・プレイをずっと過小評価してきたことをマスコミは恥じろ!と言っている。

この3枚組のアルバムは、『Shut Up'n Play Yer Guitar』、『Shut Up'n Play Yer Guitar Some More』、『Return of the Son of Shut Up'n Play Yer Guitar』という通販でリリースされたバラのアルバムをまとめたもの。
内容は、簡単にいえばさまざまな曲で弾かれたZappaのギター・ソロを抽出して新しい曲に仕立て直したもの。だから全編ギター・ソロだ。
タイトルもしたがって『黙ってギターを弾け』となる。Zappaはこの後も、同じ趣向で『Guitar』と『Trans-Fusion』という作品を残している。

コレがですねー、いくらZappa好きでもですねー、なかなかにシンドイんですわー。何がって、Zappaのギター・ソロが…。
そこで、このアルバムを聴くときはVinnie Colaiutaやバック陣のすさまじい演奏を聴くようにしている。ファン失格ですな。
でもね、この頃のVinnieはもっともいい時だでね。ギタリストよりもドラマーの方が喜ぶべき内容かもしれない。

ポートレイトにアルバム・タイトルとZappaのロゴサインを入れただけのシンプルなデザイン。
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写真はJohn Livzey。次作の『You Are What You Is』のジャケ写も撮った人。Emmlou Harrisや若き日のEdward Van Halenも数多く撮影している。
この直前の『Tinsel Town Rebellion』を挟んだ前の3作(『Orchestral Favorites』はレコード会社が違うので除く)、すなわち『Sheik Yerbouti』、『Joe's Garage Act I』、『Joe's Garage Act II & III』から本作、そして次の『You Are What You Is』まで、ジャケットのタッチがエラク似てるでしょう?
『You Are~』の後の『Ship Arriving Too Late to Save a Drowing Witch』はガラリと変わってしまう。
そのタッチが似ている5作全部このJohn Livzeyが写真を撮ってるいるかと思うとさにあらず。
前半はかの有名なNormanSheeffが撮っているんですよ。
つまらん想像だけど、Norman Sheeffといえば世界的な売れっ子フォトグラファーだからね…。ギャラが途中で折り合わなくなったのではないか…と。それで、似たような写真を撮るJohn Livzeyの起用と相成ったのではないかと思ったりするのである。

Marc BolanやDavid Bowieを撮った有名な鋤田正義さんですら、Normanが撮ったThe Bandの『Stage Flight』の中ジャケの写真を見てショックを受けたとおっしゃっている。
それは真っ暗に近いウッディな部屋にストロボを1灯だけたいてメンバーを撮ったものだが、窓を背景にしているため、そのストロボが傘もろともくっきり写ってしまっている。それがまた破天荒にカッコいい。
この撮影の時、Normanは大遅刻をしてメンバー達を激怒させてしまったらしい。Normanは「まぁ、まぁ」とメンバーをなだめてとにかく撮影を敢行。仕上がったこの写真を見てメンバーはさっきの怒りはどこへやら大満足のおおよろこびだったらしい。Normanの頭の中には撮りたい写真のイメージがハッキリしていて、その表情をゲットするためにワザと遅刻してメンバーを怒らせたのかもしれないね。

さて、せっかくのギター特集、鋤田さんのお名前も出たところで脱線させていただく。
コレはもうイヤらしいぐらいにMarshall Blogに頻出している田川ヒロアキのアルバム『Ave Maria』。
私が撮った写真だが、実はこの写真、鋤田さんが撮った有名なMarc Bolanのポートレイトをイメージしている。笑わば笑え、イメージするのは個人の勝手だ。
それでもスタジオに入って何とか最初のイメージに近づけようとアレコレやってみた。しかし、徐々に元のイメージなんかどうでもよくなって、撮っているウチに自分の撮りたいイメージがクッキリ浮かび上がって来るんよ。
そして、下町のヒプノシス、梅村さんがカッコよくレイアウトしてくれた結果がコレ。

Avemariajacket1 コレもおなじみ。孤高のギタリスト、三宅庸介Strange, Beautiful & Loudの『Orchestral Supreme』。
この写真は東京キネマ倶楽部で演奏中に撮ったモノの中から三宅さんがセレクトしたもの。妥協を一切許さない、三宅さんの音楽に対する異常なまでにストイックな面を我ながらうまく表現できた思っている。ま、この写真を選んでくれた三宅さんのセンスがシャープなだけとも言えるが…。

写真って、不思議なのは「今日はいいのがたくさん撮れたぞ~」って時は案外ダメでね。「イヤ~、今日はシンドかった。一体どうすんだよマーブロの記事…ロクな写真ないぞ~」なんて時の方がいいものがザックザック出てきたりするのだ。
Cdym
これは合成写真。Chris Duarteのライブ盤。レーベルはShrapnel。このジャケットに使用されている写真の使用権に関してかの有名なMike Varneyと契約を交わした。
できればギタリストとして契約したかったんだけどね…ナンチャッテ!でもとてもうれしかった。
この時も結構驚いたの。というのは、自分が大層気に入っていた写真が採用されず、普段なら目に止まらない、「アレ、こんなの撮ったけな?」級の写真ばかりが使われているのだ。
この感覚の違いはまさに文化の違いなんだろうな~。

Cdsleeve 最後に話題のQUORUM。栄えあるデビュー・ミニ・アルバムに採用された写真。内ジャケだがこれもギター・ジャケットに数えさせていただいてもよかろう。
これはあまりにもスモークがキツくて苦労したがお気に入りの1枚。

…と私も一応「ギター・ジャケット」推進のお手伝いをさせて頂いているってワケ。ホントはもっと仕事が来ないかと思ってんだよ!

Bt_img_0003 あんまり脱線しすぎて何の話をしていたのかわからなくなっちゃったでしょう。コレです、コレ。

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このアルバムの国内盤のLPには八木康夫さんの解説がついており、その中で渋谷の屋根裏での「なぞなぞ商会」のコンサートに触れている。
へへへ、ナニを隠そう、私はソコにいたのですよ。その時、録音したテープは今でも大事に保管してある。
なぞなぞ商会は名古屋出身のZappaのカバー・バンド。今は「トリビュート・バンド」っていうのかな?最近は70年代のロックの黄金時代を懐かしみ、この手のイベントが多いね。Zappaのトリビュート・バンド、また出てこいや~!Rainbowばっかりだでな~。

その解説書には併せて紫狂乱というなぞなぞ商会のギタリストがZappaのギター奏法について解説しており、『One Size Fits All』の「Inca Roads」のソロが採譜してある。
いい時代だ。
 
何かのインタビューでZappaはこのLes Paul Customについて「音はよくないので派手に改造した」とか「チューニングが狂いやすかった」とか述べている。
確かにこのギターを使っていた時代の映像を見ると、フランジャーをギンギンにかけまくりほとんどナニを弾いているのかがわからないほどである。音の悪さをごまかしていたのかと思わざるを得ない。その割には、ルックスが気に入っていたのか、色々なところでこのLes Paulに遭遇する。

これは1980年のツアーのプログラム。
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コレはZappaのギター・ソロの譜面集。主に『Shut Up~』の曲が掲載されているが、コレを読んで弾きたがる人なんかいるのだろうか?
もちろん私も収集対象グッズとしてゲットした。
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採譜しているのは今をときめくSteve Vai。若い!
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VaiがZappaの作品に参加した出したのは1980年の『Tinsel Town Rebellion』あたりからか…。それゆえ私はSteve Vaiの名前をかなり前から耳にしていた。
『Ship Arriving~』あたりのVaiのクレジットには「Impossible Guitar Parts」とあって、メチャクチャうまいんだろうな~…と想像していた。
「想像していた」というのは、どうにもそれに該当しそうなパートが聴こえてこないのでスゴイのかどうかわからなかったのである。
それで、ある時海賊盤を聴いた時にブっ飛んだ。どの盤だか忘れてしまったが、「Black Page」を楽々と弾きこなしていたのだ。
この「Black Page」というのはメロディが大変に入り組んでいて、譜面にすると楽譜がたくさんのオタマジャクシで真っ黒になってしまうところから付けられたタイトルだが、ま、実際はそれほどでもない。
しかし、私もコピーしたがとても譜面にする気にはならなかったな~。
で、それをやったのがVaiだ。その譜面をZappaに送り、採譜係としてZappaとお近づきになり、バンドメンバーになり、上の楽譜集が上梓されたというワケだ。

下はMJGの展示。Vaiの1984年のソロ・アルバム『Flex-Able』のリイシュー盤。
Vaiはコレと『Flex-Able Leftovers』という10インチ盤をリリースしているが、Zappaの音楽に完全に親しんだ耳にはとてもチープで猿マネにしか聞こえなかったな。でも「Attitude Song」はカッコよかった。
あの『Crossroads』のJack Butlerもすごくよかった。
それでもこの人がこんなに人気になるとはね~。そこらじゅうで「バイ、バイ」言って…寿司屋か?!(当然「バイ貝」のことを言ってます)
音楽やギター奏法だけでなく、自分の見せ方をトコトン研究して、それらを巧みに組み合わせてうまくやった、もっとも典型的な成功例なのではなかろうか?

ジャケットはダリ風?オリジナルのデザインは見れたものではない。

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Zappaに話しを戻す。
コレは1983年の『The Man From Utopia』。ジャケットは『RanXerox』というSF漫画Tanino Liberatoreによるもの。
このアルバムの前年、イタリアでの野外コンサートの際、蚊の大群がステージに押し寄せ、演奏に難儀している図。よっぽどだったんだろうね、ネックを握りつぶしちゃってもん!

ハイ、ここでクイズ。「ハエ叩き」は英語で何というでしょう。そのままの訳だと「Fly Swatter」となるけど、「Flapper」というのが普通らしい。
日本語では「ハエたたき」、英語では「フラッパー」…どっちがカッコいい?
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さて、ここで触れておかなければならないのは、このあたりのZappa一連の作品の邦題だ。
今の『The Man From Utopia』は「ハエ・ハエ・カ・カ・カ・ザッパッ・パ」…はっ?
キンチョールのCMが流行ってたころだったのかな?
さっきから出て来ている『Ship Arriving Too LAte to Save Drowing a Withch』は意味は「too~to・・・」の構文だから「たどり着くのが遅すぎて溺れる魔女を助けられなかった船」という訳になるが、邦題は『フランク・ザッパの○△□』…レコード会社の担当者、何かZappaに恨みでもあったのかな?それとも八木康夫さんの指示だったのかな?
私が一番許せないのは『ザ・ギタリスト・パ』だ。
コレは『Shut Up'n Play Yer Guitar』のこと。オイオイ、フザけんのもいい加減にしろっての。
レコード店に行って「『ザ・ギタリスト・パ』ください」とか、「『ハエ・ハエ・カ・カ・カ・ザッパッ・パ』予約します」なんて言えるか?!恥ずかしいだろ!
この『ザ・ギタリスト・パ』というのは、当時はやっていた『セニョール・パ』とかいうパ・リーグを舞台にした野球漫画にちなんでつけられたもの。コレ、未亡人のゲイルが聞いたら今でも怒るんじゃないの?
「思い出の渚」なら「カ・ワイルドワンズ・セ」か?(一応入っておきますが、「パ・リーグ」に対抗して「セ・リーグ」になってます)
それにしてもヒドイよね。

Mg_img_0003まずは…テケテケは苦手なんですよ。
何で昔の盤ってこういうデザインのジャケットなんだろね。少なくとも女の人は不必要なんだと思うけど…。
こんな素敵なお姉さんも我々の音楽にメロメロになってますよ~!ということか?イヤ、ジャケットを見る限り、メロメロになっているのはオッサンたち方のようだが…。

テケテケでおなじみの「エレキ・ブーム」はベンチャーズが再来日した1965年がピークとされているらしい。私は3歳。幼稚園へ入る前のことだ。
だから私の世代はどっぷりベンチャーズ世代ではないが、まぁ、みんな知ってる。少なくとも『エレキの若大将』は好きだ。
また、年上の憧れのミュージシャンがみんなベンチャーズ世代ということもあって比較的自然に疑似ベンチャーズ体験をしている。クドイようだが、同世代でベンチャーズに夢中になっていたヤツはかなり稀有だ。
そのエレキ・ブームから約50年(!)が経過している。ブームをリアル・タイムに経験して、テケテケを楽しんだ若者ももう60歳を軽く超え、70の声も聞こうとしているワケだ。
しかし、街にはいまだにエレキの飲み屋が全国にあったりして、みんなで集まってはテケテケやっているではないか!これはスゴイよね。ブームなんてものではなくて、完全に「日本の文化」として定着している。

ちなみにイギリス人はベンチャーズに全然興味がないみたいよ。

それでは若い世代はどうだ?我々の世代はもうダメだ。弾き手がほぼいない。ましてや今の若者なんかThe Venturesの名前すら知らないだろう。だってThe Beatlesすら知らない子が普通なんだから。
すなわち、このテケテケ文化は近い将来かなりの高い確率で絶滅するだろう。また一歩、ギターが「世界の終り」に近づいてしまう。
同じようにして大好きなハード・ロックやプログレッシブ・ロックもやがて絶滅していくんだろうなぁ。
今はまだいいけど、もう2~3世代時代が下ると、本当にLed ZeppelinもDeep PurpleもKing CrimsonもYesも知らない人だけの世界になるんだ。イヤだ、イヤだ。

ナントカならないものかね~。
…となれば救ってやりたくなるのがMarshall Blogのいいところにして余計なところ。近々マーブロ初のテケテケ・ギタリストを登場させることにした。もちろんそれでシーンが変わるワケではないけれど、ま、MarshallBlogの心意気と受け取って頂きたい。

ところで、みなさん、このベンチャーズの代表曲のひとつ、「Walk Don't Run」って誰の曲だか知ってる?
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この曲を作ったのはJohnny Smithというジャズ・ギターの名手。1954年の作品で下の『Kaleidoscope』というアルバムで聴くことができる。これも「ギター・ジャケット」。
ベンチャーズ・バージョンより早いテンポで4ビートで演奏される。
Johnny Smithは『Moonlight in Vermont』というまったりしたアルバムがやたら有名だが、実に端正で美しいギターを弾く人だ。しかし、この「Walk Don't Run」のオリジナル・バージョンはとてもスリリングな演奏だ。
この演奏をテケテケに焼き直したところがベンチャーズの何とも偉大なところだ。

Mg_img_0016このジャケットはカッコいいな…。
でも、なんでMel Taylorだけにピンが当たってるんだ?
コレ、Ginger Bakerみたいにドラムが思いっきり前面に出て来ているのも不思議だが、考えてみると、なんでアンプが奏者の前に置いてあるんだろう。これじゃ自分の音聴こえないじゃん?オープンバックだから大丈夫だってか?
あるいは名前は出さないが、アンプ・メーカーがいくらか出したのかな?宣伝になるように前に置いておいてくださいって…。それともこの時代はコレが普通だったのかな?
ベンチャーズ世代ではないのでわかりません。

この時代のギターの音ってテレッテレのペラッペラの人もいるけど、Norkieのうっすらと歪んだ軽いクランチ・サウンドはファンでない私だってカッコいいと思うね。最高の音だ。
デジタルもマルチ・エフェクターもラックもない、ほぼエレキ・ギターと真空管アンプのコンビネーションでどんなことでもできたのだ。また、シンプルであればシンプルであるほど音がいいということの永遠の証でもある。

ところで、6弦をピッキングしながらグリッサンドして得られるあの音を最初に「テケテケ」と表現したのは一体誰だろうか?あまりにも偉大でしょう。
果たして初めてあの音を聴いて「テケテケ」と聞こえる人がいるだろうか…いないのではないか。
さっそく家内に試してみた。彼女は私と同じ年なのでベンチャーズのファンであったことはないが「テケテケ」という表現にはなじみがある。結果…「ん~、『テケテケ』にしか聴こえないわよ」だそうだ。
やっぱり「テケテケ」とい言葉を知っている人にはそうなのだろう。

ムリヤリに他の擬音を考案してみる…「ズクズク」とか「ティレティレ」とか…でもやっぱりもう「テケテケ」にしか聞こえないよね~。やっぱり名擬音といえよう。
 
それとこの選曲のセンス。先の「Walk Don't Run」も見事だが、この「Caravan」…Duke Ellingtonのエキゾチックな名曲をうまく料理して…と言いたいところだが、この曲はEllingtonの作ではなく、Juan Tizor(ファン・ティゾール)という人の作品で、1936年に初めて演奏したのがDuke Ellingtonとされている。

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…ということで「Caravan」でWes Montgomeryに移動する。キャラバンだけにね。
1964年の『Movin' Wes』、Verve移籍後の第1作で、ナント初動で10万枚が売れたそうである。
その理由はひとえに1曲目にあるんじゃないの?すなわち「Caravan」。
でもこのアルバム、他にも案外魅力的な曲が収まっている。
新婚旅行で初めて行ったアナハイムのDisney Landでかかっていたのが印象に残る、『屋根の上のバイオリン弾き』の挿入曲、「Matchmaker, Mtchmaker」、愛らしいワルツの名曲。あの後NAMMでこれほどアソコへ行くとはあの時は夢にも思わなんだ。
ポピュラー・スタンダードの「People」、渋いMel Tormeの「Born to be Blue」、そして『Incredible Jazz Guitar』の「West Coast Blues」の再演…。
硬軟取り混ぜた裾野の広いレパートリーがヒットの原因か?イヤ、違う。絶対「Caravan」だ。
オーケストラをバックにすさまじいドライブ感で走り抜けるWesがあまりにもカッコいい。まずコードで奏でるテーマにチビる!そしてソロでチビる!ま、Wesの指グセのオンパレードとも言えなくはないが、スリル満点だ。
シングル・ノート、オクターブ・ソロ、コード・ソロと徐々に盛り上げていくのがWesのソロの組み立てだが、ここではテンポが早すぎるのか、面倒くさいのか、シングル・ノートからいきなりコードでテーマを弾いて終わってしまう。約2分半。ク~、もっと聴きて~!気が付けばチビちゃって下半身びっちょりだ。これが10分も続こうものなら間違いなくウンコもらしているだろう。

Wesのオーケストラモノで言えば、Oliver NelsonのアレンジでオルガンのJimmy Smithと組んだ『Dynamic Duo』の「Down by the Riverside」のソロもチビるほどカッコいいが、尺が短いながら「Caravan」も決して負けてはいまい。
「Caravan」の名演は数多くあれど、このWesのバージョンはもっとも好きな演奏かもしれない。

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1963年の『Portrait of Wes』。コレは持ってないんだよね。なんか胃が痛そうなイラストだ。

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フト気が付いた。で、ウチにあるWesの作品の一部を並べてみた。ギターがジャケットに写っている作品だ。

Mg_img_0028なんとギターが登場しているジャケットの多いことよ。
ラッパのMiles、テナーのCortraneとRollins、ピアノのMonkやEvans、ベースのMingus、ドラムのBlakey、どれもとってもこんなに楽器が登場しているジャケットが揃っているアーティストはいない。
これは間違いなくジャズ界でのギターという楽器の地位の低さを物語っているのだ。「ギターだってジャズできますよ~」と楽器自体をPRしているように思えてならない。
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やはりこのあたりは名盤ぞろいでジャケットもいいね。左上はどう見てもJoe Passに見える。
その隣、ギター名盤の誉れ高い『The Incredible Jazz Guitar』でWesが抱えているのはES-175D。Kenny Burrellに借りて録音したという話は有名だ。
左下、これまた最高のライブ名盤『Full House』。L-5のナチュラル。やっぱりこのアルバムはJohnny GriffinやWynton Kellyの名演もあって最高に素晴らしい。後年GibsonからシグネチャーのL-5を出したが、この『Full House』のL-5が一番Wesのイメージにシックリくる。
そして案外名演が詰まっているのが右下の『Boss Guitar』。これもL-5。もっとも私にはWesのギターよりも髪の毛がどうなっているのかが気になる。

2s_img_0030 ギターが出てこないジャケットの代表といえば後期のA&Mの諸作になろうが、ジャズ的には何と言ってもコレ…通称「Half Note」。WesのソロのすごさにWynton Kellyが聴き入ってしまいピアノを弾くのを忘れてしまったというヤツ。いまだに聴いてる。
そして向かって右は「Half Note」の数日後に同じ場所で録音されたWesの2枚目のライブアルバム。あまりにもひどいジャケット!落書きか?ところが音に若干難があるものの、素晴らしい演奏が収められている。ちょっと手に入りにくいかもしれない。

Mg_img_0035この他にもあるある。左はトリビュート盤。右のRonnie Scott'sのライブ盤と同じ写真の使い回しだ。
この3枚というか2種類の写真、なかなかこの角度で写真を撮ることってないんだよね。これはね、きっと座って演奏しているのでこういう構図に収まるんだと思う。ロック・ギタリストの場合、ギターを低めに下げて立って弾くのでこういう風には撮れないのだ。
こんどスペースがあればズンコで試させてもらおう。

Mg_img_0038さて、続いてはA&Mが出たところでGeorge Benson。昔は10年に一度出るか出ないかの大天才と言われた。
歌手じゃないんですよ~。すっかり顔つきも変わっちゃったけど、昔はベッタベッタでコッテコテのギターを弾いていたんだから。これがまたすこぶるカッコいいときてる。
でも、このアルバムは私にはチトツライ。
The Beatlesの『Abbey Road』の収録曲をすべてジャズで焼き直しちゃおうという企画なんだけど、アレンジがキツすぎて、聴いているのがなかなかに困難だ。
もし、Bensonの超絶ジャズ・ギターが聴きたかったら『Jazz at Sunday Afternoon Vol.1 & vol.2』をおススメする。スゴすぎちゃって、とてもロスでメローに週末をすごしてなんかいる場合ではない。

それにしてもこのジャケット!ま、シャレなんだろうけど、あんまりじゃない?
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雰囲気がガラっと変わってRoy Buchananを3枚。
1976年の『A Street Called Straight』。邦題が『メシアが再び』だったので。発売当時「メシア、メシア」と呼んでいた。
このアルバムにも収録されている「The Messiah Will Come Again」は1972年の『Roy Buchanan』というアルバムでも演奏されている。ま、演歌調とでも言おうか、いかにも日本人の琴線に触れそうなこの曲でヒットを狙おうとしたんだろうね。
同じ年にリリースされたJeff Beckの『Blow by Blow(ギター殺人者の凱旋)』の「'Cause We've Ended as Lovers(哀しみの恋人たち…もう邦題がメチャクチャだ~!)」はRoy Buchananに捧げられたことは有名。

久しぶりに聴いたけど、やっぱりこのギター表現力ってケタ違いにすごいよね。Jimi Hendrixと同じことを違う方法で取り組んでいるようだ。

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1977年の『Loading Zone』。
この人の愛器ってTelecasterではなくて前身のEaquireなんだよね。それと1954年製のTelecasterか…。
ロイ所有のうちのテレキャスターは後にDanny GattonやMike Sternの手に渡ったんだってね。このあたりは詳しくない。熱心なファンに怒られそうだからサラっと進める。
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そして1977年に来日。その時の音源がライブ・アルバムになったのがコレ。1978年に国内盤が発売されているが、私が今持っているのは輸入CD。
コレがひどくて、レコーディング・データが記されていない!
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以前にも触れている通り、私は彼の来日公演を後楽園ホールへ観に行った。その時のプログラム。
で、コレをひも解いてみると、1977年6月、ちょうど今から37年前だ。東京は後楽園ホールで2回、郵便貯金ホールで3回。他に大阪、新潟、名古屋、札幌を10日間で回っている。
調べてみるとどうもこのライブアルバムは郵便貯金ホールで収録された音源らしい。残念。
私が観た後楽園ホールの公演では演奏中に弦が切れてしまった。ギターはこの愛用のEsquire(か特別なテリー)しか使わないから今のミュージシャンみたいにローディが替えのギターをサッと用意するなんてことはあり得ない。
どうしたかというと、バンドが演奏を続ける中、すこしも慌てず、観客全員が見ている前で悠々と自分で弦を張り替えたのだ。アレ酔っぱらってたのかな?足元にビールは置いてあった。
これがすごく印象に残っている。
今来日したらよろこぶ人がさぞかし多いだろうね~。しかし、コレは二度とかなわない。
Royは酒で身を持ち崩し、一時第一線から遠ざかってしまった。しかし、酒量のコントロールにも成功し、ギターもまた手に取るようになり、復帰を目指していた。
ところが、家庭での口論の後、公の場での酩酊が原因で逮捕され投獄されてしまった。その後、ロイは刑務所の中で自分のシャツを首に巻きつけて自ら命を絶った。1988年のことであった。

Mg_img_0018久しぶりに引っ張り出してきたプログラムの中のレコードの広告。イアン・ギラン・バンドにスターズ、それにストラップスだよ。
ストラップスなんて「第2のディープ・パープル」とか言われてたけど全然ダメだったね。結構好きだった。
スターズは「エアロスミスの弟分」なんてふれこみでね。「Cerry Baby」一発で消し飛んでしまった。ボーカルの人なんつったけ?弟さんがRexとかいうバンドやってたよね。Michael Lee Smithってのか…。ウワ!これStarzって今でもやってんじゃん!失礼しました!
イアン・ギラン・バンドは来日公演に行った。武道館だった。いい時代だ。

Mg_img_0020プログラムからパラりと落ちてきたチラシ。こういうのも取っておくべきだね。実になつかしい。
Royのチラシなんて手書きだぜ!いい時代だ。

Mg_img_0025The Shaggsは何度かMarshall Blogに登場している。我が家では自分ひとり以外の時にこのアルバムを聴くことを固く禁止されている。
ニュー・ハンプシャーの金持ちが、わが娘可愛さに(ジャケットを見ると全然可愛くない)バンドを組ませて自由に録音させたという珍盤。
「何の欲も邪念もないこれこそナチュラルな音楽だ!」と絶賛してしまった大物アーティストがいたもんだから大騒ぎ。その大物アーティストとはFrank Zappaなんだけどね。
ま、普通の神経の持ち主なら2曲と持つまい。
簡単に言えばヘタウマではなくてヘタドヘタだ。
これに比べれば後期ColtraneやSonny Sharrock、John Zorn、Albert Aylerなんて可愛いもんだ。『Ascenssion』やOrnetteの『Free Jazz』が良心的に聞こえるワイ。

ジャケットもスゴイね。ナンカ被ってるのかと思った。
驚いたことに2001年にトリビュート・アルバムなんてのが制作されているが、ま、誰かがどうしても笑いを取りたかったんだろうね、あるいはう金持ちの悪い冗談だろう。
ところがね、不思議なことに何年に一回は家に誰もいない時に聴いちゃったりなんかして…。「どんなんだっけな?」と妙に気になって、取り出してしまうのだ。
結果、Captain Beefheartの『Trout Mask Replica』よりよっぽど聴いていたりして…(さすがにコレはウソですが)。
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Jefferson一家はどうも苦手でね。ところがこのHot Tunaは例外…と言いたいところだがそうはいかない。力は入ってないし、リズムはシャパラパだし、いまだによさがわからない。
でも、Jorma KaukonenとJack Casady自体はカッコいいな~。

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「秀人さん」…今では幸運なことに加納秀人のことをそう呼ばせて頂いている。「加納さん」とはお呼びしない。我々が若い頃、加納秀人といえば「ヒデト」とだったからだ。そして、雲の上の人だった。

秀人さんのソロ・アルバム『In the Heat』。名曲「龍神」が収録されている。秀人さんが日本のJeff Beckを標榜してギタリストとしての存在感を高めた1979年の作品だ。
実は、このダブルネック、思い出がありましてな。
私の知り合いが「ヒデトのボウヤ(昔はローディのことをこう呼んだ)とバンドをやるからスタジオに遊びに来ないか?」と誘われて渋谷の明治通り沿いにあった(今でもあるのかな?)VEGAというスタジオに遊びに行った。私が高校生の時の話しだ。
スタジオに行くと、そのボウヤなる人がこの白いダブルネックを持って来たのだ。
「ウワ!In the Heatのヤツだ!」
もちろんその頃はまだ奥ゆかしかったので「触らせてください」なんてこともお願いできず、ただ横で彼らが演奏する「龍神」を眺めていただけだった。
値段のはなしではなく、今では音楽やCDだけじゃなく、楽器の価値も下がってしまったような気がするな~。
おもしろいのは音楽の質が下がるとちゃんと楽器の値段も下がるね。安い楽器が出て来るから音楽が陳腐になるのかね?
6,000円でストラトキャスターが買える…って一体どういうことなんだろうね。もし私が若かったら買っちゃうんだろうか?
買うね。だってRitchie Blackmoreの使っているギターのメーカーなんてどうだっていいんだもん。なぜならDeep Purpleなんか知らんもんね~…ということだ。
(注:当該のスタジオで見た白いダブルネックは、秀人さんの所有物ではなく、この時持参した方のギターだったそうだ。先日実際にこの場に居合わせた人からこの情報を頂戴した。35年以上経って真実が明かされた!でも、上の文章は訂正しません。あの時の少年(=オレ)の興奮をそのままにしておきたいから!)

