秦万里子's Craughers(クラッファーズ)at GEMINI Theater <前編>
「泣いて笑ってクラッファーズ」、Marshall Blog2回目のご登場。
実はこの日、クラッファーズのライブがあることを知らなかったので先約を入れてしまっていた。
しかし開演時間が午後2:30ととても早く、上演時間を2時間とすれば、その先約も果たすことができると考えた。
そして4:30頃、クラッファーズの演奏が終わり次第会場を離れるお許しを大二さんから得てダブルヘッダーの予定を組ませて頂いた。
時間通り開演。
前回同様、まずは即興によるピアノの独奏。秦万里子まず、万里子さんが奏でるピアノの音色がいいんだ。
力強く、そして繊細。
音色にドラマが宿っているのだ。執拗に反復する3つの上昇音列からある時突然ベートーベンの「喜びの歌」が導き出されてくる。
私もアート・テイタムやオスカー・ピーターソン、キース・ジャレットやチック・コリア、、ダラー・ブランドからモンク、セシル・テイラーまで色々ソロ・ピアノを聴いてきたけど、ナマで聴く効果も大きいが、万里子さんのソロ・ピアノはいいナァ。右手でメロディを作り、左手で音楽を作る…なんて言ったらカッコつけすぎか?
左手の使い方を見ていると、とてつもなく「音楽」を感じてしまうのだ。
冒頭から感動。「今日は撮影があるのでいっぱいカメラがあります。
それを何に使うのか私もわかりません。
今、お聴きになっておわかり頂いたと思いますが、『喜びの歌』から始まって、最後は『ウクライナの国歌』を弾きました。
『ウクライナの国歌』が『喜びの歌』になったらいいな、と頭の中で考えていました…本当はコレを言わなくても通じるといいんですが。
でも、わかりにくいかな~と思って言っちゃいました。
『言わぬが花』だったかしら?
次はですね『大好きなあなたへ』という曲を歌いたいと思います。
コレはいわくつきの歌でしてね…歌っている人が何人かいますけれども、本当はコーラスのために書こうと思ってこの題名を付けたんですね。
ところが自分で書いたらモッタイなくなっちゃって自分で歌うことにしました!」
「キャロル・キングの『♪You’ve got a friend』っていう曲知ってる?
コレね、私が小学校から中学校に行く時にレコードが擦り切れるほど聴いたんですよ。
当時、髪の毛…今もそうなんですけど…天然パーマだからワーッとかなっちゃってて。
キャロル・キングに似てる気になってね。
いい気になってコレとか聴いていたんです(アルバム1曲目の『I Feel the Earth Move』を弾く)」
こういうヤツですね。「で、その時に『You’ve got a friend』を歌ったんです…『歌った』ということはコピーしたってことですね。
『歌詞は中学生や高校生でも分かる』と何かに書いてあったので訳してみた。
そしたら…『私の名前を呼んだら飛んでくる/それが友達だ/いつでも困った時に私の名前を呼んで/あなたがトラブルに見まわった時/すごい落ち込んだ時/私を呼んで/すぐに行くから』っていうのね。
本当かなぁ?…って真剣に考えたの。
例えば私がですよ、『友達』という人に呼ばれて『今、来て!』って言われてもこのライブ中に行けないじゃないですか?
で、コレはやっぱりウソだナァなぁ~って思ったの。
それで、『大好きでも出来ないことはある』という曲を作ろうと思ったんですよ。
つまり、このキャロル・キングの曲を歌ったことで勘違いしちゃった人がいる…ということを歌で表そうと思ってこの歌を作りました。
本当はそのうちに『バンドでやりたいな~』と思っています。
このバラードがどうやったらバンド・スタイルになるのかよくわからないんですけど。
私はアレンジはをしないので、このバンド唯一のおジイさんがやることになってるんです。
頭をこんなに膨らましつつこの曲を歌ってみたいと思います。
本当はこの曲を歌うはずだった『人間ワクワク』というグループの皆さん、申し訳ございません!
私しか歌えませんから」2曲目は万里子さんの弾き語り。「♪アナタが一番かはわからないけど、大好き」…ととても柔らかいメロディに歌う。
こんな正直な歌、普通ないよな~。
万里子さん流「リアリズム」ですな。そういえばビートルズに「Anytime at all」という曲があるでしょ?
「愛する人が必要なら/きっとキミのためにボクはそこにいるから/キミが悲しい時/ボクは心から同情するよ」とやっておいて「いつでもキミがしなければならないのは、ボクに連絡することさ/ボクはソコにいるから」とジョン・レノンが歌っていますが、アレも怪しいですね?
