BLINDMAN~TOUR 2025 ーAFTER RAIN COMES A RAINBOWー<前編>
今日は目黒鹿鳴館から。
この先、2週間チョットの間に何がしかのどデカイ番狂わせがない限り、Marshall Blogでの目黒鹿鳴館からのライブ・レポートはコレで最後となる。
幾度となく延命措置が施されたものの、本当に最後を迎えるとなるとやっぱり寂しいナァ。
そんな最後のレポートに登場してくれるのはBLINDMAN。
記事の制作も気合が入るというものだ。
今年9月に発表した12枚目のアルバム『After Rain』を引っ提げての登場だ。
バンド結成30年、フル・アルバムとしては『EXPANSION』以来5年ぶりの作品。
私は6枚目の『Subconscious in Xperience』から発表と同時に新作を聴かせてもらってきているが、一度たりとも期待を裏切られたことがない。
むしろその期待を上回って余りある作品がハードロックのマーケットに送り出されてきたと言っても過言ではあるまい。
今回もまさにそんな出来栄えの一作。
ご覧の通りCDの盤面には広重の浮世絵のような雨が激しく降っているが、「BLINDMANがいる限り日本のハードロックは大丈夫だ!」という晴れ晴れとした気持ちにさせてくれる1枚なのだ。
この日の屋台村のようす。
もちろんイチ押しは『After Rain』。
定刻にショウがスタート。
1曲目は『After Rain』のオープナーでリード・チューンの「Spreading Out the Wings」。
Ray
中村達也
遠藤均
戸田達也
實成峻
さっそく達也さんのシャープなソロが飛び出した!
もちろん今日も達也さんは愛用の「JCM800 2203」を使用。
スピーカー・キャビネットは「1960A」。
ギターも相棒のレスポール・カスタムが2本。
いつも通りの光景だが、実はこれまでとはチョイと違う。
この話は後ほどオーナーご自身に触れて頂くことにしよう。
「ハードロック」の魅力をブチかまして初っ端から大きな翼を広げて見せた!
2曲目は前作『OUTBURST』の1曲目「A Man in Wonderland」。
達也さんが弾く3連リズムのギター・リフがグっと来る。
やっぱり3連の曲ってのはいいね。
今、ブギとかシャッフルとか、3連のノリのロックって若い人の間では絶滅しているらしいからね。
モッタイないことだ。
そして、いかにもBLINDMANらしいメロディを乗せたサビの展開がうれしい。
意表を突く転調からのギター・ソロがまた最高にスリリング!
「鹿鳴館、最高です!ありがとう。
皆さん、BLINDMANのワンマン・ライブへようこそ!
今回は色々と意味のあるライブです。
まずバンドとして30周年記念になります。
それと聴いてくれていますでしょうか?…『After Rain』。
12枚目のアルバムです。
今日はそのリリース記念のライブですからアルバムからバンバンバーンとお届けします。
皆さん、用意はいいですか!」
3曲目は峻くんのフィルから「Soul Stealer」。
キタキタキタキタキタ~!
言っているそばから壮絶なブギ!
うれしいな~!
戸田さんと峻くんのイキのあったグルーヴが最高に気持ちいい!
当然お客さんは大エキサイト。
達也さんと…
遠藤さんの攻めまくりのソロもタップリと味わうことができた!
続けてアルバム2曲目の「Groove the Night」。
達也さんのリフに乗って…
Rayさんが伸びやかにシャウト。
お客さんとの掛け声のやり取りも最高!
「2203」とレスポールのコンビネーションから繰り出される素晴らしいギター・サウンド。
達也さんの演奏を聴いていると、「真空管アンプだけがこの音を出せる」ことを改めて思い知らされる。
荘厳なオルガンの調べ。
テンポを落として「Heads or Tails」。
グッと時間がさかのぼって1998年のアルバム『Sensitive Pictures』からのチョイス。
達也さんのコーラスも聴きどころ。
もちろんギター・ソロもガッチリと盛り込まれ、マイナーからメジャーに向かって曲調が変わっていくところがとても魅力的だ。
「ありがとうございます。
皆さんの熱気をビンビン感じてます。本当にありがとう!
