LOUDNESS~One Night Premium Show 『ONCE AND FOR ALL』
LOUDNESSの約2年ぶりのニュー・アルバム『THE SUN WILL RISE AGAIN』が6月4日に発売となった。
今日レポートするのは、アルバムの発売を記念して6月6日に東京だけで開催された『"THE SUN WILL RISE AGAIN"発売記念 One Night Premium Show ONCE AND FOR ALL』と題されたのコンサートのもよう。
この日、雷鳴こそ聞こえなかったが、ものスゴイ雨もようだった。
朝から強く降る雨は夕方までまで続き、六本木の駅から大した距離ではないにもかかわらず、EXシアターに着く頃にはビチョビチョになってしまった。
当然、雨程度でひるむLOUDNESSファンではなく、満員の会場は開演前から熱気ムンムン!
客電がついたままAC/DCの「Highway to the Hell」が会場に流れ、暗転…SEが変わる。
緊張感あふれるベースの音。ニューアルバムの1曲目「Nourishment of the Mind」だ。
そして、いよいよ4人がステージに姿を現す、ハチ切れんばかりの大歓声!
高崎晃
オープニングはニュー・アルバムから「Got to be Strong」。そして同じく「Never Ending Fire」…
さらに「The Metal Man」と続いた。すなわちオープニングSEの「Nourishment of the Mind」からここまで『THE SUN WILL RISE AGAIN』とまったく同じ展開。
「どうだ!オレたちLOUDNESSのニュー・アルバムは!」と自信満々に問いかけているかのようだ。
LOUDNESSを観るのは昨年末以来だが、あの時とは全く雰囲気が異なっていて、やはり「新しい作品」というものの存在意義の大きさを感じ取った。
ゴルゴ13が要人を一発の弾丸でしとめるように、政治家がニンマリ金勘定をしながら戦争をもくろむように、たこ焼きやき屋がクルクルとたこ焼きをひっくり返すように、曲を作って、演奏して、アルバムを作るのがミュージシャンの本来の仕事だと私は考えている。
コンサート活動はあくまでアルバムを広めるためのものだ。まして、ミュージシャンは決してタオル屋ではない。
「もうCDなど売れない」とか「CDなど作っても意味がない」的な発言が最近富に目につくようになったと同時に「ライブ第一」的な意見も定着してきた。
大反対である。
エジソン以前じゃあるまいし、また、ビートルズ前夜でもあるまいし…テクノロジーに進歩に翻弄されて作る側も聴く側も「再生芸術」の楽しみを忘れてしまったとしか言いようがない。若い人はそれを教えてすらもらっていない。
「再生芸術」の楽しみはアルバムによってしか味わうことのできないものである。
『Sgt. Pepper's~』は「Sgt. Pepper's~」に始まって「A Day in the Life」で締めくくることによって意味があり(もっと言うとその後のジングルまで)、各曲を単体で聴くよりアルバム全体を聴いた方がはるかに一曲ずつが輝いてくる。実際、このアルバムの発表時、シングル・カット曲がなく、ビートルズが解散した後、1978年にイギリスで「Sgt. Pepper's~」が単体で発売されただけだ。(B面は「A Day in the Life」)
今のポピュラー音楽界で起こっている事象、すなわちダウンロードして1曲ずつ音楽を聴くという行為は、SP盤しかなかった…すなわち長時間収録が可能な録音媒体がなかったローテク時代に音楽の在り方が退化していることを指し示しているとしか思えないのだ。
しかし、ナンダカンダ言っても、「CDが売れない」というのは、基本は「消費者は価値のないものに金を出さない」ということではないのかね?
