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2021年4月 8日 (木)

スピンオフ四人囃子 feat. 根本要&西山毅 <後編>

レポートの<後編>は本編のちょうど真ん中のMCから。10v_3ココでは要さんが大二さんのサポートを受けながら四人囃子の沿革を紹介した。
 
四人囃子はアマチュアの時代から「ミュージックマガジン(当時:ニューミュージックマガジン)」に取り上げられていたのだとか…。
だから『From the Vaults』のスペシャル・サンクスに「中村とうよう」さんがクレジットされていたのか。
とうようさん、その頃は編集長でしたからね。20要さん、「四人囃子のレコードはジャケットもヨカッタ」ともおっしゃっていらした。
そ~なんですよ。
昔の日本のロック・バンドは、ジャケットのデザインもすこぶるカッコよかった。
「あの音楽がまとっているジャケット」、「このジャケットに収まっている音楽」といった具合にオリジナリティが豊かで音と見た目が完全にマッチした名盤が多かった。
そりゃ30cm×30cmという大きなスペースだもんね。
デザインのし甲斐があったというものです。
配信リリースじゃ力の入れどころがないもんね。
だから動画になっちゃったのかな?アレはイカンよ。
そして、ジャケットの楽しみを知らない今の若い人たちは本当に気の毒だと思う。
30それで『ゴールデンピクニックス』のジャケットを改めてジックリ見直してみた。
イラストは佐藤和宏さんという方。
収録曲に登場するキャラクターが巧みに描き込まれている。
まず、カブトムシが飛んでいて「Flying」…どうにもウマいてぇヤツだ。40s空が破けて四人囃子が降りて来て、ジャケットの大半を覆う白い渦は空のようでもあり、海のようでもあり…コレがホントの「空と海の間」?
壊れかかった真っ赤な車に、ネッシー、そしてレディ・ヴィオレッタ。50ジャケットをひっくり返すと、表面では渦の端の方に隠れていたネッシーの好物のリンゴが宙を舞う。レコードB面の1曲目はそのリンゴが登場する「泳ぐなネッシー」なのだ。
60s
それを食べにネッシーが出て来た。
「リンゴが食べたくなっても顔を出しちゃいけないよ」と言われているのに!
そして、ナマケモノと円盤も登場する。
オモシロいねぇ。
…ということは、曲の内容を先に佐藤さんに伝えておいて描き込んでもらったということか。
それともまさか、全部録り終えた後、完成した音源を聴いてもらって急づくりで描いてもらったとか?
それはないでしょう。

レコード・ジャケットがお好きな方、Marshall Blogでもそういうカテゴリーがありますので、興味のある方はコチラをどうぞ⇒ミュージック・ジャケット・ギャラリー70さて、EXシアターのステージに戻って…。
次の曲は『一触即発』から「空と雲」。80_sk独特な歌詞の雰囲気をジックリと歌い込む要さん。
以前にも書いたことがあったが、この曲を聴くとどうも谷中の町並みを思い浮かべてしまう。
坂や古いお寺がたくさんあるからだ。
あの辺は犬ではなくて猫だけどね。
ついでに、「おまつり」を聴いた時に浮かぶイメージはナゼか「ねじ式」なんだよね。
85v_2三国さんのソロから…90西山さんのソロへ。
2人のベテランが紡ぎ出す濃いメロディの連続をしみじみと味わう。
1001979年の『NEO-N』から1曲。
「NAMELESS」だ。110この曲では三国さんがボコーダーを披露。120ココのMCでも昔の話に花が咲いた。
アルバム『包』のレコ発コンサートで日比谷野音にテントを張ろうとしたが都からNGが出てしまい、天幕業者まで決まっていたにもかかわらず断念。
代わりに真夏の野音の客席をアルミフォイルで「包」んだ話とか…。
照り返しがスゴかったろうナァ。
でもムラなく日焼けできたことでしょう。浜辺で使うマットと同じ原理だもんね。
でも反対にテントを張っていたら熱がこもっちゃってどうにもならなかったんじゃないかしら?
真夏の野音は暑いでな~。
そういえば、四人囃子が出演した2010年8月の『Progressive Rock Fes』も暑かったっけナァ~。
囃子の皆さん、出番以外は冷房のきいた楽屋から全く出て見えなかったもんね。160そして、要さんがココで紹介したのは、この日発売となったSEE・SAWレーベル時代の3タイトル、『Printed Jelly』、『包』、『NEO-N』を集めたCDボックス・セット。
もちろん特典の音源も収録されている。170s三国さんが弾くキーボーズのリフから始まるのは、その『包』収録の「機械仕掛けのラム」。
やっぱりいいリフはシンプルな音使いで出来てるんだよね~。
フランク・ザッパの「Inca Roads」なんてドとレとソの3つだけだし、「Smoke on the Water」だってシンプルなことこの上ない。
この「ラム」で使っている音は4つ。
半音程が出てこない。
そりゃそうだ、ホールトーン・スケールで作られているんだから。
ま、でもこの手の話のチャンピオンはデューク・エリントンの「C Jam Blues」じゃないかしら?
 
