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2023年11月15日 (水)

VINTAGE & PREMUM GUITAR RHYTHMS & ROASTS Vol.2 ~私の小梅村

 
春になると八代将軍が徳川吉宗が植え始めたという隅田川沿いの「墨堤の桜」を見に訪れる大勢の人でにぎわう「隅田公園」。10江戸の昔、ココには水戸藩の「下屋敷」があった。
下屋敷でこの広さ!
水戸藩の石高は35万石…尾張62万、紀伊56万には及ばないが、さすが徳川御三家の一角だけのことはある。
何しろ「後楽園」でおなじみの小石川にあった「上屋敷」の敷地内には現在東京ドームがスッポリ入っているんだからスゴイ。
上屋敷は藩主やその奥さんが起居し、「中屋敷」は主に隠居や世継ぎが用い、下屋敷は藩の倉庫として使われていた。
倉庫でこの広さだから驚いちゃう。
ちなみに水戸藩の中屋敷は駒込にあって、現在は東大の本郷キャンパスになっている。20隅田公園の同じ敷地内にあるのがこの「牛嶋神社」。
850年代に創建された古刹中の古刹で、元は違う場所にあったが関東大震災の時にココに移転した。30この石柱の揮毫は東郷平八郎元帥によるもの。40vその牛嶋神社の境内の一角にあるのが「小梅稲荷神社」。
現在は「向島」という地名に括り入れられているが、昔はこの辺りを「小梅村」といった。
「小梅ちゃ~ん!」なんてアメのコマーシャルがあったよね。
アレを叫んでいるのは坂上冬目さんというジャズ・シンガーだった。
「冬目(とめ)」と名乗るぐらいだから、よっぽどのメル・トーメ・ファンだったのだろう。
私もメル・トーメはかなり好きだけど。80この神社のすぐ近くにあるのが「墨田区立小梅小学校」。
短期間ではあるものの、1947年公開の『安城家の舞踏会』を監督した吉村公三郎がココに通っていたと聞いてビックリ!
吉村さんは脚本家として名高い新藤兼人や名優殿山泰司らと「近代映画協会」という独立プロを立ち上げた人。
『安城家~』もヨカッタけど、中村鴈治郎(玉緒のお父さんね)と浪花千栄子の『大阪物語(1957年)』や若尾文子で撮った水上勉の『越前竹人形(1963年)』もメチャクチャよかった。45ついでに…チョット離れてはいるが、隅田川を挟んだ対岸には台東区立石浜小学校がある。
コチラには『西鶴一代女(1952年)』や『雨月物語(1953年)』でその名を世界に知られる溝口健二や、「愛染かつら」他、数々の名作を残した作家の川口松太郎が通っていた。
山下清もこの小学校のOBだそうだ。
小林桂樹が山下清を演じた『裸の大将(1958年)』が観たいんだけど、どうもコレはDVDになっていないようだ…残念!
Isg この小梅小学校の前を走っている通りは「見番通り」という。
かつてはこの通り沿いに「見番」があったんだろうネェ。
「見番(けんばん)」というのは芸妓さんのマネージメント・オフィスね。
「アソコの料亭へ行け」とか「コッチのお座敷へ行け」と芸者さんたちを差配する事務所。
向島は江戸末期から花街として大いに繁栄し、今でも花柳界の檜舞台になっているため、その見番の役割を果たす「向嶋墨堤組合」なんてのがすぐ近くにある。Img_5754_3 小梅小学校のすぐ並びには「三囲神社」。
コレ、「ナニ神社」って読む?50この神社は「三越」がサポートしていることで有名なの…ナゼか?
「三囲」と書いて「みめぐり」と読む。
三井グループのロゴって「井桁」で「三」を囲んでいるでしょう?
だからだって。
Mm
だから三囲神社の境内には、三越デパートの入り口に鎮座しているシンボルのライオンの銅像が置かれている。60「三井」自体を起こしたのは松阪出身の三井高利。
その松阪にある「三井発祥の地」に行くとやっぱりライオンがドテっと横たわっているんよ。452 そして、向島といえば永井荷風の『墨東奇譚』の舞台で知られる私娼窟の「玉の井遊郭」ということになるんだけど、この手の話を始めるとキリがなくなるので今日は触れない。70さて、ここからが本題に入る前の本題。
この古地図、右のブルーの部分は隅田川。
「水戸殿」とあるのは冒頭で触れた水戸藩の下屋敷のこと。
すなわちココまで紹介して来たエリア周辺の安政年間の地図
で、地図中央の赤い丸で囲んだ中には「料理屋大七」とある。95「大七」は鯉料理が有名で『伊達競阿国戯場(だてくらべおくにかぶき)』という歌舞伎狂言の中に出て来るらしい。
主役の「絹川与右衛門」を演じたのは初代の「大川橋蔵」だって。
そしてその場面が「今戸大七の河岸」と題した錦絵にもなっている。
巨大な鯉をさばいているシーン。
85v「蛮社の獄」で小伝馬町の牢屋敷に投獄された天才蘭学者の高野長英は、1844年、出入りの者に依頼して自分が入っていた牢屋敷に火をつけさせて脱獄し、全国の支持者や教え子を訪ね回り、6年間にわたって日本国中を逃げ回った。
その逃避行の最初に匿われた先がこの鯉料理屋の「大七」の2階だったという。
私はこの高野長英の逃避行を描いた吉村昭の『長英逃亡』という小説が大好きで、それが昂じてつい先日、長英が比較的長く滞在していた愛媛の宇和島までその潜伏先の跡を見に行って来た。90vそれゆえどうしても「大七」があった場所を突き止めたくて上の古地図をたよりに周辺を歩き回ってみたが、「この辺りか?」と当たりをつけることぐらいしかできなかった。
コレがロンドンだったら絶対に街中に記録を残していただろうにナァ。

