<後編>いきます。<後編>といっても間に休憩があって、今からその後半のレポートをお届けするワケではござらんよ。
当日は17:00と20:00の2回公演で、選曲・内容は同じ。本稿ではその両公演で撮影した写真を混成して1回分の公演としてレポートしている。途中から衣装が変わっているメンバーさんがいるのはそのためね。
日本の名曲に続いて演奏されたのはジミー・ジェイムス。もとい、ジェイムス・マーシャル・ヘンドリックス。要するにジミヘン。
やっぱり「Purple Haze」のリフはロックの象徴だ。それに乗ってメンバーが紹介された。
ベースは伊藤広規。
ドラムの渡嘉敷祐一。
キーボード、難波弘之
ギター、土方隆行
ギター、北島健二
充実したマルチ・ボーカル…
MICKEY-T
StuartO
浦田健志
難波さんのオルガンに導かれてプロコル・ハルムの「A Whiter Shade of Pale(青い影)」。これは当然選ばれるだろう。ユーミンにも達郎さんにも多大な影響を与えたというこの曲、何しろ世界で最もオンエアされた曲だというのだから…。
私なんかは「ウワッ、またコレか!」という耳タコ状態な感じがしないでもないが、発表された1967年(意外に新しい)当時は大変な反響だったようだ。プロコル・ハルムはラテン語で、「Beyond these things」とか「Of these far off things」いう意味らしいが、正確なラテン語ではないらしい。
私はあまりプロコル・ハルムは得意な方ではないが、『Grand Hotel』は大好き。その他にも、ハッとするような素敵な曲があってやはり長年活動を続けるだけの魅力を存分に備えているイギリスを代表するバンドといえよう。今は無き新宿厚生年金会館大ホールで観た四人囃子とのダブル・フィーチュア・ショウは最高に見ごたえがあった。
ところが、世の中ではご年配の方を中心に、やはり「プロコル・ハルム=青い影」というピタゴラス級の定理があって、現在プロコル・ハルムで活躍中のギタリスト、ジェフ・ホワイトホーンをマーシャルのイベントで呼んだ時に(ビクターさん主催の『Marshall Night』)、オフステージでやはり年配の男性から「青い影」、「青い影」と言われソロ・ギターでポロリポロリと弾いて見せていた。ジェフもサラリと弾いたところを見ると、こういう場面に世界中で出くわすのであろう。ところが、そのプレイがすごくよくて、失敬ながら私的にはすっかりこの曲を見直してしまった…という次第。
ちなみに、この曲の原題がスラスラ出てくる年配の方々は私を含めほとんどいないと見ている。歌詞はキテレツで意味がまったく分からないが、「青い影」はひとまずいい邦題といえるだろう。
ちなみに達郎さんは2001年の難波さんのプロ・デビュー25周年のコンサートでこの曲を歌っている。
カタやんのFのオクターヴの16のカッティングで始まるのはフォーカスの「Sylvia」。
メロディは北島さんが担当。ふたりヤン・アッカーマンだ!
この曲は難波さんと北島さんのチョイスだそうだ。今度またおふたりがお顔を合わせる機会があれば「Focus II」にしてもらいたいナァ。難波さんだったらPFMでもいいナァ…ってイベントの趣旨がズレるか…。
でも待てよ、いつか「Progressive☆Men」っていうのはいかがだろうか?相当受けると思いますよ。なんたって日本は世界のプログレ大国だからね。ウン、絶対いい。
やっぱりタイス・ヴァン・レアの難波さん。リハの時は「In the Court of the Crimson King」の後半をひとりメドレーで演ってくれた!ク~、タマらん!絶対プログレ編やった方がいいよ。その時はプロデュースさせてもらいたいナァ~。
ロックの代表曲のメドレーが次に来た。
正直、北島さんや土方さんのイメージではないが、まずはT-Rexの♪ジャカジャ~ン、「20th Century Boy」だ。
ローリング・ストーンズの「Jumpin' Jack Flash」。
シカゴの「25 or 6 to 4」…「Twenty Five or Six to Four」。ここに「長い夜」という意味はない。これじゃ原題のままシングル盤出せないもんね。
この表現、学校で教わったかな?「4時25、6分前」。要するに「3時35分か34分」という意味。ま、ネイティヴの人がこんな細かいこと言っているのを聞いたことはないけど、「10 to 6(5時50分)」とか「Quarter to 12(11時45分)」なんてのはいつも言ってる。反対に「すぎ」は「past」を使う。「A half past 8(8時半)」とか「10 past 11(11時10分)」とか。
この歌はドラッグ関連の歌と言われたが、作ったロバート・ラムは「ただの一日のうちの一時」とそれを否定している。
シカゴは聴かなかったナァ。でもこれは文句なしにいい曲だよね。
続いてはTOTOの「Child's Anthem」。コレ邦題は「子供の凱歌」っていうんだ?変なの。(人知れず訂正しました。三宅さんありがとうございます!)