電話しても出なかったりして…ビートルズ忙しかったからネェ。
「…っていう曲でした。
アラ?ウッソ!もう始まってもう30分近く経ったの?」
時間にシビアな万里子さん。 「コレね…このパンツを作ってくださった人は今日はご都合が悪くてお越しになれないんですが、何ケ月か前にココの楽屋でバーッと自分でイラストを描いて、それをこうしてステージ衣装にしています。
これで4枚目くらい?展覧会に出したりしています」こんなことが描いてある。「本当はもう1曲、歌ってから即興コーナーに移ろうと思ったんですが、1曲でこんなに時間が経ちゃったよ!
どうしようかな…お客さんの中で『ネコジャラ市の11人』って知ってる人いらっしゃいますか?
(シーン)
ウソでしょ!誰もいないの? じゃあ、歌ってもしょうがないや。
スタッフの中で知ってる人います?
(シーン)
えっ、ウソでしょ!
あ~訊いてヨカッタ。
これ『ネコジャラ市の11人』を知らなければちっともオモシロくないんですよ。
『ひょっこりひょうたんじま』の次にやってた人形劇なんですけどね…知らない?」
私も知りません。
「ネコジャラ市」の皆さん、こういう方々だそうです…やっぱり知らないナァ。
ということで計画を変更。
「岡井大二さんです」
大二さん登場!
2人で即興演奏をするコーナー。
「まだ何をやるか、ゼンゼン決めてないんです。
お題をもらおうかな…どんな曲が聴きたいですか?
私と岡井さんが知ってそうな曲がいいのよ。
発売になった途端に何万回も視聴回数が上がったみたいな新しい曲じゃなくて。
3曲リクエストを頂こうかな」
すると客席から手が上がり…「BTSの…」
「だ~か~ら~!そういうの知らないの!
AKBとか、JCBとか、JTBとか…そういうの知らないのよ!」
もう1人のお客さんが「てんとう虫のサンバ」をリクエスト。
「はいはい、じゃあ昆虫の歌いこうか?」
また別のお客さんのリクエストは「はらぺこカマキリ」。
「ナニその歌?そんなのあるの?
チョット歌ってみて!そこで!」
会場にいらしたお客さん数人の口から「『はらぺこあおむし』じゃないの?」というセリフが漏れ聞こえる中、その勇気あるお客さんは果敢に「はらぺこカマキリ」を説明してくださったのだが撃沈。
ウチの下の子も小さい時に読んでいたけど、「はらぺこあおむし」はやっぱりかなりポピュラーなのね?
ココで「はらぺこあおむし」サイドで脱線。
下はイギリスのマンチェスターの隣り町の「ストックポート」というところにある小さな図書館。
ストックポートは10ccの出身地ね。
道を尋ねるためにこの図書館に入ったんだけど…「メッチャはらぺこのイモムシ(The Very Hungry Caterpillar)」がメッチャ目についた!一方、コチラはヒースロー空港の出発ロビー。そこにあった自動販売機の中にホラ…また「メッチャはらぺこのイモムシ(The Very Hungry Caterpillar)」。
イギリスではすごい定番だったので驚いたわ。
このアメリカ発の絵本は、1969年の上梓以来、何しろ全世界で5,500万部も売れたんだって!
1冊1,000円として、5,500万部売れれば550億円。
印税がその10%としたら55億円!
オイオイ、イモムシも全くバカにならんな~。
ちなみに作者のエリック・カールという方は昨年91歳で亡くなったそうだ。
遺族はカールじいちゃんに感謝すべし…向こう69年間はウハウハだ。
「じゃあ、そのカマキリは作ることにしよう。
今、アリさんいっぱい歩いている…それを食べたいカマキリがいる。
まずココが1点シュールなとこじゃない?
で、一生懸命歩いてるからカマキリは食べない。
じゃあ、あと1曲は?」
客席から「モスラ!」の声。
「『♪モスラ~や、モスラ~』…アレは昆虫なのかしら?
あとはアリさんの歌。
私が即興で最初だけ演る…え~と、その後は…」
と、1曲演るだけで大変な段取りである!
結局「『てんとう虫のサンバ』と、『お使いアリさん』と、『モスラ』で、最初は私が即興するね」ということに決定!
演奏のコーナーに移る前に、先ほどの勇気あるお客さんの名誉のために…
「はらぺこカマキリ」というのは実在しています。
「あおむし」ではなむて「カマキリ」…英語で「マンティス」。
『おかあさんといっしょ』でやっている曲だそうです。
「三題噺」よろしく、素材が集まったところで即興で1曲。軽快なリズムのマイナー・チューン。
カマキリに食べられるのイヤがるアリの気持ちを切々と歌った。
完成度メッチャ高し!
