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2023年7月28日 (金)

【Music Jacket Gallery】カー・ジャケット特集<前編>

 
久しぶりの『ミュージック・ジャケット・ギャラリー』。
…と言っても残念ながらまだギャラリーは再開しておらず、今回お届けするのはかなり前にお邪魔した時のネタ。05ナント…2016年の4~6月の間の展示。
7年も前だよ。
でも、内容は本邦初公開。
要するに今回書き下ろしたということ。
テーマは「車にまつわるジャケット」の特集。
207年もの長い間ズ~っとネタをキープしていたのにはワケがある。
そのワケとは………どうしても書けなかったのだ。
イヤ、書く気にならなかったっていうのかな?
その理由は、私は子供の頃から全く自動車に興味がなく、何の知識も持ち合わせていないので書きたくても書くことができなかったのだ。30よく青山通り辺りでフェラーリとかランボルギーニが耳もつん裂けんばかりの騒音を出して走っているのを見かけるが、ゼンゼン羨ましくもなければ、カッコいいとも思わないのよ。
だって、ペッチャンコでアレじゃMarshallを積むことができないじゃん!
私にとっての「スーパーカー」はMarshallの1960をタテに2台とNATALのドラム・キットを1つ積み込むころができて、故障しない車なのだ。40だから、昔の「ロック」って車と女の子は切っても切れないようなことを言っていたでしょ?
ビーチボーイズみたいなヤツ。
アレがどうも苦手だった。
だって、「精神異常者」だの「子供部屋の犯罪」だの「ポン引き」だの、どう考えても私が夢中になったロックに車が出て来る幕はなかったんだもん。
最近では車の免許を取得する若い子も減少しているなんてことをよく耳にする。
だからギターを携えて高級外車に乗っているポートレイトなんかを目にすると猛烈なステレオタイプを感じる。
Ldc_2しかし、そんな車の門外漢の私がナンだって急に『カー・ジャケット特集』に手をつけたかというと…こんな車が出来したからなのです。
1960がタテに2台とNATALのドラム・キットが詰める「Marshall号」!
0r4a0013もちろんナンバーは1959。1959一応説明しておくと、「1959」というのはロック・サウンドの歴史の一部を作ったMarshallの名器のモデル・ナンバーね。1_19592この展示の時のブロー・アップ・ジャケットはジャン&ディーンとクリス・スぺディングだった。
50…ということで、この先は『カー・ジャケット』特集とはいえ、ジャケットに登場する車についてほとんど触れずに進めて参りますのでそこんとこよろしくです。
また、アーティスト名の表記が日本語とアルファベットでチャンポンになっていますが、いわゆる「表記ゆれ」ではありません。
表記の方法に意味はなく、「気分ゆれ」でやっていますのでどうかお気になさらずに…。
まずは最初のセクション。60何と言ってもこのセクションで個人的に目を惹くのはFrank Zappa and the Mothers、1972年の『Just Another Band from L.A.』。
ジャケットの赤い車はですね~…だから知らないって!
多分「Chevy 39」ってヤツでしょう。
70s『Uncle Meat』に入っている「Dog Breath, In the Year of the Plague」という曲で「♪Cucuroo carucha Chevy 39」と歌っているからそう思っただけなんだけど…。
知っているのは「Chevy(シェビー)」というブランド名。
これはナゼか日本では「シボレー」と呼ばれている「Chevrolet」の略称。
コレ、アメリカでは「シェヴロレッ」みたいに発音し、ナニをどう聞いても「シボレー」には聞こえない。
昔、アメリカに行った時にテレビで「シェヴロレッ、シェブロレッ」って盛んにCMが流れていて、文字情報が画面に現れるまでそれが「シボレー」のCMだとゼンゼン気づかなかった。
しからば「Chevy 39」とはどんなかな?と思って調べてみると下のヤツが引っ掛かってきた。
まんざらハズレでもないんじゃないの?Chevy

ジャケットのデザインはカル・シェンケル。
ウチには日英米の3種類のレコードがあるんだけど、国内盤を手に入れるのにはかなり時間がかかった。
以前勤めていた会社の音楽好きの先輩が大阪に転勤になり、向こうで見つけて送ってもらった。
一方、イギリス盤はジム・マーシャルの親友のお嬢さんに譲ってもらったオリジナル・プレスで、わざわざイギリスから送ってもらった。
左のチョット色黒のヤツがそれ。0r4a0034コレ、洋の東西を問わず、またCDにもジャケットの右下に細か~い字でナニか印刷してある。
一体ナニが書いてあるんだろう?そんなに重要なことなのかしらん?
