Steve Hackett GENESIS Revisited 2013 Japan Tour <後編>
さて、後編。
ところで、このコンサートのタイトルにある「revisit」という言葉…もちろん意味はその字面通り「再び訪れる」ということなんだけど、この言葉には懐かしみを込めて、「よく知っている元の場所に戻る」というニュアンスがあるようだ。Bob Dylanの『追憶のハイウェイ61』なんてのは、けだし名訳だと思う。この名盤の原題は『Highway 61 Revisit』だ。
Genesisのレパートリーで構成されたショウをSteveがどういう気持ちで演じているのかはわからないが、「revist」の示す通り居心地のいいエリアなのだろうか…。いずれにしても充実の内容であることは間違いない。
Genesisの曲をスミからスミまで知り尽くしている重度のマニアに言わせると、ところどころオリジナルと異なる箇所が散見されストレスを感じたというが、そんなこと全然気にならない私なんかシアワセだったな。何せ人生で1小節たりともGENESISのコピーなんかしたことないかんね。
それでも、もしこれがPeterが在籍していた頃の全盛期のメンバーだったら…と想像してしまった。繰り返すが、今回の内容に大満足はしているんですよ。
でも、『GENESIS ARCHIVE 1967-75』に残されている75年の「Shirine Auditorium」や73年の「Rainbow」での演奏を聴いてしまうと、どうしてもそんな「ないものねだり」を抱かざるを得ない。
しかも、会場が「Shirine Auditorium」だもんね。ここは南ロサンゼルスにある巨大なホールで、かつではアカデミー賞の授賞式の会場で使われていたところ。一度だけ入った ことがあるが、場内がエキゾチックな装飾になっていて(少なくともShrineとはいえ、日本的な神社とは大分ようすが違う)、雰囲気抜群。Stan Getzの『At Shirne』なんてライブ・アルバムも有名ですな。
それに「Rainbow」。Finsbury Park駅から歩いてガードをくぐって2分。あんなところで全盛期のGenesisが見れたんだからね。しかも耳の肥えたプログレにうるさい(当時の)ロンドンっ子相手の演奏だからね。スゴイに決まってる。
ステージにはLady Ga Gaの上を行く奇抜な衣装をまとったPeter Gabrielがいて…ですよ。ドラムがPhil Colilinsで…ですよ。そこにSteveがいて…ですよ。
やっぱり見たかったよね~。
やっぱり、オリジナルの人たちというのは、神通力にも似たすさまじいオーラとパワーがあるからね。
いつも書いているように私はFrank Zappaが一番好きなんだけど、もうどうあがいてもホンモノを観ることはできない。で、うれしいことに息子さんのDweezilがZappa Plays Zappaを通じて父の偉大な遺産を継承してくれている。
私はこのZPZを東京で3回、苗場で1回、ロンドンで1回観た。全曲それこそスミのスミまで知っているし、Dweezilをはじめバンドのメンバーとも交流ができて、最高に楽しめた。もちろん演奏もすさまじい。
でも、やっぱりFrankがいたらこんなもんじゃないんだろうな…ということは容易に想像できた。このショウでも同じことを感じたのだった。
だからいつも言ってるでしょ。「必ず観ておきなさい!」って!何もこれは来日ミュージシャンだけの話しじゃなくて、国内のミュージシャンも同様。
悪いこといわないから、いつもここで紹介しているような楽器の、そして音楽の達人たちの至芸を見ておくといいよ。
昨日も紹介したが、Steve HackettのアンプはMarshallだ。
今回の演奏を観てナゼSteveがMarshallを使うのかがわかるような気がした。
ご存知の通り、Genesisの曲にもSteveの曲にも「ジョコジョーン!」という箇所はない。つまりSteveはギンギンのディストーションをMarshallに期待しているワケではなくて、Marshallのふり幅の広さ(関ちゃん、この表現借ります)を必要としてのことだと思うのだ。
Marshallのクリーンは実に味わい深い。そして、いざドラマチックにドーンと行きたいときにどこまでもピタリと付いてきてくれる、そんなダイナミクスを求めているんだな~と感じた。
申し訳ないけど、野音の自分のバンドの時にはそんなこと考えなかったが、今回Genesisの曲を気持ちよさそうに弾くSteveの姿を見てそう確信した。
さて、ショウは中盤にさしかかり、『Wind and Wuthering』のコーナーに入る。
同アルバムのB面をほとんど演奏した。
「Blood on the Rooftops」
「Unquiet Slumbers for the Sleepers」
「In the Quiet Earth」
「Afterglow」の4曲だ。
そしてランチの時間になって「I Know What I like」。
これは好きな曲だナァ。前回も触れたけど、なんとなく口ずさんでしまうような親しみやすいメロディが素敵。
そしてこの日初めての『A Trick of the Tail』からの曲。
「Dance on a Volcano」だ。
もうこのあたりで会場の熱気は最高潮!
演奏も一部のスキもない密度の濃いものだ!
