KRUBERABLINKA 『The Deepest Place』先行レコ発 <前編>
生まれて初めて大相撲を観に行った。
先週の日曜日に千秋楽を迎えた「五月場所」の6日目。
イヤ、正確に言うと20年ぐらい前に一度アメリカの取引先の担当者を連れて国技館に観に来たことがあった。
一番安い席しかなくて、二階席のいっちばん後の列の席に座って、2人で前相撲をひと通り観て国技館を後にした。
そのアメリカ人は国技館名物の焼き鳥の串を口に運びながら結構興奮して観戦していたけど、何しろ土俵に上がる力士は豆粒にも満たない米粒ほどの大きさで、元来相撲に興味のない私は退屈極まりなかった。
あの時の力士のサイズは40年以上前に武道館のてっぺんから見たスティーヴン・タイラーを思い出したよ。
ところが!
今回は前から6列目という席。
升席よりも土俵に近く、力士が屁でもしようものなら息を止めなければ乗り切れないような至近距離。
飲み食いも禁止されたシリアスなエリアだった。
もちろんそれなりお値段はするワケで…ヘヘヘ、セガレの仕事の関係で頂戴したチケットだったの。
これだけ土俵に近いと力士の顔もバッチリ見えて、やれ「お茶漬け」だの「ベビースターラーメン」だの…知った顔がジャンジャンお目見えしてとても楽しい。
下の写真の赤い化粧まわしを付けているのは、この場所の成績で大関昇進が決まった栃の心じゃんね。
横綱の土俵入り。
やっぱヘッドライナーだけあって、ケタ違いにカッコいいワケ。
もうね、ウッドストックのジミ・ヘンドリックスってな感じ?
それと、テレビで見ているとまだるっこい儀式がいちいちカッコいいの。
やっぱりこういう格式に則った所作というものは見ていて実に気持ちがいい。
気持ちがいい…のはいいんだけど、席が極端に狭い!
足を思いっきり曲げて座らないとスペースに入りきらないじゃん?
足が完全にシビレちゃって、トイレに行く時なんかよっぽど注意して立ち上がらないと危ないことこの上なし。
やっぱり迫力がスゴイのよ。
行司の声や力士がブチ当たった時や張り手の音。
そして、勝負が付いた時のお客さんの歓声!
ヘタなロック・コンサートより断然迫力があるってばよ。
ヒイキの力士への呼び声もにぎやかだ。
チョット後ろの席にやたら元気のいいオバさんがいて、「かがやき~」とか「いきおい~」とか叫ぶワケ。
「かがやき」?「いきおい」?
こっちは相撲のことなんか全然知らないもんだから、昭和40年代の電化製品を連呼しているみたいで面白かったな。
テレビでしか見たことないけど、昔はプロレスの試合の合間にスポンサーの家電製品なんかをリングで紹介して宣伝していた。
三菱電機の「風神」とかいう掃除機とかね。アレを思い出しちゃった。
チョット前には色々あったけど、やっぱ白鵬はカッコいいね。
結びの一番。
ところがこの日は「阿炎」に負けちゃった!
「あえん」?
「亜鉛」かと思ったら「あび」関。初の金星。
おお~、座布団が飛びまくってるぜ~!テレビで見てるとナンてことないんだけどね。
後からタックルされるほどではないにしても、ガンガン飛んできて結構アブナイんよ。
ところで、相撲ってのは写真を撮ってもいいんだね。
それを知っていたらチャンとしたカメラを持って行ったのに~!
掲載した写真はすべて携帯で撮ったモノなの。
で、なんで大相撲の話題を引っ張り出したか…。
それは「いい席で見た」という自慢がしたかったの…というのはウソ。
カギはこの人、栃の心。
立派な尻だナァ。
まるでサイのようだ。
上で触れたように今回の場所を終えて大関昇進を決めた。大関になることは「夢のまた夢」だったらしい。
それもそのハズ、この人キャリアがメッチャ長くて、新入幕から60場所もかかっての大関昇進なのだそうだ。
コレ、増位山と並ぶ歴代最遅の記録なんだって。
まさに定年間際のサラリーマンが滑り込みで部長に就任したというイメージか?
よく辛抱したな~、栃の心。
やっぱり何事も続けていないとダメだね。止めちゃったら全部終わりだ。
それでですね、Marshall Blogも10年続けてるのよ。
小結ぐらいにはなってんのかね?エ、まだ序二段?