あまりの字の小ささに最早老眼鏡をかけても読めないので、写真に撮って拡大して解読してみた。
このアルバム・ジャケットのデザインと『Uncle Meat』のブックレットのイラスト(Ruben & The Jetsは関係ありません)は微妙に考慮して似せてあります。そしてそこには4つのヒントが隠されています」…みたいなことが書いてある。
「4つのヒント」ってナンだろな?0r4a0038コレが『Uncle Meat』のブックレット。
「赤い車」ということ以外は特段似ていないような気もしますが…。
75チョコチョコと各国盤の間に違いがあるんだけど、車から突き出ているザッパの足のところに「SNAT」と書いてある。
コレは「ニョキ!」みたいな擬音なのかな?色々と調べてみたけどわからなかった。
この「SNAT」、日米盤が黄色なのに対し、英盤だけ白なの。
ところで、ザッパの足にはギプスが施されているでしょ?Img_00431971年の12月10日、ザッパはロンドンのレインボウ・シアターで暴漢に襲われてステージから落下し、足を骨折するという大ケガを負って1972年の大半は車イス生活を余儀なくされた。
下がそのレインボウ・シアター。
あのクラプトンのライブ盤や、Deep Purpleの『Made in Japan』のジャケ写でおなじみの劇場ね。
今では新興宗教の施設になっている。
で、この『Just Another Band from L.A.』をライブ録音したのは1971年8月7日。
アルバムのリリースは1972年の3月26日。
つまり、録音して、足を骨折して、それからカル・シェンケルがジャケットのデザインをして4か月後にこのアルバムを発売したことになる。
もしかしたら「SNAT」は「ニョキッ!」じゃなくて「バキッ!」かも知れないナ。Img_9626_2 裏ジャケットに記載されているクレジットの情報も違っていたり、なかったり…。
こういうのはオモシロいねェ…そうでもないか?0r4a0042ROXY MUSICはスキだったナァ。
中学2年生の時にリリースした『Viva!』の「Do the Strand」をラジオで聴いて翌日石丸電気にレコードを買いに行った。
そして、アッという間にそれまでのアルバムを全部買いそろえた。
コレは1973年のセカンド・アルバム『For Your Pleasure』。
ロキシーが1972年に出て来た時、『The Old Grey Whistle Test』のボブ・ハリスが「カッコだけのコケおどし」みたいなこと言ってしまったという話しがあるが、イヤイヤ、結果十分に個性的だったというワケ。
ま、私は『Viva!』までしか絶対に聴かないけど…。
ジャケットのコンセプトはアートスクール出身のブライアン・フェリー自身。
モデルはフランス出身のファッション・モデル、アマンダ・レア(Amanda Lear)。
アマンダはかつてサルヴァトーレ・ダリの恋人で、後にブライアン・フェリーとくっついて、この『For Your Pleasure』のジャケットで世に出て来た。
後に歌手に転身して大成功を収めた。
この黒豹を従えたアマンダの印象が強烈で、コレのどこが「カー・ジャケット」なのか?と訝しんでしまうが…80sゲイトフォールドの裏パネルにはお迎えに上がって鼻の下を伸ばしているブライアン・フェリーと高級車が登場しているというワケ。
コレはキャデラック?
女性を前面に押し出した『Siren』までのロキシーのアルバム・ジャケットはどれもヨカッタな。
ちなみにレコードでもCDでもジャケットの「面」のことは英語で「panel(パネル)」という。
それからジャケットは「Sleeve(スリーヴ)」と呼んでいます。
90sカッコいいジャケットだナァ。
ロールス・ロイス…コレはわかる。
Screaming Lord Sutchか…中学生の時、ジミー・ペイジやジェフ・ベックが参加しているということでこのアルバムが、また、リッチー・ブラックモアが参加しているということで『Hand of Jack the Ripper』というアルバムが話題になっていたが、実際には誰も聴いていなかったんじゃないかな?
ロック好きにのお兄さんがいた池田くんぐらいだったと思う。
ロード・サッチってチョット「歌に難あり」なんだよね。
名前は「Lord」と謳っているけど、庶民の出。100sいつかジム・マーシャルのお宅にお邪魔した時、トイレの壁に何枚か古いモノクロの写真が飾ってあった。
その中の1枚にMarshallを荷台に積んだ車がロンドンの街中を走っている写真があることを発見した。
そこには派手な格好をした若い男が写っていたが、それが誰かはわからなかった。
そこで居合わせた年配のMarshallのスタッフに尋ねると「アレはScreaming Load Suctchだよ」という返事が返って来た。
何でもジムは同じロンドン出身のロード・サッチととても仲が良く、それはジムの楽器店のプロモーションをした時の写真だったらしい。
ところでこの人、1999年に縊死していたとは知らなかった。
「Manic Depession」、すなわち躁うつ病を患っていたそうだ。
 
下は植村さん所有のレコードの裏パネル。
さては、このセロハンテープはハンターかな?
