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ミュージック・ジャケット・ギャラリー Feed

2013年6月 3日 (月)

Music Jacket Gallery~日本独自ジャケットLPコレクション<前編>

Shige Blog 2012年7月18日 初出

実はシゲブログをスタートさせた理由のひとつに「ミュージック・ジャケット・ギャラリーのレポート」というか解説を書き続けたいという欲望があった。

以前書いていたブログが、おかげさまでマスコミ関連等、多方面の方々にもご愛読いただいていたという僥倖もあったが、この無責任にウンチクを固めまくった拙文を楽しんでいただいている音楽ファンが予想以上に多数おいでいただいたということが何よりうれしかったからだ。

私も音楽ファンということにおいては人後に落ちないつもりである。音楽ファンとしてこのレポートを書き続けなければならない…という気持ちになったのだ。もちろんそれを至上の喜びとしていることは言うに及ばない。

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ということで我ながらめでたくMJGレポートを再開させていただいたが、ノッケから読者のみなさんにお詫びをしなければならない。というのは、数か月のブランクの間に2回分の展示をスキップしてしまったということだ。つまり2回抜けちゃったの。

で、今回レポートするのは去る2012年1月から3月まで展示されていたものであるということをあらかじめご了承ください。
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もちろん会場はおなじみの金羊社のギャラリーだ。

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今回のブローアップ・ジャケットはJethro Tullの『ゴールデン・ジェスロ・タル』と…ってそんなのあったか?

…とTodd Rundgrenの『ハロー・イッツ・ミー』。これは持ってた。
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今回は日本のみで独自にデザインや編集された作品の特殊なのだ!コレ楽しみにしてたんよ~!

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その昔、森山周一郎が何かのインタビューで映画の吹き替えを指して「しょせんはステーキのハンバーグ化」と、いいものをワザワザ改悪していると指摘していたのを覚えている。あのジャン・ギャバンの、あのリノ・バンチュラがの、スペンサー・トレイシーの、テリー・サバラスの…あのカッコいいこと極まりない声の持ち主がそういっているのだ。全面的に賛成!
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それが今ではロードショウ公開でも吹き替え版の方が人気があるっていうじゃない?字幕を読むのがイヤだから邦画のほうがいいとかいう若い子も多いと聞く。ま、今のハリウッド映画は今の音楽よりも面白くないと思うので、彼らの意見を一概に否定はできそうにもないが、オリジナル至上主義の私にはとても奇異に映る。
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アニメの隆盛により声優の地位が確立されたせいもあるのだろう。

「最近は外人さんも日本語がうまくなったネェ~」とテレビの洋画劇場を観て感心したお年寄りがいたというのもうなずけなくもない。

でも、この吹き替えという形態は世界的に見れば字幕よりはるかにスタンダードな翻訳手段なんだよね。ま、これはこれで結構おもしろいこともあって、海外に行って日本のアニメが吹き替えで放送されていると思わず見入ってしまったりするものだ。

これが英語の吹き替えだと、まあ、それほどさっぱりわからなくもないのでオモシロ度が低減してしまうのだが、これがドイツ語あたりだとかなり笑える。バイツェン・ビールを片手にスーパーの総菜コーナーで買い込んできたしょっぱいこと極まりないシュニッツェルとハンバーグをパクつきながら、「ナニいってんだコイツ?!」とあのドイツ語独特の妙なサウンドに吹き出しそうになりつつ楽しむのだ。何せ「0(ゼロ)」が」「ヌル」だからね。「ジェームス・ボンド」は「ヌルヌルズィーヴン」だ。
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さて、今回紹介するMJGの特集は、日本で独自に制作された作品たちだ。繰り返すが、展示は2012年の1~3月にされていたもので、現在MJGで開催されている特集の展示アイテムではないことをご了承いただきたい。
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先にも書いたが、実は従前よりこの特集を楽しみにしていた。
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というのも、こうした編集盤、あるいはジャケット違い盤は得てして短命で市場から姿を消すことが多く、見たこともないようなものがゾロゾロと出てくることを期待していたのだ。
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イヤ、もっと正直言うと、すでに申し述べた通り、こっちはガッチガチのオリジナル至上主義。昔の日本のレコードいかに、どれだけ、オリジナル作品を改悪しているかに興味があったのだ。(植村さん、ゴメンなさい!)
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実際、実物を目にすると、あながち「改悪」ばかりではないことにガッカリしたりもするが、ナントいうかナァ…
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猛烈に流行に流されやすい日本人の国民性が垣間見れて大変面白かった!
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もちろん今回も出典は日本を代表するコレクター、植村和紀氏。
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ウチは引っ越しの時、父が勝手にドバっと捨ててしまったが、植村さんはほとんどの帯をキチンとかけっぱなしにしていらっしゃる。やっぱり国内盤といえば帯。帯に臆面もなく堂々と記してある惹句の数々も見どころのひとつだった。

それではいってみましょ~!
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これぞ日本制作盤!なんで昔はこうして来日ミュージシャンに法被を着せちゃってたんだろうね~。もっとも有名なのはビートルズの日本航空の法被か?ハハ~ン、「法被でハッピー」ってか?!

それと必ずついて回るのが「ゴールド」とか「ゴールデン」とかいうタイトル。それこそ金科玉条にひっつけられていた。「ゴールド・ディスク」の印象も強かったのかな?。今、「ゴールドなんとか」とか「ゴールデンなんとか」なんていう名前がついた商品って見なくなったよネェ。金の価値も下がったってか?

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The Chantays(ザ・シャンテイズ)は1961年結成のサーフ・ロック・バンド。私は比較的テケテケが苦手で本当にサワリしか知らない。その貧弱な知識の中に「Pipeline」ぐらいは入ってる…ベンチャーズの曲としてね。

そしたらアータ、「Pipeline」って曲はこのシャンテイズの曲なんじゃないの!1962年の暮れにシングル盤を出して、1963年にはビルボードのヒットチャートの4位にまで昇ってる。63年にはUKヒットチャートにも!
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画像が残ってる。

スゴイよね。このアクション!これがカッコいいっていう時代があったんだからおもしろい。ベンチャーズのリリースはいつだったんだろう?このあたりはウルサ方が多いので深入りはやめよう。

裏面は昔の国内盤の定番的デザイン。これもどうかと思うよな~。ジャズの昔の国内盤なんてみんなこうなっているけど、オリジナルのジャケット・デザインは無視ってことだもんね。もしかしてあまりにもクレームが多くなったので解説を別紙にしたのかしらん?今度、植村さんに教えてもらおう。
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タルよ!お前もか?!…またゴールデンだよ。内容は果たしてゴールデンなのか?…というのもこのコンピレーション、タルのファースト・アルバムの『This Was(日曜日の印象)』とセカンドの『Stand Up(スタンド・アップ)』にシングル曲を混ぜっこしたもので、ちょっと「ゴールデン」出すの早すぎるんじゃない?という印象。だってまだ『Aqualung(アクアラング)』も出してないんだよ!

植村さんは大のタル・ファン、で何しろイアン・アンダーソンとホッケをつついた仲だというのだからスゴイ。1972年に初来日した時の記者会見の時に撮影した写真のカラー・ポジとかもお持ちでいらっしゃる

私も大好きでしてね。植村さんに対抗できそうなのは…ん~、!、イアン・アンダーソンの出身地、エジンバラへ行った…ってのどう?まったくかなわないな。

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でも、ゲイトフォールド仕様だし、写真もカッコいいし、ジャケットしては悪くない。
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解説書も別に仕立てたし…でも、糊で貼っちゃうんだよな~、コレ。
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ウワ!リッチーもロニーも別人のようだ!って、ウソウソ!

1968年のLA出身のバンド、「レインボー」のデビュー・アルバム。アシッド・ロックだってよ。ホーンが入っていてかなり大がかりなバンドらしいが、クレジットされているメンバー11人のうち6人のラスト・ネームがMohrと同じ。Mohrというのはドイツの名前らしいが6人も同じとはコレいかに? 何でも「何妙法蓮華経」のコーラスなんかも入っているらしい。いわゆるサイケデリック・ロック。何となく洗剤みたいなデザインのジャケットだな。

この時代って宗教がかったラリパッパバンドが盛んだったでしょ。Hawkwindとか…。Quintessenceなんて「ジーザ~ズ、ブッダ~」とか長時間あっちの世界へ行ってらして、静聴するのがなかなかに辛い。この後に出てくるGraham Bondなんかもそうだけど、これは結構好き。

実際に聴いたことがないのでYouTubeで音源を探そうと「Rainbow」と入力する。ま、リッチー・ブラックモアズ・レインボーがズラリと出るわね~…と思ったらなんだこりゃ?K-POPかよ!Rainbowっていうのがいるの?ちょっと見てみるか…。(中断)こりゃKALAとまったく見分けつかんわ!

タイトル曲を聴いてみたが、全然印象と違った。他の曲がスゴイのかもしれないけど、このタイトル曲は美しいピアノに絡むフルートの美旋律。「何妙法蓮華経」のテイストは皆無だ。何かよさそうじゃないの、コレ?

それにしてもロックもずいぶんといろんなことをしてきたワケですよ。そこへいくと今のロックはあまりにも平和だよね。ハッキリいって今の「パンク」あたりより、もはやQuintessenceやGraham Bondあたりの音楽の方が全然危ないもんね。

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こちらはカナダ出身の60年代のサイケ・バンド。これはかなりいいわ。まったく「革命」はしてないけど。なんでこんな格好しているんだか知らないけど、適度にハードでメロディアス。ジャージャーのファズにチリメンより細かいビブラート!この時代にしか聞けないギター・サウンドですな。ちょっとボーカルに難があるけど、いいバンドですよ。もしかしてアタシの「サイケ」の定義に誤りがあるのかしらん?とにかくカナダは無視できないよ!
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The Yardbirdsはしっかり聴いた時期がまったくない。やっぱり、「3大ギタリストが所属していた」ということで認識してたにすぎない。当時、オリジナル・アルバムが不明確だったという記憶があるな。この2枚組も中学の時かな、カッコいいジャケットだな…とは思ったけど欲しいとは思わなかった。友達がジェフ・ベックとクラプトンのファンでこれを買い、家に遊びに行って聴かせてもらったが、「買わなくてよかった」と思った。今見るとこのジャケットはケーキのTopsみたいだね。『Five Live Yardbirds』だの『For Your Love』だの『Rogher the Engineer』だの『Little Games』だの有名どころは持ってるけどほとんど聴かないな~。Charlie Parkerはよく聴くけど…。

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Cherはまったく知らない。でも、ここに取り上げたのは彼女とグレッグ・オールマンが一時結婚していたということが書きたかったから。すごくエキゾチックなルックスだと思っていたらお母さんがネイティヴ・アメリカン(チェロキー)なのね。

グラミー賞もアカデミー賞もゲットしたCher。確かに『月の輝く夜に(Starstruck)』はヨカッタな~。ノーマン・ジュイソンが撮ってるからね。
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このジャケット・デザイン、なんか強烈に日本編集の香りがするな~!もうちょっとデザイン考えればよかったのに…。上のCherもそうだけど、こうして「ライブ・イン・ジャパン」ものが頻繁に制作されるけど、十把一絡げの作品もあれば、Deep PurpleやCheap Trickのように名盤の域まで上りつめてしまうものもある。BBAなんかとうとう世界発売されなかったんでしょ?これらはひとえに契約の内容に左右されるのだろうか?

Edgar WinterとRick Derringerのヤツなんかいいのにな…と思ってたらこれは世界発売されているのね?

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「ビートルズのメンバーの名前を言えない若い人がいる」と聞いてももう驚かない。反対に若い人がこれを聞いたら驚くかな?

「ビートルズの前にはエルヴィス・プレスリーというロックンロールの王者がいたんだよ。『ロックンロール』って何かって?ロックとは違うのかって?まあ、いいから、いいから。 エ? エルビスはコステロだろって?エルビス・コステロって何かって? あ~話しが進まん!」

「気を取り直して、エルヴィス・プレスリーというロックンロールの王者という人がいてドーナツが好物だったんだよ。ビートルズのアイドルさ。そのプレスリーの前の時代、1940年代にはこのジャケットに移っているやや立ち耳のおじさんたちが普通の若者のアイドルだったんだよ!ものすごく歌の上手なアイドルだ。ビング・クロスビーとかフランク・シナトラとか…若い女性は彼らを見てメロメロになったんだよ。だから、このおじさんは今でいえば嵐なんだぜ!」

…って誰も聞いてね~!

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「ロック=車」というステレオタイプももう大分影をひそめたかな?イングヴェイとフェラーリが最後の砦?最近は女の子にもてたくてギターを始めた…なんて話しもきかなくなりましたナァ。昔はギターと車が女性の気を惹くための神器だったのにね。

このジャケット!後ろはGEビルかなんかかね?月が出てる。ハハ~ン、土曜日の夜、彼女を自慢の車に乗せて街へ繰り出してロケンロールでひと踊り!ってことだな?

ロケンロールというとやっぱりこういう車がついて回るんだね。でも確かに『アメリカン・グラフィティ』を観たときは猛烈にアメリカに憧れたですよ。それとやっぱりあの珠玉のオールディーズはよかったな。今でも流れていればつい聴いてしまう。世の中あんなに名曲に満ち溢れていたのにね…これ以上はいわない!

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♪なんでだろう、なんでだろう?どうしてこうやってジャケットを変えて国内盤を作るんですかね?タイトルもそう。「真髄」とは一体なんだ?何回もCDを聴いたし、チョコチョコと調べてみたけどわからなかった。

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オリジナルのジャケットはコレ。ん~、特段差し替える必要もないように思うんだけど…。まさかギブソンの宣伝?

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それでもただライブの写真をそのまま使うのではなくて、カラーポジ風に見せているところが気合の入れどころだったか…。

原題は『Songs for a Tailor』。「tailor」とは仕立て屋さんのこと。この仕立て屋さんとはCream時代からジャックたちの衣装を作っていたジェニー・フランクリン(Genie the Tailor)のこと。この人は当時Fairport ConventionのRIchard Thompsonの恋人で、ジャックの前の恋人だったらしい。で、このジェニーが交通事故で亡くなり、このアルバムを捧げたというワケ。

Jack Bruceのソロ・デビュー作でMountainもカバーした有名な「Theme for an Imaginary Western(想像された西部劇のテーマ)」を収録している。メンバーもDick Heckstall Smith(Rolland Kirkみたいな人ね)、Jon Hiseman、John Marshall、Chris Spedding、Felix PappalardiとColloseum系列の濃い~連中が参加しており、1曲George Harrisonもプレイしている。内容は「オレってこんなこともできるんだぜ」的なテンコ盛り作品。私は好きです。

実はこのアルバムの発売は1969年で、ソロ・デビュー・アルバムということになっているが、翌年発売された『Things We Like』の方が先に制作されている。こちらはギターにJohn McLaughlin、Jon HisemanにDick Heckstall Smithというカルテット構成で吹き込んだフリージャズと紙一重のゴリゴリのアコースティック・ジャズ作品なんだな~。カッコいいんだ、ジャックのアップライト。音もいいし。やりたかったんだろうね~、こういうの。

もちろん私はこっちの方が好みなんだけど、クラプトンに負けじとスター街道を歩みたいジャックと、もしくは一山当てたい取り巻き連中が、「ま、ジャズなんていつでもできるからさ、まずは歌ものでデビューしときましょうや!」なんて話し合ってリリース順を決めたんじゃなのかね?

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これも見るからに日本編集だよね~。『ダブル・デラックス』いいネェ~。果たしてJohn Mayallのどこにデラックスがあるのか?!…なんて言ったら怒られちゃうか?
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私はほとんどブルースを聴かないので、マーシャルの仕事の関係がなければ『Bluesbreakers John Mayall with Eric Clapton』すら聴かなかったかもしれないんです。スミマセン、勉強不足で…。だって飽きちゃうんだも~ん。

それにしてもジョン・メイオールくんだりで、こうして2枚組を制作しちゃうんだからのどかな時代だったよね。
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こういうのも昔よく見かけたナァ~。どうしてこういうデザインになるかね~。例えば、ジャズのレーベルでもPacificなんかは自分のとこの音源を組み合わせてカタログ的に盛大にコンピレーションを出しているけど、これがそれぞれ実に味わい深いジャケット・デザインで、ついつい買いたくなっちゃう。これらでジャケ買いする人は皆無でしょう。

だいたいBeach Boysのインストって面白いのかあ~。制作に関わったみなさん、勝手なことを申してスミマセン。でも今なら新橋の地下のコンコースで500円で買えそうな…。そんなやさしい風合いを出してくれていますね。

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UFO!Michael Schenker加入前のUFO。コレ聴きたかったんだけど、若い頃入手不可能だったんだよね~。で、ロック好きのゲームセンターのお兄さんと有線に「C'mon Everybody」をリクエストしたのを覚えている。それがリクエストを受け付けてくれたのはいいんだけど、全然かからないんだよね~、アレ。しびれを切らして帰ろうかと思った矢先にかかったのですよ。でも、全然面白くなくてガッカリした。

1971年、日本だけで発売されたUFO初のライブ・アルバム。日比谷の野音での録音。昔、野音の楽屋って木造だったんだよね。

1972年、『UFO Live in Japan and  UFO Lands in Tokyo』とタイトルもクドくなって海外でも発売された。
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Eddie Cochranの「C'mon Everybody」や「Who Do Ya Love」のカバーを演奏したりしているんだけど、この頃にUFO目当てのお客さんで果たして野音が埋まったのかね?で、ツラツラと調べてみたらスゴイことがわかった。

そもそもUFOはThree Dog Nightの前座で来日する予定だった。この時点で今のUFOしか知らない人には「?」マーク連発でしょうね。私もそうなんだけど。でもUFOがハードロック・バンドに変身したのはシェンカー加入後の『Phenomemon』から。それまではこうして「Who Do Ya Love」みたいのを演っていたのだから合点がいかないワケではない。

この野音のコンサートは赤坂にあったディスコ「赤坂MUGEN」が主催した「MUGEN FESTIVAL」というイベントだった。出演はUFOの他にアメリカからSOUND 70、TROIELというソウル系のバンド。日本からはファーラウトという構成だった。浅学にして私はこの人たちを存じ上げません。ソウル系ということもあるのだろうが、正直、前のおふた方の名前は耳にしたことも断じてない。これで埋まったのか、野外大音楽堂が?! 埋まったんだろうね…その理由は;

Three Dog Nightの方は来日が中止になってしまった。そのチケットの払い戻しに見えたお客さんにこのフェスティヴァルのチケットを無料で配布したんだって!何とものどかな時代だよな~。

この年、1971年ってホントにすごくて、海外のビッグ・ネームが大挙して押しかけてきている。Blood Sweat & Tears、Free、Chicago、Grand Funk Railroad、Pink Floyd、Led Zepperin、Elton Johnなどなど。この時代に青洲を過ごした先輩方(1950~1955年生まれの方々かな?)が本当にうらやましい。二度とやって来ないであろう、ロックの一番の黄金期を体験できたのだから…。ロックの一番いい時ですよ。

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「♪さ~んでい」か…。いい曲だな「すてきなサンデー」。いたっけナァ、Buster。チョコ・フレークのCMもやってた。結成が1974年、リバプールのバンドなんだね。特に日本で人気が出て、ナント武道館2回もソールド・アウトさせてるそうだ。人気あったもんナァ。ぎんざNOWとか出てた?

今でもやってるみたいですね。日本のレコード会社もこのベスト盤で相当もうけたんだろうナァ。「青春の日記帳」か…。35年前、アタシャ、プログレに夢中だったかな?

どっかにも書いたような気がするけど、昔はこういう白人系アイドルって定期的に出てきてたよね。今はジャスティン・ビーバーっての?それぐらいかしら?K-POPの方がいいんだろうね~、彼ら日本語勉強してくるもんね。それにしてもいろんなことが変わりすぎたよ。
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グッ…これは何の必要があってこんなデザインにしちゃったんだろう?しかも邦題が『ヒッピーの主張』だって。
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元、コレだぜ!

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裏もスゴイ。ロールシャッハ・テストみたいな…。デザイン自体は決して悪いとは思わないけど、このジャケットに変える必要はないでしょう。ジェファーソン⇒ヒッピー⇒こういうイメージにしなきゃ!ということなんだろうけど…。ま、ジェファーソン好きじゃないからいいけどサ。それでもこのアルバムって『Surrealistic Pillow』と同じ1967年にリリースしてるんだね。エライ違いだな。
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今度はMonkees。『After Bathing at Baxter's』いや『ヒッピーの主張』と同じ人のデザインですな。
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あたりかまわないデザインでこれはこれでかなりイケてるような気もするが…。
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一度も夢中になったことはないけれど、ロリー・ギャラガーも観ておけばよかったよナァ~。このベスト盤はジャケットもよくできてますな。うん、カッコいい。
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Graham BondはブリティッシュR&Bの父と評されるオルガ二スト/ボーカリスト。彼はもっとも早い時期にハモンド・オルガンとレスリー・スピーカーの組み合わせをR&Bに持ち込んだ。Deep PurpleのJon Lord曰く「私がハモンドオルガンについて知っていることのほとんどはグラハム・ボンドから実際に教わったものだ」(この記事を書いたのは先週のこと。昨日ジョン・ロードのご逝去を知り驚きました。再度つつしんでご冥福をお祈り申し上げます)

Graham Bond Organisationは60年代初頭に結成されたボンドのバンドで、Ginger Baker、Jack Bruce、John McLaughlinというメンバーだった。後にMcLaughlinとDick Heckstall Smithが入れ替わった。

このライブアルバムは64年にウエスト・ハムステッドのホテルでの演奏を収録したもので後になって発売されたものだ。

グラハム・ボンドは元々はジャズがかった良質なブルー・ロックのような音楽を演奏していたが、先述したように後期は黒魔術に傾倒し、宗教がかったオカルティックな音楽にスタイルを変えた。。彼のダミ声が妙に曲にマッチしていて、なかなかに聴きごたえがある…かといっていきなり何枚もCDを買うことは控えた方がいいかもしれない。激しく好き嫌いが別れそうなところに彼の音楽が存在しているからである。私は好き。

それにしてもジンジャー・ベイカーってルックスがあんまり変わらないな…。
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これはロンドンの地下鉄ピカデリー線、またはヴィクトリア線の「フィンズベリー・パーク駅」。ピカデリー線ではサッカーのアーセナル駅のとなり。

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駅から歩いて3~4分のところに有名なレインボー・シアターがある。
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1974年5月8日、グラハム・ボンドはここに身を投げてアノ世に行った。成功のチャンスがなく、経済的も苦しかったグラハムは前年より神経衰弱で入院していたらしい。

電車に飛び込む直前にそばにいた見知らぬ少年に話しかけ、その少年の名前とギターをやっていることを言い当てたらしい。グラハムは生前、自分が神秘主義者、魔術師のアレイスター・クロウリーの息子であると信じていたという。クロウリーはオジーの「ミスター・クロウリー」のモチーフ。クロウリーはまたビートルズの『サージェント・ペパーズ』のジャケットにも登場している。
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このジャケットはリバーシブルになっているのだろうか?Chuck Beryの編集盤。何年に編まれたものかチェックし忘れたが、Chuck Berryのベストって今だと果たして何枚売れるんだろう?実際、これを出した時はどうだったんだろう?今の若い人たちがChuck Berryなんか聴いてくれるといいんだけどね…エ、アタシャ結構で~す!

考えてみると、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で、あのマーティがプロムかなんかでギターを弾くシーンを理解できる日本の若い人ってどれくらいいるんだろう?もしくは、いたんだろう?ナニ?若い人はそんな古い映画を観ないって?アタシャ、今の家内とデートでロードショウに行きましたよ。

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これもピンとこないデザインだな~。Wishbone Ashはオリジナル・アルバムがHipgnosisだけに残念だ。もっと残念なのは、このコンサート、私会場にいるんですよね~!だからもっとカッコいいジャケにして欲しかったナァ~。当時は高校1年だったかな?友達とWishbone Ashのコピーをやっていて、1978年11月10日、みんなで中野サンプラザに観に行って大騒ぎした。前から7列目だった。

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これがその時のプログラム。この後、長い年月を経てAndy Powell系Wishbone AshとTedTurner系Wishbone Ashの双方を観たが、やっぱり高校生の時に観たAshの方が断然よかった。

ちなみにLaurie Wisefieldは10年近く前にロンドンのドミニオン・シアターで『We Will Rock You』を観た時、ギターを弾いていた。もうひとり交代で弾いているギタリストがPhil Hilbourne(フィル・ヒルボーン)といって、結構古いつきあいだ。去年、フィルに会った時、「最近どうしてんの?」と訊くと、驚いたことに「相変わらず『We Will Rock You』だよ」と言っていた。すかさず「ローリーは?」と訊くと「まだやってるよ!」という答えだった。飽きるだろうナァ~。

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ハリー・ニルソンか…「うわさの男」と「ウィズアウト・ユー」しか知らんなぁ~。「ウィズアウト・ユー」にしたってBadfingerだもんナァ。でも最近すっかりNilsonにハマってしまってほとんどのCDを買い揃えた。

ところで、「うわさの男」はあまりにも印象が深くてね。ところで、この曲、原題は「Everybody's Talkin'」というんだけど、なかなかの名訳だと思わない?

でも、これもカバーで元はFred Neilというアメリカのフォーク・ソングライターの作品。ニルソンが作ったわけではないが、ジョン・シュレシンジャーの『真夜中のカーボーイ』で使用されてドカンといっちゃった。1969年のこと。このニルソン、コンサートもツアーもロクにせずに大きな商業的成功をおさめた、この時代にあってかなり稀有なミュージシャンだった。(ちなみのこの「カーボーイ」を「カウボーイ」としなかったのは水野晴郎さんだったとか…)

当然、この曲の印象が強いと言ったのも映画を通じてのこと。

やっぱり音楽が映画にもたらす影響力って尋常ではないし、またその逆のパターンも大いにあり得る。映画のおかけで誰にでも知られるようになった曲なんて枚挙にいとまがないもんね。下手をするとその音楽が映画のために書き下ろされたと思われてしまっているケースすら少なくないのではないか?。

その最たるものは日本ではなんと言ってもマイク・オールドフィールドの『チューブラー・ベルズ』だろうナァ~。実際、ウィリアム・フリードキンが映画『エクソシスト』に採用したおかげで日本では有名になったワケだけど、あのイントロを聞いただけで「お、『エクソシスト』のテーマ!」と反応する人がほとんどではなかろうか?または、『チューブラー・ベルズ』を最後まで聴いたことがない人の方が『エクソシスト』を最後まで観た人に比べて、イヤ、比べられないほど少ないのではなかろうか?「有名な割には最後まで聴かれたことがない曲」のコンテストがあれば余裕で優勝じゃん?イギリスではリチャード・ブランソンがコレ一発でひと財産築いたのにね。もっと『エクソシスト』のことを書きたいんだけど、またの機会にしましょう。

そして、「うわさの男」…これは本当にうまく映画に使われていたように思う。タイトル・バックでジョン・ヴォイトがおめかしして田舎を出ていくところ…タマらんですよね。

でも、(当然とはいえ)映画の存在感の方がはるかに強くて、12、3歳で初めて観た時は大変なショックを受けた。いくつも心に残っているシーンがあるんだけど、もう何十年も観ていないので、もっとも印象的なラストのシーンをちょっと確認してみた。

最後にフロリダ行きのバスの中で、もう衰弱してトイレに立つこともできず、座席で失禁してしまうダスティン・ホフマンに向かって笑いながら「おまえ、便利だナァ~、トイレに行かなくても用が足せるんだもんナァ~」と冗談を言う。ジョン・ヴォイトがアロハ・シャツかなんかに着替えさせてやるんだっけかな?そうして、そのままバスの座席でダスティン・ホフマンが息を引き取る。ここでニルソンの出番。そしてナミダ。

以上が記憶。でも実際はちょっと違っていた。

失禁してしまうところはその通り。でも気になったのはジョン・ヴォイトのセリフ。どう聴いてもこの日本語訳のようには聞こえない。そこで調べてみると、ジョー・バック(ヴォイトの役名)はこう言っている。

Rizzo : That's funny?  I'm falling apart here!

