【Music Jacket Gallery】SFジャケット <後編>
今回のガラス・ケースの立体陳列は、ロック・ジャケットのアート・ディレクターとして最高峰であるHipgnosisのStorm Thorgersonが手がけたCDボックスが集結した。
やっぱり圧巻!
1968年にHipgnosisというデザイン集団を設立したThorgersonは今年 惜しまれつつこの世を去ったが、最近でもアメリカのThe Rival SonsのCDジャケット・デザインを担当するなど最後まで精力的、かつクリエイティブな活動を展開していた。
しかし、HipgnosisといえばPink Floyd。『A Source of Secrets(神秘)』から『Animals』まで、このふたつの独創的な集団はサウンド面とビジュアル面で互いにインスパイアしあい、ロックの黄金時代の一角を築いた。
HipgnosisについてはMarshall BlogでもStorm Thorgersonへの追悼の意を込め、本Music Jacket Galleryのレポートを掲載しているのでそちらもご参照されたい。
●緊急特集!Hipgnosis Collection~Progressive Rock Works
●緊急特集!Hipgnosis Collection~Hard Rock Works
掲載時、膨大な数のアクセス件数があり、改めてHipgnosisの人気の高さと、その独創性を愛でる日本人のキメ細やかな感性に感心した次第である。また、ジャケットの重要性を認識しているファンがいかに多いかの証左にもなった。
今回の展示は、2011年からスタートしたPink Floydのリマスター・シリーズのすべてのアートワークを手がけたThorgerson作品の中から、『Pink Floyd BOX』を始めとして、『The Dark Side of the Moon(狂気)』、『Wish You Were here(炎〜あなたがここにいてほしい〜)』、『The Wall』のコレクターズ・ボックスなどのパッケージがを展示された。
『「ハコ」という「ハコ」はすべてゲットする』という植村氏のゴージャスなコレクションを通じ、是非Storm Thorgersonの華麗なるアートな世界をご堪能いただきたい。
●PINK FLOYD / SHINE ON (COLUMIA 1992)
1983年にHipgnosisを解散したStorm Thorgerson。その後、彼が初めてボックス・セットを手がけたのが、この9枚組CDボックスだ。
デビュー作『The Piper at the Gates of Dawn(夜明けの口笛吹き)』からこのボックスのみの特典CD『Early Singles』までの9枚のCDを並べると、『The Dark Side of the Moon(狂気)』のジャケットに使用されたピラミッドの模様になる仕掛けが楽しめる。
パッケージももちろんのこと、同梱されたオリジナル・ポスト・カードのデザインワークも秀逸だ。
●PINK FLOYD / PULSE (COLUMBIA 1995)
Thorgersonがアート・ディレクションを施したPink Floyd2枚組ライブCD。
このパッケージの最大の特徴はボックスの背に付けられた発光ダイオードだろう。中古CD店でコレに出っくわすといつもビックリする。
『Pulse(パルス=鼓動)』というアルバム・タイトルにちなんで、赤い光が鼓動のように点滅するというワケだ。
実はこのLED以外にも、パッケージ全体のアートワーク・センスは十二分にインパクトが強いものだ。(本多貞夫氏所有)
●PINK FLOYD / THE WALL IMMERSION BOX SET (EMI 2012)
ロック史上に残るピンク・フロイドのロック・オペラ超大作『The Wall(ザ・ウォール)』の6CD+1DVDからなるコレクターズ・ボックス。
このボックスも『The Dark Side of the Moon(狂気)』、『Wish You Were Here(炎~あなたがここにいて欲しい~)』と同種類の特典が同梱されているが、それ以外にもオリジナル・キャラクターを手がけたGerald Scarfe(イギリスのイラストレーター:イギリスのメジャー新聞にイラストを提供したり、The Sunday Timesやthe New Yorkerのコラムニストとして有名)による手書きの歌詞入り特大ポスター、特製アートプリント、ステージ・プロデューサーのMark Fischer(The Rolling StonesやU2をも手掛けるステージ・デザイナーの超大物)によるライヴ・セット・スケッチのレプリカも見事に復刻されている。
●PINK FLOYD / I WISH YOU ARE HERE IMMERSION BOX SET (EMI 2011)
名作が多いピンク・フロイドの作品の中でも世代を超えて人気をキープする『Wish You Were Here(炎~あなたがここにいてほしい~)』の2CD+2DVD+1BLU-RAYからなるコレクター・ボックス。
