TERRA ROSA 〜PRIMAL TOUR 2016〜 その起源「Battle Fever」から今へ
2016年もあとわずか!今年も早かったね~。
この年の瀬でMarshall Blogもダラダラやっているのかと思ったら大間違いだよ。
The Yardbirdsは悲しいぐらいウケなかったからな…。我ながらいい記事だと思ったんだけど、またしても洋楽の弱さを実感してしまったような気がする。
今日のはスゴイんだから!
誰も切らないかと思っていたら、突然「2」が4枚出て来るようなもんだ。
「え~!まだ持ってたの!」と誰もがビックリするようなカード…それはTerra Rosa再結成公演のレポート。
今回の再結成に当たっては東京・名古屋・大阪で3回のライブを開催。
今日レポートする東京公演は、たった3回しかないライブのウチの1回を見逃すまいと、ファンが大勢詰めかけ、会場内に入りきらなかった多くの人がロビーのモニターでパブリック・ビューイングを余儀なくされるほどの盛況ぶりであった。
筋金の入った剛健なロックを待ち望んでいるリスナーがいかに多いことかを裏付ける象徴的な光景だったのではなかろうか。今回のツアーに選ばれたレパートリーは、1984年のデモテープ『Terra Rosa I』と翌年のデモテープ『Terra Rosa II』に収録されていた曲、加えてその後のYOUさん在籍中の1986年に作った曲を中心に構成された。
さらに、その後の岡垣さん、三宅さんの作品もいくつか織り交ぜられた。
題して『PRIMAL TOUR 2016〜 その起源「Battle Fever」から今へ』。
「Battle Fever」はTerra Rosaの最初のオリジナル曲のタイトルだ。
今回のメンバーは…
赤尾和重
現在はMarshall Blogで東京でのライブを毎回ポートしているKURUBERABLINKAで活躍中なのは皆さんもご存知通り。
A-K-A-Oの綴りから先日の「Marshall Blogの1000回記念メッセージ」特集でもトップ・バッターでご登場頂いたことは記憶に新しい。
岡垣JILL正志
Terra Rosa総帥の岡垣さんもついこないだAPHRODITEでMarshall Blogにご登場頂いた。もちろんJILL'S PROJECTでも何度もお出まし願っている。
足立YOU祐二
YOUさんも過日「3 tea 3」というトリオをレポートさせて頂いたばかり。
以上の元Terra Rosa組をサポートするリズム隊が…
MASAKI
CANTAで気炎を吐いているMASAKIさんもMarshall Blogのおなじみのベーシストだ。
そしてドラムが売れっ子、佐藤潤一。
JVM210Hと1960A、1960BでTerra Rosaのギター・サウンドをクリエイトした。
今回のような選曲は初めてというステージのオープナーは、1985年のデモテープ『Terra Rosa II』に収録された、Terra Rosa初期のギタリストであるシマユウジ作の「A HELL RAY」。
ファンにはおなじみのナンバーゆえ、サビでは大合唱!
会場はすさまじい熱気!
シャープなギター・ソロにドラマチックなキメが連なるあたりが何ともいえない快感!
さすが百戦錬磨のツワモノ・リズム隊。
完璧なメタル・フィーリングでTerra Rosaの音楽を律動させる!
続いてはデモテープ『Terra Rosa I』から「BEWARE」。
やっぱりこういうリフ曲ってはいいね。
私の中ではこういうタイプのロックこそ「Rock」と定義づけられている。
もちろん、そうしたリフはMarshallで奏でられなければならない。
「アルバムに入っていないYOUの名曲がたくさんあるので楽しんでね!」
冒頭に記した通り今回の再結成では、1999年に『Primal』と題された未発表音源集にまとめられたデモテープ時代の曲の演奏が中心になっている。
実に7割近くがYOUさんの作品だ。
またそのアルバム『Primal』にボーナストラックを加え、『Primal Plus』として今回再発売された。
MCをはさんで「I WILL LOVE YOU AGAIN」。
デモテープ『Terra Rosa II』に収録されていたYOUさん作のややポップなナンバー…といってもそこはTerra Rosa。
和重さんのシャウトが爆発するハード・チューンに仕上がっている。
1986年、この曲で「ロッキンF」誌のアマチュアバンド・コンテストのグランプリを獲得することになった。
ここでもYOUさんの華麗なソロが炸裂!
「Dreaming Cooler」も典型的なリフ曲。
「リフ曲」というのはギター・リフに歌のメロディを乗せて作られた曲、という意味で言っている。
今は「フレーズ」とほぼ同義で「リフ」と言う言葉が使われているが、以前は「リフ」というのはイントロだけではなく、歌の中でも奏でられ続けているスタイルを指した。
我々が若い頃は、そういうリフ曲の最強のお手本がUFOのMichael Schenkerの作る曲とされていた。
「Rock Bottom」でも「Natural Thing」でも「Mother Mary」でも歌のバックはずっとギター・リフでしょ?