同アルバムからもう1曲、「Entangled」。ここはドラムのGaryが前へ出てきて歌うシーンなんだけど、撮影禁止タイムだったのでこれで我慢してチョーダイ。
でも、野音の時もそうだったけど、今回もGaryは大活躍でしたね。しかし、みんな歌ウマイわ~!
さて、本編最後に控えしは…。ナンダロウ…ってセットリスト持ってたから知ってたんだけど、「Supper's Ready」なのよ。こういう時はセットリストを知らないほうがいいね!
もちろん、みんな「待ってました!」とばかりにノッケからで超大歓声!
それにしても最初に聴いた時は何て盛り上がりに欠けた冗長な曲だと思ったもんだけど、イヤイヤ、今となっては実にいいニャ~。
場面がクルクルと変わっていく中、見事にその役を演じきったNad。
本当に全員が一丸となった演奏でこの長尺な曲があまりにも短く感じる!
やっぱり最後の「♪And it's」のところはグッときますわナ~。レコーディングの時、Peterが魂を込めて歌ったと語った話があるが、Nadも素晴らしい熱演だった。
そして、アンコール。「Supper's Ready」でお客さんは興奮しきっちゃってるからネェ、タダじゃすみませんよ!
で、演奏したのは「Firth of Fifth」。これもいい曲だよね。やっぱり『Selling』は名盤だ。
この曲のタイトルについて書きたいことがあるんだけど、今日は書かない。後日「イギリス-ロック名所めぐり」の<エジンバラ編>で触れることにする。
いよいよ最後の曲!この盛り上がりよう!こういうノリ方はいいね。イスに座ってジックリと音楽を鑑賞していたお客さんが感極まってその場に立ち上がり体を軽く動かす。コンサートの実に正しいあり方だと思います。
そんなに音楽に合わせて暴れたければ盆踊りへ行けばいい。コンサートはまず音楽を楽しむところなんだよ!
それに何をどこでどう間違えたか「参戦」なんて言葉を使うようになってしまったんだろうね?一体何と戦っているつもりなんでしょうか?そんなに戦争が好きならどんどん改憲派の支持をすればいい。とにかく次の日曜日には選挙に行ってもらいたい。
イカンイカン、あまりにも脱線してしまった!今日は楽しいGenesis Musicだったのにスミマセン。
それにしてもいいナァ~、Steve HackettにMarshallにGenesis!!
若旦那が浴衣着て手ぬぐい肩に乗っけて横丁の風呂屋に行くみたいじゃないの。(「イキ」のイメージです)
曲は「Los Endos」。
野音の時も演奏していた。
アップテンポの超絶曲!
各人のプレイが複雑に絡み合うサマが素晴らしい!
このスリリングなプレイに観客も積極的に反応する。
お、Steveも楽しそうだ!
みんな達人ばかりのバンドで…
終始見ごたえ十分だった!
こんな場面も!
そして、「Dance on a Volcano」のイントロにもどって…ああ~終わっちゃった!
最後はそろってご挨拶。
Steveのメンバー紹介。
3日間連続というハードなスケジュール。全部観たかったな…。
すべての公演が終了しうれしそうだ。
お客さんからバラの花束が贈られる。バラはイギリスの国花でもある。
拍手が鳴りやまない!
「せーの!」…帽子を取って挨拶しているところ。帽子かぶっていないし、かぶっている人は脱がないし!
お疲れ様でした~。
***オマケ***
ちょっとどういう場面だったか定かではないので本文中に使用しなかった写真を数点掲載しておく。オマケね。
3日目もSteveはアコギをソロで披露した。「Horizon's」だったかな?だいぶ前に見たブルース・ハープもスゴかったけど、この人のアコギはすごくいい。ライトハンドといい、結構スゴイことがたくさんできるのに目立たない人だ。
「オレが、オレが」でないところがまたこの人の大きな魅力なのだろう。本当におとなしくて感じのいい人だよ。
終演後、バクステージのトイレに入ったら、すぐ後からNadが入ってきた。近くでみると余計に大きくて圧倒された(身長ですよ!)。
「素晴らしいショウでしたよ!」と声をかけた。以下、その時のNad(以下:N)と私(以下:S)の会話。
N:ありがとう!でも声が本当に出なかった。3日連続の公演だったでしょ?初日は何の問題もなし、昨日も全然平気だったんです。でもさすがに3日目となるとツライ…。
S:イエイエ、本当に素晴らしいショウでしたよ!やっぱり3日連続というのはあなたのような世界的なシンガーにとっても大変なことなんですね?
N:3日連続で歌うなんてことは世界中どこへ行ってもそうあることではないんです。
S:そうですか。でも、みんなショウを本当に楽しんだようですよ!どうぞノドを大切になすってくださいね。
N:ありがとう!3日とも素晴らしいお客さんだった!
彼もとても感じのいい人だった。
これは何の曲だったのだろう?
バンドの演奏ももちろん素晴らしかったが…
このNadの熱演ぶりがすかり気に入ってしまったのだった。
(敬称略 2013年6月15日 Club CITTAにて撮影)