ところでこの曲って車かなんかのCMに変な風にアレンジして使われてたでしょ?譜割りがまったく同じなのに裏メロが表になっちゃってるような…。すごく気持ち悪い。
これね~スゴイ思い出があってね~。以前も書いたことあるんだけど、もう以前のブログは誰も見れないからまた書いちゃおっと!
何年か前にTOTOが来日してアンコールでこの曲を演った。この曲、メロディをルカサーが弾くでしょ?で、どういうワケかチューニングがあまりにもメチャクチャだったんですよ。どんな優秀なギタリストでもあのチューニングじゃメロディをさらうことはできないってくらい。ピッチが狂ってしまったオープン・チューニングみたいだった。
どうやら、ルカサーは自分のギターの音が聴こえなかったのか、聴いていなかったのか、それに気がつかずお構いなしにドンドンとメロディを弾いてしまった。外ではどんな素人でも気が付くぐらいヘンテコリンなサウンドになっているもんだから観客が騒ぎ出した。かなりメロディが進んだところでルカサーはようやくそれに気が付いた。
するとどうしたかというと、そのギターを反対側のステージの袖にギターを放り投げ、それを受け取ったギター・テクに向かって思い切り首を切る仕草をしたのだ。「F%&#in' ba"!&d! You got fired!!」って。TOTOのような世界の超一流のバンドでもこんなことがあるのかと本当に驚いたね。でも、「IV」を出した頃、今の家内(あ、今も昔も今の家内です)と観に行った武道館のコンサートはよかったな~。
もちろんこのバンドではそんなトラブルはありえない。イヤ、むしろこういう曲は非常にシックリ来ると思った。どうだろう?
メドレーの最後は「いつものラーメン」。イヤイヤ「♪There's motor runnin'」の歌いだしでおなじみの「Born to be Wild」。この邦題は実にいいね。カナダのステッペン・ウルフは日本ではこの曲しか知られていないが、海外ではモンノすごく人気があったんよ。
そして「Layla」。こんな有名な曲、よ~っぽど演奏能力がなかなかできませんよ。それを演っちゃう!
生命保険のCMでも使われている後半のジム・ゴードンのピアノのところを、広規さんが「あのタルいところ」とリハーサルで呼んでいたのを聞いて大笑いしちゃった!デュアンの人気もあって、「アソコがいいんじゃん!」という人も多いが、私も広規さん派でしてね…。もうおかしくておかしくて。
ところが、そんなタルいパートも目の前で難波さんに弾かれた日にゃ、そりゃ飛び切り美しくて実にいいもんです。
まだまだ出てくるロックの超スタンダード。
カッティングの鬼、土方さんから始まる「Long Train Runnin'」。
それにしてもウマイ。一流のプロに「ウマイ」なんて言うのは失礼なのは百も二百も承知している。でも、土方さんのプレイを形容する時、「ウマイ」という言葉が一番ピッタリくる思うんだよね。付け加えるなら「問答無用にウマイ」かな?
JCM800がリイシューされた時からお付き合いさせていただいているが…ウマイ。
明日の記事でもお名前だけ拝借しようと思っている。
やっぱり人気のこの曲…やっぱり快感の広規グルーヴ。「Relaxin' at IWAKI ALIOS」のライナー・ノーツでも書かせてもらったが、広規さんのベース・ラインだけを聴いていても音楽になってしまう。それは青山純さんとのデュオ・アルバム「A*I」でタップリと堪能できるが、やっぱり真骨頂はライブにおけるプレイだろう。
マルチ・ボーカルを利しての「♪Without love」。
海外のバンドの曲をカバーする時、ケタ違いに大きな問題となるのがコーラスなんだよね。欧米の人ってどうしてああコーラスがウマイんだろう。岡井大二さんとそんな話をしたことがあったが、大二さん曰く「声が似てくるんだよ。だからきれいに重なるんだよ」と教えてくれた。確かにそうなんだよな。似てるというか似せるというか…。もちろん発音の問題も大きい。
今回は専門家が3人で合わせるので安心。全編で美しハモりを聴かせてくれた。
「時代の音楽を作って来た」と昨日、出演者のみなさんを紹介したが、百恵ちゃんの「ロックロール・ウィドウ」で実際にドラムを叩いているのは渡嘉敷さんだそう。広規さんから情報をいただきました!
