GENKI SESSION 2015
今年もやって来ましたこのシーズン。Summer of LoveのGENKI SESSION!
またまた主役不在でお送りします。
とはいえ、第一級のミュージシャンが集うこのバンド…バック・バンドだけでも実に味わい深い。
あ、主役不在といっても写真に写っていないだけで、実際にはステージに登場し、日本を代表するロック・ヴォイスを聴かせてくれた。
最近はこういうホンモノのロック・ヴォイスで本格的なロックを聴かせてくれるバンドがメッキリ少なくなってしまったからね。
ヘヴィ・メタル界隈ではガッツのある歌声を聴かせてくれるバンドもあるにはあるが、草食系の若いバンドではついぞ聴くことのできない声なんだから。
コレも何度も書いているけど、音楽は何といっても「歌」なんよ。
それが、「オペラこそ人類が作り出す音楽の最高峰である」ということになってくる。
「歌」、すなわち「声」。
つまらない曲でも声が魅力的だと十分に楽しむことができる。その反対はツライよ。どんなにいいメロディでも声質が合わなきゃ台無しだ。
60年代の中頃からロックは爆音を手に入れた。爆音とマッチする声があってこそ「ロック」という音楽が生きて来る。
その爆音の中心となったのはMarshallだ。
そして、図太い声のボーカリスト…まず、このコンビネーションがなければロックの醍醐味を味わうことはムズカシイ。
今日のコンサートにはその両方が揃っているばかりでなく、それらを完璧にプッシュする素晴らしい楽団が付いている。
昨今の日本でマレにしか見ることができないロック・ショウの開幕だ。
キーボードは難波弘之。
ドラムは高橋ロジャー和久。
今回は向かって左側の「MARINO」ステッカーが張ってある方を使用した。
最近はかつて愛用していたテープ・エコーを使っていないようだ。また、ペダルボードからはバッファ・アンプも結局姿を消した。
変わらないのはMarshallと愛用のギターたち。それこそが大谷令文のエキスなのだ。
オープニングはRay Charlesの「Hallelujah I Love Her So」。
ちょっとヘヴィでイキな「ハレルヤ」だ。
この次にOtisの「Try a Little Tenderness」が来るのだが、選曲もおなじみのものばかり。
このホーム極まりない条件が最高のパフォーマンスを届けてくれる。
ところで、この「ハレルヤ」、オリジナル・レコーディングではDon Wilkersonがサックス・ソロを吹いているのね?
…と聞いた風な口をきいても知ってるのはBlue Noteの『Preach Brother!』ぐらいなんだけどね。もっとも、この人はBlue Noteに三枚のリーダー・アルバムを残しているが、ジャズの人ではなく、「Ray Charlesバンドの人」なのね。
張りのある素晴らしいトーン。令文さんの堂々たるソロに一曲目からヤラれる。その雄弁さこそPreacher!
「Try a Little Tenderness」。
高校の時、上田正樹の演奏でこの曲を知った。
すっかり「Otis Reddingの曲」の感があるが、そうではない。またOtisの「ガガガガ節」により、R&B、すなわち黒人音楽の代表曲のようなたたずまいを見せているが、実はコレ、ナント白人の曲。
しかも、アメリカ産ではなく、James CampbellとReg Connellyというイギリス人のコンビのペンによるものだ。
オリジナル録音はThe Ray Noble OrchestraをバックにVal Rosingという歌手が歌ったもの。すべてイギリスだ。
1933年にはBing Crosbyも吹き込んでいる。分厚いストリングスをバックに聞かせるBingのとろけるような美声はまるで違う曲。ヴァ―スまで付いちゃって…。Frank Sinatraバージョンも同様。
でも名曲は名曲。雰囲気は違ってもいいナァ。
この名バラードを「ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!」とガナリ立てたOtisも偉大だ。
もちろんこちらは猛烈なOtisバージョン!
何といっても見どころは、ボーカリストがキネマ自慢のサブ・ステージへの階段を上り下りしながら、最後のリフレインを何回繰り返すか?…というところ。
今年は三回。去年は四回だった。
ガラっと変わってMontrose。「I Got the Fire」。Sammy Hager。
このアメリカン・ハード・ロックの塊りみたいなバンドはほとんど聴かなかったナァ。やっぱりどうもアメリカン・ロックの明るさが性に合わないんだよね。
GFRもMontroseもVan Halenもカラとした湿気の少ない屋外で強い日差しを浴びながらグビグビとビールでノドを潤しながら友達とワイワイ楽しむ感じじゃん?
イヤイヤ、それよりも外はドンヨリ曇っているから、冷え切った屋内で舐めるようにして二時間かけて飲む1パイントのエールを片手に楽しむ、暗く重いロックの方が私には断然シックリくるのだ。
でも『Jump on It』は比較的好きだった。ジャケットがヨカッタ。ヘンな意味じゃないよ。Hipgnosisだから。
でも、Sammy Hagerの声はスゴイね。こんなのこうして完璧に歌える日本人はそういないよ。
続いてはJanisコーナー。
前回は「ジャニスの祈り」…誰だ?こんな邦題つけたのは?!…「Move Over」だけだったけど、今回は「Half Moon」も導入。
あの声で「Half Moon」を歌われてごらん…タマらんよ、ジッサイ。
で、ここは水野さん。
二曲ともあまりにも素晴らしいプレイ!
ドッシリ構えて音楽に集中しているので派手さはないが、やってることはかなりヤバい。
止めども流れ出て来るランニング・フレーズ。
これぞベースの醍醐味!ベースだけで一曲聴ける。
とにかくバンドがいいようにウネリまくる!
聞けば水野さんはEDENプレイヤーとのこと。次回はEDENの激ヌケサウンドでこのランニング・ベースが聴きたい!