Buck : It's just - Know what happened?  You just took a little rest stop that wasn't on the schedule!

Rizzo : 何笑ってんだよ? オレはもうボロボロなんだぞ!

Buck  : イヤな、わかってんのか? お前は予定外のトイレ休憩を取ったんだぜ!

これでふたりとも笑う。まったく面白くない。少なくとも日本語の意訳の方が気が利いていはしまいか?翻訳家ってすごい。これは田舎から出てきていまだにソフィスティケイトされないジョーにしてはマシなジョークだったということか…。だとしたら、翻訳は意思を入れすぎだと思う。

で、休憩時間にジョーがリゾの着替えを買いに行く。ここで「うわさの男」が流れるんだった。マイアミの陽光、アロハシャツ、ニルソンのやさしい歌声、…これで何とか温かいマイアミに住んでリゾも体調を取り戻してハッピーエンドの友情物語か…となるハズなのだがそうはいかない。

リゾはその後、バスの中で座ったまま息を引き取る。この時に流れる曲はニルソンではなくて、トゥーツ・シールマンスだった!そう、この映画にはもうひとつ胸を引き裂かれるようなもの悲しいメロディを奏でるシールマンスの名演があったのを忘れていた。バディ・リッチは「Midnight Cowboy Medley」なんてのをレパートリーに入れていたっけ。

この『真夜中のカーボーイ』はアカデミー賞の歴史の中で唯一X-rated(過度な暴力や性描写で子供には見せていけない映画)の指定を受けながらも「作品賞」を獲得した作品。日本ではテレビでやってたけどね…。

受賞は逃したがもうひとつX-rated指定を受けても「アカデミー作品賞」にノミネートされた作品があった。それはキューブリックの『時計じかけのオレンジ』である。

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ところで、最近洋画に日本のどうでもいい曲を「日本版テーマ曲」とかいってひっつけてるけど、あんなことして一体何になるんだろう?CDの売り上げもしくはダウンロード件数が上がればいいってこと?見ていて本当に恥ずかしい。でも、アメリカもそんなことをされてしまう映画しか作れなくなってるんだよ。

『真夜中のカウボーイ』に勝手に日本のポピュラーソングを「テーマ・ソング」と称してくっつけることなんて、良心が咎めてできないでしょ?ビリー・ワイルダー作品には?デヴィッド・リーンは?ウィリアム・ワイラーは?キューブリックの作品にはどうだ?普通の神経の持ち主であればそんなことできないハズ。

そういえばアーネスト・ボーグナイン、亡くなったんですってね…。でも、どちらかというと生きていたことの方に驚いた。好きだったんだ、子供のころ…。

さて、もうひとつニルソン。この写真はロンドンのハイド・パーク・コーナーにほど近いアパート。かつてのオーナーはニルソンだった。私はニルソンのファンでもないので、それだけなら何もここに紹介することはない。ここは「デス・フラット」と呼ばれるアパート。ママス&パパスのママ・キャスが1974年に、キース・ムーンが1978年にここで亡くなっているのだ。同じベッドで死んだらしい。ニルソンも心臓病で1994年にアメリカの自宅で永眠した。

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ミュージック・ジャケット・ギャラリーの詳しい情報はコチラ⇒金羊社公式ウェブサイト

<中編>につづく

2013年5月24日 (金)

【Music Jacket Gallery】SFジャケット・コレクション <前編>

先日、HignosisのStorm Thogerson氏の逝去に伴い急遽掲載した『Music Jacket Gallery』。大きな反響をいただき、ご覧いただきました皆様にはこの場をお借りして深く御礼申し上げます。

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さて、Music Jacket Galleryは3か月に一回定期的に展示を総入れ替えし、順調に回を重ね、ますますその認知度もアップさせてきている。

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その展示の入れ替えに合わせてマーブロでも解説記事を適宜掲載したいのだが、なかなか制作の時間が取れず、大幅にビハインドしてしまった!

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臆面もなくヘタな弁解をさせていただけるのであれば、何しろこれを1本書くのに、資料を集めたり、音源を聴き直したり、英語の文献を読みほどいたりで膨大な時間がかかるのである。でも、やってて楽しいけどね!ま、言い換えれば時間との戦いなのよ。

また、いっぺんに昔のことを思い出すのは不可能で、いつもいつも頭の中に展示されたジャケットのことを叩き込んでおいて、「ああ、ああいうことがあった」とか「こうなったらどうだろう」なんて文章の用意をしておかないととても書けるものではない。ようするに熟成期間が必要なのだ。
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それで、今回は少しずつすこしずつ長期間にわたって書き溜めた記事をとりまとめ、加筆訂正し、1本に仕立て上げたという次第。

展示の特集は「SFジャケット・コレクション」。恥ずかしながら1年以上前に展示が終わってしまっているのでMJGのガイドにも何もならないがお許しいただきたい。
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ここで拙文を重ねて訴えていることは「ジャケットの重要性」や「楽しさ」であることに以前と何ら変わりない。

一部ではLPレコードの需要が反転上昇しているやに聴いているが、ジャケット、いや、CD等のフィジカル・プロダクツが絶滅に瀕している状態はまったく変わっていない。3年後には日本からCDが姿を消すと断言している関係者もいる。

ここに書き連ねているのはいつも通りの取るに足らない私的レコード解説で恐縮だが、こんな内容でも、「もし本当にジャケットがなくなったら…」ということを思い浮かべながらお目通し願いたいと思う。

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さて、「SF」…海外では「サイファイ」と普通呼んでいるが、これはジャケットのモチーフとしてはもっとも扱いやすいもののひとつであろう。

人気テレビ番組『ザ・ベストテン』に出演したスター歌手が「どんな本を読むのか?」と訊かれ、胸を張って「SM小説です!」と答えていたのもはるか昔の話し。たまたま私はこの時の放送を見ていたが、生番組の恐ろしさを見たような気がした。

ジャケットの前に、ちょっと音源のことを考えてみるに、David Bowieの「Space Oddity」に代表されるようなSFをテーマにした歌もメッキリ見かけなくったのではなかろうか?

パソコンにケータイ…25年前には想像もできなかったこうしたIT機器(ITという言葉もなかった)の普及に満足し、近未来的な科学の発達を夢見るようなことがもう必要なくなったのかもしれない。

今更アシモフやブラッドベリーを読んでもピンとこないだろう。

手塚治虫が生きていたら何を空想していたのだろう?いつもここに書いているが、『火の鳥』の「未来編」のような話をもっと突き詰めて人類に警鐘を鳴らしていたのでは?

この大国のコンピュータ同士のケンカで核戦争が起こって人類が滅亡してしまう話は、ナント1967~1968年にかけて制作されている。恐るべし。

プロ棋士がコンピュータに勝てないとかボカロの話を聴くたびにこの『火の鳥』を思い出してしまう。ボカロについてはまた別の機会で触れたいと思うが、もう音楽の世界においてはテクノロジーの進化は必要ないでしょう。

これほどテクノロジーの進化がコンテンツを退化させてしまっている分野は他にないのではなかろうか?

今日はそういうこともひとまず忘れて、古き良きレコード・ジャケットでゆっくりとSFの世界を楽しんでいただきたい。

自分の思い入れのある作品や興味のあるアイテムをピックアップしウンチクを固めてあるのはいつも通りのことである。

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今回ブロウアップされたのはVanilla Fudgeの『Renaissance』とThe Tubesの『Remote Control』。

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ああ、Alex Harvey。大好き!シンプルでカッコいいギター・リフ。ロック以外には使い道のないような、ともすればJoe Pesciを連想させる野太い独特の声。今、一番お目にかかることのできなくなったタイプのロックの代表ではなかろうか?いわゆる70年代の音。問答無用でカッコいい。もちろんギターのZal CleminsonはMarshallだ。

ボーカルのAlex Harveyは1935年、世界で三番目に地下鉄が開通したScotland第二の都市、Glasgowの生まれ。生粋のScotishだ。かなり芸歴が古く、1954年にはスキッフルのバンドでキャリアをスタートさせている。The Sensational Alex Harvey Band(以下SAHB)の前はR&Bとかブルースを歌っていた。

1963年頃のR&Bタイプの録音を聴くと、何しろこの声だからね…トリハダが立つことは請け合いだ。考えてみるとこの人もスキッフル、ロックンロール、R&B、ブルース、ハードロックとイギリスのロック史をそのままなぞったようなキャリアを持った人だった。

このブログによく出てくる私の親友Steve DawsonとSAHBの話しをすると決まって「Alexは酒で死んだんだ。スコティッシュだからね!」と言う。

自分だってスコットランドの首都、エジンバラまで電車で一時間ぐらいのところに住んでいるクセに、Alex以外にもスコットランド出身で早逝した人の話しになると必ず「酒が原因だ。スコティッシュだから…」と言う。よっぽどスコットランド人は浴びるようにスコッチ・ウイスキーを飲み、街中はアルコール中毒患者でゴッタ返しているのでは?と少しは心配にもなったが、実際に訪れたエジンバラはロンドンのソーホー辺りのような猥雑さを微塵も感じさせない世界遺産の名に恥じない美しく静かな街だった。

Alexは1983年、ベルギーで客死している。公演を終えてイギリスへ帰るフェリーを待っている時に心臓発作に襲われ、病院に向かう救急車の中で2度目の発作が起こり絶命した。47歳だった。

もうチョット書かせてね。好きなんだもん。

1970年には有名なミュージカル『Hair』の座付きバンド(Pit Band)を派生させてRay RussellとRock Workshopを結成した。Ray Russellもネェ~。私は詳しい方ではないが、『Goodbye Svengali(「Svengali=スヴェンガリ」というのはGil Evansのアナグラム。文字の順番を変えるとGil Evansとなる。ジャズの世界で最も有名なアナグラムは、Bill Evans作曲の「Re:Person I Knew(私が知っていた人について)」だろう。これはRiversideレーベルのレコード・プロデューサーのOrrin Keepnews=オリン・キープニューズのつづり代えだ。)』というアルバムを買って聴いてみたがまったくピンとこなかったナ。

で、その後、弟のLeslie "Les" HarveyにMaggie Bell(「イギリスのジャニス」と呼ばれる女性シンガーのうちのひとり)を紹介され、1969年にStone the Crowsを結成した。このバンド、ベースはRobin TrowerのところのJames Dewer、ドラムが後にFocusに加入するCollin Allenだった。こういうところが面白い。日本同様、イギリスの音楽業界は狭いのでこうしたキャリアの交流が盛んに発生する。翌年、弟のLesは演奏中に感電死してしまった。1972年頃にはギターにWingsのJimmy McCullochが在籍していたが、確かこのJimmyも感電死したように記憶していたが、ヘロインの過剰摂取による心臓発作で他界したらしい。

その後、1972年にAlexが結成したバンドがSAHBだった。

日本では知名度低いよね?スゲェいいバンドなんだけどな…。SHARAさんが好きだというのを聴いてうれしかった。

このバンドの作品のジャケットはアメリカン・コミック的なポップなイラスト調のものが多く、内容との乖離が大きい印象がある。とりわけ、この1975年発表の『Tomorrow Belongs to Me』はその傾向が強い。何で「明日はオレのもの」と、恐竜とユンボが戦ってるイラストが関係あるんだろう?「Action Strusse」とか「Snake Bite」とか、内容はいいよ~。

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Thomas Dolbyというのは全く知らないんだけど、ジャケットが面白いのでちょっと取り上げてみた。ナンカの映画のパロディなんだろうけど、なんだろう?勉強不足でわからない。「宇宙人現る!」みたいなヤツだね。40年代や50年代にはこうしたSF映画とか怪獣映画ってのは星の数ほど作られていた。

Frank Zappaが『Roxy & Elsewhere』のMCで「I love monster movies...」と切り出して当時のB級怪獣映画のチープっぽさを解説している。その後に演奏されるのが『Cheepnis』。コレを初めて聴いた時はあまりのカッコよさに腰を抜かしたわ。

最近は怪獣映画もすっかりみかけなくなった。なんでもかんでもCGアニメでさ…。映画は音楽より救いようがないからね。音楽ととても環境が似ていると思うのは、もう映画界はいい脚本が書けなくなってしまっていること。いいメロデイが作れない音楽界と同じだ。

これも「ニューシネマ」とかいって、金をかけずに、うわべだけのカッコよさを求めて作った薄っぺらな映画をもてはやした結果だろう。ロックとまるっきり同じだと思わない?

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Vanilla Fudgeも本コレクションのオーナー、植村さんのフェバリット。1968年発表の3枚目のアルバム、『Renaissance』。いいデザインだよね~。ロック・カルチャーの頂点はやっぱりこの頃だね。この後、ハード・ロックとプログレッシブ・ロックが隆盛を極めて、パンク/ニュー・ウェイブが出てきた瞬間、ロックは2巡目に入った…満身創痍で。

80年代以降のロックは、ごまかしながら出がらしのお茶を「おいしい、おいしい」と無理やり飲んでいるように見える。ジャズとまったく同じ歴史をたどっている。

生まれた時から出がらしのお茶しか飲んだことがなければ、誰だってそれが「お茶」だと思ってしまう。ところが、お茶を作る会社は玉露の香りを知っている。でも、教えない。製造に手がかかるワリには大して儲からないから。ま、それも譲ろう。音楽だってビジネスだから。一番マズイのはお茶を作る農家とそれを買い取るお茶のメーカーに玉露の香りを知らない人が増えてきているということだと思う。

イケね、またやっちまった。でも今日のはヨカッタでしょ?

で、Fudge。私は夢中になったことはないし、スミマセン、ファースト・アルバムですら休み休み聴く部類に入っちゃってます。でも、この『Renaissance』の直前の『The Beat Goes on』がメッチャ気になっていて、植村さんのお住まいにお邪魔した時に聴かせていただいた。キテレツ盤の域を出ないシロモノという感想だったが、へへへ、結局中古で見つけて買っちゃった。そんなもんなんですよ。内容がよくても悪くても気になるものは、聴く本人にとってはある種名盤なのだ!植村さん、ありがとうございます。

ご存知の通り、「You Keep Me Hanging On 」やら「She's not There」やら数々のビートルズ・ソングで構成されていたファーストや前作に比べ、数曲のカバーはあるにしてもこの3枚目の『Renaissance』はメンバーのオリジナルを中心に制作された。が、好事魔多し。オリジナル・プレスでは派手なプリントミスが生じてしまう。

「The Spell That Comes After」というEssra Mohawk(Frank Zappaが面倒をみたSandy Hurvitzと同一人物)の作曲者のクレジットがZappaのアート・ワークを担当していたCal Schenkelになってしまっていたという。もしかして、このジャケット、Cal Schenkel?

最終曲の「Seasons of the Witch」はDonovanのカバーだが、後半に同じくEssra Mohawkの「I'll Never Learn」が挿入されているという。

「…という」…というのは実は私はコレ聴いたことがないのね。でも、こういう裏話、特にZappaがらみの話と来れば是非聴いてみたくなる。ロックだって知れば知るほど面白くなるのだ。

Essra Mohawkについても詳しく知ってるワケでは全くないが、Sandy Hurvitzで発表した『Sandy's Album is Here at Last』は持ってる。Sandy Hurvitzと命名したのはZappa。Zappaの名作のタイトルにもある「Uncle Meat」というのはZappaが彼女に付けたアダ名。そんなヘンテコリンなアダ名をうら若き女性が好むハズもなく、そこからZappaとの関係が悪くなったとかいう話もある。ま、実際には音楽的な対立があったのだろう。Zappaの顔写真がこの作品のジャケットに写真もハメ込まれているにもかかわらず、プロデュース中途で拒否。そのためIan Underwoodがその尻拭いしてプロデュースしたという。そんな背景があってバンドを自由に調達できなかったのか、アレンジがピアノの弾き語りという曲も散見され、結果的には裏Laura Nyroみたいでなかなかによろしい。

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Jefferson系統ってどうにも昔から苦手だった。Airplaneの有名盤を何枚か持ってはいるけど、資料的な意味合いだけで、今でも進んで聴くことはまずないな。なんか歌声も演奏も曲も、見事にソリが合わないんだよな~。なんでなんだろう。

ま、元よりまばゆい陽光と雲ひとつないカリフォルニアの澄み切った空よりも、雨ばかりのどんより曇ったロンドンの空の方がシックリくる私のことだから無理もないか…。

でも高校の時、「オ!カッコいい!」と思って買ったのがこの『Dragon Fly』だった。何がカッコよかったかというとギターのCraig Chaquico。でも結局ロクに聴かないうちに売っちゃったな。

ジャケットはいい。トンボだよね。このStarshipになってからのジャケットは『Red Octopus』もいいし、『Spitfire』はとてもいい。どれももう家にないな~。

サンフランシスコから金門橋を渡ってNovatoというところに行く途中、左の遠くの山の中腹にある家をさして現地の友人が「アレ、Grace Slickの家だよ」と言っていたっけ。この時も友人がGraceの過去の逮捕歴について話していたが、あらためて調べてみると随分と警察のご厄介になってる人なのね。

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こっちが『Spitfire』。SFっぽいかはどうかは別にして文句なしにカッコいい!

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すいません、そんなこと言っててもどうしてもダメなイギリスものもある。Hawkwindダメなんだよね~。スペース・ロックかなんか知らんが、退屈なんですよ~。でもラリラリ状態でストリッパーが狂喜乱舞するステージを体験するときっと最高なんでしょうな…というよりそういう風に楽しむのがこのバンドのホントの楽しみ方なんだろね。

ところが音源だけ聴いていた日には大したテクニックもないのにダラダラと無用の演奏が続くという部分がなかなかにシンドイ…。

でもこのバンド、70年代の諸作のジャケット・デザインは大変によろしいな。すぐ下の4枚目のスタジオ録音盤『Hall of the Mountain Grill』も同様。宇宙のどこかの星に乗り捨てられた宇宙船を描いたのはこのバンドの美術を手掛けるBarney Bubblesの作品。

ちなみにこのタイトル『Hall of the Mountain Grill』というのはグリーグの『Peer Gynt(ペール・ギュント)』の中の「In the Hall of the Moutain King(山の魔王の宮殿にて)」とマーケットで有名なロンドンはポートベローにあったバンドの行きつけの喫茶店「The Mountain Grill」を合体させたものだそうだ。

まだベースはまだIan Kilmister、すなわちLemmyが担当している。本アルバムの次の作品『Warrior of the Edge of Time』からのシングル曲「King of Speed」のB面に収録されていた曲が「Motorhead」だった。Lemmyはそのアルバムを最後にHawkwindを脱退した(クビになった?)。

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ん~、いいナァ。1971年の『X in Search of Space』。内容は知らないけど…。初期のHawkwindは色々な(それこそ)アーティストがからんでいた。このデザインもRobert Calvertという詩人のイメージを膨らませてBarney Bubblesが制作した。

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LiverpoolとBrixton(双方『ロック名所めぐり』で紹介する)で録られた有名な1973年のライブ・アルバム『Space Ritural』。これも『X in Search of Space』のコンビが音とビジュアルの融合を目指してデザインされたという。私的には音よりもビジュアルの方がカッコいいと思うのだ。

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Greatful Deadもキツイなァ。70年代の正規のアルバムはほとんど持っているけど滅多に聴かないのぅ。いつかデッドのコンサートがいかに長いかっての書いたことあったけど、一度スッポリとハマってしまった人にはタマらんバンドのひとつには違いない。

ところで、デッド諸作のジャケット・デザインは総じてよろしいな。イラストものが多いのが特徴だ。有名な『Greatful Dead(Skull and Roses)』や『Steal Your Face(これはLPが出た時ジャケ買いした)』、『Aoxomoxoa(これを見るといつも水木しげるのマンガに出てくるバックベアードを思い出す)』、『American Beauty』等々すごくいい。本作や『Terrapin Station』、『Blues for Allah』や『Europe '72』だってゼンゼン悪くない。

一方、本人たちがご登場のジャケットは『Workingman's Dead』を除くと『Go to Heaven』や『In the Dark』のように残念なものが散見されますな~。

これが『Blues for Allah』。ヴァイオリンを弾くしゃれこうべが今回のテーマであるSFっぽくはある。このアルバムのタイトル曲はデッドのファンであったサウジアラビアのファイサル王(1906~1975年)に捧げられたとか。妙な曲だゼ~。今回久しぶりに聴き直してみたけどナカナカいいな…。

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この『From the Mars Hotel』は1974年に発表されたDeadの7枚目スタジオ盤。ジャケットの建物はサンフランシスコに実際にあった安宿を写実したもの。だからSFではない。でも舞台を火星にしちゃったからSFだ。

「GREATFUL DEAD FROM THE MARS HOTEL」の下の緑色の文字のようなものは、アルバムを逆さにして鏡に映すと読める。「UGLY RUMORS(醜いウワサ)」 だ。イギリスの元総理大臣、Tony Blairが学生の時に組んでいたバンドの名前は「UGLY RUMOURS」といったそうだ。イギリス綴りなので「O」と「R」の間に「U」が入る。

そういえば生前のJim Marshallが会食の席かなんかで「Tonyがどうの…」って話していたことを耳にしたことがある。 「総理大臣をトニー呼ばわりか…さすがジム」なんてその時は思ったもんだ。日本のどこかの社長さんが首相をつかまえて「晋三、晋三」と呼んでいたら笑うで、しかし。

それにしてもデッドがアメリカを代表するバンドってのは納得するよなァ。同時にMarshallからもっとも遠いアメリカのバンドって感じ。

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中学生のころ、Deep PurpleもLed Zeppelinもひと通り聴いたし、なんかカッコいいロックはないかいな?と思っていたところへ、ロック好きの兄を持つ友人がUriah Heepを教えてくれた。「エ、なに?ゆーらいあひーぷ」って感じだった。

このバンド名はCharles Dickesの『Davis Copperfield』に登場する「ユーライア・ヒープ」という不誠実で卑屈なキャラクターに由来している。イギリスではこれがのちに「イエスマン」という同義語として浸透した。

Ken Hensleyのオルガンを中心としたサウンドがちょっと他のハード・ロック・バンドと違って新鮮だった。それにDavis Byronの声。でも、曲がちょっとポップというか、単調というか…それほど夢中にはならなかったな。

イヤ、それよりも夢中にならなかった理由はオルガンが主役だったからかもしれない。Mick Boxがもっとギンギンに弾いたギター・オリエンテッドのバンドだったらもっとのめり込んでたかもしれないな…。

でもね、Mick BoxってとてもMarshallに忠誠ないいギタリストなんよ。

David Byronも気の毒な人だよな。この後、Rough Diamondを結成した。ちょっと気になったので久しぶりにレコード棚から引っ張り出してきた。タイポグラフィがエンボス加工されている。このパラフィン紙みたいな帯が泣かせるぜ。ナニナニ、「ブリティッシュ・ハードの神髄ここにあり!!(中略)嵐を呼ぶデビュー・アルバム!」…裕次郎か?

聴いてみる…まったく覚えてないな。少なくともこれで嵐は呼べんな。なんかブリティッシュともアメリカンともつかない中途半端な感じだ。だいたい、相棒のギタリストがClem Clempsonじゃ弱いよ。

1977年。この頃は既成のハード・ロックが飽きられてきて、ポップ性を吸収した音作りに奔走していたんだろうね。日本でも有名なギタリストが「歌謡界へ殴り込みだ!」なんて宣言していたのもこの頃ではなかろうか?

そこへパンクとからニュー・ウェイブってのが「アタシャ新しものでござんす」と切り込んできて、旧態依然としていたハード・ロックをがいとも簡単に駆逐してしまった。後はロックの低年齢化が進んで現在に至る。

イカンイカン、また脱線しちまった。で、このアルバム全然売れなかったらしい。それでさっさとDavid Byronはこのバンドを引き上げ、しばらくして自分のバンドを立ち上げたが大した話題にもならず1985年に死んでしまった。そうか…もうByronが死んで30年近くになるのか…。

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ところでヒープもいい加減ジャケットが玉石混交だよね~。

この『The Magician's Birthday』とか『Deamons and Wizards』とかはいいですよ。Roger Deanだからね。

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でもコレはないでしょう?1976年の『High and Mighty』。これはルガーP-08か…。一体何の根拠でこんなジャケットなんだろう?ピストル=MightyでHighだから空を飛ばしちゃったのかな?

『The High and the Mighty』という映画があった。John Wayne主演で、邦題は『紅の翼』という1954年の古い作品だ。観たことはないけど、航空パニック映画の先駆けみたいな話。この主題歌をNed WashingtonとDimitri Tiomkinが書いていて、実にいい曲なのね。もちろんタイトルは「The High and the Mighty」。よくJaco Pastriousがア・カペラのベース・ソロの時に弾いていたのがこの曲。昔、「あなたのジャズ・スタンダード・ベスト10」みたいなアンケートで香津美さんがこの曲を選んでいたが、ジャズの人たちが演奏しているのを聴いたことがないな。ロマンチックで美し曲。

ま、これはこのヒープのアルバムには関係ないだろう。

このアルバム、ベースがJohn Wettonなんだよね。何かのインタビューでこの作品へのWettonの参加を指して「彼はお金のためだけにグループに加入した」的なことが書かれていた。Davis Byronもアルコールでヘロヘロになっていた時期の作品。

だからジャケットもこんな…ってか?なんでドイツのピストルにしたんだろう?色々試したけど、翼が付けたとことがルガーが一番シックリいったのかもしれない。

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Hipgnosisと並んでRoger Deanもビジュアル的に70年代のロックを支持、発展し、レコード・ジャケット文化の隆盛を担った人だ。

ジャケットがなくなれば彼の偉業も水泡に帰してしまう。いやいや、クリックひとつでこうして見ることができるじゃないか、って?確かにその意匠は確認することができる。しかし、実物、つまりフィジカル・プロダクツではければ何の意味もないのだ。見て、手にして、匂いを嗅いで…それができてはじめてジャケットと呼べるんよ!

Bernie Marsdenも在籍したBabe Ruth。日本のバンドだったら「長嶋」だ。Babe RuthはAlan ShacklockというギタリストとJennie Haanという女性シンガーが中心となったHatfirld出身のバンドでこれは1972年のデビュー・アルバム『First Base』。

Jennieの声がちょっとキツくて滅多に聴くことはないが、なぜかFrank Zappaの代表曲のうちのひとつ「King Kong」を演ってるんだよね。これは悪くない、インストだから。

アメリカン・フットボールはタマ~にテレビで放映されているのを見かけるが、イギリスでは野球はサッパリだ。クリケットはシーズンぬなれば盛んに放映しているけど。なんでこんなバンド名にしちゃったんだろうね?ってんでイギリスでのセールスは惨憺たるものであったが、北米ではよく売れたらしい。

ジャケットのイラストはRoger Deanっぽくないような気がする。ロゴのせいかな?宇宙の野球?

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Dave GreensladeはColusseumやIfでキーボードを担当していた人。これは自分バンド、Greensladeの73年のデビューアルバム。このバンドはギターレスなんだよね。

「キーボードでハードロックをやるとこうなるぜ」的な演奏。ELPとはまったく違った味わいで大層カッコよろしいな。メロトロンも全開だ!ただ、ボーカルがあまりにも貧弱すぎて台無しだコリャ。インストの部分は完璧!

