SWS(そうる透・和佐田達彦・杉本篤彦)を楽しむ
前から一度見たかったスーパー・バンド、SWS。
S=そうる透
W=和佐田達彦
S=杉本篤彦
というメンバーによるインプロヴィゼーション・ミュージックと大爆笑のトークからなる複合エンタテインメント(?)!
杉本さんはMarshall JVM215C、JVMの50W、1×12"コンボだ。
インプロヴィゼーション・ミュージックなのでリハはほとんどなし。インスピレーションが削がれちゃうからね。
Keith Jarrettのバンド版と言ったら言い過ぎか…?
3人は本番の1秒前まで世間話し。マスターに「本番ですよ!」と呼ばれるまで渋谷の話をして盛り上がっていた。
4月に各地をツアーをして大好評だったという。
まず、1曲目「#$%&'`~=」という曲。4ビートのブルースだ。
一番最初に音を出した人に残りの2人が付いて行くというのが基本的なシステム。
杉本さんのソロ。シングルノートからオクターブ、そしてコード・ソロに発展させていく手法はWes Montgomery流であり杉本流。
杉本さんの右手が気になる人はコチラをご覧あれ。
ドラム・ソロ。透さんフレーズ炸裂!
曲が終わる頃には「ツアーから帰ってきた」という曲名になった。よくあることだ。
絶好調の和佐田さんのMC。
まずはバンド名の説明から…「SWSはメンバーの頭文字。プロレス団体ではありません!」
年功序列制なので透さんが先頭に来る。
この後、人間は切羽詰まると何をするかわからない…いう話でひと笑い。
2曲目は「人間ナニをやったっていいんだよ」という曲。
変則エイト・ビートに和佐田さんのスラップが乗る。
そこに杉本が16のカッティングで入り込む。もちろん親指で弾いてる。オクターブでテーマを弾いた後はハードなソロ!
次の和佐田さんがあまっりにもスゴかった!これはみんなに見てもらいたい!素晴らしいスラッピング。もう壮絶としかいいようがない!EDEN効果なのかっ?それともカメラが向けられているからか?まさにいつもより多くスラップしてます!状態。
透さんのアクロバチックなキメでバンドはカオス状態に!
しかし、最後はビシッとそろえた!さすが!
和佐田さんが放つ「オシッコと屁が同時に出たオッサン」の話しでまたまた盛り上がる。確かに両方一辺には無理だ。
…ということで(どこがだ?!)、3曲目は「人生ピシッと行こう」。
まずは透さんのシンプルなエイト・ビート。
さぁ、これに杉本さんがどういうメロディを乗せるか?…と思ったらさすがウマイ!
テーマというよりソロか…。実にうまい具合にメロディを展開させていく。透さんのハイハットの16分音符のフィルに合わせてシャープなフレーズを組合わせる。
和佐田さんのソロ。、指弾きの素晴らしいテクニックを披露!しかし音がいい!よ~抜ける~!
ここのMCも面白かったな~。
ツアー先で見つけたゆるキャラの話し。オカザえもんはチョット…。ん~、確かに!
次の曲は話題が高知に飛んだことから「カツオのたたき」。
スネアで「タ・タ・キ」からサンバ調。これはカッコよかった!大歓声。
Allmanの「Jessica」風のテーマ。もちろん即興。
ソロではダブル・オクターブ!ダプル・オクターブというのは2オクターブ離れた音を同時に弾く技法。基本的に1弦と6弦を組み合わせるため、楽器の構造上、弾ける音が1オクターブちょっとになってしまうのと、ネックに対して左手を常に平行に移動せざるを得ないため、弾くのが大変な技巧だ。…がさすがWesフリークの杉本さん!お見事!
そう、Wes Montgomeryは『Solitude(BYG)』というパリのライブ盤の中の「Here's That Rainy Day」でこの超絶技法をシレっとキメているのだ。
杉本さんがおしゃれなメロディを乗せる。ん~、いいフレーズが次から次へと出てくるね。
同じ短いフレーズを立て続けに2回。これまたWesかな?
『Willow Weep for Me』なるライブ盤の「The Surry With the Fringe on Top(飾りのついた四輪馬車)」という曲に同じようなシーンがある。
Wesがカッコいいフレーズをキメると、お客さんが「ヒュー!」と歓声を上げる。するとWesはすかさず同じフレーズを繰り返すのだ。
オクターブからポップなメロディのコードソロへ。
それにしてもJVMのクリーンが素晴らしい。Marshallのクリーンを見逃すのはあまりにももったいないよ~!
そして、透さんはハイハットとスネアを複雑に組み合わせた手順のソロ。
エンディングもバッチリきまった!透さんポロっと…「今、よく終われたな~」だって!
