昨日Marshall GALAのチケットを発売致しました。チケットを早速お買い上げ頂きました皆様には心から御礼申し上げます。
おかげさまで好評を頂戴し、残席がわずかとなっています。チケットのお買い求めはお早めにどうぞ!
さて、今日は女性アイドル・デュオ・チーム、Neo-Zonkの最新CDの紹介から…タイトルは『LUMINOUS』。
「luminous」とは、「光を発する」とか「明るい」とかいう意味の形容詞だ。
一方、「光を放つ」というような意味だと「glow」という単語がある。「蛍の光」は英語に直訳すると「the glow of a firefly」。でも、これを英語圏の人に伝えてもあの「閉店のテーマの曲」は連想されない。あの「蛍の光」はスコットランド民謡で、原題は「Auld Lang Syne」という。
このスコットランド語を英語で意訳すると「Times gone by」となり、ま、「懐かしきあの頃」みたいな意味になるらしい。
この曲が挿入歌として使われたのが1940年の『哀愁』という古い映画。
メロドラマの権化のような、戦争が恋人を引き裂く悲恋物語。
私は中学生ぐらいの時にテレビでこの映画を観て、子供心に「なんじゃらホイ?」と思ったわ。
大分後になって知ったのは、この映画の原題が『Waterloo Bridge』ということ。
ズ~っとイギリス映画かと思っていたらアータ、これアメリカ映画だったのね。
というのも、タイトルの他に主役を演じたヴィヴィアン・リーはイギリス人なものだからてっきりイギリス映画かと思っていたの。
ヴィヴィアン・リーは『哀愁』の前年に当たる1939年、『風と共に去りぬ(Gone With the Wind)』のスカーレット・オハラ役でアメリカ・デビューした時に「イギリスにはこんな美人がいるのか?!」と多くのアメリカの男性が腰を抜かしたらしい。
ああ、また観たくなってきたな、『風と共に去りぬ』。
ちなみにこの映画の中でスカーレットのお姉さんのメラニーを演じていたオリヴィア・デ・ハヴィラントは、イギリス人の両親の間に何と東京で生まれている。お父さんはケンブリッジを卒業して英語の教授として東大(当時「帝大」)に招かれていた。
私は小学生の頃から何度となく『風とともに去りぬ』を観て来ているが、最初に観た時からたくましく生き抜くスカーレットより、やさしく女性的なメラニーの方に惹かれた。今、こうして年を取ると尚更だな。
このオリヴィア・デ・ハヴィラント、実妹がヒッチコックの『レベッカ』なんかを演ったジョーン・フォンテーンで、母親が姉ばかりヒイキするので子供の頃から仲が悪かった。(ちなみに『レベッカ』で共演したイギリスの有名なシェイクスピア俳優、ローレンス・オリヴィエはヴィヴィアン・リーの夫だった)
洋の東西を問わず姉妹間には「お下がり」の習慣はあるもので、オリヴィアは妹に譲る服をワザワザ破いて着れなくしてから渡すような意地悪をしていたらしい。
あの優しいメラニーの実態は根性の悪いクソガキだったようだ。
この姉妹は二人とも演技の才能が豊かで、お姉さんのオリヴィアは二回アカデミー賞を獲得し、妹はヒッチコックの『断崖(原題は邦題とはゼンゼン関係ない「Suspicion」)』で主演女優賞を獲得。実際スゴイ演技だった。
アカデミー賞史上はじめての姉妹受賞者となった。
ところが、『断崖』と同じ年に別の映画でオリヴィアも主演女優賞にノミネートされていたからサァ大変。
妹の受章により、もちろん姉妹の中は一層険悪となり「アカデミー賞が引き裂いた姉妹関係」として、オールド映画ファンでは知らない者がいないぐらい有名な話となった。
メラニー、実はイヤなヤツなんだよ。
でも、このオリヴィア・デ・ハヴィラントさん、1916年(大正5年)生まれというから今年で満100歳。ご存命である。
ヴィヴィアン・リーがらみで『欲望という名の電車』について書こうかと思ったけど長くなっちゃうので止めておく。何か「電車」の話題にでもなった時に強引に書かせてもらうことにしよう。
以上で脱線終わり。じぇじぇじぇ、正月早々の大脱線!ワイルドだろ~?
