スピンオフ四人囃子 feat. 根本要 & 西山毅 <前編>
「ようやく」というか、「とうとう」というか、「ついに」というか、「いよいよ」というか、「やっと」というか…とにかくこの日がやってきた!いきなり脱線しますが、この「ようやく」他の4つの副詞ね、英語だと「finally」1語で全部言えちゃう。
もちろん「at last」とか「after all」に置き換えることもできるけど、日本語ほどバラエティに富んでいない。
日常生活における語彙の数が「日本語5万、英語2万」と言われるのがうなずける。
でも、「5万語」というのは昔の話で、日本人の語彙は恐ろしい速さで少なくなっているのではなかろうか?
「一触即発」なんて表現を使うのは四人囃子ファンぐらいなもんでしょう?
若い人たちがこの四字熟語を使っているのを耳にしたことがありますか?
スターダスト☆レビューの根本さんと、ギターの西山さんをフロントに迎えてのスピンオフ四人囃子。
このラインナップは大好評だった2018年5月12日に開催された名古屋のボトムライン公演以来。
あの時は楽しかったな~。
もう3年も経ってしまったのか…。
イヤ、本当はこのショウはもっと早く上演されていたハズなのだが、コロナのせいで大幅な延期を余儀なくされてしまったのだ。会場は六本木のEXシアター。
完全な感染防止体制が敷かれての有観客公演。
客席はひとつ飛びとし、開演前には全席を念入りに消毒した。
もうホントにコレにはマイっちゃうね。
仕事がただただ増えるばかりで、良いことがナニひとつありゃしない。
もういい加減に終わって欲しい。
コロナでまたチョット脱線。
私は2週間に1回、イギリスのMarshallのスタッフとミーティングをしているんだけど、ここ1年というもの、冒頭はお互いのコロナの状況を報告し合うのが恒例となっている。
御存知の通り、イギリスは惨憺たるコロナ大国になってしまったが、基本的に「Be optimistic」を標榜していて、いつ話をしても明るい雰囲気に満ちていた。
何しろモンティ・パイソンの国の方々ですからね、「♪Always look on the bright side of life」なワケ。興に乗って電話口で一緒に歌っちゃったりしたこともある。
それが去年末になると、先が全く見通せない状況に元気を失い、さしものイギリス勢も完璧に「青菜に塩」状態に陥ってしまっていたようだった。
それが…ココのところ猛烈に元気を取り戻しているんですよ。
ワケを尋ねると、それはワクチンのおかげだった。
連中は「ワクチン打ちますか?それとも死にますか」という状況まで行っていたからね。
もう「ワクチン=大勝利」なワケ。自分のところで作ってるし。
ものすごい勢いで普及したのは日本のテレビでも報道している通りで、5月には8月に開催されるイベントのチケットを発売し出すそうだ。
ウチのMarshall Recordsのアーティストも秋のツアーの予定を発表し出した。
エンターテインメントのジャンルを問わず、一時期すべてのコンサートや実演の芸能が完全に消滅した国ですよ!
昨日の大阪のことといい、翻って日本はこんな調子でこの先一体どうなるんだろう?
このまま一生続くんじゃないか?なんて心配になってもおかしくなない。客席から今度はステージに目をやると…
中央にNATAL。大二さん愛用のバーチのキット。
スネア・ドラムは「ビーデッド/ハンマード・スチール」。
コレ、名前をナントカして欲しいんだよな~。
「チャーシューワンタンメン」みたいで長くてイケねぇ(←コレがわかる人は五代目古今亭志ん生ファンですね?)。
やってる私もクタびれたよぉ。イヤ、まだまだ始まったばかり。
サイズは14"×6.5"。
見た目は火をいれすぎた「常盤堂の雷おこし」みたいでエラくゴツいけど、案外ウォームなサウンドが魅力なのよ。リハーサルのようす。
おお~!大二さん、Marshall GALA2のTシャツをお召しになられています。
このMarshallはキーボーズの三国さん用。
JVM410Hと1960BV。三国さんは2015年に開催したご自身の還暦記念コンサート以来。
三国さんは昔からキーボーズにMarshallを愛用されていて、大分前にダイヤモンド・ユカイさんのレコーディングにお邪魔した時もオレンジ色の古い1959をお使いになられていた。
その1959がさすがにヘタってしまい、今では普通に世に出回っているMarshallをお使いになられていらっしゃる。
ということでJVMが登板した次第。
Deep Purpleのジョン・ロードが愛用していたことからもわかる通り、Marshallは70年代まではキーボーズ用のアンプを盛んに作っていたんですよ。ベース・アンプはEDEN。
キャビネットは4x10"のD410XSTが2台。今回のヘッドはWTP-600が用意された。
ああ、ASTORIA CLASSIC。
いいアンプだ~。
心底いいと思う。西山さんには名古屋の時にお使い頂いて、今回もご指名に預かった。
コレはリハーサルのようす。西山さんもMarshallのTシャツだ~!