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ハウンド・ドッグ、1980年のデビュー・アルバム。コレとても好きで高校の仲間と「P.S.アイ・ラブ・ユー」を演ったことがあった。サラリーマン時代のカラオケの定番は「嵐の金曜日」だった。

この頃のハウンド・ドッグを一度だけ野音で観たことがあったな。確かトリはARBだったような…そうでないような…。
EX(エックス)なんていうバンドが出ていた。サウンド的には確かニューウェイブっぽいもので受け付けなかったが、なんで覚えているかというと、このバンド、「2本溝のシングル・レコード」というものを発売したからであった。
レコードというものは普通溝が1本でしょ?これが2本になっていて、普通は1本内側の溝に針を落とすと、その曲の先の部分に音が飛ぶワケだが、この2本溝のレコードは、隣の溝に針を落とすと別の曲になるというものであった。買ってないけど…。
アナーキーが出たのもこの時だったかな?
大友さんはARBの石橋さんのモノマネなんかをして大いに野音を盛り上げていた。

何となく、ホントに何となくこの頃から日本にロックというものが定着したようなイメージがある。というか、パンクやニュー・ウェイブの台頭により、海外のバンドがまったく面白くなくなり、テレビにロック・バンドが登場する機会が増えて来た頃だったのではないか…と思いついて、1980年のヒット曲を調べてみた。
ハハン、なるほどね。
「別れても好きな人」、「雨の慕情」、「哀愁でいと」、「昴」、「異邦人」、聖子ちゃん爆発前夜、百恵ちゃん健在という状況下、「ダンシング・オールナイト」、「ランナウェイ」、「大都会」、ジューシー・フルーツ、等のバンド組がヒット曲をチャートに送り込んでいる。
アイドル、演歌、歌謡曲の地位はゆるぎないものの、ロンドン・ブーツやベルボトムをはかず、髪の毛の短いロック・バンドがテレビに出て来て市民権を獲得し出した頃という見方は容易にできよう。

このハウンド・ドックのデビュー・アルバムのジャケットデザインはその時代に状況を如実に表していると思うのだ。
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<後編>につづく

ミュージック・ジャケット・ギャラリーはどなたでもご見学が可能です。
詳しい情報はコチラ⇒金羊社MJG常設展

※本項の展示は2012年12月に終了しています。現在の展示内容は上記の金羊社ウェブサイトでご確認ください。

(敬称略 ※協力:植村和紀氏、金羊社・奥平周一氏 )

2014年6月18日 (水)

MUSIC JACKET GALLERY 2014

昨年は都合によりスキップしてしまったが、今年は無事取材することができた…MUSIC JACKET GALLERY 2014(ミュージック・ジャケット・ギャラリー 2014)。

10会期は5月29日~6月3日。取材時は平日の昼間にも関わらず、訪問客が途絶えることがなかった。
場所は例年通り新宿高島屋1階の特設会場だ。

20入り口にディスプレイされた巨大なVelvetsのデビュー・アルバム。

30ちゃんとバナナがはがれるようになってる!

40v_1レコード盤もしっかり再現されている。コレ、Verveは青がオリジナルなんだっけ?

50このバンド、John Cale を除いて、ゲストで参加したNicoまでオリジナル・メンバーが全員物故している。この生存率の低さはなかなかに珍しいのではなかろうか。
John Caleはイギリス人なんだね~、OBEを叙勲しているようだ。Nicoはドイツ人。ちなみに関係ないけど、J.J. Caleは先だって亡くなった。

60ちなみにこの1962年のBill Evansの『Moonbeams』。好きなEvansだが、ちょっとユッタリしすぎちゃっててこのアルバムはあんまり聴かないな…。でもジャケットRIVERSIDEにしては実にいい。このジャケットの女性はNico。

Nico それから干支がひと回りもするとこうなる。
こうして比較すると、Nicoの見た目の変わりようにも驚くが、彼女が歌う、オリジナルをズッタズッタに切り裂いた世にも重苦しい「The End」の変わりようもスゴイ!
写真の前列は左からKevin AyersとJohn Cale。Kevinも亡くなってしまった。

Juneちょっと変な方向に脱線してしまってゴメンなさい。入り口にあんなの置いとくもんだから!

今回はレイアウトが大きく変わった。

70展示の真ん中の列は「ミュージック・ジャケット大賞」のノミネート作品の実物。

902013年4月1日〜2014年3月31日の間に日本レコード協会会員社(59社)より発売された洋楽を含む国内制作の音楽CD作品がノミネートの対象となる。

100ウェブサイトだけでなく、この会場でも実際に投票できるようになっている。

80v お、Marshall Blog代表!人間椅子の『萬燈籠』もノミネートされている。皆さん是非清き一票を!
大賞の発表は8月上旬。詳しくはコチラ

110会場前方両壁には変形ジャケットのコレクションがズラリ。

120

130以前はガラスケースの中に展示されていたが、今回はアイテムが目の高さに近くなってすごく見やすくなった。

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150かつてMarshall Blogで紹介したものも複数展示されていた。

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170会場の奥に歩を進めるとこんな感じ。

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190今回は紙ジャケット関連の展示が目を惹いた。
紙ジャケットの第1号はSonny Rollinsの『Saxophone Colossus』だったそうだ。なんで『サキ・コロ』だったんだろう?

200紙ジャケットCDが作られるまでの過程の展示。

210紙ジャケ超大作、Santanaの『Lotus』。横尾忠則のデザイン。Miles Davisがコレ(LPね)を手にした時、口の端からヨダレが垂れていたというヤツね。

220そして、LPと紙ジャケCDの比較展示がズラリ。

225v展示してあるLPは植村コレクションからの出展だ。

230vここは変形ジャケット特集ですな。
複製ミニチュア化の技術もスゴイけど、やっぱりこの時代のロックのクリエイティビティには目を見張るものがある。
同時に音楽もビジュアルもすべてこの時代にやりつくしてしまっていることがよくわかる。

24060~70年代の作品群。

250vどれもこれも独創性にあふれた印象的なデザイン。

260忘れてはならないのは、こうしたデザインのほとんどが自力でクリエイトされたワケではないということだ。

270vつまり、音楽あってのジャケット。この頃はいいデザインを生み出す独創性が音楽の側にあふれていたのだ。

280もちろん中には例外も少なくないが、中身のいいものはたいてい外見もよかった。逆にジャケットに惚れてそのレコードを買ってしまうということも十分に成立した。
要するにジャケットは音楽を聴く楽しみのひとつだった。目でも音楽を聴いた時代だった。(一応断っておきますが、この下の写真は10ccの『Original Soundtrack』を除いては個人的に愛着を感じるものは何ひとつありません。こう記しておかないと普段の論旨と矛盾してしまうもんですから…)

310vそれとね、思うのは写真の重みなんだよね。もちろんイラストやタイポグラフィのデザインは例外よ。
昔のジャケットに使用されている写真は魅力的なものが多いよね。BLUE NOTEやPrestigeがいい例。同じジャズの三大レーベルでもRIVERSIDEはそうでもないけど…。PACIFICやCONTEMPORARYも写真が実にいい。
ロックではやっぱりHipgnosisの使う写真が秀逸だと思う。CGなんか全くない時代だからすべて被写体は実物だ。
また、Jim MarshallやNorman Seeff、鋤田正義…スゴイ写真家が撮った写真のジャケットがゴロゴロしてたからね。
今でも有名な写真家の作品がジャケットに使われているのだろうが、どうも違うんだよな、あの頃と…。それは時代の空気感もあるだろうし、もちろん機材の違いも大きい。
しかし、そう感じさせるのはその写真が使われた作品の音楽の影響が一番大きいのではなかろうか…。

320このあたりは80年代以降か…。私にとってのロック暗黒時代。この頃から時のロックをほとんど聴かなくなったっけ。
290v
したがって失礼ながら、ジャケットも特段いいとは思わないし、愛着もまったく感じない。
ナゼなら音楽を聴いていないから…つまりはそういうことだ。
300
会場突き当りのスペース。

330ブルーレイディスク・オーディオの視聴コーナーとなっていた。

350
ソファが置いてあってユックリとその音を体験できるようになっている。John Coltraneの『A Love Supreme』なんかかけちゃうもんだからジックリ聴いてしまった。
記録できる情報がCDよりも格段に大きいため、よりナマナマしい音が再生できるようになるそうだ。
ん~、確かに音はいい。特にElvinのドラムがスゴく前に出て来て、かつJimmy
Garrisonのベースがよく聴こえる。Coltraneのサックスも水が滴るような感じだし、McCoyのピアノも恐ろしく粒立ちがよくなっている。
何のことはない、優れたオーディオ装置で聞くアナログ・レコードだ。最新の技術で原始的なテクノロジーを追及する…なんと贅沢な!それなら魅力的なジャケットをまとったアナログ・レコードのままで十分よかったのにね!

いくら音がよくなってももうソフトは買い換えられないな~。そりゃ音質が優れているに越したことはないが、私なんかに言わせれば「『音楽』を聴いている」のであって「『音』を聴いている」ワケではないのだから。さもなければ40年代に録音されたジャズなんか楽しめない。
「音」にこだわるより、もっといろんなモノを聴きたい派なのだ。もう人生のスタートよりゴールの方が全然近くなっちゃったからね。死ぬまでに1曲でも多くいい音楽を聴いて死んでいきたいと思ってます。

いい音で売り込むのも結構だし、名盤は名盤でいいんだけど、今こそもっと幅広く色々な音楽を
聴いてもらうことを考えた方が将来よっぽど商売になると思うんだけどね…いかがなものか?
ハードとソフトの関係は関係省庁の関係でもあるという話を聞いたことがあるが、レコード会社も大変だ。
とにかく、コレ、音はとてもいいですよ。

340そうそう!最近CDプレイヤーというものが無くなってきてるんだって?!
CDが出てきたのは1982年とか言ってたかな?大ゲサに言えば、たった32年の命?どうすんの、こんなにたくさん作っちゃって~!エジソン泣いてるよ。

私的なことだが、初めての自分のステレオを手に入れ、初めてレコードを買った(John Lennonの『Shaved Fish』)のが1976年、14歳の時かな?それ以前もロックを聴いていたけど、ステレオがなかったのでレコードが買えなかった。

それから大分経って1987年ぐらいに初めてCDを買った。
そういえば、その当時は「○○のアルバムはCDで持っています」なんてのが自慢話しだったよね。まったく笑わてくれるぜ。
その頃はCDが嫌いでね、世の中はもうCDになっていたけど強情を張ってセッセとLPを買い続けていた。
ところがCharlie Parkerの『Royal Roost』という未発表音源がCDだけの発売になりやがって仕方なくCDを初めて買った。
CDプレイヤーを持っていなかったので、プレイヤーを持っていた会社の若い女性(あ、当時は私も若かった!)にカセット・テープにコピーしてもらってそれを聴いていた。

その後、新譜のLPでの発売が減り出して、ほどなくしてCDプレイヤーを手に入れた。
それからはCD一辺倒になったな。何たって取り扱いがラク。
また当時は転勤族だったので、何しろ大量のLPは引っ越しの大きな悩み。そこで、あれほど可愛がっていたLPの一部、3,000枚以上を2度に分けて処分してCDに買い換えた。ああ、アレやっぱり売らなきゃよかったな~。

さて、こうして思い返して驚くのは、もうLPよりもCDとの付き合いの方がはるかに長くなっちゃったんだよね~。
そのCDがもう無くなろうとしているんだからビックリしたのを通り越して恐ろしいわ。

こうしてPCの普及により、どうにもこうにも大変な状況に陥ってしまった音楽パッケージ商品だが、ジャケットの魅力はやはり捨てがたい。
その魅力を後世に伝えるこのイベント、今の日本の音楽シーンにはなくてはならない重要な責務を負っていると感じた。
また、ここのところご無沙汰しているが、Marshall Blogでは植村コレクションのMusic Jacket Gallery常設展を通じてジャケットや音楽の魅力を私的にお届けするつもりである。

Music Jacket Gallery 2014の詳しい情報はコチラ⇒公式ウェブサイト

360(新宿高島屋1階特設展示場にて撮影)

2013年10月18日 (金)

【Music Jacket Gallery】サマー・ジャケット特集<後編>

私の最初のロックのLPは中学2年の時、クラスメイトの「バニラ」というあだ名の友達から600円で買ったJohn Lennonのベスト盤、『Shaved Fish』だった。あの時代、運動部に所属していたバニラがナゼ『Shaved Fish』なんかを持っていたのか、今にして思うと大きな謎だな…。

The Beatlesから始まって、それ以前からロック自体は聴いてはいたのだが、レコード・プレーヤーを持っていなかった。
やがてSONYから「スタジオ・ジルバップ」とかいうレコード・プレーヤーを鳴らすことができるラジカセが発売された。

このラジカセがあれば大仰なステレオも不要ということで、お小遣いを貯めて、ジルバップとダイレクト・ドライブのレコード・プレーヤーを買った。
「プレーヤーは少々高くてもよいものを買った方がよい」というオーディオ好きの友人のアドバイスにしたがい比較的ちゃんとしたモノを購入した。
そのプレーヤー、買ってから37年を経過した今でも使っている。回転数を切り替えるスイッチなどプラスチックの部分がもろけ、内部の金属のパーツがむき出しになったりしてはいるが、回転ムラもそう気にならず、こうした原稿を書く時にLPでしかもっていない音源を聞いたりするのに時折使用している。

ひとたびレコードを聴く装置が手に入ればもうこっちのもの(ナニかだ?)!レコードの数は増え続けた。
やがてLPはCDに姿を変えたが、今に至っても増える一方。

途中で2~3回にわたり数千枚のLPを処分販売したものの、今まで買って来た枚数は軽く「万」は超えると思う。
ま、植村さんには遠く及ばないけどね!

家内からも「よくそんなに聴きたいものがあるわね~」と感心とも呆れともつかない(呆れてるにキマッてるか…)ことを言われるが、予め欲しいモノや、聴きたいものが、私の場合そうあるワケではない。
ただ、最初にある欲望は「出会いたい」ということなんだよね。つまり中古レコード店にいって片っ端からチェックしたい。「今日はコレを探すぞ!」なんてことはまずない。
そして、そこで出会っちゃうんだな~、欲しいものに。その場で聴きたくなっちゃうんだな~。

もちろんその場の出会いを逃さないように普段から勉強をしておかなければならないんだけどね。これがまた楽しい。さすがにあまりにも何の情報もないものを買うのはコワイしね。
ってんで現在も安い中古のジャズのCDを中心にジワリジワリとガラクタコレクションの数は増え続けている。

話しはもどって…そう、「いいものに出会った」なんてよろこんでいる半面、深刻な問題はドンドン大きくなる一方なのだ。
それは「収納」という問題。
私の住まいは古く、LPやCDの体積もさるころながら、質量も大きな問題となる。とくにLP。
以前は転勤族だったため、膨大な数のLPは引越しの際の致命傷となるため、長い時間をかけて積極的にCDに買い換えて来た。
それでも居間で保管していた処分するに処分できない2,000枚を優に超すLPは相当な重量だった。
私はそのLPが放つ「中古レコード屋臭」が大好きだった。何せ家にいてディスク・ユニオンの匂いがするんだからね。快便です。

「快便」というのは、汚い話しだけど、私は中古レコード屋に行くとほとんどと言っていいほど毎回便意を催すんだな~。本屋においてもほぼ同様(不思議と古本屋では催さない)。
こういう人が私の周りでは少なからずいらっしゃるが、これは医学的に原因が解明されていて、どうも自分が最もリラックスできる場所においてこうした症状が出るらしいのだ。
好きなレコードにかこまれてリラックスできる…一番居心地のいい場所が我が家の居間だったのだ。

しかし!2011年3月11日を機に階上の所有物の軽量化を図ることになった!
そこですべてのジャズのLPを泣く泣く階下の倉庫へ納めたのだ。
こ~れがまた腰がヒン曲がりそうな大変な作業だった。
ロックのLPはMarshall Blogを書くために必要な資料としてまだ部屋に確保してある。かくして居間の「中古レコード臭」はまぼろしと消え、便秘体質になったのであった(ウソ)。

他方、CDも5,000枚ともなると、これまたバカにできない大きさと重量になる。アレ、中身はほとんど空気のクセによ~。
そこで、植村さんのご推薦を頂戴し、いわゆるソフト・ケースを買い込んできて同様に少量&軽量化を図った。つまりプラスティックのケースをすべて捨ててしまったのだ。
体積は1/3となり、重量はそれよりも軽量化したハズだ。
あのプラケース、何千枚も集めると信じられないぐらいモノスゴイ重量で、角がとんがってるもんだからゴミ袋に入れると簡単に破って外に出て来てしまう。
しかも、ウチのエリアは同種のゴミの引きとりは1回に3袋までというルールがあるらしく、いっぺんに捨てられない。処分するのにもエラク苦労したわ。
とにかく何のコレクションにおいても「収納」は大きな問題だ。

私程度のコレクションでも「収納」に苦しんでいるのだから、この『Music Jacket Gallery』の主宰者であり、日本屈指のコレクターである植村さんときたら日夜「収納」との戦いであることは間違いない。買わなきゃ何の問題も起こらないんだけどね…わかっちゃいるけど止められない!ってか?

植村さんのコレクションをもう一度見てみよう⇒The Amazing Uemura Collection


とりわけ収納にご苦労なさっているのはボックスものだそうだ。
レギュラーのCDは形が統一されているので積んだり詰め込んだりしやすく、コンパクトに収納しやすいが、ボックスものは形状がまちまちで、中には面妖な形のパッケージもあり、積み上げるにしても「テトリス」状態となる。
ま、収納できなければ買わなきゃいいんだけどね…わかっちゃいるけど止められない!ってか?

そこで今回のガラス・ケースの立体陳列は、コンパクトなサイズのボックスにCDを巧妙に収納する「コンパクトCDボックス」が特集された。
コレ、一種の撞着かもしれないね。CDボックスというのは壮麗で大仰なパッケージにすることで商品の魅力を高めるワケだから…。それをコンパクトな商品にしてしまうということは案外いい度胸なのかも知れない。
では…。

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● GRATEFUL DEAD / WINTERLAND 1973: THE COMPLETE  RECORDINGS (RHINO 2008)
2011年の72枚組CD-BOX、2012年の14枚組DVD-BOXという凄まじい発売ラッシュが続いたGrateful Deadの1973年11月9日から11日までのウインターランドでの全公演を完全収録した9枚組CDボックス。
各3枚のCDを収納した3枚の紙ジャケを並べると大きなポスターになる特殊なパッケージ。ポストカード仕様のコンサート・ポスターのミニチュア版とピンバッチも同梱されている。
70年代までのDeadの正規盤は比較的揃っているが滅多に聴かないな~。でもDead系商品のデザインはなにかといいよね。
ある知人が熱狂的なDeadのファンの方に「72枚組を聴くこと」を「なかなかの荒行」と表現していたのを横で聞いていて吹き出してしまった!

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● VARIOUS ARTISTS / STIFF RECORDS BOX SET (DEMON 1992)
Elvis CostelloやIan Duryなど個性的なアーティストを輩出させた英スティッフ・レコードの作品を網羅した4枚組CDボックス。
レーベル、ブックレット、パッケージ に至るまで、あくまでもアナログ感覚にこだわったデザイン・ワークがスティッフというレーベル・ポリシーをうまく表現している。

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● NEW TROLLS / NEW TROLLS SINGLE BOX (ARCANGELO 2007)
イタリアン・プログレッシヴ・バンドとして今日も絶大な人気を誇るNew Trollsの再来日記念で発売された10枚組のシングル・ボックス。
1967年から72年までに発売された17作のシングル盤の中から12作を美麗なスリーヴと共に歌詞を掲載した内袋までを再現した復刻度は見事なものだ。解説もコンパクト・サイズなので中高年の方には読みにくいかもしれないが、豆本のようで何とも可愛らしいもの。
この再来日公演(かな?)を観に行った。日本から参加した大ストリングス部隊との共演が見事だった。
実はNew Trollsはゼンゼン通過していないので1曲も知らなかったのだが十分にコンサートを楽しめた。この時代のイタリアン・プログレの音楽レベルの高さは恐るべきものだ。
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● J.A.シーザー / 天井桟敷音楽作品集(DIW 2008年)
1967年に寺山修司が設立した劇団天井桟敷の音楽を担当していた孤高の音楽家、J.A.シーザーの貴重な歴史的音源を集大成した5枚組CDボックス。
5枚のCDを見事にコンパクトに収納した特殊パッケージもさることながら、貴重な台本、写真や絵などを載せた豪華ブックレットも見事なデザインワークだ。(ディスク・ユニオンのみの購入特典である未発表音源CD付き)
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● MILES DAVIS / THE COMPLETE COLUMBIA ALBUM COLLECTION (SONY BMG 2009)
ジャズ界の帝王Miles Davisのコロンビア時代の全作品を収納した53枚組CDボックス。パッケージ・デザインは、各アルバム・ジャケットをあしらったスタイリッシュ(ソニーのハウス・デザイナーの特徴)なもので、各アルバムは簡易型の紙ジャケット仕様になっている。ボックスの大きさや軽さなどを考慮した見事なエコ・パッケージといえる。
コレ、欲しいんだけど中身は単体でほとんど持ってるからな~。
これに「Plugged Nickel」とか「Jack Johnson」とか昨日紹介した「Celloar Door」とかの「Completeホニャララ」、そこにエエイ「Blackhawk」や「Carnegie」も組み入れて100枚組で再発売ってのはどう?
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● FANNY / FIRST TIME IN A LONG TIME THE REPRISE RECORDINGS (RHINO HANDMADE 2002)
1969年に結成された世界初の自作自演のガールズ・バンドと知られるFannyがリプリーズ・レーベルに残した音源を完全収録した4枚組CDボックス。
JuneとJeanというMillington姉妹を中心とする4人組は、Richard PerryやTodd Rundgrenなどのプロデュースによる傑出した作品を世に送り込み、今日また再評価されている。
完全限定盤にこだわったライノ・ハンドメイドならではの独創的なパッケージ。
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● VARIOUS ARTISTS / THE LOWEST FORM OF MUSIC L.A.F.M.S.1973?1994 (RRR RECORDS 1995)
Los Angels Free Music Societyという名で、様々な前衛音楽集団を束ねるRRRレコードの創立20周年を記念して発売された10枚組CDボックス。
こうした特殊なインディ音源はなかなか収集されにくいが、こうしたボックスは貴重な資料と共にレーベルの全貌が把握できる点が肝だ。

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● VARIOUS ARTISTS / THE CHESS STORY 1947-1975 (CHESS 1996)
第二次大戦直後にChess兄弟によって設立された米チェス・レコードの15枚組CDボックス。
チェス・レコードはブルース、R&B、ソウルといったルーツ・ミュージックを中心にアメリカの音楽シーンをリードしてきた。
貴重なブックレットの資料と共に、15枚目のCD-ROMにはチェスが発売してきた全カタログが網羅されている。そして、パッケージは多くのCDをコンパクトに収納する理想的なものとなっている。
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● NINA SIMONE / FOUR WOMEN : THE NINA SIMONE PHILIPS RECORDINGS (VERVE 2003)
2003年4月にパリの自宅で70年の生涯を閉じたNina Simoneの追悼盤。
ジャズというジャンルを超えた幅広い音楽性はその独特なヴォーカルとも相まってコアな人気が高く、全盛期である1964年から66年までの全オリジナル・アルバムを4枚のCDに集大成したもの。
サック・ケースも含めたお洒落なデザインワークで作られたコンパクトなパッケージには思わず所有欲をそそられる。
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●BEACH BOYS / U.S. SINGLE COLLECTION THE CAPITOL YEARS 1961?1965 (CAPITOL 2008)
夏の定番アーティストの筆頭格であるThe Beach Boys前期のアメリカ盤シングルをピクチャー・スリーヴに収納した16枚組CDボックス。
箱自体は硬質の段ボールで作られているが、ナゼか箱の一部には本物の木が使用されている。おそらく紙と木という素材の組み合わせによってエコロジー感を表現したのであろう。
同梱された80ページの特製ブックレットのカヴァーは砂浜を表現している。
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● KEITH RICHARDS / TALK IS CHEAP (VIRGIN 1988)
Keith Richardsの初ソロ・アルバムの初回限定生産パッケージ。
Keithのキャラクターであるツヤ消しブラックの骸骨の缶に現在ではほとんど発売しなくなった8センチCDが3枚収納されている。アルバム・クレジットなどが載った丸型のブックレットも凝った作りだ。
この小さいCD、昔はアダプターをひっ付けてたんだよね。アダプターつきで世界で最初のシングルCDとなったのはFrank Zappaの「Peaches en Regalia」?
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● VARIOUS ARTISTS / BEARSVILL BOX SET (BEARSVILL 1996)
聖地ウッドストックで1969年に設立された名門ベアズヴィル・レーベルの作品を集大成した4枚組CDボックス。
CDの収納トレイと腰巻き帯を付けた単行本仕立てのスリムなパッケージが独創的だ。シリアル・ナンバー・カードを封入した完全限定盤で、日本独自の企画・発売。
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…と、これらのコンパクトなパッケージのおかげでうまく収納できました。
でもね、収納できなければ買わなきゃいいんだけどね…わかっちゃいるけど止められない!ってか?

(敬称略 ※協力:本項解説文原本執筆・植村和紀氏、金羊社・奥平周一氏 )

Music Jacket Gallery展示の詳しい情報はコチラ⇒金羊社MJG常設展

※本展示は2012年9月に終了しています。現在の展示内容は上記の金羊社ウェブサイトでご確認ください。
















































      







































2013年10月17日 (木)

【Music Jacket Gallery】サマー・ジャケット特集 <中編>

いつもは3本立の【MJG】レポート。チョット今回は取り上げるアルバムの数が少なかったので2本立てにしようかと思った。

それでも存外にボリュームが少なくなりそうだった。
わかってますよ…どうせみんな言うんでしょ?「ナンダ、今回は短いじゃん!」って。
わかりましたよ、「こっちも意地だ!」ってんで、シャカリキになって<前編>を書いているうちにアッという間に長くなってしまった。
すると今度は、2本立てにしてレコードの解説全部を<前編>に盛り込んじゃうと長すぎるので、強引にチョン切って<中編>をこうして設けてみたものの、見事にボリュームの配分がおかしくなってしまった!つまり<中編>が短すぎてしまったのだ。
そこで大変身勝手ながら植村コレクション以外のアイテムも積極的に盛り込んで調整してみた。(植村さん、ゴメンナサイ!)
でも、本題に関連していることですから許してチョーダイ。
ではさっそく…。
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このジャケット昔から好きだった。ものすごく暑苦しい感じがする。メキシコ?今こうして改めて見ると、初期のファミコンの画面みたいだ。
「Yellow Roses」と「Chloe」の2曲がいいナァ。
特にこの「Chloe」という曲はJoe Passが1970年の『Intercontinental』というアルバムで演奏していて、それがまた実にいい。

でもRy Cooderってどうもなじめない。
『Into the Purple Valley』だの『Paradise Lunch』他、有名なアルバムは持っていて、一応は聴いているんだけど…。
ま、ブルースをして熱心に聴くことのないオコチャマな私のことだからアメリカン・ルーツ・ミュージック自体が苦手なのだろう。ジャズは大好きよ。
なのでRy Cooderについて語る資格はない。「んじゃ取り上げるな!」と言われそうだけど、このジャケットは好きだから…。
でも、Ry Cooderってものすごく支持層が厚いよね。聞いた話では、ひとたび来日して全国を回ると会場の手売りだけでCDを3,000枚ぐらいさばいちゃうとか…。
きっとライブに感動して、終演後買うお客さんが多いんだろうね。
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Hipgnosisの作品ですな。
String Driven Thingは1960年代から活動するバイオリンを前面に押し出したスコットランドはグラスゴーのフォーク・ロック・バンド。
4枚目のアルバム『Please Mind Your Head』。
コレは持っていないんだけど、一作前の『The Machine That Cried』と本作を挟んだ『Keep yer 'and on it』は持っている。前者は魚、後者は歯磨き粉のイメージを使ったHipgnosisの有名なジャケット。
以前どこかで内容に関して「別段おもしろくない」と書いたような記憶がある。で、普段はまったく聴いたりはしないのだが、今回この原稿を書くに双方を聴き直してみた。
なかなかよろしいな。前言を撤回します。
やっ ぱりGraham Smithのバイオリンが効いている。この人は後にVan Der Graaf Generatorに加入にするが、イギリスの有名な指揮者、John Barbirolli(バルビローリ)の傘下にいてキチンとクラシックを学んだ人だそうだ。スキンヘッドのゴツイ巨漢で、そのルックスとの差がまたおもしろい。

メ ンバーがガラリと変わったため、『Keep yer 'and on it』はサウンドも大幅に変化してビートルズの「Things we Said Today(今日の誓い)」なんかをドッロドロに演ってたりしてて存外におもしろい。また、「Old Friends」という5/4拍子の超ポップチューンも心地よかったりする。
いずれにせよ単なる「フォーク・ロック・グループ」として切り捨てるのはもったいないことがよくわかった。

以前、Led Zeppelinの『House of the Holy』のジャケットに触れたことがあったでしょう。
読んでない人はチョットこれを読んでみて⇒緊急特集!<追補> Hipgnosis Collectionと下町のヒプノシス

それでJimmy Pageがムカっと来てボツにしたデザインがコレなんだそうだ。
ま、コレだけ見てりゃHipgnosisだし、まぁどうってことないんだけど、これが『Houses of the Holy』になっていたかと思うとゾッとするよね。
あの重厚なロックがひと回りもふた回りも軽くなっちゃうような気がする。やはりジャケットというものは重要なものなのだ。

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この項を書くのに久しぶりにザッと映画『ウッドストック』を観たんだけど、主宰者のマイケル・ラングがインタビューに答えるシーンで驚いてしまった。

このフェスティバルの経費を訊かれ、200万ドルと彼は答える。当時の200万ドルと言えは当時の為替レートで換算すると7億2千万円。

開催された1969年はアポロ11号が月に行き、東大の入試が中止になった年。流行語は「オー・モーレツ」、「アッと驚くタメゴロウ(ゲバゲバですな)」、「はっぱふみふみ」に「黒猫のタンゴ」だよ。「なつかしい~」と知っている自分の歳にもはや感謝するわ。

大卒の初任給が31,830円。国鉄の初乗りが30円。ラーメンが150円(ウチの方はもっと安かったと思う)、かけそばが80円の時代。

今の貨幣価値につすとザッと30億円ぐらいか…?それでこの若者が「トントンならありがたい」と軽く言ってのける。スケールのデカイ話しだ。

他のシーンではコミューンに暮らすという若いカップルがインタビューを受け、彼氏が言う。
「ナゼ20万も30万も60万も70万もの人がここに集まっていると思う?音楽を聴きに来たていると思うかい?」「いいや、音楽は重要ではないんだよ。みんな生き方を探しに来ているんだ」

その重要でない音楽を共通項に50万人もの人間が集まるなんてことはやはり尋常ではない。50万人といったら赤ちゃんからお年寄りまで、すべての宇都宮市民がウッドストックへ行っちゃったようなもんだ。
ベトナム戦争などの社会的背景があって、今と世情があまりにも異なっていたことは百も承知だが、やはりそれだけ音楽に力があったことは論を俟たない。

ウッドストックについては色々と書きたいことがあるが、キリがないのでそれはまた別の機会に譲ることにする。

さて、この『Woodstock Two』。これは映画に使われていない曲を収めた2枚組アルバム。映画に関係ないので入手する気が起こらず、かなり後年になってCDでゲットした。
私にとって「ウッドストック」は映画の『ウッドストック』なのだ。

なるほど、3枚組の『Woodstock』は「サウンドトラック」をうたっているが、少なくとも私が持っている『Woodstock 2』のCDには「Soundtrack」の表示がしてないわ。

ウッドストックが開催されたのは8月だから自然と今回のテーマ通りの「夏」になるね。

向こうは小さい子をこうして平気で素っ裸にしちゃうんだよな~。
ウンコをするところも含めて、子供が映し出さてJohn Sebastianが歌う「Younger Generation」も忘れられないシーンだった。「助けて!歌詞を忘れた!」
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これは3枚組LP『Woodstock』の内ジャケ。LPのサイズはご存知30cm(12インチ)。それが鏡開きになるこのジャケットの全幅は90cm以上になる。壮観ではあるまいか?音楽配信にコレができるかよ!

