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2014年5月28日 (水)

【イギリス - ロック名所めぐり vol.12】 South Kensington(サウス・ケンジントン)を往く

メイフェア、チェルシー、マリルボーン、スイスコテージ…といえばロンドンの高級住宅街。

10ここサウス・ケンジントンもその中のひとつだ。

20vビバリー・ヒルズもそりゃ立派だけど、ありゃ立派すぎちゃってどうも実感が沸かない。ロンドンの場合、建物のどれもが飛び切り古く、その荘厳さはビバリーヒルズのそれに勝る。
それにあんなビバリーヒルズのような山の中ではちょっとコンビニに行くのも困る。セレブは行かないか…。

40そこへ行くとロンドンの高級住宅街は本当に街のど真ん中にあって、その利便性たるや田園調布の比ではない。
ここもそう。High Street Kensingtonという大通りからちょっと入っただけでこの様相だ。

30驚くのは冒頭に挙げた高級住宅街の地所はグロブナー、カドガン、ウォールデン、ポートマンといった貴族の名家の私的所有物だというのだ。
また、Regent StreetやHyde Parkのような巨大な公的資産はすべて王室の所有物となっている。

50その住宅街を進むと妙な形の建物が目に入る。

60コレ、コレ。通称「Tower House」。Jimmy Pageの家だ。

1975年、建設に着手され、1978年には概ね完成した。しかし、内部の装飾の完成にはさらに時間を要した。
設計したのはウィリアム・バージェス(William Burges)という建築家。
この屋敷はバージェスの終の棲家となっただけに何しろモノスゴイ凝りようだった。

70vJimmy Pageが購入する前、この家は元々Richard Harrisが所有していた。Richard Harrisといえば、『許されざる者』や『ハリー・ポッター』シリーズに出ているアイルランド出身の名優だ。
古くは『ナバロンの要塞』、『テレマークの要塞』等の戦争映画や『クロムウェル』や『天地創造』等の文学的作品等、目もくらむような立派なフィルモグラフィを誇っている。
中学の時、『ジャガーノート』なんて映画館に観に行ったな。

ハリスは1970年に75千ポンドで購入。現在の貨幣価値に引きなおすと982千ポンド、今のレートなら175百万円。今から44年前の話だから大変な額だ。
ハリスはVictoria and Albert Museum(ヴィクトリア&アルバート博物館:後出)で保管してあったオリジナルの図面を取り寄せ、元々内装を担当していた業者に内部のレストアをさせた。

その後、1972年にDavid Bowieと競ってJimmy Pageが350千ポンドで購入。今の貨幣価値だと3,910千ポンド、684百万円。
今日から一般公開されるという「ひばり御殿」が推定3億円だというのだから、やはりロンドンはケタが違う。ペイジの方が42年前で7億円だからね。

ペイジはバージェスのラファエル前派趣味の大ファンでこの家を大切にしていたらしい。
建物や内装だけでなく、家具も相当に高価なものが多かったが、今では散逸してしまった。たとえば「Golden Bed」はヴィクトリア&アルバート博物館に収められ、「Philosophy Cabinet」は作曲家(「Cats」や「Evita)」のAndrew Lloyd Webberに引き取られている。
きっといいものなんだろうね~。

80vちょっとお茶でもごちそうになろうかと思ったけど図々しいからヤメた。
私邸なので当然内部は一般公開されていない。でも見たい。
で、写真を見てみると、マァ~、ゴテゴテしててスゴイ。とても落ち着かん。

90v大層立派なお屋敷だけど私はイヤだな。そもそもコワイわ、ひとりでいると。

100ちょっとここから観光案内。

120vコレはKensington GardensというHyde Parkに隣接するお庭にあるKensington Place。

130現在でもグロスター公爵リチャード王子という、エリザベス女王のイトコが住んでいる。

140ちょっとコレも広すぎるわ。

150宮殿の庭。

160内部の一部を一般公開しているが、写真撮影が禁止されているので入らなかった。

170さて、今日の第二のハイライト。第一はJimmy Pageの家ね。
これがさっき出てきたVinctoria & Albert Musum(ヴィクトリア&アルバート博物館)。
この辺りはNYCでいえばMuseum Mileのようなもので(東京で言えば上野)、自然史博物館、科学博物館、ロイヤル・アルバート・ホールなどが立ち並んでいる。
どの博物館も日本の同種のモノに比べればスケールも内容も格段に上なのだが、さすがにこの歳になると立派な恐竜の骨格見本を目にしても感動を受けることはない。
その点、このヴィクトリア&アルバート博物館はケタ違いにおもしろい。もちろん無料。

180ヴィクトリア女王とそのダンナ、アルバート公にちなんで名づけられたこの博物館は装飾品や芸術品だけが陳列されている。
言い換えると、人間が作ったアイテムだけが飾られていて、その数460万点。オープンしたのは1852年のことで、今では年間300万人の人が訪れるそうだ。

下は入り口が装飾されたV&A。そう、イギリスの人はここをV&A(ヴイ・アンド・エイ)と呼ぶ。

190vパイロンで作られたオブジェ。

200エントランス・ホールのようす。

210vホントにありとあらゆるモノが展示されている。

220vどっかの史跡から引っぺがして来たモノ。

230vあ~あ~、こんなものまで持って来ちゃって!

