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2015年4月23日 (木)

【Music Jacket Gallery】 乗り物ジャケット特集<中編>

一昨日、テレビのニュースでやってたけど、本気でLP人気が復活しているんだって?
こんなの過去20年ぐらいの間に何回喧伝されたかわからないので、あまり信用できないというのが正直なところ。
あるいは、仮に今人気が少し戻って来たとしても長くは続かないだろうな…というのが二番目の感想。
「ヤベ!あんなにLP売らなきゃヨカッタな!」というちょっとした後悔の念が三番目の感触。
それよりも何よりも、流行りもの好きの連中にLPを聴くためのハードを買わせるための「政府&マスコミ」のデマ(←これはドイツ語のDemagogieが語源)のような気させする。
だって、そうでしょ?
今までもSP、LP、MD、LD、DVDの類、オープン・リール、カセット等々、めまぐるしくハードは変遷してきた。時代のアダ花として「Lカセット」なんてのもあった。
こんなことをしていると、レコード会社は何種類ものフォーマットで同じものを作らなければならず、結局売れるソフトしか出さなくなってしまう。すなわち音楽文化の衰退だ。
まだCD化されていないLPってどれくらいあるんだろう?
これほどCDが定着し、はや配信に駆逐されようとしている昨今でも未CD化の音源は仰天するほど多いのではなかろうか?

何かの本で読んだんだけど、これは監督官庁の違いが大きく関わっており、ハードを担当する官庁がソフトのそれより上席だからという話しだ。
もちろんテクノロジーの進歩ということもあるが、ハードを作っている企業の方が大きいことが多いし、政府へのパイプが太いので話が通りやすい。
ま、世の中だいたいそういうもんだ。

番組中、LPを買っているお客さんへのインタビューで、「配信では音楽を聴いている感じがしない」と答えている若い人がいた。いいぞ、いいぞ!
そう、音楽をアルバムで聴かず、音楽配信で1曲ずつしか聴かないような傾向さえ抑え込むことさえできれば、音楽の媒体はLPでもCDでももうどっちでもいいと思っている。
いくらLPの方が音がいいったって、真価を発揮するのはかなり高級なオーディオ機器を持っているのが前提。
「LPの方が音があったかい」とか「特別なスープ」みたいなことをよく言ってるけど、ちょっとしたシステムを使って小音量で聴いているウチはLPとCD違いなんて変りゃしないって。
ただし!本当にすごいオーディオでLPを聴いたら、へへへ、アータ、CDの音なんてチャンチャラおかしくて聴けやしない。オモチャだよ。
コレは私の実体験で言ってます。
だから一般の人は無理をしないでCDの利便性を大いに享受すべきだと思うんだよね。
とにかくLPでもCDでもいいから色んないい音楽を聴いてもらいたいわ。
特に若い人たちにはドンドン時代をさかのぼっていい音楽を探す冒険をしてもらいたい。

ところで…ジャケットだけはナニをどう転んでもCDはLPにかなわない。
今日も植村コレクションと共にその魅力をお伝えする。

今回紹介するアイテムも2013年7月~9月に金羊社のギャラリーに展示されたもので、現在開催中の内容とはまったく異なることにご留意されたい。

「乗り物ジャケット」特集の<中編>のはじまり、はじまり~!

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かつてClimax Chicago Blues Bandと名乗っていたこのグループは1969年結成の古株だ。「Chicago」がバンド名に入っているのでアメリカのバンドみたいだけどさにあらず。イギリスは中西部、スタッフォードの出身だ。
デビューから3年後にバンド名から「Chicago」をハズして現在に至っている…ってまだやってのかよ!
このバンド、20枚にも及ぶアルバムをリリースしているが、私の認識がまちがっていなければ、ついぞ日本では人気の出なかったハズである。
私もHipgnosisのデザインで有名な『Tightly Knit(ハゲのオッサンが靴下を口に入れているヤツね)』とか『FM/Live』ぐらいしか持っていないが、テレキャスター丸出しのPete Haycockのギターがなかなかに味わい深くてよろしいな。
このバンド、歌ものはどうってことないのだが、インスト曲になるど猛然とカッコよくなる。聴きどころはどうしてもソコになるだろうナァ。

