TWIN PEAKS~二番、Deep Purple編:SMOOTH DANCER
ある日、Marshall Blogの原稿書きだったか、写真の現像作業だったかに疲れてしまい、ソファで横になりながらジックリとハナクソをほじっていた。大きいのがスポッとキレイに取れた!とよろこんでいたら傍らの電話が鳴った。
電話はDYNAGONのキーボード、加藤剛からだった。
「他にはない本格的な大人のDeep Purpleのトリビュート・バンドをやろうと思っているんですよ。で、ギターは島くんにお願いしようと思っているですわ」…と新しいバンドの構想を私にいち早く知らせてくれるための連絡だった。
若手ロックの草食性に変化が見えない一方、ベテランはベテランで、コピー・バンドで気勢を上げるという状態が続いていて、正直「またか」という印象もないではなかった。
それにしてもこのトリビュート・バンドって増えたよ~。
ジミヘンのBand of Shigeo Rolloverとか、ストーンズのBeggarsとか、ツェッペリンのシナモン…私は詳しくはないが、それらのグループが相当昔からあったのは知っている。Bad Sceneのコピー・バンドっていうのもいた。そう、昔はコピー・バンドって呼んでいた。
今はスゴイね。何から何まで揃ってる。
さて、剛さん…あれほどのJon LordないしはDeep Purple愛の強い人だし、ギターはノンちゃんということもあってその仕上がりを楽しみしていた。
…と、話は飛んで、アッという間に本番の日。
会場に足を運ぶと剛さんたちのバンド名が「SMOOTH DANCER」となっていてまずはニヤリ。
「Smooth Dancer」は1973年リリースのDeep Purpleの7枚目のアルバム『Who Do We Think We Are?』の収録曲のひとつ。
私はこのアルバムを14、15歳の時に中古で買ったのだが(オマケでロゴ・ステッカーが付いていた)、熱心なファンでもなかった私は「My Woman From Tokyo」ぐらいしか聴かず、すぐに手放してしまった。したがって、このアルバムの内容についてはほとんど記憶がなかった。
そして、ココでノンちゃんが登場する。ハッキリ言って最近の話よ。
「あのアルバムは『My Woman From Tokyo』以外の曲が全部いいんですよ。」と言うノンちゃん。
「ナヌ?」と不審に思った私は、このアルバムをまた買って聴き直してみた。
すると、すると~!アータ、なにコレ?「アッとおどろくタメゴロー」じゃないの!
殺人的にカッコいい!しかも全曲(「My Wonan~」含む)!
中でも気に入ったのが「Mary Long」という曲。
このサビがいいんだ。一発で気に入った(といっても昔聴いてるハズなんだけどね)
「♪How did you lose your virginity, Mary Long?」と「♪When will you lose your stupidity, Mary Long?」というところ。
「How」 と「What」の疑問詞の組み合わせ。そして、「Virginity」と「Stupidity」の脚韻を踏んだ意味の対比がタマらない。
日本にも似た曲があるよね。
もちろん「Super Trouper」も「Rat Bat Blue」も「Place in Line」も「Our Lady」もみんないい。イケね、全部挙がっちまった。
その中で「Mary Long」に次いで好きな曲が「Smooth Dancer」なの。「Blood Sucker」でも「Fireball」でもない、「Smooth Dancer」をバンド名にしてくれたのがチョットうれしかったというワケ。
ちなみにノンちゃん曰く、アルバム『Fireball』の場合も表題曲「Fireball」以外がおススメだとか…。
でもね、「Deep Purpleの最高傑作は『Who Do We Think We Are?』と『Fireball』だ」と本場イギリスの友人も言っていた。
前書きおわり。
カバーデイルをしっかりカバーするRayさん!
昔は誰も易々と「Burn」なんか演奏できなかった…なんて話をDead Eyed Spiderの千田さんと以前話したことがあった。
少なくとも私が高校ぐらいの時はDavid Coverdaleと同じように歌える人なんていなかった…というか見たことなかった。
コレも食や生活の西洋化にともなう肉体的進化なのであろうか?
陸上の100m走の記録がドンドン塗り替えられていくのと同じ現象なのか?
ところがその西洋が「Baby化」してるのだから皮肉なものだ。
続いて、コレはあまり取り上げられないんじゃない?