ウッドストックの思い出についてはShige Blogにも綴っておいた。是非ご覧頂きたい。
<Shige Blog>
我が青春のウッドストック <前編>
我が青春のウッドストック <後編>

Th_img_1256名盤が多い中期までのWeather Reportの作品の中でも名盤の誉れ高い『Black Market』。やっぱりタイトル曲のイントロを聴くとウキウキしちゃう。この録音ではJoe Zawinulのキーボードがあの有名なBbのリフを弾いているが、ライブ盤『8:30』ではPeter Erskineのドラム・フィルに導かれたJacoのフレットレス・ベースが疾駆する。コレ、初めて聞いた時。鳥肌が立ったっけナァ。
とびきり派手なそのライブバージョンも最高にカッコいいが、このスタジオ・バージョンもスキ。

このアフリカ調のテーマあるでしょ?これ完全にペンタトニックでできているんだけど、コピーしてギターで弾こうとするとなかなかに手ごわい。
ギターはペンタトニック・スケールに滅法強い楽器(ペンタトニックでできているロックフレーズといった方が正確か…)のハズなんだけど、それは視覚面で音列を取りやすいから。

Zawinulのような才人が作ったメロディともなると、アララ不思議、実に弾きにくい。
決して複雑なフレーズじゃないんだけどね。このあたりに鍵盤楽器を学んだ人とサオを握ってペンタトニック一発で勝負してきた人の違いが表れる。

Jacoはこのアルバム中、2曲に参加している。その他の曲でベースを弾いているのはAlphonso Johnson。ドラムはChester ThompsonとMichael Walden。それにパーカッションでAlex AcunaにDon Aliasという目もくらむようなスゴイ面々だ。

この頃のWeatherはヨカッタ。この後もジャズ専門誌でずいぶん長いこともてはやされていたけど、私が夢中になって聴いたのはせいぜい『Heavy Weather』までかな。

それにしてもあの頃のフュージョン・ブームってのはなんだったんだろう。時間とともにこれほど形骸化してしまった音楽ジャンルも珍しい。
やっぱりファッション感覚で展開する音楽は熱するのも早いけど、冷めるのも早いナァ。
何となくイナゴの大群が畑を全部食い荒らしてしまったあとのような…。

「フュージョン」ってのは昔は「クロスオーバー」なんて呼ばれてたよね。その前は「ジャズ・ロック」かな?
アレなんだって「クロスオーバー」って言葉が使われなくなったんだろう?いつしか、「フュージョン」という言葉に定着した。高校の時だったかな?私が「クロスオーバー」という言葉を口にすると「今、フュージョンっていうんだぜ」なんて友達に正されたことがあったな。

きっと「フュージョン」という言葉を使った方がレコード会社が儲かる仕組みだったんだろう。

私は「ジャズ・ロック」が大好きだ。でも「クロスオーバー」は苦手だった。でも「フュージョン」はいいものはよかった。…ええい、もう何でもいいわい!

でもね、思い返してみるとスゴイよ。高校ぐらいの時、高中正義ブームが吹き荒れた。あのパイオニアのCMの効果?私はサディスティック・ミカ・バンドが大好きだったので、まったく受け付けなかった。ハード・ロック一本やりだったし。

ところが、その流行りっぷりたるや、今の音楽事情を鑑みるに想像を絶するもので、高校生のバンド・コンテストがあると複数のバンドが「なんとかラグーン」ってのを演ってたものだ。
隔世の感があるでしょ?

どうだろう、この手の音楽は1980年ぐらいがピークだったのじゃないかしらん?
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Dollar Brandは南アフリカのジャズ・ピアニスト。『African Piano』というソロ・ピアノのアルバムが有名。5/4拍子でポツリポツリと弾くサマはまさに他のジャズのソロ・ピアノ・アルバムと一線を画す。なかなかいいものだ。
とうよう先生はこの手法の発想はカリンバと解く。なるほどね。


しかし、今まで考えたことなかったけど、「ダラー・ブランド」なんてバンドの名前みたいだね。しかもパンクっぽい。お金第一の資本主義に一石を投じる!…みたいな。
それにしても上の『Black Market』にジャケットの風合いが似てるね~。
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『LIVE-EVIL』。左から読んでも右から読んでも「Live-Evil」。
アコースティック・マイルスは当然だが、私はエレクトリック・マイルスも大好き。『In a Silent Way』『At Fillmore』、『Jack Johnson』なんかをよく聴いた…というか今でも聴いてる。
それと『We Want Miles』も好きだった。この辺はリアルタイムで聴いたからね。30年も前か…。

で、なぜ『We Want』が好きだったのかというと、ひとえにMike Sternがカッコよかったから。
『The Man with the Horn』の「Fat Time」のソロもコピーした。
『We Want Miles』にはMilesが81年に来日した際の音源も収録されているが、アルバム全体としてはMike Sternのソロがカットされて少なめだったのがチョイと不満だった。
ところが、ラッキーなことにこの1981年10月4日の新宿西口広場の演奏が丸々FMでオンエアされたことがあって、エアチェックしたテープでMike Sternのソロをさんざん楽しんだ。

そして後年、その音源が『Miles! Miles! Miles!』という2枚組アルバムになってリリースされた。
この日のMilesは体調がすこぶる悪く、よってこのアルバムの評価も決していいものではないようだが、んなことは関係ない。何しろノーカットでMike Sternのソロがタップリ聴けたからね。

この頃のMikeは音も素晴らしかった。ギンギンにコーラスをかけてクリーンで弾くキテレツなヴォイシングや、これまたコーラスを深くかけたクランチ気味のストラトのトーンで弾かれるウネウネのソロはもうタマらなかったね。デブっちょに長髪というルックスもカッコよかった。
この時使用していた白いストラトは不幸にも盗まれてしまったとか。盗難の対象となるほどの名器だったワケだ。

その後、Milesの元を離れて、Steps Aheadの頃なんかは、「Fat Time」の見る影もないほど悲惨な、昔の高校生が弾くリードギターのようなサウンドになってしまってガッカリした。こんなに耳のいい人がどうして無頓着にもあの音でよしとしたのだろう?

さらに、日本製のギターに変えた頃には、Blood Sweat &TearsやTiger's BakuやMilesのバンドの頃のキラメキは失せてしまっていて興味を失ってしまった。

でも、久しぶりに『Miles! Miles! Miles!』なんて聴くとやっぱりカッコいいわ。
そうそう、この来日の時、Mikeは香津美さんとプライベートでジャムったそうで、その時に演奏した「枯葉」なんかの音源がこの世に存在するらしい。聴きて~!

本題とは関係ないけど、MJGでMike Sternに触れる機会なんかないと思って書きこんでしまった。
で、話しを戻して…70年代のエレクトリック・マイルスの中でもとりわけ好きだったのはこの『Live-Evil』だった。

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またジャケットのイラストが素晴らしいったらありゃしない。
ドイツ出身のAbdul Mati Karwein(アブドゥル・マティ・クラーワイン)という人の作品。エグイよね~。一体どういう感覚を持っているんだか…。
内容との関連性は皆無だ。また、黒人の裸の妊婦さんが描かれていてるということだけで、「夏」というイメージは特段ないといって差し支えないでしょう。

このMati Karweinという人は数多くのジャケット・デザインを手がけている。Milesでいえば『Bitches Blew』がそうだ。似てるでしょ?

他にもEarth Wind & Fireの『Last Days and Time』、Gregg Allmanの『Laid Back』、Joe Beck(Jeff Beckじゃないよ)の『Beck』、Santanaの『Abraxas』などなど…マーブロ読者におなじみのアルバムならTempestの『Living in Fear』ってところか?(Ollie Halsallのゴーゴンの方ね)

Hermeto Pascoal y Grupoの『Só Não Toca Quem Não Quer (邦題:やらないのはやりたくないだけ⇒これメッチャいいよ)』もそう。
Hermeto Pascoalは「南半球のFrank Zappa」として愛聴している。この『Live-Evil』に収録されている「Nem Um Talvez」という曲はHermetoの作品で自身もこのアルバムに参加している。

Hermetoといえば先日、仲良しの日系ブラジルの若い女性と家内とで食事をしたんだけど、話しが音楽に及んだ時、彼女が「エルメート・パスコアール」をごく当たり前に知っていたのにはビックリ!
「え、ブラジルではみんな知ってますよ~」って。Milton Nascimentoも当たり前。でもEgberto Gismontiは知らなかった。ブラジル音楽に関しては、あんまり突っ込むと間違いなくボロが出るのでここらへんで留めたが、日本でパスコアールを知っている若い女性なんてまずいないでしょう?さすがブラジ~ル!

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さて、もう少し脱線しましょかね。
下はJackie McLeanのBlue Note時代後期の名盤『Demons Dance』。ひと目でMatiの作品とわかるでしょ?
このアルバムの1曲目には「Sweet Love of Mine」という曲が収録されている。哀愁を帯びたメロディが心に突き刺さる必殺の名曲だ。作曲は人気トランペッターのWoody Shaw。

一方、日本を代表するベーシスト鈴木勲さんの代表作に『Blue City』というアルバムがある。このアルバムには若き日の香津美さんが参加していて「Body and Soul」なんかで涙もののプレイを聴かせてくれるのですわ。
でも、ここでの話題は香津美さんではなくて、収録されている「45th Street」という曲。
コレ、Shawの「Sweet Love of Mine」と寸分たがわぬまったく同じ曲なのだ。超名曲だけにはじめて聴いた時はビックリした。だって、似てるどころか「同じ」なんだもん。

真相は「共作」ということらしいが、Woody Shawが勝手に自分の名前をクレジットしたとかいう説も…。数年前にテレビのナンカの番組で、そのあたりの曲の真相について取り上げていたが、「友情物語」に仕立て上げられていた。内容は忘れちゃった…。

ま、なにはともあれ、「Sweet Love of Mine」、名曲なのでロック一辺倒の人にも聴いてみて欲しい。それにしてもこの『Demon's Dance』のジャケもかなりエグイぞ!

Indexで、ようやく話しは『Live-Evil』に戻って…え、まだやってんのか?って?もうチョットね。
この2枚組のライブ・アルバムが好きだったそもそもの理由はJohn McLaughlinが参加しているから。
Milesは1970年の12月16~19日にかけてワシントンDCの「セラー・ドア」というクラブに出演した。その時の演奏を大幅に編集した音源にスタジオ録音の作品を足して出来上がったのが『Live-Evil』。

その後、発売されたのが下の『The Cellar Door Sessions 1970』という6枚組のボックスセット。これには4日間の演奏の約半分の演奏が収録されている。

ま、6枚通して聴くなんてことは精神的、肉体的に私にはまず不可能で、「今日はコレ」…とチビリチビリ聴いて楽しんでいるが、実はMcLaughlinが出演しているのは最終日一日だけだったんだって。
NYCに来ていたMcLaughlinをMilesがワシントンDCまで呼びつけて弾かせたらしい。
この頃のMcLaughlinのアンプはMarshallだったハズ。
『Live-Evil』らのCDもMarshallで弾かれていれば聴く楽しみも倍増するでしょ。でも、昨今の日本のライブハウスじゃあるまいし、そんな小さなジャズ・クラブにMarshallなんか置いてあるワケないよね。じゃ、まさかNYCからワシントンDCまで飛行機で運んだのかな?それも考えにくい。
じゃ、どうするか…「現地でレンタルした」ということにしておいて、この名盤もMarshallが演出している、ということにして愛聴し続けることにしよう。

『Cellar Door』の方は『Live-Evil』では大幅にカットされたkeith Jarrettのソロが入っていたり、絶好調のJack DeJonetteのドラムがアホほどすごかったりで、別にMacLaughlinがのべつ登場しなくても十分に楽しめる。でも、『Live-Evil』がカッコいいのはMcLaughlinのおかげというのも確かなのだ?

昔はJohn McLaughlinを「ジョン・マクローリン」なんて表記していた。現在は「ジョン・マクラフリン」に落ち着いているが、英語圏の人は「ジョン・マクラッグリン」と発音するので覚えておこう!イヤ、別に覚えなくてもいいか。

それにしてもこのボックス・セット、『Live-Evil』のジャケに比べたらあまりにも面白くないデザインだな~。

Th_img_1291ナンカこの辺になってくると「夏」特集だか「お色気」特集だかわからなくなってくるが、ま、冬はそう裸になることもないだろうから服を脱いでいるだけでも「夏」ってことにしちゃえ!

The Slitsというバンドの『Cut』という1979年のアルバム。UKチャートの30位に食い込んだとかいうけど知らんな~。そして、2004年に「The 100 Greatest British Albums」というナンカの人気投票でこのアルバムが58位になったそうな。ホンマかいな?
全イギリス制作アルバムの中で58位になるって相当スゴイよ。
ま、このジャケットが奏功しているとは思わないけどね。
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これは中学生の時、よく聴いた。中学生にはジャケットも十分に魅力的だったが、Roxy Musicの音楽の方がもっと刺激的で魅力的だった。
NHK FMの渋谷陽一の番組で『Viva! Roxy Music』が新譜として紹介され、「Out of the Blue」がかかった瞬間「コレだ!」と思った。
Bryan Ferryの歌やAndy Mckayのオーボエ、Eddie Jobsonのヴァイオリンに何かすごくミステリアスな雰囲気を感じたんだよね。
すぐ翌日、学校帰りに石丸電気レコード館に行った。アッという間に既発のアルバムは全部揃えたが、中でもこの『Country Life』がお気に入りだった。
何でもタイトルはイギリスの田舎暮らしの雑誌「Country Life」からとったとか…。


夏だね~。このアルバムが発表されたのは1974年。このジャケットデザインは当時、アメリカやスペインやオランダで問題になり、アメリカ盤なんかは2人の女性なしの葉っぱだけのヴァージョンで発売された。それじゃつまんないじゃんね~。
このジャケットのデザインはBryan Ferry自身。ポルトガルでこの2人のドイツ人に頼みこんでジャケットに登場してもらった。
収録されている「Bitter-End」という曲は途中ドイツ語で歌われるが、このどちらかの女性がBryanの英語詩をドイツ語に翻訳したんだって。

もうひとつ…2曲目の「Three and Nine」。これはイギリスの複雑な通貨制度を歌にしたもの。
今は100ペンスが1ポンドでドルやユーロと同じだから何の問題もない。
ちなみに「ペンス」は「ペニー」の複数形だから1/100ポンドを示す時は単数形にもどって「1ペニー」になる。向こうの人はペンスのことを「p(ピー)」って呼んでいるけどね。「サーティ・パウンド・フィフティ・ピー」とか。
さて、イギリスの通貨制度には1971年までポンドとペンスの他にシリングってのがあって、これが12進法と20進法が混在するメッチャ複雑な通貨システムだった。実際、歌の中に「Decimal Romance」なんて言葉も出て来る。
1ポンドが20シリングで1シリングが12ペンスだったという…。だから1ポンドは240ペンスになる。これはややこしい!
で、生まれて初めてMarshallの工場に行った時、どうしてもこの辺のことが知りたくて、今の社長の奥さんのEllieに質問した。
「そんな昔の話し知らないわ!」と笑いながら「ホント、あれは難しかったのよ」と言って、わざわざ1971年以前に刊行された本の裏表紙に印刷されているシリングの値段表示を見せてくれたことがあった。
ホント、イギリスはおもしろい。
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こちらは1973年、Roxyのサード・アルバム『Stranded』。
ジャケットの女性は当時のBryan FerryのガールフレンドでPlayboy誌の1973年の「Playmate of the Year」となったMarilyn Coleという人。
『Viva!』以前のアルバムでは、一番聴かなかったのはこれかなぁ。なんか暗くてね~。「A Song for Europe」なんて曲を聴いているとジトっと疲れてくる。
でもUKチャートNo.1を獲得したんだってさ。

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久しぶりに引っ張り出して来てライナーノーツを見る。
「アイランド・レーベルに関するお問い合わせ」なんていってレコード会社の担当者の名前と電話番号が出ている。
さらに「ロキシ―・ミュージック・ファン・クラブの問い合わせ」にはファンクラブの会長かなんかの個人宅の住所と電話番号が書いてある。
ノンビリしてたね~。個人情報の保護もヘッタクレもありゃしない!明らかに今より悪人が少ないイイ時代だったとしか思いようがない。
Th_img_1270これは展示にはない私物でござるが、Roxyの5枚目のアルバム『Siren』。人魚だから裸で当然なんだけど、「夏」ということで勝手に足しておいた。
このアルバムも大好きだった。特に「She Sells」。いかにもこの当時のRoxyっぽくてヨカッタ。
モデルは当時Bryan Ferryのガールフレンド、Mick Jaggarの恋人としても有名なアメリカのモデルJerry Hall。
ニューキャッスル大学(マーブロではスッカリおなじみのSteve Dawsonのお譲ちゃんのEmmaは先ごろこの大学の文学部を卒業した)で美術を学んでこだわりが強いのか、Bryanはここでもジャケット・デザインのアイデアを提供している。
Bryanはテレビのドキュメンタリーで見たWalesのAngleseyという溶岩でできた海岸をこのジャケットのロケ地に選んだ。
Sirenというのはギリシア神話のキャラクター(?)で、美しい歌声で船乗りを誘い寄せ、船をナンパさせた半人半鳥の生みの精だ。
半分鳥なんだって。このJerry Hallはどう見ても半人半魚だよね~。アレンジしたのか?

ちなみにこの船をナンパさせる話しだけど、吉村昭の小説にまったく同じ発想で、すさまじく憐れな話しがある。『破船』という作品ともうひとつ…短編だったな、タイトルは忘れた。
この『破船』というのはスゴイよ。オススメです。

Th_img_1266今は海賊盤というと正規盤と見まごうような立派な製品ばかりだけど、昔はコレが当たり前だった。
白いジャケットに色紙にコピーされた内容を記す紙っペラが一枚。当然盤のレーベルはのっぺらぼうだ。
音質もひどいものが多かったが、この75年のアメリカ・ツアーの海賊盤は音も比較的よくて何回も聴いた。『Siren』のレコ発ツアーだったのかな?選曲もすこぶるよろしい。
最後の「Re-Make/Re-Model」の演奏がすさまじい。ベースはJohn Wettonかな?


ジャケットもオフィシャルのアルバムに合わせたのだろう、エロチックなものになっている。

Th_img_1262こっちはEnoが在籍していた頃の海賊版。ベースはQuartermassのJohn Gustafsonだ。
これはただライブを隠し撮りした音源だけでなく、後に『Viva!』にライブで収録されることになる「Pajamarama」のスタジオ・バージョンなんかも収録されている。
なつかしいな~。
アジもソッケもないジャケットだけど、ナント言うか、風合いを感じさせるではあ~りませんか?

Th_img_1265そして、1979年にRoxy来日!
当然観に行った。武道館の1階席だったっけ。
4年ぶりにリリースしたスタジオ・アルバム『Manifesto』が気に喰わなかったからかもしれない。あんまりおもしろくなかったという印象。とにかくすごく音が悪かったような気がする

ちょっと調べてみると私もこの年は忙しくて、4月にトッド(サンプラ)とロキシ―(武道館)、5月にブルー・オイスター・カルト(厚生年金)とナザレス(渋谷公会堂)、それにUK(青年館)、6月にスコーピオンズ(サンプラ)とUFO(サンプラ)に行ってるわ。
ガールフレンドもいなかったので、とにかくお小遣いはすべてレコードとコンサートと化したね。

このロキシ―よりも77年に単独で来日して中野サンプラザで観たBryan Ferryの方が何倍もよかった。
何たってメンバーがすごくて、Chris SpeddingにPhil Manzanera、Paul ThompsonにJohn Wetton。Andy McKayもいたような気がするな。メンバーはほとんどRoxyだったけど、おもにBryan Ferryのソロの曲を演奏した。

この年のこのロックバカ少年(もしくはバカロック少年)の行動を顧みると…1月にエアロの初来日(武道館:前座はBow Wow)、3月にキッス(武道館:前座はBow Wow)、4月にローリング・ココナッツ・レビュー(晴海貿易センター)、6月にブライアン(サンプラ)とロイ・ブキャナン(後楽園ホール)、9月にイアン・ギラン・バンド(武道館)、11月にサンタナ(武道館:後出)に行ってる。15歳の時だ。

残念ながらDeep PurpleもLed ZeppelinもJeff Beckも見ることができなかった。エラそうなことは言えない中途半端な世代なのさ…もう5.6年早く生まれていればナァ。
でも、プロギタリストになることを夢見ていた。いい時代だった。

下はRoxy来日公演のプログラム。Ws_img_1045_2ちょっとRoxyをやったついでにサディスティック・ミカ・バンドをやっておこう。
最近は世界も狭く小さくなって、日本のバンドがホイホイ海外へ出かけて演奏するようになった。

一方、ミカ・バンドはアニメやゲームの力も借りずに40年も前に自分たちの音楽だけで本場で勝負した日本で最初のバンドだ。
ホラ、おなじみの『黒船(Black Ship)』も今は亡き加藤和彦さんとミカさんが涼しそうに空を飛んでいて季節は「夏」を感じさせるでしょ?冬じゃ寒くてこうは飛んでいられない。Bs1972年、ロンドンのケンジントンに移り住んだ加藤和彦は当時隆盛を極めていたT-RexやDavid Bowieに大きな影響を受け、日本で同様のバンドの結成に取りかかる。
加藤和彦、ミカ、つのだ★ひろ、高中正義というオリジナル・メンバーで1973年に「サイクリング・ブギ」をリリース。その後、ドラムが高橋幸宏に代わり、小原礼が参加しアルバム『サディスティック・ミカ・バンド』を発表。このアルバムはイギリスでもHarvestレーベルから発売された。

加藤さんはそのアルバムをMalcom McLaren(New York DollsやSex Pistolsの仕掛け人)に送ったところ、それがBryan Ferryの手に渡った。

そして、Chris Thomasのプロデュースのもと、『黒船』がイギリスでレコーディングされる。Thomasはその時にプロデュースしていたBad Fingerの『Wish You Were Here』にミカをナレーションで参加させた。「Know One Knows」という曲の中で、Pete Hamの歌詞を日本語に訳したものだ。この曲は日本でのみシングル・カットされた。
ナレーションは「誰も知らない、誰も知らない」と極単純なものだが、日本語などまったくわからないであろう英語圏の人たちにとってこのパートはすごく印象的なものであっただろう。
さすがChris Thomas。
久しぶりに聴いてみると、私の中では完全にAreaの「Luglio, Agosto, Settembre」の冒頭の「ハビビ…」というアラビア語と同じに聴こえた。
さて、今井裕を迎えて発表した『黒船』は日本ではヒット。イギリスでは評価は高かったもののセールスは振るわなかった。

ベースが後藤次利に代わり、再度Thomasのプロデュースの元、サード・アルバム『Hot! Menu』を発表した1975年には人気番組The 『Old Grey Whistle Test 』に出演。

この番組は1971~87年の間、イギリスBBC2で放映された音楽番組で新人アーティストの登竜門であった。
番組タイトルにある「The Old Grey」とは、ロンドンの音楽出版社がひしめくエリアで働くドアマンやメッセンジャー、ポーター達の総称だ。
音楽出版社のスタッフは新曲がヒットするかどうか彼らを使ってテストしたという。
つまり新曲を数回「The Old Grey」に聞かせる。そして、彼らがすぐにメロディを口笛で吹けるようであれば、それは耳馴染みがよく、曲がよい証拠に違いなく、「ヒットの可能性大」ということになるワケ。
すなわち「The Old Grey」たちへの口笛のテストだから「The Old Grey Whistle Test」だ。

ミカ・バンドの出演時、その番組名のバックドロップがワザワザ「The Old Glay Whistle Test」にアレンジされたという。「Grey」を「Glay」に…もちろん、これは日本人は「r」と「l」の発音の区別ができないというジョークだ。
これが国営放送の番組がやることだからね~。ホントおもしろい。でも大きなお世話だ!

ミカ・バンドは番組で「Time to Noodle(Wa-Kah! Chiko)」と「Suki Suki Suki(「塀までひとっとび」)」を演奏した。
その後、ミカ・バンドはRoxy Musicの前座として全英をツアー。サディスティック・ミカ・バンドは全英をツアーをした最初の日本人でバンドとなった。1975年のことである。ノーギャラだったらしい。

このツアー中、ロンドンの10月17&18日のWembley Arena(当時Wembley Empire Pool。私が持っている東芝EMI製のCDは「TEMBLEY EMPIRE POOL」と誤植されている)と14&15日のマンチェスターBelle Vueの演奏が下の『Mika Band Live in London』に収録されている。それが下の作品。
ジャケットの写真は加藤さんが冬の出で立ちで今回の特集にはそぐわないが…。

Wembley ArenaはMarshallの創立50周年を祝うコンサート『50 YEARS OF LOUD LIVE』が開催された場所だ。ああ、私もミカ・バンドのメンバーと同じ楽屋の廊下を歩いたのかと思うと感無量だ。

日本の文化を盛り込むことによって奇を衒うことなく、完全アウェイで自分達流に向こうの音楽をそのまま演奏して成功したミカ・バンドとかLOUDNESSのようなバンドを本当に尊敬するね。
しかも、今ではやや柔らかくなったが、イギリスの連中は「自分たちのロックがこの世で一番!」という感覚がメチャクチャ強く保守的だ。そこに40年も前に風穴を開けたのだからスゴイ。

ミカ・バンド自体が「黒船」だったのだ。

それと、イギリスでの演奏体験を通じ加藤さんはPAの重要性をイヤというほど思い知り、日本へ帰って来てPAの専門業者を立ち上げたという。今ではPAを取り扱う音響会社がたくさんあるが、この加藤さんの会社が日本で最初のPA業者だという話しを聞いたこともある。

「帰って来たヨッパライ」は私が最初に買った(買ってもらった)レコードだと記憶しているが、この大ヒット曲は加藤和彦の才能という氷山のホンノ一角でしかなかったのだ。

Lil1976年のGongのアルバム『Shamal』。Gong創設者、David Allen抜きの作品。プロデュースはNick Mason。
このあたりのGongの区分けがどうなっているのかサッパリわからんが、サウンド的にはいわゆるPierre Moerlen's Gong的。凡庸なAOR風な部分を除けばヴァイブラフォンやマリンバがタップリ入ってかなりカッコいい。『Expresso II』的とはまた違う味わいですな。

「Bambooji」という曲では「さくらさくら風の和的メロディがフィーチュアされる。「竹寺」?鎌倉の「報国寺」?
ん~、なかなかにヒドイ。中国風になったり、チャランゴが入ってフォルクローレ風になったり、一体どうなってんだ、コレ?こんなことしなきゃいいのに…。

ジャケットは「夏」というより、どちらかというとただ「暑い!」って感じ?

