SUPER ROCK 2025 IN 巣鴨 <その3:最終回>~THE HUSH & Oka Hendrix
さて、『SUPER ROCK 2025 IN 巣鴨』のレポートも今回で最終回。
<その1>の冒頭に記した通り、実際の当日の進行とは異なる形でこれまでの2回の記事を連載した。
それでこの最終回では、「オープニング・アクト」と称して一番最初に登場したチームのステージのようすをまずお送りしようという寸法。そのオープニングを務めたチームはトリオだった。
岡田"OKAHIRO"弘(以下「オカヒロ」ちゃん)
阿川"RYO"亮一(以下「亮」さん)
秋元清実
この3人でナニを演ったのかと言うと、ジミ・ヘンドリックス…だから人呼んで「Oka Hendrix」。
通称「オカヘン」。
聴き逃したらタダじゃおかへんで!…という気合の入った演奏が冒頭から飛び出して来た。
1曲目は「Voodoo Chile」。オカヒロちゃんも「根っからMarshallの人」。
しかもネタはジミヘンですからね。
オカヒロちゃんのMarshallっぷりの見せどころ!…ということでオカヒロちゃんが持ち込んだ愛用のMarshallを見てみよう。
1975年製の「2203」。
「2203」というと、日本では「八百、八百」と「ワイルド7」みたいなことになるのが普通だが(←コレ、今時わかる人はいるかしらん?)、「JCM800」は1981年からのこと。
「2203」がスタ―トしたのはそこからさかのぼること6年前の1975年だった。
このピンスイッチを搭載したオカヒロちゃんの「2203」はその最初期のモデル。翌年の1976年からロッカー・スイッチ(赤と黒の四角いヤツね)が採用され、81年になって「Rose Morris」との販売契約を終了し、「JCM800」シリーズを始める時に下の写真のようなフル・フェイスのデザインになった。
向かって右はCALAVERASのキシケンちゃんの「JCM800 2203」。
この日は「2203の同窓会」でもあったのだ。
その後、1981年に「JCM900」が発売されて「JCM800 203」は生産終了となったが、2002年、Marshallの創立40周年を記念して製造が再開され、現在に至っている。「1チャンネル、100W、マスターボリューム付き」が「2203」の定義で読み方は「Two-two-oh-three」。
50Wモデルは「2204」。
コレらは「Master Model」と呼ばれた。
一方、「JCM800シリーズ」の新モデルとして1983年に発表した「2チャンネル、100W、マスターボリューム付き」は「2210」。
50Wモデルは「2205」でこれらは「Split Channel」と通称された。
このあたりのモデルを設計したのは「JCM2000」までを手掛けたエンジニア、スティーブ・グリンドロッド。
私も何度かお会いしたことがあるが、いかにも「エンジニア」って雰囲気の人だった。
以上、久しぶりに「Marshall屋」らしいことを書いてみました。やっぱり真空管アンプをチャンと使って出す轟音はタマらんね~。
デジタル系の製品とは音のヌケ方が全く違う。2曲目は「Foxy Lady」。
オカヒロちゃん、ナニやら楽しそう~!
SUPERBLOODの盟友である亮さんと…
以前に何度かご登場頂いている獅子王の秋元さんで組んだリズム隊もゴキゲン。
秋元さんは「Mitch Akimoty」の異名を持つジミヘン・ドラマーだからして、オカヒロちゃんも2人と演奏していて楽しくないハズがない!ストラップをハズす大熱演!
「サンキュー!ヘイ!獅子王!
3日前に63歳になりました…おめでとう、ボク!
その流れで今日はジミ・ヘンドリックスとリッチー・ブラックモアを好きなだけ演らせてもらいます!
