【ショ盆まつり】ストウ・ザ・セッション「Sasakist」の伊藤ショボン太一<後編>
【ショ盆まつり】の最終回は「あのスーパー大物歌手」のバックバンドという職場仲間が集まってゴージャスな演奏を繰り広げる「ストウ・ザ・セッション」のレポート<後編>。
こういうのカッコいいね。
皆さん、「ジャズ」というと4、5人のミュージシャンが集まって♪チンチキチンチキ演るのが普通だと思うでしょう?
ああいう小さい編成のジャズのバンドのことを「コンボ」っていうんだけど、アレは元々ジャズ・オーケストラ(ビッグバンド)の腕利きのメンバーが「ソロだけを演奏しよう!」ってんで始まった楽団のスタイルなのね。
今日みたいなセッションはそれを連想しちゃう。
場面は第2部がまさに始まるところ。
「皆さん、お楽しみ頂けておりますでしょうか?
もう最終日感が溢れちゃっています!」
滅法楽しそうにしているのはお客さんだけでなく、メンバーの皆さんも同様。
こういうのが「良いライブ」ね。
第2部は須藤さんが他のセッションで取り上げて感じがヨカッタというラリー・カールトンの「Room 335」でスタート。エ?
佐々木さんが弾き出したイントロはスティーリー・ダンの「Peg」から借用したあの「♪チャッチャッチャ~ン」とは似ても似つかず。
コレでホントに「Room 335」になるのかしらん?と心配になるぐらいレイドバックした雰囲気。あ、なった!
佐々木さんがあのテーマを奏でて「335号室」に入りました!
テーマからそのままソロへ。野崎さんが華麗なソロをキメると…
佐々木さんとの息詰まる掛け合いに発展した。
そのバトルを斜め後ろからアオっているのがショボンちゃん。
今日、ショボンちゃんが使っているNATALはビンテージ・モデルの「ZENITH(ゼニス)」。
「ナニせ音がいい」と、レコーディングに、大会場でのライブにとショボンちゃんの自家薬籠中のキットのひとつになっている。野崎さんのMCもオモシロかったナァ。
「アノ~、ボクらは共通の現場で仕事をしているんですが、ソチラの3人はステージの同じ側にいて、ボクは反対側で職場が分かれているんです。
で、ボクらの側は割と真剣にやっているんですよ~」「我々だって真剣ですよ!」
会場は大爆笑!野崎さんがおっしゃっているのは、須藤さん、佐々木さん、ショボンちゃんたちが賑やかで、とても楽しそうに仕事に取り組んでいるということ。
滝口順平のモノマネを交えたトークや佐々木さんのラリー・カールトンの話しで盛り上がりに拍車がかかった!曲のコーナーへ移りましょう。
先頃発売された佐々木さんのシグネチャー・ペダルをフィーチュアした「Fountain」。
心地よい歪み音でバリバリと弾きまくる!
多彩なフレーズが次から次へと、まさに泉のように湧き出て来る。
全編を通してこの調子だからスゴイ!この日のレパートリーではもっともロック色の濃いナンバーかな?
それにつられて会場の雰囲気はますますヒートアップ!「チョット~、いい風吹いたんじゃないですか?
この曲、このツアーで大分育ったんじゃないですか?
コレでLA行きましょう!」続いては須藤さんが「笑点」のテーマ曲を随所に織り込んで作った「Smile.」。
「Smile」に「.」で「笑点」だ。
ショボンちゃんはブラシに持ち替え。リズムが7/4拍子のメローな笑点。
…………(ジックリ聴く)…………なるほどなるほど!ハハハ、確かに皆さんチョコチョコと巧みにあのメロディをに突っ込んでくる!
さすが腕利きの皆さん、あからさまに規定のメロディを弾くことが全くなく、中村八大もビックリの名アレンジっぷりとパフォーマンスだった!
どうでもいいけど私は子供の頃に見た「笑点」の司会者は立川談志だった。
目黒にある老舗のライブハウス「鹿鳴館」は、一時談志が運営する「目黒名人会」という寄席だったんだよ。
そして私と言えば、長野にいた時に「権堂」という繁華街で談志にバッタリと出くわして彼のオハコの「鼠穴」という人情噺の一節を当の本人の前でマネして見せたことがある。
それを見て談志は「今晩はオモシロい人に会ったね~」とテレビで見る通りの言い回しでとてもよろこんでくれた。
「なんだ?そりゃオマエの自慢話か?」って?
そうです、自慢なんです。
だからもう何回もココに書いています、ハイ。ココでスキーの話。
佐々木さんが神奈川県のスキーの選手だったということで、「パラレル」だの「シュテム」だのといった懐かしい言葉がゾロゾロ出て来た。話が2本をスキーを揃えてクネクネと滑降する技術「ウェーデルン」に及ぶと須藤さんから「昔はアレは『クリスチャニア』と言ったんだよ」という発言があって私はひとりで大声を出して笑ってしまった!