240v下の方の人を見ればコイツのバカでかさがわかるでしょ?

250vこんなの持って来ちゃってバチが当たらないかね?

255彫刻や…

260v

270衣装。古今東西の洋服が飾られている。もちろん実物。こんなのホントに着てたんだね~。

280_2ペルシャの巨大な絨毯。

290コレ、有名なヤツ。

300v楽器もあるよ。
310
320v展示品だけでなく、荘厳な内装も見逃せない。

305v世界の4大博物館といえばルーブル、メトロポリタン、エルミタージュ、大英博物館とされている。
この話しを聞いて「ダイエーってすごいですね!」と言ったバカが実際にいた。そのダイエーじゃねーっつーの!

306残念ながら私は4つのうちメトロポリタンと大英しか観たことがないが、こうした工芸品のコレクションに関して言えば、イギリスの方が断然スゴイ。さすが「トップバリュ」だ。違うか…。

330この他にも門扉、手すり、階段等の構築物や銀食器、銃剣等々、その守備範囲はあきれるほどだ。

340v当然1日や2日じゃとても見きれない。

345v展示品が世界のエリア別に分かれているパートもあって、これは日本コーナー。

350このあたりのものは、太平洋戦争の戦利品とかかと思ったら、そのズッと前からここにあって、チャンと交易でゲットしたものだそうだ。

370これらの甲冑はかなりマイナーというか小藩の大名が所有していたモノが多い。

380でもずいぶんキチンと保管してある。

390イギリスから独立したエジプトが、「ウチから持って行った歴史的なアイテムを返してチョーダイよ」と申し入れたところ、「ナニ言ってんの?アンタとこにアレをおいておいたらみんなダメにしちゃってたでしょうが!我が大英帝国が大切に管理しておいたことに感謝しなさいよ!」と返還に応じなかったという。
でも、ロンドンの博物館はどこを観てもこのエピソードに頷けるような気もする。
360コレ何だかわかる?根付(ねづけ)。
今でいえば携帯ストラップの先っちょみたいなものといえばわかりやすいか?
大昔は、ヒモの片方に印籠なんかを付けて、そのヒモを帯の下に通し、帯から出てきたヒモに根付を付けた。着物にはポケットがないので、そうして携帯物を身に着けたというワケ。
外人に人気あるんだよね。ここらのモノは象牙でできていて作りも恐ろしく精巧だ。日本の文化は素晴らしい。
大英博物館にも「日本コーナー」があるけど、V&Aの方が品があって見応えがある。

400これが中庭。

410レストランなんかも完備しているし、ミュージアム・ショップも巨大だ。

420さて、Marshall Blog読者の皆さん、ここからが本題だよん。ここまでよくガマンして読んでいただきました!
V&Aには「Theatre and Performance」という展示コーナーがあって、そこに飾ってあるもの実にうれしい。
まずはロック・スターの衣装。

430vこれはBrian Eno。もちろんRoxy Music時代のもの。Enoの衣装が飾ってあるなんていかにもイギリス的でしょ?Roxy Musicがいかに人気があってセンセーショナルなものだったのかを物語っている。
その前座を務めて全英ツアーをしたサディスティック・ミカ・バンドの偉大さにも触れておかねばなるまい。詳しくはコチラをご覧いただきたい。

440vコレはさっきから出ているJimmy Page。
彼の衣装は他の機会でも実物を見たことがあった。それは2010年5月から7月にかけて福島県の郡山市立美術館にて開催された「スウィンギン・ロンドン’50s-’60s」という展示イベントの時のことだ。
このイベントについては何回かMarshall Blogで触れているが、オープニング企画でSHEENA & THE ROKKETSの鮎川誠さんとSHEENAさん相手に、200人以上のお客さんを前に鼎談をさせて頂いた。
イベントにはMarshallも展示されることになり、そのやり取りを主催者の方としているウチに、私にこの仕事が持ち込まれてきた。要するにいつもの調子でベラベラしゃべっていたら、「このおしゃべりのロックバカならイケる」と踏んでくれたのだろう。
得な分野の話しを大勢の人の前ですることはさして苦にならないが、鮎川さんは60年代のロックをナマで体験したロックの生き字引のような人なので、初めはこの私に相手が務まるか心配でお断わりしようと思った。しかし、こんな機会は二度とあるまいと意を決し、謹んでお受けした。