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Brand Xのことは『SFジャケット』の<中編>に記しておいたのでそちらもご参照願いたい。
これは1977年に発表された2枚目の『Moroccan Roll』。タイトルは「More Rock 'n' Roll」のダジャレ。ジャケット・デザインはひと目でわかる通りHipgnosisだ。
これは「夏」かな?「Hot-Hotter-Hottest」の3種類の季節しかないエリアのだからね、一年中「夏」でもあるし、反対に特別「夏」があるワケでもなさそうな感じだ。

内容の方は中近東サウンドとロックを融合させたつもりらしいが、そうかな~。民族音楽臭はかなりうすい。
それにしても、こうして聴いてみるとJohn GoodsallってMcLaughlinに似てると思わない?
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ここでSANTANAを取り上げるのは初めてかな?
これもひと目でわかるジャケットデザインは横尾忠則。
横尾さんは以前に日本でのライブ盤『Lotus』の多面ジャケットを手掛けている。
今回は偶然Miles DavisとSantanaが登場しているのでそのお話を最後に…。

1.『Lotus』が発売になるにあたって何かの機会にCarlosがMilesにそのジャケットを見せた時のこと。
「イヤ~、ディヴィスさん、コレ、今回の私の3枚組のライブ・アルバムなんですよ。ちょっとジャケットに凝りましてね、ホラこうして、こうして…22面体なんですよ。ハハハ、くだらないでしょ、こんなのきっとバカバカしいと思いますよね~、ディヴィスさんともなると…」とへりくだって見せたかどうかは知らないが、熱心にそのジャケットに見入るMilesの口の端からはヨダレが垂れていたという…「いいナァ~、コレ」って。ナベサダか?!(←これは古い!)

2.この時の話しかどうかは知らないが、Carlosが尊敬するMiles Davisにお気入りのペンダントをプレゼントした時のこと。
「あの、ディヴィスさん、もしよろしければこの私の大切にしているペンダント受け取っていただけませんか?」
あのしゃがれ声で…「いいのかいサンタナくん。コレはキミがとても大切にしているものなんだろう?」
「イエイエ、ナニをナニを、、私が心から尊敬するジャズの巨人に受け取って頂けたら本望です!」とへりくだって言ったかどうかは知らないが、そのペンダントが気に入ったのか、熱心に見入るMilesの口から出た言葉は…。
「サンタナくん、貰いっぱなしじゃなんだから、キミ、よかったら表にある僕のフェラーリ持ってっちゃってくれないか?」

ま、ホントかどうかは知らないけど、ホントの話しということにしておきたい話しだ。
某漢方薬会社の元社長さんが中古レコードを見に行って、欲しいものが何枚か出て来た。それ以上レコードをチェックするが面倒なので、レジで「あの、この店1軒ください」と言った話しとかね。コレはウソらしい。
でも、こういうスケールの大きい話しは大好きだ。

それとどうしてもまた触れておかなければならないのは「Europa事件」。これで哀愁も吹っ飛ぶぞ!
他の記事の再録になるが、ドラムの岡井大二の話し…このSantanaとTom Costerのペンになる「Europa」は邦題が「哀愁のヨーロッパ」になっとるが、「Europa(エウロパ)」というのは木星の衛星のうちのひとつで、「ヨーロッパ」とは関係ない。
そもそも「Europa」と「Europe」でつづりが違うのだ!「当時、このエウロパは地球に似た環境を持ち、もしかしたらそこに住むことができるかもしれない」ということがわかり、それをイメージして作られた曲なのであ~る。

それを当時の日本のレコード会社の担当者が「ハイハイ、ヨーロッパね。哀愁のメロディだナァ」と勝手に思い込んで「哀愁のヨーロッパ」にしちゃったのだ…という。以上大二さん。

そうだよね~。そういわれてみればそうだ。Santanaを熱心に聴いたことがないもんで、恥ずかしながらこれは気がつかなんだ。このレコード会社の人、後で恥ずかしかったろうナァ~。完全に取り返しがつかないもんね。

真相を尋ねたら「イヤ、これはあくまで邦題であって衛星とは関係ない!オレのイメージじゃい!」って開き直るだろうナァ~。でも、真相を知っても我々日本人は「この曲=ヨーロッパ」というイメージが払拭できないのではなかろうか?私も曲名を指すときにほとんど100%原題を使うが、この「哀愁のヨーロッパ」だけは「哀愁のヨーロッパ」って呼んできた。そこにこの曲の落とし穴があったワケだ。もし、原題を使っていればもっと早く気がついたと思うんよ…ま、どうでもいいか?
しかし、みなさんはこの曲を聴いてヨーロッパのどこを連想しますか?少なくともロンドンはないな~。

ちなみに木星の衛星というとイオ、ガニメデ、そしてこのエウロパあたりが有名か?66個もあるんだって!地球なんて1個だけなのに。太陽系の中でもっとも多くの衛星を持つ惑星は土星だったが、発見が相次ぎ木星が今一番多いのだそうである。

…お後がよろしいとうれしいな…。
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私はSantanaを聴かないが、先に記したように中学3年の時、武道館に観に行った。これがその時のプログラム。『Moonflower』の発表直後だったんだね。
あのね、さんたなだよ…。チャウチャウ、あのね、ものすごくヨカッタんですよ。本当に感動した。私の外タレコンサートの人生ベスト5に入るね。

Ws_img_1044プログラムの中からこんなの出て来たよ。
Scorpionsの2度目の来日の告知チラシ。ナニナニ「元UFOの名ギタリスト、マイケル・シェンカーが来る!」だって?

サンプラへ行ったけどね、思いッきし来ねーんでやんの。UFOでも来なかったし、結局私は一度も本物のMichaelを観たことがないのです。

Th_img_1245<後編>につづく

ミュージック・ジャケット・ギャラリーはどなたでもご見学が可能です。

詳しい情報はコチラ⇒金羊社MJG常設展

※本項の展示は2012年9月に終了しています。現在の展示内容は上記の金羊社ウェブサイトでご確認ください。

(文中一部敬称略 ※協力:植村和紀氏、金羊社・奥平周一氏 )





2013年9月 3日 (火)

【Music Jacket Gallery】サマー・ジャケット特集<前編>

夏生まれの人は夏を好む…。

コレ、よくいうでしょ?ホント、間違いないと思う。少なくとも11月生まれの自分は夏が苦手だ。
もう今年はマイりにマイっちゃってる。

それでもね、小学校の頃は夏が好きだったんよ。プールの王者だったから。
朝、公園にラジオ体操に行って、午前中チョコッと宿題をやって、学校のプールで大暴れする。お昼前に家に帰るとお母さんが手作りのフライドチキンを用意してくれていて、クーラーのきいた部屋でそれをいただくのが夏の最高の楽しみだった。
いつから夏がキライになったかナァ?
中高と男子校に通っていたんだけど、体育の授業の後のあの凄まじいニオイで夏がイヤになったのかも…。エアコンなんてまったく付いてなかったもんね。それにしてもあの暑い中、よくも運動なんかやってたよナァ。
今はどうなんだろう?夏は体育館で体育の授業やるのかな?さもないとみんな熱中症でブッ倒れちゃうもんね。

ゲリラ豪雨やら竜巻やら、本当にヒドイ気候になってしまった。このカテゴリーで「利便性の進化が風情を奪う」と書いたが、どうも「風情」どころの話ではなくなってしまった。何とかしないと!
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さて、今回のミュージック・ジャケット・ギャラリーは夏にちなんで「サマー・ジャケット特集」をお送りする。
サマー・ジャケットか…。これでも昔はお堅い会社でサラリーマンをやってましてな、夏でも毎日ネクタイを締めてサマー・ジャケットを携行してたもんですよ。「クール・ビズ」なんてのは全くなかった時代…。もうできないな…。

「夏」をイメージするジャケットか…個人的には、ん~、考えたことないナ。果たして約120枚も集まるのか?

Mjg_img_0812_2 ところで、今回紹介するアイテムは前回同様、昨夏に展示されたものだ。1年遅れの記事になってしまい大変恐縮だが、「夏のことは夏のうちにやってしまおう!」とほぼ一気に書き上げた。

苦手な夏のこと、アイテムを絞って簡素に仕上げようと思ったが、取りかかってみると例によって
これがまたおもしろくて筆が止まらず、結果的に2本立では窮屈なボリュームになってしまったので、3本立てで構成することにした。

しかし、30cm四方に描かれた「夏の世界」をも広げてしまう無限の芸術。やっぱりジャケットはおもしろい。
では、タオルの用意はよろしいか?ジャケットの中の夏へイザ行かん!

Mjg_img_0811_2 今回ブローアップされたジャケットはThe Beach BoysとIt's a Beautiful Day。
手法も雰囲気もまったく異なれど、どちらも「夏!」を連想させずにはいられないデザインだ。

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いいよナァ。海とサーフィン、カッコいい車に可愛い女の子、カリフォルニアの陽の光、冷えたバドワイザーにしぼりたてのオレンジ・ジュース…。

初めてカリフォルニア…というよりアメリカに行ったのは新婚旅行だった。アッという間の出来事で、おまけにパック旅行だったので西海岸の表面をツラっとなめるだけの体験だった。

それから大分経って職を変え、仕事でまたカリフォルニアを訪れた。
オフにはサンタモニカに在住する家内の友人(これがまたものすごい美人!)に周辺を案内してもらい、アパートを訪れ、夜にはご主人がハリウッドのジャズ・クラブに連れて行ってくれた。
その日、ステージに上がっていたのはトロンボーンの名手、Bill Watorusだった。
休憩時間にはBillと直接話しをすることができ、彼はたくさんの日本語の単語を知っていて驚かされた。それもそのハズ、お嬢さんが宮崎出身の方とご結婚されていて、日本にも頻繁に訪れていたのだ。

サンタモニカ・ビーチの陽光は明るく健康的すぎて、自分にはどうも似合わなかった。何となく引け目を感じてしまうのだ。でも、映画『ハリーとトント』の最後のシーン辺りを見るとカリフォルニアもイイ感じがするんだけどね。

一方…

夏でも朝晩には暖房が必要な寒冷な気候、毎日数回必ず降り注ぐ雨、産業革命にマズイ食い物、ひと吸いずつチビチビ飲む重いエールにマーマイト(正直、コレは食べれません)…ああ、いいナァ、ロンドン。やっぱりロックはブリティッシュに尽きるナァ。

でも、The Beach Boysはよい。音楽的によい。…といってもそんなこと思うようになったのはごく最近のことでしてな。
ま、始終聴いているワケでは決してないが、なんとなく「ボーっと気持ちいい曲が聴きたいナ…」なんて時に引っ張り出してくる。

でも、聴くのは『Pet Sounds』ばかりなんだけどさ。
よくBoxセットで未発表テイクだのなんとかミックスだのを突っ込んで4枚組とかで売っているのあるでしょ?Miles Davisによくある『コンプリートなんとか』ってヤツ。
アレ、せっかく買っても全部聴くことって私はほとんどないんだよね。
でも、試験の前に資料が揃っていないとやたら不安になってしまい、読みもしないクセに友達のノートを山ほどコピーさせてもらう…みたいな感覚でつい買ってしまう。

『The Pet Sounds Sessions』ってのはナゼかペロッと聴いちゃったな。すごくおもしろかった。特に私なんかはあのギターのパートをBarney Kesselが弾いているのかと思っただけで興奮しちゃったりしてね。

他にもひと通りThe Beach Boysのアルバムは揃っているけど、初期のはもうあんまり聴かないナァ。

それにしても魅力的なジャケットですナァ。素晴らしい構図だ。
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これは83年に発表されたレア音源集。当時は今みたいに未発表音源やらレアトラックだのが出回っていなかったのでファンの人たちは大層喜んだそうな。

そういえば、30年以上前、サーフィンというか、サーフィン・ファッションってのが流行ったね~。サーフィンというのは日本人にもっとも似合わない西洋の遊びという感じがするけど、ファッションは結構お世話になったな。
高校の時、学校のひとつ上の学年の人が、サーフィンをしていて倒れた瞬間にサーフボードの先が目に当たり片目を失明するという事件が起こった。
このことは多くのサーファーに注意を喚起するため、若者のファッション誌で報道されていたのを覚えている。
たまたまその先輩を知っていてので、その時のこと聴いたことがあったが、ボードが眼窩にはいり目玉が身体から出て行くのがハッキリとわかったそうだ。そして、次の瞬間、「目玉、オレの目玉!」と海水の中を手でまさぐったらしい。

すいません、ノッケから物騒な話しで…。

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ね、やっぱりThe Beach Boysはコレだよね~。見るからにゴールデンベスト!新橋の地下コンコースでよく見かけるような…。
『Sunshaine Days  Surfin' with The Beach Boys』だって。
そうは言ってもメンバーの中でサーフィンを実際にやっていたのは末弟のDennisだけだったとか…。

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こっちは車。『Summer Cruisin'  Hot Rod with The Beach Boys』だ。
ジャケット的には…ま、夏?それ以外ナニもないな~。

明るく楽しいビーチ・ボーイズ。でも、いくつかの関係書籍に目を通すと、「西のファニカン、東のキャロル」のようにThe Beatlesの向こうを張った単なる能天気なスター・グループではないことがわかる。
Willson兄弟の生い立ちやBrianの健康、『Pet Sounds』以降の大不振、CarlやDennisの死等々、知れば知るほど暗い雰囲気が漂っているように見えて来る。

にぎやかに楽しく「♪一切合財USA」や「♪ヘッミロンダ、ヘッヘッミロンダ」もいいが、こうした暗い部分を読み説きながら彼らの美しいハーモニーに耳を傾けるのもひねくれた私のThe Beach Boysの楽しみ方だ。

それと、初期においてかなり多数の作品が3コードで書かれていることも今となっては注目すべきだ。ここでいう3コードというのは、「ブルース形式」だけに限っているワケではない。単純にトニック、サブドミナント、ドミナント・コードの組み合わせにメロディを乗せ素晴らしく味わい深い曲を作るのだ。ロックは本来こういうものだと思うよね。

私的にこの手法で書かれた日本のロック曲の最高峰はサディスティック・ミカ・バンドの「タイムマシーン」におねがい」だ。ブルース形式ではないが、A(トニック)とD(サブドミナント)とE(ドミナント)の組み合わせだけであれほどカッコいい曲が出来上がる。シンプルだからこそカッコいいとも言える。

今、世の中に流れているロック調の曲は、こうした感覚が極端に希薄だと思う。我々世代にはいくらバンドの形態を採っていてもロックに聞こえない理由のひとつなのかもしれない。

ダイアトニック・コード(ひとつのスケールから派生するコード群)というものは必ず機能的にトニック、サブドミナント、ドミナントに分類されるので、最後にはどんな曲でも基本的には3つのコードで作られているといえるが(例外もあり)、ここで言っていることとはワケが違う。

ロックの曲が持つパワーのようなものは、こういうシンプル性(simplisity)から生まれるもので、その礎はまぎれもなくブルースだ。先に書いた「ブギやシャッフルが絶滅する」という話しとからめて、テレビから流れて来る音楽に耳を傾けながら、楽器を演る人もそうでない人も皆さんで考えてみるといいと思う。

The Beach Boysでもうひとつ…『Live in London』という1969年のライブ盤は実にハツラツとした演奏で私の愛聴盤のひとつなんだけど、60年代の後半にはアメリカでは悲惨な状態だったこのバンドがイギリスでは王様状態だったのだからおもしろい。
アメリカでは酷評された『Pet Sounds』がイギリスのチャートの2位をマークしている。確かにこのアルバムを聴くとその熱狂ぶりがわかる。
いつもはアメリカ人のこと色々と悪く言うクセに…やっぱりカリフォルニアの陽光がいいんだね?イギリス人には家の中でジッとしながら聴くプログレとハード・ロックが一番お似合いだっつーの!

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The Beach Boysをさらにもう一枚。1979年の『L.A.(Light Album)』。

レコード会社を移籍したThe Beach Boysが前会社との契約を解消するためのアルバムにストックしていた曲を使い果たしてしまったために、このアルバム用の曲が足りなくなってしまった。スタジオに入りレコーディング作業を進めたがよい結果が出ず、Bruce Johnstonをプロデューサーとして呼び戻して七転八倒の末作り上げたものの、セールスも思わしくなく評価も低かったというアルバム。

そーかなー。ま、私なんか特段深い思い入れがこのバンドにないせいか、別に「ヒドイ」とは思わないナァ。どの曲もなかなかいいと思うんだけど…。
ただ、大活躍しているDennisの声が気になりがちかな?MikeとCarlの声こそが私にとってはThe Beach Boysのイメージなのでちょっと違和感が…。例えて言うなら円楽(先代)の落語みたいな…要するに立派過ぎちゃうのね。そこへ行くとCarlの声は小朝だ。

それより気になるのはタイトル。「Light Album」というところではなく、カッコ。カッコのことは英語でParenthesis(パレンセシス)、もしくはRound Bracketsというが、私が知っている限り、西洋の人はあまり使わない。イギリス人はちょっとした注意書きを添える場合に使うこともままあるが、それでも日本人ほどではない。
特にアメリカの人との文通でカッコを使っているのをほとんど見たことがない。
それがこのアルバムのタイトルにガッツリ入っているのが個人的におもしろい。

Paul McCartneyのベスト盤なんかもそうだけど、ジャケットは収録曲のイメージをイラスト化したものが並んでいる。楽しいイラストだ。で、左下に日本髪を結った女性のイラストがあるでしょう。右にはタテにこの曲のタイトルが記してある。何て書いてあるのかというと「SUMAHAMA」。
「砂浜」じゃないの?「砂浜」。実際にこの曲には日本語で歌われているパートがある。

しかし、1979年にもなって「砂浜」で「芸者」だよ。ん?、待てよ、コレってまさか『金色夜叉』か?
(歌詞を確認…)
違った。でも「♪Sumahama In the autumn as the leaves are falling」という箇所が出て来て思わせぶりだったりして…紅葉だもん。
これはMike Loveの作曲なんだけど、我々の感覚では「砂浜」に「落葉」っていうイメージは絶対に重ならないよね?

…とココまで書いて気がついた!これは「砂浜」の誤謬ではなくて、神戸の「須磨」の浜、すなわち「須磨浜」だということね!アブねーアブねー。一気にロマンが去ってしまった…。なぜ須磨なのかはわかりません。
まだ上の子が小さい時、須磨の水族館って行ったナァ~。

歌詞の内容はちょっぴり悲しい恋の歌なんだけど、この芸者のイラストはないでしょうよ!1979年でも日本のイメージといえばコレだよ。このステレオタイプは何とかならんもんかね?恥ずかしいわ。
この歌でおすもうさんのイラストよりはまだいいか?
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「ジャケット名作選」的な企画では必ずと言っていいほど上位に選ばれる名ジャケット。

It's a Beautiful Dayは1967年デビューのサンフランシスコ出身のサイケロックバンド。もう名前からしてこの時代のサイケ精神を象徴している。
これは1969年のファースト・アルバム。やはりこの時代の作品らしく、一番有名な「White Bird」なんて曲はJefferson Airplaneみたいに響く。
でもこちらはヴァイオリンがガッチリ入っちゃってこっちの方が全然いいな。(Jeffersonも後年、Papa John Creachという黒人のフィドラーがカッコよかったけど…)

でもマーブロ読者の皆さんが注目すべきはこの曲ではない。このアルバムに収録されている「Bombay Calling」という曲だ。
これははDeep Purpleの「Child in Time」の原曲。ま、ハッキリ言ってまったく同じと言っていいでしょう。結果的には両方カッコいいだけどね。
どこかの国の国民的バンドと呼ばれているグループと違ってこういう改作は大歓迎だ。

さて、ジャケット。
この絵は家事に関する雑誌のためにkent Holisterという人が1900年頃に描いたもの。
コレ完全やられちゃってるよね…最近のジブリに。

本当に素敵な絵なんだけど、以前掲載したマーブロのインタビューの中で、森園勝敏さんから聞いた話では、この絵はMaxfield Parishというアメリカの画家の絵が元になっている。そして、そのMaxfield Parishの作品に出て来る女性が「Lady Violetta」という。
もちろん森さんはこの絵にインスピレーションを受けて、歴史に残る名曲「レディ・ヴィオレッタ」を作曲した。この曲は一般に「レディ・ヴァイオレッタ」と呼ばれることが多いが、正しくは「レディ・ヴィオレッタ」だ。

ついでに言うと、Boz Scaggsの1971年のアルバム『Boz Scaggs & Band』の中の「Here to Stay」という曲。コレ、キーとコード進行が森さんの「Lady Violetta」と同じなのだ。
キーはD。IIm7-I△7を繰り返して4度進行。GからGmとサブドミナント・マイナーに突入。IIIm7からIV7に入りIIm7にドミナント・モーションして頭に戻る…みたいな。まったく同じ。
「Lady Violetta」が収録されている『ゴールデン・ピクニックス』の発表は1976年なので、四人囃子の方が後追いになってしまうのだが、森さんはこの曲を全然知らなかったそうだ。
イヤ、仮に森さんが知っていたとしても、このコード進行にあの美しいメロディを乗せることがスゴイ。こっちの方がスゴイかも知れない。何しろ大名曲だからね。
私はもうギターを根詰めて弾いてはいないが、この曲だけはいつか人前で弾いてみたいナ~。森さんが相手じゃあまりにも図々しいので、相棒はお弟子さんの関ちゃんがいいな~。

え、ところで囃子とボズ、どっちの方がいいかって?訊くだけヤボヤボ!「Violetta」に決まってる!だって「Violetta」はいつだって私の好きな日本のロックの曲の上位に君臨してるんだもん!

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Judas Priestは中学の時、NHK FMの渋谷陽一の『ヤング・ジョッキー』という番組で初めて聴いた。「The Ripper」だった。ショックだったね~。『Sad Wings of Destiny(運命の翼)』が新譜として紹介されていたから1976~77年ぐらいのことか…。
こっちはThe BeatlesとかよくてTodd Rundgrenぐらいしか知らなかったので「こんなんあるのかよ?」って腰を抜かした。
その2年前のJudas Priestのデビュー・アルバムがこの『Rocka Rolla』。

やっぱ暑いときはコーラか?そういえば昔はビンのフタを「王冠」なんて呼んでたな。「王冠いくつ送れば抽選で○○プレゼント!」なんて言ってた。アレ、言わなくなったね。

JudasはMarshallの大切なアーティストだ。でも、4枚目の『Stained Class』までしか聴かなかったな~。何か、この頃には「Exciter」あたりのRob Halfordの声がコミカル聴こえちゃって…。「『夜の女王』じゃあるまいし、ナニもそこまで高い声出さなくても…」みたいな。
それでしばらくロックから離れている間にすっかりメタル・ゴッドになっちゃって!このバンドにも「継続は力なり」を感じるな~。素晴らしいことです。

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Free Beerというグループ。これはまったく知らないナァ。名前はありがたいんだけど…。カナダに同名のコメディ・ユニットがあるようだ。
ジャケットはソフトでいい感じ。
クレジットを見ると、ドラムがBernard Burdieで、サックスではBob Mintzerなんかが参加していておもしろいので取り上げてみた。
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ホルヘ・サンタナ。「サンタナ」って言うぐらいのギタリストだからカルロスの兄弟に決まってる。
この人は「麿」じゃない、「Malo」というサンフランシスコのグループで活躍した人。ちょっとゴメンナサイ、アタシャこのへんは門外漢。

ま、夏なんでしょうね、パンツ一丁で涼しそう!これにもうちょっと気合を入れると…

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HipgnosisのMontroseになる。
ん~、確かにこっちは「夏」というイメージは皆無だな。

Jump Isotopeはイギリスのジャズ・ロック・グループ。
コレ持ってたんだけど見つからなかったナ…ということで他のアルバムを久しぶりに聴いてみる。

ギターのGary Boyleという人が中心人物なんだけど、この人インド人なんだよね。インド音楽系の人、つまりラヴィ・シャンカールとかトリロク・グルトゥとかザキール・フセインとかパンカジ・ウダースとか、そういう人以外でポピュラー・ミュージックのフィールドで活動していた人と言えば、このゲイリー・ボイルと「インド人チャダ」ぐらいしか知らんもんね。ゲイリーは後年、山岸潤史さんのソロ・アルバムで客演してたりした。

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これは裏ジャケ。左上の人がGary Boyle。
とにかくギターの音が…。「何でこんなに歪ませてんの?」と思わず驚かざるを得ないぐらいコシのない音。今時、高校生でももっといい音出しまっせ。
それに意味のない上辺だけの速弾き。初めて聴いた高校の時は「お!」と思ったけどな。McLaughlin気取りなのかも知れないが、全然違う。ちょうどジャズとロックの間の中途半端なところにハマっちゃってる感じ?

さて、ここらへんでソロソロ褒めてあげないといかんな…。

ん~、しかしつまらん。問答無用で曲のクォリティが低い。時代的にいってもマハビシュヌを狙っていたんだろうな。The Mahavishunu Orchestraは今聴いても何ら文句はないが、このIsotopeときたら…古い。
でも、ナゼか何枚か持ってるんだ~。

ちなみにIsotopeにはSoft Machineのベーシスト、High Hopperも一時参加していた。

インド人ついでにチョット書くと、大分前に安かったもんで『インド古典パーカッション―超絶のリズム』とかいうCDを買った。「南北インド音楽のマエストロ達が繰り広げる興奮のリズム・バトル」っていうんだけど、特にバトルのところは興奮せなんだ。
ところが巻末にザキール・フセインによる、タブラのデモン ストレーションっていうのが収録されていて、これが滅法カッコいい。とても人様にはオススメできないが、何の情報もなく捨て身で勝ったCDにこういう演奏 を発見するとうれしくなる。


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Elephants Memoryは他の機会でもかつて取り上げたことがあったが、60年代後半に活躍したニューヨークのバンド。

見るからにヒッピーですナァ。夏でなきゃこんな恰好はできまい。象も気の毒に…。

このバンド、ジョン・シュレシンジャーの『真夜中のカウボーイ』のサウンドトラック盤に「Jungle Gym at the Zoo」と「Old Man Willow」という曲を送りこんでおりゴールド・ディスクをゲットしちゃってる。

さらに、JohnとYokoのバックを務めたことで知られている。『Some Time in New York City』というJohnの2枚組のアルバムあるでしょ、新聞のジャケットのヤツ。あれの1枚目で演奏しているのがこのバンド。演奏はフツーにうまい。ま、John Lennonのバックを務めるぐらいですから。
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ちなみにこの『Some Time in New York』のC面はロンドンはコヴェント・ガーデンのはずれ、フリー・メイソン本拠地近くののライセウム・シアター(Lyceum Theatre)でのライブ(全然ニューヨークじゃない)。収録は1969年12月15日、ユニセフのチャリティコンサートだった。

そして、D面は1971年6月6日、The Mothers(この時分はMothers名義) とのFillmore Eastでの演奏が収録されている。

一方、The Mothersはこの時の演奏を『Fillmore East -June 1971』と題するライブ・アルバムで1971年8月にリリースしている。コレ、収録してからたった2か月でレコードにしちゃってる!

以前にも書いたが。私は基本的にジャケ買いをしないが、この『Fillmore East -June 1971』はCal Schenkelの鉛筆書きのジャケット・デザインが妙におもしろくてつい買ってしまった。
今から36年前のこと。初めてのZappaのレコード。そこから私のZappa道が始まった…ま、コレは余談。

で、この写真を見ていただきたい。
後ろはさっきから何回も出て来ているJohn Lennonの『Some Time in New York City』。
それで向かって右は私が惹かれたCal Schenkelによる鉛筆書きの『Fillmore East -June 1971』。
向かって左は『Some Time in New York City』の内袋。インナースリーヴっての?そう、『Fillmore East -June 1971』のパロディになってる。

赤字で書いてあるのは、上から…
John and Yoko presents.....'live jam'
PLASTIC ONO BAND! & John and Yoko with→The MOTHERS

と来て、

Lyceum London Dec 1969と記されている。
つまり、
『Fillmore East -June 1971』のデザインを借りて、ちゃっかりLyceum Theatreのライブ盤のジャケットを作っちゃっているワケですな。

まだ話しは終わらない。Zappaにはファンなら誰でも知っている『We're Only in it for the Money(1968年)』というアルバムがある。このアルバムのジャケットは『Sgt. Peppers Lonly Hearts Club Band(1967年)』の悪趣味なパロディなのだ。
そう、ジョンはこの『Some Time in New York City』でふざけて仕返しをしたに違いない。

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これがLyceum Theatre。
もうずいぶん長いこと『Lion King』がかかっている。
この劇場は数々の名演を生んでいるが、名盤の誉れ高いBob Marleyの『Live!』もそのうちのひとつだ。詳しくはそのうち『名所めぐり』でやります。

Mjg_img_0475_1これがそれぞれの裏ジャケ。
おもしろいのは徹底して元の表記を利用しているところで、メンバーのクレジットはもちろん、スタッフのクレジットもEngineerやRoad Manager等の担当職名はそのままに、固有名詞だけバンバン赤ペンで書き変えている。

それとJohnらしいのは、下のところ。Zappaが色々な出版刊行物に刷り込んでいた「Don't forget to register to vote」という選挙権登録のための標語の上に丸々「War is over if you want it J.L. Y.O.」と上書きしてしまった。
これは文字通りの意味なんだろうけど、「if you want」というところから、「もしよかったら、もうこれでジャケットのパクリ戦争は止めよう」と言っているように想像するのはどうだろうか?

加えて、当時の国内版配給会社であったワーナー・パイオニアのクレジットまで鉛筆書きになっているところがうれしい。ただし、「¥2,300」という定価表示は活字だ。

ジャケットはおもしろいね~!見たか音楽配信!キミにこんな芸当ができますか?ってんだ!!