ジミヘン好きな人いる?…よし、ついて来いよ~!」ジミヘン好きが客席にいることもわかったので安心してジックリとブルースを。
そういう時に出て来るのは「Red House」ですな。ギターだけでなく歌にも気合が入る。
好きなジミヘンだからね。
私はかつてジミヘンの妹さんのジェイニーに会ったことがある…なんて話をしたことあったっけ?ギター・ソロとなると、まさにMCで言っていた通り「好きなだけ」弾きまくったオカヒロちゃん。
「静かなヤツ」と紹介した次の曲は「Little Wing」。
そして締めくくりは当然「Purple Haze」。
「♪パロへッ」と力強く歌い上げ…
エキサイティングなギター・プレをタップリと披露した。
そんなオカ・ヘンドリックスを強力にサポートしたリズム陣の2人。
短いながらも楽しいジミヘン・ミュージックでオープニング・アクトの役割を存分に果たしたのであった。
「どうもありがとう~!」
ジミ・ヘンドリックスについてはロンドンの家にまで遊びに行って徹底的に好き勝手に書かせてもらってるので記事を未読の方はゼヒご覧あれ!
多分、ジミヘンに関するこんな記事は世界でMarshall Blogだけだと思うよ。
↓ ↓ ↓
【イギリス-ロック名所めぐり】
vol. 57 ~ジミ・ヘンドリックスのロンドン <vol.1>
vol. 58 ~ジミ・ヘンドリックスのロンドン <vol.2>
vol. 59 ~ジミ・ヘンドリックスのロンドン <vol.3>
vol. 60 ~ジミ・ヘンドリックスのロンドン <vol.4>
vol. 61 ~ジミ・ヘンドリックスのロンドン <vol.5>
vol. 62 ~ジミ・ヘンドリックスのロンドン <vol.6>
しかし…我ながら本当にMarshall Blogって色んなことをやって来たナァと思うわ。場面は飛んでこの日のトリ。
「THE HUSH」と名付けられたディープ・パープルを演るチームだ。下山武徳
盛山こういち
甲斐貴之
MAD大内
そして、オカヒロ。
オープニング・アクトの時に「ジミ・ヘンドリックスとリッチー・ブラックモアを好きなだけ演らせてもらう」と言っていたその「リッチー部門」がコレ。
チャンと黒い衣装に身をくるんで来たオカヒロちゃん。当然先ほどの「2203」が再登場。
今回は「JVM210H」のハーフ・スタックがお供を務めた。さぁて、1曲目はナニかな?
「♪タカタカタカタカ」とMADさんのスネア・ドラムがクレッシェンドして来た!はい「Highway Star」。
「♪ンノーバディゴナ」
今日もすさまじい下山さんのシャウト!気分爽快!
毎日ラーメンを食べないとこういう声は出ない。盛山さんのオルガン・ソロ。
盛山さんは先日VAXPOPのレポートでご登場頂いた。たたずまいもロジャー・グローバーっぽい甲斐さん。
ちなみに長崎の「グラバー」って本当はロジャーと同じ「Glover」なんだよ。ちなみに下はロジャー・グローバーのMarshall。
プロトとタイプかな?
ディープ・パープルはMarshallの製品をPRするデモ・バンドを務めていたことがあって、ギターは言うに及ばず、ボーカルズからキーボーズまで全部Marshallが作ったアンプで演奏していた時期があった。
ちなみにイアン・ギランが使っていたコンガはNATAL製でした。
この赤い「Picture Frame Cabinet」と呼ばれるモデルはかつてはイアン・ギランの所有物だった…とか言っていたナァ。
コレは1x15"と1x12"のバージョンがあって15"の方は「2054」という型番だったようだ。
でも調べてみると、これらのモデルは「for LEAD/ORGAN」となっていてボーカルズ用に販売していたワケではなかったようだ。 さて、みんな大好き「Highway Star」のギター・ソロ。
王様風にやるならば、「♪あ~でもない こ~でもない」。
オカヒロちゃんがバッチリとキメてくれた。その勢いで「Smoke on the Water」へ!
