【イギリス-ロック名所めぐり】 vol.23~BrightonでRock!
ソロソロまたカメラを持ってイギリスへ行きたくなって来たな~…ということで久しぶりの「名所めぐり」。
今回は旅だよ。
スタートはまたしてもヴィクトリア駅。カンタベリーへの旅の時もココが起点だった。
今日はココから南へ向かうのだ。
行先はブライトン!
何回も登場させて申し訳ありませんが…好きなものは好き。
バタシー発電所ね。
駅を出て5分も経たないウチに左側に見えてくる。
だから必ず進行方向左側に席を取る。
少し前に再開発工事により煙突が一本取り除かれている姿をインターネットで見た。
手入れをしてまた取り付けるような話を聞いたが、その頃には周囲にバカでかいビルディングが立ち並んでしまい、この光景は二度と見ることができないであろう。
この写真はもうだいぶ前に撮影したものだ。
バタシー発電所の詳しいレポートはコチラ⇒【イギリス-ロック名所めぐりvol.9】 バタシー発電所
しばらくしてロンドンの南で停車した駅。
オ~!クロイドン!
こんなところだったのか!
数年前の黒人の暴動が発生し、日本のテレビでも盛んにこの名前が叫ばれていた。
でも私は違う理由で感動したのね。
その理由とはこのCD…ここクロイドンにある「Fairfield Hall」というところで1965年に録音されたオーネット・コールマンの二枚組のライブ・アルバム。
正式なタイトルは『An Evening with Ornette Coleman』だけど、通称は『コロイドン・コンサート』…と思っていたら『Croydon Concert』というタイトルで発売してみたり、ジャケットにやたらと種類があったりでワケがわからない盤。
私が持っているCDはかなり質素なでき。本当はオーネットがヴァイオリンを弾いているジャケットのヤツが欲しかったんだけど…。
内容は、我ながらよくもこんなキテレツな音楽を好んで聴いてるな…と自分で自分をホメてあげたくなるようなシロモノ。
オーネットはフリージャズ・アーティストだけど、このアルバムにはクラシックの現代音楽に近いパフォーマンスが収められている。
電車で通過しただけだったけど、とりあえず来れてうれしかった。
ついた~!ブライトン駅。
何か熱海みたいだな。
ま、ここもイギリスきっての保養地だからして…。
熱海ほど急峻ではないにしろ、海に向かって坂になっている地形が余計にそう感じさせるのかもしれない。
駅を背にして駅前の目抜き通りを下る。
天気がいいな~。
海辺が近いせいかなんか、景色がやたらとキラキラして見える。
ココは熱海とは全然違うな~。
干物屋とかないもんね。
そういえばウチの家内のご両親の新婚旅行は熱海だったとか…。近すぎる!
ウチの両親は京都。
我々はアメリカ西海岸。
調べてみると、ある旅行会社のデータによると、今の人気ベスト5は;
1位 : ハワイ
2位 : イタリア
3位 : フランス
4位 : スペイン
5位 : モルディヴ
なのだそうだ。
コレは6月の風景。
別にまだ暑いワケでもないのに結構な人出だ。
向こうの方に見えるが有名なパレス桟橋(Palace Pier)。
ブライトンは、モッズ少年たちの青春を描いた『さらば青春の光』の舞台の一部となったところ。
皆さんよくご存じの通り、The Whoの『四重人格(Quadrophenia)』が原作ですな。
『さらば青春の光』だなんてあまりにもヒドイ邦題!
Vespaに乗ってモッズのあんチャンたちがブライトンに集まってケンカするヤツね。
私にしてはツッコミが浅いでしょ?
Can you see real me?
そう、実はこの映画があんまり好きじゃなくて一回しか観たことないの。『トミー』の方がケタ違いに好き。
あ、もちろんThe Whoの『Quadrophenia』は好きよ。
下はそのサントラ盤。
裏ジャケにはパレス桟橋が写っている。
『トミー』にもブライトンが出てくるの知ってる?
それは映画ではElton Johnが歌った「ピンボールの魔術師」。
「♪I've played the silver ball from Soho down to Brighton」とある。
ピートはプライトンが好きだったのかね?
桟橋の先端がチョットした遊園地になっている。
潮の加減か、深さの関係か、防波堤はあっても日本の浜にはこういう桟橋はないね。
先っチョまで行きたかったんだけど、もう足が言うことを聞かなくて断念。
すごく後悔している。
無理をしてでも、這ってでも行けばヨカッタ。
そして海の側から大英帝国の写真を撮ればヨカッタ!