さすが、Roger Dean。ジャケットは素晴らしい。この次の『Bedside Manners Are Extra』もRoger Deanが手掛けた。

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これはBabe Ruthに雰囲気が似てるな。Gravy Trainの最終アルバム『Staircase to the Day』。「Gravy Train」というとこのバンドよりもLou DonaldsonのBlue Note盤の方が頭に浮かんでしまう。

「Gravy」というのはあのソースのグレイヴィ。ちょっとかけると料理がおいしくなることから「働かなくてももらえるボーナス」とか「チップ」を意味した。「Gravy Train」は1920年代頃から使われ出したアメリカのスラング。当時は線路の工場で硬貨を鋳造していたのか、その鋳造の仕事の方が普通に工場で働くより仕事が楽でも同じ給料がもらえたことから「おいしい仕事」を意味するようになった。ようするに「すごく分のいい仕事という意味」。

Pink Floydの『Wish You Were Here』の「Have a Cigar」の中にこういう一説が出てくる。

And did we tell you the name of the game, boy, we call it riding the gravy train. (なぁ、この遊びの名前を教えたっけ?我々はこれを「ぼろ儲け」って呼んでるんだ)

このGravy Trainのアルバムは持っていないけど、最高傑作とされている2枚目の『A Ballad of a Peaceful Man』が手元にあるので聴いてみよう。

フルートが結構フィーチュアされた渋めのロックとでも言おうか、Tullとはまた全く違った味わいだ。生きているうちにもう一回聴くかどうかは大きな疑問。

Roger DeanというとHipgnosisのPink FloydみたいにYesばかりが有名だが、このようにかなりバラエティに富んだバンドのジャケットを手掛けている。Budgie(バッジー:イギリス北部ではこれを完全に「ブッジー」と発音する。最初何を指しているのかさっぱりわからなかった)、Gentle Giant、Gracious!、Nucleus、Keith Tippett、Patto、Third Ear Band等々、ブリティッシュ・ロック史に残した足跡はかなり大きい。

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ELOの来日公演に行ったのは何回も書いた。調べてみると1978年のことだったらしい。まったく曲も知らずに「レーザー光線がすごい!」というだけで武道館へ行った。

ま、これも何回も書いてきたが、何も覚えてないんですわ~。とにかくアンコールで「Roll Over Beethoven」をやったってことだけ。

後年、ELOも比較的よく聴くようになったけど、ポップの鬼と化したELOよりもまだRoy Woodがいたファーストの方が好き。

なんで円盤なのかというと、前々作『A New World Record』で作ったロゴを用いて、当時はやっていた『スター・ウォーズ』や『未知との遭遇』っぽいデザインにしようとしたらしい。母船に入っていく宇宙船のドテっ腹に入っている「JTLA 823 L2」というのは、このレコードの元々のカタログ・ナンバーなんだって。

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これが1971年のファースト・アルバム『No Answer』。ジャケット・デザインはHipgnosisだ。このジャケットに使われているランプはIngo Maurerというドイツ出身の工業デザイナーの手によるもの。

ジャケットの内側は不吉なイメージの古いモノクロ写真が並んでいる。内容、ジャケットともに不思議な作品だ。だから好き。

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フリッツ・ラング監督、1927年公開のドイツ映画『メトロポリス』の引用。

先に挙げたJefferson Starshipのトンボと同じキャラクターだ。

このアルバム、LP時代にはLP+EPという形態で発売された。そのEPというのが珍しくて買った記憶がある。ベーシストが中国系の人でチャーリー・トゥマハイといった。それがすごく印象に残っている。

Bill Nelsonという人はなかなかにギターのうまい人だ。ジャン・コクトーに心酔していたとか…。フレーズの組み立て方が巧みで聴きごたえがあるんだけど、残念ながら歪みがきつくて音が細く、チープに聴こえるのが玉にキズか…。もっとクランチっぽいサウンドで弾きこなしていればもっとギターの存在感が増したと思う。ま、そうなると彼のナイーヴな声が殺されてしまうかな?

「モダン・ポップ」とか言われているようだが、結構好き。ナンダカンダで全部そろってるな。なんか力の入っていないロックのようなものを聴きたい時にはもってこいだ。

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これが付属のEP盤。今なら簡単にCD一枚に収録できるのにね。

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Be Bop Deluxeも『Drastic Plastic』ではヒプノシスがジャケットを担当していた。いいか悪いかは別にして『Axe Vicim』、『Sunburst Finish』等、結構インパクトの強いジャケットを採用したバンドだと思う。

この『Modern Music』は4枚目のスタジオ盤。このジャケットのどこがSFだと思う?

そう、Bill Nelsonの時計。腕時計でロボットを動かしたのは「マグマ大使」だっけ?「鉄人28号」だっけ?下の写真ではわかりにくいけど、Billの時計がテレビみたいになっていて、かれらのファースト・アルバム『Axe Victim』の骸骨が映し出されている。

このアルバムが発表されたのは1976年のこと。この頃は携帯電話なんて夢のまた夢だったんだろうナァ。今じゃ小学生でもこのジャケットの時計より優秀なケータイ持ってるってーの。

歌詞なんかチェックしたことただの一度もないけれど、このバンド、元より歌詞がSFっぽいんだそうだ。

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Vangelis。スゴイ名前だ。この人も1981年のイギリス映画『Chariots of Fire(炎のランナー)』ですっかり有名になった。ギリシアの人。

「はい、それではギリシアのロック・グループ」の名前を言ってください。

と訊かれたらAphrodite's Childだけだな。あとはロックではないけど、Melina Mercouriの「Never on Sunday(日曜はダメよ)」。そういう人がたくさんいるとは思うけど…。

まず名前が読めん。ギリシアの人の名前はポーランド人ほどではないにしても複雑なのが多くてね。ギリシア語でつづられたら文字のひとつもわからん。

英語の表現のひとつに「私にはちんぷんかんぷんでしてね…」みたいのを「It's Greek to me(ハハ、私にはそりゃギリシア語だわ)」と言うぐらいだからね。Geroge Chakiris(ジョージ・チャキリス)、John Cassavetes(ジョン・カサヴェテス)、Olympia Dukakis(オリンピア・デュカキス)…みんな映画俳優だけど、総じて角ばった感じの音の名前で、最後に「~ス」がついてる。

ヴァンゲリスの本名はΕυάγγελος Οδυσσέας Παπαθανασίου …読めるか~!

読み方はエヴァンゲロス・オディセアス・パパサナスィウ。

私はVangelisはまったく聴かないが、ロックも長年聴いてくると英語圏のものにもちょっと飽き出して、東ヨーロッパ方面等の「辺境」と呼ばれる地域の物にも興味が出てくる。私の場合、2000年代は言うに及ばず、80年代、90年代と(私にとっては)時代的に若いロックをまったく吸収してこなかったのでなおさらだ。

それでもね、やっぱり何を聴いても英米のバンドの名盤と呼ばれるものには残念ながら遠く及ばないと私は感ずる。一回聴いて「オ、カッコいいじゃん!」とは思わせるんだけど、繰り返し聴くには耐えられないんだな。ただしイタリアは別。

その点、Aphrodite's Childの『666』なんかはかなり強力だ。それもこのΕυάγγελος Οδυσσέας Παπαθανασίου の才能によるものなのだろう。

このジャケットのデザインもVangelis自身によるものだそうだ。

…と今知った驚きの事実が!イッパイやって、ナゼか急にKurt Weilが聴きたくなってCD棚をチェックしていたら!Vangelis聴かないとか言っておきながらこのアルバムを棚で発見!持ってやがんの。要するに聴いてないってことやねん。

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Toddは好きだったナァ~。

ビートルズにも大分飽きてきて「ナニかいいロックはないもんか…(コレばっかり!)」とある日渋谷陽一氏のラジオ番組から流れてきたのがこのアルバムA面2曲目の「Magic Dragon Theatre(←原題もイギリスつづり)」だった。映画が好きで映画音楽からロックを聴き始めた私はシアトリカルなこの曲に…「コレだ!」といたく感動してすぐにこのアルバム『Ra』を買った。「Communion with the Sun」とか「Hiroshima」とか「Singring and the Glass Guitar」とかいい曲が目白押しで大好きだった。

ToddもUtopiaも含めてジャケットは感心せんな~。Hipgnosisがやった『Back to Bars』は内容がイマイチだったしな…。『A Waizard / A True Star 』がスゴイか…。なんかこういうところに英米のミュージシャンの感覚の違いが表れているような気もする。

してみると、ブリティッシュ・ロックの作品のジャケットが軒並み素晴らしいのはHipgnosisとRoger Dean、それにMarcus Keefのおかげということになろうか…。でもアメリカ勢、ジャズはいいのが揃ってるよ。

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このLPには下のようなオマケがついていた。切リ抜いて組み立てるとUtopiaのメンバーのピラミッドになる。

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これは1976年のTodd初来日を記念して配布されたステッカー。ES-175Dのダブルネックを弾いてるTodd。

昔はこういうことをしていたんですね~。来日記念盤として『I Saw the Light / Hello It's Me』のスペシャル・カップリング・シングルがリリースされたらしい。シングルって…。1976年というと『Faithful』をリリースした年。どうしてもタイミングが合わなかったんだろうね、来日記念盤。このシングル曲は1972~73年の曲ですからね。強引に出したんだね。でも名曲よ。

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私が行ったのは1979年の2回目の来日の時。これがプログラム。 『Ra』と『Oops! Wrong Planet』からの選曲が中心のプログラムで本当に素晴らしいコンサートだった。今でもベスト3に数えられるぐらい。

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ちょっとその公演プログラムをのぞいてみると…UFO、Scorpions、Roxy Music、Nazareth来日の告知が出ている。コレ全部観に行った。S席がまだ3,000円だったんだね。

ココには「元UFOのマイケル・シェンカーがスコーピオンズに加入!」って書いてあるんだけど、結局来なかった。UFOでも観れず、私はつくづくシェンカーに縁のない男なのよ。

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そのUFO。これはヒプノシス。なんで邦題が『宇宙征服』なの?原題は『Obsession』。「Obsession」とは何かに取りつかれることを意味する。「I'm obsessed with photography(写真に首ったけなのよ)」みたいに。それが宇宙征服。♪なんでだろ~、なんでだろ~?

ハハ~ン、さてはこの人たちパチンコ中毒なんだな?もうパチンコやりたくてやりたく…体中の穴という穴からパチンコ玉が飛び出してるってことか…。飛行機乗るとき大変だぞ~、金属探知機に引っかかっちゃって!

これは7枚目のUFOのアルバム。UFOも結局、Michael Schenkerが現れての『Phenomenon』からコレと、この後のライブまでだったな~。無理やり結びつけるワケじゃないけどシェンカーとHipgnosisが現れて、ともに去って行って何も残らなかった…なんて言ったらファンには失礼か…。

なんでPaul Chapmanだっただろうね。ま、サンプラで観たけどサ…。もっとよさそうなのが他にいたろうにナァ。

ブリティッシュ・ロックにおいて、いかにギター・ヒーローが肝心かということを暗示している。というか完全にブリティッシュ・ロックの繁栄はギターの繁栄であり、間違いなくMarshallなくしては成立しない音楽だったのだ。

そして、EVHがアメリカに登場し、イギリスからギター・ヒーローの新世代が現れず、パンクやニューウェイヴといったギター演奏の技術を必要としない音楽が跋扈し出した途端ブリティッシュ・ロックがまったくつまらなくなった。

このアルバムに収録されているヒット曲「Only You Can Rock Me」はちょいとした思い出があって…といっても最近の話し。2010年にロンドンでUFOを観た時、当然この曲が演奏された。ギターはVinnie Mooreだった。イントロを弾くと、2~3小節目で音が出なくなってしまった。コリャやばいってんでスタッフ総出でアンプやらケーブルやらのチェック。何たってイントロ命の曲でしょ?

気を取り直してもう一回…するとまた同じところで音が出なくなってしまう。はじめはニコニコしていたPhil Moggの顔に陰りが見え出し、明らかにこめかみの血管がピクピクしている!で、さらにトライ…またほぼ同じところで音が出なくなってしまった!

ま、さすがにこの後、何とか無事にその箇所を通過して演奏を終えた。アンプはMarshallではなかった。でもね、イヤもんですよ。ああいう場面に出くわすと他社の商品でも生きている心地がしない。アンプが原因かどうかはわからないけど、音が出なくなって一番疑われやすいのはアンプでしょ?何しろ音を出してる現物なんだから。だからいいアンプを使いましょうね~!

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NHKの『Young Music Show』で観た印象がよくなかったせいか、Super Trampは聴かなかったナァ。でもこの『Crime of the Century』と次作の『Crisis? What Crisis?』はジャケットがいいなと思ってた。

あった、あった。レコード棚から『Crisis? What Crisis?』を引っ張り出してきたから聴いてみよう。

コレ、一応プログレの範疇にいるバンドなんだよね?それを気にしなければすごくいいな。これが数年後『Breakfast in America』で押しも押されぬ超人気バンドになろうとはね~。ま、その萌芽がここにあったのかもしれませんな。下とは違うアルバムでスミマセン。

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Focusが大好きな人っていまだに多いでしょう?私もそのひとり。といっても1978年の『Focus con Proby』までか。この『Focus con Proby』にしても大好きなベルギー人ギタリスト、Philip Cathrineが入ってなかったら聴いてないかもしれないけどね。『Hamburger Concerto』もどうな…。要するに『Focus 3』までってことかもしれない。

この『Mother Focus』は5枚目のスタジオ録音盤。LP2枚とCD1枚持ってやんの、オレ。国内盤のライナーを読んでみた。「ジャケットが今までになく派手である」…と。フムフム。「これまでのような長尺の大作がなく、短い曲がならんでいる」…とやっておいて、「アメリカ市場を狙っている」…と。なつかしいナァ。「アメリカ市場を狙ってる」…か~。

今はワザワザこんなこと言わないもんね~。しかし、なんでアメリカ市場は短く聴きやすい曲でなければならなかったんだろう。「売れたい一心」で名曲「Anonymus」の精神を捨てていたとしたらFocusにもちょっとガッカリするナァ。

でも、好きやねん、Focus。

だから数年前にフランクフルトでJan Akkermanに会ったときはうれしかった。向こうの人は「ジャナッカマン」みたいに発音する。滅多にミュージシャンと写真を撮らない私でもさすがにいっしょに記念撮影をさせてもらった。彼は私が来ているMarshallのユニフォームを見て「君はMarshallの関係者かい?僕も昔はMarshallを使っていたんだよ」と言っていた。

Jan Akkermanのソロ・アルバムも片っ端から買ったな~。あんまり弾かないんだよね、モッタイぶっちゃって。1978年の『Live』と1997年のCD2枚組の同じくライブ『10,000 Clowns on a Rainy Day』はバリバリ弾いてておススメ。

このアルバム、ジャケットのデザインはRob Petersとかいう人。なんかこのタッチのイラストってどっか他でも見てるよねェ?

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さすが、「SF特集」にふさわしくまたまた出ました空飛ぶ円盤!Bostonは円盤好きだね~。なんで円盤なんでしょうか?これ円盤がひとつのコミュニティになってるとかいうことなのかな?

自慢じゃないけど、Bostonってまったく聴いてないんだよね。そりゃ「More than a Feelig」ぐらいは知ってるけどサ。中学3年ぐらいの時にこの曲がヒットして、あの時はてっきり「♪マザー・フィーリン」って歌っているのかと思った。

スゴイ人気で、デビューした時は秋葉原の石丸電気のレコード館(3号館)の2階のロック売り場がBoston一色になっていたのを覚えている。

デビュー・アルバム。クラゲ。ああ、そうか。これ地球が爆発してBoston号で宇宙に脱出したとこなのか!

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セカンド・アルバム『Don't Look Back』で安息の地に到着した…と。「振り返っちゃいけない!」…と。

あんなに人気を誇ったバンドなのにこの2枚目を出したとこまでだったんだね。1978年。今は結構80年代のバンドやヒットした曲を「なつかしい」とか「いい時代だった」とかいう傾向があるけど、やっぱり80年代はロックの暗黒時代の始まりなんだと思うよ。暴論だけど、80年代以降のロックをすべて切り落としたとしても、ロックの歴史はなにひとつ困ることがないのではなかろうか。Marshall的には困っちゃうけどね…。

Bostonのこの後の諸作を観てみると徹頭徹尾空を飛んでるんだね~。ある意味Chicagoのジャケットみたいだ。

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Captain BeyondはDeep Purpleの初代シンガー、Rod EvansとJohnny WinterのところのBoby Caldwell、Iron ButterflyのLarry Reinhardtらで結成された。アメリカのバンド。

これも久しぶりに引っ張り出してきて聴いてみた。セカンド・アルバム、『Sufficiently Breathless』。邦題は『衝撃の極地』。1973年の発表だ。ま、パーカッションが効いた普通のアメリカン・ロックやね。

ジャケットは好き。この通りを歩いているケッタイなヤツらが楽しい。デザインはJoe Petagno。この人はMotorheadのLemmyと出会うまでHipgnosisと一緒に仕事をしており、Pink Floyd、Led Zeppelin、Nazareth等の作品の制作に加わっていた。Motorheadのシンボル、War-Pigはこの人のデザインだ。

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これは聴いたことない。でもドラムがMike Shrieveでね、いつかは聴いてみたいと思ってる。ギターはのちにGlen Hughesとタッグを組むPat Thrallだ。その前にはPat Traversのライブ盤なんかでも活躍していた。あの中のディレイ・トリックのソロにはビックリしたもんだ。「え~、コレ全部弾いてるの~?」って。

ジャケットはまさにSF。

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これもHipgnosis。元は写真素材らしい。しかし、こんなデザインのアイデアどっから出てくるんだろうね~。Black SabbathのHipgnosisはこれと次の『Never Say Die!』だけかな?Keefによるファーストや『Paranoid』、あたりはいいけど、このバンドもどう見てもジャケット・デザインに神経を使っているようには見えないナァ~。後年の『Mob Rules』なんて自分のバンドのカラーを見失っっちゃってる感じすらする。内容は案外好きだけど。

…とマァ、アタシャBlack Sabbathについてガタガタ言えるほど熱心であったことは一度もござらん。子供の頃からどうも受け付けなくて…。でも最近、なかなかいいなと思うようになってきたけどね。そんなアタシでもBirminghamへ行きゃ、結構「Iron Man」のリフを口ずさんじゃったりするんよ。

コレ持ってるの忘れて、先日つい2枚目を買っちまった!
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くどいようだけど、このジャケット見て毎回毎回思い出すのはJoan Baez。

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ゼンゼン違うんだけど、コレとダブっちゃんだよね。ま、Joan Baezが歌うSabbathこそ聴いてみたいような気もするけど。

Baez

Music Jacket Galleryの詳しい情報はコチラ⇒金羊社公式ウェブサイト

過去のMusic Jacket Gallery関連のレポートはコチラ⇒Marshall Blog - ミュージック・ジャケット・ギャラリー

つづく

(協力:植村和紀氏、金羊社・奥平周一氏)

2013年4月24日 (水)

緊急特集!<追補> Hipgnosis Collectionと下町のヒプノシス

昨日おとといと2回にわたり、HipgnosisのStorm Thorgersonの追悼特集を組ませていただいた。長大な拙文を辛抱して読破いただいた皆様には心から御礼を申し上げます。

こうして振り返ってみると、Led ZeppelinやUFO、Rainbow、Status Quo、Bad Company等々MarshallもHipgnosis同様、名盤誕生の一翼を担わせてもらっていたことに誇りを感じる。プログレ編はMarshallの出番がほとんどなかったけどね…。

今回の記事への反響も大きかった。さらにSNSを見渡してみると、「アータ、普段こんなの聴かないでしょうに!ホントにHipgnosis知ってんの?!」と思いたくなる人までがStorm Thorgersonの逝去を悼み書き込みを残していた。

私が認識ているよりはるかに広く深くHipgnosisの業績が浸透していたようだ。つまり、それだけジャケットの存在感は大きく、支持者の層も広く厚いということが言えるのかもしれない。

そして、これは何よりも貴重なStorm Thorgersonの遺産なのだ。

もうHipgnosisは終わりにしようと思ったが、新しい情報が舞い込んできたので今日は2日間の特集の追補をさせていただく。

さて、イギリスにもMarshall Blogに毎日目を通しているスタッフがいて、しょっちゅうここに登場するSteve Dawsonもそのひとりだ。

残念ながら日本語を解さないので、写真やテキストにちりばめられた英単語を見ているにとどまるが、案外内容を正確に理解していることに驚いたりする。

時折、翻訳ソフトを使ってもいるのであろう。でも、この翻訳ソフトもすさまじい仕事をする時があるから要注意だ。以前、アイルランドの友人になにかをしてあげた。するとすぐに彼女からお礼のメールが来た。しかも気を使ってくれて、それは翻訳ソフトを介した日本語によるものだった。それにはこう書いてあった。

「わたしはあなたにありがとうではありません」

もちろんそんなことを言おうとしているワケがないのはすぐにわかる。さっそく彼女に知らせたが、PCの向こうで顔が赤くなっているのがわかるぐらい謝っていた。こわいですね。

さて、そのSteveから面白い話が届いた。もちろん昨日今日のマーブロを見てのこと。話はStorm ThorgersonとJimmy Pageのやり取りに関することだ。

やはりイギリスでも70年代のHipgnisisの人気は相当高かったらしい。

本編にも書いた通り、Led Zeppelinは5枚目のアルバムで初めてHipgnosisにジャケット・デザインを発注した。そして、StormがデザインのアイデアをJimmy Pageに提示した。それはLed Zeppelinのイメージが組み込まれたテニス・コートの絵柄だったという。

Jimmy Pageはそのデザインが意図することが分からずStormに尋ねた。

「テニス・コートとLed Zeppelinって何か関係があるのかい?」

するとStormが静かに答えた。

「あるじゃないか。ラケット(racket)だよ!」

Jimmy Pageはこの発言に大層気分を害し、部屋を出て行ってしまったという。その後、他のHipgnosisのスタッフに仕事を頼んで出来上がったのがコレ。

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この事件で『Led Zeppelin V』、つまり後の『Houses of the Holy』の発売が3か月遅れたという。

ナゼJimmy Pageがそれほど怒ったのか…。

実は「racket」というのはイギリスの都市部のスラングで、「雑音」という意味があるのだそうだ。それとテニス・コートを組み合わせた一種の楽屋落ちだったのだ。

やるナァ~、Storm。天下のLed Zeppelinの初の仕事でこんなことしちゃうんだもんだナァ~。ま、StormもまさかそんなにJimmy Pageが怒るとは思わなかったんだろうね。「ウ~ケ~る~」と言われると思ったんじゃない?

でも、『Houses of the Holy』がうまくいって、この後『Physical Graffiti』は飛ばして→『Presence』→『The Song Remains the Same』→『In Through the Out Door』→『CODA』と最後までHipgnosisで行っちゃった!

さて、もうひとつ。

このMarshall Blogのバナーを制作していただいた梅村デザイン研究所(梅デ研)主宰の梅村昇史氏のことだ。

梅村さんには他にもShige Blogのバナーも制作していただいており、全幅の信頼を置くビジュアル面での私の仕事のパートナーだ。梅村さんも先にご登場いただいた著名なコレクター、植村和紀さんのご紹介だった。要するにZappaにしてZappa道の師匠でもある。

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氏はZappa以外の音楽にも当然造詣が深く、おしゃべりの機会があると、Zappaについては言うに及ばず、The Beach BoysからOrnet ColemanやArchie Sheppまでありとあらゆる音楽の話ができて滅法楽しく勉強になる。もちろんEdgar VareseやXenakisのような現代音楽もよく聴き込んでいらっしゃる。

ヒックリ帰っちゃったのは、仕事の打ち合わせで拙宅においでいただいた時、パーカー派アルト・サックスの巨人、Phil Woodsの1967年の珍盤『Greek Cooking(Impulse!:Phil Woodsがウードやブズーキを演奏するギリシャのミュージシャンと演奏した地中海丸出しのキテレツなジャズ。これが超絶技巧とスリリングな曲展開でかなり楽しめる)』をかけた時、「あ、これフィル・ウッズですよね?」と言い当てた時だ。これには驚いた。

つい先日もアルゼンチンの作曲家、Alberto Evaristo Ginastera(いわゆるヒナステラ)を教えてもらった。

ところで、梅村氏は「下町のひとりヒプノシス」を標榜されていて、先日の【号外】でも紹介した『WALK AWAY RENE』もシッカリと熟読されていた。

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そのせいか、初めて梅デ研の作品を目にした時からすっかりそのタッチに惹きこまれてしまった。

したがってShige Blogを始めたり、Marshall Blogを再開するに当たっては、絶対に梅デ研作品をバナーに据えることを決めていた。

そして、2人で組んで最近仕上げたのがおなじみのMarshallプレイヤー、田川ヒロアキの『Ave Maria』である。私が撮った写真を実にうまく使ってくれた。

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また、他にも数々のCDジャケットやボックスセット、音楽書籍等の商品のデザインを手掛けている。

いずれMarshall Blogでユックリと「下町のひとりヒプノシス」の作品を紹介したいと思っているが、今日はお気入りを3点ほど氏に選んでもらったので予告編的に作品を紹介しておく。

まずは1975年、Allan Holdsworth在籍時のSoft Machine、「ラジオブレーメン」用に収録されたライブの日本国内盤。Holdsworth在籍時のMachineは大層人気が高いからね。

オリジナルのHipgnosisを無理に模倣したかのようなジャケットより、梅村さんのこの手書きの細密画の方が格段に素晴らしい。よく見ると絵の中の建物についている看板にひとつひとつ内容に関する名称が書き込まれている。こうした楽屋オチ的なコリ方も梅デ研作品の楽しみ方だ。

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Ornette Colemanのベース、Jamaaladeen Tacuma(ジャマラディーン・タクーマ)のアルバム・ジャケット。マーブロのバナーもそうだが、宇宙的なコラージュ手法も梅デ研の得意ワザのひとつ。

これ、素材を適当に並べたって絶対にこういう空気感は出ないよ。このあたりはHipgnosisというよりCal Schenkelの影響が大きいのであろう。

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これは人気DJ、植原良太のCDジャケット。こうした愛らしいイラストも魅力のひとつ。このあたりはGary Panterか?それと忘れてならないのはこの色彩感覚。これだけ極彩色に仕上げるととかくうるさくなりがちだが、梅村作品はいつでも上品で高級感があふれている。これも大きなポイント。

他にもSaul Bass(大好き!)を想起させる作品や50年代のジャズ風、一転してコンテンポラリーなテイスト等々、その魅力を語れば枚挙にいとまがないのである。

梅村デザイン研究所の詳しい情報は、このブログのサイドバーにある「【梅村デザイン研究所】ハルタンタハルタンチ」をクリック!

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さて、その「下町のひとりヒプノシス」、数年前に何とStorm Thorgersonに遭遇したことがあるというのである。「ヒプノシス展」を観に行った梅村氏、帰りのエレベーターでStormとスタッフとたった3人で乗り込んでしまったそうだ。

Thorgerson氏がニコニコしていてくれていれば挨拶のひとつもできたろうが、その時かなりご立腹で怖かったそうだ。

Frank Zappaとエレベーターでふたりっきりになった岡井大二さんの話しみたいだ。Zappaは別段怒っていたワケではないが、そこにいるだけでものすごい芸術家のオーラが出ていてものすごくコワかったという。

この感覚はよくわかる。私もニューヨークのBirdlandで穐吉敏子さんを見かけた時コワくて近寄れなかった。もちろん優しい方なのだろうが、ヘラヘラとした自分の軽さが恥ずかしい気もした。

先に書いた通り、Stormは天下のLed Zeppelinにもそうした所業で自分の信念を貫くような人だ。きっと展示の仕方か何かが気に喰わなかったのであろう。

改めて真の芸術家の逝去を惜しみ、ご冥福を祈る次第である。

2013年4月23日 (火)

【Music Jacket Gallery】緊急特集!Hipgnosis Collection~Hard Rock Works

Hipgnosisの主宰者、Storm Thorgersonの逝去にともなう緊急特集。

大田区は鵜の木にある大手印刷会社、金羊社内にあるMusic Jacket Galleryで2011年に開催されていた『ヒプノシス展』を題材に、昨日はプログレッシブ・ロック系のバンドの作品を紹介した。

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もちろんHipgnosisの偉業はプログレッシブ・ロックの作品に限らず、ハードロック系バンドのLPジャケットにも素晴らしい成果を残している。Led Zeppelin、UFO、Wishbone Ash、Bad Company、Black Sabbath等々の超ビッグネームへの作品が目白押しなのだ。
そう、こっちの方面でもブリティッシュ・ロックの隆盛にはHipgnosisの視覚面での多大な貢献があったのだ。
今日はハード・ロック方面でのHipgnosisの偉業を考察していく。私的でゴメンね。

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さて、Hipgnosis作品を見渡すと作風というか頻出するテーマのようなものがあることに気づく。
人それぞれ見方が異なるのだろうが、私の場合は、まず「水」。

水を使ったデザインが異様に多い。それほどイギリスが乾いているようには思わないが、スタッフのノドがいつも乾いていたのな?イヤ、雨の多いお国柄、水に親しみを感じているのかしらん?何せイギリスの雨は降りゃ必ず本降りにならないと気が済まないからね。ホント、イヤだよ、あの雨は。

それから「身体の一部の拡大」。これもすごく多い。目玉だの股間だの胸だの。
さらに「パターンもの」。『The Dark Side of the Moon』みたいなヤツね。
それに「ドラマもの」…というか映画のワンシーンを切り取ったようなヤーツ。
後は「完全イラストもの」。文字通りイラストだけで済ませちゃうタイプ。
何といっても「写真合成もの」。これが一番お得意か。
ま、こうして挙げていくとキリがなくなってカテゴライズの意味もなくなっちゃうので止めとくけど、どの作品も大抵これらのウチのどれかに所属しているんじゃないのかな?