今演った『Heads Or Tails』という曲は、もうBLINDMANマニアの方はご存じかと思いますが、均ちゃん(遠藤さんのこと)が歌うファースト・アルバムの曲です」
「均ちゃん復活ですからね。
でもこのメンツで初めて演りました」
「今回の『After Rain』は12枚目のアルバムなんですが、1年がかりで制作致しました。
結構完成度は高いと思います。
私もジックリと歌やメロディや歌詞を作る時間もありましてね。
元々は中村達也の作曲能力があっての話なんですが、他にもミックスとか素晴らしい仕事をしてくれています。
今回、久しぶりに均ちゃんが加入してやっとこのメンツで作ったアルバムです。
皆さんにはガッツリと楽しんで頂きたいと思っています」
ニュー・アルバムのクローザー「Perfect World」。
出たよ。
今、Rayさんが触れた「達也節」全開!
このサビのメロディ。
「やりやがったナァ~?」と私がリキんで見たところでクソの役にも立たないのだが、「♪The feeling of your hatrid heart」の「heart」の音。
気持ちいいでしょ、コレ?
コード進行が実音でE♭m→D♭→Bと来て、この「heart」のところでBmが使われてハッとさせられちゃう。
コレ、Bmの正体はE♭mの関係調であるG♭のサブドミナント・マイナー…知らんけど。
達也さんは理論はニガテとおっしゃっているけど、もちろんメロディが先にありきの話。
要するに「達也節」なのだ。
それともうひとつ…この曲をアルバムの最後に配置したアイデアもスゴイ。
続けてアルバムでは「Perfect World」のすぐ前に収録されているバラード「Red Sunset」。
Rayさんが情感豊かにシットリと歌い上げる。
Rayさんの歌に呼応するように達也さんも感情のこもり切ったソロを聴かせる。
曲は後半で表情を変え、ドラマティックに幕を下ろす。
コレもいいアイデアだな~。
もう1曲つなげたのは『OUTBURST』から「The Bed of Nails」。
鉄壁のリズムに…
遠藤さんの華やかなキーボーズが被さり…
全員が一丸となって猛然とドライブしまくった!
「ありがとう、鹿鳴館!
新曲を結構多めに演っていますが、皆さんがアルバムをよく聴いて今日ココに来て頂いているということがヒシヒシと伝わっております。
ホントにどうもありがとね。
色々ありましたからね。
それではリーダーから皆さんにひと言お願いしましょうか」
「多分ひと言じゃ終わんない。
こんなにたくさんのお客さんでメッチャうれしいですね。ありがとネェ!
BLINDMAN…実は今日が今年初のライブなんですよ。
でもね、ずっと一生懸命作品を作っていたんです。
ボクだって演りたいんです…ライブ。
アルバム聴いて頂いています?」
客席から大きな拍手。
「タマらん、タマらん。この瞬間がタマらん!
自分で言うのもアレですけど自信作です。
末永く楽しんで頂きたいと思っています」。
「私のFacebookとかTwitterとか見てる方います?
ナニが起こったのか知ってる人いらっしゃいます?
1か月前にこのギターのネックを折ったんですよ。
それをご存知の方に『ちゃんと使ってますよ。!』ということを今日お伝えしようと思っていました。
話せば長いんで話しませんが、詳しくはインターネットでSNSを見てください。
18年メインで使ってきたギターがまた今日、こうやって一緒にステージに立てることが夢のようです」
…とネックの裏側を見せた。
まるで「木組み」のようにヘッドとサオを合体させている。
私の父は「大工」で、こうした木組みの加工をよくやっていたのを思い出す。
結構複雑な細工を材木に施すことが出来たようだが、こんな芸当はとてもムリだろう。
コレはもう「指物師」か「宮大工」の仕事のレベルだ。
下はその事故発生時のヘッドのようす。
レスポールとかSGとか、ヘッド自体に角度がついているギブソン系のギターにこうした不幸が起こるのはそう珍しいことではなく、私の周囲でも「ネックを折っちゃった!」という人を何人か知っている。
しかしそうした事故はメキッと木に大きな亀裂が入ってしまう程度のもので、「山田浅右衛門」の仕事よろしく首の皮一枚も残さずこんなに真っ二つにヘッドとネックが離れてしまっているのは初めて見た。
力のかかり方がよっぽど悪かったんでしょうね。
達也さんが「一巻の終わり」と絶望したのも無理はない。
18年もの間、メイン・ギターとしてレコーディングやステージで活躍して来た相棒だ。
サブで同じレスポール・カスタムを所有しているが、「どうしてもメインにはならない」とかつて言っていたぐらいだから、そのショックたるや我々の想像をはるかに上回るモノだったに違いない。
でもそれがホラ…この通り。
元に戻った!
