サイバーニュウニュウ~20世紀→21世紀 新世紀復活祭
『勝ち抜きエレキ合戦』の時、私はまだ3,4歳だったのでさすがにナマの記憶はないけれど、映画『エレキの若大将』なんかを観ればその人気と熱気が十二分に伝わってくる。
調べてみると、この番組は夜の7時とか、7時半に放映されていたんだネェ。信じられん。
成毛滋、ザ・サベージ、ゴールデン・カップスなんかもこの番組の出身だったんだね。
こういったバンド合戦の類の番組は最近でこそ見かけなくなったが、昔から時折編まれては人気を博していた。
私の世代では高校の時に日曜日の昼間に東京12チャンネル(今のテレビ東京)で放映していた『ロックおもしロック』という30分枠の番組かナァ。司会は近田春夫で、1978年のスタート。毎週楽しみにしていたんだけど、短期間で終わっちゃったような印象がある。
番組のすべてが「バンド合戦」で構成されていたワケではなかったハズなのだが、その部分しか覚えていない。
他に覚えているとしたら、(和田)アキラさんが出ていた国産ギター・メーカーのCMだ。
アレは本当にビックリした。
「プリズム」と「和田アキラ」の名前は一気にロック好きの高校生の間に広まり、一時期は「和田アキラは和田アキ子の弟」なんてムチャな噂がまことしやかに囁かれていた。
ベースの方のCMのスティーヴ・フォックスもカッコよかった。
ギター・メーカーがテレビ番組のスポンサーを務めるいい時代だった。
で、Marshall Blogで以前にも触れているが、そのバンド合戦にBAD SCENEが出場したことがあって、マァ、アレも驚いたナァ。もうその頃はライブハウスにBAD SCENEを観に行ってたからね。
「アンタらどこかで演ってんでしょう?」とか「演奏がこなれすぎている」とかいう評価で、素人のバンドに敗北していた。
今考えてみるとおかしいでしょ。初めから「プロお断り」というルールにしておけばヨカッタじゃんね。
Charさんやナルチョさん、牧野元昭さんがいたバンドだよ、審査員がBAD SCENEの名前を知らないワケがない。しかも審査員長を務めていたのは牧野さんがコラムを寄稿している音楽誌の編集長だったんだから。
そう、当時はプロとアマの技術の差は歴然としていたのだ。
「かうんたっく」というバンドの私と同じぐらいの年齢のギタリストにも度肝を抜かれた。
寺内タケシの「津軽じょんがら節」を完璧に弾いて審査員から大喝采を浴びたのだ。左手を大きく広げて1弦をトリルする姿がカッコよくて、翌朝学校でそのギタリストの左手をマネながら「昨日、コレ見た?」と話題になったのを覚えている。
そのギタリストが今の西山毅だ。
そして『イカ天』。
マァ、マーブロ読者にこの番組の説明は要らないだろう。
この番組が始まった時、私はもう「若手のホープ」として、ネクタイを締めて、スーツを着て、一生懸命サラリーマンを務めていたな。
もうその頃、新しいロックは聴いていなかったけど、この番組は結構楽しみにしていた。オネムになっちゃうのでビデオに録って毎回見てたわ。
スゴイ人気だったよね~。
先の『ロックおもしロック』から11年…ガラっと変わったのはビデオを見ての審査という手法だった。演奏がマズイと非情にもワイプが入ってしまって途中で演奏が強制終了となるアイデアが面白かったナ。
でも、それ以前のコンテスト番組と明らかに違っていたのは、出場者たち自身だった。
以前のコンテストは「技術的な優劣」を競っていたが、イカ天の頃になると、「どれだけ個性的であるか」の戦いになっていた。
80年代に入り、日本でもロックが普遍性を獲得したことのひとつの証左であったのではなかろうか?パンク/ニューウェイブのムーブメント以降、「誰でもロックができる!」という考えが源流にあったのだろう。
そんなこともあって「個性的」ということが危険極まりないことをも証明してしまったのが「イカ天」だったような気もするナァ。
「ヘタウマ」という言葉がハヤったのはこれよりもっと前か?