「Machine Work RAM」…勝手にキューブリックに触発されたタイトルだと思い込んでいたんだけど、『包』のリリースは1978年。
映画の『時計じかけのオレンジ(A Clockwork Orange)』は1971年で、大分前のこと。
1978年は『バリー・リンドン(75年)』と『シャイニング(80年)』の間なんだな~。
すると、佐久間さんをインスパイアしたのはアンソニー・バージェスの原作の方かな?
イヤ、ゴメンなさい。キューブリック好きなもんで強引に結びつけております。
 
こんなレポートもやっていますのでよろしかったらどうぞ⇒イギリス紀行2019 その12 ~ スタンリー・キューブリック展 <vol.1>
 
オレンジ⇒ラム(rum)⇒RAMというつながりか…この時代からコンピュータをテーマにしているのがすごいご慧眼である。
私はこの時代でコンピュータを扱っている曲ちいえば、他にはPANTA & HALの「HALのテーマ」ぐらいしか知らない。
今となってはAIが進化を遂げ、もはや人類はコンピュータなしでは何もできない一介の子羊(lamb=ラム)と化してしまった。ナンチャッテ。
180_lumすごく好きな曲で最初のMarshall GALAの時にリクエストさせて頂きました。0r4a01585人とも一時も目を離すことができない素晴らしい演奏!200v山崎さんのググ~っと低いところを行くベースがタマらんね。
EDENのいいところを思いっきり引き出してくれている。
L<前編>で少々落語のネタを挟み込んだところ、それをご覧になった四人囃子さんのSNSが志ん生のオハコだった「火焔太鼓」を引き合いに出してくださってうれしかった。
そう、豪放磊落で天衣無縫で当意即妙な大二さんのドラミングは五代目古今亭志ん生のイメージがありますな。
ところが、それだけではなくてセンシティブで緻密なプレイはまるで八代目桂文楽だ。
私はよく、ウェス・モンゴメリーを志ん生、パット・マルティーノを文楽に喩えるのだが、大二さんはその両方だね。
『七人の侍』だったら久蔵(宮口精二)と菊千代(三船敏郎)のミックス。
山手線で言えば「鶯谷」と「上野」の間ぐらいか?
イヤ、日暮里の師匠と黒門町(御徒町)の師匠の家の間ぐらいだから。
そんな大二さんにはNATALのドラムキットがピッタリなのだ!
ホントにいい音なの。
190締めくくりはギター・バトル。
220vココでも要さんのギター・プレイが冴える!230 今回、何度かこうしたギター・バトルのシーンがあったが、ピロピロいうだけのただの「速弾き自慢」ではなく、どれも双方から練ったフレーズが繰り出される聴きごたえのあるバトルだった。
240再び『DANCE』から「ai-sala-di SCENE」。250v_asds「ナウいロックとアラビアンを混ぜた曲を作りたかった」という大二さん。
「昔、前に出て演っちゃったけど、もう二度とやらない」280そのステージ前方でシンセドラムを叩きながらこの曲を歌う大二さんが観たい人はコチラ。
1989年のMZA有明でのコンサートを収録したDVD。好評発売中!
Fhm 「次は難曲中の難曲です」
もうコレだけで次に演奏する曲がわかってしまう。
270vハイ、「なすのちゃわんやき」。300_ncこれまた5人のイキがピッタリ合った素晴らしい演奏。
もっともイキがあってなかったら演奏できないような曲の代表だからね。
310v