若い人の演るロックにはギター・リフを持つ曲がないので、「リフ曲」が存在せず、それも我々の持っている「ロック感」に大きな食い違いを生じさせている。
70年代はこういうタイプの曲を日本語で演るバンドってのはほとんど見かけなかった。
カッコいいリフのメロディが思いついても、それに日本語の歌詞をうまく乗せるのがムズカシイからだ。
そこへいくとこの曲はどうだ?
まるで英語ように自然に歌詞が曲に乗っているではないか!
日本語によるハードロックのひとつの完成形といってもよいのではなかろうか。
「ここからの3曲は、デモテープにも入っていない、ライブで数回やっただけの幻の曲です。YOUと最後にやった目黒鹿鳴館のライブでもやった思い出の曲たち」…もちろん3曲ともYOUさんの作曲。
…と紹介されて演奏したのはまずスローな16ビート・チューン、「Go Alone」。
CANTAでは見慣れたこの光景だけど、ヨソで見るとまたゼンゼン違う印象を受けるから不思議だ。
もちろんMASAKIさんの一流のパフォーマンスだからして初めてコレを見る観客も大喜びだ!
また「ひとりハチャトゥリアン」とか見たいナ。
このセクションの最後は「ADAGIO」。
今回、唯一のバラード。
和重さんの声で聴くバラードの味は格別だ。会場内のお客さんにはもちろん、ドアを隔てた外の連中にもこの和重さんの情感が突き刺さったハズだ。
性別を問わずロック・ボーカリストの最高峰のパフォーマンスだ。
そういえば、和重さんと話していた時のこと…。
和重さんはCDジャケット等への表記では必ず「Vocals」と複数形にされているのだが、「アレ、ボーカルって、英語では'vocals'って複数形になりまっしゃろ。ボーカルひとりでも必ず複数形ですやん。アレはナンで複数にせなあきまへんのやろう?メッチャ不思議に思てまんねん!」
ま、もちろん実際はこんなにディープな関西弁をお話になる和重さんではないが、関東の人間からするとこういう風に誇張したくなりますねやんか。
で、調べてみた…この複数形、確かにそうなの。
Frank Zappaのライブ音源には必ずと言っていいほどメンバー紹介が収録されているんだけど、(コレは私の勝手な想像だけど、あれほど難しい自分の曲を完璧に演奏してくれるバンドメンバーたちに敬意を表し、録音物に彼らの名前を残そうとしているのではなかろうか?)
「On guitar and vocals, Ray White!」とか「Tonight featuring dynamic Napoleon Murphy Brock on tenor saxophone and lead vocals」とかやってる。
このように必ず「vocal」は「vocals」と複数形にしているワケ。
理由は即座にはわからなかった。
もちろんその理由が気になるのは当然のこと。こういう質問は大歓迎だ!
そこでLongmanの英英辞典で「vocal」という単語を調べてみると、「楽器を奏でるのではなく、音楽を歌って奏でること」というような説明があって、名詞の「vocal」は「通常複数形」…と記されている。
そうかも知れないけど、コレじゃラチが開かない。
ってんで、早速英語の本場、イギリスへメール。
赤ちゃんの時から60年近く英語を話している私の友人曰く、「ボーカルというのは広範囲にわたる芸術様式と理解されているからではなかろうか?すなわち、リード、バッキング、スピーキング等複数の要素をいっぺんに'vocals'というカプセルに押し込んでいるので複数系で扱うのだと思う」ということだった。
思いっきり端折れば、「そういうものだから仕方ない」という風に説明せざるを得ない話とも言えそうだ。
加えてキーボードも同じ理由で必ず「keyboards」と複数形にするのが普通とのことだ。
そういえばZappaは鍵盤楽器プレイ―ヤを紹介する時にも必ず「on keyboards」ってやってるわ。
もしかしたらこのふたつの言葉は教会音楽にも関わっていて、古来より複数形で扱うことになっていたのではなかろか?コレは私の想像ね。
バシッとした回答ではないけれど、和重さんにはコレを答えとさせて頂いた。
これからも和重さんにはガンコに複数形のクレジットを貫いて頂きたい。
オルガンやシンセサイザーの鍵盤の上を指が滑り行く。そのなめらかなサマはまるで手品のようだ。
クライマックスは足のグリッサンド!
コレもAPHRODITEやJILL'S PROJECTで何度も観ているシーンだが、今日はやっぱり少し違って見える!
デモテープ『Terra Rosa II』から「MY POOR SOUL」。
先の「DREAMING COOLER」同様、やや暗めのリフに和重さんのヘヴィなボーカルズが重なる。
ホント、このバンドってリフ曲が多かったんだね~。ブリティッシュ・ロックの象徴だよ。
MASAKIさんは日頃より「Terra Rosaが再結成する時はゼヒやらせて欲しい」と岡垣さんに頼んでいたらしい。
それだけにいつもとはまた違った気合がビンビン伝わってくる。
1986年のYOUさんの曲、「HOLY ONE'S HOLY VICE」。
グワ~、ノッケから手に汗握るスリリングなソロ!