『Burn』の二曲目「Might Just Take Your Life」。
こういう他のバンドが演りそうにない曲を取り上げるのがSMOOTH DANCERのいいところ。
こういうことをジャンジャンやるべき。
三曲目は「Mistreated」。
MKⅢを代表する曲のひとつですな。
昔は「ミステリー・テッド」かと思っていた。「ミス・トリ―テッド」だということに気が付いたのはかなり後になってのことだった。
「ニュー・ジーランド」みたいなもんです。
以前にも書いたけど、子供の頃はかったるい曲だな~、と思っていた。今になってみると実にいい曲だ。
ノンちゃんも思い入れタップリにあのリフを鳴らす。
そして、「チゴイネルワイゼン」にも似た演歌調のあのソロ!「♪タリララ~」のとこね。
Rayさんの情感豊かな歌いっぷりも印象的だった。
Marshallの50周年コンサートではGlennとYngwieがこの曲で共演した。
詳しくはコチラ⇒【50 YEARS OF LOUD LIVE】vol.8~Glenn Hughes & Andy Fraser
しっかし、Andy Fraserも亡くなっちゃったもんね~。
「Stormbringer」が続く。
「Stormbringer」というのはマイケル・ムーアコックという人の小説に出て来る魔法の黒い剣の名前だが、Coverdaleはレコーディング時にはこのことを知らなかったと関係を否定しているそうだ。
アルバムでは歌の始まりの前に奇妙な低い叫び声が聞こえるが、これはCoverdaleが映画『エクソシスト』のリンダ・ブレアのセリフを逆読みしたものだとか…。
念願のパープル・バンドが実現して剛さんも楽しそうだ!
OZMAさんはいつも通りの鬼気迫る全力投球!
再結成ものから「Perfect Strangers」。
グバ~!ッと剛さんのオルガンが鳴り響く!
私としては、「Perfect Stranger」の方が得意なんだけど、この曲もカッコいいね。
なるほど、真ん中は4/4と5/4のコンビネーションになってるのね。
私の場合、Deep Purpleというと、Ian GillanのMKIIなんだよね。
でも、どうも見てると、圧倒的に「Burn」をはじめとしてMKIIIの曲の演奏を耳にすることが多い。
剛さんにワケを尋ねてみると、Ian Gillanを歌える方が少ないんだとか…。
チョット気になって本国イギリスの事情を調べてみた…ったって、友達ひとりに訊いただけだけど。
イギリスにもゴマンとDeep Purpleをコピーしているバンドがいるそうだ。ま、そうでしょう。
で、彼らのはレパートリーはやっぱりMKIIとMKIIIのチャンポンで、MKIIばかりやってるバンドというのは見かけないそうだ。
そして、Ian GillanとDavid Coverdaleのボーカルを両方完璧にこなす歌い手は皆無なのだそうだ。
そりゃそうでしょうね。ブリティッシュ・ハード・ロック界の二大個性だもんね。
日本ではどうなの?
Whitesnakeの影響も大きいせいか、Coverdale派の方が断然多いような印象なんだけど…。
その点、Big IanはIan Gillan Bandで貧乏クジを引いたな。
Ian Gillan Band、今聴いてもすごくいいんだけどね。武道館へ観に行っといてヨカッタ~。
このバンドもスター・ギター・プレイヤーがいたらもっと人気が上がってたのではないかと私はニラんでいる。
Rayさんは10穴ハーモニカもバッチリこなす熱演ぶり!(「ブルースハープ」は登録商標です)
さて、本編の最後は「このドラムのパターンとくればコレ!」の「Space Truckin'」。
最近はこうした即興パートをフィーチュアしたロックがホントになくなっちゃったからね~。
遠慮なく鋭いフレーズを放り込むノンちゃん。
それを真っ向から受けて反撃する剛さん!
「♪Conme on, Come on, let's go space truckin'!」…コレも問答無用でカッコいい曲だよね。実はスッゲエ久しぶりに聴いた。
本編はここまで。
アンコールは「Speed King」。
「♪スピ~~~~ドキンッ!」…これまたド迫力の演奏で会場は盛り上がる!
ジックリとソロを弾き合うふたり。
ノンちゃんのジミヘンもまたよき哉。
「♪デデデデデデ、デデデデデデ、デデデデデデ、デデデデデデ」のイントロはあまりにも有名ね。
曲名は敢えて記すのをよそう。
…と充実の演奏を見せてくれた6人!
今度はバンド名にちなんで、『Who Do We Think We Are?』全曲演奏会をやって欲しいナ~。
ノンちゃんによれば、本家もライブでやってないとのこと。
トリビュート企画全盛の昨今、Led Zeppagainのように、そうした本家もやらなかったような曲を聴かせることもそうしたイベントの楽しみであり、醍醐味だと私は思うのだがいかがなものだろう?しばらく「Burn」は休ませてやりましょうよ。
お疲れさま~!
DYNAGONの詳しい情報はコチラ⇒Facebook
<おまけ>
せっかくのDeep Purpleネタなので…。
紙焼きの写真を整理していて見つけた一枚。
2002年ぐらいかな?
フェスで有名なネブワースにほど近いヒッチンという小さい町にある楽器店。
Puepleファンにとってはタマらない店名でしょ?
ちゃんと紫になってる。
向かって右の人がオーナーなんだけど、尋ねるとやっぱり大のDeep Purpleファンだって言ってた。
それだけにMarshallの品揃えもバッチリだった。
しかし、ナンダって俺、ネクタイなんか締めてんだ?