ハイ、栃の心を見習ってまだまだがんばります。
最近、よくご両親がテレビに出演していたりするので私も知っているのだが、栃の心の故郷はジョージア。
なんだアメリカかかいな…と最初は誰しもが思うわナァ。レイ・チャールズの顔まで浮かんじゃったりしてサ。
ジョージアというのは、いつ呼び名が変わったんだか知らないが、かつてはグルジアと呼ばれていた1991年にソヴィエト連邦から独立した共和制国家。
北はロシア、東はアゼルバイジャン、西は黒海、そして南はトルコに接するロケーションで人口が370万という小国だ。
ロシアとトルコに挟まれた国なんて音楽がメッチャ面白そうだ。
この日の栃の心の取り組み相手は豊山。
決まり手は「突き落とし」。突き落として栃の心の勝ち。
で、そのジョージアにですね、「世界一深い」と言われている洞窟がある。
現在わかっているだけでもその深さは2,197mにも達するという。
この洞窟の名前が「クルベラ」という。
そしていきなり…。
コレが6月20日にリリースされるKRUBERABLINKAの5枚目のアルバム『The Deepest Place』。
まず、ジャケットがいいね。
KRUBERABLINKAはいつもジャケットがいい。
赤尾画伯の作品。
初め黒人が描かれているのかと思ったらさにあらず。
世界で最も深い場所、クルベラ洞窟の底は当然真っ暗闇だ。
そのThe Deepset Placeでの様子が描かれているということだ。
コレがですね~、素晴らしいんですよ。
ラッキーにして私はKRUBERABLINKAが立ち上がるところからお付き合いさせて頂き、その変遷を傍らで拝見してきた。
このバンドの作品ってどれも非常にミッチリ作ってあって、とても聴きごたえがあるんだよね。
Ritchie Blackmore'S Ranibowの『Rising』で人生が変わったという和重さん。
それだけにそのサウンドはブリティッシュ・ハードロックの伝統に深く深く根ざしていて、気を衒う寸前の曲作りが実にカッコいい。
そして、今回の『The Deepest Place』。
まだ将来があるチームであることを百も二百も承知して言うけど、「最高傑作」になるんじゃないかしら?
私的な聴き方をすれば、「最も理想的な日本のハード・ロック」が出て来ちゃった感じがするんだよね。
それは歌詞であり、曲であり、録音であり、演奏であり、ジャケットであり…。
老若男女を問わず、ひとりでも多くのロック・ファンに聴いてもらいたいアルバムだ。
特に若い人に聴いてもらいたいナァ。
発売日までまだひと月近くあるが、エエイ!
先行して「レコ発ライブ」をやっちゃった。
正確には「レコ発されてないライブ」だ。
場所は最近のKRUBERABLINKAの東京でのホーム、四谷三丁目のソケーズ・ロック。
NATALのメイプルを使用。
フィニッシュが黒地に赤いラメをあしらったブラック・スパークル。
EDEN Terra Nova TN501にD410XLTの組み合わせ。
オープニングは広美さんのゴージャスなリフから始まる「Goodbye Ground(地上よ、さようなら)」。
『The Deepest Place』のオープナーだ。
最初にコレは言っておこう。
実はこの新作は一種のコンセプト・アルバムになっている。
地上に別れを告げ、アルバムの最終曲「The Deepest Place」で地中の最も奥深い世界にたどり着くという筋立てだ。
この日、新作のタイトル・チューンである「The Deepest Place」は演奏されず、ショウの運びとしてアルバムの完全再現という手法は採用されなかったが、収録された10曲のうち、9曲が披露された。
フロント・ピックアップのサウンドをフィーチュアした広美さん独特のソロが冴える!
新作に込められた大きな自信が窺い知れる堂々たる歌唱が素晴らしい。
Judas Priestにありそうなヘビメタっぽい曲想だが、KRUBERABLINKAが演るともう少し前の時代の「伝統のハード・ロック」となる。
コレがいい!