320v

330v

340 

350ココでもギター2人が絡み合う見せ場が用意されていた。
345「この曲はコピーしていると段々チューニングが合わなくなってくるんですよね」と要さん。
絶対音感を持っている人を困らせてやろう…ということを標榜して作られた曲ということは知っていたが、大二さんがその手法を語ってくれた。360v「ネタをバラしちゃうと、アレはあらかじめドラム・トラックを録っておいて、再生速度をどれぐらい遅くすれば音程が半音下がるかを測っておくんですね。
速度調節のツマミに印を付けちゃうんです。
そして、そこに向けて徐々にドラム・トラック音源の再生速度を遅くしていき、そのテンポに合わせて他の人たちが演奏をする。
すべて録音した後、全編普通の速度で再生してやると自動的に音程が半音上がるワケです」
なるほど、ワウフラッターの応用というか、悪用というか…。
この大二さんの話を聞いて瞬時にして思い出したのが10ccの「I'm Not in Love」。
やっていることは全く違うが、そのクリエイト精神が同じ次元ではなかろうか…というワケ。
昔の人(失敬!)はエラかった!
 
10ccが「I'm not in Love」でナニをやったか興味のある人はコチラをどうぞ⇒【イギリス-ロック名所めぐり】vol.43 ~ 10ccに会いに行く <前編>

370vやっぱりスゴイ曲だわね。
日本って今でもプログレッシブ・ロックが盛んじゃない?
発祥の地、イギリスでは「Prog Rock」と呼ばれているけど、聴いている人なんてほとんどいないからね。
その点、日本はスゴい。
何しろ、ディスク・ユニオンのかつてお茶の水の明治大学記念館の前にあった店舗は世界で一番『クリムゾン・キングの宮殿』を売る店だという話を聞いたことがある。
「世界一」ですよ、世界一。
そんな国なのにこの「なすのちゃわんやき」のような曲が他に見当たらないというのはどういうワケか…(あるのかも知れないけど)?
器楽演奏能力のレベルも極めて高いのにとても不思議な現象だと思うんですよ。
 
私もこの曲が大好きで、やはり『Marshall GALA』で大二さんにリクエストして「稲葉囃子」で演奏して頂いた。
その時のビデオがコレ。

大二さん、ココで感動のスピーチ。
「この曲が出来上がった時はみんなすごく喜びましたね…。
今となってはメンバーが3人も亡くなってしまったけど、森もミツルも今後いつでも戻って来れるように空席を保っているんです。
坂下、悔しいだろう…早く戻って来いよ!」
12s41a0400_2いよいよ本編最後。
「一触即発」だ。0r4a0145冒頭のソロは要さん!

3901日に2回しかリハーサルができないという12分に及ぶ四人囃子の音世界にドップリと浸かることができたお客さんはラッキーだった。400

410

420v

430

440「♪ああああ 空が破けて ああああ 声も聞こえない」450長いものがたりを経て到達するエンディング。
やっぱり何度聴いても感動するね~!460アンコール。
「今日のことを本当に幸せに思っていたんですけど坂下さんが事故に遭ってしまって一緒にできないのが悔しくてタマりません。
そんな想いを込めて1曲歌わせてください」470要さんの弾き語り。
名古屋公演でも大好評だった「泳ぐなネッシー」。
ワンステップ・フェスティバルの1曲目。
坂下さんの作品だ。480_onギター1本をバックに会場に響き渡る要さんの歌声。
490この歌を聴いて心を揺さぶられない人はよもやいないだろう。500v「最後の曲…コレはシングルですね」
大二さんから加えられた説明では四人囃子のシングルは3枚。
「レディ・ヴィオレッタ」と『酔拳』の「カンフージョン」とこの「空飛ぶ円盤に弟が乗ったよ」。
あの…「カンフージョン」って「Kung fu」と「Fusion」の「カバン語(portmanteu)」だったんですね。
恥ずかしながら最近気が付きました。510「♪ズダストダン、ズダストダン…」
大二さんドラムスによるおなじみの滑り出し。530_seアタマのリード・メロディは要さんの担当。S41a0484 最後の最後で出て来た人気曲。
お客さんは大喜びだ。
名古屋の時は一番最初に演ったんだよ。
200西山さんはこの曲だけギターを持ち替えた。
しかし…リハーサルの時から拝見していてつくづく思った。
やっぱり真空管アンプの音っていいね~。
どんなに電気機器やコンピューターの技術が進歩しても、真空管アンプの音には絶対にかなわないよ。
12s41a0486 次はいつ観れるんだろう…チョット寂しい気持ちを抱えながらバルコニーからシャッターを切り続けた。
580v
560
550v