ウチにもこの部分が剥がれていたり爪で引っ掻いた跡が残っているレコードジャケットがたくさんあるわ。
ハンターはこの部分に値札をセロテープで貼って、販売する時にセロテープをブチっと切って値札を取り除くもんだから、こうして裏パネルにセロテープの破片が残っちゃうワケ。
コレは結構イヤだったナ。
ジャケットの紙の素材が光沢紙たっだらジワリジワリと剥がしてキレイに原状復帰できるんだけど、『クリムゾンキングの宮殿』みたいな材質だともうダメね、ハゲちゃって。
今は自分がハゲちゃってるけどよ。Img_00701972年、Papa John Creachの『Filthy!』というアルバム。
タイトル通りキッタねぇボロボロのトラックがパパ・ジョンの後ろに停まっている。
しかし、「Papa John Creach」なんて知っている人は今時いるのかしらん?
マジで日本の若者には1人もいないのでは?
広沢虎造の方がまだ知られているかも。
イヤ、私もジェファーソンのところで演っていたのをチョット知っているだけなんだけどね。
むか~し、演奏しているビデオを見てエラくカッコいい!と思ったことがあって強く印象に残っている程度。
アルバムはどちらかというと、パパ・ジョンのファンキーな「歌のアルバム」という感じ。
合間に入るヴァイオリンのソロはなかなかに不思議な感じで、「ヴァイオリン」というインストゥルメンタリゼーションの可能性がロック周辺にまだ少しだけ残されているような気がしてくる。
…ということを最近観たJohnson's Motorcarというロック・バンドのライブ・レポートにも書いた。
その証拠に最近女性ヴァイオリニストの活躍が目覚ましいでしょ?115sジョージ・ベンソンの『The Other Side of Abbey Road』。
タイトル通りビートルズの『Abbey Road』の焼き直しアルバム。
『Abby Road』のリリースが1969年9月、このアルバムのリリースが1970年6月…その間9ヶ月。
どうなんだろうね、このインターバルは?
素早かった方なのか、時間がかかった方なのか。
というのは、ジミ・ヘンドリックスは『Sgt. Pepper』がリリースされた3日後にはもうそのタイトル曲をレパートリーに組み入れていたっていうでしょ?
ま、ジョージ・ベンソンのことだからして、フェイクの具合が強烈でオリジナルとはマァ「別物」と言って問題なさそうなんだけどね。
一番オリジナルに忠実なのは「I Want You」か?
「Come Together」あたりはCTI臭が強くて思わず笑っちゃう。
一方、「Here Comes the Sun」あたりは反対の意味で結構笑える。
ドラムスでエド・ショーネシーが参加していたとは知らなんだ。
それにしてもこのジャケット!
ロンドンのセンド・ジョンズ・ウッドとはエライ違いだナァ。
撮影したのはエリック・メオラというフォトグラファーで、スプリングスティーンの『Born to Run』のジャケ写を撮った人。
CTIのジャケットでは他に見ない珍しいデザイン。
撮影した場所はマンハッタンの東53丁目らしいのだが、ナンでこの場所を選んだのだろう?