鮎川さんとSHEENAさんのご協力や、それこそ【名所めぐり】の写真を披露したりして結果は上々。実に楽しく、誇りとなるお仕事となった。
もちろん、マーシャル・ブログでレポートしたが、もう見れなくなってしまったので、いつかもう一度新しく記事を書き直して記録を残しておきたいと思っている。

で、この郡山美術館で展示されたジミー・ペイジの衣装、主催者側の方々が大層困ったそうである。
ジミー・ペイジのウエストが細すぎて用意した普通のマネキンでは、ズボンが入らなかったというのである。
そこでシャツやジャケットの前を占めて閉まりきらないウエストの部分を隠して展示したのだ。
ま、ズボンのウエストが閉まらないなんて、こちとら日常茶飯事なんだけどサ。
なるほどこうしてみるとメッチャ細いな~。これがロック・スターの基本仕様なのね。

450vこれは説明不要ですな。前回この方の住いを紹介した。Freddieだってコレ、相当細いよ!

460v1963年、ファン・クラブ会員のために制作されたThe Beatlesのクリスマス・レコード。
ロンドンの博物館にビートルズ・グッズがおいてあるのはここだけではないが、さすが本場、『A Hard Days Night』あたりまでの古い関連アイテムが多い…ってビートルズ自体が古いか。
このシングル盤のジャケットもそうだが、さすがにどれも古式ゆかしい、うまく言おうとするなら「レトロ」…の雰囲気が濃厚なものが多い。
しかしですよ、ビートルズの音楽ってまったく古くならない。コレはもう言い古されたことだけど、こうしてヴィジュアルが絡んでくるとなおさらそのことに驚かざるを得ないのである。
でもね、ジミもジャニスもドアーズもビートルズも短命だったからこそ咲かせた花が散らないんだよね。マリリン・モンローが歳をとらないのと同じだ。

ま、とにかくポールも無事離日してヨカッタ。

470この人、人気あったよね~。今でも活動している。これは化粧品ですな。果たして女性が使ったものなのか、男性が使ったものなのか?男なんだろうね。

480レアなポスターもゾロリ。

4901969年4月14日、ロイヤル・フェスティバル・ホールでのPink Floydのコンサートのポスター。デザインはStorm Thorgerson(Hipgnosis)。
真ん中に「INTRODUCING "THE AZIMUTH CO-ORDINATOR」とある。コレは2本のレバー(Joystick)を使って音を6つのスピーカー間でパンニングさせる装置。
キーボードの故Rich Wrightが操作したらしい。デビュー当初からフロイドが音楽と照明をはじめとしたそうした特殊視覚の融合に取り組んでいたことがわかる。
この装置の1号機はクイーン・エリザベス・ホールの公演時に盗難にあい、このポスターの時は2号機が使用された。
やっぱポスターのデザイン、カッコいいな。

510vこれは『The Great South Coast Bankholiday Pop Festivity』なんて書いてあるが、いわゆる『ワイト島』の第一回目のこと。1968年の8月31日から9月1日かけて開催された。
後にMiles Davisも出演する大フェスティバルになったが、この時はイギリス国内のバンドをかき集めてごく小規模に開催された。
唯一の例外がJefferson Airplaneで、Jeffersonにとってもこの時が初めてのイギリスでの演奏だったそうだ。
司会進行はあのJohn Peel。出演は、The Pretty Things、Tyrannosaurus Rex(「T. Rex」と名乗る前)、Fairport Convention、The Aynsley Dunbar Retaliationなど。ヘッド・ライナーがArthur Brownだったなんて…。

520vMOVEのMarquee出演時の手作り風ポスター。見たかったな~。

530vQueen、1977年のEarls Court。『A Day at the Races』のレコ発ツアー。「Someday to Love」が初めて演奏され、「Bohemian Rhapsody」や「Brighton Rock」もこのツアーで初めて一曲丸々演奏された。
ニューヨークではマジソン・スクエア・ガーデンで開催され、そのチケットは瞬時にして売り切れた。この時の前座はThin Lizzyだったという。Queenの一番いい時だね。