100その代わりにはならないが、近くには元琴欧州が親方を務める鳴戸部屋がある。
いつもデッカイ洗濯物がスラリと干されていて、この辺りを散歩すると瓶付油のニオイを漂わせたお相撲さんによく出くわす。
あの瓶付油の原料は「ハゼ」という漆の仲間の木から採取する「木蝋(もくろう)」で、宇和島に近い「内子(うちこ)」という小さな町の特産物だったんだよ。110 着いた…。
今日はその鳴戸部屋のハス向かいの「LATTEST SPORTS」というカフェからのレポート。1202日間にわたって開催された『VINTAGE & PREMIUM GUITAR RHYTHMS & ROASTS』。
新旧のミュージシャンや斯界のエキスパートが集ってギターの魅力をアッピールする毎月1回開催のイベント。130会場内に展示されたギターたち。
コレはKUNIさんのギター。
KUNIさんはかつて2016年のLOUD PARKのレポートでMarshall Blogにご登場頂いたことがあった。
 
その時の様子はコチラ⇒LOUD PARK 2016 ~ KUNIの巻

150vコレは故沢田泰司さんの愛器。160本物のクジャクの羽をボディに接着して塗装を仕上げている。170出演者のグッズもゾロリ。180ステージにズラリと並んだギター・アンプ。
しかもコンボ・アンプばっかり。
こんな光景は楽器屋や楽器の展示会ぐらいしかお目にかかれないだろう。140我がMarshallからは、右から…
ORIGINシリーズから「ORIGIN20C」
この時はまだ発売前だったSTUDIO JTMシリーズの「ST20C」
STUDIO CLASSICシリーズから「SC20C」…190ステージ下手は左から…
ORIGINシリーズの「ORIGIN50C」
STUDIO VINTAGEシリーズから「SV20C」
…の5台。
私もMarshallの仕事をするようになってカレコレ四半世紀、すなわち25年が経った。
その間、三段積みがズラリと並んでいる光景は数えきれないほど目にして来たが、実戦の舞台でこれだけMarshallのコンボが並んだのを見たのはコレが初めてのことだった。200前説の後、早速ライブがスタート!
曲は「Crossroad」。
230最初にステージに姿を現したのは…
 
ジョージ吾妻240vKunio Kishida000r4a0080 SHANE孝之260vリズム隊は…
 
SHIHO
270v倉川知也290v2曲目はKishidaさんのボトルネックが炸裂した「Statesboro Blues」。
イヤ~、Kishidaさん久しぶりだナァ~。
どう軽く見積もっても10年以上はお会いしていなかった。
相変わらずの「アラバマ魂」が素晴らしい!250vジョージさんも中身の濃いフレーズで迎え撃つ。
この日の約ひと月前に某ライブハウスでジョージさんと偶然ご一緒してこのイベントにお誘い頂いた。320vそして若手がグイグイ切り込んで来る!
いいぞSHANEくん!
 