ビートルズみたいにスタジオか事務所でも近くにあったのかな?140sチョット空想を働かせると…
マンハッタンは横の通りが「Street(丁目)」、縦の通りが「Avenue(街)」となっていて、住所は5番街を挟んでイースト川側が「East」、ハドソン川側が「West」とキメられている。
で、このジャケットの撮影した場所のひとつ北の西、すなわち「西52丁目」は1950年代まで、「Birdland」を中心としたジャズの聖地だった。
夜な夜なチャーリー・パーカーやマイルス・デイヴィスがその辺りで演奏していたんだね。
だからセロニアス・モンクは「52nd Street Theme(52丁目のテーマ)」なんて曲を書いたワケだけど、今はナニもない。
大分前に行ったけど、「そこがかつてはジャズのメッカだった」という標識が立っているだけで本当にナニもない。
そのほぼ反対側ということで「ジャズのThe other side」とシャレたのか?…ま、関係ないな。
もしくは、5番街に面した51~52丁目には有名な「セント・パトリック教会(St. Patrcik's Cathedral)」があるので、ビートルズの「Abby(大修道院)」の向こうを張ったのか?…ま、関係ないな。
あ、53丁目には5番街と6番街の間に「MOMA(近代美術館)」があるわ…コレも関係ないな。
ま、いずれにしてもこういうことを考えるのは楽しい…ということよ。
 
ところでこのセント・パトリック教会ね、今から30年近く前、初めてニューヨークに行った時のこと。
朝の礼拝の様子でも見学してみようと思って8時過ぎに中にお邪魔したことがあった。
朝っぱらから荘厳極まりない雰囲気で、とても観光客がチャラチャラしていられない。
フト礼拝堂のベンチを見るとホームレスの人が前の席の背中に頭を突っ伏して寝ている。
すると、上等なスーツを着た出勤前のビジネスマンがそのホームレスの姿に気づき近づいて行った。
ナニをするのかと思って見ていたら、そのビジネスマンはズボンのポケットからスッとお札を取り出してそのホームレスの腿の上に置いたのだった。
5ドルとか10ドル札だったんだろうけど、朝から良いモノを見たと思った。
それと似たようなことをマクドナルドでも見たことがある。
席で寝つぶれてしまったホームレスに黒人のウェイトレスが近寄っていった。
テッキリ店から追い出すのかと思ったら、テーブルにそっと飲み物を置いていったのだ。
その時はアメリカも捨てたもんじゃないな…と感心した。Spc_3ハイ、次のコーナー。130スコットランド出身のシンガーソングライター、アル・スチュアートの1975年の『Modern Times』。
私は全くの門外漢で音楽について書けることはナニもない。
でも、この次のアルバム『Year of the Cat』だけは持っている。
ナゼかというとヒプノシスがデザインしたジャケットがすごく好きだったから。
このアルバムのジャケットもすごくいいと思ったらヒプノシス。
コレはどこかのマナーハウスかな?
向こうでライトを照らしているのは誰だろう?150sジャック・ブルースの1970年の『Things We Like』。
ジャックにマクラフリンにディック・ヘクストール・スミスにジョン・ハイズマンあるいはジンジャー・ベイカー…この辺りのグラハム・ボンド人脈ってのはタマらないよね。
ところが期待して聴くと、案外ワケがわからん。
でも聴きたくなっちゃう…でもどこがオモシロいのかよくわからん。
噛んでも噛んでも味がよくわからん。
コレこそがこの一派の魅力なのでは?
ジャケットのデザインは『Fresh Cream』を担当したチーム。
「我々の好きなモノ」っていうけど、ジャックはコレ、ナニを食べているのだろう。
ウインナー・ソーセージにマッシュポテトかな?
イギリスの人はマッシュをよく食べるからネェ。
メル・トーメの「Bron to be Blue」なんかを取り上げているのがチョット不思議。
170sそれと「Sam Sack」というミルト・ジャクソン作のブルースね。
一体全体、ダレがこんな曲を選んだのだろうか?
タイトルが「Sam Enchanted Dick Medley」となっているところを見ると、ヘクストール・スミスなんだろうナァ。
ミルトのオリジナル・レコーディングかどうかはわからないけど、私はウェス・モンゴメリーを迎えて録音した『Bags Meets Wes!』というアルバムでこの曲を知っていた。
ココで興味が沸くのは、果たしてマクラフリンはそのウェスの演奏を聴いてジャックのレコーディングに臨んだのであろうか?ということ。
いずれにしてもウェスのカケラも感じさせない破壊力抜群のマクラフリンのプレイはスゴイ。
個性のカタマリ!
30歳にもならないウチに誰にもマネできない自分だけの強力なスタイルを築き上げたということよ。Wm次のセクションは苦しい。180ジャクソン・ブラウン、1974年の『Late for the Sky』。
ホント…ホ~ントにナニも知らないの、ジャクソン・ブラウンって。
別にキラいなワケでもナンでもない。
キラうほど聴いたこともないし、一生聴くこともないと思う。
ま、乗っているレールが違うとしか言いようがないわな。
でも、このジャケットってすごくいいナァ…と前から思っていた。
時々、上のアル・スチュアートのヤツに間違えちゃうんだけどね。
有名な人のデザインかと思って調べてみると、ゼンゼン違うみたい。
190s「それならココへ挙げるな!」と言われそうなんだけどニール・ヤングも全くダメなんですよ。
ニール・ヤングってスゴイ熱心な支持者が多いよね。
それも「ええッ!あなた、ニール・ヤング好きだったの!?」と、意外な人が好きでいてビックリしたりする。
中学の時に「Like a Hurricane」という曲が流行ってね…でも私は「♪ユ~ア~」と歌うあの独特な声がどうしてもニガテで近寄ることができなかった…という青春の思い出。
ああ~、車が埋まっちゃってるね。
コレは『渚にて』とかいう邦題が付いているんだっけ?