Mjg_img_0581Fleetwood Macの1987年の『Tango in the Night』。大ヒット作『Rumours』の黄金メンバーによる最後のアルバム。1,200万枚も売れたんだって!
Macも統一感は皆無にしても、ブルース時代からなかなかにいいジャケットが揃ってる。
それにしても、ブルースやめてヨカッタね~、このバンドは。
Mick FleetwoodはMarshallのドラム・ブランド、NATAL(ナタール)のパーカッションを愛用していた。

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Pabro Cruiseは思い出があるよ。
もちろん私はPablo Cruiseなんてガラではない。
でも彼らのレコードは買ったことがある。『Reflector』とかいう81年のアルバム。今の家内にプレゼントしたのだ。「今の」って言ったって、今も昔も変わらないのだが…。32年前か?

アレは誕生日だったのかな?彼女はレコードを袋から取り出すと大喜びしながら、「アッ!」と小声を出す私に気づかず、私の見ている前で人差し指を帯に引っかけ、何のためらいもなくブチっと引きちぎってしまった。

「え、帯要らないの?」

「うん、だってジャケット全部見えないジャン?」ハマ生まれハマ育ちの彼女はピュアな横浜弁でそう答えた。

別にこっちもいつも帯欲しさにLPやCDを買ってるワケじゃないけど、やっぱり最初っから付いているものはそのままにしておきたいジャン?
もし中古レコードで帯のあるのと帯のないの、同じ値段だったらどっち買うよ?帯でしょ。

一時期、帯の付いていない中古レコードは買わないことにしていた。しかし、値段は張るし、聴きたいアイテムは買えないしですぐにギブアップしたっけ。
その点、CDはサイズが小さいせいか帯があろうとなかろうと最初っから気にならなかったナァ。
こんなところからもやっぱりLPジャケットの方が魅力的だ。

これフリチンか?(「フルチン」、「フリチン」どちらでもいいらしい)
これも「夏」としか言えないようなきもするけど、なんか寒そうだな。カメラのこっちに焚き木が用意してありそうな…。

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これは夏というかただの熱帯地方だね。つまり一年中「夏」か。
ロンドンで1969年に結成されたガーナのロック・バンド、Osibisaの1974年の6枚目(ベスト除く)のスタジオアルバム。
ジャケットはルソーのようだが違う。アンリ・ルソーの絵をまんま使ったのはThelonious Monkの『Thelonious Monk Plays the Music of Duke Ellington』。Monkはキリコの絵もジャケットに使っていることは前回書いた

象が飛んでいるOsibisaの最初の2枚のジャケット・デザインはYesやGreensladeでおなじみのRoger Deanが担当した。バンドのロゴがモロにYesっぽいのはそのせい。

ワールド・ミュージックが流行った時、サリフ・ケイタやユッスー・ンドゥールなんてのはひと通り聴いたが、正直言ってアフリカ系の音楽は得意ではなく、キング・サニー・アデだとかフェラ・クティとかどちらかというと「勉強聴き」の域を出ない。ちょっと聴くにはいいんだけどね。

で、このOsibisaってのはワールド・ミュージック・ブームのはるか昔から知っていた。1975年ぐらいのことだと思う。というのは、当時学校へ行くのに毎日朝6時ぐらいに起きて時報がわりにすぐにテレビをつけていた。
たしかNETテレビ(現テレビ朝日)だったと思うが、当時は今みたいにアナウンサーやゲストがゾロゾロ出て来るような早朝番組などなく、今でいうPVのようなものをただ流しているような簡素な音楽番組ぐらいしかやってなかった…ような気がする。

しばらくの間、その音楽番組にOsibisaのフィルムが流れていたのだ。ロックなど全然わからなかった年頃のことで「ナンダこれは?」と驚いているうちにOsibisaの名前が刷り込まれてしまったというワケ。それ以降、現在に至るまでただの一回も聴いたことがない。

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Stan Getzか…。あまり聴いている方ではないが、好きな盤は結構あるな。Jimmy Raneyがカッコいい『Stan Getz at stryvillle』の2枚とか『Stan Getz at The Shirine』とか『Sweet Rain』とか『Captain Marvel』とか…。つい2週間前も『Pure Getz』というConcord盤を買ったばかり。
ボサノバで有名なGetzだが私はまったく聴かないの。

ジャケットにGetzの顔は見れないが、かなりのハンサムで、無造作に彼の顔を撮影したカメラマンに「オレの顔をこっちから撮るな!」と怒ったとか…。フリオ・イグレシアスでもこんなような話しを聞いたことがあるが、Getzの方が先輩だろう。

『Cool Sounds』は1957年の発表のVerve盤。ジャズの名ジャケットというとBlue Noteばかりがもてはやされてしまう傾向が強いが、この時代はどこのレーベルでも素晴らしいジャケット・デザインに素晴らしいジャズを包んで世に送り出していた。

この時代のジャズのレコードのジャケットってVerveに限らず、内容とはおおよそ関係のない美人女性が登場するデザインが多かった。今はこんなこと絶対にしないよね。
それでも50年代のアメリカのパワーがアートにまで十二分に及んでいるかのようにそのどれもが魅力的だ。
Verveだったらロミー・シュナイダーを起用したOscar Petersonの『My Fair Lady』とナント言ってもBud Powellの『Blues in the Closet』だな。これは完全にジャケ買いした。
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「Mar y Sol」というのは1972年4月、3日間にわたってプエルト・リコで開催されたウッドストック・タイプのロック・フェスティバル。
1971年から計画されたが、厄介を恐れたプエルト・リコ政府の妨害により頓挫しかけたものの、紆余曲折の末、当事者が変わって何とか開催にこぎつけた。ところが、そうした不安定な運営状態を察知したミュージシャンが出演をキャンセル。ナント開催の前日になってようやく出演者の名前が出揃ったという。

とはいうものの、出演者は今からしたら涙が出るほどゴージャスだぜ。
Emerson Lake & Palmer、Dr. John、Long John Baldry(Elton Johnの「John」はこの人の「John」だからね)、The Allman Brothers Band、The Mahavishnu Orchestra、さっそくOsibisa、Cactus、The J Giles Band、B.B. King、Herbie Mann、John Nitzinger、Jonathan Edwards…。
以上が下のライブ盤に音源が収録されている人たち。

まだいい?

その他、無名時代のBilly Joel、Alice Cooper、Dave Brubeck(なんでやねん!)、Rod Stewartなどなど。

ところがフェスティバルの方は問題だらけだった。死亡事故、殺人、数々の強姦事件が発生したのだ。プエルト・リコ政府からプロモーターに逮捕状が出たが、国外へ脱出して逮捕から逃れたという。ずいぶんゆるいな。

1969年のウッドストックの成功以来、こうした巨大屋外ロックフェスティバルがいくつも開催されたんだね。うまくいくものあったが、この「Mar y Sol」やストーンズのオルタモントのように失敗に終わった物も数多くあったようだ。

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こっちもつくづくスゴイ出演者だよね。
「Isle of Wight Festival」は元々1968年から1970年まで3年、3回にわたって開催されたロック・フェスティバルだ。

初回、1968年のヘッドライナーはJefferson Airplaneで、他の出演者はArthur Brown、The Move(いいな~)、T-Rex(Micky FinnのパーカッションもNATAL製だ)、The Pretty Things等。10,000人程度が集まる小ぢんまりしたフェスティバルだった。

それが2回目の1969年には一気に150,000人が集う巨大フェスティバルに膨れ上がる。
出演はThe Band、The Who、Free、The Moody Bluesといったメジャーどころの他に、Bonzo Dog、Blodwyn Pig、Edgar Broughton Band、Aynsley Dumbar、Fat matless(Jimi Hendrix ExperienceのNoel Reddingが参加していたバンド)、Family、デビューしたてのKing Crimson、Pentangle、Third Ear Bandなどいかにもブリティッシュな顔ぶれがそろっていた。
しかし、前年の15倍にも膨れ上がった観客のお目当てはBob Dylanだったという。
8月30日のDylanのステージの前には会場のVIP席に数々の有名人の姿があった。John LennonやRingo Starrとそれぞれの細君、Keith Richards、Bill Wyman、Charlie Watts といったThe Rolling Stones勢、Eric ClaptonやSyd Barrett、Elton Johnも…。他にもLiz TaylorとRichard Burton夫妻、Jane FondaとRoger Vadim夫妻(『バーバレラ』のコンビね)もいたそうだ。

そして1970年、5日間にわたって開催されたこのフェスはますます巨大化し、Woodstockをしのいで当時最大の動員数を記録し、ギネスブックに登録された。その数は60万人とも70万人とも言われている。
その時の模様を捉えたのが下のライブ・アルバムだ。
前年までの出演者の数々に加え。Chicago、The Doors、Miles Davis、Joan Baez、Joni Mitchell、Jethro Tull、Sly & the Family Stone、Ten Years After、Emerson Lake & Palmerなどが出演した。
しかし、こういうものはデカくなればなるほど問題も起こりやすく、そもそも10万人にも満たない人口の島に60万人もの人が押し寄せちゃったもんだからさあ大変!交通機関がスタボロになってしまった。
また、チケットは前売りされていたが、Woodstockのように結果フリーコンサートの形を呈してしまい、主催者側は全然儲からなかったそうだ。そうしてこのフェスは3年で幕を下ろした。

そしてその後、2002年に復活し現在に至っている。

開催は8月で、昼間はさぞかし心地よかったろう。
イギリスの夏はとても涼しく、ロンドン市内でも古い建物には今でもエアコンが付いていない。そりゃ昼間は暑いですよ。でも、夏は短いし、ちょっと我慢すればアットいう間に涼しくなっちゃう。
実際Marshallの工場でも窓が付いている部屋にはエアコンが全くついていないもんね。
だから、こうした夏の野外フェスティバルに適している。今でも盛んにやってるでしょ?ああいうことをしてもそんなに暑くないんですよ。
ただし、夜はキツイ。真夏でも暖房をつける時があるからね。このフェスの参加者もさぞかし辛かったと思う。
しかも、開催した日は風が滅法強く、音が風に持って行かれてしまうほどだったらしい。

Woodstockもそう。8月だというのにTen Years AfterのシーンなんかではAlvin Leeの吐く息が真っ白だ。

そこへ行くと日本の夏フェスはあまりにも過酷だと思う。アレ、なんで春か秋に開催しないんだろう?
やっぱりさ、カッコいいジャケット眺めながら、家でゴロしてステレオでいい音楽を聴くのが一番だな~。
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<中編>につづく

ミュージック・ジャケット・ギャラリーはどなたでもご見学が可能です。

詳しい情報はコチラ⇒金羊社MJG常設展

※本項の展示は2012年9月に終了しています。現在の展示内容は上記の金羊社ウェブサイトでご確認ください。

(敬称略 ※協力:植村和紀氏、金羊社・奥平周一氏 )











2013年8月 7日 (水)

【Music Jacket Gallery】SFジャケット <後編>

今回のガラス・ケースの立体陳列は、ロック・ジャケットのアート・ディレクターとして最高峰であるHipgnosisのStorm Thorgersonが手がけたCDボックスが集結した。
やっぱり圧巻!
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1968年にHipgnosisというデザイン集団を設立したThorgersonは今年     惜しまれつつこの世を去ったが、最近でもアメリカのThe Rival SonsのCDジャケット・デザインを担当するなど最後まで精力的、かつクリエイティブな活動を展開していた。
しかし、HipgnosisといえばPink Floyd。『A Source of Secrets(神秘)』から『Animals』まで、このふたつの独創的な集団はサウンド面とビジュアル面で互いにインスパイアしあい、ロックの黄金時代の一角を築いた。

HipgnosisについてはMarshall BlogでもStorm Thorgersonへの追悼の意を込め、本Music Jacket Galleryのレポートを掲載しているのでそちらもご参照されたい。

●緊急特集!Hipgnosis Collection~Progressive Rock Works

●緊急特集!Hipgnosis Collection~Hard Rock Works

掲載時、膨大な数のアクセス件数があり、改めてHipgnosisの人気の高さと、その独創性を愛でる日本人のキメ細やかな感性に感心した次第である。また、ジャケットの重要性を認識しているファンがいかに多いかの証左にもなった。

今回の展示は、2011年からスタートしたPink Floydのリマスター・シリーズのすべてのアートワークを手がけたThorgerson作品の中から、『Pink Floyd BOX』を始めとして、『The Dark Side of the Moon(狂気)』、『Wish You Were here(炎〜あなたがここにいてほしい〜)』、『The Wall』のコレクターズ・ボックスなどのパッケージがを展示された。

『「ハコ」という「ハコ」はすべてゲットする』という植村氏のゴージャスなコレクションを通じ、是非Storm Thorgersonの華麗なるアートな世界をご堪能いただきたい。



●PINK FLOYD / SHINE ON  (COLUMIA 1992)


1983年にHipgnosisを解散したStorm Thorgerson。その後、彼が初めてボックス・セットを手がけたのが、この9枚組CDボックスだ。
デビュー作『The Piper at the Gates of Dawn(夜明けの口笛吹き)』からこのボックスのみの特典CD『Early Singles』までの9枚のCDを並べると、『The Dark Side of the Moon(狂気)』のジャケットに使用されたピラミッドの模様になる仕掛けが楽しめる。
パッケージももちろんのこと、同梱されたオリジナル・ポスト・カードのデザインワークも秀逸だ。

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●PINK FLOYD / PULSE (COLUMBIA 1995)


Thorgersonがアート・ディレクションを施したPink Floyd2枚組ライブCD。
このパッケージの最大の特徴はボックスの背に付けられた発光ダイオードだろう。中古CD店でコレに出っくわすといつもビックリする。
『Pulse(パルス=鼓動)』というアルバム・タイトルにちなんで、赤い光が鼓動のように点滅するというワケだ。
実はこのLED以外にも、パッケージ全体のアートワーク・センスは十二分にインパクトが強いものだ。(本多貞夫氏所有)

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●PINK FLOYD / THE WALL IMMERSION BOX SET  (EMI 2012)

ロック史上に残るピンク・フロイドのロック・オペラ超大作『The Wall(ザ・ウォール)』の6CD+1DVDからなるコレクターズ・ボックス。
このボックスも『The Dark Side of the Moon(狂気)』、『Wish You Were Here(炎~あなたがここにいて欲しい~)』と同種類の特典が同梱されているが、それ以外にもオリジナル・キャラクターを手がけたGerald Scarfe(イギリスのイラストレーター:イギリスのメジャー新聞にイラストを提供したり、The Sunday Timesやthe New Yorkerのコラムニストとして有名)による手書きの歌詞入り特大ポスター、特製アートプリント、ステージ・プロデューサーのMark Fischer(The Rolling StonesやU2をも手掛けるステージ・デザイナーの超大物)によるライヴ・セット・スケッチのレプリカも見事に復刻されている。

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●PINK FLOYD / I WISH YOU ARE HERE IMMERSION BOX SET  (EMI 2011)


名作が多いピンク・フロイドの作品の中でも世代を超えて人気をキープする『Wish You Were Here(炎~あなたがここにいてほしい~)』の2CD+2DVD+1BLU-RAYからなるコレクター・ボックス。
Thorgersonのアート・ディレクションによる数々の特典は『The Dark Side of the Moon(狂気)』のコレクターズ・ボックスと同種類のものが同梱されている。当時のツアー・チケットやバックステージ・パスのレプリカの復刻も見事だ。

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●PINK FLOYD / THE DARK SIDE OF THE MOON IMMERSION BOX SET  (EMI 2011)

ピンク・フロイドを代表するアルバム『狂気』の3 CD+2DVD+1BLU-RAYからなるコレクターズ・ボックス。ストーム・トーガソンによる当時のデッサン、イラスト、写真などで構成されたアートブックを始め、ストームのデザインによるコレクターズ・カード、スカーフ、ビー玉、コースター、など多数の特典を同梱したボックスは、否が応でも所有欲を刺激するアート感覚に溢れたパッケージです。

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ズラリと並んだオマケ類。

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●PINK FLOYD / OH, BY THE WAY  (EMI 2007)

Floydのオリジナル14作品を全て紙ジャケットCDに復刻したボックス・セット。
紙ジャケ化は、2001年5月に世界で初めて日本で制作された。そして、その時のデータを基にして海外で制作されたものが、この紙ジャケ・ボックスになった。
ボックスの特典である、Thorgersonのデザインによるオリジナル・コースター、ジャケットを網羅した特大ポスターとパッケージ・デザインはさすが。

しかし!紙ジャケそのものの完成度は日本のもの(金羊社による製版・印刷)に比べるとワンランク下といわざるを得まい。ただし、オリジナル・レーベルの復刻度は実に見事ではある。
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●PINK FLOYD / DISCOVERY  ( EMI 2011)

2011年秋からスタートしたリマスタリング・シリーズは音源の素晴らしさもさることながら、アートワークも全てThorgersonの手によって一新されている。
このボックスは彼らのオリジナル・アルバム全14作を収めたもので、Thorgersonによる当時のイラストや写真などを盛り込んだアートブックが同梱されており、パッケージもまさにアートそのものだ。

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●PINK FLOYD / IS THERE ANYBODY OUT THERE THE WALL: LIVE 1980-1981 (EMI 2000)

Thorgerson作品の最後は、彼が手がけたピンク・フロイドの2枚組ライブCDの初回限定生産盤だ。
通常盤はマルチPケースに収められているが、このボックスはブック型の特殊仕様になっている。フロントのデザインは、『The Wall Tour』のポスターから流用されたもの。CDが収納されているポケットの裏側にもデザイン・ワークが施されているのはThorgersonのこだわりかもしれない。

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●DAVID SYLVIAN / WEATHERBOX (VIRGIN 1989)

Sylvianのソロ・デビュー作から5作目までのアルバムを収めた初の5枚組CDボックス。

デザインは彼の専属デザイナーともいえるRussell MillsとDave Coppenhallの2人の手によるものだ。Sylvian独特の美意識がそのまま極上のアート・パッケージに昇華した傑作に仕上がっている。

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●BRIAN ENO / ENO BOX Ⅰ&Ⅱ (VIRGIN 1994)

近年はColdplayなどのプロデューサーとしても注目を集めているBrian Enoの作品を、2点の3枚組CDボックスに集大成した。
BOXⅠではインストルメンタル作品を、BOXⅡではヴォーカル作品を収録している。シリーズもののボックスなので、2点を揃えるとヴィジュアル・イメージがより完結したものなるというワケ。デザインは上のRussel MillsとDavid Coppenhallの手によるものだ。

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●RYUICH SAKAMOTO / PLAYING THE ORCHESTRA (VIRIN JAPAN 1988)

世界的な名声を誇るアーティストの1人、坂本龍一の作品を集大成したCDボックス。
全世界30,000セットの初回限定生産のこのボックスは、日本を代表するアーティストの1人、大竹伸朗によるデザインワークが施された独特なボックス・アートになっている。
振れば「サラサラ」と音がする仕掛けの箱そのものも素晴らしいですが、このボックスのみに特典として同梱された2枚のシングルも貴重な音源といえよう。
Mjg_img_5469●VARIOUS ARTISTS / BRAIN IN A BOX (RHINO 2000)

「ボッ クスを手がけては右に出るものがいない」といわれるRhinoから発売された、SF映画やドラマなどの宇宙ものや、さらにロボットものなどをテーマにした5枚組CDボックス。

一見すると金属で作られた箱に見えるが、残念ながらフタだけ本物の金属製。しかし、箱の3面にホログラフィー処理された脳の意匠は本当に立体的に浮かんで見えるのが見事だ。
200ページにも及ぶ特製ブックレットも読み応え十分。
今回の「SFジャケット特集」を締めくくるにふさわしいアイテムではなかろうか。
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(敬称略 ※協力:本項解説文原本執筆・植村和紀氏、金羊社・奥平周一氏 )

Music Jacket Gallery展示の詳しい情報はコチラ⇒金羊社MJG常設展

※本展示は2012年6月に終了しています。現在の展示内容は上記の金羊社ウェブサイトでご確認ください。

2013年8月 6日 (火)

【Music Jacket Gallery】SFジャケット <中編>

<前編>の掲載からだいぶ時間が経ってしまったが、<中編>いきます。

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個人的な見方の問題で「SFっぽいもの」もしくは、「SFっぽくないもの」、色々と意見がわかれてしまうだろうが、こうして今回集められたジャケットを俯瞰してみるに、やっぱり「SF」というのは音楽と密接に結びつきやすい、ジャケットにとっては非常に普遍性の高いネタであることがわかる。

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何よりカラフルで見ていて楽しいよね!

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そのジャケットがなくなろうとしているんだから恐ろしい…コレはこのカテゴリーのテーマだから毎回触れないワケには行かないの。

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最近はほんの少しだけ、ほ~んの少しだけ電車の中で電子書籍を読んでいる人を見かけるようになったけど、日本でのアレの普及具合というのはどうなんだろう?進んでるのかしらん?
私が年いっているせいか、ハタで見ていてカッコいいものには見えないな。何か恥ずかしい。
若い人がアレを使っているのはまったく見かけないような気がするね。ま、本自体読まないことぐらいはわかっているけど、マンガをアレで見ないのだろうか?

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個人的にはね、あんなもの流行って欲しくないと思っている。
読書は目で字面を楽しみ(コレは電子と同じ))、紙のニオイをたしなみ、ページをめくる音に心躍らせるものだ。そして、読後にもう一度楽しみがやってくる。それは「蔵書」だ。読んだ本を並べてもう一度外観で楽しむ。電子書籍にコレができるかってんだ!

レコード、CDも同じ。
いつも「ジャケットがなくなる!」と騒いでいるが、この本の例を見ると、案外安泰かな?と思ったりしてきた。日本人は優秀だから。

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<前編>にも記した通り、この展示は2012年4~6月のものだ。諸般の事情により掲載が大幅に遅れてしまった。現在は違うテーマの展示となっているのでご注意頂きたい。

また取り上げる点数を少々減らす代わりに深く掘り下げてみた。掘り下げた内容はいつも通りのくだらないウンチクだ。
この点が<前編>と若干テイストが異なるように受け取られるかもしれないがご容赦いただきたい。何しろ今回コレ書くのに1年以上の時間がかかっちゃったもんですから…植村さん。ゴメンナサイ!

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Music Jacket Galleryの詳しい情報はコチラ⇒金羊社ミュージック・ジャケット・ギャラリー
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<前編>で「いいジャケット」と紹介したHAWKWINDの諸作。このHipgnosisが担当した『Quark, Strangeness and Charm』は7枚目のスタジオ録音盤だ。

コレ、宇宙船かなんかの操縦室のように見え、いかにもSFらしいのだが、実は丸っきり現実のもの。

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このジャケットはPink Floydの『Animals』でおなじみのBattersea Power Stationのコントロール・ルームなのだ。このHawkwindの作品が1977年。『Animals』も1977年。この年はBatterseaがHipgnosisのブームだったのだろうか?

Battersea Power Stationは『名所めぐり』で詳しく解説した

それにしても素敵なジャケットだ…ジャケットだけ欲しい…。

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Hipgnosisが続く。

これもAlan Parsons Project。1977年の『I Robot』。もちろん、出自はアシモフの『I, Robot』。有名な「ロボットは人間に危害を与えてはならない」…のヤツですな。

今回、アシモフを調べてて驚いたのは『ミクロの決死圏』ってアシモフだったのね?知らなかったな~。小さくなった人間が要人の身体の中に入って致命傷を治療しようなんてアイデアがスゴイ。ドラえもんより前にアメリカにはスモールライトがあったんだから!…と感心していたら、実は逆で、映画を小説家したのがアシモフなんだと。ガックシ。

Hipgnosisのジャケットは元々SFチックなデザインが多い。

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残念ながらAlan Parsons Projectのアルバムも何枚も持ってはいるけど、まったくと言っていいほど聴かないので内容については触れることができませ~ん。

それでも食いついておかなければ…とよせばいいのに安いからってベスト盤まで買い込んだ。やっぱり聴かないもんだから、また時がめぐりて同じものを買っちまった!

最近、ダブりが頻繁に起こるようになってきた。特に危ないのがジャズのCDなんですよ。さすがに3枚同じものを買うことはないが、Hank Mobleyあたりなんかかなり危ない。

で、重宝するのがiPOD。買ってきたきたCDをとにかくジャンジャン入れてしまう。それで店でCDを探していて怪しい…と不安に思ったらiPODをその場でチェック。索引的に使うのだ。
でも、もう160GBなんてアッという間にパンパンになっちゃうから、「どう考えてももう金輪際聴かないな…」と思えるヤツは入れないでおく。すると、そういうCDに限ってどういうワケか気になり出してしまう。で、CD屋に行って、持っているかどうかが怪しくなり、例によってiPODをチェックするが、入れてないもんだから「お、持ってないや」と思い込んでまた買ってしまう。

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しっかし、Alan Parsonsはジャケットで得をしてるよナァ。ホント、どれもこれもHipgnosisに助けられて(?)いるように思えますわ。

1984年の『Ammonia Avenue』。「Ammonia」とは「アンモニア」のこと。

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皆さんは気がつかれただろうか?
気がついたよね?

このジャケットのデザインは、この化学工場かなんかの配管の一枚の写真を…

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ほぼ左右対称に配置して…

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今度は上下で同じことをする。

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さらにこれを右に45°回転させるとジャケットのデザインになる。

さすがHipgnosis。たったこれだけの作業でこれほど雰囲気のあるイメージを作り出してしまうのだからスゴイ。こんな作業でギャラもさぞかしスゴかったんだろうな。

Keith EmersonのThe Niceの『Five Bridges』なんかでも同じ手法が使われている。

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まだまだ続くHipgnosis。

前回も登場したElectric Light Orchestra。これはセカンド・アルバム。また電球。Lightだからね。
元のイメージは『2001年宇宙の旅』かなんかなのだろうか…。チープだけどもっとも今回のテーマに則しているかも?
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Brand Xはいいよな~。VirginのA&Rマンが備忘でカレンダーに記した名無しのバンドの仮称「Brand X」がそのままバンド名になったという。
このバンド、Peter Gabrielの後を継いですっかりGenesisのボーカルになってしまったPhil Collinsがドラマーとして活躍する場を作るために結成したバンドという認識があった。
CollinsはThe Buddy Rich Big Bandとも共演した、ちゃんとした4ビートが叩ける名手だからね。 
ところが、この人、Brand Xを作ったどころかオリジナル・メンバーじゃないっていうじゃない?思い違いと言うのは恐ろしい。
でも、Percy Jonesのフレットレス・ベースとのコンビネーションは抜群だ。それこそPercyは世が世ならJacoと並び称されてしかるべき偉大なベース・イノベイターだった。それが、あれほど小さくまとまってしまったのは残念だ。
もし彼がこのイギリスのいち小バンドにとどまることなく、マンハッタンでバリバリとジャズを演奏していたらMcLaughlinみたいにもっとビッグになったのかもしれないじゃない?もし、Milesの目に留まって『Jack Johnson』をMcLaughlinとやってたらスゴかったのにな。ちょっと時代が合わないか…5年ぐらい。それにあのMichael Hendersonも十分にスゴイからいいか…。

さて、このチームもHipgnosisの作品が多い。これもしかり。これは1979年の5枚目のアルバム『Product』。
これどういう意味があるんだろう。真ん中のオッサンが作った変な薬を飲んだ男が凶暴になって自販機をブっ壊しているところ?
ウルトラセブンでこんなような話があったような…メトロン星人か?そういえば高校の時、佐々木っていうヤツ、「メトロン」っていうアダ名だったな。

こういう一編のスペースに物語を押し込むのもHipgnosisの得意技だ。何となく、Wishbone Ashの『Front Page News』みたいだと思いませんか?

ところでこのアルバム、なんだろね?スッカリPhilが歌い込んじゃって…。このアルバムに収録されている「Don't Make Waves」と「Soho」は当時シングルカットされたそうだ。それにこれらの曲は、PhilがGenesisの外で初めて録音した歌だそう。こんなのヒットせんよ。

ま、そんなんでバンドとしては新しい試み…ということだったんだろうけど、前作の『Masques』の方が全然よかった。曲の手の込みようが違う。

Brand Xは2000年代に入り、Sarah Pillowという女性シンガーのサポートを務め、『nuove musiche』や『remixies』というアルバムを制作している。
このSarah Pillowという人は一応ジャズ畑の人らしいが、音を聴くと中近東ムードが横溢した何とも言えない雰囲気。そのバックを務めるのがBrand Xである。バックとはいえ、この『Product』よりよっぽどBrand Xらしくてカッコいい。おススメです。
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Yes初代のギタリスト、Peter Banksが結成したFlash。これもいかにもHipgnosisらしいデザイン。以前にも取り上げたかな、この一見すると砂丘に見えるのは人間の手。
Peterも今年の3月、鬼籍に入ってしまった。

このジャケットを見ると思い出すのがコッポラ。彼が『ワン・フロム・ザ・ハート』という映画で砂丘の表面の曲線を美しく表現したいと言って、女性を砂に埋めたとかいう話しを聞いたことがある。オイオイ、無茶すんなって!ナスターシャ・キンスキーってどうしたかね?お父さんのクラウス・キンスキーのことなんかまったく忘れていたけど、ずいぶん前にお亡くなりになられていたのか…。
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1973年、Led Zeppelinの5枚目のアルバム。

イギリスの『Classic Rock』誌における音楽関係者が選ぶ「ブリティッシュ・ロック・ベスト100」の燦然と輝いたのがこれの前作の『IV』だった。その理由は、それまでにZeppelinが歩んできた道のすべてがうまく融合された作品となったからとかなんとか…。

ま、ようするに前作で頂点を極めていたワケですな。そして、「新たな一歩」感がにじみ出ているのがこの『Houses of the Holy』ということになっとるハズ。Zeppelinは殺人的に詳しい人がゴマンといるので作品についてはあんまり触れないでおいとくか…。でも、これって発表されてから40年も経ってるのね。

ナンカ自分の中では70年代ってそれほど昔のことではなく、80年代は結構最近っていう感じがするんです。60年代はさすがに昔だな。でも、1973年って40年も前なのね~、コレ、LPの時。「Houses of the Holy」って印刷された横の帯がついていたよね、確か?

