人間椅子ニューアルバム『萬燈籠』発売記念ミニ・ライブ
これは素晴らしい!
8月7日に発売された人間椅子のニュー・アルバム、『萬燈籠(まんどろ)』のこと。
どう素晴らしいのかというと、ただひたすらカッコいい。全曲全編スミズミまでハード・ロックの魅力に満ち溢れている。
タイトルもいい。『萬燈籠』とは津軽地方の方言で「まんまるのナニナニ」を指す言葉だそうだ。
今日は『萬燈籠』発売記念のミニ・ライブだ。CDを購入した方が先着で入場券を手にすることができた。
会場のタワーレコード地下のCUTUP HALLは超満員!
人間椅子はMarshall Blog初登場かと思われる人もいるかもしれないが、実はCONCERTO MOONとのダブル・ヘッドライナー、『Dos a tres caids!~CONCERTO MOON 炎の三番勝負~』のレポートで登場して頂いている。
今回も和嶋さんは当然Marshall。1987を使用している。
MarshallとSGのコンビネーションについては前回書いたので細かいことは省略するが、やっぱりいいもんだ。
もちろん、「いい」というのはギターの音色そのものも指しているのだが、人間椅子の作り出す独自の世界に和嶋さんとMarshallとSGの音が完全に溶け込んでいるということなんだな~。
特にMarshallに関して言えばこのキャビネット、1960TVによるところも大きい。キャビネットはとても大切なのだ。
ギター⇒アンプ(ヘッド)⇒キャビネットの序列で重要性が薄まっていくように捉えられているような風潮があるが、実はその逆…というのが私の持論だ。だって、実際に音を出しているのはキャビネットなのだから…。ま、どれも大事なんだけど。
ハートや花柄のかわいいステッカーでMarshallを飾っている女性ギタリストは少なくないけど、Marshallにお札を貼っているギタリストは世界広しといえども和嶋さんぐらいだろうナァ~。
これがまた不思議とマッチするんだよね~。
アレ、なんていうんだろう?托鉢僧が持っている「♪チリ~ン」と鳴らす鐘。
CDと同じくショウはあの鐘の音で始まった。
それにしてもこの鐘の音というのもスゴイもんだ。一度鳴らすだけで独特なアノ雰囲気を作り出してしまう。
まさか、この音を風鈴の音と受け止めて涼しがる人はいまい。
これがまたCDでは抜群の効果を生み出している。
曲は「此岸御詠歌」から…
ク~、タマランな~!このヘヴィなリフとビート!それに「がんばって!」も「負けるな!」も出てこない、人間椅子だけが織りなすことができる言葉世界。それでいて時折ハラっとさせられる黒く切ない愛情の表現…。
これぞ私がいうロック。私が提唱するロックは真のハードロック。美しいMarshallのディストーション・サウンドを必要とするガッツのあるロックなのだ!
2曲目は鈴木さんが歌う「地獄変」。CDの不気味さを見事に再現。
MCで歌詞について触れていたが、そう、人間椅子の歌詞は
ただただおどろおどろしい言葉を並べているワケでは決してなく、うまくは言えないが、歌詞によって曲が作られ、曲によって言葉が編まれているな…。
こういう感覚を覚えるのは若いときに頭脳警察を聴いた時以来だ。
これだけ言葉を自家薬籠中のものにしている様子を見ると、70年代の初めに「日本語ロック論争」なるものがあったなんてとても信じられない。
日本語のロックとして完結しているように思えるのだ。
閑話休題。お経は8ビートだと思うんだよね。木魚がハイハットの役目をして奇数拍、つまり「アタマ」で鳴らされる。
ところが何年か前に横浜の方で執り行われた親戚の葬儀で驚くべき体験に遭遇した。
ナント、そこにいらしていた僧侶が木魚を偶数拍、すなわち「ウラ」で鳴らしたのだ。
どうなるか…お経が4ビートに聞こえ、カウント・ベイシー・オーケストラのように猛然とスイングし出すのだ。
隣に座っていた音楽に疎い私の父も「オイ、これなんかおかしいんじゃないのか?」と私に耳打ちしてきたぐらいだ。
ところ変われば品変わるのはよくあることだが、あれには衝撃を受けたな。
続いて「衛星になった男」…。
「私の願い」はこうしたロックが興隆することだ。「ねぷたのもんどりこ」。
鈴木さんの歌声がまた何ともいえず魅力的だ。この曲もカッコいいナァ。
そうだ、「祭り」も和のいいサブジェクトだ。
「♪ねぷたのもんどりこ ♪ヤレヤレヤレヤ」というパートはイヤでも盛り上がるというもの。コンサートでもハイライトのひとつになるに違いない。
「桜爛漫」。和嶋さん曰く「チョットだけBlack Sabbath」。
ここでノブさんフィーチュア。
「みんな~、オレことアニキって呼んでくれ~い!」
アニキがリード・ボーカルを担当するドライビング・チューン、「蜘蛛の糸」。カンダタか…小さいころこの話を聞いてショックを受けたもんだ。
ノブさんの絶叫がこの曲にピッタリとマッチする!
そしていよいよクライマックス。
「人間万歳」…そして、「♪ぶんがちゃっちゃ」がタマらない「新調きゅらきゅきゅ節」で本編を締めくくった。
もっと聴きて~!
猛烈な勢いでアンコールを要求する観客の前に再び姿を現した人間椅子。
ずいぶん昔からジャズやロックに「和」のテイストを溶け込まそうと色々なやり方が試みられてきた。
これは自分も好みもあるので単なる私論にすぎないが、ごく自然にかつ効果的に、そして一番カッコよくこれをやって見せたのはジャズの穐吉敏子のビッグ・バンドではなかろうか。
ロックではナントいっても人間椅子だろうナァ。
これほどまでに自然にスマートの洋の東西を混ぜてうまくいったものも少なかろう。他にあるとすれば「たらこスパゲティ」と「抹茶アイス」ぐらいのものではないか?
日本人に生まれてよかったと思うことは多々あるが、ストレートに人間椅子の音楽を楽しめるのもそのうちのひとつに違いない。
英語圏の人たちがビートルズの歌を直截的に楽しむように、我々も人間椅子を楽しまなければモッタイない!
人間椅子は現在アルバムと同じタイトルを関したレコ発ツアー『~萬燈籠~』を敢行中だ。各所でチケットがソールド・アウトしているが、是非チャンスを窺って出かけて欲しい。
9月29日と30日の東京公演がファイナルだ。
人間椅子の詳しい情報はコチラ⇒人間椅子オフィシャルサイト