切手をモチーフにしたジャケットといえば、まずThelonious Monkの『Unique』が頭に浮かぶ。あとJohnny Griffinにも一枚あった。広い意味では『Free Live!』もそうかな?
この切手の中にはマンハッタンをバックにした飛行機が描かれている。「8」というのは当然8枚目のアルバムということ。
コレ、乗り物ジャケット?
「Stamp Album」というのはもちろん「切手帳」のこと。何かのシャレになっているのだろうか?
「切手」といえば、昔は趣味の筆頭に上がったけど、今でも集めている人いるのかしらん?「切手趣味週間」とかなつかしいね。
いいジャケットだ。

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また来たね、ポール。
Wingsの『Wings Over America』。この頃のPaulはヨカッタねぇ。向かうところ敵なしの絶好調感丸出しって感じだ。
テレビでもやってたもんね。
1976年の『Wings Over the World』というツアーの一部を収録したライブ盤。
このツアー、アメリカとカナダで31公演をこなし、60万人を動員した。だから一か所平均2万人という計算。
今はEXILEでも100万人以上動員する時代なので、アメリカ全土を回って60万人とは情けないように見えるが、40年近くも前の話しである。すさまじい人気ぶりだ。
今回の来日では22万人を動員するらしい。ざっと40億円ぐらい?ま、全部入って来るワケじゃないけどスゴイ。コレに物販のロイヤルティが加算されるってとこ?
「Hey Jude」1曲だけで、孫子の代まで遊んで暮らせるほどの富を得たとかいうよね?お金は邪魔にならないっていうけど、そんなにあるとチョットは邪魔なんじゃないの?

さて、このアルバム、LPで三枚組。国内盤には銀色のギンギンの帯が巻いてあった
このアルバム、最初は二枚組でリリースする計画だったが、『Wings from the Wings』という三枚組の海賊盤の売れ行きがやたら良いということを知って計画を変更した。
Paulは録音した全公演のテープを聴き、28曲のベストテイクを5つずつ選び、6週間かけて絞り込みミックスを実施したそうだ。
一部ではオバーダビングを余儀なくされた曲もあったらしい。なぜなら、観客の歌声が音痴すぎてそのまま収録できなかったのだ。

ジャケットはHipgnosis。
インナー・スリーヴとレコード・レーベルはすごくカッコいい。さすがHipgnosis。
内ジャケのイラストはJeff Cumminsという人の作品。この人はRainbowの『Straight Between the Eyes』やThe Moody Bluesの『Caught Live』やTed Nugentの『Weekend Warriors』なんかも手掛けている。
でも、コレって三枚組なのになんで普通のゲイトフォールドなんだろうね?
『Yessongs』みたいに豪華にするとか、『All Things Must Pass』みたいにボックスに入れればよかったのに…。
1974年のTodd Rundgrenの『Todd』は二枚組にも関わらずシングル・ジャケットなんだけど、あれは世界的な紙不足が原因だったとか。
この三枚組のリリースは1976年。紙不足は解消されていたと思うんだけど…。

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Mike Oldfieldの『Five Miles Out』、1982年の作品。
何と言ってもMike Oldfieldとくればひとりで2,400回だかダビングして作った『Tubular Bells』。
このアルバムはそれとは正反対にレギュラー・グループの体でレコーディングに臨んでいる。メンバーを見るとナゼか10ccのRick Fennが参加している他、Carl Palmerもゲストでパーカッションを担当している。

ジャケットのデザインはMike Oldfield自身。
この飛行機はロッキード社の「モデル10エレクトラ」という機種で、機体の装飾は、リンドバーグに続いて大西洋単独横断飛行を成功させた女性パイロット、アメリア・イヤハート(Amelia Earhart)が、1937年に赤道上世界一周に挑んだ時のもの。すなわち操縦しているのはアメリアということになる。
「Amelia」という名前に聞きおぼえがある人もいらっしゃるのでは?特にJoni Mitchellファン。
彼女の「Amrelia」という曲はこのAmelia Earhartのことを歌ったもの。MethenyやらJacoやらが登場することでやたら人気を得たJoniの映像作品、『Shadows and Light』には確かアメリアの映像が収録されていたような…。
アメリアはその1937年の飛行中、南太平洋で忽然と姿を消した。

