Damian Hamada's Creaturesと人間椅子<その2>~人間椅子
「♪チ~ン」
会場の照明が落ちて聞こえて来たのはおりんの音色。
「♪果たしてここはどこなのか」
アルバム『萬燈籠』の冒頭に収録されている「此岸御詠歌」だ。
6年ぶりの人間椅子。
「果たして今はいつなのか?」と戸惑ってしまうぐらい以前と同じ様子で、うれしくて涙が出そうなってしまった。
『Damian Hamada's Creaturesと人間椅子』…いよいよ人間椅子の登場だ!
1曲目は最近作『色即是空』のオープナー「さらば世界」。
ク~、コレはタマらん!
コレだ、コレだ!まさに私が知っている人間椅子サウンド!
和嶋慎治鈴木研一ナカジマノブ和嶋さんのヘヴィなリフを中心に様々な要素が織り込まれた8分を超す大作。もちろん和嶋さんはMarshall。
MarshallとSGのコンビネーションといえば、今はアンガス・ヤングの名前がはじめに挙がるのか?
私の場合は和嶋慎治、フランク・ザッパ、そしてアレックス・ハーヴェイのところのザル・クレミンソンだ。
渋谷公会堂のNazarethでザルを観たのはとてもいい思い出だ…SGだったかどうかはサッパリ覚えていないが、「Hair of the Dog」をみんなで歌ったことはよく覚えている。
そして、その「犬の毛」が「迎え酒」を意味することを知ったのは大分後になってからのこと。和嶋さんのMarshall。長年愛用している「1987」と「1960TV」。
日本人でこのスピーカー・キャビネットを使っている人は和嶋さん以外ににわかには思い浮かばないが、このキャビって普通の1960より2.5インチ背が高いだけで「低音がリッチになる」…と言われている。
が!とてもそれどころでは済まない手強い音が出て来るんだよね。
キャビネットのサイズや形状と搭載されるスピーカーの組み合わせの違いが生み出す音の差というモノは思ったより大きいものなのだ。
例えば「1936V」。
普通の2x12"の「1936」のスピーカーをVintageタイプに載せ換えただけでもその差たるや歴然。
4x12"の「1960」の時より明らかに効果的なのだ。
「1936V」を発売する前にMarshallの会議でコレを実演してくれたことがあったのだが、出席者全員がその差に驚いていた。
その隣りはSTUDIOシリーズのコンボ「SV20C」。
コチラはテルミンのために用意された。和嶋さんのMarshallのシンボルのお札もバッチリ!今日もご安全に演奏ができること間違いなし!会場は「待ってました!」とばかりの大興奮状態!観客のその期待に応えるべくノッケから凄まじいパワーを発揮した。私も久しぶりの人間椅子に大興奮してしまった!
続けて2001年の『見知らぬ世界』から「死神の饗宴」。シンプルにしてヘヴィなリフ。
これぞ和嶋さんのギター・サウンド。そんなヘヴィなリフには鈴木さんの個性あふれる歌声が映える!テンポが変わってギア・チェンジしたノブさんがグイグイとバンドをドライブさせる。「♪オレの名前は死神」…こんな歌、鈴木さんじゃなきゃ歌えんぞ。
最良の素材と最高のレシピなのだ。
羽織を着たままの状態でさっそくステージ狭しと宙を舞う和嶋さん!そして饗宴の幕切れの時。
キマった~!「こんばんは、人間椅子です。暑い中、ありがとうございます。
今日は転換の音楽がELPの『Tarkus(タルカス)』1曲だけだったんですよ。
さっき楽屋でダミアン浜田陛下とお話をしていた時…ナント、陛下はELPのファンクラブに入っていたんだよ…トリビア。
せっかくファンクラブに入ったのに、来日しなかったんだぜ」
それは残念!
コレは自慢になりますが、私は2010年にロンドンで一度だけ再結成したオリジナルの「E」と「L」と「P」が揃ったELPを観たんですよ。
「Karn Evil #9」、「The Barbarian」、「Knife Edge」、「Take a Pebble」などを演っていた。
電車が混んでしまうので「Lucky Man」を背中に会場を後にしましたがコレは一生の思い出。
ELPもうれしかったけど、その時ArgentとFocusと変形BTOを観ることができたのもとてもうれしかった。
ココで鈴木さんがメンバーを紹介した。
「大僧正」と呼称された和嶋さんは歯弾きの大サービス。
「人間椅子の屋台骨、エンマ大王」と紹介されたノブさんもひと叩き。
「そしてボクが人間椅子の白塗り担当…即身仏・鈴木研一でございます」
「今日のイベントは若い方からお年寄りまで…あ、お客さんではなくて出演者の話ですよ。
世代を超えた素晴らしいハードロック、ヘビーメタルのフェスティバルと言えるのではないでしょうか!」と和嶋さん。
「しかし、何と言っても1番年上は10万歳を越えるダミアン浜田陛下という話ですからね。
あの方が一気に平均年齢を上げていますから。
Damian Hamada's Creaturesの平均年齢が2万歳だそうでございます。
我々人間椅子の平均年齢は…まぁ、58.9歳ぐらいじゃないの?