さて、どうやって話を戻したらいいんだっけな……そうだ、「luminous」だ。
「luminous」と「glow」は共に「光を発する」という意味だけど、このふたつの言葉の間には相容れない決定的な違いがある。それは、「luminous」はラテン語、「glow」はゲルマン語を源としていることだ。
「glow」は蛍のようにポワンとした優しい明かりのことを表す。
一方の「luminous」は、イルミネーションよろしく、今日これから紹介するNeo-Zonkのように色とりどりに光り輝いている状態を指す。
Neo-Zonkは2009年に大阪で結成されたZonk-Monkを前身としており、2014年に活動を開始した女性ふたりのキーボード奏者によるプログレッシブ・ロック・グループなのだ。
つまりギターレス。「zonk」とは「泥酔する」とか酔いつぶれる」とか「眠り込む」とかいう意味がある。グループ名にそういう思いを込めたのかどうかは確認していない。
ギターがいないんじゃMarshallとは縁遠くても当然なハズ。それがどうしてお近づきになったのか…この人のおかげ。
伊藤ショボン太一…NATALの若きエンドーサーだ。
これまでにも何度かMarshall Blogに登場してもらっているショボンちゃんは、若いワリには色んな音楽を勉強していて、ロックだけでなく自分でジャズのグループも率いている。
プロのミュージシャンに対して「若いワリには」なんて言ったら大変失礼になるが、最近の若いミュージシャンの中には驚くほど音楽を知らない人が結構いるもんだからつい…。
それで、以前私が「プログレッシブ・ロックが好き」なんて言ったことを覚えていてくれたのであろう。親切にもこの日のライブに誘ってくれたのだ。
リハーサルがちょうど始まるぐらいの時に会場にお邪魔した。
挨拶をして、リハーサルを拝見させてもらったのだが、一曲だけでその場を失礼した。
想像をはるかに超えてスゴかったのだ。
それで、他の曲は本番の時の楽しみに取っておきたくなってしまったというワケ。
そして、ショウが始まった。
NATALを挟むような形でステージ両側にキーボードが設置される。
上手のキーボードは長崎祥子。
下手は大沼あい。
真ん中で張り切ってるのが伊藤ショボン太一。
ショボンちゃんのNATALはウォルナット。
彼はバーチのキットも所有している。
現在Staveスネアの入荷待ち中。
オープニングは「Air」という曲。
チョット見てこれ!
かなりの「Black Page」状態。
「4/4拍子の曲はほとんどないんですよ~」なんていうふたりの言葉通り、5/8だの7/8だの9/16だの…要するにそういう音楽だ。
凄まじく複雑なリズムやキメをこともなげにシレっと聴かせる…それがNeo-Zonkの音楽なのだ。
それがちっとも難しくない。イヤ、楽理的に聴いたら面倒なことになるが、普通に聴いていたらひたすらカッコいい「インスト・ロック」なのだ。
もうこういうの大スキなの。ショボンちゃんありがとう!
しかも、同期は一切なしのすべて人力。
聴こえている音はすべて三人が実際にナマで奏でている音だ…ってこんなこと当たり前なんだけど、今、「桜」じゃあるまいし、あまりにも「同期」という手法が当たり前になっていて、それもどうしたものかと常日頃思っているのだ。
昔、Bay City Rollersが来日した時、「ステージの本人たちは楽器を弾いているフリをするだけで、演奏がテープだった」とかいう噂が流れたことがあったが、「同期」ってそれと大差ないと思うワケ…古くからロックを聴いている頑固ジジイにはそう思えるのね。
二曲目はこのバンドのオハコ的なレパートリー「U.T. - a hole in danger」。
「hole」が付いたプログレの曲というとPFMの「Four Holes in the Ground」を思い出すが、アレに匹敵するぐらいカッコいいって言いたいぐらいカッコいい。
ショボンちゃんのフィルからオルガン・リードのファンキーな調子で曲は進む。
またね、ベースがカッコいいんだ。
ベースは交替でキーボード二人の左手か足が担当している。
サビでは典型的なマイナーのII-Vフレーズが使われていたりして楽しいな。
そして…聴く者の度肝を抜くこと間違いなしのシンフォニックなキメ!