恥ずかしながら、この作品がカー・ジャケット特集の展示アイテムに選ばれるまで、砂浜に車が埋まっていることを知らなかった。210sただね、『Zuma』の塗り絵はしたいと思っていた。
それを夢を見事に果たしてくれたのがコレ。
興味のある方はコチラをどうぞ!
  ↓   ↓   ↓
【Marshall Blog】あなたの知らない「汚レコード」の世界展

60 ライ・クーダー。
『Borderline』ぐらいまではひと通り買って聴いた。
『Paradise and Lunch』とか『Chiken Skin Music』辺りは一時期よく聴いたけど「勉強聴き」の域は出なかったナァ。
ワールド・ミュージック盛んなりし頃、ライが参加したテックスメックスのフラーコ・ヒメネスのアルバムなんかはスキで結構聴いた。
Fjそういえば『Paradise and Lunch』のオープナーの「Tamp 'Em Up Sold」という曲の「tamp」ってどういう意味かをアメリカ人の友達に訊いたことがあった。
その彼はタドタドしい日本語で「そ、それは、と、とてもム、ムズカシイ言葉です」と答えてくれたのを覚えている。
つまり、ネイティブの人たちでもまず使うことのない言葉という意味ね。
日本で言うと左官屋の言葉か。Pal_2 この人はどういうことなの?
古き良きアメリカの音楽に再び息を吹き込む…みたいなことをやっているワケなんでしょ?
日本ならさしずめ琵琶語りとか、浪曲とか、都都逸とか、相撲甚句とか、長唄とかの再興…実にいい仕事をされているではありませんか!
日本に来て全国を回ると、会場の即売だけで2,000~3,000枚のCDを売る…ということを耳にしてブッタマげたことがある。
で、今回の「カー」ネタは1972年の『Into the Purple Valley』。
このアルバムもかつては「勉強聴き」したものだった。
ライはこのアルバムでウディ・ガスリーの「Vigilante Man」を取り上げているけど、私なんかはオコチャマでサ、Nazarethのバージョンの方が良かったりするワケよ。
でもこのジャケットはスキ。
『或る夜の出来事』を思わせる1930年代のハリウッド映画みたいでとてもいい感じ。
ああいうの「スクリューボール・コメディ」っていうんだよ。
スピンがかかったボールのように話がどっち方面に行くかわからない…という意味。
で、ライ・クーダーのアルバムって結構ジャケットがいいと思わない?
200sその白眉は『Chiken Skin Music』でしょう?
何となくメキシコ版のキリコみたいで実にいい感じ。
このアルバムに入っている「Chloe」という古いインスト・ナンバーね。
ライはペダルスティールを使ってハワイアンで仕上げているけど、いいよね~。
ウットリしちゃう。
でもこの曲、元はハワイアンではないんですよ。Csmジョー・パスが1970年の『Intercontinental』というアルバムで普通のスウイング・ナンバーとして取り上げて魅惑のソロを披露している。
ジョー・パス大好きな私でもコレはライに軍配を上げます。Ic 1971年の『Black Oak Arkansas』。
ブラック・オーク・アーカンソーのデビュー・アルバム。
私はゼンゼン詳しくないんだけど、ジム・ダンディだけはカッコいいと思うわ。
「アーカンソー州」と聞いてその場所を正確に言い表せる日本人って果たしてどれぐらいいるだろう?
私はムリ。
州都はどこか知ってる?
せっかくの機会だから勉強してみましょうか?
まず、ロケーションはオクラホマの東、ミズーリの南、テネシーの西、そしてルイジアナの北にあって「南部」に括られる。
「Arkansas」という綴りからすれば「アーカンサス」と読むハズなんだけど、フランス統治時代の名残で「アーカンソー」って読むんだって。
アメリカ50州には正式なニックネームっていうのがキマっていて、アーカンソーは「自然の州(Natural State)」とされている…つまり田舎だわね。
州都はリトルロックで人口が全米33位。
私が知っているアーカンソーに関することと言えば、それこそBlack Oak Arkansasとクリントン元大統領の出身地で州知事を務めていた…というぐらいなんだけど、ココ案外スゴイよ。
名物を並べてみると…
アメリカでもっとも有名な温泉地であるホットスプリングス市があって、「ウォルマート(Walmart)」の本社もアーカンソーにあるのだそうだ。
ウォルマートは日本にもあるのかな?世界最大のスーパーマーケット・チェーンね。
ミュージシャンではジョニー・キャッシュやアル・グリーンを輩出している。
個人的に関心を持ったのは、コンロン・ナンカロウもアーカンソーの出身だそうだ。
コンロン・ナンカロウはザッパが注目していたことでその名を知った現代音楽家の作曲家なんだけど、自動演奏ピアノを駆使した音楽はすこぶるカッコいいよ。
そして、極めつけは元連合国軍最高司令官だった「ダグラス・マッカーサーの出身地」ということではなかろうか?
