CONCERTO MOON TOUR 2015~NEW MOON RISING <前編>
今まで誰かに訊かれたことがあるワケではないのだが、もし「島紀史ってどんな人」と尋ねられたらこう答えようと思った。
それは…「星一徹と星飛雄馬」、「丹下段平と矢吹丈」、「ヒロシとピョン吉」…それぞれを混ぜたような人。
要するに並みならぬ情熱と不屈の闘志を持った「音楽の鉄人」ということだ。
実際、精神的にも肉体的にもその根性たるや生半可ではなく、かつてこんなことがあった。
今から7~8年前のことだ。
神戸の楽器店でMarshallのクリニックを開催した時、デモンストレーターであるノンちゃんは当日の朝早くに東京を出て、車で来ることになっていたのだが、運悪く前日から高熱を出してしまった。
朝になっても熱が下がらなかったが、そこは根性の人、企画に穴をあけるワケにはいかないと、ひとまず東京を出発した。
さすがのノンちゃんも相当ツラかったハズで、「申し訳ないがチョット遅れそう」と名古屋から連絡をしてきた。
そんな状態だったから、その連絡を受けた時、申し訳ないがお客さんに謝って中止にさせてもらい、ノンちゃんには東京へ引き返してもらいたいと思った。
しかし、本人は「必ず行くから!リハーサルだけは省略させて!」と言い張って電話を切った。
それから…ホントにアっという間だった。
再度、私の携帯が鳴って「今、着きました」という連絡が来たのだ。
「お客さんを待たせてはならない」の一念で、恐らく一度も休憩を取らなかったのだろう。信じられない早さだった。
マジでスゴイと思ったね~。ヘタすりゃ人間じゃない…みたいな。
星親子が運転免許証を持っているかどうかは知らないが、一徹にも飛雄馬にもできないであろう、島紀史が持つ根性だけが成し得る荒行だと感動した。
もちろん、ギターを弾きさえすりゃこっちのもの。熱があろうかなかろうか、ギターにトークにと、いつもの島節が炸裂し、クリニックは大成功に終わった。
昔はノンちゃんとよくMarshallのクリニックをやったナァ。Zeno Rothが観に来れくれたこともあったっけ。
こっちもしゃべり出したら止まらないけんね…毎回とても楽しかった。
今日は、5人のうち2.5人のメンバーが交替した新生CONCERTO MOONのファースト・ツアーの千秋楽のレポートだ。
新しいメンバーと一から組み直したチームの炎の剛速球のようなステージに、島紀史のロックに対する愛情と情熱とが織り成す鋼のような根性を見た!
ヘッドは200Wの1967MAJORが2台。
Marshallの200Wヘッドの歴史は古く、記録では1967年の発売ということになっている。
型番はPA用が1966、ギター用(LEAD)が1967、ベース用が1978だった。
このノンちゃんのMAJORは二代目のデザインで、初代のモデルは今では「Pig」という愛称で知られている。(当時から「Pig」と呼ばれていたワケではない)
Ritchie BlackmoreやMick Ronsonが愛用していたことは有名だ。
それで、例の『アンプ大名鑑[Marshall編]』の監修をしていた時に初めて見た写真に驚いた。
というのは、この200WのモデルはPete Townshendの手にも渡っていたのだ。つまり、The Whoのステージに用意されている写真が載っていたのだ。
ご存知の通り、PeteはMarshallを使わないことで有名なMarshall開発者のうちのひとりだが、彼がMarshallから離れたのは1966年。MAJORは発売される1年前だ。
もし、PeteがJimの店で息子のTerryとケンカをせずに、そのままMarshallを使い続けていたら、PeteはMAJORを使っていたかもしれない。何しろ、とにかく爆音が欲しかったのだから…。
とするとですよ…Peteが使っていたらRitchie Blackmoreはどうしていたかしら?