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私もね、小学生の時に『エクソシスト』で『Tubular Bells』のメロディを初めて耳にして、中学生になってからアルバムを聴いた途端ハマってしまいましてネェ。
ナンダカンダで関連商品をこれだけ持ってる。
で、この内容を他の作品にも期待して買っちゃうんだよね~。『Hergest Ridge』、『Ommadawn』、『Incantations』、『Platinum』、『QE2』、本作、『Crisis』、『Discovery』…ココで止めた。
やっぱり『Tubular Bells』だけなんだよね~、聴けるの。
で、本作も同様。
A面全部を費やしている「Taurus II」なんてかなりの力作で決して悪いワケじゃないんだけど、とにかく何も残らない。また、そこがいいのかもしれないんだけど…。
そこいくとやっぱり『Tubular Bells』の衝撃はスゴかった。当時は一日何回も聴いちゃったもんね。
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このジャケット、内側が可愛いの。
「Taurus II」録音時のトラックシートが使用されている。こんなにたくさんの楽器が使われているのね?

1_img_9938Facesの1974年のライブ・アルバム。
日本では『フェイセズ・ライブ』ぐらいのタイトルになっていたけど、原題は『Coast to Coast:Overture and Beginners』と長い。
1973年にアナハイム・コンベンション・センター(今、NAMMをやっているところ)とハリウッドのパラディアムで収録された。
コレ、どう見ても「Faces」のアルバムに思えるが、Faceのレパートリーは3曲。一方、初登場となる曲も含めたRodのソロ・レパートリーは6曲と、Rodソロ優勢。
当時、Rodは「ソロ」名義でコンサートをしていなかったので、「Rod Stewart/Faces」と連名のクレジットとなった。
アメリカでは、LPはRodのソロ・アルバムをリリースしていたマーキュリーから、カセットと8トラ(!)はFacesのアルバムを取り扱っていたワーナーから発売された。
そうした複雑な事情があったためか、このアルバムは日本でだけしか販売されない時期があったそうだ。

大分前にMarshallの連中と会食をした時、比較的年配の女性たちとテーブルが一緒になった。
こんなことは滅多にないんだけど、昔のロックの話題になって、ある女性は「私はRodにメロメロだったの。Faceも何回も観たわ」とか「私は何と言ってもRegi。昔の曲なら全部歌えるわ!」…日本だったら「秀樹大好き!」とか「ひろみに夢中!」とかいう話しである。
こういうところに「ロックの国」と「そうでない国」の大きな差を感じるんですよ。

一方、私はどうもRod Stewartにのめり込めない。『Gasoline Alley』なんかは結構よかったりもするけど…。ナンカ素直にロック感を汲み取れない。
『Ooh La La』とか『Long Player』なんかはごくタマに聴くこともあるんだけど、同様にFacesも夢中になったことは一度もないのよ。
コレが、来日公演でのPaul Gilbertもそうだったけど、NAMMのアトラクションで出ているバンドなんかも「Stay With Me」を演ったりするんだよね。向こうの連中にはこの曲、スタンダードなの。それで例の「ギッタ~」って言うところをうれしそうに演るんだな。

あ、それとこのアルバムは山内テツがFacesに参加して初めての音源となった。
そして、この音源が録音された翌年の2月、Facesは来日を果たす。
Faceはメンバー全員大酒のみで、滞在中ローディと共に日本酒を毎晩飲み狂ったらしい。
山内さんも同様で、ステージ前にウイスキーのボトルを半分、ステージ中に残りの半分。終演後、またボトルを1本空けたという。これぐらい飲めないと外人とは付き合えないってことかもね。あ~、ミュージシャンにならなくてヨカッタ!
Rodはスコティッシュの家系だけに頷ける話だ。
スコティッシュといえば、かつてミュージックライフ誌の編集長だった東郷かおる子さんの著書『わが青春のロック黄金狂時代(角川SSC新書刊)』に書いてあったが、東郷さんも体当たりで英語を覚えたクチらしいが、Rodの英語は全く歯が立たなかったらしい。ナニを言っているのが全く聞き取れず冷や汗が出たという話し。ああ、よくわかるナァ、その気持ち!