決定的に言えるのは、レタリング、タイポグラフィっていうのかな?要するにBlue Noteが得意としているような字だけでデザインを構成しちゃう手法と、バンドのメンバーの写真がドンと出てきてハイ終わりというパターンがすごく少ないのね。

ポートレイトものですぐに頭に思い浮かぶのは、『Rory Gallgher』、『Aynsley Dunbar's Retaliation』、『Desolation Boulevard / Sweet』、『Olivia Newton-John』…ぐらいかな。あと、本人が出てくるには出てくるけど「水」処理が施してあったり、「ドラマ化」してあったりで、ただ写真をボコッと置いてタイトル入れて…というのはかなり少ない。
このことはThorgerson自身の主義でもあったらしい。

それと楽器。ポートレイトを使わないのと同時に楽器のイメージもまったくといっていいくらい出番がなかった。なんかあったかな…(長考)…ポールがギター抱えているヤツとWishbone AshのFlying Vがスッ飛んでるヤツぐらい?

Marshallを使って何かカッコいいジャケットがあればよかったのに…。多分、楽器を登場させると中身のイメージが固定化されてしまうと考えていたんじゃないのかな?

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それでは、どうやってHipgnosisはこれらの作業を進めて行ったのであろうか?あるインタビューでThorgersonはこう説明している。

当該のアーティストの作品を聴いて、歌詞を読んで、スタッフ同士で意見を交換し合う。Hipgnosisとしてのアイデアが整ったらスケッチを起こす。それをバンド側に見せて説明し、バンドとも意見を交換し合って最終的なアイデアを決定していたらしい。

でも、Hipgnosisの作品のほとんどは写真素材。後はその決定したアイデアに基づいてパソコンでチョチョチョと加工して終わり…なんてことはこの時代は当然できなかった。それらの写真をすべて実際に撮影しなければならなかったのだ。

これは大変ですよ。時間も金もかかる。だからこそいいものができたんですね。まさに映画と同じ。実際、この話しを聴いてすぐにヒッチコックと黒澤明を連想した。(いつもコレだ)
脚本至上主義…2人ともいい脚本がなければ絶対に良い作品は生まれないという考えで、ヒッチコックは長編を原作に選ばなかった。ダレちゃうから。また、彼は異常にキャメラ(?)の技術に詳しく、本職のキャメラさんにしばしイヤがられたらしい。

一方、黒澤作品の頂点『七人の侍』なんかは、後年世界がうらやんだ橋本忍、小国英雄、そして黒澤明という3人の名脚本家チームが箱根の旅館に何カ月か缶詰になり、アイデア出し合って練り上げたという。3人が同時に同じシーンを考え、浮かんだアイデアを他の2人に提示する。他の2人もアイデアを提示し、意見を交換して一番よいアイデアを選んでいく。
ようやく脚本が完成してみんなヘトヘトになってしまった時、黒澤明はこう言ったという。「オイオイ、君らはいいけど僕はこれからこの脚本を実際に撮影しなければならないんだゼ!」って。黒澤明もキャメラの技術に明るかったという。

彼のトレードマークであるパンフォーカスを実現するために現場はいつも過酷な状況だったという。パンフォーカスは画面全部にピントを合わせる手法で、たくさんの照明を使って思いっきり明るくしてレンズを絞り込まないと奥までピントが送れない。そのため現場はいつも灼熱地獄だったという。あの有名な『天国と地獄』の権藤邸のセットの中なんか40℃を軽く超えていたらしい。

これってまったくHipgnosisの話しと同じでしょ?脚本やミーティングがいかに大切かということだ。

さて、ここでま音楽配信の話し…。「またかよ!」と思われるでしょう?別に音楽配信に恨みはないの。危険信号を送っているだけなんですー!

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それは、自分から能動的に聴きたいと思う曲を1曲毎に入手できる「音楽配信」というシステムが一見合理性に富んでいると錯覚してしまうのがまずマズイ。
自分の好きな曲しか聴かない。狭まるねェ~、聴く音楽の幅が…。でもこれだと作る側はラクでいいよね~。聴きやすい、受け入れられやすい曲だけ作っていればいいワケでしょ?
でも、それでいいのかしら?コレってナンノことはない、原始回帰だとは思わない?LPが発明される前のEP、つまりシングル盤文化へ逆戻りしているだけではないだろうか?テクノロジーは進歩したかもしれないけど、肝心の音楽と音楽のあり方が縮退しているのではないか?
これはシングル盤が悪いとかつまらないということでは全くない。でも、シングル盤は歌謡曲もしくはその類の普遍性が限りなく高い大衆音楽のためだけの物だと思うんですよ。
「木綿のハンカチーフ(最近知って感動したんだけど、あの美しいギター、芳野藤丸さんが弾いているんですってね!藤丸さん、超名曲を超名演で彩りを添えていただいてうれしい限りです)」とか「勝手にしやがれ」とか「また逢う日までとか」、そういう人類が滅びるまで歌い継がれていく曲をひとつずつ提供するのがシングル盤の役目だと思っているの。または歌詞がメロディに乗ってスラスラ自然に出てくるような曲ね。今、巷間でヤケに日焼けした人たちがタテにグルグル回りながら歌っている曲なんかとは、土台天と地の差ほどのクォリティの違いがある。

もちろんハズレもあるでしょう。でもそのハズレも面白かったりするのがあの時代のシングル盤の特長なんですよ。いいものがあるから、どうしてもハズレちゃうものもある。そこでレコード会社の人たちもひと山狙って少しでもいいものを世に問おうとする。だから必然的にちゃんとした商品、つまり音楽が出てくる。
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楽器サイドのテクノロジーも進化して、自分が作った曲を誰でも自宅でいい音で録音できるようになった。いわゆる「打ち込み」の一般化だ。ちょっと前まではドラムの音なんかペロンペロンだったのに今ではヘタをすると人間の叩くホンモノより音がよかったりするもんね。何回やり直させても文句言わないしね。

そうして作ったモノをインターネットに乗せて不特定多数の人に聴いてもらう。
ちょっと聴くとアマチュア・ミュージシャンにとっては夢のようなシステムだが、この簡便さが恐ろしい。言い換えるとこれはほとんどプロとアマの差がなくなるという事でしょ。

「コピーができないからオリジナルを演ってる」なんて話しをたまに聞くが、どうなんだろう?これはあまり音楽を聴いていないということではないだろうか?ミュージシャンはまず絶対にリスナーであるべきだと思う。やっぱりスゴイミュージシャンは例外なく音楽に詳しいですよ。膨大な時間を費やして深く広く聴いていらっしゃる。そうして積み重ねたインプットの中から自分の音楽を編み出していることは論を俟たない。
すなわち、チョチョイと宅録で作った音楽をバラ撒いて、またそれを何も知らない若者が聴いて「これが音楽か」と錯覚してしまう。悪循環である。

そうそう!こないだ車を運転しながら珍しくFMを聞いていたら若いミュージシャンが出て来て、インタビューの中で驚くべきことを言っていた。本当に名前は知らない。チェックしとけばよかったな。こんなことを言っていた…

「『ナントカ(名前は聴き落とした)』というライブハウスにはとてもお世話になったので、有名になってからも出演して恩返しをしたい」的な発言。これは全然いいよ。Miles DavisとBlue NoteのAlfred Lionみたいな美しい友情ストーリーだ。マズイのはこの先だ…

「このライブハウスはまだ僕らがロクに演奏をできない頃から出演させてくれて、いい訓練になったんですよ」って…アータ、演奏できないのにライブハウスに出てんの~?これホントにラジオで聞いたんだからッ!ビックラこいたよ、おじチャンは!

我々の時代にはこんなことあり得なかった。渋谷の屋根裏や新宿ロフトに出ることがもはや成功の証だったからね。そんなバンドがナンカの拍子にうまい具合に世の中に出たところで攻勢に残るいい仕事なんかしないって。所詮は時代が生んだアダ花なのではなかろうか?

ついでにもうひとつ。有名なライブハウスの社長さんから聞いた話し。

若いバンドさんのリハのシーン。ギターのチューニングがあまりにもヒドイのでミキサーさんが気をきかして「ギターさん、チューニングどうぞ!」と振ってあげた。

するとのそのギターの子は「あ、だいじょぶッス!ギター買ったときにチューニングしてもらいましたから!」…オイオイ、ピアノじゃねーんだよ。にわかには信じられなかったが本当の話しらしい。

じゃなんでそんなバンドを出すんだよ…というご指摘もあるかもしれないが、音源審査かなんかでオーディションをパスしちゃったのかもしれない。事実デモ音源とライブ演奏が似ても似つかないバンドなんてザラにいるらしいから…。

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続けます。

さらにマズイのは1曲ずつ自発的に聴いてしまうシステムは音楽の発見がどうしても少なくなってしまうこと。アルバムの場合お目当てでない曲も含まれていて、嫌でもその曲を耳にしなければならない。曲を容易にスキップすることができないLPの場合は特にそうだ。すると、その中に思いもかけない自分だけの名曲を発見したりするものだ。そうしたいい音楽との運命の出会いを奪い去ってしまうのが配信のシステムではなかろうか…。恐ろしい。

話しはシングル盤にもどって…ノルかソルかの商業的成功を狙ってセッセと量産されたシングル盤文化の一方では着々とロック・レコードが「芸術」に昇華していった。

その権化fがいわゆる「コンセプト・アルバム」というヤーツ。シングル盤では表現できない物語や何かのテーマを組曲的に複数の曲でまとめ上げる芸術だ。要するに『Sgt. Peppers~』みたいなヤツね。

調べてみるとその歴史は古く、1930年代のLee Wiley(ジャズ歌手ね)の作品が元祖らしい。
ロックの世界ではThe Venturesの1961年の『Coloful Ventures』が最初のコンセプト・アルバムとされているんだそうだ。 その他、The Beach Boysの『Pet Sounds(1966年)』やBrian Wilsonの『Smile(2000年に発表)』、同じく66年のFrank Zappa『Freak Out!』、The Kinksの『Face to Face』、そして一年後の『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』。
『Rubber Soul』を超えるアルバムを目指して『Pet Sounds』を制作するBrian Wilsonに「今スンゲェのに取り組んでいるんだ」とPaulが漏らして出てきたのが『Sgt. Peppers~』というのは有名な話し。
みんな66年近辺。名盤がひしめき合ってる!

『Pet Sounds』もコンセプト・アルバムなのか…。ま、確かに聴きだしたら全曲聴かないと気が済まない感じがするというか、いつもメロディを口ずさみながら、自然に全部聴いてしまうな。でもこれはあまりにも全曲素晴らしいからであって、別にコンセプトなんかなくっても全然構わないんだけどね。

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一般的歴史的に美術は音楽より常に10年先を歩んでいると云われてきたようだが、音楽の強みはテクノロジーが大きな味方になっていること。つまり、キャンバスの大きさには限りがあるけれど、宿命的に「時間」を共有することができる音楽はその点で美術より圧倒的に優位性があるんですよ。
そのメリットを利用したひとつの完成型芸術がコンセプト・アルバムだと思うワケ。
いいですか?配信によって、言い換えると「1曲しか聴かない聴き方」が当たり前になると先の名盤もせっかくのそれらの芸術もすべて吹き飛ぶ可能性があるんですよ。恐ろしいとは思いませんか?

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私はiPodの発明にはノーベル賞を授与すべきだと思っている。そして、私の160GBのiPodには20,000を優に超える曲が収納されていて、入りきらないので時々在庫整理をして曲を入れ替えている。さすがに2台持ち歩くのはイヤだからね。でも、1曲たりとも配信された曲は入ってはいない。

iPodはそうした配信システムの利便性と収益性を狙って開発されたことは百も承知だが、使い方によってはそのシステムを通じて音楽文化を脅かす凶器になるのではないか?これはあまりにもダイナマイトの発明と状況が似ている。

とにかく、フィジカル・プロダクツを死守し、「ジャケットをなくす」 などという愚行を犯さないこと願うしかない。

とはいえ、今はまだこうしてジャケットを楽しむことができる。Hipgnosisの素晴らしいデザインを今回もじっくりと眺めることにしよう。

いつもテキストは直下の写真の解説をしているが、今日はルールを変えて、展示棚の写真を入れてセクションごとに区切ることにした。テキストの中にある「上段の」とか「左から3番目」とかあるのはすでに上に出ている写真を指している。そして個々のジャケットの解説は写真より上に記してある。ややこしくてスミマセン!

では、Storm Thorgerson追悼、Music Jacket Gallery緊急Hipgnosis特集~ハード・ロック編、まいります。

今日もすべて植村和紀氏のコレクションだ。

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UFOもHipgnosisのジャケット・デザインがもたらすヴィジュアル効果を最大限に利用して作品全体のクォリティをアップをすることに成功したグループのひとつだろう。上段全部と中段左から2つめまで。
Hipgnosisの作品を取り入れるようになったのはスタジオ3作目の『Phenomenon(現象)』からだが、丁度このアルバムからMichael Schenkerが参加して人気にも火がつき出したため余計Hipgnosisデザインの採用がUFOの成功に奏功した感触をうけるのではないか?

『Phenomenon』は実際に撮影された空飛ぶ円盤の写真にそれを撮影するカメラを手にする予定調和的な女性の写真他を合成し、思いっきりフィルムに着色を施したHipgnosisお得意の手法で作られているが、この不気味な雰囲気とメルヘンチックに着色された色調、それとそれらを配置する絶妙な構図がたまらない。
先に書いたようにHipgnosisがデザインを制作する際は、アーティストと意見を交換しアイデアを決めるワケだが、この『Phenomenon』などは一体どういうアイデアの交換があったのだろうか?
Phil Moggが「どうすんだよ、ジャケットよぅ、ヒプグノシスさんヨォ~」とドスの効いた声でせまるとStorm Thorgersonが「イエ、ヒプノシスです。「g」は発音しないんです。さて、こんなのどうでしょうか?こちらの円盤の写真を使ってですネ、すでにカメラを手にした女性がその円盤を撮影する準備をしている…という図式でございます」
すると、Philが「バッキャロー、何で円盤が飛んでくるのが事前にわかってんだよ~?」。すかさずストーム「イエイエ、この円盤こそがUFO…つまりあなた方です。要するに人々はもう円盤が飛んでくることがわかっている。すなわちUFOというバンドが成功を収めて大空を飛びまわるということを確信しているという暗示なんです」
「フフフ、やるじゃねーかヒプさんよ~。ヨッシャ、気に入った。それで行こう!」
するとMichaelが「ぼくはRudolf(Scorpions)の弟だから、これが本当の『空飛ぶ円盤に弟が乗ったよ』だね!」
「うるせェ、あっち行って「出る単」でもやってろ!」とPhil。
…などという会話は絶対になかったであろうが、この『Phenomenon』をはじめUFOのHipgnosis作品はどうやってこんな意匠にしたのだろうというものばかりだった。

Phenomenon

スタジオ4作目の『Force It』も素敵だ。絡みあう男女。このふたり、よく見ると男と女が入れ替わっている風に見える。極端に色彩を強調した水道栓。こんがらがったホース。またしても完璧な構図。裏面の4人のライブ写真(こんな写真を私はお手本にしています)。もうこれだけで中身のよさは保証されたようなものだ。

その通り!この中身ときたら!1曲目「Let It Roll」のフィードバックだけで鳥肌だらけになってしまう。ああ、この曲を生まれて初めて聴いた時の衝撃ったらなかった!まったくロック・ギターのカッコよさがすべて詰まったかの曲だよね。間奏のこの演歌はナンダ?後半のボーjカルは天童よしみが出てくるのか?老若男女を問わずコレに感銘を受けないロック・リスナーが日本にいるとは思えない。

「Let It Roll」以外も名曲ぞろいだ。ああ~、まだ「Let It Roll」を聴いたことがない人が本当にうらやましい!

今の若い方々は実は幸せなんだよね。だって、こういう究極的にカッコいいロックを知らなくてこれから楽しむことができるんだゼ!イヤミに聴こえるかもしれないけど事実なのですよ。古い臭いなんてことは全くない。「いいものをいい」と思う感性もしくはDNAは誰もが平等に持ち合わせているんですよ。ならば聴かなきゃソンソン!!

Force

UFOの曲の魅力は何といってもカッコいいリフだよね。これにガッチリと乗り切るPhilの歌。こういうロックが今まったく聴かれなくなっちゃたことは本当に寂しい。カッコいいリフを作るのは本当に難しいからね。UFOこそ若いミュージシャンに聴いてもらって、かれらの若い感性でロックの魅力を取り戻してもらいたい教科書的なバンドだ。

それからこの記事を書くにあたって痛感したのは録音のこと。この時代の録音は今のよくいえばゴージャスな音に比べればスッカスカに聴こえるかもしれない。でもそのドンシャリドンシャリした長時間聴くに堪えない、いかにも化学調味料テンコ盛りの音よりもこの頃の録音、素材の味、つまり奏者の技量や楽器本来の音質を活かした録音を見直す時がとうとう来たのではないだろうか?

あるベテランのギタリストがおっしゃっていたが「最近若いギタリストと話しをしていて驚いたことがあったんや。(オ、関西弁だ!) その子、「Led Zeppelinのサウンド、もしくは録音がスッカスカや」言いよんねん。おかしいと思いまへんか~?」
私の返答は「そりゃおかしいわ~!ジョン・ボーナムのドラミングがスッカスカと言ってるように聴こえますねん(ホンマは標準語なんやねんけどな…)」 ま、これ以上は止めときましょう。
録音は確かに大事ですねん、ホンマ。

もちろん音楽と録音と楽器の音はそれぞれ相互干渉しあうことはわかっているが、今巷間で見かける2音半下げとかで激歪みで演奏しているロックをこの時代の手法で録音したどうなるのだろうか?少し興味があるな。
UFOで言いたいことはまだまだある。(でもあと3つにしとくね!)だって高校の時コピーバンドやってたんだもん。思い入れも大きいのサ!
そんな大好きだったUFO、1979年に来日して中野サンプラザの前から2列目の席をゲット。最高によろこんだのもつかの間、Michael Schenkerが来日せずPaul Chapmanが代役。ガックシ…でもUFOのもうひとつの看板Phil Moggはいるワケだし、全曲知ってるし、コンサート自体はとても楽しんだのだった。

2010年にもロンドンでUFOを観た。その時もギターはSchenkerではなくVinnie Mooreだった。
ところで、UFO最大の魅力、Michaelは当然のごとくマーシャルの愛用者。JCM800の50W、2チャンネルモデル2205を長年愛用している。シェンカー・サウンドのヒミツのひとつはこの50Wに隠されているのだろう。

今回この記事を書くにあたってUFOの作品を片っ端から聴き返してみると、夥しい数の日本人ギタリストがMichaelの影響を受けていることがよくわかる。フレーズといい、音質といい、アーティキュレーションといい何とフォロワーの多いことよ。大変よろこばしいことだ。
どうだろう、日本ギター界に影響を与えたギタリストトップ3といえば
1.Ritchie Blackmore
2.Michael Schenker
3.Randy Rhoads
と見ているがどうだろう?英、独(ほぼ英)、英に影響を受けた米…間違いなくすべてブリティッシュロックに薫陶を受けたスタイリストたちと考えていいだろう。やっぱりイギリスからギターヒーローが出てくれないとロックはダメなのですよ!

そこへいくと今のイギリスのギター界は真っ暗だ!これがホントの「Lights out in London」!

Lights

中段右端はMontroseのラスト・アルバム『Jump on It』。Sammy Hagarはもういない。この時代、アメリカのバンドでHipgnosis作品の採用は比較的珍しい。Montroseも内容の割にはジャケットが粗悪なバンドのひとつだった。『Montrose』、『Paper Money』、『Warner Brothers~』どれもダサい…。でも4作目にして何故かHipgnosisが担当。これもお得意の「身体の一部切り取り」手法だ。そしてタイトルが『Jump on It』!ク~!

ブリティッシュ・ロックのいいところを吸収したアメリカン・ロック然としたサウンドはなかなかにカッコよかった。しかし、ある日、Ronnie Montroseはマーシャルを使っていないとの情報をSHARAさんか得て少し興ざめした。マーシャルでやれよ、そういう曲は!でも、好き。

Montrose

下段左から2番目のゲイトフォールドはArgentの『In Deep』。KISSで有名になった「God Gave Rock 'n' Roll to You」はこの『In Deep』に収録されている。

Argentも大好きなバンド。2010年、ロンドンで観ることができて本当に幸せだった。
そういえば、MR.BIGはArgentの代表曲のひとつ「Hold Your Head Up」を演っていて、果たしてこの曲は誰の趣味なのか?と思いPaulに直接訊いてみた。すると、Paulは「僕だよ」と言ってこの曲の有名なリフを弾いてくれた。その時、ますますPaulが好きになった。

Deep

Hipgnosisはこの他のArgent作品としてセカンドアルバム『Ring of Hands』を手掛けている。双方これもお得意の「水」ものだ。

Argent

下段右端はおなじみMichael Schemker Groupですな。実は私、まったく通ってないのです。私のMichaelはUFOなのです。
この写真は合成ですな?これだけ明暗の差が大きいと明るい部分が白く飛んでしまうか、暗い部分が真っ黒につぶれてしまうので厄介なんだよね。スミマセン、コメントこれだけ…。

Msg

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上段左から4枚はAynsley Dunbar's Retaliation。イギリス発で世界でというかアメリカでもその名を轟かせたドラマーで、思い浮かべる名前は何といってもSimon PhilipsとこのAynsley Dunbarだろう。

コイントスで負けてJimi Hedrix Experienceのドラマーの座がMitch Mitchelに行ったのは有名な話。

John Mayall、Jeff Beck、David Bowie、Lou Reed、Journey、Jefferson、 Starship、Whitesnake、UFO等、と想像を絶するような豪華なキャリアを誇る人だが、私がこの名前を知ったのはFrank Zappaの『Filmore East, June 1971』。「Little House I Used to Live in」という曲で、ボーカルのMark Volmanがドラムのピックアップで「Aynsley Dunbar!!!」と絶叫しているのを聴いてだった。

ちなみにそのAynsleyが参加したアルバムは私が初めて買ったZappaの作品なのだが、中学生だった私は大枚はたいて買ったことを正直後悔した。ワケわからんし、セリフばっかりだし…ナンダ?一体「ま~、シャッシャッ・シャ~ク」って?…でも聴きこむにつれて段々おもしろくなって…あれが長い長いZappa道の第一歩となろうとはあの時想像もしなかったな。その後、このアルバムはCDやら紙ジャケとなり、ナンダカンダで5枚ほど手元にあろうか。その中にはUSオリジナル盤も含まれている。

私は決して各国盤を集めたりはしないし、オリジナル盤至上主義でもまったくない。そんな財力も根気もなく、とにかくいろんなものを生きてるうち聴きたいと願ってる派なのだ。でも、このZappaのアルバムのUSオリジナル盤を持っているのには理由があって、今から20年以上前に京都の河原町付近の路地を歩いていて見つけたのが、どう軽く見積もっても戦前よりはるか昔に建てられたと見受けられる民家。いいですか、想像してくださいよ~。
もちろん街の中心とはいえ京都にあっては古い家はまったく珍しくも何ともないが、驚いたのはその古い古い民家が中古レコード屋だったのだ。当然入ル。

ここで入らなきゃ「音楽バカ」の名がすたる。ガラスの引き戸をガラガラと開けると、予想通りというか期待通りヨッボヨボのお婆さんが出てきた。あの頃はLPからCDへの移行が猛烈なスピードで進んでいたが、CDなんて1枚も見当たらない。
ここから先は、この古い闘技場でお婆さんとの一騎打ちとなる。『ドラゴンへの道』よろしくコロッセオでチャック・ノリスと対峙するブルース・リーの気分だ。残念ながらノラ・ミャオはいない。

「コリャ、いよいよ何か買わないととても帰れないゾ」と覚悟を決めて小さなエサ箱を探る。もうどんなものが入っていたかは覚えていないがロクなもんはなかったハズ。そして出て来たのが『Filmore East』!これこそ、「はきだめに鶴」、「地獄に仏」!ジーっと私を見つめるお婆さんを横目で見ながらレーベルを確認するとBIZARREのブルー。¥1,500。「これ買って帰らしてもらおう…」と決心をして袋に入れてもらった。ナ、ナ、ナントその入れ物はのりで貼り合わせて作った新聞紙の袋だった!完全に手づくり。餅米かなんか煮て作ったノリで張り合わせたんだね。最後まで期待を裏切らなかったナァ~、あのお店。袋、取っておけばヨカッタ!(このZappaの作品のデザインはCal Schenkel)

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さて、Aynsleyはその壮絶なドラミングで70年代前半のZappa作品で大いに活躍した。このRetaliationは残念ながら聴いたことがない。というのもこの後の『Blue Whale』というアルバムがZappaの名曲「Willie the Pimp」を演奏しているのにもかかわらず存外に退屈だったため、Retaliationには手を伸ばさなかった。
ジャケットもまだ68~70年の作品とあって、まだあまりHipgnosisさが出ていない感があるね。

Aynsley

「上陸許可が下りた、血気盛んでワイルドな水兵達のダークで秘密めいたパーティ」という凄まじいキャッチがくっついていたのが中段左から2番目のSailor。何かこんなキャッチを読むと体中の毛が逆立つような爆音のデス・メタルの軍団がやって来たのかと想像してしまうが、Sailorの音楽はメタルとは無縁のエキゾチックなポップ・ミュージック。

Roxy Musicが好きだった私はこのバンドにナゼか毒のないBryan Ferry臭を感じ、セカンド・アルバムの『Trouble』をよく聴いた。大分時間が経ってから発表されたライブ『Live in Berlin』もよかった。ここにあるサード・アルバム『The Third Step』は残念ながら聴いたことがないが、このジャケット・デザインがかなり素敵だ。今度見つけたら買ってみよう。胸を張ってジャケ買いしよう。

Sailor

日本では知られていないが海外では超人気というアーティストがよくいるものだ。Status Quoはその筆頭かも。イギリスでは泣く子も黙るような国民的バンド。白いマーシャルのフルスタックの壁を背に1967年から今でも全英中を沸かせて歩いている。現に昨年もO2アリーナ(!)でのコンサートの告知ポスターを見て腰を抜かした。

1976年にグラスゴーで録音されたライブ・アルバム。持っていたんだけどかなり昔に手放してしまったので内容は記憶にないナァ…。ありきたりだけど『Pile Driver』はいまだに聴いている。ま、とにかくブギですよ。ザッカザッカザッカザッカって。日本では永遠に人気でないだろうナァ。

Quo

下段右端はRory Gallagher。マーシャル使いではない。それを気にするほど入れ上げたこともないんだ。何故か彼の歌が苦手で…。それでも代表作は持ってるな…やっぱり好きなのかな?この1971年のソロのファースト・アルバムのジャケットがHipgnosisの作だとは知らなかった。イイねェ~、このやや下目にレイアウトされたハーフシャドウの写真!Hipgnosisにしてはシンプルの極致といえよう。Roryらしい飾り気のないシンプルな内容でこれは好き。1977年の来日公演、行けばよかったナ。その頃は「ロリー・ギャラグハー」なんて表記されてたりしたっけ。

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まだまだ続く名盤の数々!
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ハイ、次はMarshallバンド。スミマセン、Bad Companyもひと通りサラっとしか聴いていません!Mick Ralphsがあまりギター・ヒーローって感じではなかったからかな?でもこのバンドはずっとHipgnosisなんだよね。だからジャケットはとてもいい。
10年ぐらい前にロスのギターセンターに行った時にMick Ralphsが所有していた58年だか59年のレスポールが売り物として壁にかかっていた。確か値段は7万ドルぐらいだった。店員に冗談で「ミックは生活に困って売りに出したのか?」と訊いたところ真顔で「そうだよ」と答えた。海外のミュージシャンはひと山当てた時に楽器を買って将来困った時に備えるという話しを聞いたことがあったが、ホントなんだなと思った。

Paul Rogersとマーシャルの関係は深く、2002年に開催されたマーシャルの創立40周年記念パーティの際にはPaulから祝辞が寄せられていた。本人が出席して欲しかったが、あの時はIron Maidenのメンバーと当時Bad CompanyのメンバーだったDave "Bucket" Colwellなんかが出席していたっけ。

さて、このBucketには驚いたことがあった(すぐ驚いちゃうんです、私)。Marshallの工場があるMilton Keynesには大きなショッピング・モールがあって、その中にイギリスでは老舗の楽器チェーン店が入っている。Marshallに行くと時々その楽器屋をのぞくのだが、ある時お店の中を見ていたら「May I help you?」と店員が声をかけてきた。「No thank you.  I'm just looking」とトラベル英語の本の最初のページに出てきそうな定型文を口にしてその店員の顔を見てビックリ!