渋く…「Since I've Been Loving You」。
元ネタがMoby Grapeの「Never」だと言われているようだが、真じるか信じないかはアナタしだいだ。
ひとつだけ確実に言えるのはZeppelinの方がカッコいいということじゃないの?(難波さんMobyお好きなハズだからあまり多くは書かない)
「Since~」を録音したエンジニアに言わせると「古今東西もっともカッコいいギター・ソロ」ということになるそうだが、真じるか信じないかはアナタしだいだ。
ある人にとっては「一番」かもしれない。私にとっては違う。でも、それぐらいカッコいいことは確かだ。
令文さんのソロもすごかった!
あの音だからね~。
令文さんのギターはあの音とともにあの時代の空気を運んで来てくれる。だからスゴイ。
一部の最後二曲はボーカリストが以前在籍していたバンドのレパートリーを披露。
これも前回通り。
休憩をはさんで第二部。
令文さんはバンダナをお召し換えての登場。
よく似合う。
曲は「Separate Way」と見せかけて…「Communication Breakdown」。
後半、「Train Kept a Rollin'」になるところがまた滅法カッコよかった!
毎回演奏されるザ・カーナビーツの「好きさ好きさ好きさ」。コレはZombiesね。原題は「I Love You」という。
「飽きて来たな…」なんてボソッとおっしゃっていたが、特製似顔絵ステッカーまで作っちゃって絶好調!
この日はトークの新しいネタも組み入れられた。
Trio the Collagens他でもうずいぶん何度もこの曲を聴いているが、ゼンゼン飽きませんぜ!
ホラ、大ウケ!
お客さんから「なんて?」が出たには会場全員大爆笑!
そうそう、ロジャーさんは覚えてないかもしれないけど、そういえばどこかの現場でこんなことがあった。
この「難聴」のトークには「みんな!頼むからアンプの音下げてくれよ!」というくだりがあって、その日は「みんな頼むからアンプの音、Marshallの音下げてくれよ!」というセリフになっていた。
もちろんロジャーさんは私が来ていることを知っての仕業だったのだが、そのセリフの時、ロジャーさんはシッカリ私の方を見てそのセリフをおっしゃったのには笑った。
もっともロジャーさんだけじゃなく、そこにいた私を知る人は全員コチラを見てたけど…。
Marshallは悪くありませんからね~。
爆音中毒の皆さん、自分の耳は自分で守りましょう!
難波さんコーナー。
今回も1971年のPYGのデビュー・シングルを弾き語りで披露。
難波さんのソフトな歌声がベスト・マッチのほんわかムード。これなら難聴にはならない。
「川一本泣いて」の「Cry Me a River」。
コレはほんとジックリと聴き込んでしまう。
本編最後は、Humble Pieの「30 Days in a Hall」、Spencer Davis Groupというか、Steve Winwoodというのか「Gimmie Some Lovin'」、さらにThe Small Facesの「All or Nothing」という流れ。
選曲は前回通りだが、いいね、名曲はいつ何回聴いても。
もちろんこうした名唱・名演があっての話しだけどね…。
Steve MarriottとかSteve Winwoodなんかのソウルフルな曲はまさに声がピッタリなんだよね。
今度チョットひねってNoddy HolderとかDan McCaffertyなんてどうだろう。
このバンドで「Razamanaz」なんかやったらメッチャかっこいいだろうな~。令文さんのギターも絶対ピッタリだ。
アンコールは「Imagine」。
John Lennonといえば、令文さんはインストで「Jealous Guy」をレパートリーに入れているけど、このバンドでFacesバージョンをされたらいかがなものだろうか?Rodはチョット違う気もするか…。
「Sweet Sweet Surrender」。
そういえば先週のJeff Beckの東京公演では「Morning Dew」演ってたよ。
さらにオハコのアッコちゃん。「すきすき」ね。
さっきのカーナビーツ、ミカ・バンドの「塀までひとっとび」、そしてこのアッコちゃんが三大「好き」曲。時点が「上を向いて歩こう」だ。
この「すきすきソング」、曲自体はブルースで、作曲は小林亜生。
歌詞がスゴイ。作詞は井上ひさし。
ところが、この曲の歌詞には原曲があるんだって。それは山形の「庄内おばこ」という民謡。歌詞を読むと、登場人物は異なれど設定は完全に同じ。
井上先生もやまがだだでね。
難波さんの写真の上で小説についてガタガタいうのも気が引けるが、SFではないのでお許し頂くとして…井上ひさしの『江戸の夕立』という作品を是非読んでもらいたいナァ。
直木賞を獲った『手鎖心中』と一緒になっているので陽を浴びることがないようだが、ヤケクソに面白い。まさにジェットコースター小説。もし私が好きに映画を一本撮っていいといわれたら迷わず原作にコレを選ぶ。そして『隠し砦の三悪人』の黒澤気分でメガホンを取る。
そして、今回は二度のアンコールに答えて「Summer Time Blues」をプレイした。
ああ、それにしてもこのギターの音!
大谷令文+Marshallの完璧なる組み合わせ…やっぱり真空管のアンプでないとコレはこの音はどうアガいてもムリです。
このギターの音を聴いて私はしばし、あの頃に戻った気分になれるのだ…一番カッコよかったロックの時代に…。ナンダカンダ言って、それはギターの音が一番ヨカッタ時代でもあるのではなかろうか。
それにしても主役がいないのはチト寂しいね。でもこの企画、もっと頻繁に観たいものですな。
いつか写真が解禁になる日が来たら、許可を頂戴してアーカイブ的に今までの写真もドバ~っと公開したいと望んでいる。いいのがたくさんあるんよ!
大谷令文の詳しい情報はコチラ⇒大谷令文ホームページ