590v「ありがとうございました!」

610vメンバーの皆さんと握手を交わす大二さん。620そして、大二さんからごあいさつ。630「結成50年、デビューから45年。
『おとなしい反逆児』としてモノづくりに励んで来ました。
茂木くん、真ちゃん、佐久間くんはいなくなってしまいましたが、森やミツルは回復に向かっています。
坂下…悔しいだろう!早く帰って来いよ!」640v「みんなで作った音楽が少しでも皆さんの気になってもらえるような活動をしたいと思います。
メンバーの皆さんにはとても感謝しています。
キッカケを作ってくれた稲葉くんや小野瀬くんにもとても感謝しています」650「元のメンバーで五体満足なのは私だけですが、四人囃子の音楽がオモシロイと思ったらゼヒ手に取って頂きたいと思います。
今後ともよろしくお願いします!」660vかのレナード・バーンスタインが音楽を担当した『Candide(キャンディード)』というブロードウェイ・ミュージカル、あるいはオペレッタがある。
残念ながら劇の内容がオモシロくないということで、たった2か月の公演でクローズしてしまった。
しかし、さすがにバーンスタインの作品だけあって、有名な「Glitter and Be Gay」や殺人的な名曲「I'm Easily Assimirated」等、佳曲が目白押しの一作であることには間違いない。
バーンスタインは『Candide』の終演から4年後、あるコンサートの中でこう言った。
「悲しいことにミュージカルは終わってしまったけど、『序曲』が残った」とその曲を紹介し、タクトを振った。
この『Candide』の「序曲」はミュージカルが打ち切りになってから65年経った現在でも世界中のオーケストラが演奏している。(バーンスタインの変な記事に興味のある方はコチラをどうぞ⇒【Shige Blog】レナード・バーンスタインの/とアメリカ
 
そう、本当にいい「曲」って環境や時代がどんなに変わっても生き残ることができるんですな。
四人囃子の作品はまさに生き残って来たし、これからも生きながらえていく曲たちだと思っている。
今回もボックスセットで旧作がリイシューされたけど、『一触即発』や『ゴールデンピクニックス』他が何度も何度もリイシューされるサマはまるで『Kind of Blue』や『Saxophone Colossus』や『Portrait in Jazz』や『A Love Supreme』のようでしょう?

Kob

Sc

Pij

Ls 人類が滅亡するまで聴き継がれていく運命を背負ったジャズの名盤たちね。
 20代の若者が作った「四人囃子の音楽」というモノは『Candide』の「序曲」やこれらの名盤のようにずっと受け継がれていくだけの価値と力を持っていると思うのです。
大二さんは「自分たちの音楽に興味を持ってくれる人がいれば、この身体が動く限りお届けしたい」とよくおっしゃっている。
多分、そのお言葉に偽りはなかろう。
正直、そのあいだにひとりでも多くの若い人たちに観て、聴いてもらいたいと思う。
 
四人囃子の詳しい情報はコチラ⇒Yonin Bayashi official Web Site
 
しかし…この記念すべきコンサートの写真をいつも通りに撮りたかったナァ。
コロナのアホンダラ!670P.S. 今回、とても良い機会なので、「From the Marshall Blog Vault」ということで2010年の『Progressive Rock Fes』の記事を次回お送りしたいと思います。
 

200(一部敬称略 2021年3月3日 EX Theater Roppongiにて撮影)