コレの次作の『Physical Graffiti』に「Houses of the Holy」っていう曲が入っているでしょ?アレは当然このアルバムにタイトル曲として収まるハズだったんだけど、「どーもなー」というので収録しなかったらしい。タイトル曲をとりあえずボツにしてしまうなんて…。

さて、ジャケット。テニスのラケットの話は以前に書いた…と。

このデザインはイギリスの作家、Arthur C. Clarkの『Childhood's End(幼年期の終わり)』というSF作品にヒントを得て制作された。このクラークというおじちゃん、『2001: A Space Odyssey(2001年宇宙の旅)』の原案というか、ようするに元ネタを書いた人なのね。…ここでウチにあるキューブリック関連の本を引っ張り出してみる…(こんなことやってるから膨大が時間がかかってまうんですわ。でも気になりだしたら止まらない!)。

その原案とは『Expedition to Earth(前哨)』という短編で、なるほどあらすじを読んでみると『2001年』っぽい。で、このクラークは映画の脚本もキューブリックと共同で担当している。 ああ、2001年ももう10年以上前の話になっちゃったね。

このジャケット、写真はHipgnosisのAubrey Powell。Storm Thorgersonの相棒だ。ペルーのどこかもロケ地の候補に選ばれたが、最終的には北アイルランドの「Giant's Causeway(ジャイアンツ・コーズウェイ)」が選ばれた。このGiant's Causewayというのは火山活動によって作られた40,000もの石柱からなる奇景で、世界遺産にも選ばれている。

この撮影がやたら大変だったらしい。日の出と日の入りをとらえるために朝一番と夕暮れの2回の撮影が敢行されたが、あいにく天気が悪くまったく思うような写真が撮れなかった。

ジャケットに写っているふたりの子供はStefanとSamanthaのGates兄妹。Stefanは食べ物や料理の本を著している他、テレビタレントとしても活躍している。このジャケ写撮影時は5歳だった。
このふたりの写真はモノクロで11のパターンが撮影され、後にGint's Causewayの写真と合成された。
内ジャケの写真はGiant's Causewayの近くのDunluce Castleという中世に建てられた城で撮影された。

「ロック名所めぐり」の取材で両方とも見てみたいとは思うけど北アイルランドじゃナァ~。

このアルバムも前作同様、バンド名もタイトルも記載されない予定であったが、「それじゃ困る!」と泣きを入れるWarnerにマネージャーのPeter Grant(「ロック名所めぐり」見てね)は、「んじゃ、バンド名とタイトルと印刷したオビを巻いたらいいんじゃねーのか」と提案し、実行された。
それが冒頭に触れたオビ。このオビはジャケットの子供のツーケを覆い隠す目的もあったという。実際にアメリカの南部のいくつかの州では、何年かの間、このアルバムの発売が禁止されていたという。
1980年のCD化にはタイトルが印刷されてしまった。つまらないね。

ちなみに、いまだにまったく文字が入っていない『IV』は色々な名前で呼ばれている。日本では圧倒的に「フォー」だろう。本国イギリスではどうか…これもいろいろな呼び名があるんだろうけど、あるMarshallの友人は『Four Stickers』と呼んでいた。

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中学の終わり頃からプログレッシブ・ロックに夢中になり、もう楽しくて色んなものを聴き漁った。いや、実際には経済的に「漁る」なんてことは許されず、吟味に吟味を重ねて一枚一枚LPを集めていった。
するとイタリアはプログレッシブ・ロックが盛んであることを知り、PFMを買ってみた。
King Crimsonが好きだったのでPeter Sinfieldがプロデュースしているという『Photos of Ghosts(幻の映像)』を買って聴いてみたらこれがスッポリとハマっちゃって…。
当時はイタリアのロックの情報なんてほとんどないので、「マルコーニおばさんのおいしいパン屋」とかいう意味のバンド以外はコワくて手を出せないでいた。何せ少ないおこづかいだからね。

で、プログレッシブ・ロックのLPを集める指針のひとつとして、ヴァイリンが使われているバンドを優先的に探した。

その中で出くわしたのがこのArti & Mestieri。「芸術と職人」というのがバンド名の意味だ。まるで、上野の西洋美術館の特別展みたいな名前だ。

初めて聴いた時、とにかく「ナニこれ?!」ってぐらいカッコよくてビックリした。
ここで、どこがどうカッコいいとゴタクを並べるのもヤボというもの。とにかく聴いておいた方が人生得というもの。

他に有名な作品が出なかったのがこのバンドの不幸なところだが、この一作でプログレッシブ・ロック史に名を残す十分によい仕事をしたといっても過言ではなかろう。
この後に出したライブ盤なんか、当然この『tilt』を聴いた人は飛びつきたくなるだろうが、これが甘い!音の悪さに絶句すること間違いなし。こうしたプロダクションの甘さがこのバンドをいまひとつ上のランクに押し上げられなかった原因であろう。

とにもかくにもFurio Chiricoのドラムが圧倒的だった。名前がまた「キリコ」というのも印象的だった。
世間では「キリコ」といえば「磯野」ということになるんだろうが、私は違う。「ブラックジャック」に出て来るあのすぐに安楽死させちゃうコワイ医者のイメージだ。
そして、後にはThelonious Monkの『Misterioso(このライブ盤は必聴。Johnny Griffinの壮絶なブロウを是非体験あれ!)』のジャケットでおなじみのGiorgio de Chirioco(ジョルジュ・デ・キリコ)。そんな強いイメージがあったのでその名前を忘れることはその後もなかった。

ピンボール・ゲームで台に大きなショックを与えると「Tilt」というサインが出てその回の球が無効になってしまう。この『tilt』はその「tilt」なんだろうか?
このファースト・アルバムの漏斗(ろうと・じょうご)のイメージが強く、Arti & Mestieriはこれがトレード・マークみたいになっちゃった。なんで漏斗なんだろう?
色々調べたがこれはわからなかった。

Furioに訊いてみればよかった!
そう、私はFurioの知り合いなのだ!(あるいは、知り合いだったのだ!)

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というのは、数年前フランクフルトで、友人を通じてあるアメリカ人にFurioを紹介したことがあった。
もうかなり年配のハズのFurioなのだが、おっそろしく若く、そして私の太ももはあろうかというほど太い筋肉隆々の腕に驚いた。一見してかなりトレーニングを積んでいるのがわかった。

この時の話しは最終的に実ることがなかったが、Furioがこの時のお礼に、といって友人経由で後日プレゼントしてくれたのがこれ。
arti & mestieriのデビュー33年を記念したボックス・セットだ。
うれしかった!
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そして中にはFurioのサイン入りの愛用のスティックが1組。そして、「しげへ」、「ふりお」と直筆でサインを入れてくれた手紙が一通。我が家の大事な宝である。

とっさのことだったので、お返しを用意していなかった私は、本屋へ行ってその時出ていたギター・マガジンを一部買ってその友人に渡した。
それはFrank Zappaの特集号で、ちょうど私が書いた記事を掲載してもらっていたのだ。もちろん私はFurioがZappaの大ファンと知っていた。これにも大変喜んでくれたらしい。
人生、何が起こるか本当にわからないものだ。
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Van Der Graaf Generator…カッコいい名前だ。
Van de Graaff Generatorという静電発電機が名前の由来。日本語では「ヴァンデグラフ起動機」っていうんだって。よく丸い球から青い稲妻見たいのが出てて、それに触ると髪の毛が逆立っちゃうヤツあるじゃない?あんなイメージ。綴りが違うのはただの間違い。

1967年にマンチェスターで結成されたバンド。いったん活動を停止したが、2005年に活動を再開して現在に至っている。ちょっと前に日本に来たよね?

このバンドはボーカルのPeter Hammillの声がシックリくるかどうかで好みがわかれるんじゃないかナァ。一応プログレッシブ・ロックの仲間として取り扱われるけど、一般的なブリティッシュのプログレのバンドとは精神性が大きく異なるような気がするのは私だけだろうか?

十分人気のあるバンドではあるけれど、Peter Hammillという個性を擁していながら何となく超一流になれなかったのは、やっぱり「コレだ!」という一枚に恵まれなかったからではなかろうか?

私は案外好きで下のアルバムの前作、『Still Life』までのアルバムは揃えているが、やっぱりアルバム毎の印象がウスイような気がするナァ。
それらの諸作よりもHamillのソロ・アルバムの「♪インペリアル・ツェッペリン~」の声が先に思い浮かんでくるわい。

これは7枚目のアルバム『World Record』。文字通り「世界」と「レコード」が一緒になってる。いいシャレだと思ったんだろうね。
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これはまさにSF的なジャケットですな。
GeordieとはNewcastle Upon Tyne(ニューキャッスル・アポン・タイン:ニューキャッスルの正式名称)出身のバンド。
Geordieというのはニューキャッスル出身者のアダ名。(このあたりの情報はNew Castleにほど近いSouth Shieldsに住む親友、Steve Dawsonによるもの。是非Shige Blogの『イギリス紀行2012』を見て欲しい)

今になっては、現AC/DCのBrian Johnsonが在籍したバンドとして知られている。
残念ながら音は聴いたことはないので、いつか実現する日を楽しみにしている。
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The Enid(向こうの人は「イーニッド」と発音する)を聴いている人って日本で果たしてどれくらいいるんだろうか?私は案外好きで、アルバムも結構持っていたりする。
The Enidはプログレッシブ・ロックの範疇に片づけられることになっているが、それともチョット違うサウンドなんだな。
「ロックとクラシックの融合」なんてバンドが古今東西出てきては消えて行ったが、このThe Enidこそ「ロックとクラシックの融合」を果たしたバンドではなかろうか…なんて思ったりする。

…というよりクラシックそのもの?クラシックのメロディをロックの楽器で強引に演奏した…みたいな。他の「融合バンド」はロックにしちゃうんだけど、The Enidはクラシックのままなんだよね。
私は存外にクラシックが好きなので、ときどきCD棚から引っ張り出しては聴いているが、クラシックに興味のない人にとってはThe Enidの音楽は苦痛以外の何物でもないであろう。

他にも中世の音楽とロックを混ぜっこにしたというGryphonなんてのもいたけど、こうした音楽がまかり通っていた時代があったということもスゴイ。

さて、このアルバムはそのThe Enidの主宰者であるRobert John Godfreyの1974年のソロ・アルバム。
もともとはクラシックの出身でBarclay James Harvestを観てロックに転向しちゃったという人。その後、Barclay James Harvestのメンバーになれる、なれないというモメ事が発端となり印税問題で訴訟まで起こしたらしい。

ちなみにBarclay James Harvestも昔はMarshallのプレイヤーでチャータージェットにMarshall積んで国内外をツアーしていたというのだから隔世の感は否めない。そういえばちょっと前に来日してたね。
1&2枚目はすごくいいんだよね。

話しを戻して、このアルバムもギンギンに(?)クラシックしちゃってる。何となくこの声がSparksのMaelさんとこの弟さんみたいな感じに聞こえる?
メロトロン、パイプオルガンが怒涛のように攻め寄せる何しろ大仰なサウンドが魅力だ。
それと、前半、ずっと電話の音が聞こえるようなきがするんだけど…ウチのスレレオこわれてんのかな?

ジャケットも強烈だ。これはSFということではなく、この人がテーマにしている新旧約聖書に出て来るアイテム、つまりバベルの塔、エルサレムの神殿、イナゴがモチーフになっているらしい。

ちなみにHyperion(ヒュペリオン)というのはギリシア神話に出て来るUranusとGaeaの子で(誰なのよ?)、7番目の土星の衛星にもこの名がつけられている。Uranusは天王星のこと。そしてGaeaは地球のこと。TV番組のタイトルにもつかわれている「ガイア」ってヤツね。

それから『The Fall of Hyperion』という小説があるようだが、この作品とは時代が違う。
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Rick Wakemanは絶大な人気を誇ったよね。Yesでの仕事は言うに及ばず、『ヘンリー』や『アーサー』や『地底探検』だの良質なソロ・アルバムを連発した。
Rickはもともとセッションプレイヤーで、「名所めぐり」でも紹介したロンドンのTrydent Studioのハウス・キーボード・プレイヤーを務めていた。
特にDavid Bowieのセッションには重用されていたようで、有名なところでは「Space Oddity」のメロトロンはWakemanが弾いている。ギャラは£9.0だったらしい。

これもすでにどこかに書いたが、初めてイギリスのMarshallの工場に行ったとき、Jim Marshallから「シゲ、いつまでここにいるんだい?」と訊かれ「明日、日本へ帰ります」と答えた。
するとJimは「あ~、それは残念だな。明後日Rick Wakemanが工場に来ることになってるんだよ」と聞かされ臍を噛む思いをした。

Rickの息子さんはAdamといってマーシャルの創立50周年記念コンサートにキーボード・プレイヤーとして全面参加した。Ozzyのバンドでも活躍している。

そうして傍から見ていてJimとRickの仲がとてもいいように思えたのは双方がイギリスの芸能関係者の慈善団体、「Water Rats」のメンバー(定員が厳格に定められていて、ちょっとやそっとではメンバーになれない。確かBrain Mayもメンバーだったような…)だからかと思っていたが、そうではない他の大きな理由を最近知った。
ナント、Rick WakemanはSaturday Boy(ようするにアルバイト)としてJimの店で働いていたことがあったのだそうだ。
ああ、イギリスはおもしろい!


これはRick Wakemanの6枚目のソロ・アルバム、『No Earthy Connection』。
デザインはAnamorphose、いわゆる「歪像」とかいう一種のだまし絵の技法で描かれている。
私はこのアルバムは買ったことがないので知らなかったが、オリジナルのLPには銀紙のようなものがオマケでついていてた。それを丸めて円筒状にしてジャケットの真ん中に置くと、そこにはア~ラ不思議、これからピアノを弾くぞ!っというRickの姿が映し出されるのだ。
この技法は特段新しいものでも何でもなくて、15世紀にはもう登場していて、円筒へ投影したのが17世紀のことらしい。

さて、Rick Wakemanが登場したところで少しYesの話しをば…。
私も『Relayer』までのYesは大好きだ。『Going for the One』を聴いてガッカリし、「トマト」だの「クジラ」だのはまったく聴く気も起らなかった。それもこれも、あの時代、音楽の方向性が変わり、それまで崇高なまでのオリジナリティを誇った立派なバンドの多くがポップ化した。YesもELPもすっかりおかしくなってしまった。
もし、あの時、こうした一流のプログレッシブ・ロックのバンドが矜持を保ち、独自の路線を貫いていたら一体どういう作品を残していただろう?ロックの世界は今とどう異なる様相を見せていただろう?そういう意味では、個人的にはパンクやニュー・ウェイブと呼ばれる類の音楽の出現を呪いたくもなるものだ。
あ、ここではこんなことを書こうと思っていたワケではなかったんだ。

その好きな『Relayer』以前のYesでも『海洋地形学(ここは邦題で行きます)』だけは苦手で、中学の時に買って聴いて以来、一回も聴いたことがなかったように思う。
この『海洋地形学』、苦手なのは私だけではないようで、かなり多くの人がこの作品を重要視していないようだ。
でもイギリスでは前作の『Close to the Edge(危機)』の方よりチャートが上なんだよね。『海洋地形学』UKチャート1位になったけど、『危機』は4位止まり。
少なくともジャケットは大変SF的だけどね…。

ところが…だ。これが実にいいのである。ちょっと思うところあって、最近CDで買い直してみた。やっぱり最初はつまらんナァ~…と放っておいたのだが、しばらくして旧LPでいうC面以降を聴いていないこと(CD2枚目)を思い出して試しに聴いてみた。「The Ancient」という曲だ。

これが破天荒にカッコいいのである。なんだ、もっと早く聴いておけばよかった!
Bill Brufordが抜けてAlan Whiteが参加した最初のアルバムだが(Alan Whiteの『Ramshuckled』はいいよ)、『危機』でアイデアを出し尽くしてしまって、どうもヤケクソになっている感じがする…というのは何かものすごくゴッタ煮的に聞こえるんだよね。

Jon Andersonが「もうやることないからみんな好きなことやっちゃって!何でもブッ込んどけばダシが出るって!」と指示したみたいな…。
ま、まさかそんなことは無かろうが、Steve Howeは「Close to the Edge」のテーマ・フレーズ弾くわ、「Mood for a Day」の宣伝みたいなパートはあるわ、Rick Wakemanはジャンジャン遠慮なしにメロトロンかますわでおもしろいことこの上ない!

で、一番驚いたのは、この「The Ancient」という曲の冒頭、テーマの提示部みたいなところ、つまりRick Wakemanがマリンバのような音で弾くブッ早いフレーズ。
これって『ヘンリー』に入っている「Anne of Cleves」とまったく同じじゃんか!こんなのいいのかね?
『海洋地形学』も『ヘンリー』も同じ1973年の発表だ。もしかして、「ねジョン、今度出すソロ・アルバムの一部を使っちゃってもいい?どうしても宣伝したいのよ~」とリック。
「いいさ~!どんどんダシを出しちゃって!」とジョン。

…と、こんなシーンがあったらおもしろいナ…なんてことを考えながら聞くアルバムが『海洋地形学』なのです。ホンマか?!
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これは何かメチャクチャ不吉なイメージのジャケットですナァ~。

Dixie Dregsもほとんど聴かなかったナァ。
Steve Morseをはじめ、Dave LaRueだのRod Morgensteinだの、テクニシャンがそろっているんだけど、どうも夢中になれなかったナァ。根っからカントリーっぽいのが苦手なんだろう。
それでも何枚か持っていて(多分このアルバムも持っていると思うけど、聴いた記憶がないナァ)、高校性の時に買った「Night of the Living Dregs」には苦い思い出がある。

このアルバムのB面はライブ音源で構成されており、その2曲目に「The Bash」というブルーグラス調の高速超絶曲が収録されている。
曲の中盤と後半に出て来るSteve Morseとヴァイオリンのハモリのパートがスリリングでこの曲だけは大好きだった。

それから約30年後、ナッシュビルの偉大なフィンガー・ピッカー、Doyle Dykesと知遇を得る機会を得た。DoyleはChet Atkinsに「お金を払ってでも聴きたいギタリスト」と言わせしめたスゴ腕プレイヤーで、私は名前は知っていたが、実際のプレイには接したことはなかった。
来日の前に彼の当時の最新作『Country Fried Pickin'』が送られて来、聴いたところ、「The Wabash Canon Ball」というDixie Dregsの「The Bash」とまったく同じテーマを持つ曲が収録されていた。「おー、スゲエなDregs。Doyle Dykesにカバーされているんだ!」と感心した。だってDregsの方には作曲者としてSteve MorseやRod Morgensteinたちの名前が載せられていたからね。

そしてDoyleが来日。こっちは「彼のCDを聴きこんでいますよ!」なんて点数稼ぎのつもりで、よせばいいのにこんなことを言ってしまった。
「Steve Morseお好きなんですか?だってニュー・アルバムではDixie Dregsの曲を取り上げてますもんね!」
すると見る見るうちにDoyleの顔色が曇り、イヤな雰囲気になってしまった。あまりのショックでその時実際にどのようにDoyleが答えたか覚えていないが、後で真相を知って真っ青に、そして真っ赤になってしまった。

この曲は元々はアメリカの架空の汽車「The Wabash Canon Ball」を歌ったもので、いわゆるスタンダード・ソングだったのだ。Morseたちはそれに、先述の超絶パートを足してオリジナル曲として、つまり改作していたんだね。恥かいた~!私がどれだけカントリーに疎いかというお話し。

その後、北海道行きの飛行機の出発時間に間に合うように満員の地下鉄にDoyleを乗せようとしたら怒っちゃったなんて一幕もあった。
こんなことを書くといかにもDoyleが怒りっぽい、気性の荒い人だと思われそうだが、悪いのはこっちで、彼はとても心のやさしい敬虔なクリスチャンだった。

旅の終わりには、色々と面倒を看てもらったお礼にとSWATCHの時計をプレゼントしてくれた。私は彼に頼んで、時計バンドの内側にサインをしてもらった。今でも大切に保管している。うちの大切なメモラビリア・コレクションのひとつだ。将来「Hard Shige Cafe」を開く時に公開することにしよう。とにかく偉大なギタリストと素晴らしい時間を過ごさせてもらった。

さて、本項の主人公Steve MorseもMarshallを使わないナァ。でもね、数年前、Deep PurpleとYngwie MalmsteenがDouble headlineで来日したことがあったでしょ?
あの時、香港にいるMarshallのスタッフと一緒にYngwieのシグネチャー・モデルのプロトタイプを本人に見せに行ったんだけど、Yngwieの出番の時、ステージそでで身体でリズムをとりながら熱心に最後まで見ていた人がいたんだけど、それがSteve Morseだった。

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Frank Marino観ておいてヨカッタな~。つくづくそう思いますわ。
ギタリストとしては素晴らしいけど、音楽家としては小さくまとまってしまった感がありますな。やっぱりオリジナル曲のクォリティに問題があるとしか思えないな~。
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これが来日公演時のプログラム。1978年12月4日。場所は後楽園ホールだった。ここでは約半年前にRoy Buchananを観ている。父に連れられてそのズット前に同じ場所で観た出し物は、『底抜け脱線ゲーム』だった。

もうあまり語られることがなくなったが、Frank Marinoはエフェクターをアホほどつないで弾くのが有名で、開演前にはステージの前にギター・キッズが群がっていたっけ。その中に私もいたワケだけど、今だったら携帯で写真バシバシだろうね~。あの頃はただただ眺めて脳裏に焼き付けるだけね。

この日、ギターの調子が悪いとか言って1時間近く開演が押したんだよな~。でも演奏はスゴくて、もうどうしようもないぐらいの音数でブッたまげた。

当時は紙テープを投げるということがまだ比較的当たり前で、私もいくつか買って持って行った。もちろんそんなつもりは無かったのだが、手元が狂ったのか、投げた紙テープが見事にFrank Marinoの右肩に命中してしまい。ギロリとニラまれたのを覚えている。もう紙テープを投げるロック・コンサートなんてまったくなくなっちゃったね。

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CANか…。確かにデザインはSFチックだね。
聴かないんだよな~、ドイツ・プログレ。Tangerine DreamとかKraftwerkとかまったく受け付けない。
Faustもジャケット欲しさで買ったもののサッパリわからんな~、どこがおもしろいのか…。

CANもスゴイ、スゴイってんで『Tago Mago』あたり聴いたけどピンと来ないんだよな~。なので特にコメントはないんだけど、ひとつだけ。

ドイツ人の友達に言わせるとScorpionsあたりは究極的に古臭いんだそうだ。もちろん聴き手の個人差はあるんだけど、わかるような気がする。
というのはウチの家内の親友がドイツ人と結婚した。名前はKlausというんだけど、世界を股に掛ける経営コンサルタントだ。彼も部類の音楽好きということで気が合うな…と思ったらトンデモナイ。
おおよそ私の好みとはほど遠く、それこそTangerine DreamだとかGuru GuruだとかNEU!だとかAsh Ra Tempelだとか…。他にもノイズ系の無機質な音楽が好きだと言っていた。

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これも苦手のKlaus Schruzeの『Time Wind』。こりゃ、さっき出たキリコとダリが合体したような絵ですな。これとか『Irrlight』とかジャケットはいいんだけどな…。

ドイツはフリー・ジャズなんかも当たり前に受け入れられている。音楽に関して言うと、ドイツはベートーベンだのシューベルトだのブラームスだのワーグナーだのたくさんの楽聖を輩出していて、その伝統を何か新しいモノでブチ壊したいという風潮がいつもあるらしい。
そこで既存のロックよりも、こうしたドイツ独特のロックが発展したという話しを聞いたことがある。
だから友人のKlausの好みもそういうことになっていたようだ。

伝統のバイツェン・ビールはおいしいよ~。大好き!フランクフルトはザクゼンハウゼンのアップル・ワインも美味!肉がおいしいからね。よく合うんだ。
でもね~、スーパーで売ってるハンバーグだの、ウインナ・ソーセージなど、飛び上がっちゃうほどしょっぱい。あれは食えんナァ~。

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ドイツから今度はフランスへ…といってもGONGの総裁、Davis Allenはオーストラリア人だ。
ま、とってもアタマがイっちゃってる人ですから、やってることもよ~わからん。でもそこがいい。
ってんでこれは「Radio Gnom Invisible(見えないラジオの精)」の三部作の第一作目。ちなみに「Gnome」の「g」は黙字で「ノーム」と発音する。
このシンプルなイラストが何とも可愛くてユーモラスで味わい深い。David Allenソロ名義の『Good Morning』もいい。

とにかくこのバンドはウマイんだかヘタなんだか、幼稚なんだか大人なんだか、まじめなのかふざけてるのかよくわからない。それこそGONGサウンドとしかいいようのないスタイルが魅力だ。
場面がコロコロ変わるシアトリカルな曲と目も覚めるようなシャープなジャズっぽい演奏のコントラストも素晴らしい。
ま、全部のアルバムを聴いているワケではないので、これはあくまでも私流の楽しみ方として受け取ってチョ。

1974年の『You』から参加するPierre Moerlen(これが読めない。「ピエール・ムーラン」とされているけど、どうなんだろう。今度フランス人に確かめてみるね)が参加し、主導権を握るようになってからこのバンドはスタイルを変え、パーカッショニストをフィーチュアしたフュージョン・バンドになってしまう。
これがカッコよくて『Expresso II』や『Gazeuse!』は今でも時々聴いている。この頃のAlan Holdsworthは本当にスゴかった。
ところが、Didier Lockwood、Mike Oldfield、Steve Winwood、Mick Taylorらをゲストに迎えた続く『Downwind』でガクッときて、さらに次の『Time is the Key』がつまらんかったな~。
でも、この辺でベースを弾いているHansford Roweってのはいいね~。
『Expresso II』の曲を演奏している1980年の『Poerre Moerlen's Gong Live』ってのはよく聴いた。
Pierreも2005年に亡くなっている。

フランスのロックもクセモノが多くておもしろい。私はゼンゼン詳しい方ではないが、MAGMA、ZAO、Pulsar、Atoll、ZNR、Tai Phong、Angeあたりはいいナァ。
ところで、MAGMAってChristian VandeがColtraneのフォロワーを標榜しているけど、ホントはストラヴィンスキーになりたいんじゃないの?って聴くたびに思う。

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Frank Zappa『Overn-Nite Sensation』。見れば見るほどものすごいイラストだ。David McMackenという人の作品。Zappaに関してはMJGではあんあまり書かないようにしているので、書かない。キリがなくなっちゃうのよ。

ちょっとだけ書くとこの『Over-Nite Sensation』は数寄屋橋のソニービルの地下にあったハンターで「1,000円以下コーナー」の中から見つけて買った。ちょっとスリキズがついていたので800円だったのを覚えている。

アメリカで見つけたコレの4チャンネル盤の話しは以前に書いた

これと『One Size Fits All』の譜面がアメリカのメジャー音楽出版社、Hal Leonardから出た。『Hot Rats』と『Apostrophe (')』の上梓に次ぐ快挙だ。暇を見つけては「Montana」の真ん中や「Zomby Woof」あたりをさらってみようとは思っているのだが、なかなか根気が続かなくて…。もちろんすべてソラで歌えるぐらいメロディは熟知しているが、ギターで弾くとなると完全に別の話し。Steve Vaiってスゴイなァ。

最近もSteve Vaiが来日して大騒ぎになっていたけど、Zappa Plays Zappaで来た時なんかヒドかったよ。みんなあれがいいって言ってんのかな?
ギュインギュインとアームの上下ばっかりで、後半は見ているのも聴いているのも退屈で辛かった。楽屋ではとっても感じのいい人だったけど…。
上手ギターのJamie Kimeの方がよっぽどカッコ良かった。

私はずいぶん長いことZappa道を歩んできたので、Steve Vaiの名前は彼が世の中に最初に出てきた時から認識している。ZappaのバンドではStunt Guitarというクレジットで参加しており、Zappaが弾けない複雑なパートの担当ということになっていた。

Zappaのバンドに入りたくて得意の採譜力を示すために「Black Page」をコピーした譜面をZappa送ったという話しは有名だ。
その後、めでたくバンドに加入した。ブートレッグなんかを聴くと今よりゼンゼンすごいことをやっていたと思うんだけどな…。
それと、ジャック・バトラーはメチャクチャいい仕事をしたと思う。

(また)ちなみに、アメリカでは穐吉敏子とZappaのバンドにいたことがある人は、オーディションなして仕事にありつける…という。それほどムズカシイことをやっていたというワケ。ホントにそうだったのかどうかは分からないが、大好きな話し。

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Kevin Ayersのソロ3作目『Whatevershebringswesing』。長い単語だ。一見するとポピンズ先生がいうところの一番長い英単語、「Supercalifragilisticexpialidocious」みたいだ。
もちろんこれは単語ではなくて「Whatever she brings we sing」で、「彼女が何を持ってこようとも僕らは歌う」ぐらいの意味になろうか。
1971年の作品で、GONGとKevinのバンド、The Whole Worldがバックを務めている。

David Bedfordの重厚なオーケストレーションにはじまり、バラエティに富んだ曲がギッシリとつまったこのアルバムはまるで映画のサウンドトラック盤を聴いているようだ。というか、このアルバムを聴きながら映画の脚本が1本書けそうな…。