ありがたや、ありがたや。会場のロビーにはグッズがズラリ。
イベントTシャツもバッチリ販売された。
コンサートは配信も導入。
チケットはこんな具合。
いいね…昔のコンサートのチケットはみんなこんな具合だった。
今のコンビニで発券するチケットは味気ないもんナァ。
チケットを買うのには便利なのかもしれないけど、アレじゃ集めたってオモシロくも何ともないじゃんね。
発売日にプレイガイドやウドー音楽事務所に並んだ時代が懐かしいわ。
…と、注目して頂きたいのはこのチケットを持っている手の親指の爪!左手が四人囃子のロゴ。
右手が『一触即発』のナマケモノなのだ!
熱烈な四人囃子ファンにご協力を頂きました。
ありがとうございました!コンサートの冒頭にステージに上がったのは…
EXシアターの倉林支配人。
Marshall Blogでは「Led Zeppagain」の記事でおなじみね?
このコンサートに込めた想いを交えてひとことご挨拶。「四人囃子のコンサートは2013年のEXシアターの杮落し公演のひとつとして企画されましたが、残念ながら実現できませんでした。
代わって昨年4月30日、佐久間さんのご命日にコンサートを開くことになっていたのですが、それも新型コロナウイルスのせいでやむ無くキャンセルせざるを得ませんでした。
そして本日、坂下さんがご出演できなくなってしまいましたことは大変残念ですが、四人囃子のコンサート開催の運びとなりました。
緊急事態宣言下にもかかわらず、『コレだけはどうしてもやりたい』という私の思いに応え開催を実現してくれたスタッフ一同に心から感謝を申し上げます。
歴史的なコンサートとなることでしょう。
3月3日の桃の節句にふさわしく『五人囃子』での登場です」
そして、メンバーがステージに現れた。
岡井大二
スピンオフ四人囃子のベースといえば…山崎洋。
そして、2018年の名古屋以来となる…
根本要と…
西山毅。
残念ながら今回ご参加になれなかった坂下さんに代わり…
キーボーズに三国義貴。
♪ドコドン!
大二さんが叩き込むNATALのフロア・ドラムの音で始まった1曲目は「眠たそうな朝には」。
ドラムは「叩く」、太鼓は「打つ」…が正しいシンタックスであると鼓の大先生から教わりました。実は前回もオープナーが「円盤」だったので大二さんのドラムからスタートしたんだよね。
その時、西山さんは3曲目からのご登場だったが、今回はスターティング・メンバーで最初からステージに上がられた。
倉林支配人がおっしゃった通り、最初から「五人囃子」だ。要さんの歌声が心地よ~く曲に馴染んでいて素晴らしい。
西山さんのギターで始まる2曲目は「Chaos」。
「ケイオス」ね。
この西山さんが弾くギターリフの拍子が3日前のリハの時からズットわからなくて苦しんでいた。
佐久間さんが弾いた音源のイントロを聴くと7/8拍子だとすぐにわかるんだけど、私の「バカ耳」には西山さんが同じ拍子で弾いているようにはどうしてもも聞こえないいのね。
1234
12345
12
123…『春の祭典』みたいに聞えちゃって…でもコレ、結局7/8拍子なんだよね?
佐久間さんの方も大二さんのバス・ドラムが入ってアクセントをズラされると途端にわからなくなっちゃう。
西山さんはこのバス・ドラム入りのパターンを最初から弾いていたのね…という風に私のバカ耳は分析しています。前回は取り上げられなかった曲。
今回は四人囃子のすべてのアルバムから曲を取り上げようということで、この曲が収録されている1989年の『Dance』から2曲が選ばれた。
そのウチの1曲。ホラ、先ほどのファンの方の爪…「Dance」バージョンもあるのだ!
この曲では大二さんもボーカルズを披露。
キーボーズの「Peter Gunn」的なバッキングがやたらと耳に残る~。
「はい、曲が終わりました。
ようこそおいでくださいました!
令和3年3月3日という「3」が重なるひなまつりです」
とまずは簡単にご挨拶。
ところで…さっきから掲載している私が撮った写真ね…ズット高いところから失礼しております。
相手が「みこし」だったら大変です。「はやし」でよかった。
昔はお神輿にこんなことをしていたら、身体中に荘厳なアートを施した皆さんからドヤされるか、水をブッかけられたものです。
この日は完全な感染拡大防止策を期して、カメラマンも客席へ入り込むことができなかったのです。
コロナのバカったれ!