「『Highway Star』と『Smoke on the Water』で盛り上がると思わなかったんだけど…盛り上がってますネェ、皆さん!
でも演っている方も楽しいし…いいですよね、この年になっても。
中学生の頃から演ってるからね。
ナンて言ったって中学2年生の時の初舞台が『Smoke on the Water』ですから」
1970年代、高校生のバンド・コンテストなんてのがあると、今みたいにオリジナル曲を演奏するバンドなんてひとつもなくて、全部コピーなのが当たり前。
そして最も数多く取り上げられていたレパートリーがディープ・パープルだった。
不思議とレッド・ツェッペリンは全くいなかった。
一度私が中学生の時、高校生だったイトコが出場したバンド・コンテストを見に桜木町まで行ったことがあった。
その時出て来たバンドのうち、今でも結構ハッキリ覚えているバンドが2つあって、ひとつはオルガンのトリオでELPの「Barbarian(未開人)」を演奏していた。
原曲はハンガリーのバルトークね。
高校生ですよ!…ベースの子がトラビス・ビーンのアクリルの楽器を使っていたのも印象的だった。
もうひとつ覚えているのはサディスティック・ミカ・バンドのインストゥルメンタル「黒船」を丸々演奏したチーム。
やっぱり双方すごく目立っていたナァ。
50年前の話…いい時代だった。
あの頃はロックを聴いている子は少数派で、そういう子たちは「本当のロック」を聴いていたからね。
ロックがテレビに目をつけられた途端、ロックはロックでなくなってしまった。ココで下山さんがTHE HUSHのメンバーを紹介。
次の曲はナニじゃろな?
ツーバスが迫りくるドラムスでスタート…こういうドラムスでスタートするのを「ビート・スタート」って言うんですってね?
ディープ・パープルのビート・スタート曲といえば~「Fireball」。
この曲って頭に「ギュイ~ン」っていう機械音が入っているでしょ?
2012年9月の「Marshall50周年記念のコンサート」のリハーサルをテムズ川南岸の「Bermondsey(バーモンジー)」というところにある、昔ビスケットかなんかの工場だったスタジオでやったんだけど、そこのエレベーターが滅法古くて動き出す時にいちいちあの「Fireball」のアタマのような音がするワケ。
それが聞こえて来ると、イギリス人のオッサンたちが1人残らず「Oh, Fireball!」ってよろこんでいた。
ブリティッシュ・ロックで育った私はそれを耳にして「ああ、イギリスだナァ」とうれしくなったわ。
きっとアメリカではこうはいかないでしょ?
そんなことを思い出した。それこそ下山さんの口の中から火の玉が飛び出して来そうなド迫力!
疾走感あふれる甲斐さんのベース・ソロ!
この曲を初めて聴いてカレコレ50年近くになるけど、最初は「なんてカッコいい曲なんだッ!?」と大いに感動したものだった。今度は「Black Night」。
おなじみのナンバーが続々と飛び出して客席は大興奮!
「難儀やな…我々の愛の塊をみたか?
ありがとうございます。
今日は洋行帰りで盛り上がっています。
洋行ってバンコクとシンガポールだよ。
未だに時差ボケだよ」盛山さんのオルガン・ソロ。
♪グバ~ってやっておいて…「Lazy」につなげる。
下山さんのハーモニカ・ソロ。
カッチョいい~!オカヒロちゃんから「タイム」がかかって下山さんのMC。
「あ、久しぶりに『タイム』って聞いた。
いいですなぁ」
そういう局面に居合わせないだけかも知れないけど、そういえば「タイム」って聞かないね。
「タンマ」っていうのはどうだろう。
「ちょっとタンマ」って今の子も言うのかな?
言わないのであればそういう時にナンて言うんだろう?オカヒロちゃんがタイムを要求したのはギターを持ち替えるため。
ナチュラルのストラトキャスターを提げてますますリッチー・ムードで「Mistreated」。
ココから「MKIII」コーナー。コレは下山さんの声で聴きたいディープ・パープルの曲のウチのひとつ。
オカヒロちゃんはボトルネックを披露。
下山さんの大激唱!
