Sound Experience 22~ 足立祐二 3 tea 3編的な?
22回目を迎えた今回もダブル・ヘッドライナーでお送りしている『Sound Experience』。
レポートの後半は足立祐二率いる3 tea 3の登場だ。
さて、こうした「対バン形式」のことを日本ではいつの頃からか「ツーマン」とか呼んでいるが、断じて「ツーマン」なんて言葉はおかしい。
「ダブル・ヘッドライナー」だ。「ダブル・ヘッダー」でもOK。
「ダブル・フィーチュア」は大掛かりなコンサートの場合に使われるか、「二本立て上映」という意味で映画の興行に充てられる。『Rocky Horror Show』のオープニング・ナンバー、「Science Fiction/Double Feature」がそれ。
さて、おかげさまでMarshall Blogも意地を貫き通して来て、最近では「『ツーマン』という言葉はおかしい」という賛同のご意見を頂戴するケースが増えてきた。
せっかく「ダブル・ヘッドライナー」って言っていたのに「ツーマン」に戻っちゃった人もいるけど…ネェ~、Sさん!
一方、Mくんは一昨日のステージで「ダブル・ヘッダー」という言葉を使った。うれしい。
滑稽なのは「Two Man」とアルファベットで表記したりしているケース。
何でも貪欲に吸収しちゃう日本語のことだからして、「ツーマン」をもはや純粋な日本語として捉えるのならまだしも、間違えた英語をアルファベット表記するのは二重に恥ずかしい。
ま、とにかく一度張った強情は最後まで貫き通すぞ!
アレ、デジャヴ?
このあたり、どこかで書いたことがあるような気がするゾ…。
あ、昨日も書いたんだった!
さて、3 tea 3はインストゥルメンタルのギター・トリオ。
YOUさんも次から次へと色んなグループを送り出してくるナァ。
YOUさんはMarshallを使用。
JVM210Hと1960Bだ。
そしてドラムは今週パパになられた星山哲也。
星山さん、おめでとうございます!
赤ちゃん、ダッコしたいな~。
徹頭徹尾、YOUさんの音楽とギターを楽しむグループだ。
1曲目のアップ・テンポな「Magical Arms episode 2」からしてYOUワールド全開!
目まぐるしく変化する場面の数々に引き込まれてしまう。
今時普通ならタッピングを使って対応するようなフレーズを開放弦を組み込んで処理するところはYOUさん流。
定規を使ったかのような正確無比なプレイが素晴らしい。
派手なキメが入ったり、ワルツになったりと展開が予想できない!
2曲目は「天使の誘惑」。
我々の世代だと絶対に「黛」という名前が出て来る。
「黛」といっても「黛敏郎」のことではない。
『題名のない音楽界』の司会で有名なこの人、「涅槃交響曲」などの作品で知られる現在音楽の大作曲家だ。
黛さんは極貧ゆえピアノを買うことが出来なかった後進の天才作曲家にピアノを1台無償でプレゼントしたことがあったという。その天才作曲家とは武満徹のことである。
で、「天使の誘惑」は「敏郎」ではなくて「ジュン」の方。
1968年のレコード大賞を獲得した「黛ジュン」が歌った名曲だ。今、聴いてみると殺人的にいい曲だな。
歌詞も可愛いし、信じられないぐらいメロデイが素晴らしい。歌もいいし、アレンジも秀逸。つまりムダな部分がナニひとつないのだ。
「♪私の唇に 人差し指で 口づけして あきらめた人」…なんて、今時そんな純なヤツはいまい。
本当に昔の歌は魅力的だ。
もちろんYOUさんの「天使の誘惑」はそれとは何の関係もない。
三連のリズムに乗ったシャープなテーマ、親しみやすいメロディ(ココは同類)にノケ反ってしまいそうになる予想外の展開。
これぞ「天使のYOU惑」!
この大サビの旋律!まるで歌のようだ。だがプレイはカミソリのように鋭いぞ!
そして、何しろJVMの音が気持ちよい。
ベースソロからスタートするのはミディアム・スローの「My SUN」。
長谷川さんにはこの10日後にある現場で偶然一緒になってビックリしちゃった!
ホロ苦いメロディ。
そのメロディを感情豊かなアーティキュレーションで歌い上げるサマはまるで管楽器のようだ。
ピッキングの位置やピックが弦に当たる角度を調節して出す音ひとつひとつに表情が与えられていく。
シュレッディングとはまったく異なる違う恐るべき技術の集積と集中力。
「超絶技巧」とは断じて速弾きばかりではない。
角度を変えてみるとこんな感じ。
左手のグリッサンドの入れ方も独特至極。
ロックの定石フレーズをほとんど弾かないこともYOUさんのサウンドを独特なモノにしているポイントのひとつだ。
バック陣がまるで分身のようにYOUさんのプレイに反応していくのも見事。
「伊豆ライナー episode 3」という曲。
コレも本当に列車の中から景色を見ているように情景がコロコロと変わっていく。
中間部は7/4というか、4/4に7/8がくっついているのか…?
この曲も強烈だ。
ビックリするほどポップなメロディからキテレツなフレーズまで、何が飛び出すかサッパリわからない。
そういう意味ではもはやザッパ的。トリオではなくて大編成のバンドにアレンジしたものを聴いてみたい!
ヘタなプログレよりゼンゼンすごい。
前曲とメドレーのようにして演奏した「Magical Arms Episode 3」はタイトルからするとは1曲目の続編なのかな?