もしかしたらMAJORを使っていなかったかもしれない。
となると、Deep Purpleのサウンドも今とは異なるものになっていたかも知れない。
…なんてことを想像するのは実に楽しい。
コレも50年の歴史を有し、ロックの歴史を彩って来たブランドだからこそできる妄想なのよ。
ベース・アンプもMarshall。
CONCERTO MOONの伝統だ。前任者の三谷耕作は1959を使って個性的なサウンドを作っていたが、今回加入した中易繁治はVBA400とVBC412。
コレ、いいベース・アンプだったんだよね~。ヘッドは泣きたくなるほど重かったけど…。
耕作さんといえば、会場の物販コーナーで販売していた限定品の手作りポーチが人気を呼んでいた。
以前からサポートで参加していたキーボードのAkiが正式加入。
そしてドラムも新加入の河塚篤史。
このバンド、5人のうち「アツシ」が2人、3人の名前に「史」がつくという編成。いかにもメンバー間の波長が合いそうだ。
いつものオープニングSEが流れ、メンバーがステージに登場する。
今では上の5人によるニュー・アルバムが発表されているが、他の公演を見た人を除いては、この時はまだ誰も新生CONCERTO MOONの音を聴いていない。
不安は何もなかった。
しかし、緊張感みなぎるオープニングとなった。ナゼなら会場にははちきれんばかりのファンの期待が充満していたからだ。
1曲目はおなじみのスタンダード・ナンバー「Dream Chaser」。
2曲目は前作『Black Flame』のオープナー「The Vail of Mystery」を持ってきた。
そう、今、新しいCONCERTO MOONのヴェールがハズされ、新体制の謎が解かれたのだ。
切れ味鋭いソロが遠慮なく繰り出される。
ん~、MAJORいい音だナァ~。
いかにもCONCERTO MOONらしい新しい低音域も快調!
MCをはさんで時計の針を16年前にもどす。
1999年の『Rain Forest』から「Victim of Desire」。
しかし、こうした歴史を持つグループに加入する新しいメンバーは大変だよね。いっぺんにたくさんのレパートリーを身に付けなければならないから。
かつてThe Manhattan TransferのCheryl BentyneがLaurel Masseに替わって加入した時、「昔のレパートリーを覚えるのが一番大変」と言っていた。
なにしろ分厚いコーラスをウリにしているチームだからして、それぞれのパートが複雑怪奇でとても簡単に記憶できるようなない。また、歌だから楽器を頼りできないので、すべての音符を頭に叩き込まなければならないからだ。
その点、Akiちゃんはこれまでの活動で大分下地ができているので頼もしい。
続いては『Rise from Ashes』から2曲。
「Almight Wings」と「Not by Chance」だ。
ノンちゃんはいいね、ズッと弾いているし、何しろ作曲者だから!
「Not by Chance」好き。
河塚さんは以前他のバンドで何回かプレイを拝見したことがある。
まさか、その時にはCONCERTO MOONにこんなにハマるなんて誰が想像できよう…。
…とここまでの第一コーナーはみんなが知っている曲を取り上げ、「オラオラ、新しいCONCERTO MOONはこんな感じだぜ!」と、元気に離陸したところをお披露目した感じかな…。
CONCERTO MOONならではの相変わらずの圧倒感が実に気持ちよい!
「待ってました」感満点のお客さんの歓迎ぶりにもすさまじく、満員の会場には尋常ではない熱気が充満した。
ところで、ニュー・アルバムはどうなった?
ここまで5曲、ニュー・アルバムからの曲が出て来ない。
…ということで、コンサートの途中ではあるけど、ココでニュー・アルバムの話題に移る。
コレが18日に発表されたCONCERTO MOONのニュー・アルバム『BETWEEN LIFE AND DEATH』。
何となくノンちゃんのソロ・アルバム、『From the Womb to the Tomb』を連想させるタイトルではあるまいか?
スリーブの表4に使われている写真は私が撮らせて頂いた。
結構、押せ押せの撮影だったけど楽しかった!撮影前にはスタジオの向かいのラーメン屋でニラソバを食べたな。ニラソバが好きだ。
このアルバム、いいんだゼェ。
根っからのCONCERTO MOONファンが聞いたらどう思うか知らないけど、私なんかには70年代のハード・ロックの香りがプンプン感じ取れちゃって、すごく面白かった。
既存のメンバーと新しいメンバーとのコンビネーションもバツグンで、全体の雰囲気としては「繊細」になったような感じがする。
ノンちゃんのギターの爆発ぶりは相変わらずなんだけど、驚いたのは久世ちゃんのボーカル。
久世ちゃんは外人じゃないけど、あのね、発音がメチャクチャかっこよくなったの。
特に日本語の曲で「マ行」の発音がすごくカッコいいのだ!