2部の2曲目は「横浜飛び出しXXX」…半分聞き取れず。一回聞き逃したらもうわからない。後で訊いてもわからない。
次は「エロは地球を救う」。
レゲエ調。和佐田さんが弾くベースの2音はどうも「エ」と「ロ」のようだ。
機を見て透さんがシャッフルで切り込んで来た!ウマイな~。ガラッと風景が変わる。
さらに透さんは響き線を上げてティンバレス風のソロ。
派手に叩いてからまたスッとシャッフルに戻る。またまたウマイ!
レストランの店員の日本語はおかしい…と和佐田さん。
コーヒーを頼むと必ずホットかアイスかを尋ねて来る。ま、仕事だから。
しかし!「ホットコーヒーください」と頼んでも「ホットですかアイスですか」と訊かれるのは解せん…確かに!
オーダーが済むと、確認のためにそのオーダーを繰り返してくれるでしょ?「コーヒーとトーストでよろしかったでしょうか?」。そして、支払の時に1,000円札を差し出すと「1,000円からでよろしかったでしょうか?」…ナゼ過去形を使う?
昔はこんな言葉遣いは絶対にしなかったハズだ。それでハタと思いついたのが…英語。
英語ならわかる。たとえばCan you~?やWill you~?のように相手にモノを頼んだり意志を尋ねたりする場合、Could you~?とかWould you~?のように助動詞の時制を過去にシフトバックしてやると「仮に」という意味が生じ、転じて丁寧語な表現になる。
これはいいですよ。そういうシステムを持つ言葉だから。
何で日本語でやるのよ?
一体誰がこんなことをし始めたんだろう?
外資系のレストランかなんかが、自社の「接客マニュアル」に取り入れてそんな変な日本語を使わせたのがキッカケなんじゃないか…なんて観てる。どうだろうか?
だって海苔屋のバアさんが「焼き海苔二帖でよろしかったですか~?」なんて言ってるの聴いたことないもんね。海苔は「帖(じょう)」と数えるんですよ~、念のため。
「言葉は生き物」と時代に合わせて変化していくのは一向にかまわないが、変種はやめてもらいたいな~。特にこうした相手を敬うようなシチュエーションにおいて使う表現はなおさらのことだ。
…ということで3曲目は「冷たいホットコーヒー」。
透さんから…サイドスティックを使ったカッコいいパターン!
Tal Farlowばりの人工ハーモニクスからオクターブ。
「Killing Me Softly」が飛び出す!おおよそ原曲とは似ても似つかないバッキングなのにガンコに弾き通してしまう!
ここのMCでは食べ物の話し。ツアーにでるととにかくお腹が減るらしい。ツアーに出ているミュージシャンのfacebookの投稿は確かに行った先々のウマいものばかりだもんね。
でも、家や家族を離れての超ハードな仕事ゆえ、旅先でウマいもの頂くのは最高の楽しみであり、ストレス解消なのだ。
おかげでドンドン太る…と和佐田さん。
和佐田さんの「ままかり」の話しも笑ったな~。「ままかり」というのはニシン科の魚でサッパとも呼ばれている。ママ(ご飯)をカリ(借り)に行くほどおいしいというのが語源だそうだ。
それを酢漬けにしたものが岡山の名物なんだって。
それを食べた和佐田さん…後はやめておこう。
さてこのSWS、やっていることはSPICE FIVEとそう大きくは違わないのだが、演奏を組み立てる手順が違っていて、和佐田さんのトークからお題を引き出し、そのイメージで透さんがリズムを決める。それにベースが乗っかり、さらにギターがかぶさって…という展開だ。
いわば、透さんがお題をオノマトペのようにドラムで表現することによって曲が浮かび上がるのだ。
だからこの場合、「ままかり」、「ままかり」、「ままかり」、「♪ダダダドン」みたいなフィルひとつで曲の設定をするのだ。
コレはラテン調?マンボかルンバか?
ま、そうはいっても最後はみんな好きなことやっちゃってるんだけどね。それを見るのがまた楽しい!
透さん、どれもメチャクチャカッコいいな~。
…とアッという間に本編終了。
「アンコールはいいんですか?」、「ここでアンコールするもんでしょ?」。「しょうがないな~。じゃやるか!」
アンコールはSPICE FIVE時代もやっていたお題のブルース。お客さんからキーと調とテンポのリクエストを受ける。
今回は「B」で「メジャー」で「早い」ブルースということに相成った。
ビートは任意なので…早い4ビートでやるのか思ったら超ハードなエイト・ビート!
R&R調のフレーズをつづる杉本さん。、ジャズの人にBのキーはまずあり得ない。
やると思ってたけどやっぱり「Wipe Out」に突入!エンディングも定型でバッチリとキマった!
名人芸は楽しい。
※本稿はPCを会場に持ち込み、実際の演奏を目の前で見ながらリアルタイムで作成した。
(一部敬称略 2014年9月30日 横浜Hey Joeにて撮影)