最後にひとつ。
ジャケットのことを調べようと久しぶりにCDを棚から引っ張り出して来て中をチェックしたが、まったくヒドイ!
元から記されていないのかも知れないが、ジャケット・デザインのクレジットはおろか、レコーディング・データも載っていない。歌詞と日本語解説だけ。
そもそもこのLPはゲイトフォールドでしょ?内ジャケの写真はどこへ行ったの?
やっぱりこういうところに音楽文化の民度の低さを感じるナァ。

1_img_9910スキスキ、Sparks!
出世作の『Kimono My House』がIslandからのリリースだったので、てっきりイギリスのバンドかと思っていた。RonとRusselのMael兄弟はアメリカ人だ。
それと、解説書等に「Mael」を「メイル」って表記してるけど、コレ本当に「メイル」って発音するのかな?
Sparksというとやっぱり『Kimono My House』ということになるんだろうけど、その前にもHalf Nelson名義の同名アルバム(Grace kellyのジャケット)とSparks名義の『A Woofer in Tweeter's Clothing』というアルバムをBearsvilleからリリースしている。
買って聴いたけどおもしろくない。
やっぱり『Kimono』からが断然いい。でも、それもそう長くは続かなかった。せいぜい『Big Beat』までかな~、私の場合。
でも、その初期の4枚はどれを聴いてもSparksでしか聴けない独特な曲作りで実によろしい。
有名な『Kimono』の1曲目、「This Town Ain't Big Enough for Both of Us」なんて「歌謡一部形式」だもんね。インストのパートは色々やっているけど、歌の部分はズッと同じメロディを繰り返しているだけ。サビなんてない。スゴイ発想だと思う。
あんなに魅力的なコーラスのメロディだもん。普通だったらサビを付けて展開させたくなっちゃうと思う。
弟のRusselの声で好き嫌いが分かれるかもしれないが、Sparksの場合はRusselの声がシックリくる。「Amateur Hour」なんか誰かカバーすればいいのに!今ならすごくウケるんじゃない?それとも誰か演ってるのかな?

それと、ジャケットが比較的いいんだよね。
1981年の『Whomp That Sucker』なんかすごくいい。まるで力石徹が矢吹丈をダブル・クロスカウンターで倒した時のようだ。内容は知らないけど。
それと1984年の『Pulling Rabbits Out of a Hat』のジャケットは一体どうしたことだろう?
コレ、完全にFrank Zappaの『Them or Us』の裏ジャケじゃんね。(同じ年のリリースでSparksの方が4か月早い)
この『Indiscreet』のジャケット写真を撮ったのはRichard Creamerという人。KISSのライブ写真や数多くのロック・ミュージシャンのアー写を撮っている。
他のジャケット写真としてはREO Speed Wagonの音叉を加えた魚のヤツ(ゴメンちゃい。REOって私かすりもしてないの)とか、Toddの2枚組ライブ・アルバム『Back to the Bars』なんかに関わっている。
チョットー待った~、チョットー待った~!と言う人もいるかもしれない。そう、「Toddの『Back to the Bars』のジャケットのデザインはHipgnosisじゃんかよ~!」っていうんでしょ?
ご明解。
でもね、内ジャケットのライブ写真はこのCreamerが撮っているんよ。あんまり出来はよくないと思うけど…。

この「♪ほっすぴたりてぃ」で楽しく始まる1975年の『Indiscreet』は『Half Nelson』から数えて5枚目のアルバム。プロデュースはTony Visconti。前作の『Propaganda』や『Kimono』ほどは当たらなかった。