それにしても気色悪いジャケットだ。でもスキ。kevinの作品はどれもジャケットの趣味がいい思う。「水」がテーマのこのアルバムには水が流れる音を使った曲が最後に入っており、LP時代にはループしてその水の音が延々と流れるようになっていた。(こういうエンドレスのLP盤を作ってはいけないルール があると聴いたことがあるけど…)

はじめてKevin Ayersを聴いたのは『June 1,1974』だった。EnoやNico、John Caleらが集まったRainbow Theatreのライブ盤だ。
35年まぐらい前のことで、これが廃盤扱いになっていてまったく手に入らなくて苦労した。輸入盤でも手に入らなくてイギリスから取り寄せてもらった。
Enoの「Baby's on Fire」はいいものの、Caleの「Heartbreak Hotel」とかNicoの「The End」とか、「なんじゃコリャ?」の連続だったか惹きこまれてしまった。

一番耳を惹いたのはB面の1曲目に収録されていたKevinの「May I?」だった。もっと正確に言うと「May I?」のギター・ソロにしびれた。弾き手はPeter Ollie Halsole。Time Box、Patto、Boxer、The Rattlesなどに在籍したレフティのギタリストだ。
最近ではTempest時代にBBCラジオに出演した時のAlan Holdsworthとの壮絶なギター・バトルを収録した音源が公式に発表され、その名を知った人もいるかもしれない。
程よいクランチ加減のSGサウンドでジャズっぽいフレーズを猛烈な速さで弾きまくるスタイルが素晴らしい。

一方のKevinはというと、いっくらなんでも歌を歌うには低すぎるだろう!という感じの声でなかなか取っつきにくかったが、何枚か買って聴いている内に味わいが出て来て好きになってしまった。
と言ってもトコトンまで追いかけたワケではないが…その中ではこのアルバムとOllieが初参加した『The Confessions of Dr. Dream and Other Stories』がスキ。

その後はKevinの片腕的に各アルバムにOllieは参加している。もっとバリバリとソロを弾いていたら夢中になっていただろうな…。

Kevin Ayersは後年、Ollieとともに来日して九段会館でコンサートを開いた…らしい。私はその頃地方に住んでいて来日したことすら知らなかった。観たかった!
Ollieは1992年、43歳の若さでドラッグ禍でこの世を去った。こう言ったらkevinやMike Pattoには失礼だが、もっと大衆受けするロック・ミュージシャンと組んでいれば、名声を残すことができたと思うナァ。本当にもったいない…というかもっと有名になってあの素晴らしいギターをふんだんに聴かせてもらいたかった!(ソロ・アルバムも出ているが、まったくおもしろくないので要注意)。

そのKevin Ayersも今年2月、68歳で亡くなってしまった。Mike Pattoもとっくにこの世を去っているし…こうしたいかにもイギリスっぽいミュージシャンがドンドン減っていることに我々は危機感を覚えるべきだ。
ヘンテコりんな声を出して軽佻浮薄なロックをやるヤツらは掃いて捨てるほどいるが(掃いて捨てた方がよい)、このいかにも大英帝国然とした重厚なブリティッシュ・ブリティッシュを継承するフォロワーがいないのだ。

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Miles Davis『AGHARTA』。1975年2月1日の大阪フェスティバル・ホールの昼の公演を収録した2枚組ライブアルバム。夜の部は『Pangaea』と題して同じく2枚組で発売された。
この時のMilesは18日間の滞在中、6日の休みを散りばめ札幌から博多まで回ったという。

ジャケットは一見してすぐにそれとわかる横尾忠則の作品。これはいいも悪いもない。「Tadanori Yokoo」ということだけで十分だろう。
今から20年近く前にニューヨークの近代美術館に行った時、唯一発見した日本人アーティストの作品は横尾忠則のものだった。他にも日本人による作品はあったんだろうけどね。とにかく目立つ。

このアルバム、いいんだけどね~、ひとつだけ気になるのはPete Coseyのギターの音色なの。Milesに「ジミみたいに弾け」と無理を言われ、ギュイ~ン、ギュイ~ンと派手にハードに弾きまくるのはいいんだけど、何かアンプが壊れそうでイヤなんだよね、Marshall屋としては。何を使ってるのか知らないけど…。
でも、コンプレッサーを5~6台つないで、絞りに絞ってネジ切れる直前のスポンジのようなこの音色は間違いなくワン・アンド・オンリーだろう。
それにしてもですよ、これをJimiが弾いていたらどんなだったかね?『Jack Johnson』ではあまりにMcLaughlinがカッコいいので、こんなこと考えないけど、『Agharta』と『Pangaea』ではそんなことも想像したくなってくる。
もちろんMilesもSonny Foruneもリズム隊もいいんだけど、やっぱギターに行っちゃうな~、最近まったく弾いてないクセに!

ちなみにこの作品にも収録されている『Theme from Jack Johnson』の肝心の映画の方を観たことある人いる?これDVDになってるのかな?
私はVHSを持っていましてね。先日倉庫のガラクタビデオをBook Offへ持って行ったんだけど、この『史上最強のボクサー ジャック・ジョンソン』とポールの『Rock Show』、それにJack Wilkinsがギターを弾いているThe Manhattan Transferの初来日時のライブ・ビデオ、それに先ごろ亡くなったBob Brozmanのサインが入っているドブロの教則ビデオとあと数本はキープしておくことにした。

このビデオ、信州のレンタルビデオ屋で見つけて数百円で買ったんだけど、定価はアータ、14,800円よ!
裏の解説には「全編に流れる音楽は、あのマイルス・デイビス自作自演のオリジナル・スコア」なんて書いてある。しかもご丁寧に音楽コーディネーターとしてTeo Maceroの名前まで出てる。こんなこと書かれるといかにもMilesの音楽が効果的に使われていて『死刑台のエレベーター』や『思春期』のCharlie Parkerみたいな状態を期待してしまう。
実際、この解説に偽りはないんだけど、ドキュメンタリー・フィルムとナレーションのバックで、ズッ~と、ダラ~っと、小さい音でBGM的にあの「Right Off」や「Yesternow」が流れているだけなのだ。オイ!もったいなさすぎるだろ!

ドンドン横道にそれているが、ボクシング・ネタというと、すぐにBob Dylanの「Hurricane」を思い出すでしょ?Rubin "Hurricane"Carterという無実の殺人罪を被せられたボクサーの話し。
のちにDenzel Washingtonを主演に据え、名匠Norman Jewisonが伝記映画を制作したが、あれはとてもヨカッタ。そのハリケーンの救済ソングだ。これはリアルタイムで聴いてとても感動した思いがある。それなのに…。
…というのは、Bob Dylanで最近知った話しが『Love and Theft』の話し。詳しくはコチラをご覧頂きたい。最後の最後にそのことについて触れています。

Jj_img_0178何でDylanまで来ちゃったんだっけ?

それにしてもスゴイ演奏ですだ。。
『マイルスを聴け!』でおなじみの中山康樹先生は、この日の演奏を両方ご覧になられて、「いまにも押しつぶされるんじゃないかと恐怖すら感じた」と述懐されているが、まさにそんな感じなのだろう。

身体に穴を空けたり、ピンを刺したり、恐ろしい形相をしたりしてスゴみながらバンドをやっていらっしゃる方もたくさんおいでだが、こと音楽に関してはMilesの演奏の方が数万倍恐ろしい。
だって、ここで演奏しているのは人間ではないからだ。「音楽の鬼」どもが楽器を演奏しているのだ。
鬼どもの饗宴は中山先生のご指摘通り、『Pangaea』の方がすさまじい。興味のある方には是非両方聴いていただきたい。ただし、取って喰われないように!

Milesの項、最後にもうひとつ。
私は寝る時にイヤホンをして音楽を聴きながら寝入るのが習慣になっているんだけど、流す音楽は必ずジャズで、ピアノ・トリオだったりすることが多い。
ヘビメタのコンサートのような爆音の環境でも人間は眠くなるワケで、「ああトミー・フラナガンっていいナァ~」って思っている内に気持ち良く眠りにつくのだ。
もちろんピアノ・トリオでなくても大丈夫。Ornette Colemanあたりはチョット辛いので選ばれることはないが、『Kulu Se Mama』まであたりのJohn Coltraneでも十分気持ちよく眠りにつくことができる。

実際にはやっていないが、好きなハードロックだったらどんなにうるさくてもほぼ問題ない。

ところが、Miles Davisはダメなのだ。とろけるような『Cookin'』nの「My Funny Valentine」や『Jazz Giants』の「The Man I love」のようなバラードも、あの美しい『Sketch of Spain』もダメなのだ。
どんなにトロトロしていてもMilesのトランペットが入って来ると「ハッ」と目が覚めてしまうのだ。
こんな例えでしかMiles Davisのスゴさを記すことはできないが、きっとMilesのスゴサのひとつはこういうことなのであろう。
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Weather Reportが2枚展示されていた。

このタイトルの英語がわからない。「I sing the body electric」。私のヘッポコ英語感覚では「Cry me a River」みたいな?

ジャズのスタンダードとしてよく歌われる「Cry me a River」はあまりにも重く切ないバラードで、以前、渡辺香津美さんがHoracio El Negro HernandezとRichard Bonaと組んだトリオのコンサートで、MarshallのHandwiredシリーズの18Wコンボ、1974Xでこの曲をア・カペラで弾いてくれた。
泣けたな~、あれは。会場は渋谷のオーチャード・ホールで何の伴奏もなしにこの切ないメロディをギターで朗々と歌い上げるサマには香津美さんに「世界一」を感じた。イヤ、実際にBe-Bopを弾かせたら、イヤ、弾いて頂いたら世界一の座は誰も奪い取ることはできないであろう。

で、「Cry me a River」というのは、「川で私のために泣いて」ぐらいの意味かと思っていたらさにあらず、「川一本分、私のために泣いて」という意味なのだそうだ(受け売り)。たしかに不定冠詞の「a」がついてるもんね。しかし、図々しいナ、いっくらなんでもそんなに泣けませんゼ!

さて、「I Sing a Body Electric」。これは19世紀のアメリカのWalt Whitmanという人の詩作が出自だそうだ。これが書かれたのは1867年のことで、まだ「電力」というものが普及していない時代だ。
「electric」と今では「電気的な」という意味しか頭に思い浮かばないが、「making people feel very excited(ロングマン現代アメリカ英語辞典)」という意味がある。

それにしても意味が取れないので、おなじみSouth ShieldsのSteve Dawsonに尋ねてみた。
答えは「わからん」。英語的にも意味が通じないらしい。
で、また答えがSteveらしく、「YesのJon Andersonもうまく言葉を操って、意味よりも『音』を重視した詩を書くクセがあったんだよ」だそうだ。
Ray Bradburyも1969年に同名の短編を発表している。

GONGじゃないけれど、Weather ReportもFleetwood Macのように結構スタイルを変え続けて活動したバンドだ。
みんなWeatherというと乾物屋みたいに「ジャコ、ジャコ」と叫ぶが、私はデビュー・アルバムから『Sweetnighter』辺りまでの初期の作品もスキ。
ナニもMirosrav Vitousが贔屓というワケではないのだが、何か新しいジャズを強引に作り出そうと苦悶しているような姿がいいのだ。
このアルバムも現在音楽っぽいアプローチがすこぶるカッコいい。

「Live under the Sky」でChick CoreaとRoy Haynesのトリオ、すなわち「『Now he Sings, Now he Sobs』の再現」というのでVitousを見たが、とにかくデカかった!

私的にはこのジャケット、ミジンコと見ている。

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ちょっと横尾忠則っぽいデザインの『Mr.Gone』。目だけ見ていると研ナオコに見えて来る。
Weatherも夢中になって聴いたのはこの後の『8:30』と『Night Passage』あたりまでだったナァ。
Zawinulお得意のアフリカン・テイストもワールド・ミュージックのブームが到来して新鮮味を失ってしまったって感じ?

『Heavy Weather』の時代に日本に来てるんだよね。東京公演はめずらしく会場が日比谷の宝塚劇場だった。
まだ私が高校の時のことで、もうギターに狂ってた頃。「ケッ、ギターのいないバンドなんかおもしろくもなんともねーっての!」ってなことで観に行かなかった。ああ、猛烈に後悔している。
オレだってサ、プロ・ギタリストになりたかったギター・キッズの頃があったのさ!

その後、ジャコはWeather Reportを脱退し、天才の名を欲しいままにしながら八面六臂の活躍を続けた。Aurex Jazz Festivalのビッグ・バンドとかね。それから、自分のコンボで来日した時はギタリストを現地調達した。そのギタリストは渡辺香津美だった。
この時の演奏が後にFMで放送されシッカリとエアチェックして今でも大切に保管してある。

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Edgar Winter Groupの『謎の発光物体』。なるほど見た通りのタイトルだ。しかもSF的。現在は『Unknown Radiated Object』…というのは真っ赤なウソで、ナ、ナント、このアルバムの原題が『The Edgar Winter Group and Rick Derringer』という。オイ!いい加減にしろよ!
こんなことやってるから「哀愁のヨーロッパ」みたいな事件を引き起こしてしまうのだゾ!

拙者、この人たち通過していないでござる。したがって何の思い入れもふござらん。

ただ言いたいのは、ヒット曲「Frankenstein」がMarshallの創立50周年コンサート、『50 YEARS OF LOUD LIVE』のオープニングに使われたことと、日本のJimi Hendrix、中野重夫がFM愛知でDJを務めている番組、『中野重夫のKeep on Rockin'』のテーマ曲になっていること。もう変わっちゃったかな?
数年前にゲストで呼んでいただいて1時間番組2本分、Marshallについて語らせていただいた。そして、今回またお誘いをうけておりましてな、どうにかなったらまたマーブロでレポします。

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SLADEはいい。このアルバムは聴いたことないけど、SFテイストのジャケットだね。

私は近い将来、Aerosmithがそうしたように、日本も職業作曲家が復権を果たし、ロック・バンドに良質な曲を与える時代がくるのではないか…と思っている。というより期待している。他の例を引けばSweetだ。
もうロックには「反逆」やら「自由」などというテーマが似合わない時代、むしろそういうテーマを求めるのはアナクロニズムも甚だしいし、かといって「がんばって」やら「ありがとう」はロックの本業でもない。要するにもうロックにはやることがなくなってしまったと思っている。

福島の問題を考えてごらん。もしこれが本当にロックにパワーがあった時代だったら、ロック、フォークの別を問わずミュージシャンたちは東京電力を絶対に許さなかっただろう。容赦なく攻撃していたハズだ。
慰問やチャリティは素晴らしいことだけど、この事故が60~70年代にいたらミュージシャンたちはもっと別のやり方をしていたでしょうな。あの当時は音楽に力があったから。

ひと声で数万人が集まるコンサートやフェスティバルが林立しているが、これはロックに力がついたのではなくて、ロック・ビジネスが大きくなったからにすぎない。音楽としてのロックは完全に脆弱化・幼稚化してしまった。

「さくら」の枝を振りかざしても戦えないでしょう。もし清志郎が生きていたら徹底的にロックの力を使って戦っていたのではないだろうか?

これが本当の「参戦」だよ。コンサートに行くことを「参戦」とか言うようになっているようだけど、そんな物騒な言葉を簡単に使うのは止めた方がいい。
コンサートに「参戦」する前に、あまたある戦争関連の書物に目を通して歴史の勉強をしておくべきだ。ついでに言うと、「降臨」という言葉もよく見かけるが、そんな大層な言葉を使うべきではない。神仏に失礼すぎる。

そしてさらに、いいメロデイを作り出す才能も世代を重ねるごとに擦り切れてきて、もはや一介のミュージシャンの才能では突破口を見出すことが不可能になっていると感じざるを得ない。

今、民衆が一番欲しがっているのは「心に残るいいいメロデイ」だと思うんですよ。でも、今、ロックの中心にいる若者たちはそれに気が付いていない。というより気づく術を持っていない。

私がここで言っていることは、おそらく年配のオールド・ファンには理解してもらえると思う。

色々考えてみると、キチンと音楽を勉強した、本当に音楽的才能のある若い職業作曲家を起用するのが現在の音楽シーンへの一番よいカンフル剤だと思うのである。阿久悠や都倉俊一の再来だ。阿木耀子と宇崎竜童でもいい。

そうした作曲家や編曲家が活躍するようになれば、今度はそれを音にするちゃんとした楽器弾きが必要になってくるだろう。ここまでくればもう大丈夫。人々は今の何十倍も音楽を楽しむ機会が増えるであろう。ナ~ニも難しいことではない。もぎたてのトマトを清水で冷やして食べるおいしさをもう一度取り戻すだけのことだ。かえってムズカシイか?

ナゼこれをSLADEの項で書いたかというと、SLADEが活躍した時代がロックがロックのまま、もっとも人々に支持されていた時代なのではないか?と思うからである。
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若い頃はVan Morrisonなんて絶対に聴かなかった。多分はじめてこの人に接したのはThe Bandの『The Last Waltz』の中の「Gloria」だったと思う。名前は以前から知っていたけど、まったく意識のうちに残らなかった。映画の中のヴァンはただ大声でがなり立てるオッサンという印象だったな。

今、ウチのCD棚にはヴァン・モリソンの作品のほとんどが揃っている。好きになったのは本当にだいぶ後になってのこと…。でもいくら聴いても口ずさめる曲って少ないような気がする。名盤の誉れ高い『Astral Weeks』にしてもそうじゃない?このアルバム、エルヴィン・ジョーンズと組んだ『Heavy Sounds』なんかで有名なジャズのベーシスト、Richard Davisが参加しているけど、エラクやる気がなかったんだってね。おもしろい。

で、ヴァンの曲はなんというか、メロディがあまりにも遠いというか、声にビックリしちゃってメロディが頭に残らないというか…。それでも、なんかいいんだよな~。そんなメロディも、あの声で、あのバックのカッコいいアレンジでやられると大変に深いものに変わってくる。

おそらく一番有名な曲は「Moon Dance」なのかな?私はこの曲は30年以上前、Jazz Galaというライブ・アルバムでドラマーのGrady Tateが歌っているのを聴いたのがはじめてだった。Grady Tateは一流のドラマーだが信じられないくらいステキなバリトン・ボイスを持っていてボーカル・アルバムも発表している。

最近ではヴァンの歌を聴いて一番思うのは「ダブリンに行ってみたい」だ。なぜかって?それはGuiness。本場のGuinessはよそで飲むGuinessとまったく味が違うそうだ。あのおいしいエールに慣れているイギリスの連中が口をそろえて「腰を抜かすくらいウマイ!」って言うんだもん!(コレ、最近他の記事でも書いたような気がするな。もしそうだとしたらゴメンナサイ!なにしろものすごく長い時間をかけてコレを書いているものですからもはや聴くが曖昧になっちゃって…)

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これらのジャケット、SF的というよりも宗教的なイメージが強いナァ。
なんかこう、新興宗教のパンフレットの表紙みたいな…。

そういう目で見るとヴァンの音楽もそう聞こえてくる。この人も日本に来ない人だが、ある主義主張があってのことらしい。
知人が昨年ハマースミスでヴァンを見たと聞いてうらやましかった。

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これが一番と宗教っぽい。

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これはブっ飛んだナァ~。もちろん「Carry on my Wayword Son(伝承)」。間違いなくロック史に残る名曲といえよう。
高校の時かな、KANSASなんてバンドその時はゼンゼン知らなくて、どうしてコレを買ったのか、もしくは知ったのかは覚えていないけど、当時CBSソニーのレコードの装丁が豪華でそれに惹かれた部分があったような気がする。
もう他の曲はまったく記憶がない。とにかく「伝承」。あの頃は、誰もこんな曲知らなかったハズだ。

KANSASもチョット前まではよく日本に来ていたので何回か見せてもらったけど。とにかくこの曲に向けてコンサートをやっているような感じがした。もちろん「Dust in the Wind」だとか「Point of no Return」とかもあるんだけど、曲の格が違いすぎていて何だか見ていてかわいそうだった。

もうひとつこの曲でぶっ飛んだことがあった。それはFuzzy Control。以前はよくマーブロにも出てくれたが、何かのイベントでこの「伝承」をあの3人で完璧に演奏したのを見たことがあった。あれは驚いたナァ。歌といい、演奏技術といい、よそのバンドとはこれまたケタが違うことを知らされた。

ま、KANSASも十分人気がある方だったのだろうが、ひとたびプログレッシブ・ロックの枠に入れられると途端に影が薄くなってしまうのは、やはりプログレッシブ・ロックというものがイギリス人の独壇場であったからなのでしょうな?やっぱり、ああいう音楽は気候の悪いところでしか育たないということなのでしょう。そこがスキ!

とにかく!今人類に必要なのは政治、経済、文化の熱を問わず、古い世代から若い世代への「伝承」を推し進め、未来へ受け継ぐことだ。がんばれ音楽!
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<前編>はコチラ⇒【Music Jacket Gallery】SFジャケット・コレクション <前編>

<後編>につづく

2013年6月 5日 (水)

Music Jacket Gallery~日本独自ジャケットLPコレクション<後編>

Shige Blog 2012年7月25日 初出

今回のガラス・ケースの立体陳列は、欧米の歴史のあるレーベルから新興のレーベルまでを網羅したレーベル・ヒストリーCDボックスだ。

レコード会社の音楽性をシンボライズしたものがレーベルといえるワケだが、各CDボックスにはそれぞれのレーベルの特徴を集大成した数多くの音源やその沿革を記した豪華なブックレットが同梱されており、重量感に溢れたパッケージと共に、目と耳とで楽しむアーカイヴとしての付加価値が最大の魅力だ。むしろ音源はもう揃っているだろうから、この手のものは入れ物やブックレットが目当てだったりもする。と言うは易し、買い難し。

「箱」の形をしているCDをすべて自家薬籠に抱え込んでいる日本一のコレクター、植村氏のみが公開できる壮大なコレクションといえよう。

今回登場するレーベルは、アメリカから…

SONY(米COLUMBIA)100周年(26枚組)

CAPITOL 60周年(6枚組)

ATLANTIC 50周年(9枚組)

WARNER BROTHERS 50周年(10枚組)

CHESS (15枚組)

SUN (9枚組)

MERCURY (7枚組)などを展示。

イギリスからは、

HARVEST(5枚組)

CHARISMA(4枚組)

FACTORY(4枚組)

2 TONE(4枚組)など。

個性的なレーベル・ヒストリーCDボックスの魅力が堪能できるという仕組みだ。それではひとつずつ展示品を見てみよう!

● THE CHESS STORY 1947?1975 (CHESS 1996)
戦後、チェス兄弟によって設立されたチェス・レコードの音源を集大成した15枚組CDボックス。チェス・レーベルがブルース、ソウル、R&Bを中心にアメリカの音楽シーンを牽引してきた功績には大きなものがある。詳細な資料を掲載したブックレットも貴重だが、15枚目のCD-ROMにはチェスから発売された全カタログが網羅されている。

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● THE FAMOUS CHARISMA BOX (VIRGIN CHARISMA 1993)
1968年にトニー・ストラットン=スミスによって創立されたカリスマは、その名にたがわず極めて先進的かつ個性的なレーベルだ。この4枚組CDボックスには、こうしたレーベル・ポリシーに賛同したユニークなアーティスト群の作品が網羅されている。「不思議の国のアリス」に登場するマッド・ハッターのデザイン・キャラも人気の的だ。

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● 50 GOLDEN YEARS 1952?2002 / A COMMEMORATIVE COLLECTION (SUN 2002)
50年代中盤のロックンロールの黎明期に多大なる功績を残したサン・レコード設立50周年を記念して発売された8枚組のCDと7インチ・シングルの9枚組ボックス。

7インチ・シングルはエルヴィス・プレスリーの最初期の貴重な音源。パッケージは昔のファイル・カードを模したもので、CDの収納方法にもかなり工夫がなされている。

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●CAPITOL RECORDS 60TH ANNIVERSARY 1942-2002 (CAPITOL 2002)
1942年に創立されたキャピトル・レコード60周年記念の6枚組CDボックス。40年代から2000年代までを網羅したCDは各年代ごとにデジ・パックに収められ、144ページに及ぶ写真集もパッケージと同様に豪華な布製で作成されている。見るからに高そうだニャ~!

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●REVOLUTIONS IN SOUND WARNER BROS. THE FIRST FIFTY YEARS (WARNER BROS. 2008)
1957年に創立されたワーナー・ブラザーズ・レコード50周年記念の10枚組CDボックス。レコードを模したレーベル・デザインや各種の傘下レーベルのデザインも見る目に楽しいパッケージだ。68ページのブックレットにはレーベルの沿革はもとより、詳細な資料が述されており、まさにアーカイヴ・ボックスのお手本となるものと言えよう。これも高そうだニャ~。

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● PALATINE / THE FACTORY STORY 1979?1990 (FACTORY 1991)
70年代末期に創立されたファクトリー・レーベルは、マンチェスター・サウンドというジャンルを形成させたばかりでなく、ジョイ・ディヴィジョンという不世出のグループを輩出させた点でもその功績は大きなものがある。LPサイズのCDボックスは、ブックレットも大判のため、高齢者には読みやすさこのうえなし!ありがとう!

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● BLUES, BOOGIE, AND BOP : THE BEST OF THE 1940’S MERCURY SESSIONS (MERCURY 1995)
40年代のマーキュリー・レコード黄金期のブルース、ブギ、ジャズなどを集大成した7枚組CDボックス。戦前の貴重なSP音源の収録はまさにアーカイヴ・ボックスならではのもだが、何よりも目をひくのが当時のラジオを模したレトロ感に溢れたパッケージ・デザインだろう。

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● FOREVER CHANGING : THE GOLDEN AGE OF ELEKTRA RECORDS?1963 TO 1973 (ELEKTRA 1996)
1963年の創立から1973年までのエレクトラ・レコードの黄金期を集大成した5枚組CDボックス。この限定版ボックスにはポスト・カードやピンバッチなどのオマケも同梱されており、見る目の楽しさも倍加されている。CD-ROMにはエレクトラから発売された全ディスコグラフィーと、プロデューサーのインタヴューも収められており、貴重な資料となっている。

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● SONY MUSIC 100 YEARS : SOUNDTRACK FOR A CENTURY (SONY 1999)
米コロンビア・レコード(現ソニー・ミュージック)設立100周年を記念して発売された26枚組CDボックス。クラシックからジャズまでの全てのジャンルの中から各アーティストの作品を1曲ずつ合計548曲という膨大な音源を収録している。100年という歴史の重みを感じさせる重厚で壮大なパッケージと共に詳細な資料を満載したブックレットも貴重なものだ。

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● HARVEST FESTIVAL (HARVEST 1999)
1969年にEMIレコードの中に設立された先進的なレーベル、ハーヴェスト創立30周年の集大成である5枚組CDボックス。レーベルの沿革を詳細に述したアート感覚に溢れたブックレット型のパッケージが秀逸だ。Barclay James Harvestがフィーチュアされているのが見える。このグループ、70年代にはチャーター・ジェット機でツアーしてたのよん!オール・カラーのブックレットの巻末に載せられた全ディスコグラフィーは資料的に重要なものだ。

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● BEARSVILLE BOX (BEARSVILLE 1996)
聖地ウッドストックで1969年に設立された名門ベアズヴィル・レーベルの作品を網羅した4枚組CDボックス。単行本型の独創的なパッケージは、CDの収納トレイや腰巻き帯にまで工夫がなされ、デザイナーのクリエイティヴィティが遺憾なく発揮されている。シリアル・ナンバー・カード封入の完全限定版で、日本のみの企画・発売だ。
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このカード欲しいナァ~。

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● THE COMPACT 2 TONE STORY (2 TONE 1993)
70年代後半に設立されて以来今日に至るまで「スカ」というジャンルを定着させた功績も大きい2トーン・レーベルの作品を集大成させた4枚組CDボックス。白と黒との市松模様が特徴的なレーベル・ロゴを始め、パッケージ・デザイン全体がこうした2トーン・カラーに統一されており、レーベルの特色をうまくデザイン処理している。

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ミュージック・ジャケット・ギャラリーの詳しい情報はコチラ⇒金羊社公式ウェブサイト

(テキスト原文執筆:植村和紀氏)

2013年6月 4日 (火)

Music Jacket Gallery~日本独自ジャケットLPコレクション<中編>

Shige Blog 2012年7月24日 初出

今日はMusic Jacket Gallery、『日本独自ジャケットLPコレクション』の<中編>。もちろん金羊社のギャラリーからお届けします。

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以前、ある専門学校で音楽や楽器に関する講義をさせてもらったんだけど、そこで「音楽配信の恐怖」に触れた。こういう機会があると必ずこの話をするようにしてるの。でも、ん~、あんまり若い人たちはピンと来てないみたいだよね。「ジャケット」がなくなってしまう!コンセプト・アルバムがなくなってしまう!なんてことはどうでもいいのね。

インヤ!いいワケない!やっぱり若い人たちは魅力を知らないだけ。ジャケットをまとうにふさわしいチャンとした音楽に囲まれていないからその楽しみや重要性がわからないだけだと思うのですよ。

それにしてもレコード会社の方々は大変だ。フィジカル・プロダクツを守らなければならない一方、営利事業として音楽配信を推進しなければならないのだからね。

でも、大丈夫!いい音楽さえ創出すれば、またよくなりますよ。まず、次々にテレビに出てくるチープなバンドをシャットアウトして歌謡曲をもう一度隆盛させましょう。もう「さくら」は禁止!