ところで皆さん、Marx Brothers(マルクス兄弟)ってご存知ですか?グルチョ、チコ、ハーポという本当の兄弟からなる喜劇グループ。
私も好きでDVDのボックスセットなんかを買い込んできて時々見たりするんだけど、この人たちの映画に『A Night at the Opera(1935年)』と『A Day at the Race(1937年)』というのがある。どっかで聞いたことがあるでしょ?
そうQueenの『オペラ座の夜』と『華麗なるレース』の元ネタだ。『オペラ座の夜』のレコーディング中にスタジオで観たマルクス兄弟の映画をそのままアルバム・タイトルに頂き、『レース』には続編の『A Day at the Race』をこれまたそのままタイトルにしちゃったらしい。

このEarls Courtの2公演はこのツアーのファイナル。あの有名な照明セットがこの時初めて使われた。
ちょっと待てよ…このコンサートの後、Freddieって歩いてあの家に帰ったのかな?歩いて10分ぐらいだからね…どうでもいいか、そんなこと。

500前回も紹介したEarls CourtのLed Zeppelinのポスター。

540チケットの販売を促進するため、グラスゴーからニューキャッスル、リバプールからマンチェスター、全英の主たる都市のボックス・オフィスの連絡先を掲載した。

550コレはZeppelin Expressの時刻表!よ~やるわ!上の写真の矢印が組み合わさったようなデザインはイギリスの国鉄(British Railway)のロゴ・マーク。

560v機関車のドテッ腹には「PHYSICAL ROCKET」のサインが…。『Physical Graffiti』のレコ発コンサートだったからね。

570これはCovent GardenにあるTheatre Royal Drury Laneという由緒ある劇場の入場料の掲示板。
スゴイ。真ん中の「PRIVATE BOXES」というサインの下に「£1-17-0 to £7-0-0」とあるでしょ?
コレ「1 ポンド17シリング0ペンス」から「7ポンド0シリング0ペンス」と読む。
同様にその下の「16'6」だとか「3'3」なども「16シリング6ペンス」、「3シリング3ペンス」を意味している。

この補助通貨のシステムが異常に複雑で1ポンドが20シリング、1シリングが12ペンスと、20進法と12進法が組み合わさっていた。
さらによく映画なんかでも見かけるが、「ギニー」というのがあって、1ギニーが21シリングと同価値だったという。
このギニーというのは長い間価値が定まらず、18世紀の初めに1ギニーが21ポンドと決められたが、この辺りを主導したのはあのニュートンだったそうだ。
このポンドとギニーの1シリングの差はチップ込みか否かという表れだったらしい。

こんなんでどうやって買い物してたんだろうね?
今ではポンドとペンス(1の時はペニー。ペンスはペニーに複数形)しかないし、計算も100ペンスが1ポンドとごくごく簡単だが、1971年まではこのシステムが通用していた。
Roxy Musicの「Three and Nine」という曲はこの複雑なシステムを題材にしていることは以前にも書いた。この曲が収録されている『Country Life』は1974年の発表なので、そのチョット前まで、Bryan Ferryたちはこのシステムの中で生活していたことになる。

590vこれはTheatre Royal Drury Laneの実物。
このすぐ近くにフリー・メイソンの本部がある。

600私はココで『May Fair Lady』を観た。お金がないので3シリング3ペンスの一番安い席だった。

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V&Aにはこの劇場の構造図なども飾ってある。

610一番紹介したかったのはコレ。Pete Townshendによって破壊された1960年代製のGinson Les Paul Deluxe。
壊されたのは60年代の後半か、70年代初頭とされている。

620vMarshallのスピーカー・キャビネットにピートがギター・ヘッドを突き刺している有名な写真。
こうしてピートはフレット・クロスを破いてはジムの店に持ってきて修理を依頼した。それをジムがセッセと直した。
ジムによればピートはギターを突っ込んでもスピーカーを痛めることは決してなかったという。寸止めの達人だ。

630コレはどういう経緯でここに収蔵されたんだろう。折れたネックの先端部はどこへ行ったんだろう?
そんなことはヨソに、ピートが実際に目の前にあるこのギターを振り回してブッ壊したのかと思うとかなり興奮する。

ところで、コレらのコレクションはどうも常設ではないらしく、今年V&Aを訪れた友人は探し出すことができなかったと言っていた。このピートのギターなどはV&Aのウェブサイトに出ているのだが…。
もし、コレらのコレクションを目当てにV&Aに訪れることがあるならぜひ事前に情報を集めてから行ってください。
もちろんコレらなしでも十分に楽しめる博物館だ。

640vそれにしても美術館や博物館を観て歩くのは実にシンドイ。立ちっぱなしということもあるが、目と足腰が、つまり、脳と身体がまったく別の動きをしていて、知らない間に途方もない距離を歩いていることに気づかないからだろう。

650vつづく