歌詞は核兵器の製造者に向けたものだ。
KRUBERABLINKAの和重さんの歌詞を読んでいるとすごくおもしろいんだ。
曲と十二分に渡り合えるパワーを持ってるんだな。
和重さんはこの曲の他にも、テラローザでは「火の中に影」、KRUBERABLINKAではライブでもよく取り上げている「業火」など、反核や反原発をテーマにした歌詞を提供している。
それにしても「もんじゅ」ね~。
私は原子力関連の仕事に直接携わったことはないが、「核燃料開発事業団」や「高速増殖炉」、「実験炉、実証炉、実用炉」、「炉底部」なんて言葉は社会人になって初めて耳にして、そして覚えさせられた言葉だ。
この辺りの話はまたいつか…。
続けて「DO WORK」。
1986年リリースされた『Go To Eat』というメタルのオムニバス・アルバム(廃盤)に収録されたYOUさんの曲。
ノッケからスゲエ歌声!
コレがTerra Rosaのやり方か~!
この曲もカッコいいな~。
なんかこの曲ではYOUさんのギターにUliの影響を垣間見てしまうのは私だけなのかしらん?
人気曲でありながらCDでは手に入らなくなっていた曲。
そこで、この記事の最初の方でも触れたこのツアーで販売するために作ったアルバム、『Terra Rosa Primal Plus』にリマスタリングしてめでたく再収録された。
こういうのはチャンと残しておいた方がいいにキマってる。
この『Primal Plus』には他にも『デモテープI』と『II』が収録された1999年リリースのCD『Primal Rare Tracks(廃盤)』の全曲と、1986年当時の未発表ライブ音源などが収録されている。ぎょうさん入っとる!
さて、後半のMCでは、「私はギタリストではないけれどMarshallが大好きで…」と、私がMarshall Blogの取材に入っていることを和重さんがアナウンスしてくれた。
ビックリするほどの「シゲさん」コールの中、ステージに上げてもらったので、皆さんをパチリ!
どうもありがとうございました~!
ハイ、写っていらっしゃる方、徹底的に今日の記事を拡散願いまっせ~!
今回のツアーのためにYOUさんが書き下ろしたナンバー、「TO CODA」。
今までのテラローザにはないテイストということだけど、やっぱりTerra Rosaだけの味わいがにじみ出ていますな。
東京公演もそろそろ終わりに近づく。コーダに入った!
曲は「FANTASY ROCK'N'ROLL」。
岡垣さん作のノリの良いロックンロール・ナンバー。
コレもライブでしかやっていなかった曲。
にもかかわらず、お客さん、大盛り上がりだったね~!
YOUさん作の「THE ENDLESS BASIS」が続く。
YOUさんがテラローザを脱退した後、三宅庸介が加入してリリースしたアルバム『The Endless Basis』のタイトルチューン。
Terra Rosaで一番有名になった曲でもあり、一番の人気曲でもある。
シャッフル・ビートでメロディアスなナンバー。
本編の最後に選ばれたのは今回のツアーのサブ・タイトルにも謳いこまれている「BATTLE FEVER」。
デモテープ『Terra Rosa I』に収録された岡垣さん作の曲。
テラローザの最初のオリジナル曲でもある。
今日の本編の最後を飾るにふさわしい、Rainbowの「Kill the King」を彷彿とさせるブッ速い2ビート。
ボーカルズとインスト連の組んずほぐれつの激演に演者、観客ともに昇天!
Terra Rosaの中でも人気が高いというのもうなずける!
メジャー最後のアルバム、『SASE』のタイトル・チューン。岡垣さん作のヘヴィな2ビートだ。
みんなTシャツなのに岡垣さんだけがよりヘヴィ・デューティな衣装になってる!
これぞ様式美!コレが美学!
『The Endless Basis』収録の当時のTerra Rosaとしては、いわゆる「様式美」とは少し異なるタイプの曲。
三宅さんの作曲で、リフやコード進行に三宅さんらしさが表れているとのこと。
今回この曲が取り上げられたのはMASAKIさんからの「ゼヒこれをやりた~い」とリクエストがあったため。
和重さんも大好きな曲のうちのひとつだそうだ。
メンバーはステージを降りたが、アンコール鳴りやまずで再び登場!
最後の最後もYOUさんの曲で締めくくった。
デモテープ『Terra RosaII』と『The Endless Basis』に収録された「FRIDAY'S FREE FAIR」。
これも「THE ENDLESS BASIS」同様にTerra Rosaのライブにはなくてはならない超人気ナンバー。
待ちわびていら人気曲の登場に煮えたぎった客席から大きな歓声が上がった。
ん~、カッコよかった~!
やっぱりこういうロックがなければ「Rock」は成り立たんて!
時代が変わりゆく中、我々世代が密かに愉しむのもよかろうが、若い人たちにもこのカッコよさをわかってもらいたいナァ。
レコードだのカセット・テープだの、懐古趣味が横行する中、ナゼ音楽だけは過去を見つめ直そうとしないのだ?
モッタイナイ話だ。
こうしてTerra Rosaは11月26日の大阪公演を終了し、再び封印されたのであった。