それにしても「モノスゴイ!」としか言いようがありませんな。さぁ、『SUPER ROCK 2025 IN 巣鴨』もいよいよ大詰め!
「Lady Double Dealer」と「Storm Bringer」を連発してド派手に出番を締めくくった!
チーム名は第1期。
演奏曲目は第2期と第3期。
幅広いディープ・パープル・ミュージックに客席も大いに満足の様子だった!誰か「『Who Do We Think We Are』全曲演奏」っていう企画を立ててくれないかしらん?
絶対取材に行きます。
当日の屋台村にはSUPERBLOODやそのメンバーのグッズがズラリと並んだ。
当然アンコール。
まずオカヒロちゃんがステージに姿を現した。
「エ~、リッチー・ブラックモアだからマイク・スタンドがないんだよね。
すっごい自由な感じでとてもうれしかったです。
今日はボクのワガママだったんですがみんな楽しんでくれたかな?
リッチー・ブラックモアが好きになってギターを始めて、それでジミ・ヘンドリックスにたどり着いた…という流れがあったんで。
今日は自分が一番大事にしているギターを2本持って来れたのが本当にうれしいです。
ありがとうございます。シアワセです!」黒とナチュラルのテレキャスター。
そういえば、オカヒロちゃんって愛器たちに名前をつけていて、たしかレスポール・カスタムを「シュワルツ」と呼んでいたような気がする。
その理由を尋ねると「だってそういう感じがするじゃん?」と答えてくれた。
それでいいのだ。
この2本のストラトはナントいう名前なんだろう?
マーシャルには名前がついているのかな?
ところでマーシャルのモデル名ってアルファベットと数字の組み合わせばっかりで愛想がないでしょ?
実はそれで新商品の名前について提案したことがあったんよ。
ま、その結果はまたいつか…。 そしてオカヒロちゃんがTHE HUSHのメンバーを紹介してステージに呼び込んだ。
すると…『SUPER ROCK』のオーガナイザーを務める亮さんがバースデイ・ケーキを持って登場!
Oka Hendrixの時のMCで自ら触れていたように3日前がオカヒロちゃんの誕生日だった。
「♪ハッピバースディトゥ~ユ~」フゥ~っとやって…
「一生忘れない!ありがとうございます!
みんなありがとう!」最後の1曲。
オカヒロちゃんが弾き出したリフは「Burn」。
ま、そう来るでしょうネェ。盛り上がっているところに水を差すようで恐縮ですが…私はチョット「Burn」には満腹状態でしてね。
いつかその理由を真剣に分析したことがあった。
そのカギはこの世にもカッコいい4小節のリフにあることに気がついた。
数えてみると、曲の中でリッチーはこのリフを22回弾いてるのでその合計は88小節。
時間にするとどうなるか…4小節が約6秒だから全長としては132秒。
この曲の長さは6:04だから秒に引き直すと364秒。
すなわり曲の中でリフが占める割合は132/364秒。
ナント!この曲はその36%がリフに費やされていることがわかった。
道理で飽きるワケだ。
ジャズ/フュージョンで言うと「Spain」がコレに当たる。
ま、「リフ曲」というのはそういうモノだけど、あまりにもカッコいいリフだから、私のような飽きっぽい輩にはどうしても耳に付き過ぎてしまうんだろうね。
それに約50年前から聴いているんだもん、飽きても不思議はない。 …というハズなんだけど、このTHE HUSHの演奏。
バッチリ楽しませて頂きました!
感動のエンディング!
4バンド、それぞれの熱演がビンビン伝わって来る楽しいイベントでした!
亮さん、ご苦労さまでした!<おしまい>
(一部敬称略 2025年3月29日 巣鴨獅子王にて撮影)