滅多に来れないところはもちろん、仮にしょっちゅう訪れているところでも「また来ればいいか!」は旅には絶対に禁物だ。
何でも見れるときに見ておかないと必ず臍を噛む思いをする…ということは百も二百も承知なんだけどね~。
「好奇心」と「足」がケンカして疲れて「好奇心」が負けちゃった。
「捨てる神あれば疲労神あり」ってヤツ。
周辺には『さらば青春の光』通り、豪華なホテルがズラリと並んでいる。
主人公のジミーがスクーターをブッ飛ばして崖から飛び降りるシーンは、ここからチョット東に行ったセブン・シスターズというところだ。
あの白い壁の崖で有名なところね。
しかし、こっちは海の家もシャレてるね~。もちろんラーメンもカレーライスも置いていない。
この海の向こうっておフランスなんだよね~。
ステキね~。
Eric Johnsonは思い出さないよ。
いつかも書いたけど、イングランド最北部のサウス・シールズに行った時も感動した。
目の前にあった海は北海で、その向こうがスウェーデンだっていうんだもん。
「ずいぶん遠くまで来たな~」って思った。
浜は砂ではなくて細かい砂利。
裸足で歩くとチト痛い…のではなかろうか?私は試していません。
コレも日本では見かけない…というか見たことがない。
サンタモニカなんかにもあるけど、浜辺に遊園地を作っちゃう。
コニー・アイランドなんかもそうなのかな?
さて、The Whoの後はQueen。
当然お題は「Brighton Rock」でしょう。
『Sheer Heart Attack』をかけると最初に聞こえてくるSEはこのメリーゴーランドの音なのかな?
実は私、ロックを聴き始めた頃、Queenが苦手だった。
別に彼らの音楽がどうのというワケではなくて、硬派な私としては、女の子にキャーキャー言われているのが気に入らなかったんだな。
やっぱり男はZeppelinやPurpleだよ…てな具合。
でも、みんなには秘密ですごく「いいな」と思っていた曲が当時ふたつあった…それは「Keep Yourself Alive」と「Brighton Rock」だった。
子供の頃は「ブライトン」ってのが地名だとは知らなかったので、何かのロックの一種類かと思っていた。
…なんて言うと、今ではこの曲とタイトルの関係がわかっているかのように取られそうだけど、いまだにわからないでいる。
恥ずかしながらどんなに調べてもわからないのだ。
では「Brighton Rock」とは何か?
言葉の意味としては、ブライトンで売られている飴のこと。
数年前にMarshallの社長夫人がウチに遊びに来てくれた時に頂いたお土産の中にも入っていたんだけど、金太郎アメをもっと頑丈にした、ともすれば凶器にでもなりそうなゴツいキャンディだ。
恐らく向こうの人はコレをバキンバキン噛み砕いて食べちゃうんだろうけど、こっちはムリをして歯をおかしくしちゃうのが関の山なので、金づちで砕いて少しずつ頂いた。
味はいわゆる普通のアメちゃん。
「ブライトン・ロック」の意味がこれでわかった。
次。
歌の内容と言えばジミーとジェニーのある日の浮気物語でしょ?
コレ、一部が「木綿のハンカチーフ」みたいになっていて、フレディがジミーのパートは地声で、ジェニーのパートはファルセットで歌っている。
歌詞の中で「ブライトンへ行った」みたいなことは一切触れていない。
「rock」という単語は出てくるが、「rock of ages」というひとかたまりのフレーズとして出てくる。
何年か前に同名のミュージカルがあった。「永遠の岩」のような解釈がよくされるが、本当は「神様」を指す表現なのだそうだ。だからこの曲の「Oh rock of ages」は「Oh my God」ということになる。
わかったのはコレだけ。
コレらがゼンゼン結びつかないでいる。
ま、細かいことを気にしないでタマにはMarshall以外のギター・サウンドを楽しんでいればそれでいいか!
Brian Mayのギター・サウンドはあまり人の口に上らないが、私はかなりユニークなものとしてそれなりに評価しているつもり。でもMarshall Blogには出られないよ。
あのギター、「100年前の暖炉の木で作られている」と聴いて当時は驚いたものだが、そんなの何でもない。
だってイギリスの人は200年以上も前に建てられた家にごく普通に住んでいるんだから。
そんなことを知った今となって思うのは、もしかしてブライアンが言ったのは、その木が古いということがスゴイということではなくて、そんな古い暖炉を保存しかおかず、ブッ壊してギターにしてしまったところがスゴイと言っていたのはなかろうか?