3/4拍子のテーマ内のトリッキーなフレーズとその後の展開の対比がスゴイ。
これまた予想外の転調からブギへ!
こんな曲があればおもしろいな…とフザけて考えた無茶な曲がそのまま現実になってしまったような印象を受ける。
途中で5/4拍子のアップテンポに!
そして、エンディングのキメ…エ、これで終わりなの?こういう茶目っ気がYOUさんらしいんだよな~。
6曲目は「Hard Tension」という作品。
これはワルツ。
もはや当然のごとく、曲は意外な展開を見せるが、一か所三宅さんの「murt'n akush(マラケシュ)」のリフとほとんど同じフレーズが飛び出してビックリ!
後は何しろ聴いたことのないようなフレーズがテンコ盛りで面白いことこの上なし。
「Ghost Song」が続く。
チョット怪しいイメージのテーマ・メロディ。やっぱりダイナミクスのつけ方が際立っている。
一か所しか出てこないが、転調を重ねるパートがスリリングだ。
そして、繰り返し出てくるメイン・テーマが耳に残る。
それにしても似たような写真ばかりで恐縮至極ですわ~。
YOUさんのライブ・レポートはいつもこうなっちゃうの。だってYOUさん表情ひとつ変えないんだもん!
顔で弾く人、暴れながら弾く人、いろいろな表現方法がギタリストにはあるけど、YOUさんは指で弾く人だな。当たり前のことなんだけど「指」だ!
下の写真はかなりレアな表情。
私が経験した限り、YOUさんのステージには曲間にMCがない。
ドバーっと演奏して最後にひとこと…というパターンだ。
そして、そのMCを挟んで最後の曲、「Worry Rat」。
開放弦を使ったトリル・フレーズ。ココでもYOUさんは右手を使わない。
胸のすくようなドライビングチューン!
これも独特のテーマメロディを持つ曲だ。
そして、ギター・ソロ。
ココは怒涛のロック・フレーズ・ラッシュ!
十分に気を衒った素材なのに異様なまでの耳なじみのよさ。
プレイはもちろんスゴイんだけど、曲が何しろおもしろい。
このSBLとのダブル・ヘッドライナー、ギター好きのシリアスなリスナーには相当お値打ちだったハズだ。
足立祐二の詳しい情報はコチラ的な?⇒You's Alien blog
アンコールは3 tea 3に三宅さんが加わった。
名門バンド、Terra RosaのOBふたり…まずはその周辺の話で大盛り上がり。
メチャクチャ笑ったわ~。
内容は保安上、割愛させて頂きます。
あ、YOUさんの歯に衣着せぬところ、大好きですとだけ書いておこう。
さて、出演者の競演はこの「Sound Experience」の名物だからして、今回も当然お二人にバトとって頂きます。
このバトル…JVM210Hと4x12"スピーカー・キャビネットとアンプの状況がほぼ共通だ!
しかし、ゼ~ンゼンサウンドが違うから面白い。
でも、共通なのは「自分だけの言葉」を持っているということ。
それだけに以前にも観てはいるものの、この共演はとても楽しみだった。
曲はJ.J. Caleの「Cocaine」。
コレは完全な私見だけど、オールド・ファンの皆さん、桑田佳祐の歌い方ってJ.J. Caleにソックリだと思わない?
さて、この曲を選んだのは、リフがあってワン・コードで延々と弾ける…という発想。
本当は「Cocaine」はワン・コードの曲ではないけどね。
歌詞は中学校の英語のテストだったら大変なことになる。
「She don't lie」だからね。主語は三人称単数ですよ!果たして「Cocaine」が女性名詞か?ということもあるけれど。
Zappaにもこういうのがあるね。
「She don't wanna get drafted, she don't wanna go(彼女は徴兵なんてまっぴらゴメン!戦争になんか行きたくないんだよ!)」…「I don't Wanna Get Drafted」という曲。
コワイね、徴兵…。たった2、3年前までは現実のものとして考えたことすらなかったのに。
3.11から日本のすべてが変わってしまった。
アメリカはイギリスから遅れること13年後の1973年に徴兵制を廃止したが、代わりに故意に格差社会を推進し、貧富の差を作って志願兵を確保した。
ちなみにこの13年の差が「ブリティッシュ・インヴェイジョン」を実現させたことは事実と観ていいだろう。
それを礎にDeep PurpleやLed Zeppelinをはじめとした栄光のブリティッシュ・ロックが誕生する系譜になるワケだが、これだけでは条件を満たさないんだな…。
イギリスにMarshallがあったからブリティッシュ・ロックは世界を制覇したのも厳然たる事実なのだ。
あ、イカン、思いがけず変な脱線の仕方をしてしまった!
期待通り火花を散らすような「ギター」対決…というよりピロピロ一切なしの「音楽」対決!
イヤ、対話かな?
何回も交換される上質なソロ。
技術の見せ合いではなく、いかにいいフレーズを弾くか…コレならいくら聴いていても飽きることはない。ピロピロは飽きる。
三宅さんのソロ…ムニッ!
「あ、また!今度はネックを握ってる!」
「放してくれ~!」
「ああ~、そんなことやってるウチに曲が終わってしまった!」…と最後まで楽しくスリリングなショウでした!
1965年創業のNATAL(ナタール)はMarshallのドラム・ブランドです。
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※本日は祭日ですが更新しました。その分、Marshall Blogは28日の更新をお休みします。
(一部敬称略 2016年9月29日 三軒茶屋GRAPEFRUIT MOONにて撮影)