で、ですね、特別にノンちゃんからMarshall Blog読者の方々にニュー・アルバムに関するメッセージをもらったの。
是非ご覧あれ!
<Marshall Blog読者のみなさんへ - 島紀史>
★ニューアルバムの聴きどころ
今まで以上に充実させることができた曲と各メンバーのプレイですね。
久世の歌唱も、彼の加入以来最高の出来だと思うし、僕が思う彼の声の良さをストレートに感じて頂けるのではと思います。
彼の歌唱が曲の良さをプッシュしてくれている部分は大きいですね。
個人的には、Marshall MAJORを使い始めて、理想とするサウンドに限りなく近いサウンドをやっと録音できたところです。
そのサウンドに引き出されたプレイも多いし、構築した部分とアドリブの部分のバランスも、手前ミソですが良いバランスなんじゃないかと…。
★新メンバーについて
河塚はキャリアも長いし、本当に様々なスタイルでプレイできる男ですが、本来持っているハードなロック・ドラマーの部分を強く感じさせてくれます。人柄も素晴らしい!彼が加入してくれたことはバンドにとって非常に大きいと思います。
中易は以前セッションで一緒に演奏した時から、こんなベーシストがメンバーになったら良いのに…と思っていたりしたので、イの一番に声を掛けました。今回は彼以外のベースは考えてなかったです。
その期待に見事に応えてくれていますし、河塚とのコンビネーションも日に日に良くなっていて、今のリズム隊のヘヴィさは、彼がプッシュしている割合が大きいと思います。男らしいロックベーシストです。
Akiは長らくサポートで弾いてもらっていましたが、自分が持っていない素養を沢山持っているし、何より長くツアーをしていて楽しい男です。今回のアルバムにも、彼ならではの彩りを曲に与えて加えてくれたのは期待以上でした。
★マーシャルについて
Marshallなしにプレイすることなんてあり得ない!
Marshall以上のギター・アンプなんて全宇宙を探したってあるワケない!Marshallを使わないなんて、ギタープレイヤーとして損していると思う。(ありがとうございます!from Shige)
★今後の展望・希望と告知
このアルバムが、聴いてくれた皆さんのお気に入りの1枚になってくれたら嬉しいです。
それで、コンチェルトを気に入ってくれたなら、是非ライブ会場に来て頂きたい。
今のコンチェルトはアルバムとはまた違うテンションを感じさせる演奏ができていると思います。
ゼヒお近くの会場にお越し頂いて、非日常の空間を共有したいです。
…以上が島紀史自身の言葉によるメッセージ。脚色一切なし。
ホント、その言葉にウソいつわりのない完成度の高いアルバムなのよ。
そして、録音されたギターの音がスゴイ!
やっぱり真空管のアンプをアホほどクランク・アップさせて録った音は素晴らしい。
そのレコーディングの様子もレポートしているのでコチラをご覧頂きたい。
…ということで、コンサートに戻る。
いよいよニュー・アルバムからの曲を披露だよ!まずはタイトル・チューンの「Between Life and Death」。
いかにもコンチェルトらしいロマンチックなスピード・チューン。
新しいリズム隊ならではのバッキングと多用されるとキーボード。「らしく」はあって元のCONCERTO MOONではない。
もう1曲は「Struggle to Death」。
ヘヴィなリフに乗ってストレートアヘッドに曲は進むが以外にポップな展開がおもしろい。
行った~!
縦横無尽に炸裂する島フレーズ!
ニュー・アルバム好きの私には、今回2曲しか演らなかったのがチト寂しいが、楽しみは次回のツアーにキープしておくことにしよう!
CONCERTO MOONの詳しい情報はコチラ⇒Official Site