もう60に近いオジさんバンドです。
今年バンド生活…ナント35年でございます!
気持ちだけは若いつもりでやっているオジさんバンドでございます」
何ら問題なし。
一向に衰えることのないクリエイティビティが素晴らしい!
次の曲は和嶋さんの奏でるアルペジオからスタート。鈴木さんのベースがからみ…ノブさんが叩く銅鑼が鳴り響く。2019年、バンド生活30周年を記念するアルバム『新青年』収録のキラー・チューン「無情のスキャット」。
「♪シャバダバディア」、「♪ルルル」とスキャットを交えながら展開するこれまた8分越えの大作。次から次へと飛び出して来るハードにしてヘヴィな情景は見事と言うしかない。
ギター・ソロもタップリとフィーチュアされる圧巻の1曲だ。すかさずノブさんのドラムスが力強くロック・ビートを刻む。
ツーバス大爆発! 息もつかせぬ必殺のドライビング・チューンは「冥土喫茶」。
その様は戦艦武蔵が超高速で水面を走り抜けていくようだ。テンポが変わると和嶋さんのソロの出番。
開放弦を使ってのプレイが印象的。コレはしかし…歌詞もスゴイ。
秋葉原のメイド喫茶には行ったことがないし、行くこともなかろうが、三途の川を渡った時にはそのすぐ横を訪れてみることにしよう。 久しぶりにステージで取り上げたという「冥土喫茶」。
「ところで和嶋くんは行ったことあるの?メイド喫茶」
「あ~ボクね、秋葉原好きなんですけど行ったことはないんですよ。
なんか行く勇気がないね」
「それじゃあ今度3人で行きましょうか?」
そういえば以前、Marshallの前の社長が来て一緒に秋葉原へ行った時、あの装束の女性を目にして「なんだ、あの女の子たちは?」と興味津々に私に訊いてきた。
その不思議がる姿を見て私は思わず吹き出してしまった。
確かにロンドンではソーホーでもメイドさんの姿は見かけないからネェ。続いては「黒猫」。
リフのメロディは4/4拍子、その間にはさまっているブレイクが5/4拍子という珍なるパターン…オモシロイ。
「黒猫は地獄の使い」と和嶋さんがMCで説明してくれた。
コレが「赤猫」になると日本では「放火」という意味になる。英語では「arson(アーソン)」と言います。
この2008年の『無限の住人』に収録されているこの曲も8分を超す大作だ。他の長尺の曲同様、刻々と変わる音の情景は聴くものをグイグイと引き込み、実際の曲の長さの半分ぐらいに感じさせる。曲全体を覆う「減5度感」みたいな雰囲気が重苦しくて、それが「地獄の使い」をとてもうまく表現されていると思う。後半のバンド・アンサンブルで曲はクライマックスを迎える。
2人がステージ中央に歩み寄って…ビシっと決めたフォーメーション!
この光景が何度か現れたが、この和嶋さんの袴姿と鈴木さんの紗の法衣のコントラストがいいんだよね。
間違いなくロック・コンサートでこの光景を見ることができるのは世界でココだけだ!「みんな元気ですかぁ~?元気なのかぁ~!
オレはメチャメチャ元気だぜ~!
それじゃあ、デッカイ声を聞かせてくれるかぁ!
初めましての皆さんも、いつもの皆さんも、オレのことを『アニキ』って呼んでくれぇ~‼」「恵比寿のお客ちゃ~ん。メチャメチャのってるゼイ!
この勢いのままオレが1曲歌ってもいいですか?」
ああ、このノブさんをフィーチャーする場面でも大感動してしまった。
だって以前観た時のまんまなんだもん!