SHANEくんの「シェーン」はアラン・ラッドが演じたシェーンと同じ。
黒ずくめの敵役を演じたジャック・パランスが最高にカッコよかった。
少年が「Shane, come back!」と叫ぶラスト・シーンがあまりにも有名で、あの後に本当のラスト・シーンがあることを知る人が案外少ないんだよね。
気になる人はチェックしてみてください…この作品の見方が変わるから。330vvol.2の冒頭はブルース2曲で盛り上がった!
300司会は元Player誌の北村和孝。210v北村さんはこの度新しい音楽誌を新たに立ち上げた。
おめでとうございます!
雑誌の名前は「bhodhit magazine」……読めないな。
コレは「バディット」と読むそうです。
創刊号巻頭のご挨拶を拝見すると、コレはゴータマ・シッタルダの別名である「bhodhi(ボーディ)」から採ったそうだ。220m続いてはステージのようすがガラリと変わる。
Z世代コーナー!340メンバーは…
 
SEKAI350vkeme360vNatsuki370v曲はZ世代の皆さんには無関係であろう「Wild Thing」!
思いっきり野性的に暴れてくれたSEKAIくん。
 
「Wild」といえば、望月三起也の『ワイルド7』に「世界」というキャラクターが出て来ることをSEKAIくんに訊いてみたけど彼は知らなかった。
世界の単車はチョッパー・スタイルで、愛用するピストルが「モーゼル」なのもカッコよかった。
今の若い人たちが『ワイルド7』なんて知るワケないわな~。
私の世代は『秘密探偵JA』までさかのぼって夢中になって読んだものだった。
今「JA」って言ったら「農協」だもんナァ。 380続けてのもう1曲は「I Love Rock'n Roll」。S41a0113 もちろん女性陣も…390バッチリとソロをキメてくれた!400v今度はジョージさんが加わってTwisted Sisterの「We're Not Gonna Take It」。
この曲のタイトルはThe Whoの『Tommy』のパロディなのか?
でもこの曲は知ってる。
このTwisted Sisterは、フランク・ザッパが『Does Humor Belong in Music?』というビデオ作品の中の「Honey, Don't You Want a Man Like Me?」なる曲の中で取り上げていることで私はその名を知った。
もちろんザッパが良い意味で扱うワケがありません。410ジョージさんはVに持ち替え。
ジョージさんにはVよりもエクスプローラーのイメージがあるナ。420コレはSEKAIくんのイメージにベスト・マッチの曲ですな~。430vジョージさんはコーラスでも大ハッスル!435そこにKishidaさんが加わる。440もう1人このセットに参加したのは同道公佑(どうみちこうすけ)。450v曲はブルースのスタンダード・ナンバー「Sweet Home Chicago」。460公佑くんも若さとシブさが入り混じったプレイを聞かせる!470vもう1曲、ジョージさんが「I don't wanna go…」と歌うのが印象的なナンバーは「The City」。
Mark=Almondの曲。
実にいい選曲。
もちろんこのイギリスのチームは知っているけど、他に「Marc Almond」というソロで活動しているミュージシャンがいることを今回知ってビックリしちゃったよ。
 
Mark=Almondってナゼかミンガスの相棒だったダニー・リッチモンドがレコーディングに参加しているんだよね。
一体どういう関係だったんだろう?
リッチモンドは元々テナー・サックス奏者だったんだけど、チャールズ・ミンガスにプッシュされてドラムスに転向した。
以降、ミンガスの生前のレコーディングやライブで活躍し、数多くの名盤を残した人。480vこうして新旧のミュージシャンが一緒になってナニかを演る…というのは実にいいことですよ。
ジャズなんかはよくやってる。
作り手の「売り上げ至上主義」と受け手の「幼稚化」によってできてしまったベテランと若手のミュージシャンの間の絶望的な断絶はこういうことをしない限り埋まらないと私は普段から思っていた。
私も50年近くの長きにわたってロックの動きを見て来たけれど、その創造性が限界に達して久しいことは間違いないと思う。
だからこのような機会を通じて、ベテランは「今」を知り、若手は「ロック」を知ることが必要なんですよ。
クリエイティブなロックの延命はコレしかないって!
一説によると、落語はコレを繰り返して江戸の昔から命を長らえて来たという。
若い噺家が出て来ると若いお客さんが寄席に来るようになり、そこでベテランの名人芸を体験して「落語」自体のファンになるという図式。
ロックからするとうらやましい話だネェ。490ココでしばし休憩…の間に主催の「FUJIWARAアクリル・ギターディスプレイケース」の藤原靖弘さんとギター・インフルエンサーのこーじ隊長からご挨拶。500ライブのコーナーはひとまず終わって今度はトークのコーナー。
510ゲストのアキマツネオ。
アキマさんはマーク・ボランが愛用していたことで知られるVelenoのギターを持参してくださった。520vそして、同じくボラン愛用のイギリスのギター・アンプ「VamPower」
540vアキマさんは実際に音を出しながらこの2つのアイテムの希少性を説いてくれた。
私はボランの相棒のミッキー・フィンがNATALを使っていたことは知っているけど、マーク・ボランについては知らないに等しいのでとてもオモシロく、興味深いお話だった。
アキマさんのお隣は元Player誌の田中稔。
田中さんにはかつてこのトーク・コーナーと同じテイストのイベントにお呼び頂いたことあった。
アレもオモシロい企画だった。
その時の様子はコチラ⇒"Cafe de Player vol.1"~Inaba Plays Les Paul with ASTORIA編