時のBad Companyのギタリスト、Dave "Bucket" Colwellだったのだ!お互いの次のセリフは当然「What brings you here?!(ナンデここにいんのよ?!)」。この文章はよく英会話の本で見かけるけど、まずは使うことのない文章だよね?でもとうとう使ったのだ!しかもBad Companyのギタリストを相手に!
音楽活動をしていない時にはちょくちょくアルバイトをしていたのだそうだ。この数年後、Bad Companyは再結成してBucketも全米ツアーに参加していた。
ジャケットに関して言えば、バンド名だけを配したファースト・アルバムが一番カッコいいね。

Bad
中段左端はHumble Pieの『Thunderbox』。真ん中が鍵穴の形にくり抜いてあって、お風呂に入ろうとして服を脱いでいるカワイコちゃんがのぞけるようになっている。この写真が完全にデヴィッド・ハミルトン風でHipgnosisではかなり意外な印象を受ける。また、その構図が秀逸!

Humble Pieは1973年に来日しており、東京では新宿厚生年金と渋谷公会堂で演奏した。前座がコスモス・ファクトリーだった。行きたかったナ。Clem Clempsonは数年前に来日したColosseumで観た。Steve Marriottの声を生で聴いてみたかった。山本恭司さんはロンドンのパブでMarriottが歌っているの観たとおっしゃってた、実にうらやましい!

この人、焼死したんだよね。Steve MarriottはPeter Framptonとのニューアルバムを録音しにアメリカに行った帰り、飛行機の中でしこたま酒を飲み奥さんと喧嘩をしてしまった。イギリスに着いてそのまま自分たちの家に帰ればいいものを、共通の友達の家へ寄った。そこでもスティーヴはまた酒を飲み、明け方また奥さんと言い合いになった。奥さんはその後寝ついた。いわゆるフテ寝だ。が、スティーブはタクシーを呼んで奥さんを置いてひとりで自分の家に帰ってしまった。これがマズかった!
そしてその朝、6:30頃バイクに乗って通りかかった人がスティーヴの家の屋根から炎が上がっているのを発見し、あわてて消防団を呼んだ。それは消防車を4台も必要とするような大火災となった。スティーヴはその中にいた。それがこのModsの象徴、天才シンガーの最後だった。

Humble

Scorpionsは『Virgin Killer』やら『Tokyo Tapes』やら『Taken by Force』やらエロ系、宗教系、ジャケットのトラブルが続いたのは気の毒だった。意匠自体はまったくイケているのに西欧的倫理観でヤラれてしまった。おまけに『Fly to the Rainbow』のイラストはカッコ悪いし…。前半はでジャケットで損をしていたバンドのひとつだった。
今聴いても実によろしいですな。わかりやすくて聴きやすい。それでいてテクニカル。これはUli Jon Rothがいた頃の話し。私にとってのScorpionsはUli時代を指すのだが、もちろんUli脱退後のScorpionsも大成功を収め世界的なバンドとしてロック界に君臨し続けている。Paul Gilbertもサウンド・チェックの時には必ず「Black Out」を弾くと言っていた。
でも、ドイツ人の友達に言わせると「古すぎる!」らしい。ま、フリージャズを平気で受け入れ、ジャーマン・プログレを生みだす進取の気性に富むドイツ人のことだからそんなことを言うのだろう。
というワケでUli脱退後のScorpionsは下段右から2枚目の『Love Drive』までしか聴かなかった。せっかくHipgnosisの作品(これもScorpionsの成功の証だと思う)なのに何というか、あまり趣味の良さが感じられなくて好みではなかった。きっとUliが参加していないので気に入らなかったんだろう。
そういえば1979年に2度目の来日を果たした時、中野サンプラザに観に行ってベースのFrancis Buchholz(ホルスト・ブッフホルツ)のピックを拾ったがどっか行っちゃったナ。普通の三角のピックだった。

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下段左端はNazareth。好きだった~。もちろん1979年に来日した時は渋谷公会堂へ観に行った。大好きだっただけにメチャクチャよかった。曲もいいし、ボーカルのDan McCaffertyのボーカルも断トツに素晴らしい。でも、このバンドに対する日本での認識度は驚くほど二分されているようだ。現に島ノンちゃんも「『Love Hurts(Nazareth最大のもしくはほとんど唯一のヒット曲)』以外は1曲も知らん」と言っていたぐらいだから…あの歩くハードロック事典の島紀史がですゾ!
でもわかるような気がするんだよね。日本でのNazarethをこうしてB級止まりにしているのはギターのManny Charltonのせいのような気がする。バンドの中心メンバーではあるのだが、あまりにもギター・ヒーロー然としておらず、そこが日本のロック・キッズを惹きつけなかったのではないかと私は睨んでいる。12枚目のアルバム『No Mean City』に元The Sensational Alex Harvey Bandの"Crazy" Zal Cleminsonを迎え入れたのはその証左ではなかろうか?Zalをスターにしてもうひと山当てようとしていたのでは?ところがThe Sensational Alex Harvey Bandも日本ではマイナーの部類であり、どうも効果が薄かったような気がする。私はThe Sensational Alex Harvey Bandが猛烈に好きですけどね。
余談だけど、数年前にIron Maidenの初代ボーカルPaul Di'Annoが来日した際、The Sensational Alex Harvey Bandの代表曲「Faith Healer」を演奏していた。スゴ腕日本人ミュージシャンがバックを務めたのだが、彼らにこの曲について尋ねるとみんなPaulのオリジナルと思っていたようだ。
さて、Nazareth。もちろんいかにもブリティッシュ・ハード・ロックらしいオリジナル曲がカッコいいのだが、時折取り入れるカバー曲のセンスがまたいいんだな。
例えばRy CooderもカバーしたWoody Guthrieの「Vigilante Man(自警団員)」とかThe Yardbirdsの「Shapes of Things」とかClaptonが取り入れて有名になったJJ Caleの「Cocaine(これはあの時の渋谷公会堂でも演った。最後の「コケーン」というところをお客さんに歌わせたことで覚えてる!)」とか、ZZ TOPの「Tush」とか…。でも極めつけは4枚目の『Loud 'n' Proud』に収録されているJoni Mitchelの「This Flight Tonight(『Blue』収録)」だろう。Joniのあの曲がこんなカッコいいハードロックになるなんて誰も考えないよ、普通。しかもたった4小節だけロックンロール風にアレンジしているところなんて鳥肌ものだ。
もうひとつ彼らが日本でパッとしなかったというかB級たらしめていた要因はジャケットではないか?内容の割にはあまりにもジャケットが安易だったと思うよ。電力会社の広告のような『Razamanaz』、鳥類図鑑のような『Loud 'n' Proud』、中華料理屋の看板のような『Rampant』、特段カッコいいとは思えないイラスト(きっと有名な人が描いてるんだろうねェ)の『Hair of the Dog(これって「向かい酒」っていう意味)』、『Except No Mercy』、『No Mean City』等など。恐ろしく一貫性がない。
意外にもHipgnosisにお願いしてデザインしてもらったていたのが下段左端の『Close Enough for Rock 'n' Roll』。人気ミュージシャンが乗った車に群がる追っかけファンという設定なんだろうが、残念ながらこれもイマイチだった。
Nazarethは現在も活動している。聴いたことがない人には70年代のアルバムを何か是非聴いてもらってロック・ボーカルの魅力を再認識してもらいたいものだ。
ちなみに昔の写真を見るとManny Charltonは1959を使用しているようだ。

Nazareth

上段左から2番目は『Caravan to Midnight』。Robin Trowerだ。

Robinはソロ・デビュー後最初の数枚は何と言うか無機質なオブジェみたいなFunky Paulという人のデザインのジャケットが続いていた。別段あれがいいと思ったことはないけれど、あのシリーズのあのデザインははすごくRobin Trowerのイメージになっちゃっているからジャケットは恐ろしい…。

Sigh

そしてこのソロ7作目がHipgnosisとなった。タイポグラフィと言っていいのかレタリングだけのデザインがスッキリしてカッコいいね。

ところで、昔の盤のクレジットを見ると「Robin Trower is : Reg Isidore (Drums)  James Dewar (Bass and Vocal)  Robin Trower (Guitar)」ってなっているけど、もしかして「Robin Trower」ってバンド名として扱っていた時期があったのかしらん?Alice Cooperみたいに。このJames Dewarの声が男性的ですこぶるイイんだよね。曲の良さも相まって本当にいいバンドだった。でも1977年の来日公演は見逃した。サンプラ3デイズだったんだゼ。ステッカーも配られていたのに…。
SHARAさんもRobin Trowerのファンでサ、いつかEarthshakerのライブで音出しのチェックの時、チラリと「Little Bit of Sympathy」を私のために弾いてくれた。
RobinもJimi HendrixのフォロワーだけあってガチガチのMarshallプレイヤーだ。そして、私はそれを誇りに思うね。この人、すべての弦のチューニングを全音下げているんだって?知ってた?昔から1959の人だけど、VintageModernも使っていた。

Robin

そう、Rainbowも後半はHipgnosisだったんだね。『Difficult to Care』。ちなみにこのアルバムの1曲目の「I Surrender」はさっき出てきたArgentのRuss Ballardの作品。「Since You Been Gone」もそうだ。

1976年、生まれて初めて行った外タレのコンサートがBlackmore's Rainbowだった。もう何回かマーブロでこの辺りのことは書いているんで今回は割愛。でもLukeさんも行ってたんだって。中段左からの3枚が該当するんだけど、デザインはチョット…。この頃(1981~1982年)になるとHipgnosisのクリエイティビティにも翳りが見えて来ているような…実際この後、1983年にHipgnosisは解散してしまうのだからこの見方はあながち見当違いでもあるまい。

Care

大御所もHipgnosis。

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記憶違いだったのが上段左端のPaulの『Wings Over Ameria』。何がって、このライブ・アルバム、3枚組なのに普通のゲイトフォールド(ダブル・ジャケット)なんだよね。『Yessongs』とまではいかないまでも、もうちょっと豪華な装丁を望むのが人情ってもんでしょう、高いんだからレコードは…。Georgeだって『All Things Must Pass』の3枚が(2枚でもよかったような…)豪華な箱に入れられていたのに、天下のPaulのライブ・アルバムがただのゲイトフォールドだなんて…。

America

そこで。「しょうがないか…」と独りごちたのは、Todd Rundgrenの『Todd』。Todd全盛期のクレイジーぶりがいかんなく発揮された佳曲満載の名盤。しかし、『Todd』は2枚組にもかかわらず何とシングル・ジャケットだった。LP2枚を仕切る白い紙が入ってるだけ。理由はこのアルバムが制作された1973年当時、世界的な紙不足だったから。もし、見開きだったらToddはそこにどんなデザインを施したであろう。

ちなみにToddのセカンド・アルバム『Runt. The Ballad of Todd Rundgren』の内ジャケってRon Maelがデザインしているんだよね。Ron MaelはSparksのお兄ちゃんの方。そういえば初期のSparksのジャケットこそHipgnosisらしいような気もするがいかがなものだろう?で、勘違いというのはこのPaulの3枚組もその紙不足の時期に発表されたのでゲイトフォールドに倹約されたのかと思っていたが、このライブは1976年。全然時期が違っていた。
Todd
さて『Wings Over America』。さびしいゲイトフォールドながら飛行機のドテっ腹を大胆にあしらったデザインはなかなかにカッコいい。ただ、内ジャケが観光地のみやげもの屋で売っていそうなペナントのようなややチープめのイラストがいただけない。10ccの『How Dare You』みたいに内ジャケも凝ることができなかったのだろうか?それともどうしてもあのイラストを使わないといけない事情があったのかな?

そのかわりといっては何だが、ダスト・ジャケットがイカしてる。黒字に白い細い模様。これが6面。これは飛行機のハッチが開いて徐々に外の光がもれて来るところ。「いよいよWingsが到着したよ~!今夜はRock Showだよ~。ライトは赤に緑にストロベリー・ワインだよ~」というところか?クールなアイデアだ。

Us

アーティストの写真を使わないHipgnosisだが、さすがにクライアントがSir Paul McCartney(Queenのミュージカル『We Will Rock You』の中で誰かが「ポール・マッカートニー」の名を出すとすかさず「サー・ポール・マッカートニーって呼ばなきゃいけないんだよ!」というシーンがあって印象的だった)ともなると事情が異なるのか、『Wings at the Speed of Sound』を除いては『Band on the Run』以降、主人公がジャケットに登場している。

『London Town』までのジャケットはどれもステキ。この『London Town』の写真は合成だね。3人とTower Bridgeは別々に撮られたものでしょう。

London

上段左端『Band on the Run』はコメディアン、ボクシングの世界チャンピオン、コラムニスト、俳優等の有名人が写っているが、ジェームス・コバーンとクリストファー・リーしかわからんな。考えてみるとこれは『Sgt. Peppers』のPaul流焼き直しなのかね?このアルバムのクレジットをよく見てみると、Hipgnosisの名は出て来ず、Storm ThorgersonがSpecial Thanxとしてクレジットされている。
そのとなりの『London Town』にもHipgnosisのクレジットはなく、カバー・デザインと写真にはPaul, Linda and Dennyの名前があり、Aubrey Powellの名がCover Coordinationとしてクレジットされている。なぜHipgnosisの名前がこうも出ていないのだろう?

こうなりゃもっと調べてみよう!とウチの貧相なレコード棚からゾロゾロPaulのLPを引っ張り出して来た。
中段右から2番目の『Press to Play』。George Hurrellというハリウッドの写真家が実際に1930~40年代に使用されていた箱型カメラで撮影したという写真。うまく撮るよネェ~。ここにもHipgnosisの写真はない。

その左隣が冒頭で指摘したギターが写っているジャケット。

上段右端の『Tug of War』。写真はLindaでまたCover CoordinationとしてHipgnosisの名前が出ている。よかった。
『Wings at the Speed of Sound』、探したんだけど見当たらなかった。持ってたハズなんだけどな…。

そして、『Venus and Mars』。これは見紛うことなきドHipgnosis。いいね~。これにはポスターもついていて、下のようなインナージャケットにLPが包まれていた。いいね~。

ちなみにこのアルバムの「Rock Show」という曲には「behind the stacks you glimse an axe」という一節が出てくるが、この「the stacks」というのは間違いなくMarshallのことだろう。「an axe」というのはギターのこと。ここではベースかな?「axe(斧)」という意味だが、広く楽器のことを指すスラングのようで、Charlie Parkerの伝記『バードは生きている(Bird Lives)』の中でParkerがそばにいた人に「ちょっとオレのアックスを取ってくれないか?」というシーンが出てくる。

Paulの歌は、Marshallの壁の隙間からお気に入りのミュージシャンの愛器が見え隠れして否が応でもショウの前の興奮が高まる…という意味だ。

本当にコンサート開始直前とテンションというのはいいものだ。客電が落ちた瞬間の割れんばかりの歓声。私はいつもこの歓声を聴いてから耳栓をすることにしている。耳栓をするのは、写真を撮っているとどうしてもPAスピーカーに前に立たなければならないことも多いため耳の防護をするためだ。

また、プレスピットの入っていると1960のヌケのいい音が耳を直撃するからね。いくら自社の製品でも身体を悪くしちゃ意味がない。酒の会社で働いているからといって朝から晩まで飲んでたら内蔵をコワしちゃうのと同じ。

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そして、これはしおりかな?ステッカーもおまけに入っていた。この黄色と赤の玉が金星と火星を表しているんだろうけど、そもそも何で金星と火星なんだろう?…と今さら不思議に思って調べてみたんだけど、違ってたらゴメンね。ボッティチェルリっていう15世紀のイタリアの画家がいるでしょう?あの有名な『ヴィーナスの誕生』を描いた人。会ったことないけど。この人の作品に『Venus and Mars』っていうのがあるんだって。そしてそれは「美と勇気」を表しているんだそうな。あるいは「女性と男性」という意味にもなるそう。Paulが込めた隠喩がこれなのかな?エ、ゼンゼン関係ない?ま、一応マーブロ豆知識ということで…。
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アツアツのポールとリンダの右となりはElton Johnのスタジオ録音9作目の『Captin Fantastic and the Brown Dirt Cowboy 』。1975年、Regi初の全米ナンバーワン獲得アルバムで7週間その座をキープした。(『Goodbye Yellow Brick Road(1973)』がとっくに1位になっていたのかと思ってた)
RegiというのはElton John、イヤSir Elton Johnの本名Reginald Kenneth Dwightのあだ名。ちょっと年配のイギリスの音楽ファンはエルトン・ジョンを「レジ」と呼んだりするようだ。というのもMarshallのおエライさんと会食をしている時、「どのミュージシャンが好きか」という話しになって、出るわ出るわ「あたし、ロッド!」とか「オレはなんと言ってもツェッペリンだね」とか…普通のオジサン、オバサンたちですよ。こういう瞬間に「ああ、イギリスだナァ~」とウットリしてしまう。するとそのうちのひとりが「あたしはレジ!」とお気に入りのミュージシャンの名前を言った人がいた。私はたまたま「レジ・ドワイト」が誰かを知っていたので間髪入れずレジの曲名を羅列して喜ばれた。言い換えるとイギリスでは特にマニアの人でなくてもElton Johnの本名を知っているということ。
ナゼ彼がElton Johnという芸名にしたかということには興味がなさそうだった。さすがのイギリス人もElton DeanやLong John Baldryともなると聞いたことがない名前のようだった。

シンガーソングライターのせいか、Elton John作品のジャケットは本人が登場しているものが多いといえよう。で、『Captain Fantastic』はEltonを思いっきりコミカルにデフォルメしたイラストで見応えがあるが、Art DirectionとしてDavid Larkhamという人とEltonの恋女房、Bernie Taupinの名がクレジットされている。そしてこのカラフルな素晴らしいイラストはAlan Aldridgeというイラストレーターの作品。この人は有名なPenguin Booksの表紙を多く手がけ、The BeatlesやApple Recordのグラフィック・デザインにも関わっていた。アレレ、どこにもHipgnosisの名前がクレジットされていないゾ…。と植村さんに確認すると、クレジットはされていないもののDirectionで協力したらしいという話しだ。さすが、植村さん!

 
ところで、今さらながら何の解説も必要ないと思うが、ヤケクソに多くの名曲を送り出したElton John。『Blue Moves』あたりまでは凄まじいまでの才能の発散だと思う。この人、どうやって曲を作っていたかというと、相棒のBernie Taupinが詩を書いて、夜中Eltonが寝ている間にピアノのところにおいて置く。翌朝、Eltonがどれどれとその詩を見ながらピアノを弾いてメロディを口ずさむ。フフフンと。すると、もうあれらの名曲ができちゃったらしいのだ。そのかわりチョコチョコっとやってうまくいかない詩は何の未練もなく片っ端からボツにしたらしい。
このことからわかるように、全曲ではないにしろElton Johnの曲は詩にメロディが乗って出来上がっているワケ。だから、Elton Johnの曲は歌いにくい…と私は思う。つまりメロディの大筋はもちろん変わらないが、歌詞に合わせて1番と2番の譜割りが著しく異なったり、ヘンなところで切れたりするためだ。あれはかなり英語ができる人か曲を知っている人じゃないと絶対にスラスラ歌えないと思うね。
その正反対がThe Beatles。歌詞が恐ろしくリズミックにメロディに乗ってる。だからメロディを知ってさえすれば、初めて歌詞カードをみただけでほぼ正確に歌えちゃう。多分、英語圏の人たちにはこのあたりがものすごく気持ちいいのではないかと私は思っていて、そのあたりもThe Beatlesのスゴさだと思う。偉そうなことはいえないが、英語を勉強すればするほどこれがわかってきた。やっぱりその国の歌はその国の言葉で歌うとが一番なんだね。こういうこともあって最近の洋楽離れが顕著なのかな?でもロックはどこまでいっても欧米の文化だからね。このことも忘れてはなるまい。

あ、このイラストにも楽器が出てるね。でもHipgnosisメインじゃないから…。

Captain

このセクションは何と言ってもWishbone Ashか…。
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上段は左から2番目から右端、中段は左から2番目を除いて、さらに下段では左から2番目までがWishbone Ash。徹底してHipgnosisのデザインを利用したグループだ。Wishbone Ashは「世界一美しい音を出すロック・バンド」と言われたが、Hipgnosisもショッキングなデザインを提供していないのはその評判を聞いてのことかな?
Wishbone Ash好きでしてね。高校の時よくコピーして演奏してた。それだけにマーブロでも何回か取り上げてきた。Marshall使わないのにね!

Black SbbathとHipgnosisの組み合わせは意外だよね。Sabbathといえば『Sabbath Bloody Sabbath』とかキーフの『Black Sabbath』のようなおっかないイメージが強いもんね。

下段右から2番目の『Thechnical Ecstacy』も奇抜なデザインだと思う。エスカレーターですれ違うロボットが光線出し合って戦っている図なんて誰が考え付くというのだろう?このロボットはイラストレーターがデザインしたものだが、実際にこのロボットを描いたのはイラストレーターではなかったらしい。写真っぽい雰囲気を出したかったということだ。エスカレーターはイラストっぽいけど写真素材なのだそうだ。
イラストと写真の中間のようなタッチもHipgnosisの得意とするところだろう。

Tech

下段右端もBlack Sabbathの『Never Say Die!』だ。ナンカわからないんだけど、このジャケを見るとJoan Baezを思い出しちゃうんだよね。
私はBlack Sabbathはあまり得意とするところではないが、2010年にロンドンで観たHeaven & HellのTony Iommiは強烈だった。

Never

さかのぼって上段左はDef Leppardの『High 'n' Dry』。聴いたことありません、スミマセン。1981年の作品。っていうとHipgnosisの最後期に近い。でもすごくHipgnosis臭を感じますナ。何というか新旧のHipgnosisのエッセンスを強引に組み合わせたような…。

Def

ここも色んなのがあるな~。

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上段左から2番目はPeter Framptonのソロ3作目の『Somethin's Happening』。久しく聴いていないけど、コレ結構いいんだよね。ジャケットはお得意の「水」ものだ。「水もしたたるいい男」ってとこか?PeterもMarshallのカタログに載る位Marshallの人だ。ジムと仲がよかったらしい。

このアルバム発表の2年後、Peterは2枚組のライブ・アルバムをリリースする。それがアメリカだけでも600万セットを売り、結果、世界でも最も売れたライブ・アルバムとなった。言わずと知れた『Frampton Comes Arrive』だ。Peterはこのことを少しでも予想していたのだろうか?Hipgnosisも「しまった!」と思ったに違いないだろう。『Comes Arrive』のジャケットはHipgnosisの作ではない。

このジャケットには表1に使われた写真の前後の写真が掲載されていて、思い切りシャッター速度を速くして連写で撮ったことがわかる。ものすごくうまく撮ったよね。ま、やり直しは何回かあったのかもしれないけど、その都度服を着替えて、髪を乾かして…結構面倒だったんじゃないかな?

Frampton
中段真ん中の馬のデザインは一時Bernie Marsdenが在籍していたことで知られるBabe Ruthの2作目の『Amar Caballero』。まずバンドの名前がチョット…。日本だったら「長嶋茂雄」か「王貞治」というバンド名になるか。でも、逆光で撮って黒ツブレにした馬を絶妙なレイアウトであしらった。すてきなデザインだと思う。

Babe2_3

さて、このバンド、何とも言えない味わいがあって、悪く言えばすべてが中途半端というか何をやっても盛り上がらないし、何も残らない感じ。3作目まで活動の中心となったAlan ShacklockというギタリストとボーカルのJennie Haanの2枚看板というスタイル。
何故かファーストアルバム(それでも1972年、Abbey Road Studioで録音してる)ではZappaの「King Kong」をまんまカバーしていたりするインストも盛んなバンドなのだが、何せ盛り上がらない。このギターの人、ジャズを勉強していることは明らかなんだろうけど、薄味でアドリブで聴かせ通すほどの力量はない。変にスパニッシュ・フレイバー(一般的にはこれがこのバンドの持ち味とされている)を取り入れたりしちゃってこの辺りもテイストを中途半端にしてしまっていると思う。
それに加えてボーカルのJennie嬢がまた凄まじい。ジャニス・フォロワーのつもりなのかな?度胸をキメて張り上げる金切り声がいかにも聴いてて辛い…。さらに、ストリングス、ホーンと贅沢に色んな楽器を放り込んでいるのだが、アレンジがまったくまとまっておらず聴いていて目が回ってしまう。どうだろうか?これだけ書くと聴いてみたくなるでしょう?不思議なバンドであることは間違いない。1973年当時、イギリスの若者はコレを聴いてどう感じたんだろう?