この曲では渋いソロを聴かせてくれた北島さん。
33~34年ぐらい前、私が高校生のころ、友人とやっていたバンドのドラムのヤツが胃炎で練習に来れなくなってしまった。その時、ある人が「ドラマーを連れて行ってあげる」と近所の練習スタジオに現れたそのドラマーが北島健二だった。ドラムもスゴイプレイだったけど、私のフライングVを使って目の前でヴァン・ヘイレンの「Eruption」を弾いてくだすった。その当時、北島さんは某誌のためにコピー譜を書かれていたハズだ。しかもその直後、図々しくも一緒にギターも弾いてもらった。
でね、その時北島さんにお訊きしたんですよ。今でもハッキリと覚えてる。「アンプは何をお持ちなんですか?」って。すると北島さんは「マーシャルとブギだよ」って(今でいえば)シレっとお答えになった。
もうこれがカッコよくてね~。今の若い人たちにはわからないだろうけど、当時はマーシャルもブギも高くて高くて、弾くことはおろか、においを嗅ぐことすら難しかった。そんな時代だからね。「マーシャルとブギだって~!やっぱプロはスゲェ!」と女子高生のように(その時は)本当に高校生だったけど)友達と猛烈に感激したものだった。
今にして思うと、そういう時、その手の質問ってギターのことを訊くと思うのね。でも、なぜかギター・アンプについて訊いたナァ。それが今こうしてマーシャルのスタッフになって仕事をしているんだから我ながら驚いてしまう。やっぱりなんかの因縁だね。
これでもか!と迫りくる有名曲。小林克也さんに紹介された本編最後の曲は「Hotel California」だ。
StuartOさんが身振り手振りで歌いながら詞の内容を説明。
ここでも、2人のギターも存分に楽しめたよね~。
最後の♪ティララ、ティララのハモりも完璧!
ちょっとサラっと終わりすぎた感じがするけど、本編はひとまず終了。
アンコールではまず、難波さんとMICKEY-Tさんが登場。
デュエットでベット・ミドラーの「The Rose」を演奏した。
渾身の歌声が会場に染み入る。
バンド・メンバーが呼び込まれるが、広規さんの楽器がない!…と思ったら…。
あ~、これがやりたかったのね~。
この顔!鼻の下がエキストラ・ロング・スケールになってますよ、広規さん!
冒頭で2回の公演の内容・選曲は同じと記したが、広規さんがチューしてもらったのは2回目のみです。
泣いても笑っても…の最後の1曲はこれまたドスタンダード「Stairway to Heaven」。バンドも観客も天国へ一直線だ~!
渡嘉敷さん、お待たせしました、ツェッペリン!
スケールのデカイ演奏はさすが!最後の最後までさすが!
有名なギター・ソロを同時に弾いてしまう2人。
実に楽しそうなギター・マンたち!
こういう末代にまで継承される曲や演奏はもう永久に出てこないだろうね。
ベース・マンも楽しそう…には見えないがこれは写真のせい。真剣です。
メンバー全員、昔を思い出しての楽しい楽しい演奏会となった。
ギター・マンたちが握手を交わしてすべての演奏が終了した。
いい音楽と素晴らしい演奏、この系譜を絶やさないことは、幸運にもロックの黄金時代を経験した者が負うもはや重要な責務ではなかろうか?
もうCDが消滅し出し、iTunesすら近い将来駆逐される時代が来ると喧伝される音楽業界。定額でいくらでも好きなだけ好きな音楽が聴ける時代がすぐに来るらしい。そういう環境になれば若者がいい時代のロックに触れる可能性がもしかしたら出てくるかもしれない…とも思えない。
もういい加減にしたらどうだろう。そんなことよりいい音楽を作ることをみんなで考えた方がいいのではないのかね?便利そうで聴こえはいいが、そんな環境で、今日演奏された曲のように将来みんなに好んで演奏されるようないい音楽などが育まれるワケがない。
柄ではないが、SNSに目をやると多くの音楽関係者が業界の現状を嘆き憂えているようだ。しかし、誰かが何かをしているようにはほとんど見えない。エラそうに言っている私もこうしてブログでブーブー文句をタレているのが関の山だ。そう考えると、こうしたGuitar☆Manのような企画は大変有益であると思う。
昔を思い出しておやじさんが押入れからギターを取り出すのも大いに結構だが、同時にこのGuitar☆Manというイベントが、単なる懐古趣味に陥らず若い世代に向けたイベントに成長してもらうことを願ってやまない。そういう趣旨ならMarshallはよろこんでお供をさせていただきますよ!
※Guitar☆Manの第2回目の公演が3月7日(あさって!)に控えています!
詳しくはコチラ⇒Guitar☆Man公式ウェブサイト
(一部敬称略 2013年2月10日 汐留Blue Moodにて撮影)