 
このジャケットでも古くて汚いトラックが登場している。
いくらマッカーサーやクリントンの出身地でもこういう農業用のトラックがお似合いの土地柄なんでしょうな。
行ったことないから知らんけど。220sアーカンソーからアイルランドへ飛ぶ。
Thin Lizzyのデビュー・アルバム。
コレも車をあしらったデザインだったのね?気にしたことがなかったワ。
フィル・リノットは、最初「埋めたばかりの墓の中から炎上した腕が突き出ている」というジャケット・デザインのアイデアを提示したが、デッカのデザイナーがそれに納得せずアメリカ車を使ったデザインにすることで決着。
それでこの360度の魚眼レンズを使用してヘッドライトに写ったオンボロ車のデザインに落ち着いた。
コレはハメ込み写真でしょうナァ。
ところが、バンドとデッカとのコミュニケーションがうまくいかず、最初に刷り上げたジャケットのバンド名が「Tin Lizzy」になっていた。
デビュー・アルバムでこのバンドのことを知っている人なんかいないだろうし、ジャケットを刷り直すのもイヤなもんだからデッカはバンド名を強引に「Tin Lizzy」に変えようとしたがバンドはそれを拒否。
そりゃそうでしょう。
そうして正しい綴りでジャケットを刷り直してリリースしたんだとさ。
 
このアルバムって素朴でいいよね。
後期のゴージャズなThin Lizzyよりフィル・リノット本来の良さが出ているように感じる。
しかし、ブライアン・ダウニーのドラムっていいナァ…今ではNATALを使って頂いています。
「Remembering」なんて曲あたりはスゴイよ。9225次のセクションは濃いよ~!240ウリが蠍団を退いた後の最初のアルバム『Lovedrive』。1979年のリリース。
ジャケット・デザインはストーム・ソーガソン。
ヒプノシスがスコーピオンズのアルバム・ジャケットを手掛けたのはコレと次の『Animal Magnetism』だけなのかな?
私はこの『Lovedrive』までしかスコーピオンズを聴かなかった。
スコーピオンズも『Virgin Killer』やら『Tokyo Tapes』やらジャケットでモメたがるバンドだね。
クラウス・マイネはこの『Lovedrive』はゼンゼン平気だと考えていたが、アメリカで問題となりガッツリ差し替えられてしまいことがかなり不満だったらしい。
なるでしょうよ、コレは。
『Taken by Force』の墓場でドンパチも怒られちゃったんじゃなかったっけ?
私もこのジャケットはいくらヒプノシスでも好きではなかったナ。
同じヌード系でも『Boxer』とかロキシーの『Country Life』はヨカッタけど、このアルバムだけはどうもこっ恥ずかしかった。
270s先日閉館した中野サンプラザの思い出を認めた文章の中でスコーピオンズの来日公演について触れた。
私が行ったコンサートは『Lovedrive』のレコ発ツアーの一環だった。
 
私の中野サンプラザの思い出はコチラ。次のUFOについても書きました。
 ↓ ↓ ↓
私のサンプラザ 

7_sppg コレには夢中になった…UFOの1974年の『Phenomenon』。
『げんしょう』…このアルバムも『狂気』とか『宮殿』みたいに邦題の方で呼ばれやすいアルバムのひとつですな。
ちなみに「phenomenon」の複数形って知ってる?
「phenomenons」じゃないよ…「phenomena」という。
発音は「フェ~メナ」。
問答無用で素晴らしいジャケットの意匠はヒプノシス。
元々はモノクロの写真で、手作業で色を塗って疑似カラーにしたそうだ。
皆さんはコレをどういう設定だと想像しますか?