「chamber」とは「会議所」とか「王宮の公式の間」という意味。
「the」をつければ「議院」という意味。
我々の世代は「エコー・チェンバー」でおなじみの言葉。それゆえ「小部屋」みたいな意味が第一義かと思っていた。
若いギタリストは知らないだろうけど、「エコー・チェンバー」とは今でいうディレイのこと。
テープ・エコーもクソもない。それしかなかった。
ちなみにこの言葉、正しくは「チェインバ」と「チェ」にアクセントを置いて発音する。
「ホンマに久しぶりのソケーズ・ロック…昨年の9月以来ですね」
ドワッ!もうそんなに経つの?!ついこないだのような感じだけど…鯛ラーメン食べたのは。
「今日は6月20日に発売するアルバムのレコ発ワンマン。1曲目から新曲をお披露目したんやけど、どやろ?」
今度のアルバムの中でも、特に私のお気に入りのひとつ。
タイトルもさることながら、ナントいってもこの♪ズンズクズンズクというリズム・パターンがタマらん!
これぞハード・ロックの王道!
最近はこういうタイプの曲が全くなくなっちゃったからとてもうれしいのだ。
ん~、このギター・ソロも素晴らしい。
奇抜なアイデアが曲にピッタリとマッチしている。
「モルタル」なんて言葉が出て来たら私としては当然ダマっていられないのだが、今回は触れないでおく。
新作のコンセプトにからめて<後編>でやらせて頂く。
「だんだん暑くなって来たんじゃないですか?」…「クルベラのソケーズ名物」であるオリジナル・カクテルを紹介。
キウイ、メロンと果物でつなげて来たKRUBERABLINKAの曲にちなんだドリンクだ。
今回のお題は「ライチー」。
楊貴妃が好んで食べたっていうアレね。
青がからまってとても涼しげだ。
カシシを手にした和重さん。
歌うは「ライチー」。
タマタマ写真は険しい表情になっているけど、曲は「恋の予感」を歌ったナニかが揺れてるさわやか系。
ココでもよく練られたギター・ソロが曲の楽しみを倍増させている。
CD通りの「♪チーン」…まるでドヴォルザークの交響曲第九番「新世界より」のシンバルよろしく、和重さんが1回だけトライアングルを鳴らして曲を締めくくった。
ハイ、ココでガツンと脱線。
KRUBERABLINKAのフルーツ・ネタにちなんでMarshall Blogでもフルーツ・ネタを一発お見舞いしよう。
ココは浅草ひさご通りにある「フルーツパーラー ゴトー」。
人力車がガイドするほどの人気で、ココのパフェをモチーフにした画家が先日ニューヨークで個展を開いたという有名店。
いつも行列ができていて、平日といえども昼間はまずスンナリと入ることはできない。
パフェが目玉のお店だからネェ。
女性ばっかりだと思うでしょ?イヤイヤとんでもない。
男性も結構並んでるのよ。
…というのは、パフェに使われている果物が信じられないぐらいのクォリティの高さで、よっぽど果物が苦手という人は別にすれば、ココで出される果物にケチをつける人はこの世に1人もいないと考えるのが普通だろう。
左下は本日のパフェ。
その他は完熟マンゴー・パフェ。
テーブルについているのはMarshall社社長夫妻のジョンとエリーだ。
ジョンはいつもはこの手のものを口にしないのだが、アッと言う間にペロリ。
エリーも「デリ~シャス!」、「ベリーナイス!」、「グレート!」、「ワンダフル!」の連発。
見ているとイギリス人もよく果物を食べるけど、青くて酸っぱいリンゴばっかりだもんね。それかオレンジ。
中に入っているシャーベットやアイスクリームも自家製。
当然、同じフルーツから作られる。
マンゴーってサ、我々の世代は若い頃に食べたことはおろか、見たことも聞いたこともない、どちらかと言うと新しい果物というイメージが強いと思う。
おしいもんだね~。
食べた瞬間、飛び上がるわ。まさにホッペが落ちそう!って感じ。
口にするのはせいぜいインド料理屋のマンゴー・ラッシーぐらいだからネェ。
とにかくこのおいしさと値段にはビックリだ。
そういえば、むかしむかし、ある晩父が「コレおいしいんだぞ~」と言ってグレープフルーツを買って来たのを覚えている。
当時は半分に切って、グラニュー糖をタップリかけて、先がギザギザになっているスプーンで実をほじくって食べるのがスタンダードな頂き方だった。
酸っぱいというより、少し苦いような味がとても不思議に感じたな。それとナンでコレが「グレープなの?」って。
下は今が旬のアメリカン・チェリーのパフェ2種。
上に乗っているのは病院のお見舞いに持って行くような、そんじょそこらのアメリカン・チェリーとはワケが違う。
みずみずしくて、肉厚で、味が濃くて最高においしい。
上に乗っているアイテムは同じだが、向かって左にはそのアメリカン・チェリーを使ったアイススクリームが下に詰まってる。
一方、右にはチョコレート・アイスが収まっている。
チョコレートとチェリーってのは相性がバツグンだからね。
うまいぞ。
筆舌しがたいおいしさだ。
KRUBERABLINKAの次作でのフルーツ曲は「マンゴー」か「アメリカン・チェリー」でお願いしたい。
ちなみに、マスターと私はザッパ友達なのだ!