ここでマーブロ流豆知識…Ron Maleやヒットラーのようなヒゲを日本では「チョビひげ」と言うが、英語ではどう表現するか…。
答えは「toothbrush moustache」、すなわち「歯ブラシひげ」だ。
Ronはプロのグラフィック・デザイナーでToddの『Runt:The Ballad of Todd Rundgren』の内ジャケなんかを手掛けている。

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「ロック名盤XX選」とか「ロック入門△△」の類の企画となるとかなりの確率で選出されるこのアルバム。
ClaptonやらWinwoodやらの当時のロック界の重鎮が集結したというとことが肝なんだろうけど、そんなにいいかナァ?
少なくとも入門者が聴いたところで何ら面白くはないのではなかろうか?
正直、私も実際かなり後になって聴いた。
職業柄、KellyさんのBlind Faithの方がなじみがあるぐらい。

それでもチョットした思い出があって…Geoff WhitehornがまだMarshallのデモンストレーターをしていた頃、FUZZY CONTROLをフィーチュアしたMarshallのイベントを開催したことがあった。
場所は今は無き渋谷のBOXXで、今は無き隣のAXにCharさんが偶然出演していた。
Paul Rogersの関係でCharさんと仲の良かったGeoffは、自分のリハーサルが終わると「オイ、シゲ、Charに会いに行こうぜ!」と言い出し、ふたりしてAXの楽屋を訪ねた。
「お~!」なんつってひとしきり盛り上がった後、Charさんは新しく導入したStratocasterを取り出しGeoffに渡した。
チョコチョコっと弾いた後、よせばいいのにGeoffは私にそのギターをパスしてきた。
私はそのままCharさんにギターを返そうとしたら、
「何だよ、お前も弾いてみろよ。ギターやってんだろ?」とCharさん。
その前にもCharさんとは何回かご一緒させて頂いていたが、目の前でギターを弾いたことなんて当然ありゃしない。
エライ恥ずかしかったが、仕方ないので教わったばかりのGeoffの曲をチラっと弾いてCharさんにギターを戻した。
するとCharさんはいきなりギターを弾きながらGeoffと私の前で歌い始めた。
その曲はこのアルバムに収録されている「Presence of the Lord」だった。
Charさんは歌の部分だけでなく、後半のインストの部分も弾き、キチッと丸々1曲仕上げて見せてくれた。
そういう態度がやはり一流であると感心した。そして、この時代の人たちはやはりこのアルバムをマスターしていることを思い知った。
そういえば何年か前に来日したJoe Bonamassaも「Had to Cry Today」を演奏していた。アレ、私よりだいぶ若いんだけどね。

さて、このジャケットが物議をかもしたことは有名だ。
トップレスの若い女性が男性のシンボルを想起させる飛行機のようなものを持っている…という図なのだから当り前だ。
今なら何でもないかもしれないけどね。このアルバムが出たのは1969年のことだ。
したがってアメリカではメンバーが写っている写真に差し替えられた。
このジャケットのアイデアと制作はEric Claptonの友人のBob Seidemannというカメラマンによるもの。
思想は「人類の創造性」だの「テクノロジーの進化」だのもっと崇高なものであった。
このSeidemann、他にもいい仕事を残しており、Jackson Browneの『Late for the Sky』、Neil Youngの『On the Beach』、Randy Newmanの『Little Criminals』、Heartの『Little Queen』、Herbie Hancockの『Mr. hands』、Larry Carltonの『Sleepwalk』等々のジャケット写真はこの人によるものだ。
他にもGreatful DeadやJanisのアー写も多数残している。

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これまた名盤の誉れ高いYesの『Fragile』。
邦題の『こわれもの』は実にウマいことやった。今だったら躊躇なく『フラジャイル』とやられただろう。
私はいつも言っているように「原題至上主義」だけど、こうしていいと思うものはちゃんと素直に「いい」と言います。
「Roundabout」や「Heart of the Sunrise」や「Mood for a Day」に人気が集まるのだろうが、私は断然「South Side of the Sky」。
このアルバム、1971年前の発表なんだよね。44年前!やっぱりコレと今の巷のロックとを比較すれば猛烈に今のロックが幼稚化しているとしか思えないだろう。
このアルバムとか次の『Close to the Edge』を経て、Frank Zappaが1975年にリリースする『One Size Fits All』までが、普遍的娯楽性を伴ったロックにおける、人間の英知と団体器楽演奏技術の頂点で、もう人類がこのあたりのレベルを凌駕することは永久にできないと思っている。