そのまま「てんとう虫のサンバ」へ。
アクセルレイトすると向こうの方からモスラがやって来た!万里子さんの弾くピアノに音楽性豊かなドラミングを組み込んでいく大二さんが使用するドラム・キットはNATAL。今日はアッシュのタム類とCafe Racerのバスドラムを組み合わせたこだわりのキット。この18"の小口径のバスドラムがすこぶる使いやすいのだそうだ。スネア・ドラムはNATALステイヴ。
「ステイヴ(stave)」とは桶のことね。
現在は製造していないモデル。そして、曲の方はアリさんとアリさんが前頭葉を激突させて卒倒して終わり。
人間もアリも慌てるとロクなことはありませんな。万里子さんと大二さんの音楽談義。
万里子さんはご自分で作った曲をゼンゼン関係ないキーで平気で歌ってしまうとか…。
「ナンでそういうことができるのか、身体の作りがわからない」という大二さん。
すると「まだ身体を見せたことないからね。次のライブはビキニで演るわ…見たくないか?」と万里子さん。
「そ、そうでもないよ」で会場大爆笑!
そして、「無くてはならないこの人」…と紹介されて登場したのは駒沢さっき。
「ナンカ…ステージの上でおジイさんとおバアさんがイチャイチャし始めちゃって…早く呼ばれないかな~って。
駒沢です。よろしくお願いします。」
出て来ていきなり一発カマして会場はまた大爆笑! 次はまた「三大噺的」な「3 Notes」という曲。
お客さんが任意に選んだ3つの音をモチーフに演奏する。
だから「3 Notes」。
しかし、今回は2年ほど前に客席にいた女の子が選んだ3つの音で作った曲を再現することとした。
「ところが、演るのは1曲なのに楽譜が2種類来てる。どっちがいいと思う?」
結局、広げやすい2枚のバージョンに決定。「チョットうるさいかもよ」という大二さんの警告つきで曲はスタート。コレが、キメだらけの複雑な曲なの。
3つの音とは「D、A、E」?大二さんはサンバ風のパターンも繰り出してカラフルに曲を彩った。そして万里子さんの自由な発想で曲がパノラミックに展開していく。
後半にはフリーフォームのパートもあったりして…こういうの好きだナァ、私が。
出て来てドスの利いた低音でガツンと存在感を見せてくれたさっきちゃん。スピーカー・キャビネットはMarshall。
1980年代の後半に製造していた「Integrated Bass System」というシリーズの1540というモデル。
メチャクチャかっこいい曲と演奏でした!
やっぱり音楽をキチっと勉強した人が作る音楽はいいね。 「コレ失敗したらもう1回演ろうね…って言ってたんだけど大丈夫?
『3Notes』を演ったその後は歌モノになります。
ココから先はもうインスト曲はもうありませんから、インストが好きな人はもうそろそろ帰った方が…。
次の歌はね…『花咲か爺さん』の歌なの。
私は季節ごとに色々な曲を書いたり、即興したりしているんですが、コレを桜が終わってからも演っていいなんてコレっぽっちも思っていなかったんですよ。
だいたい何でも期限というモノがあるじゃない?…税金でもナンでも。
それと同じで歌にも期限があるんですよ。
だから北海道で桜が散ったらもう歌わない。
そういう風にしていつか『花咲か爺さんツアー』ってのをやりたいと思ってるんですよ」
「烏帽子を付けて灰を撒きながらやるの。
それで、曲の中にはご当地の桜の名所の名前がドンドン出て来るワケ。
大阪に行く時には、造幣局とか、並木道とか…呼ばれればいくらでもやるわよね!」
それからココではドンガバチョやクレイジー・キャッツの話で大盛り上がり。
クレイジーは好きだけどさすがの私でもチョット話題が古い~。
ちなみに…私は大学の時に谷さんと共演していますから。
この大二さんの手は「ガチョ~ン」ではありません。
「花咲か爺さん」は予想に反してグッと落ちついた可愛らしい1曲。
その「可愛らしさ」を優しく演出するリズム隊の2人。
万里子さんの歌声とピアノ、そしてリズム隊の演奏がじつにキレイに溶け込んだ1曲だった。 「コレ、いつも練習の時にしか言ってないことなんですが、お2人の名誉挽回のために言ってます。皆様が『アレ?』って思ったら、このお2人が間違ってると普通思いますよね?
だって私が曲を作って、私が演奏をお願いしてるんですから。
でも大体、そういう時に間違ってるのは私なんです!
お客さんにそれをわかっておいて頂ければこのお2人が今晩からは枕を高くして眠れるワケね。
秦万里子の詳しい情報はコチラ⇒秦万里子オフィシャルウェブサイト <後編>につづく
■□■□■□■□■□■□お知らせ■□■□■□■□■□■□
Marshall RecordsとMarshall Music Store Japanからお知らせ。
Marshall Records契約アーティストのD_Driveが世界に向けてセカンド・アルバムをリリースすることが決定しました!
タイトルは『DYNAMOTIVE(ダイナモーティブ)』。
発売予定日は8月26日。 去る6月24日、アルバムのリリースに先行してシングル「I Remember The Town」をリリースしています。
是非コチラからお試しくださいませ⇒I Remember The Town