最近はとんと聞かなくなったけど、この言葉がすごくイヤだった。
ヘタでウマいということはあり得ない。ウマいからウマいワケ。「ヘタヘタ」は十分あり得る。
ピカソだって熊谷守一だってデッサンとなればモノスゴイ技術を持っているワケだし、Ornette Coleman自身が吹いているメロディはキチンとしたジャズ・イディオムに則ったものだ。John Coltraneは、最後は無調の世界に入り、一聴すれば誰でもできそうなメチャクチャぶりを呈したが、その器楽演奏のテクニックは超人的だったことは誰もが知っている。
ヘタウマ・ギターと騒がれたJames Blood Ulmerなんかは昔、バリバリにビバップを弾いてたらしいよ。私が思うに、どんなに速く弾くよりも、ビ・バップをギターで弾きこなす方がはるかに超絶だと思う。だってビ・バップという音楽はギターのことなんか何も考えてくれていないもん。
私はOrnetteやAylerは好きでもThe Shaggsが苦手だ。どこまで行ってもZappaのような「ウマウマ」が好き。
話は戻って…
しかし!このイカ天、素晴らしいバンドを生み出したことも事実で、Marshall Blog的に見れば何とも言ってもその最高峰は人間椅子だろう。
何人も侵すことのできない個性を保ち、しっかりとした技術をもってして自分たちだけの世界をブレることなく長年にわたって作り続けていることこそ賞賛に値すると思う。
他にもBeginをはじめとした現在でも活躍するスター・バンドを生み出したこの番組の功績はやはり大きい。
そして、今日の主人公もすさまじい個性と音楽性を兼ね備えたバンドである。
第13代イカ天キング、サイバーニュウニュウの登場だ。
しかしですよ…今、この手の番組をやったらどうなるんだろうね…。
見たい?それともコワイ?
出てくるバンド、全部草食系の「ありがとう」と「がんばれ」だよ。
イヤ、審査員も困るだろうな…。
前置きが長くなってしまったが、一度「イカ天」について書きたかったので触れさせてもらった。
23年ぶりに再集結したサイバーニュウニュウ。そのお披露目公演の模様をレポートする。
ボーカル&ベースのレプリ・シン。
ボーカル&ギターのメカ・エルビス。
Marshall BlogではNATALプレイヤーおなじみの諸藤英太郎だ。
愛用のアッシュのキットで大暴れ。
最近は20”バスのブルー・スパークルのメイプル・キットも入手して、ますますナタラーになったA太郎さんなのだ。
正直に言っておこう。
失礼ながら私はサイバーニュウニュウを存じ上げていなかった。よって知ったかぶりはしません。ココがMarshall Blogのいいところだ。
したがってメカさんの存在を知ったのもA太郎さんからバンド加入の知らせを受けてからのことだった。
まず、名前にヤラれた…「メカ・エルビス」。いいよネェ。いいアイデアだよネェ。私も『人造人間キカイダー』大好きだった。
オープニングはイカ天でサイバーニュウニュウ知られるところになった「ひねりつぶせ!」。
もちろん客席の熱気は倍増!
この日以前にもメカさんにはお会いしていたが、当日ステージをビックリ。
ナニが?ってこのスモークと電飾よ。どうせやるならコレぐらいやってくれなきゃウソだ。
それと、レプリさんのテクニック。歌いながらあれだけ複雑なベース・ラインを弾くのは並大抵のことじゃない。まるでPaul。
そして、グイグイとばんどをプッシュしていくA太郎さんのドラミング。乾いたNATALアッシュの音が実に気持ちいい!