お金を出してでも買いたい音楽は「形」にしてそばに置いておきたいと思うのではないかといまだに信じている。
CDの中に「ナントカ券」を入れている内は絶望的だよ。アレはCDを捨てる子より、そういうものを作る方が圧倒に「悪」だ。(←ココ、「いいね!」押すとこです)
そういう私の考え方をすべて包含してくれているようなアルバムが今度のLOUDNESSのTHE SUN WILL RISE AGAIN』なのだ。
驚異のギター・トーン健在。
数年前ヨーロッパのフェスティバルでLOUDNESSを観たMarshallのスタッフが「出演したギタリストの中でもっとも美しいギターの音だった」と感動していたのを思い出す。、
名器JMP-1とRoger Mayer製作のパワー・アンプにSidewinder入りの1960。世界がうらやむコンビネーション。
Aキャビの上に乗っているのはJCM800 2203。
ある日本人のギタリストが高崎さんのギターの音をして「意味がわからない」と言っていた。その言葉の意味がわからないぐらい「いい音」ということだ。
ま、残念ながらそのいい音の核は、機材の中ではなく高崎さんの指と頭の中に詰まっている。
二井原さんがLOUDNESSを離れていた時期の曲も演奏されたワケだが、ナニを歌っても二井原さんの声がかぶさると時代を超えてすべてLOUDNESSになる。「声」の力というものとはスゴイ。
クラシックの声楽の人たちは声のことを「楽器」と呼んでいるという話しを聞いたことがある。
二井原さんの楽器も世界的な名器だ!
いつか二井原さんが歌うSladeの「Cum on Feel the Noize」を聴いてあまりのカッコよさに腰を抜かしそうになったことがあったが、何かの機会に二井原さんが歌うNazarethのヒット曲「Razamanaz」を聴いてみたいな…絶対ピッタリだと思う。身勝手なリクエスト。
「Black Star Oblivion」の素晴らしいギター・ソロ!改めてMarshallっていいな~と思ってしまった。
写真の撮影をしているとどうしてもPAスピーカーの前に立つことも多く、爆音から耳を保護するためにどんな会場でも耳栓をするようにしている。さもないと耳がいくつあっても足りなくる。
しかし、高崎さんのソロの時にはソレを外すことが多い。そして役得でMarshallから発される生のトーンを聴く。
そのトーンは「最上」であると同時に「基本」である。
美しく歪んだ本来あるべき「ロック・ギター」の音がするのである。当たり前にそれは「いい音」なのだが、そのポイントは音の良し悪しの向こう側にあるような印象がある。「ロック魂」とでも言おうか、決して機材ウンヌンではない何か精神的なものである気がしてならない。
もちろん爆音なのだが、まったくうるさいとは感じない。世界に誇る日本のロック・ギターのトーンなのだ。
1982年の『DEVIL SOLDIER~戦慄の奇跡~』から「Lonly Player」と「Angel Dust」のメドレーからの…
ドラム・ソロ!
さらにニュー・アルバムからタイトル・チューン「The Sun Will Rise Again」と「Motality」が続く。
そして、この超ヘヴィ級のリズム隊。もちろん岩をも砕かん大爆音!
「Crazy Night」の必殺の連チャン!
そりゃ盛り上がるに決まってるわな~!観客総立ち!…って最初から総立ちだけど…。
当然猛烈な「アンコール」の声。お客さんはひとり残らず実に楽しそうだ。
これで終わりかと思ったら…ダブル・アンコール!
ここではニュー・アルバムから「Shout」と「SDI」を演奏。
待ってましたの「SDI」では会場も一体となってShout!アレ、うまくできてる?
メドレー曲も含まれていたが、アンコールも含め22曲。約2時間20分。ニュー・アルバムからは11曲中6曲が選ばれるという新旧取り混ぜた「今のLOUDNESS」の格好のショウケースとなった。
個人的にひとつだけ…私はニュー・アルバムの最終曲、「Not Alone」が一番お気に入りなんだけど、今回のセット・リストから漏れたのがチト残念!こういう曲とか演奏ってなかなか日本人のバンドではお目にかかれないないLOUDNESSならではのものだと思っている。完全に洋楽なのだ。
このアルバムのタイトルなのだが、未来を表す助動詞「will」が入っている。
ご存知の通り、太陽は必ず毎日昇る。曇ってはいても太陽が昇らない日はない。
英文法の時制のルールとしてこうした不変の真理は動詞に現在形を使うのが普通とされている。
にも関わらず「The Sun will~」としているのはこの「sun」が空の太陽を指しているのではなく、LOUDNESSのことを指しているとみた。
つまり、東から上った太陽がまた世界を席巻する…ということをこの「will」が暗喩しているように思えたのだ。
7月には東京、大阪、名古屋でのホール・ツアーが開催され、秋以降にはワールド・ツアーも企画されているという。がんばれLOUDNESS!
外に出てみるとLOUDNESSのパワフルに対抗するかのようにまだ強い雨が降っていた。しかし、雷鳴(Thunder)が轟いていたのは雨模様の六本木の街ではなく、EXシアターの中だった。
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