地震がまったくない国に住むイギリスの人たちは古い建造物を大事に保存し、本当に大切に使っているからね。
日本だって地震と戦争さえなければな~。
ハイ、海は十分堪能したね。
陸に上がることにしよう。
街が発展したのはジョージ四世と18世紀に流行した海水浴のおかげらしい。それまでは小さな漁村だった。
また、ロンドンまで一時間かかるかかからないかの距離なので…「か」ばっかりで読みにくいな、言い直そう。
また、ロンドンまで一時間要するか否かぐらいの距離なので(向こうの電車は滅法速い)、ロンドンのベッドタウンとしても機能している。
いいな~、こんなベッドタウン!
「お仕事ですか?」…いつだったか、ヒースローで一緒になった上品そうな日本人のオバさんが私に話かけてきて、少し会話をしたことがあった。
話を聞くと、そのオバさんはイギリスに住んでいるという。
「私はイギリスが大好きなんですよ。だからうらやましいですね~。どちらにお住まいなんですか?」と尋ねると…
「(小さく)エヘン!ブライトンなんですよ。だからヒースローから面倒で…」と、訊かれてうれしそうに答えてくれた。
ま、自慢したくなる気持ちもわかるわな…実際に来てみると。
有名なレコード市はあるし…。
おもしろいのはこの「The Lanes(ザ・レーンズ)」と呼ばれる細い路地。
やたらめったら狭い路地に洋品店、宝飾品店、アンティーク・ショップ等のファッション系のお店がひしめいている。
あっち行ったり、こっち行ったり…歩いてみるとその様子はさながら迷路を巡っているようで、お店には興味がないものの存外に楽しい。
「アレ!こんなところも入れるわ~!」みたいな。
あのCath Kidstonもこんなに小ぢんまり佇んでいる。
ところで、この「Cath Kidston」、家内が結構好んで使っていて、本家だけあってイギリスには日本に入って来ていないアイテムが多いらしく、以前は命を受けてよくお土産に買っていた。
で、日本ではコレ、「キャスキッドソン」って言うでしょう?
それが気になっていたので、マリルボンのお店に行った時、お店の女性に正しい発音を聞かせてもらった。
「キャ~ス、キッ~ド、ストン」、つまり「キャス・キッドストン」とちゃんと「t」を発音していた。
脱線ついでに…「COSTCO」っていうのあるじゃない?バカでかい荒物屋みたいの。
今、「荒物屋」なんて言葉は使わないか?
日本人は「コストコ」って呼んでいるけど、アレ、「コスコ」って発音するんだよ。
コレは本当に外人に笑われた。
「シゲが『コストコ』とか言ってら!バカで~!」みたいに。
この下の写真なんかスゴイでしょ。
こんな狭いのに立派に公の通路になってる。
ホント、どこの路地もビックリするほど細くて、上の写真のようにハラの出たオッサンが向かい合ったら道がふさがっちゃうような箇所も結構あった。
この時、発見したんだよね~。
もう、何かおつゆにつかった麺が食べたくて、食べたくて…。
ことあるごとに触れているけど、海外で発生するこの衝動は「麺恋し」ももちろんあるけど、その実体って「ダシ」なんだよね。
魚とか鶏から採ったダシ。
どうにもダシのモノが食べたくなる。
で、思いついたのが東南アジアの料理。
日本料理店はなくてもベトナムとかタイの料理店は比較的どこにでもあるし、そう高くもない。
私は「食の冒険」が苦手なので、日本ではエスニック系の料理を食べる習慣がない。
それでイギリスに行ってもそれらの料理を敬遠していたんだけど、「麺とダシ」の禁断症状に負けてココで入ってみた。
どこの国の料理だったか忘れちゃったけど、おいしかったナ~。
あんまりおいしそうに食べていたのでウエイトレスに笑われちゃった!
大発見だった。
この時以来、ダシと麺に困ったらベトナム料理店に入るようにしている。フォー!
もちろん普通のビジネス街もある。
アップタウンっていうのかな?