こちらはファースト・アルバム。これはHipgnosisではなくてYesやGreenslade、Uriah Heep等の名作のジャケット・デザインでおなじみのOrger Deanの作品だ。

Babe1
AC/DCもHipgnosisがあったんだね~、知らなかった!下段左端の『Dirty Deed Done Dirt Cheap』。「いともたやすく行われるエゲツない行為」…『ジョジョの奇妙な冒険』に出てくるスタンドの名前。略してD4C…ってナンノコッチャ!(下の子に教わりました)

『Dirty Deed Done Dirt Cheap』の本当の意味は「人のイヤがる仕事ほど報酬が少ない」という意味。
Ac

そしてLed Zeppelin。
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出ました御大、Led Zeppelin。どれもがあまりにも有名なデザイン。上段全部と中段左端。考えてみるとこのバンドもメンバーがジャケット表1に登場しないバンドだった。『II』と『III』の小窓ぐらい?でも『III』はクルクル回る中の盤を留める鋲がとなりのレコード・ジャケットを傷つけやしないかと心配させられたゾ。そういう意味ではストーンズのアレも迷惑だ。でもいいよね今の人たちはこんな心配しなくて…だってジャケットないんだもん。
さて、ツェッペリン。『Presence』はStorm Thorgerson自身のベスト5に数えられるそうだ。確かにこの黒いヤーツ、若いころ「一体なんだ?」ってみんなで語り合ったっけ。これとまったく同じ位置にあったのがキューブリックの『2001年宇宙の旅』のモノリスとかいうヤーツ。何だろね、こういうの?んあことはお構いなしに「For Your Life」が好きだった。

Presence

『Houses of the Holly』は徹底的に写真に色を被せて絵のイメージにしたかったらしい。これもお得意のパターン。で、正反対は『Coda』。珍しくタイポグラフィのみ。
Holy

Pretty Thingsも本国イギリスではトップ・バンドのひとつに数えられるが、日本ではまったくダメでしょう。『S.F.Sorrow』なんて名盤扱いの作品も残しているが、人の口に上ったのを聞いたことがない。

『Silk Torpedo』…「絹の魚雷」か。シャレてるな~。これを見るといつもジョン・ヒューストンの『アフリカの女王』を思い出す。大戦で著しい戦果を挙げた軍艦の名前か何かと思ってちょと調べてみたがわからなかった。

Silk

『Savage Eye』。身体パーツ・アップの極地的なデザイン。Hipgnosisの真骨頂だ。双方最高に素敵なデザインだ。でもね、内容はあまりおもしろくないの…。どうもPretty THingsって受け付けないんだよな~。

Eye

下段左から2番目はClimax Chicago Blues Bandの『Tightlly Knit』。「Chicago」とか言ってるけどこのバンドはスタッフォード出身のイギリスのバンド。
Climax Chicagoとか名前を変えたりもしたが、1968年デビューで何と今でも活動している。1970年にはClimax Blues Bandと改名。ナントならばアメリカのChicago Transit Authorityというバンドからプレッシャーを受けたからとか…。で、Chicago Transit Authorityとは後のChicago。
このジャケットのデザインは、スキンヘッドのオッサンがソックス、つまりニットを口に入れている図で意味が「窮屈なニット」なんだけど、要するにニットがキツイくなるのが普通だけど、これはその反対をやっているところなんでしょう。ニットを口に入れてニット側が窮屈…という。これは完全に推測。何かもっと違う隠喩みたいなものがあるのかも知れませんな。でもこれもHipgnosisの中ではかなり有名な意匠でしょう。
ところでこのバンド、いいんだゼェ~。もちろんドロドロのブルースも演ってるけど、かなりバラエティに富んだレパートリーを持っていておもしろい。

Pete Haycockというギターが実に素晴らしい。この音はテレキャスターかな?ツルンツルンのクリーンで教科書的なブルースを弾いたかと思うとワケのわかんないハードなインスト曲を演ったりと実に芸達者。ジャケットは『Tightlly Knit』の方が全然いいけど、この2年後の1973年に発表した『FM Live』は聴き応え満点でっせ!

Chicago

いよいよ最後のセクション!

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上段左端のSweetの『Desolation Boulevard』はヘタをするともっともHipgnosisらしくない作品かも。上述の通り、珍しいポートレイト型デザインだ。これどうしちゃったんだろうね。展示されているのはオリジナルのUKバージョン。USバージョンもデザインに大差はないが、上部のタイトルとバンド名のデザインが異なっていた。収録曲も違う。1974年、Sweeのt3枚目のアルバム。
前作『Sweet Funny Adams』がイギリスでゴールド・ディスクを獲得して勢いづいてた時なので「オレたちを全面にドンと出しちゃって!」なんてジャケット・デザインに対するリクエストがあったのかも知れないね。その甲斐あってか、「The Ballroom Blits」「A.C.D.C.」「Fox on the Run」等の代表曲を収録したこのアルバムはアメリカとカナダでゴールド・ディスクを獲得した。
この後、『Give Us a Wink』、『Off the Record』、『Level Headed』となかなかイカしたジャケットをまとった作品を発表したが、それらはHipgnosisの仕事ではない。特に後者2枚はオーディオ機器をテーマにしたアイデアが秀逸で、『Off the Record』は針がレコード盤の上を走るところなんだけど、下からトーンアームを見上げるデザインになっていて何ともカッコいい。『Level Headed(米盤)』はカセット・テープ・レコーダーのヘッドとピンチローラーを横から見て思いっきり拡大したイラストだ。しかし、今の若い人たちはそれらを見てもそれが何であるか判別できないのではなかろうか?

以前、大好きなThe Moveがイギリスではロック・バンドではなく、ポップ・バンド扱いされていたことをSteve Dawsonから聞かされて驚いた。そこで、もしや?と思い、Sweetが本国でどういう扱いをされていたかまたSteveに尋ねてみた。するとまたしても驚くべきメッセージが届けられた。ちょっと彼のメッセージをそのまま引用してみよう…

「あ~、Sweetね!実は俺が1985年にBrian Connollyの方のSweetのオーディションを受けたことがあるって信じられるかい?(この頃SweetはギターのAndy ScottのSweetとBrian ConnollyのSweetに分裂して再結成された。今のWishbone Ashみたいなもんですな。Brianの方はオリジナルメンバーが自分ひとりだった)Brianはアルコール依存症で退院したばかりで歌うことはおろかしゃべることもままならなかったんだ!髪はブロンドだったけどね。結局、仕事はもらえなかったけどそう気にはならなかったナ。」
「それから何年かして、私がThe Animalsにいたとき両方のSweetとプレイしたよ。特にドイツでね。AndyはThe Animalsの大ファンでとても私たちは仲良しになった。その頃、Brianの容態はとても悪くなっていて、小刻みに震える手を止めることもできなくなっていた。とっても悲しかった。一方、Andyの方は順調で70年代のオリジナルのSweetと変わらなかった。AndyはずっとMarshallを使っているよ!」

「Sweetは美しいハーモニーを得意としたホンモノのヘヴィ・ロック・バンドだった(POPバンドではないということ)。でも彼らのヒット曲の多くはNicky ChinnとMike Chapmanというソング・ライティング・チームの作品だったんだ(Suzi Quatroにも曲を提供しているイギリスの有名なソング・ライティング・チーム。「Can the Can」は有名)。でも、かれらの『Sweet Fanny Adams』は最高のアルバムだったよ。私はSweetやSladeが大好きだったけど、Led ZeppelinやDeep Purpleほどじゃなかった。」

本場イギリスではこういう話しがゴロゴロしている。

1986年にロンドンのMarqueeで録音された『Live at the Marquee』では何故かELPアレンジのAaron Coplandの『Fanfare for the Common Man』をほぼ完コピで演奏していることに加え、ショウ本編最後の「Fox on the Run」のエンディングが「21st Century Schizoid Man」だったりして楽しい。

これはまったくのヤマ勘だが、もうそろそろ日本の音楽シーンも変わるのではなかろうか?これだけたくさんの人たちが現在のロック・シーンに幻滅を感じていれば夜明けも近いかも知れない。

もしその時、日本の音楽シーンが先祖返りをしようとするのであれば、ブームとしてのへヴィメタル時代の再来を期待することはもう難しく、SweetやSladeのようなポップ色の濃いハード・ロックに収束していくのではないだろうか?カッコいいリフ、覚えやすく口ずさみたくなる良質のメロディ、達者な演奏、そしてギター・ソロ、ロックがかつて持っていた危険な香りあるいは「毒」のようなもの…何といっても曲のクォリティが圧倒的に高い。そういうロックだ。

たとえメンバーが曲を作っていなくても内容さえよければよいではないか?優秀なソングライティング・チームの作品で成功したバンドはいくらでもある。Aerosmithもそれで復活した。もうプロに任すべきだ。
SweetやSladeが活躍した70年代前半、日本ではロックはまだマイノリティだったはずだ。ロック(っぽいもの)がこれだけ跋扈している現在の環境下において、とにかくこれらの音楽を再度掘り起こし、見直し、味わうことこそ急務なのですよ!いつも言ってることだけど…。

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上段真ん中、Be Bop Deluxeは『Futurama』もHipgnosisだった。クレジットにはCover Art and Design George Hardie、Photography Malcon Taylor Jr.となっているがこのイラストやタイポグラフィはまさしくHipgnosis。

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Vinegar Joeの『ROck N Roll Gypsies』。これもHipgnosisだったのか。どちらかというとKeefの写真みたいだ。これも聴きたいんだけどなかなか出っくわさないなァ。昔MarshallのデモンストレーターをしていたGeoff WhitehornがよくElkie Brooksのバックをやっていた。

まだ結構楽しみが残っているな。

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下段左から2番目はDire Straightsのセカンドアルバム『Communique』。初めてこのバンドが出てきた時、あのストラトキャスターの音にシビれたネェ~。でも歌が苦手で夢中になったことはなかったナ。

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これでおしまい。でもDire Straightsで終わるのイヤだな…(ファンの皆さん、ごめんなさい)

Hipgnosis作品でおそらく最も有名と思われるデザインを掲げて終わりにしよう。

レコード会社は『Obscured by Clouds(雲の影)』や『Atom Heart Mother(原子心母)』の斬新な意匠に辟易しており、はじめこの稀代の名盤いタイポグラフィを用いたトラディショナルなデザインを希望していたらしい。そんなことはおかまいなしにこの度亡くなったStorm Thorgersonと相棒のAubley PowellはRick Wrightからのリクエスト、「知的でこザッパリして、それでいて高級感あふれる」デザインを探し求めた。そして、ストームがオウブリーとのブレインストーミングの中で見たプリズムのことを思い出した。

当初、デザインのアイデアは7通りあったが、フロイドのメンバーは見事全員ストームが提案したプリズムのアイデアに同意。それはフロイドのステージの特徴であったライティング、作品の歌詞、そしてリック・ライトのリクエストを満足していたからであった。Roger Watersのアイデアでプリズムを通過したスペクトラムが見開きのジャケットを貫くようにし、ストームはレコード店のディスプレイを考慮して、ジャケットがいくつも連結するようにデザインした。

やっぱりカッコいいデザインだよね。Hipgnosisが作ったジャケットはどれもTシャツに持って来いだと思う。本当にどれでもTシャツになっていてもおかしくないが、あまり見たことがない。でも、この『狂気』だけは別だ。

私は熱心なフロイド・ファンではない。ちょっとフォーキーすぎるのね。またはテクニカルでないというか…。この歳になっても抒情派より技巧派でKing Crimsonの方がずっと性に合っている。でも『The Wall』までのアルバムはほとんど持っているし、やっぱり『Meddle』、『Attom Hear Mother』、『The Dark Side of the Moon』、『Wish You Were Here』なんてのは問答無用で素晴らしいと思う。Hipgnosisの処女作『A Saucefu of Secretsl』や『More』も好きっだったりする。いつ聴いても馴染み深く、そして新鮮なのだ。

そして、これらの名盤がHipgnosisの手によるものでなかったとしたら…かなりレコード棚のPink Floydの枚数は少なかったかもしれない…。

Pf

色々と見て来たけど、ん~、改めてHipgnosisのすごさとジャケットの楽しさを認識したな。

でもさ、ここでちょっと反対のことを考えてみようか?本当に音楽のフィジカル・プロダクツがこの世からなくなってしまったらどうなるんだろう?

レコード棚やCD棚からすべて中身がなくなった光景を考えてみよう。当然、あの大好きな中古レコードのカビの匂いもおさらばだ。レコード・プレイヤーはもとよりステレオもない。イヤホンで聴けばいいじゃん!パラゴンは場所取るぞ~。もう中古レコード店のバーゲンの情報を気にしなくていいし、11時前にディスク・ユニオンに並ばなくてもいいんだゼ!

ついでに本も全部捨てちゃおう!電子書籍があるじゃないか!いいぞ~、本に場所を占拠されなくて。もう紙で手を切ったりしないし、本が陽に焼ける心配もない。パソコン、パソコン!何なら晩飯もパソコンに作ってもらおうじゃないか!そうじもパソコンにやってもらおう。

アレ?部屋の中、パソコンだけになっちゃった!これが便利か?面白いか?楽しいか?私はまっぴらゴメンです。(でも、マーブロってパソコンがないとできないのよね~!)

つまり、言いたいことは何かというと、良いものは誰が何と言おうと後世に伝承しよう!とうこと。ここで昨日の記事の冒頭を読み返していただきたい。Hipgnosisの芸術を消滅させてはならない。

名作・名盤の数々をありがとう、Storm Thorgerson!安らかにお眠りください。

Music Jacket Galleryの詳しい情報はコチラ⇒金羊社オフィシャル・ウェブサイト

(一部敬称略 取材協力:植村和紀氏、金羊社奥平周一氏)

2013年4月22日 (月)

【Music Jacket Gallery】緊急特集!Hipgnosis Collection~Progressive Rock Works

2013年4月18日、Hipgnosis(ヒプノシス)の中心人物であるストーム・ソーガソン(Storm Thorgerson)が永眠した。

ヒプノシスはピンク・フロイドの『神秘(Sauceful of Secrets)』を皮切りに膨大な数のレコード・ジャケットのデザインを手がけ、ビジュアル面で数々のロックのレコードの名作の誕生に携わった。つまり、LPレコードのジャケットをなくてはならないアートの域にまで高めたデザイナー集団だ。

いつもマーブロで大騒ぎしているように、音楽配信が普及し、LPはおろかCDもフィジカルプロダクトとしての地位を脅かされるようになってしまった昨今、ストーム・ソーガソンの逝去は音楽界にあまりにも大きな打撃を与えることになる。

こうなるとジャケット擁護派たちは以前にも増してレコード(この際CDでもいい)ジャケットの必要性と意味と楽しみ方を喧伝する必要があるのではないか?

そこでマーシャル・ブログは緊急特集として、2011年の初頭に開催されたMusic Jacket Galleryでの『ヒプノシス展』を素材にストーム・ソーガソンへの追悼と感謝の意味を込めて(私的に)その偉大な業績を振り返ってみたい。

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古くからのMarshall Blogの読者のみなさんにはもうすっかりおなじみのことと思うが、Music Jacket Galleryは大田区の鵜の木にある大手印刷会社、金羊社の4階に設置されたレコード・ジャケット並びに特殊CDジャケットやボックス・セット専門の博物館で3か月毎に展示品が入れ替わる。

展示のアイテムは先日ご登場いただいた植村和紀氏の個人コレクションである。3か月毎に展示のテーマが決められ、植村氏の6万点にも及ぶコレクションの中から該当するアイテムが選ばれギャラリーに陳列されるのだ。

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今回はヒプノシスの作品を2回にわたって紹介するが、まずはあらためてジャケットの重要性について考えよう。

文明や科学の進歩につれ、「利便性を追求するがゆえに何か大切な物を失う」という話しをよく聞く。

その「何か」の代表は「風情」と「環境」だろう。風情と利便性を天秤にかけて圧倒的に利便性に傾く「何か」も当然多く、だからこそたくさんの発明品が重宝され、地球規模の経済活動の基盤になっているわけだ。

その場合、利便性チームは「利便性」そのものの他に「時間」という大きな特典を同時に獲得しているケースが多いことに気付く。時間の節約も利便性のひとつか…。

例を挙げれば航空機。極端な例だが長距離の移動が飛躍的に便利になった分、強いて言えば「船旅」という風情を失った。そういえば飛行機がキライなデビッド・ボウイが初めて来日した時は船でやって来たのではなかったか?
ま、このケースは風情よりも利便性の方がはるかに優位であることは明らかなので文句は言うまい。いわゆる昭和の三種の神器(洗濯機、冷蔵庫、白黒テレビ)あたりも同様だ。

しかし、少々の不便さには目をつぶってでも、どうしても残しておいた方がよいものもこの世の中にはたくさんある。
…と聞いた風なことをしかつめらしく言うのはここまでとして、ここにそのアイテムを提唱しよう。

それはLPやCDのジャケットである。

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LPからCDへ完全に移行して久しい。私はほとんどジャケ買いをしないが、LPジャケットの魅力は誰に説かれるまでもなく何物にも替えがたいと思っている。
ま、正直一旦CDの利便性を享受してしまうとジャケットのサイズぐらいは目をつぶってもいいかな?ぐらいに思っているのが私のスタンス。実際、とんでもなくアクロバチックな意匠をブチ込んだLPも顔負けのCDジャケットも多数存在しているし…。

音質うんぬんということでは、完璧にLPが勝る。これはもう間違いない…と確信できる体験をしてしまったのだ。これはまた別に機会に…。

その音楽パッケージ、今、これらは恐ろしい事実に直面しているのだ。それは、音楽配信によってLP、CDの別なくジャケットもろとも盤そのものが近い将来なくなってしまう可能性があるということなのだ。

数年前にDVDプロダクションのアメリカ人と話していて彼らが「Physical Products(物質的に存在する商品)」という言葉を使っていることに気がついた。耳にした時は何ともイヤな気分になったもんだ。実際にアメリカではCDショップはもう大都市にしかない。ロンドンはSohoの裏路地あたりにゴチョゴチョ残っているけど大手のショップはすっかりなくなってしまった。

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どこが便利なのかサッパリわからないし、有害性の方ばかり目に付いてしまうので音楽配信の利便性など考察する気にはならないのが正直なところ。百歩譲って家にいながらにして聴きたい音楽をゲットできるという点が少しは便利なのかもしれないが、ジャケットを必要としないというのはどうしても解せない。ジャケットの魅力を捨て去っちゃっていいのであろうか?

洗濯機と洗濯板ほど利便性に差があればよいが、配信とCD(LP)を比べてもCDチームが苦杯をなめる必要は全くないように思うのだ。洗濯と手でこなすのは実に重労働だ。おしんもさぞかしツラかったろう。

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経済的な理由で中古CDしか買わない私なんぞはもはやアイテムそのものよりも、時間をかけて目標のモノを探す作業の方にロマンと愉しみを感じてしまうのね。それも「このアイテムはいくらいくらまで!」と自分を律する。例え探しているアイテムに出くわしても自分の設定した値段より高ければ男らしくその場は流す。少しだけ高い場合は…結構自分に甘くしちゃう!少しだけ高いのを嫌って流してしまうとこれが後々何年も引きずる大きな禍根となって臍を噛む思いをするからね。

それではどうやって欲しいアイテムを見つけるか…。これはもうライナーノーツを熟読するかディスク・ガイド系の本に頼るしかない。もうそこら辺の一般的な音楽雑誌をヒックリ返しても自分が興味を持てそうなアイテムは出てっこないからね。でも最近はライナーノーツ読まなくなったナァ。何か調べるのもインターネットの方が便利だもんナァ。

そうやって自分の好みに合いそうな作品を見つけて中古レコード屋さんに行って探す。これの繰り返し。

その昔、何年も何年も探して手に入らなかったアイテムをとうとう見つけた。Tony Williamsの『Emergency』だ。その頃、まったくこのアイテムは流通しておらず、レコードにはプレミアがついて高価で取引されていたハズだ。

そしてある日、数寄屋橋の中古レコード店でまだエサ箱(レコード陳列棚)に入る前の状態のものを発見した。値段は1,400円(消費税がまだない頃)だった。願ったり叶ったりでレジカウンターの中にあったそれを頼んで売ってもらった。これは本当にうれしかった!

35年位こんなことを繰り返している。だから、音楽配信なんてこと存在自体信じられないのね。やっぱり音楽は回転が必要なんですよ、回転。レコードもCDもカセットもオープンリールもMDもLカセットもソノシートもみんなどっかが回ってたでしょ?エジソンが蓄音機を発明して以来、音楽は100年以上グルグル回り続けているのだ。それがナンデェ、PCは!回らないじゃネーカ!ナニ?ハードディスクが中で回ってるって?「回ってる感」がまったくないッ!

「何だってマーシャル・ブログがこんなこと提唱しなきゃいけないんだよ?!」とイブカシむ読者も多いことだろうが、とにかく音楽を、黄金時代のロックをもっともっと若い人に知って、そして楽しんでもらいたい一心なのだ!

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元来、レコード・ジャケット(スリーヴ)というものは、中に入っているレコード盤を保護するのが一番の目的だ。太古のレコード・ジャケットは演奏者の顔写真やグループ名や曲名を載せただけというデザインが多かった。特にソウルやR&B系のレコードのジャケットは徹頭徹尾コレだよね。

その点、ジャズはBlue NoteやPresitgeに救われている。でもそのBlue NoteにしたってFrancis Wolfが撮った人物写真にReid Milesが色を乗せてちょっとレイアウトを捻っただけタイプ(『Blue Train / John Coltrane』、『Newk's Time / Sonny Rollins(何故かBNのRollinsはほとんどがこのパターンだ)』など)が大半で、タイポグラフィもの(『Somethin' Else / Cannonball Adderley』、『Us Three / Horace Parlan』など)、あるいは線や模様を並べただけのシンプルなパターンもの(『Patterns in Jazz Gil Melle』、『Jutta Hipp with Zoot Sims』など)ばかりだ。中には無名時代のウォーホルのイラスト(『Blue Lights / Kenny Burrell』、『The Congregation / Johnny Griffin』など)なんていうのもあるが、ワザワザ莫大なコストをかけて制作していたワケでは決してない。それなのにあれほどカッコいい意匠を捻り出せたのはセンス良さと時代の空気のなせるワザか…。

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ようするに昔は「わざわざレコードの入れ物なんぞに金をかけることはない」という思想だったに違いない。それがジャケットが内容を象徴したり代弁したりする中身同様の「作品の一部」として重要視され出したのは60年代、The Beatlesが出て来たころからだという。『With The Beatles』のハーフ・シャドウとかね。またしてもFab Four! このイギリスの4人組はポピュラーミュージックを聴覚的にだけでなく視覚的にも変えてしまったのだ。

それとHipgnosisの偉大な業績だ。

そうした恐ろしい早さで商業的にも芸術的にも多様化し成長するロックに合わせてジャケット・デザインもその社会的地位を飛躍的に上げ、百花繚乱、玉石混交、多くのファンの目を、間接的に耳を楽しませることになった。

またLPに限っては、12インチという大きさが泣かせる。あれより大きくても小さくてもいけない。名器1960に見られるようにギターアンプの代表的なスピーカーのサイズも12インチ。「12インチ」という大きさは何か男たちの心を(女性コレクターの方、スミマセン)揺さぶる何かを持っているのだろうか?それは考えすぎか。もちろんLPのサイズはプレイヤー先にありきの基準だろう。いつの時代もソフトよりハードの方が権力を持っているからね。

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さらに、生来清潔好きな日本人はケースとかカバーとかが大好きだと私は睨んでいる。バイオリンやアコギの「ケース」の「カバー」なんてものがあるくらいだからね

それなのに、人類はこの素晴らしいジャケットの世界を切り捨てようとしているのだ。ジャケットはひとつの表現手段、大げさに言うとひとつの芸術だ。音楽配信というただのテクノロジーが12インチ四方、CDは5インチ四方の宇宙を絶滅させようとしているのだ。

「ナニを大げさな…」と思うでしょう。でも、明らかにLP、CDを問わずジャケット自体が地球上でレアなアイテムになることは間違いない。するとどうなるか…。

①ジャケットに惹かれて音楽パッケージを買うことがなくなる。「ジャケ買い」という言葉がこの世から消える。もっともその前にお店がなくなるか…。
②ジャケットを眺めて「ああ~いいナァ」と感動することがなくなる。「アレ、ジャケットもいいんだよね~」なんでセリフがこの世からなくなる。つまり音楽を聴く楽しみが縮小する。

③ジャケットがなくなると何かのアルバムを指す時に大変不便。「あのライブいいよね~!」「え?どんなジャケットだったっけ?」という会話が消滅する。

もっともアルバム自体がなくなろうとしているのだからこれはおかしいか?『七人の侍』の中に左卜全の名セリフがある。「首が飛ぶってのにヒゲの心配してどうするだよ~」…コレである。

④ジャケット・デザイナーやその他デザインに携わる方々が失職し、ヘタをすると才能の喪失につながる。
⑤印刷屋さんが困る⇒製品を運ぶ運送屋さんも困る。関連の業者さんの商況が悪くって国の税収も下がる⇒景気の回復が遅くなる。

…と、まぁ⑤はオーバーにしても、④は痛い。現にジャケットがなかったらこれからここに紹介するHipgnosisという才能も花開かなかったわけで、それだけ我々の楽しみも減るということなのですよ。

若い人たちの意見だとiPodで好きな曲だけダウンロードしてさえいればCDのようなPhysical Productsは必要ないということのようだけど、本当に自分の好きな音楽だったら形にして傍らにおいて置きたいという欲望がわいてくるハズなんだけどな~。ま、このあたりはしょっちゅうマーブロで大騒ぎしているから今日は触れない。

とにかく、有名なお仏壇屋さんのキャッチコピーにあるように「心は形を求め、形は心をすすめる」…なのだ!

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イントロおわり。

さて、HipgnosisはStorm Thorgerson(ストーム・ソーガソン)とAubrey Powell(オーブリー・パウエル)によるイギリスのデザイン・チームで、後にPeter Christopherson(ピーター・クリストファーソン)を加えて3人体制となった。1968年から83年まで存続し、Pink Floyd、Genesis、LedZeppelin、10cc、UFO、Bad Company等々のレコード・ジャケットを制作し、ブリティッシュ・ロックの確立をビジュアル面で援助した。

Hipgnosisというのは「g」を取るとHipnosisとなり「催眠状態」という正式な英単語となるが、それとは関係なく、彼らは「Hip」という言葉を入れて「新しい霊的なもの」のような意味の造語をチーム名としたらしい。

そしてMJGの『ヒプノシス展』…展示だなをひとつひとつ見ていこう。
ここはAlan Parson's Project中心のコーナー。

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私は「ジャケ買い」を滅多にしないが、下段の右から2番目のAl Stewartの『Year of the Cat』はその例外。

まだ他にもジャケ買いをしたこともあったかも知れないが、ハッキリと覚えているのはBud Powellの『Blues in the Closet(Verb)』というアルバム。ジャズ・ピアノの大巨人の名作の数々の中にあっては、まったく人の口に上らない作品だし、取り立てて騒ぐような内容ではない。でも、あのキツく青く染められた美人ジャケットと小文字で統一されたタイトルとアーティスト名…ステキ!…自分にとってはもうこれだけで名盤なのだ!