ひとつ言っておきたいのは…『海洋地形学(Tales from Topographic Oceans)』のことだ。『Fragile』→『Close to the Edge』→『Yessongs』と盛り上がりに盛り上がっちゃって、しかも、後ろに『Relayer』が控えちゃってるもんだから、まず人の口には上らない。
熱狂的なファンは知らんけど、Yes好きを自称する一般人の口からですら「『海洋地形学』がスキ」というのを聞いたことがない。
大抵「持ってるけどほとんど聴かない(←要するに聴いていない)」とか、「聴いたことがある」程度のものだ。
このアルバムの不幸は1曲目にある。
退屈なのだ。
でもLPでいうところのC&D面はヤケクソ性も感じられるほどの熱演で聴きどころ満載なのだ。2枚組なんかにしなければよかったのにね。

…と今、上に挙げたYesのアルバムのジャケットデザインは有名なRoger Dean。
「こわれもの」だから、メンバーはジャケットのイメージとして「磁器」を登場させるアイデアを出したらしいが、Roger Deanは星をふたつ登場させ、裏ジャケには破壊された星を描いた。
そして、破壊された星の光景が『Yessongs』のジャケットなんだと…要するに連作になっているのだ。
「こわれもの」とは「地球」のことなのね?
星に生えている木は「盆栽」をイメージして描いたらしい。

そういえば日本でもどこかにラウンドアバウトを作ったってニュースを大分前に見たけど、アレどうなったかね?
ちなみにMarshallの工場があるミルトン・キーンズはラウンドアバウトだらけだ。

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LPの時にはほぼA4大のブックレットが付いていた。
もちろんこちらもRoger Deanのイラスト。

N_img_5979頁をめくると、各メンバーのスナップ写真が掲載されていて、この写真もRoger Deanが撮ったものだそうだ。
ただし、Bill Brufordだけはステージの写真が使われており、コレは例外。
下の向かって右のページはRick Wakeman。
ゴチャゴチャ書いてあるのはすべてSpecial Thanks。
モーツァルトの名前まで入ってる。あとDavid Bowieの名前も…初期のBowieの曲のピアノはRickが弾いているからね。
待てよ…と思いJim Marshallの名前を探したが見当たらなかった。
ナゼ探したかって?
Rickは若い頃Jimの店でアルバイトしてたんよ。
その後もWater Ratsの会員同士で中がヨカッタ。
50周年記念コンサートの時には息子のAdam Wakemanがキーボードを担当した。

N_img_5984これは知らないバンド…と思って調べたら1972年結成のイギリスのプロト・パンク・バンドということだった。道理で知らないワケだ。
でも、このジャケット素晴らしい…Hipgnosisだもんね、当然。
1978年の『Crash Landing』というアルバム。
スペシャル・サンクスでPete Townshendの名前がクレジットされているらしい。
気になって音を聴いてみたら、アララ、かなりいい感じじゃないの!全然パンクじゃない。
今度見つけたら買ってみようっと!

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以上で「飛行機」系は終了。
後は鉄道やら船やら。

Brian Augerがわからない。どう楽しんでいいのかがわからない。
名盤の誉れ高いTrinityの『Streetnoise』ですらどうも…。
聴かないのをわかっていても何となくチビチビと買ってしまう。「Freedom Jazz Dance」とか「Maiden Voyage」とか、ジャズの有名曲をチラリチラリ取り入れているところがニクイ。

その両方が1974年にWhisky a Go Goで収録されたOblivion Expressのライブ盤『Live Oblivion』。
コレはスゴイ。ナニがスゴイってSteve Ferroneのドラム。そこを聴く。
でもギターはかなりトホホだよ。
この人も、優秀なギタリストでもそばにいればもっと人気が出たかも知れない。でも、イヤだったんだろうな、キーボード・メインのバンドとして…。
でも「忘却急行」なんていい名前だな。
そう、最近物忘れが多くて…ほっとけ!