私はこの女性が超能力かなんかを持っていて、空飛ぶ円盤を呼び寄せることができる。
だから予めカメラを手にしていて、飛んで来たところを撮影しようとしている。
一方、そんなことを知らないダンナは飛んで来た円盤にビックリしている。
奥さんは一度だけ映画に出たことがあるので、この後円盤に乗ることができるのだ…とか、そういうストーリーを想像していた。
295sハイ、ところ変わってMarshallの本社があるブレッチリーの隣のフェニー・ストラッドフォードという小さい町を流れるカナル(運河)。
イギリスではチョット田舎に行けば、こうしてカナルにナロー・ボートが浮かんでいる光景をどこでも見かけることができる。
このボートに人が住んでるのよ。297その近くの原っぱに老人が4人ほど集まって空を飛ぶ鳥を指さしてみんなでワイワイやっている場面に出くわした。
私にはその姿がこういう風に見えてしまった!296sさて、このジャケットデザイン。
コレは、ダンナがニセの「空飛ぶ円盤写真」を撮ろうとして、タイヤのホイールを投げて、奥さんに写真を撮らせようとしている場面なんだって。
うまくいけばその写真を雑誌社かなんかに売り付けて小遣いでも稼ごうという魂胆なワケだ。
一方、奥さんはそんなことはしたくない。
それで奥さんはこんな顔をしているのだそうだ。
「チョット見てよ…ウチのバカ旦那」というところ。
なんかガッカリだ。
ジャケットをよく見ると確かにコリャ車のタイヤのホイールだわ。
「カー・ジャケット特集」だからバッチリか!
色々と想像して損した。
295s1975年リリースのブルー・オイスター・カルト初のライブ盤『On Your Feet on Your Knees』。
この黒塗りの車は葬式にでもやって来たのかしらん?
このままブラック・サバスのアルバムに転用できそうな不吉なイメージのジャケット・デザインではあるまいか?
この2枚組のアルバムはビルボードのチャートで22位まで上昇。
コレがブルー・オイスター・カルトのアメリカでのアルバム・セールス・チャートの最高位だった。260sそんなんでよく呼んだとも思えなくもないが、1979年に来日。
高校2年だった私は新宿厚生年金会館へ観に行った。3,800円だった。
このコンサートは私の「行っておいてヨカッタ」チャートの上位にランクされている。
宴もたけなわになるとドラマーまでギターを提げて前に出て来てね、「5リード・ギター」なんてやってたよ。
それが下のコンサート・プログラムの表紙の写真。
サービス精神が旺盛でホントにオモシロかった。
0r4a0055 4年前、Marshallの本社に行った時のこと。
Marshallの事務所内では有線のようなモノで薄っすらとロックを流していて、たまたまブルー・オイスター・カルトの曲が流れて来た。
曲は「(Don't Fear)The Ripper」といって、1976年に「キャッシュボックス 7位」、「ビルボード 12位」というバンド最大のヒット曲だった。
ビックリしたのは、20代の若い男の子がそのBGMに合わせて小声で歌っているんだよね。
43年前の曲でもABBAの「Dancing Queen」ならわかるけど、アメリカの小ヒット曲ですよ…ブルー・オイスター・カルトですよ!
不思議に思ってその場で彼に訊いてみた。
「ヴァイナルを持っていたりするワケではないんだけど、チョコチョコとアチコチで耳にしているウチに覚えちゃったんだ」
だそうです。
門前の小僧、習わぬ青牡蠣を知り…やっぱり日本とはゼンゼン違うと思った。Dfrホントだ…コレもジャケットに車が写っていたのね?
1973年、エルトン・ジョンの『Don't Shoot me I'm Only the Piano Player』。
このアルバムについては、「Daniel」と「Crocodile Rock」という大ヒット曲が収録されているのと、「Have Mercy on the Criminal」のイントロが「Layla」同様「アートネイチャー」のCM曲に似ている、そして、タイトルがフランソワ・トリュフォーの映画をパロっている…ことぐらいの認識しかなかった。
ところが、調べてみると色々なことがわかってメチャクチャ面白かった!
さすがレジナルド・ドワイト。
個人的には期せずして今回の記事の目玉になったわ。
310sまず、タイトルについて…。
上に書いた通り、コレは1960年のフランソワ・トリュフォー監督、シャルル・アズナブール主演の『ピアニストを撃て(原題: Tirez sur le pianiste, 英題: Shoot the Piano Player)』という映画から引用したとされている。
だから「a piano player」ではなくて「the pianp player」なんだろうな。
で、この「Don't shoot the piano player」という文句には出自があって、よく西部劇の酒場のシーンにチューニングの狂ったピアノを弾いてBGMを演奏している人が出て来るでしょう?