「クリスチャニア」なんて言葉を最後に耳にしたのは一体いつのことか?という感じだったから。
少なくとも20世紀の後半だ。
「ギルランデ」なんてのもありました。
日本で使われるスキーの用語はドイツ語で、調べてみると「シュテム(Stemm)」とか「ボーゲン(Bogen)」なんて言葉は元々「Stemmbogen」というひとつの単語なのだそうだ。
前者は「押し出す」、後者は「円弧」という意味。
スキー板の先端を閉じて板尻を円を描くようにグイと広げるイメージのようだ。
で、驚いたのは「クリスチャニア」。
コレはノルウェイの首都の「オスロ」の古い呼び方なのだそうだ。
クリスチャニアという技術がこの地で最初に考案されたことからその名が付けられた。
知らなかった!
オランダの「スケベニンゲン」で始まらなくてヨカッタ。
もっともオランダには山がないか…。ということで次の曲はドンズバで佐々木さん作の「Weddln(ウェーデルン)」!
佐々木さんのファンク・ストラミングからやたらとエッジの利いたテーマ・メロディへとつなげる。野崎さんのソロが続く。
ココでもゲレンデの雪を溶かすような熱のこもった指さばき&身体さばきを披露してくれた。佐々木さんのファンク・ストラミングをバックにショボンちゃんがターミネーターぶりを発揮する!
スゲ~!壮絶なドラム・ソロ!
しかも、音が最高~! するとソロは意外な方向へ展開していく。
ショボンちゃんが取り出したのは…オニギリ?佐々木さんが延々とファンク・ストラミングを続ける中、オニギリを食べ出した。
ハハン、そういえば大分前にドラム・ソロの途中で右手のスティックを箸に持ち替えて焼肉かなんかを食べながらプレイしたことがあったっけ。
きっとココからあの時みたいなアクロバットを見せてくれるんだろう。
さすがターミネーター!「グ~!」
エ?終わり?
ただオニギリを食べただけ?
ま、ショボンちゃんの場合「米」も担当しているから「ドラム・ソロ」だけじゃなくて「オニギリ・ソロ」でもいいのか?…そんなバカな!
こんなの初めて見た!「チョット!コレは一体ナンの時間なのよ!」とショボンちゃんに詰め寄る佐々木さん。
「イヤ、ちょっとお腹が空いちゃったもんで…」
さすがターミネーター、神経も不死身だ。演奏は続く。
右へ左へ滑らかに体重移動をする須藤さんと佐々木さん。
佐々木さんはウェーデルン、須藤さんはクリスチャニアをキメているところ。
純白の雪面に美しいシュプールを描いていくような演奏だった!…ホンマかいな?MCではスキーの話題が続いた。
山形ご出身の須藤さん、蔵王で開催される「樹氷まつり」の松明滑降のBGMを氷点下12度の中で生演奏した時の話。
ベース弦は金属製なので指から冷たさがドンドン伝わって寒いのなんのって!
足元は雪を盛って踏み固めたステージだ。
イヤ~、わかります、わかります。
私も長野でハコバンをやっていた時、白馬村に呼ばれて「スキー供養」という神社で開かれる催しでギターを弾いたことがあった。
ガツンと日本酒を飲んで身体を温めてから本番に臨んだが、もうそんなもの全く効果がなく、信じられないぐらい寒かった。
やはりステージは雪を締め固めて作ってあった。
かわいそうだったのは歌の女の子。
鼻水が垂れて来てしまって、すべての歌い出しが鼻をすする「ズズ~」になっていた。20年以上前、その頃の須藤さんが作った軽快なフュージョン・チューン「Super G」で本編の幕を下ろした。
最後の最後まで熱血ピアノを聴かせてくれた野崎さんのソロから…
須藤さんのソロへ。
本編最後の大暴れ!何しろ足元が明るい!
…ってんでノッシノッシとワザワザ足の裏を見せながら客席に繰り出して来た。
イスに上がって思う存分弦を叩き…
ズリズリ、ズリズリと…
ギャハハ!
そのままイスを引きずってステージに戻って行った!すると今度は佐々木さんが客席にやって来た!
私の席を通り過ぎて…
ウワ!店の外へ出て行っちゃったぞ!
その間ズッとソロを弾きっぱなし。
やはりソロの内容が濃い!
あ、帰って来た!フロント陣が暴れ回っている間もショボンちゃんの小気味よいグルーヴが間断なく続く。
オニギリを1コ食べたので元気イッパイ!そして、リタルダンドしたりアクセルレイトしたりして…完走!
これにて本編終了。そしてすぐさまアンコール。
「アンコールありがとうございます!」ツアーの最後の最後は「The Way Back」でシットリと。
良質の素材を腕にヨリをかけた最高の演奏で料理してくれた4人。
イヤ~、おしゃべりも含めて実に楽しいショウだった!
最後は記念撮影。
本業の現場の方も最後までガンバってくださ~い! <おしまい>