Thorgersonのアート・ディレクションによる数々の特典は『The Dark Side of the Moon(狂気)』のコレクターズ・ボックスと同種類のものが同梱されている。当時のツアー・チケットやバックステージ・パスのレプリカの復刻も見事だ。
●PINK FLOYD / THE DARK SIDE OF THE MOON IMMERSION BOX SET (EMI 2011)
ピンク・フロイドを代表するアルバム『狂気』の3 CD+2DVD+1BLU-RAYからなるコレクターズ・ボックス。ストーム・トーガソンによる当時のデッサン、イラスト、写真などで構成されたアートブックを始め、ストームのデザインによるコレクターズ・カード、スカーフ、ビー玉、コースター、など多数の特典を同梱したボックスは、否が応でも所有欲を刺激するアート感覚に溢れたパッケージです。
ズラリと並んだオマケ類。
●PINK FLOYD / OH, BY THE WAY (EMI 2007)
Floydのオリジナル14作品を全て紙ジャケットCDに復刻したボックス・セット。
紙ジャケ化は、2001年5月に世界で初めて日本で制作された。そして、その時のデータを基にして海外で制作されたものが、この紙ジャケ・ボックスになった。
ボックスの特典である、Thorgersonのデザインによるオリジナル・コースター、ジャケットを網羅した特大ポスターとパッケージ・デザインはさすが。
しかし!紙ジャケそのものの完成度は日本のもの(金羊社による製版・印刷)に比べるとワンランク下といわざるを得まい。ただし、オリジナル・レーベルの復刻度は実に見事ではある。
●PINK FLOYD / DISCOVERY ( EMI 2011)
2011年秋からスタートしたリマスタリング・シリーズは音源の素晴らしさもさることながら、アートワークも全てThorgersonの手によって一新されている。
このボックスは彼らのオリジナル・アルバム全14作を収めたもので、Thorgersonによる当時のイラストや写真などを盛り込んだアートブックが同梱されており、パッケージもまさにアートそのものだ。
●PINK FLOYD / IS THERE ANYBODY OUT THERE THE WALL: LIVE 1980-1981 (EMI 2000)
Thorgerson作品の最後は、彼が手がけたピンク・フロイドの2枚組ライブCDの初回限定生産盤だ。
通常盤はマルチPケースに収められているが、このボックスはブック型の特殊仕様になっている。フロントのデザインは、『The Wall Tour』のポスターから流用されたもの。CDが収納されているポケットの裏側にもデザイン・ワークが施されているのはThorgersonのこだわりかもしれない。
●DAVID SYLVIAN / WEATHERBOX (VIRGIN 1989)
Sylvianのソロ・デビュー作から5作目までのアルバムを収めた初の5枚組CDボックス。
デザインは彼の専属デザイナーともいえるRussell MillsとDave Coppenhallの2人の手によるものだ。Sylvian独特の美意識がそのまま極上のアート・パッケージに昇華した傑作に仕上がっている。
●BRIAN ENO / ENO BOX Ⅰ&Ⅱ (VIRGIN 1994)
近年はColdplayなどのプロデューサーとしても注目を集めているBrian Enoの作品を、2点の3枚組CDボックスに集大成した。
BOXⅠではインストルメンタル作品を、BOXⅡではヴォーカル作品を収録している。シリーズもののボックスなので、2点を揃えるとヴィジュアル・イメージがより完結したものなるというワケ。デザインは上のRussel MillsとDavid Coppenhallの手によるものだ。
●RYUICH SAKAMOTO / PLAYING THE ORCHESTRA (VIRIN JAPAN 1988)
世界的な名声を誇るアーティストの1人、坂本龍一の作品を集大成したCDボックス。
全世界30,000セットの初回限定生産のこのボックスは、日本を代表するアーティストの1人、大竹伸朗によるデザインワークが施された独特なボックス・アートになっている。
振れば「サラサラ」と音がする仕掛けの箱そのものも素晴らしいですが、このボックスのみに特典として同梱された2枚のシングルも貴重な音源といえよう。●VARIOUS ARTISTS / BRAIN IN A BOX (RHINO 2000)
「ボッ クスを手がけては右に出るものがいない」といわれるRhinoから発売された、SF映画やドラマなどの宇宙ものや、さらにロボットものなどをテーマにした5枚組CDボックス。
一見すると金属で作られた箱に見えるが、残念ながらフタだけ本物の金属製。しかし、箱の3面にホログラフィー処理された脳の意匠は本当に立体的に浮かんで見えるのが見事だ。
200ページにも及ぶ特製ブックレットも読み応え十分。
今回の「SFジャケット特集」を締めくくるにふさわしいアイテムではなかろうか。
(敬称略 ※協力:本項解説文原本執筆・植村和紀氏、金羊社・奥平周一氏 )
Music Jacket Gallery展示の詳しい情報はコチラ⇒金羊社MJG常設展
※本展示は2012年6月に終了しています。現在の展示内容は上記の金羊社ウェブサイトでご確認ください。