イギリスには「アップタウン」とか「ダウンタウン」という言葉は聞かないな。
その代わり目抜き通りのことをよく「ハイ・ロード」なんて呼んでるね。
コレはブライトン博物館&アート・ギャラリー。
入らなかったけど。
コレがスゴい。
見るのを楽しみにしていた。
「ロイヤル・パヴィリオン」といって、ジョージ四世の別宅だったところ。
何だってこんなデザインにしたのか…趣味悪し。
このジョージ四世ってのがヒデエ野郎だったらしくて、アダ名は「快楽の王子」。
「飲む・打つ」狂いで、宝石や骨董に目がなかったというのだからタマったものではない。
洋服にも遠慮なく金を使い、「ダンディ」の元祖はジョージ四世という話もある。
このロイヤル・パヴィリオンも金に糸目をつけず作らせたという。
内部の写真が一枚も残っていないところを見ると、中は撮影禁止だったのかもしれない。
ま~、どこもかしこもアホほど豪華絢爛で見ごたえは十分だった。
ヘンリー八世の家、ハンプトンコートもスゴかったけど、やはりここのバンケットルーム(宴会場)のデカさには舌を巻いた。
熱海の大ホテルの宴会場とは雲泥の差だ。
18世紀の中頃まではイギリス西部のバース(「bath」の語源となったところ)が紳士淑女の一番の人気スポットだったが、このパヴィリオンが出来てからというもの、海水浴人も手伝って、その人気はブライトンに打って変わったという。
このあたりもすごくいい感じ。
ド~ンとレスポールが飾ってある。
もちろん楽器屋さん。
「GAK」というお店。「ガッキ」という意味ではないよ。
看板に書いてある通り「Guitar」、「Amp」、「Keyboard」の頭文字だ。
そ、そんな名前にしちゃって本当にヨカッタのッ?!
Tom Sayer…知らないな。
職業はPugilist。
Pugilismとはボクシングのこと。
『あしたのジョー』でも段平オッチャンだったか白木財閥のジーさんだったかが説明しているように、昔のボクシングは素手でぶん殴り合ってた。いわゆる「ベア・ナックル」というヤツ。
で、このトム・セイヤーというのは1926年生まれのその時代の健闘のイギリス・チャンピオン。まだ体重の階級別が導入される前の時代、自分より大きな相手をガンガンやっつけてしまうというので「The Brighton Boy」と呼ばれ大変人気があったそうだ。
その生家がココ…だと思う。
それで、ナゼここを取り上げているのかというと…ボクシングは全く関係ない。
実は、ココは生前のゲイリー・ムーア御用達の楽器店だったのだ。
ゲイリーは不幸にしてスペインで客死したが、ブライトンに終の棲家を定めていた。
雑誌などで新商品に興味を持つと、たまにこのお店に来て試奏することがあったそうだ。
ゲイリー・ムーアがそこらの楽器屋さんで試奏してるのに出くわしたらかなりの確率で腰を抜かすよね!
だからイギリスはおもしろい!
ま、お店も休みだったし、いくら待っていても二度とゲイリーが現れるワケでもないのでこの場を早々に離れることにした。
もう「足が棒」もいいところ。駅までの坂がツライ!
でも何とかたどり着いた~!
駅の横のコンビニで水を買った時に隣の保険屋のウインドウで見かけたポスター。
イギー・ポップが車の保険の広告に出ている。
「Saving it ROCKS」なんてキャッチ・コピーがつけられているけど、イギーはイギリスでは裕也さんみたいな存在なのかな?
…というのがブライトンへの旅。
にわかジミーを味わった一日だった。
また行きたいな~。
<オマケ>
今日のバナーに写っているのはかつてロンドンの神保町、チャリング・クロス・ロードにあったMacari'sという老舗楽器店。
もう10年近く前に撮った写真だ。
このすぐ近くにはロンドンのお茶ノ水、デンマーク・ストリートがあって、このチャリング・クロス・ロードにもいくつかの楽器屋が軒を並べていた。
今、それらの店はほとんど姿を消してしまった。
このMacari'sは私がMarshallと仕事をするようになって最初にお世話になったスティーヴが業界でのキャリアをスタートさせたお店で、一緒にお店に行ったこともあった。
ロンドンの楽器店というと真っ先にこの店を思い浮かべる。
そのスティーヴももう天国へ行ってしまった。
Macari'sは規模を縮小して今でもデンマークストリートで営業を続けている。
そのデンマークストリートも近い将来なくなってしまうらしい。