才能あるソングライティング・チームに、10年後、20年後にも歌い継がれているであろう佳曲をドンドン作ってもらい、レコーディングでは打ち込みを卒業して、腕の立つミュージシャンに本物の楽器を演奏してもらいましょう。歌は少しぐらい下手でも豪奢な衣装をまとった見目麗しい方にお願いしましょう。もうひとつ、優秀なコレオグラファーを起用して誰でも真似をしたくなる楽しい振付をクリエイトしてもらいましょう。

一方、テレビから締め出されたロックバンドだと思っている人たちは、60年代後半からパンク/ニューウェイヴ出現以前のロックをしっかり聴きこんで、一から「ロックバンド」として出直してみたらいかがでしょうか?みんなでカッコいいギターリフを編み出して、ギターソロを練習する。そして、ダークでへヴィで不健康なロックの世界を再構築してしてもらいたい。

テレビを見ていると、新しいものを作ろうとすればするほど、ヘンなものが出てきてしまうように思う。やりつくしてしまっているからしょうがない。音楽はもう先祖返りするしかないと思う。先人の偉大なる遺産に本質を見出し、自分たちの世代の感性を注入して、何かを作り出すしか道は残されていないのではないか?何とかクリエイターとかハイパー何とかはもう卒業なんじゃない?

とにかく、さんざロックで楽しませてもらっていい思いをしたおじさん(おばさんも)達みんなで若い人たちにカッコいいロックを教えてあげましょうね!ジャケットの魅力も同様なのだ!

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ということで今日はロックの原点のひとつ、ジミ・ヘンから!

1968年にイギリスで発売されたJimi Hendrix Experience初のベスト盤、『Smash Hits』。んなこたぁ皆さんご存知ですね?イギリス盤はモノラル。その1年後にアメリカではステレオで発売された。イギリスでは4位、ビルボードでは6位までチャートを駆け上がった。

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これも『Smash Hits』。そう。これが日本盤。この魚眼レンズで撮った写真はアメリカ版『Are You Experienced?』に使われていた有名な写真…ともチョット違う。なんでこんなに曲げちゃったんだろう?まさか、気が付かなかったワケじゃあるまいに…。ま、ジャケの出来としては特段悪いワケじゃないけど、差し替える理由もないと思うんだけどナァ…。でもこれはまだいい…。

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問題はコレよ。『Axis: Bold as Love』だぜ!もし、この表1からすべての文字情報を取り除いたら、初めて見る人にはこれが『Axis』だってわからないだろうナァ。
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元はコレですよ、コレ。どうしてあんなことしちゃったんだろうか?

答えは簡単。「売れると思って…」上のジャケットに差し替えたに違いない…とは植村さんの弁。同氏によればこの国内盤、10ウン万円のプレミアがついている超レア盤だとか…。海外のコレクター垂涎の的でもあるそうだ。

もうこうなるとジャケットの意味合いを無視しているとしか思えないよね?いくらプレミアが付いているとはいえこっちの方がいいナァ~、ねぇシゲさん?

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あ~あ、表4もこの通り。ドッペリ日本語を刷り込んじゃってる。コレ、もともとはゲイトフォールドじゃない?まさか経費を下げるために強引にシングル・ジャケットにして、裏ジャケをこういう装丁にしたのかな?

いずれにしても、ジャケットが作品の一部であるということを無視していることは間違いないよね。

「ヒデーな~」と思う人もいるかもしれない。私もそう思うけど、ジャケットを必要としない音楽配信よりははるかに文化的でよろしいよ。まさかレコード・ジャケットが抹殺される世の中が来るとは思わなかったね。

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これも!これはProcol Harumのファースト・アルバム『Procol Harum』の国内盤。あの黒っぽいイラストのヤツね。

どうもProcol Harumは『Grand Hotel』以外馴染みにくくて、昔からほとんど聴いていないんだよね。(…といいつつ2006年のデンマークのライブ盤をかけてみる…)ん~、やっぱりいいな~Procol Harum。っていうより、Geoff Whitehornのギター!Geoffが参加していなかったらコレも買ってないな。何せオーケストラと合唱隊が加わっていて、1曲目から「Grand Hotel」でしんみりとご機嫌なんですよ。短いけれど真ん中のギターソロは実にドラマチックでGeoffのギター・スタイルはこういう曲にピッタリだ。

先日のジムの会の時、ちょうど会場に着いたのが同時で、車から降りてくるなり「シゲさ~ん」とあのなつかしい声でハグしてくれたGeoff。今年の年末は日本に来るかも…みたいなことを言っていたがProcol Harumでも来るのかな?

以前のブログでも書いたけど、もう見れなくなっちゃったからもう一回書いちゃおう!…そんなだからProcol Harumにはウトくて、メンバーの顔もよくわからん。で、Procol Harumが来日して四人囃子と新宿厚生年金大ホールでダブル・フィーチュア・ショウが催された。Geoffに日本酒の差し入れを持って行ったんだけど、どこにも見当たらない。ドアが開けっぱなしの楽屋に入って、「Geoffはいませんか~?」とそこにいた白髪の老人に話しかけた。「イヤ、いないな。どっか外へ行ったんじゃないかな?」みたいなことを言う。その人、ゲイリー・ブルッカーだったの!ああ、握手しておけばヨカッタ!ファンでもないのにこういうところはやっぱミーハーでいかないとね!

しばらくして、ガヤガヤと騒がしくなったと思ったらGeoffと数人が楽屋へ帰ってきた。やっぱり!もう外へイッパイひっかけに行ってた!日本酒を渡すと大層よろこんで…ああ、本番までに4合ビン、ペロっと空けちゃった!

で、肝心のこのファースト・アルバム、聴いたことないんですよ、そんなだから。でももちろん「A Whiter Shade of Pale(青い影)」はおなじみにならざるを得ませんな。何せ世界でもっとも電波に乗った曲とかいう話しを聞いたことがある(イギリスで一番かも知らん)。ナント、ナント、世界で1,000回以上カバーされたらしい。

こないだ、って言っても前のブログか…Pink Floydの『狂気』のことを書いたことがあった。あれも「The Great Gig in the Sky」が著作権でモメにモメた。

この「A Whiter Shade of Pale」も同じ。Gary BrookerとKeith Reidの共作ということになっていたけど、Mather Fisherがイチャモンをつけた。「オレも作曲に協力したんだ」とね。2006年に勝訴。

先の厚生年金の時にはかなりMathewがフィーチュアされて仲がいいのかと思っていたけど、こんなことがあったのね?で、Mathew Fisherは辞めちゃった。過去の印税をゲットできれば「青い影」1曲で遊んで暮らせるんじゃないかね?

この日本盤、おもしろくはないけど、ジャケットのデザインとしてはそう悪くないと思う。

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1968年、Soft Machineのデビュー・アルバム。Chas ChandlerとTom Wilsonのプロデュース。元来のジャケットは歯車を模したギミック・ジャケット。はじめからこの日本盤のデザインだったらなんら問題なかったんじゃない?体育座りしているRobert Wyatt、Mike Ratledge、Kevin Ayersの3人が可愛い。

「カンタベリー派」を代表するというか、開祖というか、とにかく「カンタベリー=ソフト・マシーン」という図式は有名でしょう。好きでね、カンタベリー・ミュージック。わざわざカンタベリーまで行ったけんね。

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サイケ期だけあって、Robert Wyattのホンワカした声とユルイ曲調がはじめダル~イ印象を与えるが、演奏は実に鋭くてカッコいい!特に声とは正反対の閃光のようなドラミングがタマらん!

Soft Machineのアルバムは『Volume 1』から始まって7枚目まで数字がタイトルになっていた。Chicagoみたいにね。正確に言うと、5枚目までが序数でなぜか6枚目と7枚目は『Six』、『Seven』と普通の数字だった。

アルバムデザインも数字だけのタイポグラフィからイラストだのアー写だのよくいえばバラエティに富んでいたし、悪く言えば一貫性が何らなかった。でも、それぞれがどこかSoft Machineっぽくて好きだな。
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Trafficもほとんど持ってるけど、どうも入りきれないグループのひとつだな…。なんでだろう?この日本制作のベスト、内容をチェックしなかったのでどのあたりが網羅されているのかわからないけど、控えめでいいジャケットだな…。

Trafficもジャケットがパッとしないバンドだったように思う。名盤の誉れ高い『Barleycorn』もネェ~。案外好きなのはあの2枚組のライブ、『On the Road』。

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これが私のOn the Road。ヒースローからバーミンガム方面に向かうM1というフリーウェイを通過中の車内から撮った写真。すぐに「お!Traffic!」と思ったね。運転手に「なんだってこんなところ撮ってんの?」と訊かれて説明したけど、Trafficを知らなかった。

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1972年のManfred Mann's Earth Bandの『Manfed Mann's Earth Band 』。お~、これは改良なったかも!なんで右下に2眼レフのカメラを配したのかわからないけど…。
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元はコレ。上の赤い日本制作の方がよくね?

このバンドもジャケットに恵まれないように思う。耳の『The Roaring Silence』と『Soloar Fire』ぐらい?先述のGeoff

Whitehornが参加している『Chance』なんて一体ヤル気があるのか、気持ちを確かめたくなる。

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驚いたのは、このアルバムというか、この時期、ドラムってChris Sladeだったのね…いかに熱心に聴いていなかったかがわかっちゃうね?私、2年前にジミー桜井さんが参加したVon Zepを撮らせてもらったことがあって…そのドラムがChris Sladeだったんですよ。それだけ。

それにしてもManfred Mannのバンドって立ち位置が独特なんだよな。なぜかやたらとカバーを演ってるし…。1964年のアメリカ編集の『The Manfred Mann Album』というアルバムにCannonball Adderlyの「Sack O'Woe」が収録されていたにはのけぞった!

だいたい先の『Roaing Silence』の「Blinded by the Light」だってBruce Springsteenだもんね?でもそのカバーっぷりがいいんだよね!はじめて聴いた時、「おお!いい曲!」と思って、後でスプリングスティーンの曲って聞いてガッカリ…で、今度はスプリングスティーンの曲を聴いたらアータ全然マンフレッド・マンの方がいいじゃないの!というよりまるっきり別の曲だし…。こんなに作り込んでカバーするなら、最初っから自分たちで曲を書けばいいじゃん?とまで思っちゃうよね。イギリスを代表する名門バンドに向かって失礼だけど、何か愛すべきバンドなのですよ。マンは。

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イギリスのブルース、R&Bの名門レーベルImmediateのオムニバス盤。同レーベルから『Blues Anytime』というコンピーレーション・アルバムがあるが、それをクラプトン、ベック、ペイジの参加している曲に的を絞り、それにジェレミー・スペンサーとジョン・メイオールのちりばめたといったところか…。

ジャケットはいいよね~。このベルボトム!クラプトンのベルトも仮面ライダーみたいでカッコいい~!ところで、「ロンドン・ブーツ」という言葉は死語ですかね?お笑いコンビを指すとき以外には聴かなくなった。ここ十年ちょっと、毎年何回かロンドンへ行っていても、そういえばロンドン・ブーツを履いた人はついぞ見たことがない!

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それにしてもイギリスの人ってブルース・ロック好きだよね~。さっきの「Blues Anytime」を全曲(47曲)聴くのもかなりの苦行だ。にもかかわらず6枚組のCDボックスセット『The Immediate Singles Collection』なんてのを買い込んで来て…最後に聴いたのはいつだったかナァ~。

でも、デンマーク・ストリートあたりの楽器屋へ入るとこんなんばっかりよ。バップ・フレーズ弾いてるヤツなんて一度も見たことない!ホント、イギリス人はブルース・ロックが好きだと思う。

でも、ま、こういうのがツェッペリンになったり、ジェフ・ベック・グループになったりするワケだからこういうのも感謝して聴かなきゃな…少なくともパンクやニューウェイヴとは比べものにならないくらいカッコいい!

若者よ!ブルース・ロックを聴け!私ももっと聴く!
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またManfred Mann。こっちは1964~1965年に録音されたもののコンピレーションだ。1968年頃の発売。邦題が『ロックからブルースへ』という。スゲエな、このデザイン。今ではもうこんなの描ける人というか、こんな感覚持ってる人っていないんじゃいないの?すごくいいんですけど…。少なくともオリジナルのマンフレッズのアルバム・ジャケットより好きかな?これは田名網敬一さんかな?違うか?
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Steppenwolfの名前は知らなくても「♪いつものラーメン」で始まるあの曲なら知らない人はいないでしょう?そう「イージーライダーのテーマ」…違う!「Born to be Wild」だね。今ではFuzzy ControlのジョンジョンがコーラのCMで歌ったり、ジャムセッションで重用されたりして、映画のイメージがなくなってきた感はあるけど、我々世代は映画『イージーライダー』が流行ったこともあって、この曲は「ワイルドで行こう」より「イージーライダーのテーマ」だったように思う。

Steppenwolfはカナダとアメリカの混成バンドで1967年のデビュー。もうこの頃からワイルドだったんだゼ~。私は子供のころそれこそ日本制作のベスト盤を1枚、数寄屋橋のハンターで買った以外に1回もこのバンドに手を出していないが、ものスゴイ人気だったのね?

だってだゼ~、世界中で25百万枚のレコードを売って、8枚のゴールド・ディスク、12曲のビルボード100ヒット、そのうちの6曲がトップ40だってーんだからね。

その割に、このバンドのアルバムって言われても見事に1枚もジャケットが頭に浮かんでこない。まったくダメ。日本でオリジナル・アルバムって発売されていたのかしらん?

世の中には欧米と日本での人気の度合いが異なるバンドが山ほどあるけれど、もしかしてこのSteppenwolfが一番なんじゃない?

ちなみにこの日本制作のベスト盤のタイトルは『ハード・ロックの王者』という…冗談でしょ?!MjgIMG_0150

Peter Framptonはマーシャルを代表するギタリストとされている。我々日本人にとっては『Comes Alive』であり、「Show Me the Way」であり…。どうもジムと仲がよかったという話しも聴いたことがある。イヤ、それよりもイギリスでは、このThe HerdであったりPieの『Performance Rockin' the Fillmore』や『Rock on』であったり…。この人も欧米と日本でのとらわれ方が大きく異なるミュージシャンのひとりではなかろうか?でも、こうしてThe Herdのベスト盤が出ていたところを見ると『Comes Alive』以前の日本でも評価もまんざらでもなかった…かどうかは私は知らない。
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コレ、圧倒的に変なジャケだよね。これで表だよ。John Peelプロデュースするところのリバプール・サウンドのコンピレーション…とか思っちゃうよね「The Liverpool Scene」なんて聞くと。これはグループ名。1968年の『Amazing Adventure of』というアルバム。

へヴィめのロックにのって誌をよむように歌詞を乗せるスタイルのバンドだ。ピールの助けで大学サーキットでは少々の成功を納め、ツェッペリンの前座までやったらしいが、アメリカに渡ったら失敗をブッこいた。

「新鮮」とまでは言わないまでも、聴きようによっては十分に楽しめる。でも、歌にメロディがほとんどないのは致命的。必ず飽きてしまう。
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Chris Speddingはかなり昔から名前を知っていた。何かで読んだように記憶しているが、「日本で3大ギタリストといえば、クラプトン、ベック、ペイジだけど、本国イギリスに行くとクリス・スペディングが入る」…これが非常に印象的だった。『ギター・ジャンボリー』ってのがすごく気になったけど手に入らなかった。これを実際に聴いたのはかなり後になってからだった。

スペディングはJack Bruce、Ian Carr、Mike Gibbsとの共演を果たしたブリティッシュ・ジャズ・ロックの重要ギタリストだった。それでずいぶんと気になって、いろんなアルバムを通じて彼のプレイに耳を傾けたが、納得がいったことは一度もなかったな。

FreeのAndy Fraserとのバンド、The Sharksが聴きたかったけど当時全然手に入らなかった。今でも持ってない。

他にもJohn Cale、Bryan Ferry、Elton John、Eno等とのレコーディングをした…こうして見ると、下手をすればこの人はイギリスでもっとも広範囲な活動を展開したギタリストかもしれない。

1977年、Bryan Ferryが単独で来日した時、中野サンプラザでクリス・スペディングを見た。トレードマークのフライングVを下げていたがそれ以外には特に目立つ点はなかった。この時、Andy McKay、Paul ThompsonというRoxy勢に加えて、ベースがJohn Wettonだった。『Manifesto』で復活する前で、Roxyが休んでいただけにファンだった私にはメチャクチャうれしいコンサートだった。Roxyが復活して来日。その武道館のコンサートも観たが、あまりパッとしなかったな…。

その後、BSかなんかでRobert Gordonのバックを務めるクリスを観た。彼のフィーチュア・コーナーもあって「ギター・ジャンボリー」なんかを演奏していたが、歌があまりにも貧弱で情けなかった。また、昔はモノマネもよかったのかもしれないが、技としては東京おとぼけキャッツを通過していた私にとってはクリスの芸が「憐れ」にさえ見えた。

ところが!ゴードンのバックとなると話しは違っていた。クリスのプレイはあまりにも正確でカッチリとしており、彼が60年代よりテクニック派のミュージシャンたちに重用されていたという長年の謎がいっぺんに解けた気がしたのだった。こういうギターはなかなか弾けないもんだ。

このクリスのベスト盤『Spedding the Guitarist』、パッと見るとAlan Parsons Projectの作品を連想させる。
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Ten Years Afterを知ったのは映画『ウッドストック』。どこで観た時だったけかナァ~。中学の時だった。もう退屈で退屈で、すっかり寝てしまった。気持ちよく寝ているのを叩き起こすように耳になだれ込んできたのはAlvin Leeの『ヘリコプター』のイントロだった。いっぺんに目が覚めたね。

それで『Sssh』、『Watt』、『Recorded Live』等、何枚かTen Years Afterのアルバムを買い込んだ。もっとバリバリとギターを弾いていることを期待していた私はガッカリした。その中の1枚が『Stonehenge』だった。
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私が中古で買った『Stonehenge』はこういうジャケットだった。確か当時は廃盤になっていて貴重っぽい感じがしていたと思う。内容は確かツラかったように記憶している。

日本盤デザインでもオリジナル・デザインでもどっちでもいいか…。(注:本記事掲載後にAlvin Leeが亡くなっている)

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これはまた珍しいパターンかもしれない。『John Mayall Plays John Mayall』という1964年のライブ・アルバムが元。日本制作盤のタイトルの方が『Live at Klooks Kleek!』と複雑になってる。

Klools KleekというのはロンドンはWest HampsteadのThe Railway Hotelにあったジャズ、R&Bのクラブ。<前編>のGraham Bond Organisationのところで紹介したアレ。隣にデッカのスタジオがあったそうだ。
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植村さん、また名前入れちゃってる。左下の「John Mayall」ってのは何か貼ったのかな?こういうのを見ると植村さんがただ「集まりゃいいわ」というだけのコレクターではなくて、1枚1枚可愛がってよく聴きこんでいるのがわかる気がする。実際、内容について質問しても即座に答えてくださる。聴いてなきゃこんなことはできないもんね!

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ってチョット待てよ…。West Hampsteadで隣にデッカのスタジオね~。と、我が写真のコレクションをひっくり返してみた。『イギリス・ロック名所めぐり』の資料フォルダだ。

これがジュビリー線のWest Hampstead駅でしょー。

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ここを背に数ブロック行って左に折れると…。元のDeccaのスタジオがある。今はバレエの学校になってる。で、その隣っていうと…確か写真を撮ったな…。

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オワ~!あったあった!RAILWAY HOTEL!素敵なホテルだな~、と思って撮っておいたのですよ。ここにKlooks Kleekがあったのか!これはまた『ロック名所めぐり』でやりましょうね!

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このTen Years Afterの1968年のライブ盤もそのKlooks Kleekで収録された。手元にあったアー写でジャケット作っときました!ってな感じ?

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このジャケットのイラストはとてもいい。いいんだけど、何だってクラプトンだけ老けてんの?一種の便乗商法ですな?

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こっちがオリジナル。こっちもなかなかにいい。これはロンドンの名門クラブMarqueeでの1964年のライブ。

Marqueeは3店目までが重要だ。1号店、2号店はどこにあったかハッキリわかっていたんだけど、3号店がどうしてもハッキリわからなかった。「このあたりには違いないんだけど…」とCharing Cross Roadをさまよってみても、どうもよくわからない。それが、こないだロンドンに行った時に見つけてしまったんですよ!うれしかったね。この話も『名所めぐり』でね!

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こういうのはもはや日本のお家芸ですな…。季節のコンピレーション?(アルバート・ハモンドは違うけど…イヤ、秋になると「落葉」といっしょに出てくるのかな?)

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The Original Caste…知らないナァ~。カナダのフォーク・ポップ・グループなんだって。わかりやすくいえば、PPMであり、サイモン&ガーファンクルであり、ジョン・デンバーであり…ようするに私には関係ないってことなのね?道理で知らないと思った!

これは1971年のライブ・アルバムで、驚いたことに同年に『Volume 2』としてもう1枚日本でのライブ盤を追加発売しちゃってる!人気あったんだねぇ~。

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1972年にリリースされたThe Shocking Blueのライブ盤。オランダだっけ?「Venus」以外の曲をまったく知りません。こんな人…多いんじゃないかな~?盛り上がったんだろうな~、あのイントロが聴こえた瞬間!
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これは圧倒的に帯がおもしろい!ちょっと書き出してみると…

⇒これは、あのピーター・ガブリエルが在籍したジェネシスの幻のデビュー・アルバム「創世記」に、4曲の未発表テイクをプラスした超ボーナス盤だ!

⇒ジャケットも日本盤のみの特製デザイン!

⇒さらに初回プレスのみ、今英米で大流行のカラー・レコード盤なのだ!(実際に自分の目で確かめよう!)

⇒それで価格は、たったの2,000円!早いもの勝ちだ!

突っ込みたいところは多少あるが、この際よそう。ピーガブ人気に乗って、とにかく、ものスゴイやる気を感じますナァ。これでどのくらい売れたんだろう。

以前、どこかに書いたけど、ガガ様が「奇抜な衣装、奇抜な衣装」とよく言われているようだけど、少なくともピーター・ガブリエルが40年以上も前にもうやっちゃってると思うんだよね。

こうして先祖がえりが所々で取り入れられているんだけど、誰もそれがオリジナルではないことを指摘しないんだよね。それじゃダメだ。

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これはごく平均的常識的な日本制作盤ですな。選曲もよろしい。

ロイ・ブキャナンは後楽園ホールで観たけどスゴかったナァ~。

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Steely Danの日本制作ベスト盤。Danには『A Decade of Steely Dan』というかなりよくできたベスト盤があるので他は無用に思うが、これは故山口小夜子をフィーチュアしてどうしても作りたかったんだろうネェ。帯には彼女の推薦の言葉が書いてある。それにしても、Steely Danの最高傑作のジャケットを日本人が飾る…なんてスゴイことだよね。

Steely Danについてチンタラ書いているととても終わらなくなってしまうので、このベスト盤についてだけ書くことにしよう。

帯には「「ドゥイットアゲイン」から「彩AJA」までスティーリー・ダンの軌跡を収めたベスト・アルバム!!」とある。で、選曲に目をやると…

<SIDE A>

1. Do It Again

2. Dallas

3. Sail the Waterway

4. Black Friday

<SIDE B>

1. Aja

2. Kid Charlemagne

3. Rikki DOn't Lose That Number

A面2と3は未発表曲。するとたった5曲で、このバンドの軌跡を辿っていることになる。ただでさえ『Can't Buy a Thrill』から『Aja』まで6枚の傑作が存在している。1枚当たり1曲以下の選曲となるワケでしょ?これは土台ムリな話し。

制作企画の時にどんな話しが出たんだろう?もっともファンに未発表の2曲を売るためだけを目的として制作されたんだろうけど、もし制作にダン・ファンの人が関わっていたとしたらそれは拷問だ。「アレも入れたい、コレも入れたい…でも5曲しか選べない!」。会社の命令とはいえ、ツラい仕事だろうナァ。やっぱり好きなものを職業にするには大変な覚悟がいるということだ。

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これ持っててさ、某中古レコード店に売ったら、想像をはるかに超える値段がついた。売らなきゃヨカッタ…。でも、『Something/Anything』を持っていたので処分しちゃったんだな~。

ジャケットがカッコいいって当時言われてた。それにしても、コレなんだってこんなダイジェスト版にしちゃったんだろうね。当時のトッドの人気では2枚組は負担だったってこと?イヤ、もうあのときには『Todd(未来から来たトッド)』が国内盤で出てたもんね。『Something/Anything』がツマラナイってこと?イヤイヤ、名盤の誉れ高いではないの…。契約の関係?

とにかく売らなきゃヨカッタ…いまだに臍を噛む思いの1枚。

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Deep Purpleの1968年のデビュー・アルバム。自国イギリスよりも、アメリカで最初に注目された。アルバムのデザインは何種類か存在したが、この日本版に使われている写真はシングル「Hush」のイギリス盤に使用されたものであろう。

このアルバムに参加している、つまりDeep Purpleの初代ベーシストでありNick Simperが「ジムの生涯を祝う会」に来ていた。仲良しのスティーヴ・ドーソンが教えてくれた。「シゲ、シゲ!ニック・シンパーが来てるゾ!」、「ってディープ・パープルの?」、「そうそう!」

周囲にマーシャルの人間が何人かいて、「ホント?」なんてビックリしていたが、自分を含め、みんなどの人がニックかは識別できないようであった。

だいたい、元の顔がわかんないもんね。無理はなかろう。でも、パープルの歴史はここから始まったのだ!

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Sex Pistolsって何枚アルバムを出してたのかしらん?ベスト盤なんて編めるのかしらん?と不思議に思うほど詳しくないんだけどね。パンクはまったくの門外漢なのです、アタシ。

それでも当時ものすごく話題になったんで友達に借りて『Never Mind the Bollocks』なんか聴いたな。「なんだよ、普通のハードロックじゃん!」と思った。演奏はウマいし…。

後で聞いたらギターはクリス・スペディングが弾いてるとかいうじゃない?…これはデマだったんだけど、プロデューサーのクリス・トーマスがインタビューでこんなことを言っていた。

「あのアルバムのギターの音は12回重ねた部分があって、12回弾く間、1度もチューニングをさせなかった」って。クリスはわずかなチューニングの狂いを利用して音を厚くしようとしていたというワケ。今でいうデチューンっての?演奏面はそうしたキチンと計算された作り込みがなされていたんだね。やってたことはパンクかもしれないけど、作ってたものはパンクではなかったってことか…。さすがクリス・トーマス。

さて、このアルバムはシングル曲に未発表曲とアルバム未収録曲で構成されている。未発表なのに「Very Best」とはコレいかに…。BESTな作品だったら発表しないワケがないと思うんですけどね…。

でもタイトルはいいね。『Never Mind the Bollocks』のアンサーになってる。

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デビュー・アルバムから『Wishbone Four』までの代表曲を収録したベスト盤。アッシュの一番クリエイティヴだった時期だ。当時「世界一美しい音を出すロックバンド」と言われた。英語圏の人たちが聴くとその大げさな歌詞にひっくり返るらしいが、サウンドという面で、今の若い人にはこういうバンドを聴いてもらいたいものだ。

バンドの中でただガムシャラにかき鳴らすだけがギターの役割ではないことが一聴してわかるハズ。速く弾かなくても、右手を指板に乗せなくても、ギターっていろんなことができるんだナ…と感心することだろう。Ashを聴いてそれがわからなければギターは辞めた方がいい。
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Vanilla Fudgeの4枚目のアルバム『Near the Beginning』。これも完全に原型をとどめていないなぁ。このジャケットデザインで売り上げがアップするとは到底思えないのだが…。

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UFO、1971年のセカンドアルバム『Flying』。オリジナルのデザインはかなりドイヒー。こっちの方がマシというもの。しっかしね、このバンドがひとりのドイツ人ギタリストを招き入れたことによって世界的な人気ハードロック・バンドに変身するとはね~。この3年後に『Phenomenon』で本当にFlyingしてしまう。

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1967年の『A Hard Road』というアルバム。『ブルースの世界』というタイトルで日本版を出していた。ほとんど原型のままだ。「Blues Dimension」と大胆に刷り込んであるけど、オリジナルのデザインにはないものだ。

この他にも、メイオールの国内制作盤っていうものがゴロゴロしていて、当時の評価の高さ、イヤ、人気の高さかな?…には驚きを感じざるを得ない。
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Dave StewartとBarbra Gaskin…プログレの重鎮によるチームなのになんでこうなっちゃうかな?Hatfirld & the NorthやらNational Healthやらを想像してアルバムを買ったらエライことになった…。

これはA面がカバー、B面がオリジナルという構成でシングルを集めた日本編集盤。

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1967年のMoody Bluesのセカンド・アルバム。London Festival Orchestraとの共演作でヒット曲「Nights in White Satin(サテンの夜)」が生まれた。オリジナルのデザインはあの絵の具をブチまけたような抽象画のヤツ。やっぱりオリジナルの方がいいかな?

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日本だけで発売されたクラブ・ミックスのミニ・アルバム。なんたって史上最強のトリオ・バンドですからね、なんだって許されちゃう。

私はおととしの夏、ビリー・ギボンズとダスティ・ヒルにロンドンのロック・フェスで会って話しをしたですよ。ビリーはすごく物静かな紳士だった。ダスティはとっても気さくな感じで写真をいっしょに撮ってってもらったっけ。

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最後は「ゴールデン」で〆ましょう!

1968年のアビイ・ロード・スタジオでの『ホワイト・アルバム』の収録風景と1965年の映画『ヘルプ!』の撮影風景に未発表音源がプラスされてるんだって。聴いてみたいような、みたくないような…。

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ミュージック・ジャケット・ギャラリーの詳しい情報はコチラ⇒金羊社公式ウェブサイト

<後編>につづく