第一部では1989年にカセットテープ(89年はまだカセット?)でリリースした『未開派野郎』からの曲を演奏。
「鎮痛剤でポン」…コレって「ヒロポン」?ちなみに「ヒロポン」という名前の由来は「疲労がポンっと取れるから」とされているが、そうではないらしいよ。「フィロポノス」というギリシャ語の合成語がナマって「ヒロポン」になった説が有力らしい。意味は「労働を愛する」だそうだ。
「べガスのエルビスになりたい」~「恋してクルパー」~「アナーキー・イン・ザ・ブルーハワイ」と曲は続いた。
ここで最初のゲストが登場。
新曲の「絶対安全ハンドシェイキン」と…
「雨にヌレテモいーや」を演奏した。
「♪ヘンな日だナァ~」ね。
同じく『未開派野郎』から「アドレナリン・ブルース」、シングルのみでリリースされた「すいか割り」をプレイした。
カブキロックスの氏神一番を迎えての「お江戸」。
蜘蛛の巣(っていうの?昔、そういう名前で駄菓子屋さんで売ってた)もバッチリきまった!
つづいてのゲスト・ステージはたまの石川浩司。
「学校にまにあわない」
石川さんの絶叫がコダマする凄まじく個性的な曲だ。
第二部は「うしろゆびさされ組」なんてカバー曲もプレイ。コレは「おニャン子クラブ」かな?
「夕やけニャンニャン」なんてのやってたね。
我々世代は「ぎんざNOW」だよ。まだ銀座の時代だよ。
でも、こういう若い子向けの夕方のバラエティ番組ってなくなったね?見る子がいなくなっちゃったんだろうね。
「次のはコワイよ」というレプリさんの言葉通り、コワいのが出て来た!
コレはジェイソンか…『The Texas Chain Saw Massacre』ね。
子供たちはおおよろこび!
と本編18曲を熱演し客席を大いに沸かせた。
この日、サイバーニュウニュウの復活を待って沖縄からお越しのお客さんもいらっしゃった!
今回の復活に時期を合わせて、旧作もリマスタリングされて復活を遂げた。
1989年の『未開派野郎』と…
さらに!
メカ・エルビスのフィギュアも発売された。コレは「ファン垂涎」ってヤツでしょう!
ナ、ナント2曲とも新曲。
私も随分いろんなコンサートを観てきた。オープニングに新曲を持ってくるバンドはそんなに珍しくないが、アンコールに新曲だけ演るバンドは初めて見た!
紹介が遅れたけど、ステージの上手で踊り狂いながらメカさんのスモークと電飾を操ったのが忍者ボーイヒデ。グッジョブだ!
最後は当日の出演者が全員ステージに集合!
これでもか、これでもか!とエンタテインメント精神に横溢した中身の濃いショウだった。
アンコールというものは「もうちょっと聴きたい!」というお客さんのリクエストに応えるものだ。
普通は誰もが知っている曲を演奏してニギニギしく最後を締めくくると相場がキマっている。
そこに誰もまだ知らない新しい曲を持って来たのは、未来のサイバーニュウニュウへの自信とファンの期待を膨らませるための大切なメッセージだったのかもしれない。
最後はメンバーからのご挨拶。
サイバーニュウニュウの詳しい情報はコチラ⇒OFFICIAl SITE
1965年創業のNATAL(ナタール)はMarshallのドラム・ブランドです。
★NATALの詳しい情報はコチラ⇒NATAL Drums Official Web Site(英語版:現在日本語版作ってます!不慣れな作業でもうヘロヘロ!)
★NATAL製品は全国有名楽器店にてお求めください。
★NATALドラムは高田馬場バズーカスタジオでお試しになれます。バーチ、メイプル、そしてアッシュのキットの他、各種スネアドラムも用意しています。ドラマーの方、「NATALの部屋」ご指名でお出かけください。
詳しくはコチラ⇒バズーカスタジオ公式ウェブサイト
(一部敬称略 2015年8月30日 初台DOORSにて撮影)