一旦は復活を諦めた達也さんだったが、腕の良いリペアマンの仕事で愛器が見事に息を吹き返したのだ。
しかもそのリペアマンと接触できたのもホンの偶然のことからだったという。
大胆に接ぎ木を埋め込み、ヘッドとネックを一体化させた愛器の姿を目の当たりにした達也さんは、実際のステージで使った時の音や弾き心地が気になった。
そこでこの日のリハーサルの時に実地で試してみて判断する覚悟を決める。
そして、リハーサルで使ってみると…ヨッシャ!
「何の問題もなし」との判定を得て見事にメイン・ギターが帰って来たのであった。
めでたし、めでたし!
「これくらいでいいよな?…ひと言どころじゃなかったけど。
たくさん集まてくれて本当にありがとう!まだまだたくさん演るんで最後まで楽しんで帰ってください。よろしくお願いします!」
達也さんのMCに続いては『After Rain』から「No Pain No Love」
耳になじみやすいミディアム・ファスト・ナンバー。
中間でハッとするようなフレーズをアクセントに据えたギター・ソロ。
あんな話を聞いた後だとついジックリをギターの音を聴いちゃうね。
心配ご無用、従来通りの完璧なMarshallとレスポールの組み合わせの「達也サウンド」だ。
ココでRayさんがステージから離れる。
ファンキーめな曲調の「Lost in Thought」は峻くんのインスト作品。
戸田さんがミュートをしながらソロを弾き始め…
途中からディストーションをかけた音色で爆発!
遠藤さんのオルガン・ソロが続き…
バンド・アンサンブルを経て達也さんのソロへ。
そしてBLINDMANのライブには欠かせないドラム・ソロ。
ドラム・キットをフルに使ってスケールの大きなパフォーマンスを展開する峻くん。
華やかかつ鮮やかなスティッキングに客席から大きな歓声が送られた!
Rayさんがステージに戻って、曲はそのまま峻くんのドラムスのリードで「Upside Down」。
ク~、このリフ!
そして中間部のバンド・アンサンブルからギター・ソロへの流れはBLINDMANならでは。
こんな曲も新しいアルバムには入っているワケよ。
輪島塗りではないが、やっぱり一流の匠が時間をかけてジックリ作ったモノは間違いがない。
センセーショナルなドラム・ソロを披露した峻くんからご挨拶。
「今日はお集まり頂きましてありがとうございます。
こんなにたくさんの方が来てくれることを毎回毎回非常にうれしく思っています。
先ほどのインスト曲『Lost in Thought』はいつもボクのソロ活動の時に演ってるんですが、まさかまたBLINDMANで演ることになるとは思いもしませんでした。
あんまり全員のソロをフィーチュアすることがないのでタマにはどうかな?と思って演奏しました」
「12枚目のアルバムが出ましたが、本当にありがたいことに好評みたいです。
どうです?みなさん…『Spreading Out the Wings』を聴いた時に最初ビックリしませんでした?
まだまだBLINDMANは元気なんです!
私が後ろからメンバーのご老体に後ろからピシピシとムチを振りますので最後まで楽しんでいってください!
ありがとうございます」
<後編>につづく
(一部敬称略 202510月11日 目黒鹿鳴館にて撮影)