「次はシットリ系。今年ヒットして来年の紅白歌合戦に出れると思う。どんな曲やねん?!」
曲は「遠い彼方をひとりで探す」。
和重さんの言葉通りのマイナーのバラード。フレットレス・ベースに持ち替えた鎌田さんのプレイが深い!
「砂山」を思い出させる広美さんのソロも魅惑的だ。
しかし、ナントいってもこの曲で一番特徴的なのは和重さんの「語り」だろう。
チョット意外なイメージ。
もうひとつ意外なのは、和重さんでも紅白歌合戦に出たがっている…ということだ!
グラストンベリーとか、ダウンロードとかよりも紅白!
やっぱり日本っていいね~。
続けて「ピエロの心臓」。2014年の『BLANKO』からのチョイス。
5/8拍子が自然に聴こえるトリッキーな1曲。「しゃらくさい!」、「シロクロ!」…こうしたドッシリとしたヘヴィ・チューンでの和重さんの声は何とも頼もしい。
そう、ロックの頼もしさにあふれかえっている。
第1部最後のセクション。
「あと2曲になりました…ホッとしてるんじゃないですか?
「ナンでやかましいかと言いますと…」…と、Marshall、NATAL、EDENの紹介をしてくれた。
いつもありがとうございます。
そうなの、和重さん、前々からNATALのコンガが欲しいって言ってくれていましてね。
ゴメンなさい、そのウチ入れますから!
イアン・ギランはNATALのコンガを愛用していたからね。
和重さん、イアン・ギラン・バンドがお好きなんだよね。
私も1977年の初来日公演を武道館に観に行ったけど、結局うれしかったのはパープル・ナンバーだけだった。まだオコチャマだったから。
でも、今CD聴くとメッチャかっこいいんだよね~。
あのバンドはギターにスター・プレイヤーを迎えなかったのが最大の悲劇だったと思う。リッチーで懲りたのかね?
この辺りはボーカリスト最大のジレンマだよね…なんて時代がまた来て欲しいナァ。ギタリストがMarshallでギターをチャンと弾いてもてはやされる時代がサ。
やっぱりね、私はアンチ巨人だけど、夏が暑く、冬が寒くならなければならないように、巨人は強くなければ自然の法則が成り立たないと考えてる。
それと同じで、ギターはやっぱり花形じゃないとロックは成り立たない。
見ろ!
この自然の法則が破壊され出した途端、ロックはヒップホップに駆逐され出したじゃないか!
「パラダイス~、インフェルノ~!」と声高にタイトルをコール。
この曲もメッチャ好き。「KRUBERABLINKAのロックンロール」と私は勝手に思ってる。
広美さんのバッキングがいいんだよ。
そして、曲が次から次へと展開していくパノラマ状態。
しかし、和重さんの歌詞はムズカシイのう。
どこから言葉が飛んでくるかがわからない。
でもロックはコレがいい。
今、若い人の間でハヤっているロックって「あるあるソング」だもんね。
日常のことを歌うのはポピュラー音楽の常道なのはわかるけど…このあたりに洋楽が聴かれなくなった要因のひとつがあるのだろう。
我々世代は「猫の足 鉄の爪 神経外科医たちが金切り声で求め続ける 妄想病者の毒の扉の前で
21世紀の分裂病者」だからね。
ロックはコレでいいのです。
コレもパノラマ感に富んだ複雑な曲。
大スキな曲で私はコレをKRUBERABLINKAのキラー・チューンのひとつと捉えている。
それを今回のアルバムの2曲目に収めたところが何ともうれしい。
アルバムもショウも2曲目が重要なのだ。
初演の頃はムズカシイと盛んに騒いでいたが、レコーディングを終えた今、すっかり自家薬籠中の1曲とし、完璧な演奏で第1部の幕を降ろした。
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