ナニも変わっていない。素晴らしい。
変わったのはノブさんが歌う曲だけ。和嶋さんのシンプルなギター・リフでスタートするドライビング・チューンは「未来からの脱出」。 和嶋さんと鈴木さんの「♪逃げ出せ 抜け出せ」のコーラスの加勢を得て… 「♪未来から~! 明日から~!」
ノブさんが激唱。
しかし、ノブさんの声もよくヌケるナァ。
まるでMarshallだわ。暴走機関車のようなリズムに乗って勇猛に伝統的なロック・フレーズを炸裂させる和嶋さんのソロ!
コレがいいのだ!
そして、「和嶋くん、いきますか」という感じで…「♪逃げ出せ 抜け出せ」「どうもありがとう!」
熱演を終えたノブさんに「アニキ~!」の呼び声が殺到する。
相変わらずのスゴイ激演だった。
演技もスゴイけど汗もスゴイ!
まるで黒四の放水だ~!
「相変わらずの」といえば…褌。
2014年、人間椅子の皆さんは褌を愛用している方に贈られる「ベストフンドシスト賞」を受賞した。
その後どうされているかと思い、ノブさんに伺うともちろん今でも褌を愛用されているとおっしゃる。
ヨカッタ…というのは、実は私もフンドシストなのだ。
以前から寝る時に下着のゴムがキツすぎるのが気になっていて、そこで思い出したのが人間椅子。
そうだ!褌だ!…ウチの近所に「褌専門店」があるのは知っていたが、取り敢えずアマゾンで数枚買って着用してみた。
コレがとてもいい感じなのよ。
だから私は寝る時だけ褌を締める「ハーフ・フンドシスト」なのです。
ありがとう人間椅子の皆さん! 「突然ですが今世界に危機が迫っております。
そこで、ココで皆さんと一緒に正義の味方を呼んでみたいと思います。
♪ファンファンファファンとみんなで呼べば光と共にやってくる…『宇宙電撃隊』!」
コレまた胸のすくようなドライビング・ナンバー。
やっぱり正義の味方に来てもらうにはコレぐらいハードにブッとばさないとダメだ。「♪ファンファンファファン、ファンファンファファン」…お客さんは歌う傍らタオルを猛烈な勢いで振り回して宇宙電撃退を呼び寄せた。
歌詞中の「♪宇宙電撃隊」のマイナーのメロディの締めくくりをメジャーで終わせるアイデアがすごくカッコいい!いわゆる「ピカルディ・ケイデンス」というヤツ。 いつ使うのかと気になっていたテルミン。
ココで堂々登場!
「♪ギュイ~ン、ギョワ~ン」…どうやってこの音を書き表せばよいのかわからないな。
要するにテルミンならではのサウンドが効果的に使われた。
和嶋さんは手をギターから話すことができないので肩で操作した。ココでもビシっとキマる2人のフォーメーション。和嶋さんは歯弾きも交えて猛ハッスル!コレが長い間ステージの上手で出番を待っていた和嶋さんのテルミン。
あの1993年の『テルミン(Theremin : An Electronic Odyssey)』っていう映画、とてもオモシロかったね。
この映画、ハル・ウィルナーが音楽を担当しているんだよね。
そして、この記事の冒頭で触れたように和嶋さんのテルミンを鳴らしたのもMarshall。
STUDIOシリーズのコンボ「SV20C」だ。
最後を締めくくったのは人間椅子のキラー・チューン「針の山」。長年にわたっての人気ナンバーだけに客席も大盛り上がり!
そして人間椅子がそれに応える。
やっぱり問答無用でカッコいいな。
外国のロックの日本語カバー曲では抜きん出て優れていると思う。
久しぶりなのでまた書かせて頂くが、元曲を演奏していたのは「Budgie(バッジ―)」。
ニューカッスル郊外に住んでいる友人がコレをはっきりと「ブジ―」と発音した時には仰天した…と言うより何の話かわからなかった。
「村が違えば英語が違う」イギリスのこと、Budgieの出身地のカーディフではまたきっと違う発音をするのだと思う。
更に和嶋さんは背中弾き!そのまま鈴木さんと絡む。
そのエキサイティングなパフォーマンスにステージも客席も大いに燃え上がった!「ありがとうございました!」
全8曲、クドイようだけど私にとっては久しぶりの人間椅子。
もう最初から最後まで感動しまくりでしたわ。
ああ、極楽、極楽。
冥土喫茶へ行くのが少し遅くなった気がします。
人間椅子の詳しい情報はコチラ⇒人間椅子倶楽部<つづく>
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<だるまさんは転ばない(Red Light, Green Light)>
<Wings>
<Thmbs Up>
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(一部敬称略 2024年8月25日 恵比寿LIQUID ROOMにて撮影)