すると大抵酔っ払い同士がケンカをしたり、お尋ね者が入って来て撃ち合いになっちゃったりする。
当然、そんな時はピアノを弾いている人に流れ弾が当たって命を落とす危険性も高いワケだ。
今でも同じだろうけど、その時代にはピアノを弾ける人が極端に少なかったので、そうした撃ち合いに巻き込まれてピアニストを失ってしまうと後釜を見つけるのが大変だったらしい。
そこで、酒場の主人は「Don't shoot the piano player!(ピアノ弾きを撃たないでください!)」という注意書きを酒場の壁に貼ったっていうんですよ。
で、この話をヨーロッパに持ち帰ったのが『幸福な王子』や『ドリアン・グレイの肖像』で知られるオスカー・ワイルドなのだそうだ。
いいですか~?ココからがますます話がオモシロくなるよ~。
Dspさて、もう一度ジャケットをよく見てみましょう。
例によって車のことはわかりません。
劇場の入り口の脇に「ELTON JOHN DON'T SHOOT ME」という立て看板が置いてあって、その右奥に注目。
310sコレはマルクス兄弟が主演した『Go West(マルクスの二挺拳銃)』という1940年のMGMのコメディ映画なのね。
この項を書くためにDVDを引っ張り出してきて久しぶりに観たけどオモシロかった。
もうとんでもなくスラップスティックでスクリューボールなコメディなのね。
1_mgwMarshall BlogではQueenの話題が出て来る度に「マルクス兄弟」について書いて来たけど、打てど全く響かないのでまた書く。
 
マルクス兄弟は1910年代から40年代に活躍したコメディアン・チーム。
元は5人兄弟であったが、後に3人編成になって数々の映画に出て大きな人気を博した。
映画の中では兄弟という設定ではないんだけど、下の写真のグルーチョが一番若いワリには最もエラそうで年長者のような感じなのね。
見ての通り、ドリフの「ヒゲダンス」の元ネタ。
前かがみになる歩き方もグルーチョのモノ。
元々昔の日本のコメディはほとんど欧米のコピーだから。
「ス―ダラ節」もバーンスタインのパクリと気がついてビックリしたことがあったぐらい。
で、『Don't Shoot Me~』というアルバムのタイトルの出元はトリュフォーもさることながら、このグルーチョ・マルクスにあるようなのだ。
エルトン・ジョンはグルーチョと仲良しだったようで、グルーチョの家で開かれたパーティでピアノを弾いていると、グルーチョが手でピストルの形を作ってエルトンを指し、「ジョン・エルトン!」とからかった。
エルトンはそれに対して「Don't shoot me, I'm only the piano player」と反応した。
アルバムのタイトルはココから来ているというのだ。
だからジャケットに『Go West(マルクスの二挺拳銃)』のポスターを登場させたというワケ。1_gm_2ところで、マルクス兄弟の長兄は「チコ」といって役者である傍ら超絶技巧を誇るピアニストでもあった。
下の写真のように人差し指1本で鍵盤を巧みに叩くのが得意で、あたかもその手はピストルのような形だった。1_chico次兄はハーポ。
ハーポは一切セリフを口にしない。
すべてパントマイムで演じるのだが、その名前の由来となったハープの演奏が大きな見せ場だった。
コレがまたモノスゴイ技巧の持ち主で、後に正式な教育を受けたが、独学で奏法をマスターしたという。
ハーポがいつもヨレヨレのコートを着ていて、当意即妙にそのコートのポケットから色々取り出して見せる。
私は藤子不二雄はマルクス兄弟の映画を観てドラえもんのポケットを思いついたのではないか?とニラんでいる。1_harpo先ほどQueenの名前を出したが、何度も書いている通り、『オペラ座の夜(A Night at the Opera)』はマルクス兄弟の『オペラは踊る』、『華麗なるレース(A Day at the Races)』は『マルクス一番乗り』から借用している。
どの作品も、ギャグあり、アクションあり、音楽ありと、エンターテインメントの最高峰と言っていいでしょう。
1937年の『A Day at the Race』からは「All God's Chillun Got Rhytm(神の子はみな踊る)」というジャズのスタンダード曲も生まれている。

NaovAdr さて、先頃スウェーデンの公演を最後にツアー活動に幕を下ろしたエルトン・ジョン。
私は2011年にイギリスのクリケット場での野外コンサートで観たことがあるんだけど、いいコンサートだったナァ。
「A Funeral for a Friend」から始まる人気曲のオンパレードだった。
ベースのディー・マレイがすでにこの世にいないのが残念だったが、デイヴィー・ジョンストンとナイジェル・オルソンという全盛期のギタリストとドラマーとステージに上がったのもうれしかった。0r4a0051<後編>につづく
 

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