よって今回のレポートは、終始上手側のバルコニーから撮影した写真で構成していきますことご承知おきくださいまし。
何せ全く移動ができないので似通ったカットが多いけど、演奏中の写真はすべて異なっており、使い回しは一切ありません。3曲目も大二さんのシンバル・レガートから。
「♪ナニもすることがなくて…」…「おまつり」だ!
山崎さんのベースがクッキリと聞こえて来て気持ちいい~!
あたりまえだけど、要さんの歌があまりにも素晴らしい。
「やっぱり『おまつり』を聴いたら一緒に歌ってしまった」…となる。スピンオフ四人囃子の沿革について語る要さん。
「4年前に大二さんと飲んだ」⇒「一緒に演ろう」てぇヤツ。
そして、3年前に名古屋でその計画が実現して、この東京公演となった。ココでまずはメンバー紹介。
そして、皆さんからひとこと。
「大二さんたちに遊んでもらっていました」
三国さんは北海道のご出身で、札幌でミツルさんと演奏していていらした。
ミツルさんはその時代から街を歩くと女性からヒューヒュー!だったそうです。
三国さんは四人囃子の曲を演奏するのが今回は初めてで、身体の大きい坂下さんは手のサイズも大きく、代役を務めるのはとても大変だとか。
「坂下さんはホヤが好きで北海道にくるとよく食べてましたよ」「高校の時に初めて四人囃子を聴きました。
KISSが全盛の時代、四人囃子はムズカシかった」「で、その高校の時、小岩の『音曲堂』という楽器屋さんでバンド・コンテストがあったんですよ。
1回戦で敗退。
その時の審査員が大二さんだったんですよ!」
西山さんは私と年がひとつ違いなんだけど、当時はアチコチでバンド・コンテストが開かれて私も高校の時には時々チャレンジしたもんです。
もちろん同じ高校生でも腕前は西山さんとは雲泥の差ですよ。
西山さんはその後、東京12チャンネルの『ロックおもしロック』という番組のバンド合戦で「津軽じょんがら節」を弾いて近田春夫さんから大絶賛され、翌日学校での大きな話題になった。
となると、大二さんのジャッジはどうだったのか?という疑問が残らなくはないが、昔はそういうチャンとした「ロック」を演奏しているミュージシャンがコンテストの審査員を務めていらした。
私も妹尾隆一郎さんとか、山岸潤史さんとか、鳴瀬善博さんの前で演奏したことがあった…さぞかしお耳汚しだったに違いない。しかし、驚いたのは西山さんのおクチから「音曲堂」の名前が出たことよ!
今でもありますよ。
最上階にチョットしたホールがあってね、そこで各種のイベントを開催していた。
バンド・コンテストではなかったけど、何を隠そう、高校2年の時に私も舞台に上がったことがあった。
UFOのコピーを演った。今で言うとカバーとかトリビュートって言うのかな?
マイケル・シェンカー役よ。
いい思い出です。
小岩には「珈琲園」というすごくいいジャズ喫茶もあったんだよ…それはいいか。「ボクの世代ではリアル・タイムで聴くことはできなくて、四人囃子は『伝説のバンド』でした。
高校でベースを始めて、少しムズカシイことをやりたくなった時に先輩が四人囃子をススメてくれたんです。
あるセッションで稲葉さんと一緒になって『タマにやる?』と誘って頂いたのがはじまりです」
山崎さんは譜面を起こしたりする山崎さんはこのチームの影のまとめ役なのだ。「次の曲は『プリンテッド・ジョリー』から…」
「『ジョリー』じゃなくて『ジェリー』ね」と大二さんからjollyなツッコミが入ったところで…「昼下がりの熱い日」。
名曲だよね~。
まるでご自分の曲のようにメロディを歌い上げる要さん。三国さんのソロ。
西山さんのソロ。
タッピングを交えてのトリッキーでスリリングなプレイ!
音に全く無駄がない完成度の高いソロ構成は西山ならではのモノでしょう。曲の〆のソロは要さんだ。
前回に比べて今回は要さんのギターへの重点が増したようだった。そのまま「カーニバルがやって来るぞ(パリ野郎ジャマイカへ飛ぶ)」。
私が一番最初に好きになった四人囃子の曲はコレかな?
中3かな?高1だったかな?もう40年以上も前、『ゴールデン・ピクニックス』を確かお茶の水のディスクユニオン(駅の横の画材屋の上にあったお店)で買って、聴いて、「Flying」が終わってブッ飛んだ。
こういう曲、私の中では「10cc的」っていうのかな?…もう大好きなの。
最初に聴いた時、「♪壊れかかったマットの車」という歌詞かと思ったのを今でも覚えている。この曲もメロディだけではなく明るく楽しい歌詞が要さんの歌声にピッタリだ。
お楽しみの中間部。
「パリ野郎(Paris Canaille)」のメロディを華麗に奏でる三国さん。ツイン・ギターのパート。
本当のことを言うと、ココの入り口はリットして欲しくないの。
レコードをさんざん聴いたからでしょうね。
ハモりバッチリ!