「こんなこと普通やるか?」的な無茶なキメ!
どうやって合わせているが甚だ疑問だったが、リズム的なタネ明かしをしてもらって納得。
ま、タネがわかったところで「やれ!」と言われてもまったくできないけど…。
ファンキーなムードから一転してハードなエイト・ビートへ!
あいちゃんのシンセ・ソロが唸る!
そしてまたファンクにもどる瞬間のカッコいいこと!
Neo-Zonkのドラムはサポート席になっていてショボンちゃん以外にもプレイをしてきているが、祥子ちゃんに「最後のキメでドラムがからんできたのはショボンさんがはじめて!」と言わしめて、すっかりテクニシャンぶりをみせてくれた。
三曲目は「Mirage」という6/8の急速調ナンバー。
祥子ちゃんがメロトロン風のサウンドでメロディを奏でる。
ショボンちゃんのソロ。
絶好調だったばょ。
それにしてもドラムの音がいいな~。
バスドラとベースのカラミが実に気持ちいい!
四曲目は「Into the Green World」。
コレはわからなかった…。
ヒナステラのようなテーマ・リフが11/8拍子が基本でできているところまではわかったんだけど、三回数えると4小節目で合わなくなってしまう。
どうしても気になって第一部の終演後、どういうリズムなのか教えてもらった。
答えは11/8+11/8+11/8+7/4ということだった。コリャわからんワケだわ。
アウト・フレーズを多用したあいちゃんのロング・オルガン・ソロが聞きごたえ満点。
呼応するように祥子ちゃんがシンセでソロを弾きまくる。
ここでも力強く、頼もしいショボンちゃんのドラミングが光る。
MCがまた可愛くて楽しい…というか、さっきまであんな壮絶な演奏をしていた女の子と同一人物とは到底思えん!
第一部の最後は前身のZonk Monk時代から演奏している「Disorder」。
これまた聴きごたえ十分すぎる~!
あいちゃんの壮大なパイプ・オルガンから曲はスタート。
ラテン・フィレイバーのテーマから…
またまたヒステリックなキメが炸裂!
祥子ちゃんのハープシコードが出て来るわ、ドハードに攻めまくるわでもうやりたい放題し放題!
こういうのが聴きたかったんよね~。
第二部は「When You Wait for Someone in the Rain」という7/8拍子の曲でスタート。
この日、発売された二曲入りミニ・アルバムに収録されている曲。
CDではおしとやかにキーボード二台で奏で上げているが、バンドでの演奏はまたまた壮絶。
このアルバム、二曲入りとうたっていたが、シークレット・ナンバーと称してライブの音源が数曲収録されていてこれがまたウハウハだったの!
当然、この日の分のCDは完売。
続いては「バトル」をテーマにした「Going up」。
赤コーナーはオルガンのあいちゃん。
青コーナーはエレピの祥子ちゃん。
16ビートの3/4やスローでヘヴィなパートで華麗に弾きまくるふたり。
そのミニ・アルバムに収録されている「go-on」。
バラードということなんだけど、そこはNeo-Zonkのこと、おとなしく収まっているワケがない。
ピアノのバッキングもさりげなくハードだし…
ショボンちゃんのバスドラがまたグイグイ押し込むわ、押し込むわ。
この曲ではあいちゃんがフルートを披露。
余技なんてものとは程遠いしっかりした吹奏。Ian McDonaldを思い出したよ。
「最後なのに…」と紹介した曲のタイトルは「Prologue~flow the time」。
『Luminous』に収録されている超大作。
まるで『忠臣蔵』か『ベンハー』でも始まりそうな大仰なイントロが耳を惹きつける。
ティンパニーの音は足で出しているのね?