さて、この『Year of the Cat』、表も裏もネコづくしである。化粧台に香水やらチョコレートやらタバコやらお金やらが散乱していて、それらすべてにネコのモチーフが用いられている。そして、鏡の中には化粧を終えたネコ装束の美女が…。一見、女怪盗のようにも見えるのだが。それと手前に少しだけ見えるネコの尻尾を見ると、ネコ好きの女性が飼っているネコの尻尾かと思えるが、これはその鏡の中の女性の尻尾なのだ。私は別にネコ好きではない。このHiphnosisの凝りようが好きなのだ。
タイトル曲の歌詞を見てみると、「ボガート(もちろんハンプリー・ボガートのこと)の映画の中の朝に」とか「あなたはまるでピーター・ローレのように人ごみの中をさまよう」なんて出てくる。ボギーとピーター・ローレといえば『カサブランカ』だ。すると、鏡の中の女猫怪盗はイングリッド・バーグマンのイメージなのか?な~んて思ったりもする。
ちなみにこのアルバムのプロデューサーはAlan Parsonsだ。

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あ、いつも通り基本的にテキストは下の写真を解説してますから。

2段目左のEdgar Broughton Band の『Inside Out』はモノクロの写真が抜群にカッコいい。Edgar Broughton Bandは1968年に結成されたイギリスのバンド。ものスゴイ個性のあるバンドでは決してないが、ブルース・ロックからハードなロックまで存外に振幅の広いレパートリーをボーカルのEdgar Broughtonが青果市場の競りのような声で聴かせるという感触か?私は好き。

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そのとなりのビルの狭間でラドンみたいなヤツが飛びまわっているのがQuatermass。ロンドン出身のプログレ・キーボード・トリオだ。大好きだったRoxy Musicに参加していたJohn Gustafsonが在籍していたということで高校生の時に欲しかったアルバムの筆頭だった。残念ながら廃盤になってしまい入手できなかった。友人のO君はギリギリで秋葉原の石丸電気の3号館で購入。意地を張ってO君から借りなかったおかげでいまだに聴いたことがない。

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そして、Alan Parsons。今となってはアーティストとして大看板を掲げているが元々は制作サイドの人で、1967年アシスタント・エンジニアとしてアビー・ロード・スタジオに雇われ、The Beatles の『Abby Road』の制作に携わった。Paul McCartneyの『Wild Life』や『Red Rose Speedway』も手掛けたが、何といっても極めつけはPink Floydの『The Dark Side of the Moon』だろう。

Parsonsはレコーディング・エンジニアを自認しているが、プロデューサーとしての功績も大きく、何でもさっきの『Year of the Cat』のタイトル曲にサックス・ソロを加えてジャズっぽいバラードに仕上げたところなんぞは、「レコーディング」に対するParsonsの貢献度が、スタンリー・キューブリックの映画へのそれと比肩するというんだからスゴイ。実際に聴いてみても今では全くピンと来ないが…。
キューブリックの話しはまた今度。何しろ私、『シャイニング』のあのOverlook Hotelのモデルになったコロラドのホテルに実際に泊まりましたから…ハイ。この話しもまたいつかできるといいナァ。
『Wish You Were Here(炎)』以降、Pink Floydの活動が停滞したことからThe Alan Parsons Projectを立ち上げ、今では押しも押されぬ大スターとなっている。

The Alan Parsons ProjectもHipgnosis作品を身にまとって自己の音世界を拡大したひとりだろう。どれもこれも最高にイマジネイティヴな独特の世界をクリエイトした。

その代表作が『Tales of Mystery And Imagination・Edgar Allan Poe(怪奇と幻想の物語 エドガー・アラン・ポーの世界)』。

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MJGではスペースの関係で少数のゲイトフォールド(見開き)仕様のアイテムを除いて基本的に表1のみが展示されているが、見開き仕様の場合、ヒプノシス作品は当然内側も凝った作りになっていることを知っておくべきだ。
下は同作の内ジャケ。蛇足ながら私所有のLPで補足させてもらった。

表2にはポーの年譜が掲げられ、その次のページからは歌詞が掲載されていて、その狭間をパラフィン紙で区切ってある。オリジナル盤もこうなっているのかどうかは知らないが、とにかく豪華!LPだからこそできるうれしい装丁だ。

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中の写真やイラストがまた素晴らしい。ロジェ・バディム、ルイ・マル、フェデリコ・フェリーニらの監督競作でポー作品をベースにした『世にも怪奇な物語』というオムニバス映画があったが(1969年)、このジャケットに挿入されている数枚のセピア調の写真だけでHipgnosisはあの映画と同じくらいポーの世界を表現しているのではないか?

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B5大の豪華なブックレット(解説と訳詞)も付いていた。

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こちらは後年手に入れた絵ハガキ。

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今回、この記事を書くにあたり久しぶりにこのLPを引っ張り出して来たらこんなチラシ(そういえば最近めっきり「チラシ」って言わなくなった。みんな自然に「フライヤー」って言うよね?もう「チラシ」は寿司屋世界だけのものなのか?映画のチラシは私の青春だった。集めてばっかりなのよ。この話もいつかまた…。)が出て来た。

名門レーベルChrysalisのアーティストの宣伝だ。名前は「クリサリス・レコード・ニュース」。同レーベルがアメリカに進出したのを記念してキング・レコードさんが発行している。スゴイ。今時こんなのって全くないじゃん?当時は誠にたくさんのロック・リスナーがこんなレーベル意識を持っていたのだろうね。

どれどれ、誰が紹介されているのかな?まず、残念ながら発行年は不明だが、「クリサリスの3大アーティスト(文面では律儀に「アーティスツ」と複数形の表記になっている)がロスに勢ぞろい」とあって、ロビン・トロワー、ロリー・ギャラガー、ジェスロ・タルがロサンゼルス・コロシアムでコンサートを開くのだそうだ。ク~、行きて~!

いいですか?ここから先がスゴイ!この時の動員が、見込みも見込んだり、ナント10万人!10万人ですよ、10万人!言っちゃ悪いけど、今の日本だったらチッタが何とか埋まるぐらいかな?もっともロリー・ギャラガーを観ることはもう永久にできないけど…。
その他の「クリサリス・レーベルの強力アーティスト」として名前が挙がっているのは;
テン・イヤーズ・アフター、プロコル・ハルム、UFO、レオ・セイヤー、ジェントル・ジャイアント、スティーライ・スパン…。なるほど強力だ!他にフィリップ・グッドバンド・テイトだのササフラスだのカールハインツ・シュトックハウゼンだの…スミマセン、勉強不足で知りませんわ。
いずれにせよ、こうしたバンド名や人名がレコード買った人たちの家のお茶の間に広がっていたんですよ。何しろ今と違って新しいロックがジャンジャン出てきてその刺激を謳歌し狂っていた時代ですからね。隔世の感は否めないでしょう。

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かわって10ccのコーナー。もう好きで好きで…でも本物を観たのは2010年が初めてだった。

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10ccもセカンド・アルバムの『Sheet Music』からHipgnosisが手がけるようになった。

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10ccへの作品の中ではやっぱり『How Dare You !(=あーた、よくもそんなことができわね?!)』が一番かな?これの内ジャケットがまたイカしてて、パーティで一部屋に集まった紳士淑女が全員電話をしているという図。何年も前の『こち亀』に誰もが携帯電話を持ち始めて、電車に乗っている人全員が携帯で電話をして大混乱!というアイデアがあったが、あれを見た時、即座にこの『How Dare You !』の内ジャケを思い出してしまった。
大好きな大好きな10cc、この『How Dare You!』はとりわけ素晴らしい。だって、捨て曲が全くないどころか全曲が輝いている。「I'm Monday Fly Me」、「Rock'n'Roll Lullaby」、「Art for Arts Sake」特に最後の「Don't Hang Up」がたまらなく美しい。後年この曲のPVをYou Tubeで見つけて仰天した。今回もここに貼り付けようかと思って検索したがなくなっていた。

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Steve Dawsonと10ccの話しをした時、イギリス人は10ccのことを「スタジオ・ミュージシャンの集まり」ととらえていることを知った。

上段真ん中の『Deceptive Bends(愛ゆえに)』は10ccが分裂してからの作品。ちなみに10ccのバンド名の由来が「男性の~」と言われていいるが、これは誤った情報らしい。

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Hipgnosisはジャケットの裏表だけでなく、インナースリーブにも素敵なデザインを施してくれる。

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Godley & Cremeチームが好きな私は、このアルバムまでが好き。このアルバムからは『The Things Do We for Love(愛ゆえに)』というどこのカラオケにでも入っているようなヒット曲も出たが、一番10ccらしいのはなんといっても2分弱の『I Bought a Flat Guitar Tutor』だろう。この曲、歌詞の内容や語尾にしたがってコードがついていくというモノスゴイ内容。diminishやaugumentなんて単語は当 たり前。
例えば"I bought a flat(アパートを買ったよ)"のなんてのは不定冠詞の「a」はAを弾いておいて"flat"でAbに移動する。「see」は「C」だし、語尾が 「-phe」になっているとコードが「E」になるという仕組み。これで丸々1曲仕上げている。それがまた4ビートに乗って至極音楽的だからスゴイ。愛すべ き小品だ。

まぁ、本当に色んなバンドの作品を手掛けているね。

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そうT Rexの『Electric Warrier』もHipgnosisの作品なんだよね。特にHipgnosisらしくないような気がするが…。

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ToddのライブもUKの『Danger Money』もいかにもHipgnosisらしいタッチで好き。なんか内容的にこのライブ盤のトッドはどうもしっくりこない。 『Another Live』の方が全然スキ。

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UKは初来日の時、日本青年館に観に行った。当時は「第2のELP」なんて呼ばれていた。ジョン・ウェットンもエディ・ジョブソンもスゴかったけど、何しろ初めて見るテリー・ボジオに驚いたな~。

タイトルが先なのかデザインが先なのかはわからないが、Danger Money…アブク銭、うまいこと考えたな…。

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YESはRoger Deanって相場が決まっていたのに復帰第1作となった『Going for the One』はHipgnosisが担当した。これはリアルタイムで聴いたが、『Fragile(こわれもの)』や『Close to the Edge(危機)』のサウンドを期待していただけに、そのポップなサウンドに大いに肩透かしを食らった記憶がある。ただ、これは三面のゲイトフォールド・ジャケットでちょっとうれしかった。コレ、今デザインをまじまじと見るとメッチャいいな。

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Alan Bown諸作も実にHipgnosis丸出しでカッコいいが音は聴いたことがないな…。それこそジャケ買いしてもいいかも…。

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ここのセクションはいいな~。Brand XにGenesisだもん。おまけにELOも入ってる!

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上段真ん中のBrand Xの『Unorthodox Behavior(異常行為)』にはブッ飛んだっけナァ。

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John Goddsallなんてギタリスト、全く聞いたこともなくて。Percy Jonesのベースも驚いた。何よりもこのジャケットのデザイン!ブラインド越にこっちを見てる。ちょっとチャールトン・ヘストンに似てる。これだけで「異常行為」のすべてを表現しちゃってる。
上段一番左はそのBrand Xのセカンドアルバム『Moroccan Roll』だが、写真に幾何学的な図形を重ねるHipgnosisお得意のパターン。YESみたいだね。

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そのとなりの『Live Stock』もいかにもHipgnosisっぽい作品だ。でも、音はジャケットのイメージと大幅に異なる凄まじいジャズ・ロック。ここではPhil Collinsの他にドラマーとしてKenwood Dennardが参加している。この人はJaco Pastoriousバンド(Aurex Jazz Festivalのビッグバンドではなくコンボ)で来日した人。その時のギターを担当したのは渡辺香津美だった。

また、この人はManhattan Transfer初来日時のドラマーで、その時のメンバーはベースがAlex Blake、ギターはナ、ナントJack Wilkinsだった。実は私はある人の紹介でニューヨークのJackのアパートに遊びに行ったことがあって、ファンだった私は至福の時を過ごしたのだった。今でも彼のギターを抱えて撮ったツーショットの写真を大事にしている。

それと、このマントラ初来日のコンサートは後日ビデオ化された。それを後から知った時は時遅し…もう入手困難だった。ところが探しに探した結果、見つけた見つけた、長野市の小さな本屋の中古ビデオのコーナーで1,000円ぐらいでゲットしたのだった。ああ幸せ!

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下段の左2枚はElectric Light Orchestraのファーストとセカンド。まだRoy Woodがいたころのファースト・アルバムはプログレ風味丸出しで大好き。後年の彼らの音楽とはまったく異質なものだが、ELOの最大の特徴であるストリングスを巧みに取り入れているところが素晴らしい。でも、ジャケットは双方Hipgnosisっぽくないというのが私の印象。

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ELOは武道館へ見に行った。曲はアンコールでやった「Roll Over Beethoven」しか覚えていないが、レーザー光線を場内のところどころに設置したプリズムに当てて鮮やかなライト・ショウに演出したのが印象的だっ た。当時はまだレーザーなんて珍しかったからね。多分、それに見とれて演奏はロクに聴いていなかったんでしょう。
その「Roll Over Beethoven」が収録されているのはこのセカンド。
これ電球が宇宙を飛んでる。後々もELOのロゴが入った長岡秀星のイラストのデッカイ円盤がジャケットに登場したけど、ナンデ宇宙趣味なんだろうね?

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中段右から2番目はGenesisの名盤『A Trick Of The Tail』。「看板のPeter Gabrielが抜けちゃったテンヤワンヤの名バンドのボーカルを伏兵Phil Collinsが救う」の巻だが、特徴的なイラストが多いHipgnosisだがこのイラストはちょっと異質に思う。このアルバム、歌詞がジャケットに刻まれているのだが、滅法読みにくいフォントなのが泣きどころ。

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その右となりはいかにもHipgnosisらしい美しく幻想的な写真を配したGenesisの『…And Then There Were Three…(そして3人が残った)』。そして、残った3人が来日して観に行った。確か中間試験の最中だった。試験の結果は散々だったけど、今にして思えば本当に行っておいてヨカッタと思っている。

そういえば、これもSteveとの話。プログレの話をしていてジェネシスに触れたら小声で「ジェネシスは全然聴かないナァ」と言っていた。ナンカもっともイギリスらしいバンドはイギリス人に聴かれていないのか…とちょっと驚いた。ま、スティーヴは基本的にはブルース・ロックの人だからね。

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Genesis最高傑作と言われる中段左から2番目の『The Lamb Lies Down on Broadway(眩惑のブロードウエイ)』。

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Hipgnosisのデザインは徹頭徹尾モノクロ。下のようにインナースリーブも完全にモノクロだった。

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「Japan Progressive Rock Fes 2010 in Tokyo」に出演したSteve Hackettはこのアルバムから「Fly on a Windowshield」を演奏していたっけ。
それにつけてもアルバムタイトル曲のMike Rutherfordのベースラインのカッコいいこと!
そして、このプログレッシブ・ロック屈指の名盤と知られているアルバムにはその正反対に位置する音楽ともいえるR&BのThe DriftersやTemptationsの名曲からの引用がいくつか含まれているというのが実にシャレているではないか。


さてさて、Hipgnosisとのコラボで最も大きな効果を挙げたのは間違いなくPink Floydでしょう。

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Hipgnosis最初の仕事も『A Saucerful Of Secrets(神秘)』だったという。

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また、Storm Thorgersonのお気に入り自己ベスト5には『Atom Heart Mother(原子心母)』と…

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『Wish You Were Here(炎~あなたがここにいてほしい)』の2作を繰り入れている。

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個人的には『Animals』のジャケットが好きで、実際にロケ地となったロンドンのBattersea Power Station(バタシー発電所)まで見に入って来た。Hipgnosisはヘリウムガスを入れた作り物の豚を実際に発電所の上空に飛ばし撮影した。

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『The Dark Side Of The Moon(狂気)』、『Meddle(おせっかい)』、『The Wall』、『Animals』等々、パターンもの、コラージュもの、イラストもの、得意の写真加工ものとありとあらゆるテクニックを駆使ししてPink Floydの音世界を作り上げようと努力したように感じる。

Floydの場合、後に出てくるドラムNick Masonをはじめ、Dave Gilmour、Rick WrightらのソロアルバムもHipgnosisが手がけている。メンバーたちもよっぽどHipgnosisの作風が気に入っていたに違いない。
下段右端の2作は松任谷由実の作品だ。日本人ミュージシャン向けのHipgnosiss作品はこの2作だけなのかな…?

『Wish You Were Here』は下のような濃紺のビニール袋に包んで発売された。ここに張ってあるロボットの握手のイラストがまた秀逸。剥がさないでよかった~。

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ここは色々と詰め込まれているな…それだけHipgnosisの作品の幅が広いことに驚かされる。

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上段右から2つめはBe Bop Deluxeの『Drastic Plastic』。コレ何のデザインなんだろうか?いまだによくわからない。左上にはブラインドのようなものがあって、キッチンの片隅を斜めに切り取ったようなイメージか?ニートなデザインが素敵。でも内容は『Axe Victim』、『Sunburst Finish』、『Live! In The Air Age』の方がよかった。私はジャン・コクトーのことは門外漢だが、ことのほかBill Nelsonが好きだった。ソフトな歌声とちょっと歪みすぎているけどソフィスティケイトされたギターがお気に入りだった。Marshallじゃないな、あの音は。Bill Nelsonの80年代のソロ・アルバムを数枚聴いたが、テクノに毒された無味乾燥な音楽となっていてかなりガックリした。ところで、Be Bop Deluxeなんて名前もカッコよくない?

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その右隣りはCaravanの『Cunning Stunts』。カンタベリー派のバンドらしく長尺の曲を飽きずに聴かせる力量がすごい。B面の18分にも及ぶ「The Dabsong Conshirtoe」が圧巻。徐々に徐々に関係ないメロディが入り込んで来て最後には全く別の曲になってしまうアイデア秀逸。しかし、このバンドはカンタベリー派を代表するプログレ・バンドであるにも関わらずHipgnosisとの縁が浅かった。それでも『In The Land of Grey And Pink』や『Waterloo Lily』などは内容を指し示すかのような素敵なジャケット・デザインだった。この『Cunning Stunts』の次作の『Blind Dog at St.Dunstants(聖ダンスタン通りの盲犬)』もHipgnosisの作品ではないが、実際にカンタベリーにある聖ダンスタン通りのイラストを使用している。数年前そこを訪れてきたので後日『イギリス-ロック名所めぐり』の「カンタベリー編」で紹介する予定だ。

カンタベリー派といえば、Soft MachineにHipgnosis作品が皆無なのが意外だ。すごくいい仕事をしたろうに…。

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中段の真ん中は前出Edgar Broughton Bandの同名アルバム。精肉所の倉庫で多数の牛がブラ下がっている中に人体がひとつ。内容も結構イケるが、ジャケットのインパクトには遠く及ばない。

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下段左から2番目。考えてみるとEmerson Lake & Palmerも大方向転換をした『Love Beach』を発表するまでジャケットに自分達のポートレイトを使わないバンドだった。ファースト・アルバムしかり、『Tarkus』しかり、『Pictures at an Exhibition(展覧会の絵)』しかり…みんなイラスト。そしてこの『Trilogy』だけがHipnosis作だ。次作の『Brain Sald Surgery(恐怖の頭脳改革)』では映画「エイリアン」のデザインで有名なスイスのイラストレーター、H.R.Giger(ギーガー)とコラボし、後年も何枚かギーガーの手によるCDを発表した。
昔も好きだったけどELPって今聴いてもメチャクチャいいよね。いいですか?70年代には彼らは「ミュージック・ライフ」誌の読者人気投票で1位だった時代があったんだゼ!プログレ・キーボード・トリオが日本で一番人気者だった時代があったのだ。2010年にロンドンでELPを観たのは最高の幸せだった。

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下段右から3つは元Yesのギタリスト、先日亡くなったPeter Banksのバンド。お得意の身体拡大パターンで非常によい仕上がりだ。

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上段のAl Stewartは前出。Pink Floydメンバーのソロ作が2段目に来て…

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3段目はPeter Gabriel。左から2番目の『III』はThorgersonお気に入りベスト5の中の一作。

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でも、私はその左のファーストが大好きでよく聴いた。ジャケットもこの車の色合いと水滴が非常に美しくて気に入っていた。このアルバム、全曲いいんだよね~。

初めて聴いた時、「Wating for the Big One」のRobert Fripのギター・ソロには随分驚いたっけ。ずっと後年、トム・クルーズの映画(だったかな?)でこのアルバムの2曲目「Solsbury Hill」が使われていた。そういえば、PeterのBootlegのライブアルバムを西新宿で入手した。このアルバムの発表直後ぐらいのレコーディングでレパートリーは全曲同アルバムからだった。それを大分後になって中古レコード屋に売ったところ、買った値の何倍もの値段がついて驚いたことがあった。売っちゃ買い、売っちゃ買いしてたもんですからタマにはこういうことも起こります。

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上段の左端のGodley&Cremeの『Freeze Frame』もとてもHipgnosisらしい絵柄。得意の写真とイラストの合成だ。このアルバムには「An Englishman in New York」というかの有名なジョーディー(ニューキャッスル出身者のアダ名)のヒット曲と同じようなタイトルの曲が入っているがこっちの曲の方が私的にはゼンゼンよろしい。

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今回の記事を書くにあたって「もしや」と思い、彼らのファーストアルバム(LP3枚組)の『Consequences(ギズモ・ファンタジア)』をレコード棚から引っ張り出して来てチェックしたが、あれはHipgnosisではなかった。あれこそHipgnosisっぽいと思ったのだが…。

これは豪華ボックス収納のLP3枚組で大変高価だった。中3か高1の時に発売されてすぐにお小遣いをはたいて買ったが、友人みんなから「こんなの買ってバカじゃないの?」と言われたのを覚えてるナァ。でもスンゲェいい曲は入ってるんだぜ。

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下段の一番左端、Pink Floydのドラマー、Nick Masonのソロ・アルバム『Nick Mason's Fictitious Sports(空想感覚)』はお気に入り。にもかかわらず、恥ずかしながらHipgnosisの作品だとは知らなかった。Carla Bleyが作曲を手がけていて独特な音感覚が快感だ。Carla BleyはStuffとの『Dinner Music』や自身のライブ・アルバム『Live!』という名作を世に問うている女流ピアニスト&オルガニスト。

NHKの「みんなのうた」に数多くの佳曲を提供している名作曲家にしてジャズ・ピアニストの渋谷毅氏は『Live '91 / Takeshi Shibuya Orchestra』にCarlaのアレンジによるトラディショナル曲『Soon I Will Be Done With The Troubles Of The World』の壮絶な演奏を残している。必聴。これはバラードだが、もし音楽に人の心を動かす「力」のようなものがあるとするならば、こういう演奏を指すことはまず間違いない。もし、このライブ盤の録音現場に居合わせていたら私は間違いなく号泣していたと思う。このアルバムのベースの川端民生さんもドラムの古澤良二郎さんももう鬼籍に入ってしまった。ドルフィーのように名演奏家は名演奏とともに消え去ってしまう。

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上段の真ん中はMoody BluesのギターJustin Haywardのソロアルバム『Songwriter』。これもHipgnosisだったんだ?Hipgnosisにしてはヤケに野暮ったい感覚。50年代のマイナーなジャズ・ギタリスト(イメージはDempsey Wrightの『The Wright Approach』)のアルバム・ジャケットのようだ。ところで、上野のHard Rock CafeにはJustin Haywardのストラトが飾ってありますよ。

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下段右から2番目もStorm Thorgersonが自己ベスト5の一角に数えるThe Niceの『Elegy』。実際に砂漠に赤いビニールのサッカーボールを持ち込んで撮影したらしい。CGなんて無かったからね。

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その右どなりもThe Niceで『Five Bridges』という作品。魚眼レンズで撮った橋を組み合わせて複雑な幾何学模様を作り出していて、見開くとさらに立派な絵面となる。これもジャケット欲しさに買ったわ。結構ジャケ買いしてるじゃんねー。

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上段は一番右を除いてRenaissance(ルネッサンス)の諸作。

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この他『Scherazade And Other Stories』という作品もHipgnosisだ。どれもジャケットはいいのだが、アタシャちょっと苦手…。「Progressive Rock Fes」でSteve Hackettとともに来日した。正直、四人囃子の人たちと楽屋でおしゃべりをしていてほとんど見なかった…失敬。

ちなみにボーカルのアニー・ハズラムの旦那さんはロイ・ウッドだ(だった?)。

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上段右端と中段(右端は除く)はString Driven Thingというバンド。これらも実に魅力的なジャケットだが、音は大したことない。

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またまた出て来たPink Floyd人脈の作品は下段左端のSyd Barrettの『The Mad Cap Laughs』。でも、これタマ~に聴くとなかなかにいいんだよね。

写真がカッコいいな。よくSydのことを「狂気、狂気」って言うけどこれを聴いた限りではピンと来ないな。そういえばSydも亡くなっちゃいましたね。

最近、The Whoに関する本を読んでいたら、元ミュージック・ライフの編集長、水上はる子さんはロンドンでシドに会ったことがあるそうだ。スゲエな…。

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Steve Harley & Cockney Rebelの『Face To Face』。映画の1シーンを切り取ったようなドラマっぽいデザインもHipgnosis得意のパターンだが、これはその代表といってもいいだろう。昔、Cockney RebelのLPが手に入らなくてネェ。バイオリニストがバンドにいることに惹かれてすごく聴きたかったがまったく中古でも出なかった。実際に彼らの音楽を耳にしたのはかなり時間が経ってからだった。感想はヒ・ミ・ツ…。先日BBCのライブを買って聴いてみたが、結構よかった。

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Sad Cafeの『Misplaced ideals』。

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これも同じ作品。つまりこの本体の絵柄があまりに醜悪なので、上にある黒いカバーをつけて発売した。有名なジャケットだが残念ながらこれも音を聴いたことがない。今見ると特段醜悪には見えないが…。

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やっぱりいいな…Hipgnosis。

Music Jacket Galleryの詳しい情報はコチラ⇒金羊社オフィシャル・ウェブサイト

つづく


(一部敬称略 取材協力:植村和紀氏、金羊社奥平周一氏)

2013年4月 9日 (火)

The Amazing Uemura Collection~Music Jacket Galleryの源

※今日のマーブロは気の弱い方、集合体恐怖症の方はご遠慮ください。

マーシャル・ブログの人気カテゴリーに『Music Jacket Gallery』があった。
この新マーブロでも同範疇の記事を一度アップしたが、メインとしていた内容は大田区にある老舗印刷会社、金羊社の4階に常設されてるレコード・ジャケット展の展示物を解説したものであった。

本来の目的は、絶滅の危機に瀕しているレコードやCDのジャケットの魅力を見直そう…というもので、ごく私的なディスク・ガイドといった趣にもかかわらず、幸運にも数多くの音楽愛好家のご支持を頂戴し、某四大新聞社のうちのひとつの解説員の方までご愛読されていると聞いて浮足立ったものであった。

展示が変わる度に膨大な量の記事を制作したが、残念ながらある事情により今は見ることができなくなってしまった。
この記事を制作する作業は、自分でもお気入りの仕事のひとつではあったが、大変な労苦を伴うものであった。
LPを解説する際、まずは記憶に頼って文章を組み立ててみるのだが、30年以上前の出来事が多いゆえに、存外に思い違いが大きかったりして、少しでも正確を期すために調査にかなりの時間を要してしまうのだ。
また、事実内容を確認しているうちに興味深い新事実に突き当り、それを深く調べているとアッという間に時間が過ぎてしまい、他のことができなくなってしまったりするのである。
しかも、これらの作業にあたる際にはどうしても大量の英文を読み解く必要があり、余計に時間がかかるのだ。

上のような理由により、昨年10月から始めたこのマーシャル・ブログではどうしても時間が作れず、このカテゴリーに手を出せなかった。
しかし、そこは「お気に入りの仕事」のこと、いつかは再開してやろうと3ケ月に1度模様替えをするMusic Jacket Galleryの展示の取材だけは敢行し続け素材を確保しておいた。

そして、いよいよ再開する決心をしたのだ。正確に言えばShige Blogから引っ越しして来ようというのだ。

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これにはいくつか理由があった。

まずひとつは、「あのコーナー楽しみにしていたのに、もう終わっちゃったんですか?」と何人かのマーブロ読者に尋ねられたこと。
コレはうれしかった!
さらに、20年のキャリアを持つ音楽専門誌がここ数日の間に2誌も休刊となったこと。
私はこの2誌を店頭ですら広げたことがないが、コレにより音楽産業の加速度的な衰退を感じたこと。そして、最近ある本を読んで思うところがあったこと。
その本は「どうしてこんなに日本の音楽がダメになっちゃったのよ~」的な問題を多角的に分析している(つもりの)モノで、正直ダメになっているとされる音楽が私にとってどうでもいい類のものであるのと、根本的な論旨が自分と相容れない至極商業的(音楽愛好家が分析した内容とは思えないということ)なモノであったため、結果的にその内容に与できるものではなかった。
「それなら読まなきゃい~じゃね~か!」と言うこともできるが、一か所だけ頷くことができる箇所を「あとがき」の中に見つけた。
これほど「あとがき」が重要な本も珍しい。
それは…音楽や映画でも何でも感動できるものを下の世代に引き継げ…というのだ。
もしかして、この本の著者はマーブロを読んでいるんじゃないの?と思うぐらい私が何年も言い続けていることを正確に活字にしていたのだ。(この人も相当前から言いたかったんだとは思うけどね)
 
バカシゲのいつものヤツがまた始まった…と思われることでしょうが、また一念発起してLPやレコード・ジャケットの魅力を借り、私なりに音楽の魅力を伝承する作業を勝手に引き継ぐことにした。
誰かがこの伝承作業をしなくては…。
で、今日はそのイントロとしてMusic Jacket Galleryに展示物を提供している日本屈指のコレクター、植村和紀さんのことを書くことにした。
金羊社のギャラリーに展示されるアイテムはすべて植村さんの私物なのだ。

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写真向かって左が植村和紀さん。右は金羊社の奥平周一さん。
奥平さんは優れた技術を持つカメラマンだ。

植村さんは以前マーブロでも紹介したレコード協会が協賛する『Music Jacket Gallery』の中心人物でもある。

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さすがに日本屈指のコレクター、雑誌に取り上げられることも珍しくない。

この記事の写真に見えるLP棚は植村さんが「蔵」と呼んでいるLP専用の倉庫に設置されているもの。
ここへ行ったことのある人は「蔵友(くらとも)」と呼ばれる。
私も何度もお誘いを頂戴しているのだが、東京から遠く離れているため、時間を割くことなかなかできず、残念ながら私はまだ「蔵友」にはなっていない。

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こちらはレコード・コレクターズ誌(株式会社ミュージック・マガジン刊)の人気コーナー「レコード・コレクター紳士録」。1999年5月号(XTC特集)にもご登場されている。

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今日、ここにご紹介するのは、都内の「蔵」。
CDを中心に保管している第2の蔵だ。

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都内のマンションの一室の6畳間。
壁一面に広がっている物体はすべて「CD」である。

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全部CD!