いつ聴いても楽しいナったら楽しいナ!かき回しの締めくくりは大二さん。
ここぞとばかりにイアン・ペイス炸裂!
みんなさりげなく合わせるところがオモシロかった。
もう広規さんなんかはオモシロがって無視しちゃうからね。
C'est si bon!、お後がよろしいようで…。 MCでは「パリ野郎」のことについて触れた。
「パリ野郎(Paris Canaille)」はシャンソンを代表する1曲。
作ったのはこのレオ・フェレ(Leo Ferre)という人。
私はフランス語はまったくの門外漢なので、調べてみるとこの「canaille(カナイユ)」というのは「下層民」とか「クズ野郎」とかいうヒドイ意味のようですな。
そんなゲスなヤツがなんでジャマイカへ飛んだんだろう?
音からすると舞台はパリのようだけど、ジャマイカでコトが起こっている設定なんだよね?
今度大二さんに訊いてみよう。
『ゴールデンピクニックス』のライナー・ノーツにはこの「Paris Canaille」のパートを「レゲエで演っている」と書いてあるんだけど、私のバカ耳にはレゲエのリズムには聞こえないな~。チョット脱線してMarshall野郎パリへ飛ばせて頂きます。
この「Paris Canaille」、かのミシェル・ルグランがパリにまつわる曲をテーマにした1959年のアルバム『Paris Jazz Piano』というアルバムで、取り上げている。
2分チョットのごく短い演奏なんだけど、「Apris in Paris」、「I Love Paris」、「The Last Time I saw Paris」といったパリ丸出しのジャズ・スタンダードに交えてのシャンソン・ナンバーが実によろしい。今、Gitanes Jazz Productionsという廉価盤レーベルに権利が移ってジャケットがこんなんなっちゃった。
ツマらんけど、このシリーズは安くてうれしい。 しかし、「パリ」といえばコレだろう。
越前福井はヨーロッパ軒の「パリ丼」。
もう35年前ぐらいに一度食べて以来なんだけど、確か上に乗っかっているのはメンチだったように記憶している。
パリも行ってはみたいけど、やっぱり私は「ロン丼」かな? こういうご当地アルバムみたいな作品はいいね。
このニューヨークにまつわる曲を集めたメル・トーメの『Sunday in New York』なんかもそう。
私の愛聴盤。
日本でも東京をテーマにした曲を集めたアルバムなんてできたら楽しいのにな。
「黒門、根岸に稲荷町、なめくじ、日暮里、矢来町」…「Houses of Rakugo」なんて曲が入ってるの。 曲単位だったらあるじゃんね。
一番カッコいいのは何といっても「東京ワッショイ」でしょう。
うまくまとまりました。
脱線終わり。 1974年に開催された郡山ワンステップフェスティバルのお話。
スモーキー・メディスンをお目当てに参加した要さん。
スッカリ四人囃子にヤラれてしまい、コピーしてはオリジナル曲と偽って熊谷近辺を荒らし回っていたという…この話は名古屋でもされていたので、本当の話なのだろう。
ある時、あるツテを通じてその郡山の時のサウンドボード音源を収めたカセットテープが要さんの所に舞い込んできた。
現在正式に世の中に出回っているワンステップの四人囃子の音源はその要さんが所有しているカセットテープがソースになっているのだそうだ。
今、amazonのこのCDに関するコメントを見ていてこんなのを見つけた。
「いま聞いたばかりの話なんだけど、この音源の元のカセットは根本要さんが持っていたものなんだそうです」
ギャハハ!会場にいらした方かな?配信でお知りになったのかな?
郡山と来れば、それじゃ私も…かつてこんなイベントをお手伝いさせて頂いたことがあった。
このイベント会場に『郡山ワンステップフェスティバル』のポスターが燦然と飾ってあったのを思い出したのだ。もう1曲『プリンテッド・ジェリー』から「ハレソラ」。
前回、キーボーズと…
西山さんのアンサンブルで彩られたイントロを聞いた時は感動したな~。
あの感動がよみがえったわ。
しかし、オリジナルはマンドリンでしょ?
素晴らしいインストゥルメンタリゼーション(←Ruth Underwoodが使っていて覚えた単語)だと思う。メンバー全員の見せ場を集めた前半のハイライト。
要さんの伸びやかな歌声。ピックでガツンと低音をお見舞いした山崎さん。
そして、ギター・バトル!
双方一歩も退かない硬派なギター・ソロ。
西山さんが竿回しをキメこんだ!
楽しさイッパイ盛り込んでショウは中盤にさしかかった。
四人囃子の詳しい情報はコチラ⇒Yonin Bayashi official Web Site<後編>につづく