530ところで、名盤の誉れ高いT.REXの1971年のアルバム『Electric Warrior(電気の武者)』。
「武者」ってのがスゴイな。
ジャケットのデザインはヒプノシス。
このフル・スタックをMarshallだと思っている人が多いようだけど…違う。
コレは昔から私も知っていた。
で、このアンプこそが今回アキマさんがご持参されたVamPowerなんだよ。
コレは知らなかった。550cdこのアルバム、一部は今でもロンドンのソーホーにある「トライデント・スタジオ」で録音された。
トライデント・スタジオについては【イギリス-ロック名所めぐり】に書いたことがありましてね…お気に入りの記事のひとつ。
『Electric Warrior』も紹介しています。
  ↓   ↓   ↓
【イギリス-ロック名所めぐり】vol.49 ~<オールド・ロック・ファンに捧ぐ>トライデント・スタジオとC.ベヒシュタインとデヴィッド・ボウイ

560そして、ベテランのギター談義。
も~、「朝日無線」の5階に通い始めた中学生みたいなお2人の表情が実に素晴らしい!570このKishidaさんのレス・ポールは59年製。
お値段は明かさなかったけど推して知るべし…というシロモノ。
昔、弦を買いにデンマーク・ストリートに行って、59年製のレス・ポールを買って帰って来ちゃったという今も現役で活躍しているイギリスのツワモノのギタリストがいるけど、マァ、コレは作り話でしょう。でも、このKishidaさんのレス・ポールーはホンモノの59年製。580で、私もMarshallについてひと言語らせて頂きました。
Marshallに関する話なら休憩をはさんで3時間半はイケるんですけどね、この時は5分ぐらいに縮小しました。
後ろでアキマさんが私の話にジックリと耳を傾けていらっしゃるのがコワいな。590さて、トークのコーナーもにぎやかに終了して、出演者がゾロリと舞台に上がりイベントもついにクライマックスに差し掛かる。
せっかくアキマさんが機材付きでお見えになられているんだから、ココはT.REXを演らないという手はないでしょう。
ということで、「♪ジョコジョ~ン」から!620まずは「20th Century Boy」。
600そして「Get It On」。620v名曲に乗って新旧入り乱れての…630大盛り上がり!640アンコールにはジョージさんがマイクを握って「Johnny B. Goode」で更に盛り上がってこの日の出し物を全て終了した。660さて、この日から2週間とチョット…薄暮のお茶の水。670世界に冠たる「楽器の街」を上げてのイベント『お茶の水熱烈楽器祭2023』が開催された。
このイベントは2014年にMarshall Blogで取材させて頂いたことがあった。
 
その時の様子はコチラ⇒お茶の水熱烈楽器祭の田川ヒロアキ680今回の会場のひとつはJRお茶の水駅の聖橋口を出てすぐに設置されたステージ。
ココに今日レポートしたイベントのライブのパートが丸ごと移動した!690ジョージ吾妻700vKunio Kishida710v同道公佑720vこの日の公佑くんはJVMの1x12"コンボ「JVM215C」を使用。730SHIHO740v倉川知也750vこの時、結構寒くなってネェ。
それにも関わらず大勢の人が観に来てくださった。760公佑くんは「Voodoo Chile」を歌いワイルドなギターを聴かせてくれた。
明日の11月16日、公佑くんは今年5月に始動させた「Aahum(アウン)」の単独公演を開催する。
場所は六本木のキーストンクラブ東京。
詳しくはコチラ
770v次回のレポートに登場する菊池ともかちゃんも演奏に加わった。780vさらにアンコールでは西尾知矢さんも登場。790vお茶の水の駅前がギター一色に染まった夜だった。800<つづく>
 

200 (一部敬称略 2023年10月6日 東京ミズマチLATTEST SPORTS & 10月22日 JRお茶の水駅前にて撮影)