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CDはお気に入りのミュージシャンを除き、ほぼレコード会社別に収納されている。

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植村さんのスゴイところは、すべてのCDを聴いていて(当たり前か?)、何がどこにあるかを完全に把握していることだ。
しかも、だいたいの盤の内容が頭に入っていて、「これどんな感じですか?」的な質問をすると、当意即妙にその答えを聞かせてくれるのだ。

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あのね~、この壁一面の棚のCDは前後2列になってんのよ。
つまり見た目の倍の数のCDがこの棚に収蔵されているということ。

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ね?後列の下段もちゃんとホンモノのCDが詰まってる。もうこの時点でほとんど「悪い冗談」です。
私も大概好きですけどね~、なんかね~、ここまで来るともはや羨ましくない。
だって、何でもあるんだもん。
それじゃ面白くないじゃん!…でもやっぱ羨ましいか…。

それでもまだまだ買い続けるのが植村さんのコレクター道。
ジャンルはほとんどがロック&ポップスだ。
コレ、もしここにジャズが本格的に加わったら大惨事に発展したことだろう。

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ところで、植村さんは収納に当たってスペースを省くために薄いソフトケースを使用している。
植村さんにすすめられて後に私も導入した。
何しろCDのケースの中身はほとんどが空気だからね。
サイズがコンパクトな分、LPよりおとなしいフリをしているが、実はガタイの比率からいえばLPより何倍も無駄にスペースを使っているのだ。
CDとスリーヴを取り出して下の写真のようにソフトケースに収めこむ。
下はわかりやすく2枚のソフトケースを使っているところ。

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こうしてソフトケースに収めると厚みは1/3になる。

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下はウチのCD棚。
もう気持ちいいぐらいスペースが縮む。
何せ体積が一気に1/3以下になっちゃうからね~。
私のコレクションはコレでたかだか5,000枚程度だけど、それでもソフトケースに替えた効果は絶大だった。
S0r4a0585一方、要らなくなったプラ・ケースの量たるや膨大なもので、何回にも分けてゴミ屋さんに持って行ってもらった。
そして、その重量!想像を絶しますよ。
1ケ1ケはもちろん大したことないのは当たり前なんだけど、それが3,000枚も4,000枚もになると凄まじい重さになる。
当然、木造の家にはかなり負担なのだ。
かさばるプラ・ケースを並べてその量を鑑賞して悦に浸るのも悪くないが、空気を鑑賞しているようなもんだからね。
将来コレクションを手放すつもりがなければ、この手のケースは大変に実用的だ。
下の空ケースはホンの一部。
記念に撮影しておいた。
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この量がすべてプラ・ケースに入っていたらどうなっていたか…オモシロイね~。
ひと部屋どころかマンション全部必要かもね。

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CD棚の上にはパンパンにボックス・セットが積み上げられている。

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ま、私もいくつか持っているけど、ちょ、ちょっとコレは…。

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ボックス・セットのコレクションは壮観だ。

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一体、何枚ぐらい同じ内容のCDがダブってるんだろう?

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植村さんのボックス・セットへの執着はすさまじく、「ボックス」という名がついていればすべて購入しているという。

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もう、これには山崎さんもビックリすることだろう!(註:ボックス=ハコね)

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ここは紙ジャケ・ゾーン。
…と、下段を見ると「5 in 1」の廉価盤のボックス・セットのコーナーが…。
こんなん買う必要ないのでは?…と他人事ながら心配になってきた。

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押入れに歩を進める。
開き戸を開けると…ドワッ!ボックス・セット!
しかし、キレイに収まってるな~。

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下段もCD。
コレ、押入れの全面だけではなくて、奥まで詰まってますからね。

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となりの引き戸の押入れの中は…CD!

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それとデジパックのような、ソフトケースに収納できないタイプのアイテムが山と積まれている。
そう、実はこのデジパックってクセモノでしてね、分解するわけにもいかないし、絶対的に厚みがあるし、見た目はいいけど収納の敵なのよ。

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カゴの中はどれもパンパンにつまっている。

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カゴの中がどうなっているかというと、こうなってる。もうこれだけで軽く100枚近くは入っている。

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まだビューパックに収めきれていないものもある。

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…と気になるのは枚数だよね。もう正確に数えるのは「数えるのが大好き同好会」に入っている学生のアルバイトでも雇わない限り無理。
そこで、ザっと植村さんにお見積りいただいた。

答えはこうだ。

●ソフトケースに入れ替え済みのものが27,000枚

●まだソフトケースに入れ替えていない状態のものが5,000枚

●デジパックや変形ケースなど入れ替え不可能なものが1,000枚

●紙ジャケットものが5,000枚

⇒その他のゴチョゴチョを加えると軽く40,000枚は超すという。

これに、前半で触れた「蔵」にLPが20,000枚。
しめて60,000枚!
ほぼ私のコレクションの10倍の量になるが、なんかもっとあるような気がするな~!
もっとも増殖中であることは言うだけヤボってもんだ。
 
引き戸の押入れの反対側も同じ。中には何が入っているのかな~…なんてもう思わない。
どうせCDだよ、CD!CDが入ってんだよ!

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植村さんのお気に入りは、まずはフランク・ザッパ。

何せ好きすぎてフランク・ザッパのCDを配給していた会社に転職しちゃったんだから。その甲斐あって1992年10月にLAのザッパの家に行っちゃった!
いいな、いいな、いいな、いいな、いいな、いいな、いいな、いいな、いいな、いいな、いいな、いいな、いいな、いいな~!
写真を見せてもらいましたけどね~。
もうこれは羨ましいとしか言いようがない!
 
それ以前は、1977年6月~1992年5月まで「オリコン」、つまり、「オリジナル・コンフィデンス」にお勤めしていらした。
まだ、LPレコード全盛期の頃のお話をうかがうと大変オモシロイ。

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そして、ジェスロ・タル。
植村さんはイアン・アンダーソンとホッケをつついた仲だというからスゴイ。
もうすぐ来日して『ジェラルド(Thick as a Brick)』を演るというから今頃楽しみで夜も眠れないのでは?

下は『Stand Up』のタペストリー。

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「bouree」関連のシングル盤。

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どこでこんなもん手に入れて来たんだか…タル初来日時(1972年)の時の記者会見のようすのカラー・ポジ。

それと、ホセ・フェリシアーノやSpiritがお好きとのことだ。

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オーディオ・セットは予想に反して徹底的に質素だ。

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プレイヤーの台の下をのぞいてみると…ゲゲッ、またボックス・セット!どうなっとんじゃ~!

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CDの他にも「CD屋さんグッズ」も!

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電車の前にくっついてる「とき」とか「雷鳥」とかいう看板を集める鉄道マニアと同じ感覚なのかな?

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オット!天袋をチェックするのを忘れていた!
ガラガラ…お、一句できた!

天袋 引いてビックリ またボックス

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部屋の上部の空間は横たえられたボックス・セットが占拠している。

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さて、場所を変えてリビングに移動する。
リビングの押入れを開けると…ボックス・セット!

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ちょっとボックス・セットで気になるアイテムを紹介しておく。
もちろん、ここで紹介するのは大海の一滴にも満たないもので、詳細は金羊社のギャラリーの展示で紹介していくことになる。

ジェフ・ベックのボックス・セット。

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オリジナル国内盤の帯つきの紙ジャケCDが収納されているが、「Jeff Beck」がスクリプト・ロゴ風になっていて、箱自体が1959のコンボ風になっているところがうれしい。1959のコンボは2159というモデル・ナンバーで実際には1962のようなトップ・マウント仕様だった。

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こちらはスティーヴ・ヴァイのボックス・セット。
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宝石箱のような意匠でピックまでついている!ちなみにイギリス人はピックのことを「プレクトラム」と呼ぶのをご存知か?

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こちらはフランスのジャズ・ロック・グループ、マグマのセット。

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豪華!

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リーダーでドラマーのクリスチャン・バンデがフィーチュアされている。

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エアロスミスの紙ジャケ・セット。珍しいのかどうかは知らないが、作りがしっかりしているナァ…と思って。

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リビングの押入れのもうひとつと戸を開けると…ボックス・セット!

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ここで目を惹くのはアルファベットを付した黄色いファイル群。

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これはDVDのファイル。DVDのケースこそ空気を保管しておくようなもので邪魔なことこの上ない。植村さんはCD同様、ケースからDVD本体とスリーブを取り出し、このファイルにアーティストのアルファベット順にファイルしているのだ。
DVDのスリーヴはCD用のソフトケースに入らないからね。

私が持っているDVDは古い映画がほとんどだが、すぐにこの方法をマネた。
空きケースの量といったら、これまたすさまじい体積と重量だった。
ま、この方式も1冊のファイルにDVDを入れすぎると団子みたいになってしまい、今度はファイル自体の収納に問題が出てくる。
結局、何でもそうだが、コレクションというのは「スペースとの戦い」でもあるのだ。

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これは紙ジャケやボックス・セットの特典でついてくるミニ帯のコレクション。

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ここまでいくともはや切手ですね。「帯趣味週間」。

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こちらはホンモノの「ブッチャー・カバー」とブートレッグ。
氏のお気に入りで、ブートレッグの方が音がいいそうだ。

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「ちょっと待って…」とキッチンに消えた植村さんが手にして戻ってきた。何を持って来られたのかというと…ボブ・ディランのLPジャケットをまとったチョコレート!

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押入れの中だけでなく冷蔵庫の中にまでコレクションが及んでいるとは!

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気が付いたときにはすでにもう夕方!結局、丸一日お邪魔して色々と拝見させていただいた。
実に楽しかった!

植村さんは、ご自身のコレクションを用いてレコードやCDの図書館を作るのを夢としていらっしゃるが、その夢の実現にも着実に接近している。少しそのあたりを尋ねてみると…
「昨年の秋に知り合った私設ビートルズ資料館の方と既に3回ほどお会いし、文化財として保存・伝承のため少しずつNPO法人化の話を進めています。
ひとりの力では絶対無理なので、何人かのコレクターのライブラリーを持ち寄り、都内の廃校になった学校を使ってレコード・ライブラリーを作ろうという計画です。
セキュリティ、管理、運営などのかかる経費を都や国に働きかけて予算化してもらおうと考えております。
時間のかかることですが、段階的に進めていこうと考えています」
…とのこと。
メチャクチャ楽しみだ!
キチンと現状と将来を見据えて事業計画を進めているところはさすがである。
来館者が絶えないさぞかし人気のスポットとなることであろう。
そして、例の「伝承作業」の大きな拠点となるに違いない。
この図書館ができたら何らかの形でMarshall Amplificationもお手伝いしたいナァ。
だって、収蔵される音楽作品の中にはマーシャルが使用されて制作されたものが当然無数にあろうし、音楽と楽器は車の両輪でもあるからね。

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最後に植村さんにマーシャルについて訊いてみた。

「ドラマーなので、特別ギター・アンプに対しての思い入れや知識もありませんが、シングル・ボックスでデザインされた(1959と1960AXを模したボックスにジミのヘンドリックスのシングル盤を収納したもの)ほど、「マーシャル=ジミヘン」という強い印象はあります。例のAC/DCのボックス(ホンモノのアンプがボックスに内蔵されている)もマーシャルでしたよね?
マーシャルはジャケットというより、ライノのヘヴィ・メタルというコンピのボックス(ゴールド・トップ、ブラウン・ボディのホンモノのボリューム・ノブを使った4枚組ボックス・セット)など、ボックスのパッケージの印象が強いですね」

マーシャルは「音の出る箱」ですからね。ボックス・セットの意匠にこれ以上の素材はないのです。
これからも植村コレクションの発展を期待してやまない。
そして、同時に本レポートをご愛顧願っています。

金羊社Music Jacket Galleryの詳しい情報はコチラ⇒Music Jacket Gallery常設展

<現在閲覧できる常設展レポート>

Shige Blog : 日本独自ジャケットLPコレクション <前編>

Shige Blog : 日本独自ジャケットLPコレクション <中編>

Shige Blog : 日本独自ジャケットLPコレクション <後編>

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「Music Jacket Gallery~SFジャケット展(仮)」につづく
 

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2013年1月 8日 (火)

【Music Jacket Gallery】ミュージック・ジャケット・ギャラリー2012

2012年のレコード大賞はAKBだったようですな。服部克久氏の発言が一部では取り沙汰されたそうな…。話題になっていたのでYouTubeでそのシーンを確認してみた。別に「発言」ではなくて、ごく普通の挨拶に見えるけどな…。

それよりも、この件とは関係なしに、そもそもレコード自体なくなってしまった昨今、この名称を冠することもさぞ苦しかろう。名称は「CD大賞」でも何でも一向に構わないと思うが、業界の方々と話していても「とにかくCDが売れない」の連発で、こういった音楽パッケージ商品のコンペティションの存続すら意味を失おうとしているように見える。また、「レコード」という言葉は、我々レコード育ち世代がこの世を去るより前になくなってしまいそうだ。

私もお仕事で音楽関係の色々な方々と接する機会があるが、みんな口をそろえて「最近の音楽はどうも…」と否定的なことをおっしゃるが、一向に変化の兆しが見えて来ませんね。もっと「CDを買いたい!」と思わせるような素敵な音楽が出てこない限りCDの売り上げも好転しないでしょう。音楽配信に負けないようなCDの出現を期待するしかない…としつこく思うんですよ。アナクロニズムと思わば思え。

「マーシャルにCDの売り上げの何の関係があろうか?」と訝しむ方も多かろうが、前から言っている通り、「楽器は音楽の僕」であり、音楽が盛んにならないと楽器の出番がなくなってしまうと信じているからである。みなさんが好きなゲームだっていいソフトがなければどんなに最新の装置があっても意味がないでしょ?それと同じ。あの手この手でCDの、物質的音源の魅力を若い人たちに伝播させないと!

その魅力のひとつがCDの入れ物、「ジャケット」である。その「CDを買いたい!」と購買者に思わせる大きな可能性をジャケットは持っていたりするんだけどね。もはや「ジャケ買い」という言葉も完全に死語となった。

昨年、田川ヒロアキ氏のニュー・アルバム『アヴェ・マリア』のジャケット制作に関わった。ジャケット写真の撮影を担当させていただいたのだ。

これがですね、ジャケットってのは眺めるのと作るのとでは大違い!一枚一枚心を込めてシャッターを切りましたよ!美しい音を奏でる素晴らしいマーシャル・プレイヤーのひとりでもあるし、「いい作品になれ!」、「ヒットしろ!」って願いを込めてね。

おかげさまで、素晴らしい内容と梅デ研の秀逸なデザインのおかげで我ながら納得のいく仕上がりとなった…とひとり悦に浸っている。

Tagawa

 

これだもん、ピンク・フロイドあたりがヒプノシスにデザインを依頼するのも、ヒプノシスが次から次へといい作品をピンク・フロイドに提供したのもわかるってもんだ。お互いにいいものを作ろうっていう気概があったのだ。

それほどジャケットは大切なのだ。

今日はコレ。ゴメンナサイ、写真に写っている人たちが半袖を着てる。古いネタで恐縮であります。

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以前のブログでも紹介した『ミュージック・ジャケット・ギャラリー』のお話し。東京は2012年7月 19~24日まで新宿の高島屋で、大阪は7月27~8月1日までHEP HALLで開催されたレコード、CDのジャケット展だ。

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展示はいくつかのテーマの他、MJG(ミュージック・ジャケット・ギャラリー)でおなじみの日本屈指のコレクター、植村和紀氏のコレクションが陳列された。

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ウワさをすればヒプノシスの名作ジャケットたち。そういえば、おととしは展示予定のコレクションの運搬中にトラブルが発生し、急遽一日だけヒプノシスのジャケットを並べて危機を回避したのだった。

いずれにしてもヒプノシス作品はいつ見ても素晴らしい。そのデザインだけでなく、どの作品も音楽の内容がいいからだ。

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さまざまな立体ジャケットの展示…

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上段左の1959を模したRHINOの4枚組コンピレーション・ボックスも再登場。

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ピンク・フロイドのボックス・セット他。

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ピンク・フロイドの諸作はこうして並べるといよいよ素晴らしいね。視覚と聴覚、音楽とジャケットのコンビネーションの頂点に到達した。

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今回もジャケット・デザインの人気を競う「ミュージック・ジャケット大賞」の投票が実施された。

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大賞の候補、CD50作品と豪華パッケージ15作が展示され、その場で投票が行われたのだ。

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すでに結果は発表されているのでコチラをご参照されたい。

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この他にもCDの魅力を伝える展示が色々と施された。2012年はCDが登場して30周年だったんだね。

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そういえば、はじめCDプレイヤーを持ってなくて、会社の同僚にカセットテープにダビングしてもらって聴いていた。初めて買ったCDはチャーリー・パーカーの『Bird at the Roost』という2組の未発表音源の2枚組ライブ・アルバムだった。LPが出なかったから仕方なくCDを買った。その次は確かルー・ソロフの『Yesterdays』だった。マイク・スターンが好きだったからね、あの頃は。

あれから30年も経ったのか…。

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CDの製造過程を説明した展示。

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高音質CDの聴き比べコーナー。

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CDに替わるメディアたちの展示も。

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これらはPLAYBUTTONっていうんだってサ。失敬ながら雰囲気出ないナァ。媒体としてメモリースティックも取りざたされていたこともあったが、どうもダメだったみたいだね。やっぱ回らないとダメなんだよ、音楽メディアは。

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「ブリティッシュ・ロック&ポップスの50年」という展示も設置された。ブリティッシュ・ロックねェ…。本当に好きだからあえていうけど、何とかならんものだろうか…。BPI(British Phonographoc Industry)のおエライさんはいつも「UKのアーティストがアメリカのヒットチャートをにぎわしている」っていうけど、サッパリうれしくないっつーの。

個人的に言わせてもらえば、イギリスからギター・ヒーローが出てくるまでプログレッシブ・ロックを除いてブリティッシュ・ロックは謹慎処分としたい。ギター・ヒーローは君たちが作ったものじゃないか!なのにどうしてこんなことになっちゃったんだ?!

と力んだところで、若者の間では「ブリティッシュ・ロック」という言葉すらもう使われてないんだってよ!「UKロック」ってんだって。マーシャルの友人にこの話をしたら「そんな言葉は存在しない!我々の国の音楽は『ブリティッシュ・ロック』だ」とハッキリ言ってたぞ!

「どうしてブリティッシュ・ロックが栄えたか」という説明が展示されていた。「地域性の違いによってバラエティに富んだ音楽が生まれた」的に分析されていたように記憶しているが、その通りだと思う。イギリスの人たちは「オラが村」のロック・スターを本当に誇りに思ってるからね。

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CDが初めて発売されたのは1982年の10月1日のことだったそうだ。

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こんなごっついプレイヤーだったんだね。初CD作品はビリー・ジョエルの『ニューヨーク52番街』だった。

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この一作をとっても30年の間にこんなにたくさんのバリエーションが生まれたんだね~。

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さて!さてさて!面白いものをアタシは発見してしまいましたよ~。MJGとは直接関係はないが、音楽を聴くものとして実に興味深い文献にブチ当たった。ちょっと長くなるけど興味のある人はお付き合いくだされ。

冒頭に記した通り、私は巷間の音楽がツマラン的なことをしつこく書いている。だってホントにツマんないんだもん。

その遠因として録音の状態があまりにもドイヒーではなかろうか?ということも示唆してきた。極度な「ドンシャリ」。イヤホンで聴くことを前提として高音と低音をアッピールしているのかもしれないが、ギターなんか歪みすぎということもあって何を弾いているのかさっぱりわからん。コレじゃ子供たちだってギターのコピーなんかできっこない。だから譜面に頼る。譜面ったってTAB譜だよ。結果、「耳コピ」なんておかしな言葉まで生まれてしまう始末。鼻でコピーができるか?ってんだ。

さて、このドンシャリ問題、実は歴史的に今が初めてではないらしいのだ。

以下は石井宏さんという音楽評論家の『帝王から音楽マフィアまで(新潮社)』という1993年に上梓された辛口のクラシック音楽論評集から。書かれた時期の正確な記載がないが、1989~1992年の間に執筆されたようだ。テーマは「CDは腐る」という内容の評論。

この文章がもっとも初期の1989年に書かれたと仮定しても、1982年のCDの発売から7年も経っていることになり、いささかタイムラグが大きすぎる感は否めないが、私が興味を持ったのは主テーマの「CDが腐る」という箇所ではまったくないので問題なし。何千枚も持っていて今更CDが腐るといわれても困るばかりなのだからそんなことはパスしちゃう。

この方がおっしゃるには、「録音の百年史(当時)は進歩の歴史であって、進歩のたびに軽便化をともない、ある種の抵抗をともなってきた」という。

その通り、それと技術が進歩して再生メディアが多様化すると、レコード会社はハードの形態に追われる格好となり、どうしてもたくさん売れるソフトの制作に専念し、音楽作品のバリエーションが少なくなってしまう。これは私の意見。このことは一種の経済政策で、ソフトの進化よりもハードの進歩を政府が推奨しているから…という話しを聞いたこともある。

まだまだCD化されていない作品は山ほどある。が、それでも30年の間にCDはかなりLPのバリエーションをカバーしてきたと個人的には感心しているつもり。

で、「この技術の進歩、蓄音機から電気蓄音機(電蓄)に移行した時、愛好家たちから『騒がしいだけで音がヒドイ!』と酷評された」そうだ。電気の力を借りて大幅にアップした音量に愛好家たちは辟易したのだ。

その後、我々世代にはおなじみのLPレコードが出現する。「LP盤は従来のSP盤に比べて割れにくく、収録時間も長い上にノイズも少なく、格段の進歩を遂げ急速に普及した。しかし、やはり愛好家たちは音質面で抵抗したのだった。

『LPの音はドンシャリだ!』…と。

当時のソフト会社もハード会社もLPの機能を活用してこのドンシャリを強調しようと狂奔した。そして、このドンシャリに抵抗した人たちは『音楽はどこへ行ってしまったのだ…』と嘆いた」という。

また、「(装置の)軽便化はまた内容の軽便化だった」とやっておいて、「SPレコード時代には、そこに詰まっているものは確かに『芸術』であった」とも述べていらっしゃる。音の悪いノイズだらけのSP盤からいい音楽やモノスゴイ演奏を聴き取ろうと真剣に音楽と対峙したというのだ。きっとBGMなんて概念すらなかったに違いない。

何のことはない、まったく同じことを今でも繰り返しているのである。おもしろいナァ~。

こうしてソフトの形態に関しては、技術の進歩にともない数々の変遷を繰り返してきた。ところが、サイズの変更はあれど、ソフトの容器であるジャケットはいつの時代もソフト自身のそばにあった。これが今なくなるかもしれないという事態に陥っている。

あなたはジャケット要りますか?それとも要りませんか?(即答)私は要ります!

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…これでおしまいにしようかと思ったが、仲良くしていただいている著名な音楽評論家のお友達からこんな情報をいただいた。音楽配信の利用に関する、あるアンケートの結果が波紋呼んでいるそうだ。

それは、「音楽ダウンロードの利用経験(私は皆無。アンチだから)、頻度がともに減少傾向にあって、1か月あたりの音楽にかける金額についても0円という回答が68.6%を占めた」という。それで、「違法ダウンロードに対する刑事罰強化で売り上げが上がると思うのか?」と反駁の意見が寄せられているよう。

音楽離れが進んでいるのは、「音楽」がゲーム他、音源メディア以外の手段で提供されていることもあるだろうが、基本は冒頭に書いたことに尽きると思う。いい音楽がないから音楽から離れちゃうんじゃないのかしらん?

レッド・ツェッペリンやディープ・パープルが盛んなりし頃にこの配信システムがあったら、私だって利用していたかもしれない。そして、それで気に入ったらちゃんとレコードやCDを買ってましたよ。なぜならそれに値する音楽だと思うからね。

昔は何しろレコードの内容に関する情報は文字しかなくて、雑誌のレビューなんかを読んで、試聴なんかまったくせず「イチかバチか」清水の舞台から飛び降りるような気持ちで大枚はたいてLPを買うワケだ。当然レビューは「売らんかな」でいいことしか書いてないので、中には「大ハズレ!」なんてこともしょっちゅうだった。

でも、そこから新しい知識を得ることも多かったし、高い金を払ってせっかく買ったので、好きになるまで根性で繰り返し聴くなんてことも当たり前にしていた。音楽も新鮮に聞こえた。先の石井先生じゃないけれど、演る方も、作る方も、売る方も、聴く方もみんな今よりも音楽をもっと愛していたように感じますな。

やっぱり気にいったものや好きなものは形として持っておきたいのが人情だと思うんですよ。そういう音楽じゃないから誰もCD買わないのではないか?と信じてる。

このアンケートには、「日本の音楽業界はこのまま死んでいくのかな」と将来を憂う、ごく常識的なご意見も散見されているようだが、死んでも不思議はないんじゃないかしら?だって聴きたい音楽がなければ誰も音楽なんて聴かないでしょ?

よくサ、「無人島に持っていく1枚」とか「我が青春の1枚」みたいな、お気に入りのレコードやCDについて語る企画ってあるじゃない?アレ、近い将来なくなるよね。もしくは「無人島に持っていく1ダウンロード」とかいうのかね?イヤ、待てよ、そもそも電波が通ってダウンロードできるデジタル機器があれば無人島も怖くないのか…。やっぱりこの手のアンケートは絶滅するね。

また書くけど(今日はもうソロソロ終りね)、まずは「楽曲」と「アーティスト」という言葉の使い方を見直してもらいたい。単なるレトリックの問題と軽んずることなかれ。我々は言霊の国の住人だ。英語の2.5倍もの語彙で日常生活を送る国民だ。世界でもズバ抜けて言葉に対する感受性が高い民族のハズだ。

だから現在流布している巷間の音楽が「アーティスト」が奏でる「ガッキョク」なんかではないことは、音楽を売る方も買う方もみんなウスウスわかっているハズだ。これらが素直に「うた」と「歌手」と呼ばれる正常な状態に自ら戻らないことには、日本の音楽業界は死にゆくことを拒否できなくなるのではなかろうか?

「歌手」が届ける「うた」があった時代は、流布する曲も今より格段にクォリティが高く、演奏者にも高度な演奏能力もあった。でも、誰も「ガッキョク」だの「アーティスト」なんていう大げさな言葉なんか使わず、音楽を心から楽しんでいたように記憶している。

「輝く!日本配信大賞」…誕生の日も近いのだろうか。ナンカ通信機器のメーカーの新商品コンテストみたいだな…。

(写真提供:株式会社 金羊社 奥平周一様 この場をお借りしてご協力に深く感謝申し上げます)