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コレはかなり昔から知っているジャケット。なぜならHipgnosisの本、『Walk Away Rene』に出ていたからだ。
オランダのGreen Earingというグループの1976年の『To the Hilt』というアルバム。
「hilt」というのは「柄(つか・え)」という意味で、「to the hilt」で「徹底的に」とか「全面的に」という表現になる。
どう見ても助かりそうにないこのヒゲのおじちゃんは古いタイプの探偵らしい。
他にも、同じ写真を使ってサメのいる水槽に入れられたり、中誤記人に電ノコで頭をまっぷたつにされそうになったり、ビルから真っ逆さまに落っこちる写真と組みになっている。
いくつもの危機に遭遇し、何とかその苦境から脱出するのだが、またすぐに次の危機に直面してしまうのだ。
そうしてドップリと(to the hilt)危険に晒されながらも彼は危機と闘い、次のバトルへと立ち向かう…ということを表しているんだそうだ。

今回初めて音を聴いてみたが、ごく普通のハードロックで悪くはなさそうだ。

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説明不要ですな。
この黒いヤツもナニを表しているかは皆さんご存知でしょうからスキップ。
じゃ、コレのどこが乗り物かというと…家族の後ろに見えるボートやらヨットがそれにあたるっていうワケ。
これは合成写真で、後ろに見えるのは、アールズ・コート・エキシビジョン・センターで毎年開催されていたボートの展示会に設けられた人口の水溜りの写真だ。
アールズ・コートといえばLed Zeppelinのホームみたいな巨大なホール。Hipgnosisはそれを意識してこの写真を使ったのかしらん?

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1976年に発売されたFocusの未発表音源集『Ship of Memories』。
Focusは好き。
このアルバムの音源は1973年にコッツウォルズのスタジオで録音されたもの。
前半は硬派で後半は軟派って感じでバラエティに富んだレパートリーが楽しめて、未発表音源集とはいえ私は好き。『Humburger Concerto』よりゼンゼンいい。
しかし、ライナー・ノーツを読むと、バンド・メンバーは相次ぐツアーでスッカリ疲弊しきり、関係が悪化…レコーディングは相当大変だったようだ。
収録の「Focus V」なんて曲はJan Akkermanが寝ている間に作って、あとでダビングしたらしい。
で、常識的に考えるに、FocusファンというのはイコールJan Akkermanファンということになるだろう。
ま、Bert Ruiterが死ぬほど好きでFocusを聴いているファンはゼロではないかもしれないが、少ないことは間違いない。

私もJanファンで、ことあるごとにMarshall Blogでも言及してきた。会って写真も一緒に撮ってもらった。
そんなだからソロ・アルバムもずいぶん買った。結構出ているのはうれしいんだけど、玉石混淆もいいところで、7:3、イヤ、ヘタをすると8:2で「石」の方が多いのだ。
『10,000 Clowns On A Rainy Day』なんて1997年のライブアルバムなんて演奏はすごくいいのにせっかくのJanギターのトーンがあまりにもトホホだったりしちゃうんだよね。あれデジタル・アンプなのかナァ。
その点、このアルバムは比較的Janのギターが聴けるアルバムだと思う。
メインはレス・ポールなんだろうな。「Glider」という曲で明らかにストラトの持ち替えるところなんか実にカッコいい!
でもこの曲、「Mother Focus」と同じじゃん?
CDになって追加収録されたアメリカでのシングル・バージョンの「Hocus Pocus」も聴きもの。この曲、『Moving Waves』の本チャン・バージョンはリピートが多くて時折ウンザリしてしまうんだけど、このバージョンはコンパクトでスゴクいい。ギター・ソロもこっちの方がカッコいい。

ジャケットのデザインはオランダのCreamというところが担当している。
コレは戦艦大和(武蔵)とゼロ戦?