そのイントロから展開するドラマチックでスケールの大きな構成はミュージカルの序曲のようだ。
基調は5/4拍子。Lalo Scifrinのアレみたい?
ドラマチックな展開のせいか、Rick Wakemanの作品のようなイギリス的な雰囲気が漂う。おりゃ~、7/4のブッ速いエイト・ビートじゃい!
あいちゃんのスリリングなシンセ・ソロ!
祥子ちゃんも同じくシンセで応酬!
イヤ~、とにかくスゴイ演奏でアッという間に本編が終わっちゃったよ。
こちとら根っからのギター好きなもんでこんな仕事をさせてもらっているし、ギター・アンプ屋としてこんなこと言っちゃイケないのはわかってるんだけど、このバンド、ギターがいなくてホントにヨカッタな~。
絶対に必要ない。
Joe ZawinulがWeather Reportにギタリストを入れなかった理由がわかるような気がしたナァ。ま、考えている次元はゼンゼン違うんだろうけど、多分、このバンドにギターが入った途端、新鮮さを失ない、普通のバンドになってしまうのではないか?と思うワケ。
絶対にこの編成でもっともっと変なコトをやってもらいたい。
アンコールは「Promnade」という速いエイト・ビート。
これがまた妙なキメがあって面白いのだ。
途中で急速フォー・ビートにリズム・チェ~ンジ!ク~~~、「さぶイボ」が出る~!
ショボンちゃんのフォー・ビートを聴いたのはこれが初めてではないが、えらくスウィングするんだよ。
Herbieの「Cantalope Island」も出てきたりして…。
そう、この祥子ちゃんはところどころHerbieっぽいプレイが見受けられるように思った。後でそのことを尋ねたが、特に影響を受けているワケではないそうだ。
それと、キーボードの二人はベースのパートを交替で担当しているのだが、曲中でそれを引き継ぎするところが実にカッコいいんだな~。
しかし、ヘヴィ・メタルだけじゃなくて、いよいよプログレッシブ・ロックも女性が活躍する時代が来たんだな~。
普段から書いているように私はプログレッシブ・ロックが大スキでしてね。Neo-Zonkがプログレの救世主に見えたよ。
本場のイギリスでも斜陽感が顕著なこの手の音楽が、わが国のうら若き女性の手でこうして生きながらえているのはファンとして素直にうれしく思った。
女性のロックは日本が世界一だね。
若い草食系ロック男子は、マネしなくてもいいから「こういう音楽がこの世にある」ということを勉強して欲しいと思う。
Neo-Zonkの詳しい情報はコチラ⇒neo-zonk-site
さて、さてさて、これだけ書けばプログレ好きでなくてもNeo-Zonk観たくなったでしょう?
Neo-Zonkは既報通り3月6日開催のMarshall GALAに出演する。
彼女たちの音楽とともに、ギタリストに囲まれて祥子ちゃんやあいちゃんがどんなプレイを見せてくれるかが楽しみだ。
あいちゃんのシャープでクールなベースラインはEDENが引き受ける。
ドラムは「技術と安定」のショボンちゃん。
ショボンちゃんが奏でるNATALのサウンドに存分に酔いしれて頂きたい。
アノね、実はこのバンドのリハを見た瞬間から「コレはGALAでみんなに紹介せにゃアカン!」って思ったんよ!
Neo-Zonkの出番がコンサートの大きな見せ場のひとつとなることと期待している。
Marshall GALAの詳しい情報はコチラ⇒Marshall Blog
1965年創業のNATAL(ナタール)はMarshallのドラム・ブランドです。
★NATALの詳しい情報はコチラ⇒NATAL Drums Official Web Site(英語版:現在日本語版作ってます。)
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(一部敬称略 2015年10月16日 高田馬場 音楽室DXにて撮影)