ちなみに「Jan Akkerman」は、英米人の前では「ジャーナッカマン」と発音してください。

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今度は飛行船。
ジャケットはJimmy Pageのチョイス。これはツェッペリン号ではなくてヒンデンブルグ号ですからね。
裏ジャケットの写真を撮影したのは元YardbirdsのChris Dreja。
何でもZeppelinのアルバムで、裏ジャケットも含めて4人が揃って撮影された写真が使われているのはコレだけだとか…。
Chrisは新バンドの結成に際し、Jimmy Pageからベーシストとしての参加を持ちかけられたが、「写真家になりたい」としてその誘いを断った。
モッタイね~。
でもそのおかげで我々はJPJのベースと音楽性を享受できることになったのだ。

Zeppelinは詳しい人がやたら多いのであんまり余計なことは書かないようにするべ。

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植村さんの『Led Zeppelin I』はゲイトフォールド仕様になっていた。

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今度は空飛ぶ円盤。
またしてもHipgnosis。問答無用の名ジャケットでしょ。
コレはよく聴いたナァ。
素晴らしい内容とカッコいいジャケット…パンク/ニューウェイブ前のロック黄金時代の産物だ。

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魚雷は乗り物ではありませ~ん!
The Pretty Thingsの『Silk Torpedo』。1974年の作品。
Pretty Thingsも比較的Hipgnosis度高し。
この次の『Savage Eye』も有名だ。
残念なのは、ジャケットはいいんだけど内容が…。
1963年結成の名門ブリティッシュ・ロックバンドで、『S.F.Sorrow』なんてのが名盤扱いされているけど、日本ではどうもウケている感触がない。
かく言う私も何枚か持っているけどiPodの在籍期間の短さは先のBrian Augerと一二を争う。
しっかし、このジャケット、メチャクチャいいナァ。

St最後はナント、ブランコ!
ひと目見てNeon ParkとわかるイラストをまとっているのはLittle Featの1972年のセカンド・アルバム、『Sailin' Shoes』。
日ごろからアメリカン・ロックは聴かん、と言っているがLittle Featは好き。

このジャケット、楽しそうにブランコに乗っているのはケーキ。ロココ期のフランスの画家、ジャン・オノレ・フラゴナールの「The Swing」という油絵が元になっている。
この作品、ナント、ロンドンの「ウォレス・コレクション」という博物館に収蔵されているらしいので今度渡英するチャンスがあったら観てこよう。
ちなみにこのウォレス・コレクションの隣の建物はかつてEMIの本社だった。The Beatlesのファースト、『Please Please Me』=『赤盤』並びに『青盤』はそこで撮影された。
右奥にいるのはMick Jaggarなんだって。
コレさ、ブランコ乗っているのは切ったケーキじゃなくて、切った後の残りの方なんだよね。こういう感覚が面白い。

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1978年の来日時には中野サンプラザに観に行った。二階席の一番前だった。

このコンサート・プラグラムの表紙を見ればわかるように『Waiting for Columbus』のレコ発ツアーというタイミングでものすごくヨカッタなぁ。
やっぱりLowell Georgeの存在感がハンパじゃなかった。
「Fat Man in the Bathtub」がオープニング曲ではなくて途中で演奏したのには驚いたのを覚えている。

N_img_0001Little FeatはLowell Georgeが没した後もPaul Barrereががんばってすごくいい感じだと聴いていたが、追いかけることはなかった。
しかし、ホンノ数か月前、下北沢でレンタル流れ品のLittle Featを280円(税別)で買った。
『Rock'n Roll Doctors』とかいう1990年のセントルイスのコンサートを収録したライブ盤で、コレがすさまじくよくて、なるほどLowell無き後も頑張っているというのを実感したのであった。
下の写真はコンサート・プラグラムの表4。

N_img_0003 …ということで2回にわたって「乗り物ジャケット」をお送りしましたがいかがでしたでしょうか?
イヤ~、ジャケットってホントにいいもんですネェ。

Music Jacket Gallery展示の詳しい情報はコチラ⇒金羊社MJG常設展

※記事内のジャケット写真は、展示アイテム以外のものは斜めに、もしくはサイズを小さくして掲載しています。
※本展示は2013年9月に終了しています。現在の展示内容は上記の金羊社ウェブサイトでご確認ください。

<後編>につづく